特許第5944154号(P5944154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944154
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20160621BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20160621BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B60H1/22 651A
   B60H1/32 624F
   B60H1/22 651C
   F25B1/00 101J
【請求項の数】19
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2011-270685(P2011-270685)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-121763(P2013-121763A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】武居 秀憲
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−323674(JP,A)
【文献】 特開平07−232547(JP,A)
【文献】 特開2000−052757(JP,A)
【文献】 特開2011−143796(JP,A)
【文献】 特開2002−079821(JP,A)
【文献】 特開2000−097521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/32
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
冷媒を放熱させる放熱器と、
冷媒を吸熱させる吸熱器と、
冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、
室外熱交換器において放熱させた冷媒をさらに放熱させる室外放熱器と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を室外放熱器に流入させ、室外放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる冷房・除湿冷房用冷媒回路と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる暖房用冷媒回路と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒の一部を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、放熱器を流通したその他の冷媒を室外放熱器に流入させ、室外放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒および吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる除湿暖房用冷媒回路と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を室外放熱器に流入させ、室外放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる内部循環除湿暖房用冷媒回路を備えた
ことを特徴とする請求項に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
室外放熱器の冷媒流通方向上流側には、液体の冷媒を貯留可能なレシーバタンクが設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
冷媒を放熱させる放熱器と、
冷媒を吸熱させる吸熱器と、
冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、
室外熱交換器において放熱させた冷媒をさらに放熱させる室外放熱器と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を室外放熱器に流入させ、室外放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる冷房・除湿冷房用冷媒回路と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる暖房用冷媒回路と、
液体の冷媒を貯留可能なレシーバタンクと、
縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒の一部を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、放熱器を流通したその他の冷媒を室外放熱器に流入させることなくレシーバタンクに流入させ、レシーバタンクを流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒および吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる除湿暖房用冷媒回路と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項5】
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を室外放熱器に流入させることなくレシーバタンクに流入させ、レシーバタンクを流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる内部循環除湿暖房用冷媒回路を備えた
ことを特徴とする請求項に記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
空気流通方向上流側に吸熱器が配置されるとともに、吸熱器の空気流通方向下流側に放熱器が配置され、車室内に供給する空気を流通させる空気流通路と、
空気流通路を流通する空気を、車室内の搭乗者の頭部側に向かって吹出させるベントモードと、車室内の搭乗者の足元側に向かって吹出させるフットモードと、車室内の搭乗者の頭部側および足元側のそれぞれに向かって吹出させるバイレベルモードと、を、車室内の温度を目標設定温度とするために車室内に供給すべき空気の温度である目標吹出温度に基づいて切換え可能な吹出口切換手段と、
空気流通路に流入する空気の温度を検出する吸気温度検出手段と、
吹出口切換手段によってバイレベルモードが設定されている場合において、吸気温度検出手段の検出温度に基づいて内部循環除湿暖房用冷媒回路での運転を開始または停止する内部循環除湿暖房制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項2または5に記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
空気流通路を流通する空気の温度を検出する空気温度検出手段と、
除湿暖房用冷媒回路または冷房・除湿冷房用冷媒回路での運転時に、空気温度検出手段の検出温度に基づいて内部循環除湿暖房用冷媒回路での運転に切換える運転切換手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項に記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
空気流通路の放熱器の下流側の空気の温度を推定する加熱温度推定手段と、
加熱温度推定手段による推定温度に基づいて圧縮機の回転数を制御する圧縮機制御手段と、
空気流通路を流通する空気のうち、放熱器を流通する冷媒と熱交換する空気の割合が可変に設けられ、開度が大きくなるに従って放熱器を流通する冷媒と熱交換する空気の割合が大きくなるエアミックスダンパと、
車室内に供給する空気の温度が目標吹出温度となるようにエアミックスダンパの開度を制御するダンパ開度制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項6または7に記載の車両用空気調和装置。
【請求項9】
空気流通方向上流側に吸熱器が配置されるとともに、吸熱器の空気流通方向下流側に放熱器が配置され、車室内に供給する空気を流通させる空気流通路と、
吸熱器の表面温度、または、空気流通路の吸熱器の下流側の空気の温度を検出する吸熱器温度検出手段と、
空気流通路の放熱器の下流側の空気の温度を検出、または、推定する放熱器温度検知手段と、
冷却温度検出手段の検出温度および加熱温度推定手段の推定温度に基づいて、冷房・除湿冷房用冷媒回路、除湿暖房用冷媒回路および内部循環除湿暖房用冷媒回路を相互に切換える運転切換制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項2または5に記載の車両用空気調和装置。
【請求項10】
暖房用冷媒回路において、圧縮機から吐出された冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器に直接流入させる除霜回路を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項11】
室外熱交換器は、内部に形成された冷媒通路の一端側から冷媒が流入し、流入した冷媒が他端側から流出する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項12】
室外熱交換器は、内部に形成された冷媒通路の一端側から放熱させる冷媒が流入し、流入して放熱した冷媒が他端側から流出するとともに、冷媒通路の他端側から吸熱させる冷媒が流入し、流入して吸熱した冷媒が一端側から流出する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項13】
室外熱交換器、室外放熱器、レシーバタンク、室外熱交換器とレシーバタンクとを接続する冷媒流通路および冷媒流通路に設けられた弁を有し、それぞれを一体に形成した室外熱交換器ユニットを備えた
ことを特徴とする請求項3乃至9のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項14】
室外熱交換器ユニットには、室外熱交換器とレシーバタンクとを接続する冷媒流通路に接続される冷媒流通路に設けられた弁が一体に形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の車両用空気調和装置。
【請求項15】
室外熱交換器ユニットには、室外熱交換器と圧縮機とを接続する冷媒流通路に設けられた弁が一体に形成されている
ことを特徴とする請求項14に記載の車両用空気調和装置。
【請求項16】
