(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置決め手段は、前記セル構造体の内部にセル構造部を有する部分の外周部に、1個以上形成されたガイドとなる凸状または凹状の係合部と、前記セル構造体のセル構造部より流体流通軸方向上流側または下流側の少なくとも一方に前記ガイドに対応する凹凸状に形成された係合部と、を含み、これら係合部相互の係合により前記複数のセル構造体相互を流体流通軸周り方向に位置決めする構成としたことを特徴とする請求項1に記載の消音器。
前記位置決め手段は、セル構造体のセル構造部より流体流通軸方向上流側または下流側の少なくとも一方の外周部を延長して形成された部分の先端を凸状または凹状とした係合部を、当該セル構造体に連結されるセル構造体の対応する部分と係合させることにより、前記複数のセル構造体相互を流体流通軸方向に位置決めする構成とする一方、前記流体経路に設置後は、該流体経路の内壁と当該消音器の外壁により、前記係合部の流路断面径方向の動きが規制されるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の消音器。
前記複数のセル通路により構成されているセル構造体の一部に他のセル通路より大きい流路断面積を持ってバイパス通路として機能するセル通路が配置され、流入面側は、該バイパス通路として機能するセル通路に向かって流体流通方向の下流側に傾斜する構成としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の消音器。
前記セル構造体は、筒状内部に内周面から中心軸に向かって放射状に形成された複数のフィンを有し、隣り合うフィンとの間をセル通路とした樹脂部品により形成される構成としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の消音器。
形成された複数のフィンの流路断面形状は、前記セル構造体の外周部と、当該消音器の中心軸とを結ぶ任意の直線について対称となる構成としたことを特徴とする請求項5に記載の消音器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記ハニカムを含むセル構造体の脈動低減効果は、セル通過時の摩擦損失により圧力変動が減衰するためである。摩擦損失量は、水力平均深さ(=セルの断面積/セルの周長さ)に反比例し、全長に比例する。セル経路を形成するセル格子(ハニカム格子部やフィン部)は、開口率維持のため薄く成形するのが望ましい。
【0007】
しかし、特許文献1の場合、ハニカムセルによる脈動低減効果を強くするため、極端にセル径を狭めると、異物のつまりの問題や、また成形が難しくなりコストも高くなる。従って実際にハニカムセルを消音器として、エアコンシステム回路に組み込む場合、セル径は、大よそ0.7mm程度が限界である。従って、それ以上の脈動低減効果を必要とする場合は、全長を長くし、摩擦損失量を増加させる必要がある。しかし、ハニカムセルの全長の変更(特に全長を伸ばす場合)には、生産工程の大幅な変更が必要であり、生産性、コストが悪化する。
【0008】
一方、筒状内部に複数のフィンを有するフィンタイプのセル構造体の場合においても、フィンの本数を多くすると脈動低減効果が高まるが、フィン部の流路断面積に占める割合が多くなり開口率が低下してしまう。従って、フィン部は薄くするのが望ましい。
【0009】
また、フィンタイプのセル構造体の作成に関してはコストを重要視した場合、射出成形による一体成形が考えられるが、その場合、フィンを薄く、間隔を狭めるのには限界がある(形状にもよるが、量産性を考慮すると厚さは100μm、フィンの間隔は、400μm程度が限界)。従って、セル構造体の脈動低減効果を更に強める場合は、ハニカムセルと同様に全長を長くし摩擦損失量を増加させる必要がある。
【0010】
しかし、フィンが長くなるに従い、成形時の金型平均内圧は高くなる。射出成形機の必要型締力は、「投影面積×金型平均内圧」に比例するため、フィンが長くなるに従い大型の射出成形機が必要となりコストが上昇してしまう。特に、流路断面積の大きい吸入側の配管にセル構造体を設置する場合、投影面積が大きくなるので、フィンが長いと更に成形機が大型になる。また、金型平均内圧が高いと、フィン部形成のための金型駒が変形しやすくなり、フィン部の寸法精度の低下や、最悪の場合型の破損が起きる可能性がある。この点に関しても、歩留まりの低下、型寿命の低下によりコストが上昇する。
