(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944146
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】閉制御回路内の制御量の障害を弱めるための方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20160621BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20160621BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
G05B13/02 A
F02D45/00 368H
B60R16/02 660A
【請求項の数】6
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-249515(P2011-249515)
(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公開番号】特開2012-108914(P2012-108914A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年11月13日
(31)【優先権主張番号】10 2010 044 142.2
(32)【優先日】2010年11月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】クラウディウス・ベヴォット
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シュタイナート
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シュルツ
【審査官】
川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−312201(JP,A)
【文献】
特開2009−250029(JP,A)
【文献】
実開平01−076536(JP,U)
【文献】
特開2009−002280(JP,A)
【文献】
特開2001−317400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/02
B60R 16/02
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作量が出力される閉制御回路内の制御量の障害を弱めるための方法において、
前記制御量がそれぞれ相連続する二つの走査時点で連続的に測定され、前記制御量の値が差し引かれ、この差の大きさが外部の基準量と比較され、前記差の大きさが予め定められている基準値だけずれている場合に、全ての制御パラメータが、それ等の初期値にリセットされ、或いは前記閉制御回路内での増幅が、前記制御パラメータの変化によって引き下げられることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記操作量が、前記制御パラメータの変化の間、利用されないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較が、予め定めておくことのできる時間離散化された間隔を置いて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記操作量が、制御されたラムダゾンデのポンプ電流であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
演算装置で実行されると、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法のステップを実行するコンピュータプログラム。
【請求項6】
コンピュータプログラムがコンピュータ或いは制御装置で実行されたときに、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法を実行するための、機械読み取り可能の媒体に格納された、プログラムコードを含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作量
が出力される閉制御回路内
の制御量の障害を弱めるための方法に関する。
【0002】
また、本発明は、本方法の実施のために適したコンピュータプログラム及びコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0003】
このような閉制御回路は、様々な技術分野で用いられる。このような閉制御回路はまた、特に自動車技術において用いられる。例えば、内燃機関の排気ガス中の有害物質の除去は、閉制御回路に、例えば、操作量、即ちポンプ電
流の、閉ループ制御されたラムダゾンデの閉制御回路に依拠している。これに対して
、制御量はネルンスト電圧であり、この電圧は予め定められた値(450mV)に調節される。ネルンスト電圧がこの値に到達しているときには、排気ガスは、ラムダ=1の値となる。ラムダ値は、操作量、即ちポンプ電流を通じて、それ自体既知の手法で定められる。そのような閉制御回路では、閉ループ制御に影響を与える障害が発生することがあり、その際に
は制御量、従ってラムダゾンデの場合にはネルンスト電圧も悪影響を受ける。例えば、ワイヤハーネスの中の接続線を通じて、
操作量或い
は制御量と結ばれていない外乱が取り込まれてしまうことがある。そのような取り込みは、例えば、ディーゼルエンジンのピエゾ噴射器によって生成される障害によって、或いはその他の手法で、或いは単にEMV外部磁界の影響によって発生する。
【0004】
そのような障害は、例えば
、制御量と比べてより急速な信号の立上がり時間或いは立下り時間を特徴としており、そのために、障害は単位時間当たり制御量自体よりもより急速に変化する。それで、閉制御回路の中では、そのような障害は、制御偏差と簡単に区別することができない。その結果として、操作量の変動が、またそれに伴うマイナスの影
響が、生じることがある。そのような煩わしい影響を排除するために、従来技術からは、主として次のような三つの措置が知られている。第一には、
操作量がフィルタリングされる。このフィルタリングは、取り込まれた障害に起因する
操作量のエラーを減少させる。第二の措置は
、制御量のフィルタリングである。これは障害量の振幅の縮減をもたらす。最後に、閉制御回路は、例えば閉ループ制御特性の低いP成分によって、極度に遅速化されることがある。ここで欠点となるのは、これ等の従来からの方法によると、障害の抑制が常に
操作量の抑制或いはダイナミクス損失と並行して現れることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、冒頭に述べられたよう
な制御量の障害を弱めるための方法を、単に障害が識別されるだけではなく、