室外熱交換器ユニットには、放熱器と室外熱交換器とを接続する冷媒流通路に設けられた弁が一体に形成されている
ことを特徴とする請求項15に記載の車両用空気調和装置。
【請求項17】
室外熱交換器において冷媒を吸熱させる際に室外熱交換器に流入する冷媒を減圧する膨張手段と、室外熱交換器において冷媒を放熱させる際に室外熱交換器に流入する冷媒の流量を調整する流量調整手段と、を一体に形成した制御弁ユニットを備え、
制御弁ユニットは、膨張手段及び流量調整手段のそれぞれの冷媒流入側および冷媒流出側の少なくとも冷媒流入側のそれぞれと連通する配管接続口を有している
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項18】
制御弁ユニットは、膨張手段が電子式の膨張弁であり、流量調整手段が電磁弁である
ことを特徴とする請求項17に記載の車両用空気調和装置。
【請求項19】
制御弁ユニットは、冷媒流出側を一方または他方に切換え可能な三方弁と、冷媒流出側の一方に設けられた機械式の膨張弁と、からなる
ことを特徴とする請求項17に記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車に適用可能な車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置では、車両の動力源としてのエンジンによって駆動する圧縮機と、車室外に設けられた放熱器と、車室内に設けられた吸熱器と、を備え、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させるとともに、吸熱器において吸熱させ、吸熱器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給することで冷房運転を行っている。また、従来の車両用空気調和装置では、車室内にヒータコアを備え、エンジンの冷却に用いた冷却水の排熱をヒータコアにおいて放熱させ、ヒータコアにおいて冷却水と熱交換した空気を車室内に向かって吹出すことで暖房運転を行っている。さらに、従来の車両用空気調和装置では、車室内に供給する空気を吸熱器において要求される絶対湿度まで冷却して除湿し、吸熱器において冷却して除湿された空気をヒータコアにおいて所望の温度まで加熱した後に車室内に向かって吹出す除湿暖房運転を行っている。
【0003】
前記車両用空気調和装置では、暖房運転及び除湿暖房運転において空気を加熱する熱源としてエンジンの排熱を利用している。車両の動力源が電動モータである電気自動車は、エンジンのように空気を十分に加熱可能な排熱が発生しないため、前記車両用空気調和装置を適用することができない。
【0004】
そこで、電気自動車に適用することができる車両用空気調和装置として、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、冷媒を放熱させる放熱器と、冷媒を吸熱させる吸熱器と、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる暖房用冷媒回路と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒の一部を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、その他の冷媒を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒および室外熱交換器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる除湿暖房用冷媒回路と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる冷房・除湿冷房用冷媒回路と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−324237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記車両用空気調和装置では、冷房・除湿冷房用冷媒回路において、室外熱交換器において冷媒を凝縮させる際に、過冷却の状態まで放熱させることによって冷房運転および除湿冷房運転の効率を向上させるものが知られている。室外熱交換器において冷媒を過冷却の状態まで放熱させるためには、室外熱交換器の冷媒流通方向下流側に液体の冷媒を流通させて過冷却の状態まで放熱させるための過冷却部を設けている。
【0007】
しかし、室外熱交換器に過冷却部を設けた場合には、冷房・除湿冷房用冷媒回路以外の冷媒回路が構成されたときに、過冷却部を冷媒が流通することで圧力損失が増加する原因となるため、冷房運転および除湿冷房運転以外の運転において効率が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の目的とするところは、圧力損失を低減し、運転効率の向上を図ることのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、冷媒を放熱させる放熱器と、冷媒を吸熱させる吸熱器と、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、室外熱交換器において放熱させた冷媒をさらに放熱させる室外放熱器と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を室外放熱器に流入させ、室外放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる冷房・除湿冷房用冷媒回路と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる暖房用冷媒回路と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒の一部を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、放熱器を流通したその他の冷媒を室外放熱器に流入させ、室外放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒および吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる除湿暖房用冷媒回路と、を備えている。
また、本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、冷媒を放熱させる放熱器と、冷媒を吸熱させる吸熱器と、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、室外熱交換器において放熱させた冷媒をさらに放熱させる室外放熱器と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を室外放熱器に流入させ、室外放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる冷房・除湿冷房用冷媒回路と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる暖房用冷媒回路と、液体の冷媒を貯留可能なレシーバタンクと、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させ、放熱器を流通した冷媒の一部を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させ、放熱器を流通したその他の冷媒を室外放熱器に流入させることなくレシーバタンクに流入させ、レシーバタンクを流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させ、室外熱交換器を流通した冷媒および吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる除湿暖房用冷媒回路と、を備えている。
【0010】
これにより、冷房・除湿冷房用冷媒回路において、室外放熱器を流通した冷媒が放熱器に流入するとともに、暖房用冷媒回路において、室外熱交換器を流通した冷媒が室外放熱器を流通することなく圧縮機に吸入される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸熱器を流通する冷媒は、室外放熱器において過冷却状態となるので、運転効率を向上させることが可能となる。また、吸熱器を流通しない冷媒は、過冷却用放熱器を流通することなく圧縮機に吸入されるので、圧力損失の低減を図ることが可能となり、運転効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図2】室外熱交換器ユニットを示す図である。
図3】(a)第1制御弁の膨張手段側の弁開度信号と開口面積との関係を示すグラフ、(b)第1制御弁の凝縮圧力調整手段側の弁開度信号と開口面積との関係を示すグラフ、(c)第1制御弁の膨張手段側と凝縮圧力調整手段側とを合わせた弁開度信号と開口面積との関係を示すグラフである。
図4】冷房運転および除湿冷房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図5】暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図6】第1除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図7】第2除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図8】除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図9】各運転における制御弁の状態を示す表である。
図10】第2除湿暖房運転判定処理を示すフローチャートである。
図11】第2除湿暖房運転切換え処理を示すフローチャートである。
図12】運転切換制御処理を示すフローチャートである。
図13】本発明の第2実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図14】各運転における制御弁の状態を示す表である。
図15】本発明の第3実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図16】各運転における制御弁の状態を示す表である。
図17】本発明の第4実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図18】各運転における制御弁の状態を示す表である。
図19】本発明の第5実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図20】室外熱交換器ユニットを示す図である。