【0011】
セル構造体の全長を長くする方法としては複数のセル構造体を直列に設置する方法があるが、この場合、隣り合うセル構造体の位相のずれが問題となる。位相のずれは、開口率の低下を招き通過流量を減少させる。また、セルつなぎ目の不連続部分における剥離による損失変化により、製品間の特性のバラツキが大きくなる。特に、セルを構成する格子部分の厚い樹脂製のセル構造体の場合、これらの影響が強くなる。
【0012】
また、例えば、圧縮機の吸入経路に複数のセル構造体を直列に設置する場合、一つ一つ設置すると、取り付け工数の増加によりコストが増加する。
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、簡易な方法で、直列に配置された複数のセル構造体の位相を合わせて連結し一体化させることにより、脈動低減特性の向上と低コスト化を両立させた消音器とそれを用いた圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る消音器は、圧力変動を伴う流体が流通する流体経路に設置され、内部の流体流路断面が複数の並列なセル通路に区画されたセル構造部を含んで構成される消音器であって、以下の特徴的な構成を有する。
【0014】
セル構造部を有する複数のセル構造体を、流体流通軸方向に直列に連結して1部品とする。
前記複数のセル構造体相互を、連結位置にて流体流通軸方向及び流体流通軸周り方向に位置決めする位置決め手段を有する。
【0015】
また、本発明に係る圧縮機は、上記構成を有した消音器を、冷媒吸入経路の途中、又は冷媒吐出経路の途中に設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る消音器によれば、複数のセル構造体を流体流通軸方向に直列に連結して全長を長くすることにより、水力平均深さを小さくして、より消音効果を高めることができる。また、通常樹脂で形成されるセル構造体を射出成形機で成形する場合、射出成形機の必要型締力を大きく引き下げることができ、その結果、小型の射出成形機で金型の変形を抑制しつつ寸法精度の高いセル構造体を低コストで製造することができる。
【0017】
また、複数のセル構造体の連結と同時に流体流通方向の軸方向及び軸周りに位置決めされることにより、当接するセル構造体のつなぎ目の不連続部分をなくすように連結させることができ、該不連続部分における剥離による損失量のばらつき、また開口率の低下を抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る圧縮機によれば、上記構造の消音器を冷媒吸入経路の途中、又は冷媒吐出経路の途中の少なくとも一方に設置することにより、脈動発生源である圧縮機内で脈動を減衰できるため、脈動の他のコンポーネント(吸入経路設置の場合は、エバポレータ、吐出経路設置の場合は、コンデンサ)への伝達をより低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る圧縮機(特に可変容量斜板式圧縮機)の縦断面図である。
【0021】
図1に示す可変容量斜板式圧縮機100は、後述する駆動軸106の軸線と同軸の所定円周上に所定間隔を隔てて配設された複数のシリンダボア101aを備えたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端に設けられた比較的深い有底筒状のフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端に対峙して配設されたバルブプレート103と、シリンダブロック101の前記他端と協働してバルブプレート103を挟持する比較的浅い有底筒状のシリンダヘッド104とを備えている。
【0022】
シリンダブロック101とフロントハウジング102とによって画成されるクランク室105内を横断して駆動軸106が設けられ、駆動軸106に斜板107が装着されている。斜板107は、駆動軸106に固着されたロータ108と連結部109を介して結合し、駆動軸106に対して傾角可変となっている。
【0023】
シリンダブロック101のシリンダボア101a内には、片頭型のピストン110が頭部をシリンダヘッド104側に向けて往復動自在に挿入配置されている。ピストン110頭部と反対側の端部にはコ字状の窪みが形成され、この窪み内に斜板107の外周部が収容され、これによりピストン110と斜板107とが連動する構成となっている。従って、駆動軸106の回転によりピストン110がシリンダボア101a内を往復動することが可能となる。