操作量に対する影響ができる限り小さくなるように障害を弱め且つ最少化し、障害を受けていない
操作量のダイナミクスができるだけ維持されるように拡張することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、冒頭に述べられたような閉制御回路の中
の制御量の障害を弱めるための方法により
、制御量がそれぞれ相連続する二つの走査時点の中で連続的に測定され
、制御量の値が差し引かれ、その差の大きさが予め定められている基準値だけずれている場合には、少なくとも一つの制御パラメータが、障害に対する操作量の反応が最少化されるように変化されることによって解決される。それ故、本発明の基本思想は
、制御量の時間的推移を観察し、且つその変化を予め定めておくことのできる基準値と比較することによって、より確実に観察し又尤度チェックすることである
。制御量の連続的監視は、それぞれ相連続する二つの走査時点の中で連続的に行われる。変化が確認されると、制御パラメータが変化されるので、その後の観察時点で
は制御量の変化が生じる。このようにして、閉制御回路が望ましくない障害に対して反応しないということが保証される。
【0007】
本発明では
、制御量(Regelgrose)と制御パラメータ(Regelparameter)とが区別される
。制御量とは、以下の文章の中では制御されるべき量、従ってラムダゾンデの場合には、例えばネルンスト電圧と理解されるものとし、これに対して、制御パラメータという概念は、制御装置のパラメータ、それ故PID制御装置の場合には、P成分、I成分、又はD成分、或いは制御速度等と理解されるものとする。
【0008】
諸従属請求項に述べられている措置によって、独立請求項に示されている方法の有利な拡張及び改良が可能である。
【0009】
それ故、本発明の一つの有利な拡張例では、有効信号、従って故操作量が、少なくとも一つの制御パラメータの変化の間、変化されず及び/または利用不能として識別される。この拡張例は、障害が検知され、またその障害のために操作量、有効信号も狂ってしまった後は、有効信号は利用されることができないという考え方に基礎づけられている。そのようなことは、制御パラメータの変化の間にも当てはまる。
【0010】
本方法の一つの有利な実施態様ではまた、全ての制御パラメータを、それ等の初期値へリセットすることが行われる。
【0011】
また、別の実施態様では、閉制御回路内での増幅が引き下げられる。勿論これ等の二つの変更例は、互いに組み合わせることも可能である。
【0012】
特に有利なのは
、制御量と外部の基準量との比較を、予め定めておくことのできる時間離散化された間隔を置いて行うということである。このようにすると、連続的監視が不要となり、比較は時々行いさえすれば良いことになる。これによって、処理速度が高められる。何故なら、この制御装置がソフトウェアとして実現されている場合には、演算時間が短縮されるからである。
【0013】
本方法は、コンピュータプログラムとして実現され、且つコンピュータ、例えば内燃機関の制御装置で実行されると非常に有利となる。その際には、コンピュータプログラム製品は、機械読取り可能な媒体に格納されたプログラムコードを備えることができる。このようにすると、このプログラムは、既存の開制御装置に或る程度“合体”させ、またその限りにおいて、既存のシステムの拡張を行うことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明が以下に実施例に基づいて詳しく説明される。例えば、ラムダゾンデのそれ自体既知の閉制御回路では、操作
量はポンプ電流である。これに対して
、制御量は測定されたゾンデのネルンスト電圧であり、この電圧がコンパレータで予め定められた値、例えば450mVと比較される。この比較に応じて、ポンプ電流が、両者の間のずれが無くなるように制御される。この場合、排気ガスの空気過剰率は、ラムダ=1となる。ポンプ電流は
、排気ガスのラムダ値の基準となる。接続線を通して、例えばワイヤハーネスを通して、
操作量或い
は制御量と結び付いていない障害が、ディーゼルエンジンの場合には、例えばピエゾ噴射器によって生成される、例えば電磁結合によって
、制御量の中だけでなく操作量の中にも取り込まれてしまうことがある。そのような障害は
、制御量よりもより急速な信号の立上がり時間或いは立下り時間を特徴としており、そのために、障害は単位時間当た
り制御量よりもより急速に変化する。例えば、ラムダゾンデの場合に用いられ且つそれ自体既に知られている閉制御回路は、この場合、障害と制御偏差を区別することができない。その結果、障害に対する反応として、操作量
の変動が起き、それからマイナスの影
響が生じる。そのような
影響を排除するために、本発明によって、エンジン制御装置にセンサ、例えばワイドバンドラムダゾンデの作動のための特にデジタルの閉制御回路が備えられるが、この閉制御回路は、例えば演算ユニットから成り、且
つ制御量をそれぞれ相連続する複数の走査時点の中で連続的に走査、測定し、測定された二つ
の制御量の差が作られ、その差の大きさが予め定められ且つ記憶されている基準値と比較される。その際、この基準値は、予め、障害を受けていない閉制御回路の中
の制御量の変化が反映されるように定められる。この基準値は、例えば障害を受けていない同様の閉制御回路を基にして求められるか或いは計算によってシミュレートされる。その際、比較は時間離散化された間隔を置いて、それ故、時々行われる。二つの時点の間に
、制御量が、定められた限界値よりも大きく変化した場合には、障害が認知され、例えば、制御器の制御パラメータがリセットされる。別の手法として、例えば、閉制御回路内での増幅が制御パラメータの適合によって引き下げられるか或いは二つの措置の組合せが行われることもできる。限界値は、調節可能であるか或いは始めから固定されていることもあるが、その限界値との比較は、数値比較によって行われるか或いは演算ユニット内部のオーバーフロー表示が用いられることもできる。この反応の起動は、制御回路内部で行われるか或いはトリガ信号、例えばデジタルフラグの評価によって、或いは制御回路によりアナログ電圧が生成されることによって行われる。トリガ信号の評価は、例えば外部マイクロコンピュータによって行われ、評価に応じて、マイクロコンピュータは、評価回路をしかるべくリセットし或いは設定する。しかしながら、マイクロコンピュータは、制御装置の部分とすることもできる。この措置によって、操作
量は、できる限り短い時間の間、理想的には障害の持続時間の間、無効となる。障害の収束の後、一回から二回の演算サイクルで、
操作量は再び狂い無しで測定されることができる。
マイナスの影響のある操作量は、例えばフラグによって識別されることができ、その後の評価の中では考慮されない。
【0015】
先に説明された方法は、コンピュータプログラムとして実装されることができ、またその限りにおいて既存の制御装置にも後付けされることができる。この方法は、原理的にアナログ制御回路によって実行されることもできる。