図21】(a)第1制御弁の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側のそれぞれの弁開度と開口面積との関係を示すグラフ、(b)第1制御弁のその他の例の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側のそれぞれの弁開度と開口面積との関係を示すグラフ、(c)第1制御弁のその他の例の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側のそれぞれの弁開度と開口面積との関係を示すグラフである。
図22図21(c)の第1制御弁の膨張手段側の構造および動作説明図である。
図23】逆止弁と一体に形成した第1制御弁を示す図である。
図24】冷房運転および除湿冷房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図25】暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図26】第1除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図27】第2除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図28】除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図29】各運転における制御弁の状態を示す表である。
図30】本発明の第6実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図31】各運転における制御弁の状態を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図12は、本発明の第1実施形態を示すものである。
【0014】
本発明の車両用空気調和装置は、図1に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20と、を備えている。
【0015】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0016】
空気流通路11内の一端側には、空気流通路11の一端側から他端側に向かって空気を流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。
【0017】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する内外気吸入モードとなる。
【0018】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成されている。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、バイレベルモードにおいては、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差が生じるような、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器の互いの位置関係や構造となっている。
【0019】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14及び放熱器15は、それぞれ内部を流通する冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。
【0020】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15において加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側に位置することによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0021】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、室外熱交換器から流出した液体の冷媒を蓄えるためのレシーバタンク23、レシーバタンク23から流出する液体の冷媒を過冷却の状態とするための室外放熱器としての過冷却用放熱器24、過冷却用放熱器24から流出する冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換させるための内部熱交換器25、暖房運転および第1除湿暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と除湿冷房運転時に放熱器15における冷媒の凝縮圧力を制御するための凝縮圧力調整手段とを有する制御弁ユニットとしての第1制御弁26、吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を調整するための第2制御弁27、第1〜第4電磁弁28a,28b,28c,28d、第1〜第4逆止弁29a,29b,29c,29d、膨張弁30、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ31を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。
【0022】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第1制御弁26の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第1制御弁26の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の第1接続口が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。室外熱交換器22の第2接続口には、レシーバタンク23の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。冷媒流通路20dには、室外熱交換器22側から順に第1電磁弁28a、第1逆止弁29aが設けられている。レシーバタンク23の冷媒流出側には、過冷却用放熱器24の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。過冷却用放熱器24の冷媒流出側には、内部熱交換器25の高圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。内部熱交換器25の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、膨張弁30が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器25の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2制御弁27が設けられている。内部熱交換器25の低圧冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。冷媒流通路20iには、内部熱交換器25側から順に、第3逆止弁29c、アキュムレータ31が設けられている。また、冷媒流通路20bには、冷媒流通路20dの第1逆止弁29aとレシーバタンク23との間が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20jには、冷媒流通路20b側から順に第2電磁弁28b、第2逆止弁29bが設けられている。また、室外熱交換器22の第3接続口には、冷媒流通路20iの第3逆止弁29cとアキュムレータ31との間が接続されることによって、冷媒流通路20kが設けられている。冷媒流通路20kには、第3電磁弁28cが設けられている。冷媒流通路20aには、冷媒流通路20cが接続されることによって、除霜回路としての冷媒流通路20lが設けられている。冷媒流通路20lには、冷媒流通路20aから順に、第4電磁弁28d、第4逆止弁29dが設けられている。
【0023】
圧縮機21、室外熱交換器22、レシーバタンク23および過冷却用放熱器24は、車室外に配置されている。室外熱交換器22には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機32が設けられている。
【0024】
室外熱交換器22は、図2に示すように、レシーバタンク23、過冷却用放熱器24、第1制御弁26、第1電磁弁28a、第2電磁弁28b、第3電磁弁28c、第1逆止弁29aおよび第2逆止弁29bと一体に形成され、室外熱交換器ユニットUが構成されている。
【0025】
室外熱交換器22および過冷却用放熱器24は、幅方向に延びる上下一対のヘッダ22aと、互いに幅方向に間隔をおいて各ヘッダ22a間を接続する複数の扁平チューブ22bと、各扁平チューブ22bの間に設けられた波形状のフィン22cとを有している。室外熱交換器22は一対のヘッダ22aの幅方向一方側に設けられ、過冷却用放熱器24は一対のヘッダ22aの幅方向他方側に設けられている。
【0026】
各ヘッダ22aは、幅方向両端部が閉鎖された筒状の部材からなり、それぞれの内部が複数の仕切り部材22dによって幅方向に仕切られている。これにより、室外熱交換器22には、上下に蛇行しながら幅方向に延びる冷媒流路が形成される。下側のヘッダ22aの室外熱交換器22部分の幅方向一方側の空間には、冷媒流通路20cが接続されている。また、下側のヘッダ22aの室外熱交換器22部分の幅方向他方側の空間には、冷媒流通路20dおよび冷媒流通路20kが接続されている。さらに、下側のヘッダ22aの過冷却用放熱器24部分の空間には、冷媒流通路20eが接続されている。上側のヘッダ22aの過冷却用放熱器24部分の空間には、冷媒流通路20fが接続されている。
【0027】
レシーバタンク23は、両端が閉鎖された上下方向に延びる筒状の部材からなり、下端側に冷媒流通路20dおよび冷媒流通路20eが接続されている。レシーバタンク23は、冷媒回路20の余剰の冷媒が貯留される。
【0028】
内部熱交換器25は、例えば二重管式の熱交換器であり、冷媒流通路20fを流通する冷媒を内管に流通させ、冷媒流通路20hを流通する冷媒を外管に流通させることにより冷媒同士を熱交換させるものである。
【0029】
第1制御弁26には、1つの冷媒流入口に対して、膨張手段側の冷媒通路と凝縮圧力調整手段側の冷媒流路が設けられている。また、第1制御弁26には、膨張手段側の冷媒通路と凝縮圧力調整手段側の冷媒流路に対して1つの冷媒流出口が設けられている。膨張手段側の冷媒通路と凝縮圧力調整手段側の冷媒流路には、開度を調整するための弁体がそれぞれ設けられている。第1制御弁26は、膨張手段側が電子膨張弁の機能を有し、凝縮圧力調整手段側が電磁弁の機能を有している。第1制御弁26は、膨張手段側および凝縮圧力調整手段側のそれぞれの弁開度が全閉の状態から全開の状態の間で調整可能である。