【0024】
シリンダヘッド104には、吸入室119及び吐出室120が区画形成され、吸入室119は、シリンダヘッド104の径方向の中心側(駆動軸106の軸線の延長上)に配置され、吐出室120は、シリンダヘッド104の径方向の外側に吸入室119を取り囲むように環状に配置されている。
【0025】
バルブプレート103には、シリンダボア101a(ピストン110による圧縮室)とシリンダヘッド104側の吸入室119とを連通する吸入孔(図示省略)と、シリンダボア101a(ピストン110による圧縮室)とシリンダヘッド104側の吐出室120とを連通する吐出孔(図示省略)とが形成され、吸入孔及び吐出孔にはそれぞれ一方向弁からなる吸入弁及び吐出弁(図示省略)が設けられている。
【0026】
シリンダヘッド104にはまた、シリンダヘッド104の上側の側部に開口してエアコンシステムの低圧側冷媒回路と接続される吸入ポート104aと、吸入ポート104aと吸入室119とを連通する吸入通路104bとが形成されている。
【0027】
また、エアコンシステムの高圧側冷媒回路と接続される吐出ポート122aと、吐出ポート122aと吐出室120とを連通する吐出通路122bとが設けられるが、吐出ポート122aは、シリンダブロック101の上側の側部に開口するように形成され、吐出通路122bは、シリンダブロック101、バルブプレート103及びシリンダヘッド104に跨って形成されている。
【0028】
この可変容量斜板式圧縮機100では、駆動軸106の回転を変換機構としての斜板107によりピストン110の往復運動に変換して、冷媒を吸入・吐出する。すなわち、シリンダヘッド104側と反対側へ移動するピストン110により、そのシリンダボア(圧縮室)101a内に吸入室119内の冷媒を吸入し、シリンダヘッド104側へ移動するピストン110により、そのシリンダボア(圧縮室)101a内の冷媒を圧縮して吐出室120へ吐出する。
【0029】
そして、かかる吸入・吐出動作に伴って、吸入室119には、エアコンシステムの低圧側冷媒回路から、吸入ポート104a及び吸入通路104bを介して、冷媒が流入し、吐出室120からは、吐出通路122b及び吐出ポート122aを介してエアコンシステムの高圧側冷媒回路に冷媒が送給される。
【0030】
この可変容量斜板式圧縮機100では、前述のように、駆動軸106の回転を変換機構としての斜板107によりピストン110の往復運動に変換して、冷媒を吸入・吐出するが、斜板107の傾角により、ピストン110のストロークを変化させて、吐出容量を変化させることができ、斜板107の傾角は、クランク室105の圧力により変更される。すなわち、全ピストン110の前後の圧力差によるモーメントにより、斜板107の傾角が変化することから、クランク室105の圧力により斜板107の傾角を任意に制御可能である。
【0031】
この制御のため、吐出室120とクランク室105とを連通する給気通路(図示省略)と、クランク室105と吸入室119とを連通する抽気通路(図示省略)とが設けられ、前記給気通路には流量調整用の制御弁(図示省略)が設けられ、前記抽気通路には流量規制用のオリフィス(図示省略)が設けられている。
【0032】
従って、前記制御弁の開度調整によりクランク室105の圧力が変化し、これにより斜板107の傾角が変化して吐出容量が変化可能となっている。尚、前記制御弁には吸入室119の圧力が導かれており、前記制御弁は吸入室119の圧力が所定の圧力を維持するようにクランク室105への吐出ガス導入量を調整している。
【0033】
次に、冷媒の流通経路(冷媒を吸入又は吐出する経路)に設置される脈動低減装置としての消音器について説明する。
図1〜
図8に示される第1の実施形態では、シリンダヘッド104の吸入通路104bに、消音器300が設置されている。すなわち、吸入通路104bは、シリンダヘッド104内の吸入室119からシリンダヘッド104の端壁104fの内面に沿って径方向外方へ延在し、吸入ポート104aに連通しているが、ここに吸入通路104bを複数の並列なセル通路に区画するセル構造部を含む消音器300が配置されている。
【0034】
消音器300は、2つのセル構造体301及びセル構造体302を、流体(冷媒)流通軸方向に直列に連結して一体化されている。なお、後述するように、セル構造体301を上流側、セル構造体302を下流側として吸入通路104bに設置される。