第1制御弁26は、図3に示すように、膨張手段側および凝縮圧力調整手段側を全閉した状態から全開した状態の間で、冷媒通路の開口面積を調整することが可能である。図3では、横軸を弁開度信号、縦軸を冷媒通路の開口面積に相当する開口径として、弁開度信号と開口面積との関係を示している。図3(a)は、膨張手段側の弁開度信号と冷媒流路の開口面積に相当する開口径との関係を示す。図3(b)は、凝縮圧力調整手段側の弁開度信号と冷媒流路の開口面積に相当する開口径との関係を示す。図3(c)は、膨張手段側と凝縮圧力調整手段側とを合わせた弁開度信号と冷媒流路の開口面積に相当する開口径との関係を示す。
【0030】
第2制御弁27は、弁開度を段階的または任意に調整することが可能に構成されている。第2制御弁27は、弁開度を調整することによって冷媒流通路20hを流通する冷媒の流量を調整することで、吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を調整するものである。
【0031】
膨張弁30は、吸熱器14から流出する冷媒の温度に応じて弁開度を調整可能な温度膨張弁である。温度膨張弁としては、例えば、吸熱器から流出する冷媒が流通する流出冷媒流路と、流出冷媒流路を流通する温度を検出する感温棒と、弁体を移動させるためのダイヤフラムと、を一体に形成したボックス型の温度膨張弁が用いられる。
【0032】
さらに、車両用空気調和装置は、図1に示すように、圧縮機21の回転数、第1制御弁26の弁開度、第2制御弁27の弁開度、第1〜第4の電磁弁28a,28b,28c,28dの開閉を制御するためのコントローラ40を備えている。
【0033】
コントローラ40の出力側には、圧縮機21、第1制御弁26、第2制御弁27、第1〜第4の電磁弁28a,28b,28c,28dが接続されている。
また、コントローラ40の入力側には、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の温度Thp1を検出するための高圧冷媒温度センサ41と、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の圧力Php1を検出するための高圧冷媒圧力センサ42と、冷媒流通路20kを流通する高圧冷媒の温度Thp2を検出するための低圧冷媒温度センサ43と、冷媒流通路20kを流通する冷媒の圧力Php2を検出するための低圧冷媒圧力センサ44と、空気流通路11の吸熱器14の上流側を流通する空気の温度Tを検出するための吸気温度センサ45と、吸熱器14の下流側を流通する空気の温度Tcを検出するための冷却空気温度センサ46と、冷媒流通路20iの圧縮機21が吸入する冷媒の温度を検出するための吸入冷媒温度センサ47と、冷媒流通路20iの圧縮機21が吸入する冷媒の圧力を検出するための吸入冷媒圧力センサ48と、冷媒流通路20aの圧縮機21が吐出する冷媒の圧力を検出するための吐出冷媒圧力センサ49と、冷媒流通路20aの放熱器15に流入する冷媒の温度を検出するための流入冷媒温度センサ50と、冷媒流通路20aの放熱器15に流入する冷媒の圧力を検出するための流入冷媒圧力センサ51と、冷媒流通路20fを流通する冷媒の圧力を検出する圧力センサ52と、が接続されている。
ここで、高圧冷媒温度センサ41と高圧冷媒圧力センサ42は、それぞれ別体に構成することなく一体に構成するようにしてもよい。また、吸入冷媒温度センサ47と吸入冷媒圧力センサ48は、それぞれ別体に構成することなく一体に構成するようにしてもよい。さらに、流入冷媒温度センサ50と流入冷媒圧力センサ51は、それぞれ別体に構成することなく一体に構成するようにしてもよい。
【0034】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、除湿暖房運転としての第1除湿暖房運転、内部循環除湿暖房運転としての第2除湿暖房運転、第1除霜運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0035】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁26の膨張手段側の流路を閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の流路を開放し、第1電磁弁28aを開放するとともに、第2、第3、第4電磁弁28b,28c,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図4に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,第1制御弁26の凝縮圧力調整弁側、20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20d、レシーバタンク23、冷媒流通路20e、過冷却用放熱器24、冷媒流通路20f、内部熱交換器25の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器25の低圧側、冷媒流通路20iの順に流通して圧縮機21に吸入される。
冷媒回路20を流通する冷媒は、冷房運転において、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。除湿冷房運転として図6の一点鎖線に示すようにエアミックスダンパ16が開放されると、冷媒回路20を流通する冷媒は放熱器15においても放熱する。
【0036】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を目標設定温度Tsetとするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0037】
目標吹出温度TAOは、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、日射量Ts等の環境条件を検出し、検出された環境条件と目標設定温度Tsetに基づいて算出されるものである。
【0038】
また、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0039】
除湿冷房運転において、第1制御弁26の凝縮圧力調整手段側の弁開度を調整することによって、放熱器15における冷媒の凝縮圧力が調整される。即ち、放熱器15における冷媒の凝縮圧力を調整することによって、放熱器15の放熱量が調整可能となる。
具体的には、放熱器15における冷媒の凝縮圧力は、第1制御弁26の凝縮圧力調整手段の弁開度を大きくすると低下し、弁開度を小さくすると上昇する。これにより、放熱器15の放熱量は、凝縮圧力を低下させることによって減少し、凝縮圧力を上昇させることによって増加する。
【0040】
冷房運転および除湿冷房運転において、室外熱交換器22を流通した冷媒は、レシーバタンク23を介して過冷却用放熱器24に流入する。したがって、過冷却用放熱器24に流入する冷媒は、液体の状態で車室外の空気と熱交換して過冷却の状態となる。
【0041】
暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁26の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第3電磁弁28cを開放するとともに、第1、第2、第4電磁弁28a,28b,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図5に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、第1制御弁26の膨張手段側、冷媒流通路20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20k,20iの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0042】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0043】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁26の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第2及び第3電磁弁28b,28cを開放するとともに、第1および第4電磁弁28a,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図6に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20bを順に流通する。冷媒流通路20bを流通する冷媒の一部は、第1制御弁26の膨張手段側、冷媒流通路20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20k,20iの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20bを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20j,20d、レシーバタンク23、冷媒流通路20e、過冷却用放熱器24、冷媒流通路20f、内部熱交換器25の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器25の低圧側、冷媒流通路20i、の順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器22において吸熱する。
【0044】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0045】
また、吸熱器14における冷媒は、第2制御弁27の弁開度の調整することによって、蒸発温度が調整される。即ち、吸熱器14における冷媒は、第2制御弁27の弁開度を小さくすると蒸発温度が高くなり、第2制御弁27の弁開度を大きくすると蒸発温度が低くなる。