【0035】
本実施形態において、消音器300を構成するセル構造体301,302は、樹脂製の成形品とする。材料は、本実施形態の様に温度の低い吸入ガスが流れる吸入通路にセル構造体を設置する場合、耐熱性は特に求められないので耐冷媒性を有していればよく、安価なナイロンに代表されるポリアミド樹脂で成形する。また、強度が必要な場合は、ガラス繊維等を混入させ調整する。成形方法については、安価に生産するため、射出成形による一体成形とする。
【0036】
セル構造体301,302の形状寸法の設計に関しては、吸入通路に設置する場合、例えば、内径を13〜18mm程度に設定する。後述するフィンに関しては、薄く、枚数が多いほうが望ましいが、実際の射出成形による量産性を考えるとフィンの薄さは、最薄部で例えば100〜500μmとし、枚数は求められる脈動低減効果、性能低下の許容値により変わるが、大よそ12〜48枚の間で調整する。セル構造体301、302ともにセル部の全長は、例えば、20mm程度とし、消音器300は、全長40mm程度のセル部を持つ形状とする。
【0037】
セル構造体301,302には、
図5に示すように、それぞれ円筒体303の内周面から中心軸に向かって放射状にフィン304を成形し、隣合うフィン304’間にセル通路305を形成している。また、各フィン304の中心軸側の先端を中心軸より所定長さだけ手前に位置させて、消音器300の中心部に、他のセル通路305より大きい断面積を有するセル通路を、他のセル通路305をバイパスして消音器300の流入側と流出側を連通させるバイパス通路306として形成している。
【0038】
また、上流側のセル構造体301におけるフィン304の上流端面によって形成される冷媒流入面は、バイパス通路306に向かって下流側に傾斜させて形成されている。これら円筒体303とフィン304とによってセル通路305及びバイパス通路306を有した部分がセル構造部となる。
【0039】
セル構造体301,302は、
図6(A),(B)に示すように、それぞれセル構造部を構成する円筒体303の外周部に、係合の向きを中心軸と平行な方向に規制するガイドとなる複数(図では4個)の溝(凹部)307が周方向等間隔で断続的に形成され、各溝307に隣接し、溝307に対して凸な凸部308が溝307と同一の周方向長さを有して形成されている。つまり円筒体303の中心軸に対して360/8=45度の円周角毎に、溝307と凸部308とが交互に形成されている(
図8参照)。
【0040】
また、セル構造体301,302の4個ずつの凸部308は、それぞれ軸方向の一方(吸入通路104bへの装着時において、セル構造体301は下流方向、セル構造体302は上流方向)に延長して形成され、これら延長部308aが、連結される相手方のセル構造体の溝307と係合する。さらに、各延長部308aの先端部には、内側(中心軸側)に突出する爪部309が形成されている。
【0041】
また、上流側のセル構造体301の各凸部308に延長部308aとは軸方向反対側に連なる4箇所の上流端部には、外径側に突出するフランジ部310を有する一方、溝307形成部分の上流端部は、上記フランジ部310の高さ分を除いた形状として下流側のセル構造体302の爪部309を係合させるようになっている。
【0042】
一方、下流側のセル構造体302の下流端部は、該セル構造体302が装着される吸入通路104bに収まるように、セル構造体301の形状からフランジ部310を除いた形状を有している。したがって、1つの金型で上流側のセル構造体301と同形状のセル構造体を製造し、下流側のセル構造体302は、
図7に示すように、セル構造体301の円筒体303のフランジ部を有した部分301aを切り落として形成することができる。なお、フランジ部310は、樹脂成形する際のゲート部に連なる部分をそのまま利用して形成できる。また、セル構造体301でも成形後にランナーを除去するため、フランジ部の上端面を切り落とす必要があるので、セル構造体301,302で切り落とし位置が相違するだけで、特に工程が増えることもない。なお、上流側のセル構造体301もフランジ部を切除してもよいが、フランジ部310の端面と、隣接するセル構造体302の爪部309の端面との位置を一致させることにより、冷媒流入口となる周面部分が面一となるので、冷媒流入時の乱れを抑制することができる。
【0043】
そして、セル構造体301,302を、それぞれの凸部308の延長部308a及び爪部309を他方のセル構造体の溝307に嵌合してガイドさせ、セル構造部同士が接近する方向に押し込んでいくと、各セル構造部の溝307より内側の円筒体303端面同士が当接すると同時に、セル構造体301,302の一方の爪部309が他方のセル構造体の円筒体303端部に係合し、これにより、セル構造体301,302相互の軸方向の動きが規制されて軸方向に位置決め固定され、1部品の消音器300となる。
【0044】
また、凸部の延長部308aと溝307とは、周方向の幅が同一長さに形成されて隙間無く嵌合し、これにより、セル構造体301,302相互の軸周り方向の動きが規制されて軸周り方向に位置決めされる。
【0045】
さらに、上記のようにセル構造体301,302相互を連結して軸周り方向に位置決めされたときに、各セル構造体301,302のフィン304同士の中心軸周り回転位相(流路断面における座標)が一致するように、形成されている。すなわち、
図8に示すように、溝307の周方向中心と円筒体303の中心軸とを結ぶ軸線311a,311c、及び凸部308の周方向中心と中心軸とを結ぶ軸線311b,311dに対して、それぞれ対称であるように形成され、どの凸部の延長部308aとどの溝307とを係合させてもフィン304の位相が一致するように形成してある。より具体的には、本実施形態では、凸部308及び溝307を4個ずつ、フィン304の数を凸部308又は溝307の数(4個)の倍数(24個)、等間隔に形成している。
【0046】
上記のようにセル構造体301,302相後を軸方向と周方向に位置決めして一体に連結された消音器300が、圧縮機の吸入通路104bに挿入される。ここで、吸入通路104bは、消音器300の外周形状と同一の円筒形状を有しているため、爪部308の径方向への動きが吸入通路104bの内壁によって規制され、装着後にセル構造体301,302相互が離脱することを抑制でき、振動等によるガタツキを生じることもなく安定して装着される。
【0047】
以上示した第1実施形態にかかる構造の消音器300によれば、複数のセル構造体を流体流通軸方向に直列に連結して全長を長くすることにより、水力平均深さを小さくして、より消音効果を高めることができる。また、セル構造部を有する消音器を1部材で形成する場合に比較し、セル構造部の軸長を略半減した2部材で形成することにより、射出成形機の必要型締力を大きく引き下げることができる。これにより、小型の射出成形機で金型の変形を抑制しつつ寸法精度の高いセル構造体を低コストで製造することができる。
【0048】
また、複数のセル構造体を軸方向と軸周り方向に位置決めして一体化した構造としたため、消音器の圧縮機への組み付けを容易に行えると共に、連結後のセル構造体相互間の繋ぎ目部分の不連続部分を無くすように連結させることができる。その結果、不連続部分における剥離による損失、開口率の低下を抑制することができ、圧縮機の作動効率を良好に維持して車両エンジンの燃費の悪化を抑制できる。
【0049】
また、本実施形態では、セル構造体の円筒体外周部に溝307を形成すると共に、凸部の延長部308aを形成して、両者を係合させる構成としたことにより、溝307で延長部308aをガイドする機能を兼有させつつ、係合と同時に軸周りの位置決めを行うことができる。なお、円筒体外周部から軸方向に延長した延長部の内周側に凹部(溝)を形成し、この凹部を他方のセル構造体の円筒体外周部に形成した凸部に係合させるような構造としてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、延長部308aの先端部に爪部309を形成したことにより、径方向に伸縮させて他方のセル構造体の端縁部に係合させ、軸方向に位置決めすることができる。さらにこの構成により、流入経路である吸入通路104bの内周壁と消音器300(爪部309)の外壁とにより、係合部分の径方向の動きが規制される。これにより、消音器300は一度設置されると、係合部分が外れることが無く、消音器300の分裂を防止できる。なお、延長部の先端部内周側に凹部を設け、他方のセル構造体の端縁部に外側に凸な凸部を設けて、これらを係合させる構成としてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、フィン304相互間に形成されるセル通路305より断面積の大きなバイパス通路306を設け、冷媒流入面をバイパス通路306に向かって下流側に傾斜させる構造としたため、冷媒流入面に流れてきたセル通路305の幅より大きな固形異物を該傾斜に沿ってバイパス通路306に流し込み、流入面への異物の滞留を抑制しつつ、開口率の低下を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、消音器300を円筒形状で筒状内部に内周面から中心軸に向かって放射状に形成された複数のフィン304を持つ形状とし、隣り合うフィン304の間をセル通路305とするセル構造部を内包する形状としたため、樹脂による射出成形が容易にでき消音器のコスト低減が可能となる。ただし、本発明は、この他、セル通路を格子状等で区画形成したハニカム構造のセル構造部を有する消音器にも適用できる。