【0046】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁26の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の両方の冷媒流路を閉鎖し、第2電磁弁28bを開放するとともに、第1、第3、第4電磁弁28a,28c,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図7に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20j,20d、レシーバタンク23、冷媒流通路20e、過冷却用放熱器24、冷媒流通路20f、内部熱交換器25の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器25の低圧側、冷媒流通路20iの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0047】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、前記第1除湿暖房運転と同様に、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。ここで、空気流通路11に流入させる空気は、車室外の空気であっても、車室内の空気であってもよい。
【0048】
除霜運転において、冷媒回路20では、第1制御弁26の膨張手段側の冷媒流路を開放して凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第3および第4電磁弁28c,28dを開放するとともに、第1および第2電磁弁28a,28bを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒の一部は、図8に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、第1制御弁26の膨張手段側、冷媒流通路20cを順に流通して室外熱交換器22に流入する。また、圧縮機21から吐出されたその他の冷媒は、冷媒流路20l,20cを流通して室外熱交換器22に流入する。室外熱交換器22から流出した冷媒は、冷媒流通路20k,20iを流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱するとともに、室外熱交換器22において放熱と同時に吸熱する。
【0049】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において放熱する冷媒と熱交換することによって加熱され、車室内に吹き出される。
【0050】
前述の各運転時には、図9の表に示すように、第1制御弁26、第2制御弁27、第1〜第4電磁弁28a,28b,28c,28dが切換えられる。
【0051】
オートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転が、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、車室外の湿度、車室内の湿度Th、日射量Ts等の環境条件や、要求される能力に基づいて切換えられる。
【0052】
また、吹出口11c,11d,11eのモードは、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって切換えられる。エアミックスダンパ16の開度は、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度が目標吹出温度TAOとなるように調整される。
【0053】
また、各運転において、各吹出口11c,11d,11eのフットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えは、目標吹出温度TAOに応じて行われる。具体的には、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にはフットモードに設定される。また、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にはベントモードに設定される。さらに、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合には、バイレベルモードに設定される。
【0054】
また、各吹出口11c,11d,11eの設定がバイレベルモードの場合に、コントローラ40は、第2除湿暖房運転を行うか否かを判定する第2除湿暖房運転判定処理を行う。このときのコントローラ40の動作を図10のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、各吹出口11c,11d,11eの設定がバイレベルモードか否かを判定する。バイレベルモードが設定されていると判定した場合にはステップS2に処理を移し、バイレベルモードが設定されていると判定しなかった場合には第2除湿暖房運転判定処理を終了する。
【0056】
(ステップS2)
ステップS1においてバイレベルモードが設定されていると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、吸気温度センサ45の検出温度Tが第1所定温度T1(例えば、10〜15℃)以上か否かを判定する。吸気温度センサ45の検出温度Tが第1所定温度T1以上であると判定した場合にはステップS3に処理を移し、吸気温度センサ45の検出温度Tが第1所定温度T1以上であると判定しなかった場合にはステップS5に処理を移す。
【0057】
(ステップS3)
ステップS2において吸気温度センサ45の検出温度Tが第1所定温度T1以上であると判定した場合に、ステップS3においてCPUは、吸気温度センサ45の検出温度Tが第2所定温度T2(例えば、20〜25℃)以上か否かを判定する。吸気温度センサ45の検出温度Tが第2所定温度T2以上の場合にはステップS5に処理を移し、吸気温度センサ45の検出温度Tが第2所定温度T2以上と判定しなかった場合(T1<T<T2)にはステップS4に処理を移す。
【0058】
(ステップS4)
ステップS3において吸気温度センサ45の検出温度Tが第2所定温度T2以上と判定しなかった場合に、ステップS4においてCPUは、第2除湿暖房運転を開始して第2除湿暖房運転判定処理を終了する。
【0059】
(ステップS5)
ステップS2において吸気温度センサ45の検出温度Tが第1所定温度以上であると判定しなかった場合、または、ステップS3において検出温度Tが第2所定温度T2以上と判定した場合に、ステップS5においてCPUは、第2除湿暖房運転を終了して第2除湿暖房運転判定処理を終了する。
【0060】
第2除湿暖房運転を行うか否かの判定は、吸熱器14の上流側を流通する空気の温度Tに基づく判定に限られず、車室外の温度に基づいて判定するようにしてもよい。
【0061】
また、除湿冷房運転時または第1除湿暖房運転時において、各吹出口11c,11d,11eの設定がバイレベルモードの場合に、吸熱器14において冷媒と熱交換した後の空気の温度に基づいて第2除湿暖房運転に切換える第2除湿暖房運転切換処理を行う。このときのコントローラ40の動作を図11のフローチャートを用いて説明する。
【0062】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、除湿冷房運転中か否かを判定する。除湿冷房運転中と判定した場合にはステップS12に処理を移し、除湿冷房運転中と判定しなかった場合にはステップS13に処理を移す。
【0063】
(ステップS12)
ステップS11において除湿冷房運転中と判定した場合に、ステップS12においてCPUは、冷却空気温度センサ46の検出温度Tcが第3所定温度Tc1以下か否かを判定する。冷却空気温度センサ46の検出温度Tcが第3所定温度Tc1以下と判定した場合にはステップS15に処理を移し、第3所定温度Tc1以下と判定しなかった場合には第2除湿暖房運転切換処理を終了する。
【0064】
(ステップS13)
ステップS11において除湿冷房運転中と判定しなかった場合に、ステップS13においてCPUは、第1除湿暖房運転中か否かを判定する。第1除湿暖房運転中と判定した場合にはステップS14に処理を移し、第1除湿暖房運転中と判定しなかった場合には第2除湿暖房運転切換処理を終了する。
【0065】
(ステップS14)
ステップS13において第1除湿暖房運転中と判定した場合に、ステップS14においてCPUは、冷却空気温度センサ46の検出温度Tcが第4所定温度Tc2以上か否かを判定する。冷却空気温度センサ46の検出温度Tcが第4所定温度Tc2以上と判定した場合にはステップS15に処理を移し、第4所定温度Tc2以上と判定しなかった場合には第2除湿暖房運転切換処理を終了する。
【0066】
(ステップS15)
ステップS12において冷却空気温度センサ46の検出温度Tcが第3所定温度Tc1以下と判定した場合、または、ステップS14において冷却空気温度センサ46の検出温度Tcが第4所定温度Tc2以上と判定した場合に、ステップS15においてCPUは、運転状態を第2除湿暖房運転に切換えて第2除湿暖房運転切換え処理を終了する。
【0067】
第2除湿暖房運転への切換えは、吸熱器14の下流側を流通する空気の温度Tcに基づく切換えに限られず、放熱器15の下流側の空気の温度の予測値に基づいて切換えるようにしてもよい。
【0068】
また、第2除湿暖房運転時には、放熱器15の下流側の空気の温度を、圧縮機21の回転数を調整することによって制御する。さらに、第2除湿暖房運転時には、吹出口11c,11d,11eの設定がバイレベルモードとなっているため、エアミックスダンパ16を所定の範囲内の開度で調整することによって車室内に供給される空気の温度が目標吹出温度TAOとなるように制御する。
このとき、圧縮機21は、冷媒回路20の高圧側の圧力、高圧側の温度、空気流通路11を流通する空気の温度、吸熱器14の下流側の空気の温度のいずれか、または、少なくともその内の一部の組み合わせに基づいて回転数が制御される。
【0069】
また、各吹出口11c,11d,11eの設定がバイレベルモードで有るか否かにかかわらず、第1除湿暖房運転と、第2除湿暖房運転と、冷房または除湿冷房運転とを切換える運転切換制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を図12のフローチャートを用いて説明する。
【0070】
(ステップS21)
ステップS21において、CPUは、第1除湿暖房運転中であるか否かを判定する。第1除湿暖房運転中であると判定した場合にはステップS22に処理を移し、第1除湿暖房運転中であると判定しなかった場合にはステップS24に処理を移す。
【0071】
(ステップS22)
ステップS21において第1除湿暖房運転中であると判定した場合に、ステップS22においてCPUは、冷却空気温度センサ46の検出温度Tcと吸熱器14の下流側の空気の目標温度TEOとの差(Tc−TEO)が所定値より大きいか否かを判定する。所定値より大きいと判定した場合にはステップS27に処理を移し、所定値より大きいと判定しなかった場合にはステップS23に処理を移す。
【0072】
(ステップS23)
ステップS22において検出温度Tcと目標温度TEOとの差(Tc−TEO)が所定値より大きいと判定しなかった場合に、または、後述するステップS26において放熱器15の下流側の空気の目標温度TCOと放熱器15の下流側の空気の推定温度THとの差(TCO−TH)が所定値よりも大きい、または、吸熱器14の下流側の空気の目標温度TEOと冷却空気温度センサ46の検出温度Tcとの差(TEO−Tc)が所定値よりも大きいと判定した場合に、ステップS23においてCPUは、第1除湿暖房運転を実行して運転切換制御処理を終了する。
【0073】
(ステップS24)
ステップS21において第1除湿暖房運転中あると判定しなかった場合に、ステップS24においてCPUは、第2除湿暖房運転中であるか否かを判定する。第2除湿暖房運転中であると判定した場合にはステップS25に処理を移し、第2除湿暖房運転中であると判定しなかった場合にはステップS28に処理を移す。
【0074】
(ステップS25)
ステップS24において第2除湿暖房運転中であると判定した場合に、ステップS25においてCPUは、冷却空気温度センサ46の検出温度Tcと吸熱器14の下流側の空気の目標温度TEOとの差(Tc−TEO)が所定値より大きいか否かを判定する。所定値より大きいと判定した場合にはステップS30に処理を移し、所定値より大きいと判定しなかった場合にはステップS26に処理を移す。
【0075】
(ステップS26)
ステップS25において冷却空気温度センサ46の検出温度Tcと吸熱器14の下流側の空気の目標温度TEOとの差(Tc−TEO)が所定値より大きいと判定しなかった場合に、ステップS26においてCPUは、放熱器15の下流側の空気の目標温度TCOと放熱器15の下流側の空気の推定温度THとの差(TCO−TH)が所定値よりも大きいか否か、または、吸熱器14の下流側の空気の目標温度TEOと冷却空気温度センサ46の検出温度Tcとの差(TEO−Tc)が所定値よりも大きいか否かを判定する。所定値よりも大きいと判定した場合にはステップS23に処理を移し、所定値よりも大きいと判定しなかった場合にはステップS27に処理を移す。
【0076】
(ステップS27)
ステップS22において検出温度Tcと目標温度TEOとの差(Tc−TEO)が所定値より大きいと判定した場合、ステップS26において目標温度TCOと推定温度THとの差(TCO−TH)が所定値よりも大きいと判定しなかった場合、ステップS26において吸熱器14の下流側の空気の目標温度TEOと冷却空気温度センサ46の検出温度Tcとの差(TEO−Tc)が所定値よりも大きいと判定しなかった場合、または、後述するステップS29において放熱器15の目標温度TCOと推定温度THとの差(TCO−TH)が所定値よりも大きいと判定した場合に、ステップS27においてCPUは、第2除湿暖房運転を実行して運転切換制御処理を終了する。
【0077】
(ステップS28)
ステップS24において第2除湿運転中であると判定しなかった場合に、ステップS28においてCPUは、冷房運転中または除湿冷房運転中であるか否かを判定する。冷房運転中または除湿冷房運転中であると判定した場合にはステップS29に処理を移し、冷房運転中または除湿冷房運転中であると判定しなかった場合には運転切換制御処理を終了する。
【0078】
(ステップS29)
ステップS28において冷房運転中または除湿冷房運転中であると判定した場合に、ステップS29においてCPUは、放熱器15の目標温度TCOと放熱器15の下流側の空気の推定温度THとの差(TCO−TH)が所定値よりも大きいか否かを判定する。所定値よりも大きいと判定した場合にはステップS27に処理を移し、所定値よりも大きいと判定しなかった場合にはステップS30に処理を移す。
【0079】
(ステップS30)
ステップS25において検出温度Tcと目標温度TEOとの差(Tc−TEO)が所定値より大きい場合、または、ステップS29において目標温度TCOと推定温度THとの差(TCO−TH)が所定値よりも大きいと判定しなかった場合に、ステップS30においてCPUは、冷房運転または除湿冷房運転を実行して運転切換制御処理を終了する。
【0080】
ここで、冷却空気温度センサ46の検出温度Tcと吸熱器14の目標温度TEOとの差の所定値、および、放熱器15の目標温度TCOと放熱器15の下流側の空気の推定温度THとの差の所定値は、それぞれ例えば2℃〜3℃の範囲内で設定される。また、ここでは、吸熱器14の下流側の空気の温度である冷却空気温度センサ46の検出温度Tcに基づいて所定値を算出しているが、吸熱器14の表面温度(フィンとフィンの間)の実測値に基づいて所定値を算出してもよい。また、ここでは、放熱器15の下流側の空気の推定温度THに基づいて所定値を算出しているが、放熱器15の下流側の空気の温度の実測値に基づいて所定値を算出してもよい。
【0081】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、冷房運転時および除湿冷房運転時には、室外熱交換器22を流通して吸熱器14において吸熱させる冷媒を過冷却用放熱器24に流通させている。また、暖房運転時には、室外熱交換器22を流通した冷媒を過冷却用放熱器24に流通させることなく、圧縮機21に吸入させている。また、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時には、放熱器15を流通して吸熱器14において吸熱させる冷媒を過冷却用放熱器24に流通させている。これにより、吸熱器14を流通する冷媒は、過冷却用放熱器24において過冷却状態となるので、運転効率を向上させることが可能となる。また、吸熱器14を流通しない冷媒は、過冷却用放熱器24を流通することなく圧縮機21に吸入されるので、圧力損失の低減を図ることが可能となり、運転効率の向上を図ることが可能となる。
【0082】
また、過冷却用放熱器24の冷媒流通方向上流側に液体の冷媒を貯留可能なレシーバタンク23を設けている。これにより、冷房運転時、除湿冷房運転時、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、余剰となる冷媒をレシーバタンク23に貯留することができるので、冷媒回路20を流通する冷媒の循環量を適正量とすることができる。
【0083】
また、圧縮機21から吐出された冷媒を直接室外熱交換器22に流入させることが可能な冷媒流通路20lを設けている。これにより、高温の冷媒を室外熱交換器22に流入させることが可能となり、室外熱交換器22に着霜した場合の除霜時間を短縮することが可能となる。
【0084】
また、室外熱交換器22には、内部に形成された冷媒通路の一端側から冷媒が流通し、流入した冷媒が他端側から流出するようにしている。これにより、冷媒回路20の回路構成が簡単となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0085】
また、室外熱交換器22、レシーバタンク23、過冷却用放熱器24、第1制御弁26、第1電磁弁28a、第2電磁弁28b、第3電磁弁28c、第1逆止弁29aおよび第2逆止弁29bを一体に形成した室外熱交換器ユニットUが構成されている。これにより、室外熱交換器ユニットUを一部品として組付けることが可能となるので、組付け工数の低減を図ることが可能となる。
【0086】
また、電子膨張弁の機能を有する膨張手段と電磁弁としての機能を有する凝縮圧力調整手段とを一体に形成した第1制御弁26を冷媒回路20に設け、冷媒流入側および冷媒流出側をそれぞれ1つの接続口としている。これにより、2種類の機能を一部品として組付けることが可能となるので、組付け工数の低減を図ることが可能となる。
【0087】
また、各吹出口11c,11d,11eの設定がバイレベルモードの場合に、吸気温度センサ45の検出温度Tに基づいて第2除湿暖房運転の開始および停止を行っている。これにより、空調の負荷が小さい条件で有効に第2除湿暖房運転を行うことができるので、エネルギー消費量の低減を図ることが可能となる。
【0088】
また、除湿冷房運転時または第1除湿暖房運転時に冷却空気温度センサ46の検出温度Tcに基づいて第2除湿暖房運転に切換えるようにしている。これにより、空調の負荷が小さい条件で有効に第2除湿暖房運転を行うことができるので、エネルギー消費量の低減を図ることが可能となる。
【0089】
また、放熱器15の下流側の空気の温度を、圧縮機21の回転数を調整することで調整し、エアミックスダンパ16の開度を調整することによって車室内に供給する空気の温度を目標吹出温度TAOとするようにしている。これにより、車室内に供給する空気を最適な温度とすることが可能となり、車室内の温湿度環境を最適に保持することが可能となる。
【0090】
図13および図14は本発明の第2実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0091】
この車両用空気調和装置の冷媒回路20は、図13に示すように、冷媒流通路20eと冷媒流通路20fを接続することによって、冷媒流通路20mが設けられている。冷媒流通路20mには、第5電磁弁28eが設けられている。また、冷媒流通路20eの冷媒流通路20mと接続部の下流側に、第6電磁弁28fが設けられている。さらに、冷媒流通路20fの冷媒流通路20mとの接続部の上流側に、第5逆止弁29eが設けられている。
【0092】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転の各運転時には、図14の表に示すように、第1制御弁26、第2制御弁27、第1〜第6電磁弁28a,28b,28c,28d,28e,28fが切換えられる。
【0093】
第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、冷媒流通路20dを流通する冷媒は、レシーバタンク23に流入した後、過冷却用放熱器24を流通することなく吸熱器14に流入する。
【0094】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、冷房運転時および除湿冷房運転時には、吸熱器14を流通する冷媒は、過冷却用放熱器24において過冷却状態となるので、運転効率を向上させることが可能となる。また、吸熱器14を流通しない冷媒は、過冷却用放熱器24を流通することなく圧縮機21に吸入されるので、圧力損失の低減を図ることが可能となり、運転効率の向上を図ることが可能となる。
【0095】
また、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、放熱器15を流出した冷媒を、過冷却用放熱器24を流通させることなくレシーバタンク23を流通させた後に吸熱器14に流入させている。これにより、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時においても、圧力損失の低減を図ることが可能となる。また、余剰となる冷媒をレシーバタンク23において貯留することができるので、冷媒回路20を流通する冷媒の循環量を適正量とすることが可能となる。