【0053】
また、本実施形態では、フィン304と、溝307及び凸部の延長部308aとの係合部分との位置を対称としたことにより、係合の向き(軸周り位置)を指定することなく、フィンの位相を一致させることができるため、組み立て時の作業効率が向上し、コストを低減できる。また、対称な形状とすることで成形も容易となってコストを低減できる。ただし、特定の係合部と係合溝を係合させたときにフィンの位相が一致するように形成されていてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、上記のようにセル構造体301,302を共通の金型を用いて樹脂成形できるようにしたため、製造効率が向上し、金型の製造コストも軽減される。
また、本実施形態では、上記構成の消音器300を圧縮機の吸入通路104bに装着したことにより、脈動発生源である圧縮機内で吸気脈動を減衰でき、吸気脈動の他のコンポーネント(例えば、エバポレータ)への伝達をより低減できる。
【0055】
図9、
図10は、第2の実施形態を示し、消音器400を構成するセル構造体401、402の互いに接する面のフィン403,404を、一段内側に短くすることにより、消音器400の内側に上流側及び下流側のセル通路より十分断面積の大きい空洞部を形成し、該空洞部を膨張型マフラー室405として設置する。
【0056】
第2の実施形態によれば、膨張型マフラー室405の介在によって流体(冷媒)が消音器内で圧縮した後、膨張し、再度圧縮されるというマフラー機能が加わることにより、消音器400の脈動低減効果が向上する。
【0057】
また、膨張型マフラー室405は、予め金型によって空洞部を有して形成されたセル構造体401,405相互を結合するだけで設置することができ、マフラー部材を新たに設置する必要もないため特別なコスト上昇もない。
【0058】
第1実施形態及び第2実施形態では、圧縮機の吸入経路にセル構造体を設置したものを示したが、第3実施形態では、
図11に示す様に、吐出脈動低減のため吐出経路にセル構造体を設置したものを示す。
【0059】
すなわち、シリンダヘッド104側の吐出室120とシリンダブロック101側の吐出ポート122aとを接続する吐出通路122bに消音器500を設置している。図では、第1の実施形態と同形状の消音器500を設置しているが、膨張型マフラー室を有する第2の実施形態と同形状の消音器を設置してもよいことは勿論である。
【0060】
尚、消音器500は、シリンダブロック101とバルブプレート103とで挟み込んで固定している。固定方法としては、他にスナップリング等による固定方法も考えられる。
また、本実施形態では、第1の実施形態(または第2の実施形態)と同形状の樹脂製消音器を用いているが、環境温度が100℃以上になる可能性のある吐出室に設置する場合、材料には耐冷媒性がありかつ耐熱性の高いPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)や液晶ポリマー樹脂等を用い成形するのが望ましい。
【0061】
また、圧縮機内の吐出経路に設置する場合、経路が吸入経路と比べ細いことと、レイアウト上の制約のため、設置する消音器500の流路直径は、5〜13mm程度で設計することとなる。
【0062】
本実施形態のように、吐出脈動低減のため、吐出経路に本消音器を設置したものでも同様の脈動低減効果を得ることができ、脈動の他のコンポーネント(例えば、コンデンサ)への伝達をより低減できる。
【0063】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、圧縮機として可変容量斜板式圧縮機を例に記述したが、固定容量斜板式圧縮機、電動圧縮機でも同様の効果が得られる。また圧縮方式に関しても、斜板方式を含む往復動圧縮機のほか、スクロール方式、ベーン方式でも同様の効果が得られる。