【0096】
図15および図16は本発明の第3実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0097】
この車両用空気調和装置の冷媒回路20は、図15に示すように、第2実施形態と同様に、冷媒流通路20mおよび第3逆止弁29cが設けられている。冷媒流通路20eと冷媒流通路20mとの接続部には、電磁三方弁28gが設けられている。
【0098】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転の各運転時には、図16の表に示すように、第1制御弁26、第2制御弁27、第1〜第4電磁弁28a,28b,28c,28d、電磁三方弁28gが切換えられる。
【0099】
第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、冷媒流通路20dを流通する冷媒は、レシーバタンク23に流入した後、過冷却用放熱器24を流通することなく吸熱器14に流入する。
【0100】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、冷房運転時および除湿冷房運転時には、吸熱器14を流通する冷媒は、過冷却用放熱器24において過冷却状態となるので、運転効率を向上させることが可能となる。また、吸熱器14を流通しない冷媒は、過冷却用放熱器24を流通することなく圧縮機21に吸入されるので、圧力損失の低減を図ることが可能となり、運転効率の向上を図ることが可能となる。
【0101】
また、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、放熱器15を流出した冷媒を、過冷却用放熱器24を流通させることなくレシーバタンク23を流通させた後に吸熱器14に流入させている。これにより、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時においても、圧力損失の低減を図ることが可能となる。また、余剰となる冷媒をレシーバタンク23において貯留することができるので、冷媒回路20を流通する冷媒の循環量を適正量とすることが可能となる。
【0102】
図17および図18は本発明の第4実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0103】
この車両用空気調和装置の冷媒回路20は、図17に示すように、第1実施形態の冷媒流通路20jの代わりとして、冷媒流通路20bと冷媒流通路20fの内部熱交換器の上流側を接続する冷媒流通路20nが設けられている。冷媒流通路20nには、上流側から順に第2電磁弁28b、レシーバタンク23a、第2逆止弁29bが設けられている。
【0104】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転の各運転時には、図18の表に示すように、第1制御弁26、第2制御弁27、第1〜第4電磁弁28a,28b,28c,28d、が切換えられる。
【0105】
第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、冷媒流通路20nを流通する冷媒は、レシーバタンク23aに流入した後、過冷却用放熱器24を流通することなく吸熱器14に流入する。
【0106】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、冷房運転時および除湿冷房運転時には、吸熱器14を流通する冷媒は、過冷却用放熱器24において過冷却状態となるので、運転効率を向上させることが可能となる。また、吸熱器14を流通しない冷媒は、過冷却用放熱器24を流通することなく圧縮機21に吸入されるので、圧力損失の低減を図ることが可能となり、運転効率の向上を図ることが可能となる。
【0107】
また、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、放熱器15を流出した冷媒を、過冷却用放熱器24を流通させることなくレシーバタンク23aを流通させた後に吸熱器14に流入させている。これにより、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時においても、圧力損失の低減を図ることが可能となる。また、余剰となる冷媒をレシーバタンク23aにおいて貯留することができるので、冷媒回路20を流通する冷媒の循環量を適正量とすることが可能となる。
【0108】
図19乃至図29は本発明の第5実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0109】
この車両用空気調和装置は、図19に示すように、冷媒回路60が構成されている。
【0110】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路60aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第1制御弁26の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路60bが設けられている。第1制御弁26の凝縮圧力調整手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の第1接続口が接続されることによって、冷媒流通路60cが設けられている。第1制御弁26の膨張手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の第2接続口が接続されることによって、冷媒流通路60dが設けられている。冷媒流通路60dには、第1逆止弁29aが設けられている。室外熱交換器22の第3接続口には、レシーバタンク23の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路60eが設けられている。冷媒流通路60eには、室外熱交換器22側から順に第1電磁弁28a、第2逆止弁29bが設けられている。レシーバタンク23の冷媒流出側には、過冷却用放熱器24の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路60fが設けられている。過冷却用放熱器24の冷媒流出側には、内部熱交換器25の高圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路60gが設けられている。内部熱交換器25の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路60hが設けられている。冷媒流通路60hには、膨張弁30が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器25の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路60iが設けられている。冷媒流通路60iには、第2制御弁27が設けられている。内部熱交換器25の低圧冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路60jが設けられている。冷媒流通路60jには、内部熱交換器25側から順に、第5逆止弁29e、アキュムレータ31が設けられている。また、冷媒流通路60bには、冷媒流通路60eの第1逆止弁29aとレシーバタンク23との間に接続されることによって、冷媒流通路60kが設けられている。冷媒流通路60kには、冷媒流通路60b側から順に第2電磁弁28b、第3逆止弁29cが設けられている。また、冷媒流通路60cには、冷媒流通路60jの内部熱交換器25とアキュムレータ31との間が接続されることによって、冷媒流通路60lが設けられている。冷媒流通路60lには、第3電磁弁28cが設けられている。冷媒流通路60aには、冷媒流通路60dの第1逆止弁29aの冷媒流通方向下流側に接続されることによって、冷媒流通路60mが設けられている。冷媒流通路60mには、冷媒流通路60a側から順に第4電磁弁28d、第4逆止弁29dが設けられている。
【0111】
室外熱交換器22は、図20に示すように、レシーバタンク23、過冷却用放熱器24、第1制御弁26、第1電磁弁28a、第2電磁弁28b、第3電磁弁28c、第1逆止弁29a、第2逆止弁29b、第3逆止弁29cおよび第4逆止弁29dと一体に形成され、室外熱交換器ユニットUが構成されている。
【0112】
室外熱交換器22は、冷媒流通路60cの接続口側から冷媒流通路60d,60eの接続口側に向かって冷媒の流路の断面積が小さくなるように、各ヘッダ22a内が仕切り部材22dによって仕切られている。これにより、室外熱交換器22が放熱器として機能する場合には、冷媒流通路60cから流入する冷媒が徐々に断面積が小さくなる冷媒流路を流通することから、気体の冷媒の確実に凝縮させることが可能となる。また、室外熱交換器22が蒸発器として機能する場合には、冷媒流通路60dから流入する冷媒が徐々に断面積が大きくなる冷媒流路を流通することから、蒸発して体積が大きくなる冷媒の流通が妨げられることなく、圧力損失の低減が可能となる。
【0113】
第1制御弁26は、1つの冷媒流入口に対して、膨張手段側の冷媒通路と凝縮圧力調整手段側の冷媒流路が設けられ、それぞれの冷媒流路に開度を調整するための弁体が設けられている。第1制御弁26は、図21(a)に示すように、膨張手段側が電子膨張弁26aであり、凝縮圧力調整手段側が電磁弁26bである。第1制御弁26は、図21(a)のそれぞれの弁開度の表に示すように、電子膨張弁26aの弁開度を全閉の状態から全開の状態の間で調整可能である。また、電磁弁26bは弁開度がオンオフで全閉と全開が切換えられる。
【0114】
第1制御弁26のその他の例としては、図21(b)に示すように、膨張手段側および凝縮圧力調整手段側をそれぞれの開度を任意に調整可能な、小口径弁26cと大口径弁26dとから構成してもよい。この場合、小口径弁26cおよび大口径弁26dのそれぞれの弁開度を全閉から全開の間で任意に調整可能である。
【0115】
また、第1制御弁26のその他の例として、図21(c)に示すように、全開の近傍で開度を急拡大させることが可能な小口径弁26eと大口径弁26fとから構成してもよい。この場合には、除霜運転時に冷媒の流量を大きくすることができ、除霜運転に要する時間を短縮することができる。
小口径弁26eは、図22に示すように、弁本体26e1と、弁本体26e1に対して上下方向に移動可能な弁座26e2と、弁座26e2に対して上下方向に移動可能なニードル状の弁体26e3とを有している。
小口径弁26eは、図22(a)では弁本体の冷媒流路を閉鎖している。また、図22(b)では、弁体26e3が上方に移動して冷媒流路を開放し、冷媒を流通させる。さらに、図22(c)では、弁体26e3を上方に移動させることによって弁座26e2を上方に移動させ、弁座26e2と弁本体26e1との間を開放して、さらに冷媒を流通させる。
【0116】
また、第1制御弁26には、図23に示すように、第1逆止弁29aを一体に構成するようにしてもよい。
【0117】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0118】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路60では、第1制御弁26の膨張手段側の流路を閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の流路を開放し、第1電磁弁28aを開放するとともに、第2、第3、第4電磁弁28b,28c,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図24に示すように、冷媒流通路60a、放熱器15、冷媒流通路60b,第1制御弁26の凝縮圧力調整手段側、冷媒流通路60c、室外熱交換器22、冷媒流通路60e、レシーバタンク23、冷媒流通路60f、過冷却用放熱器24、内部熱交換器25の高圧側、冷媒流通路60h、吸熱器14、冷媒流通路60i、内部熱交換器25の低圧側、冷媒流通路60jの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0119】
冷房運転および除湿冷房運転において、室外熱交換器22を流通した冷媒は、レシーバタンク23を介して過冷却用放熱器24に流入する。したがって、過冷却用放熱器24に流入する冷媒は、液体の状態で車室外の空気と熱交換して過冷却の状態となる。
【0120】
暖房運転において、冷媒回路60では、第1制御弁26の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第3電磁弁28cを開放するとともに、第1、第2、第4電磁弁28a,28b,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図25に示すように、冷媒流通路60a、放熱器15、冷媒流通路60b、第1制御弁26の膨張手段側、冷媒流通路60d、室外熱交換器22、冷媒流通路60c,60lの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0121】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路60では、第1制御弁26の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第2及び第3電磁弁28b,28cを開放するとともに、第1および第4電磁弁28a,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図26に示すように、冷媒流通路60a、放熱器15、冷媒流通路60bを順に流通する。冷媒流通路60bを流通する冷媒の一部は、第1制御弁26の膨張手段側、冷媒流通路60d、室外熱交換器22、冷媒流通路60c,60lの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路60bを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路60k,60c、レシーバタンク23、冷媒流通路60f、過冷却用放熱器24、冷媒流通路60g、内部熱交換器25の高圧側、冷媒流通路60h、吸熱器14、冷媒流通路60i、内部熱交換器25の低圧側、冷媒流通路60j、の順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0122】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路60では、第1制御弁26の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の両方の冷媒流路を閉鎖し、第2電磁弁28bを開放するとともに、第1、第3、第4電磁弁28a,28c,28dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図27に示すように、冷媒流通路60a、放熱器15、冷媒流通路60b,60k,60e、レシーバタンク23、冷媒流通路60f、過冷却用放熱器24、冷媒流通路60g、内部熱交換器25の高圧側、冷媒流通路60h、吸熱器14、冷媒流通路60i、内部熱交換器25の低圧側、冷媒流通路60jの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0123】
除霜運転において、冷媒回路60では、第1制御弁26の膨張手段側の冷媒流路を開放して凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第3および第4電磁弁28c,28dを開放するとともに、第1および第2電磁弁28a,28bを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒の一部は、図28に示すように、冷媒流通路60a、放熱器15、冷媒流通路60b、第1制御弁26の膨張手段側、冷媒流通路30dを順に流通して室外熱交換器22に流入する。また、圧縮機21から吐出されたその他の冷媒は、冷媒流路60m,60dを流通して室外熱交換器22に流入する。室外熱交換器22から流出した冷媒は、冷媒流通路60c,60jを流通して圧縮機21に吸入される。
【0124】
前述の各運転時には、図29の表に示すように、第1制御弁26、第2制御弁27、第1〜第4電磁弁28a,28b,28c,28dが切換えられる。
【0125】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、冷房運転時および除湿冷房運転時には、吸熱器14を流通する冷媒は、過冷却用放熱器24において過冷却状態となるので、運転効率を向上させることが可能となる。また、吸熱器14を流通しない冷媒は、過冷却用放熱器24を流通することなく圧縮機21に吸入されるので、圧力損失の低減を図ることが可能となり、運転効率の向上を図ることが可能となる。
【0126】
また、室外熱交換器22には、内部に形成された冷媒通路の一端側から放熱させる冷媒が流入し、流入して放熱した冷媒が他端側から流出するとともに、冷媒通路の他端側から吸熱させる冷媒が流入し、流入して吸熱した冷媒が一端側から流出するようにしている。これにより、室外熱交換器22において、冷媒を凝縮させる場合および冷媒を蒸発させる場合のそれぞれにおいて、冷媒が最適な状態で流通する冷媒流路を形成することが可能となる。したがって、室外熱交換器22において冷媒を凝縮させる際の凝縮性能の向上を図ることができる。また、室外熱交換器22において冷媒を蒸発させる際に生じる圧力損失を低減することが可能となる。
【0127】
図30および図31は本発明の第6実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0128】
この車両用空気調和装置の冷媒回路60は、図30に示すように、第5実施形態の冷媒流通路60kの代わりとして、冷媒流通路60bと冷媒流通路60gの内部熱交換器25の上流側を接続する冷媒流通路60nが設けられている。冷媒流通路60nには、上流側から順に第2電磁弁28b、レシーバタンク23a、第2逆止弁29bが設けられている。
【0129】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転の各運転時には、図31の表に示すように、第1制御弁26、第2制御弁27、第1〜第4電磁弁28a,28b,28c,28d、が切換えられる。
【0130】
第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、冷媒流通路60nを流通する冷媒は、レシーバタンク23aに流入した後、過冷却用放熱器24を流通することなく吸熱器14に流入する。
【0131】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、冷房運転時および除湿冷房運転時には、吸熱器14を流通する冷媒は、過冷却用放熱器24において過冷却状態となるので、運転効率を向上させることが可能となる。また、吸熱器14を流通しない冷媒は、過冷却用放熱器24を流通することなく圧縮機21に吸入されるので、圧力損失の低減を図ることが可能となり、運転効率の向上を図ることが可能となる。
【0132】
また、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時において、放熱器15を流出した冷媒を、過冷却用放熱器24を流通させることなくレシーバタンク23aを流通させた後に吸熱器14に流入させている。これにより、第1除湿暖房運転時および第2除湿暖房運転時においても、圧力損失の低減を図ることが可能となる。また、余剰となる冷媒をレシーバタンク23aにおいて貯留することができるので、冷媒回路60を流通する冷媒の循環量を適正量とすることが可能となる。
【0133】
尚、前記実施形態では、冷媒回路20,60に内部熱交換器25を設けたものを示したが、内部熱交換器25が設けられていないものであっても、前記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0134】
また、前記実施形態では、第1制御弁26を電子膨張弁の機能を有する膨張手段と電磁弁としての機能を有する凝縮圧力調整手段とを一体に形成したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、冷媒流出側を一方または他方に切換え可能な三方弁と、冷媒流出側の一方に設けられた膨張弁とから構成するようにしてもよい。
【0135】
また、膨張弁30として温度膨張弁を適用したものを示したが、これに限られるものではなく、電子膨張弁であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
10…空調ユニット、11…空気流通路、14…吸熱器、15…放熱器、20…冷媒回路、21…圧縮機、22…室外熱交換器、23,23a…レシーバタンク、24…過冷却用放熱器、26…第1制御弁、27…第2制御弁、28a,28b,28c,28d…第1〜第4電磁弁、29a,29b,29c,29d,29e…第1〜第5逆止弁、30…膨張弁、40…コントローラ、60…冷媒回路。
図1
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