(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944175
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】タイヤ用部材の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/46 20060101AFI20160621BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
B29D30/46
B26D3/00 601F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-24250(P2012-24250)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-159075(P2013-159075A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知之
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−088271(JP,A)
【文献】
特開2010−105204(JP,A)
【文献】
特開2010−264518(JP,A)
【文献】
特開2012−106332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00 − 30/72
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のピッチで配列されたタイヤコードと前記タイヤコードと略直角方向に織り合わされた横糸とで構成されるすだれ織物をトッピングゴムで被覆することにより形成された幅広のトップ反を、所定本数の前記タイヤコード毎に切断して複数本の幅狭のタイヤ用部材を製造するタイヤ用部材の製造装置であって、
チョークが前記トップ反の幅方向に移動自在に配置され、前記タイヤコードにより形成された前記トップ反の凹凸状の表面の凸部にチョーク粉を付着させて前記凸部に白色マークを付す白色チョーク線引き手段と、
トップ反の幅方向に移動しながら前記白色マークを順次検知して前記白色マークの個数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段による前記白色マークのカウントが所定数に達した際に、前記白色マークに有色レーザーを照射して所定本数の前記タイヤコードを表示するレーザー照射手段と、
フローティングナイフが前記トップ反の幅方向に移動自在に配置され、前記トップ反の切断時に、前記レーザー照射手段により照射された前記タイヤコードと照射されない前記タイヤコードとの間に前記フローティングナイフを入れた状態で前記トップ反を搬送することにより、前記フローティングナイフが前記タイヤコードに沿いながら、所定本数の前記タイヤコード毎に前記トップ反を切断する切断手段と
を備えていることを特徴とするタイヤ用部材の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ用部材の製造装置を用いたタイヤ用部材の製造方法であって、
前記チョークを移動させて前記トップ反の表面の凸部にチョーク粉を付着させてマークを付す白色チョーク線引き工程と、
トップ反の幅方向に移動しながら前記白色マークを順次検知して前記白色マークの個数をカウントするカウント工程と、
前記白色マークのカウントが所定数に達した際に、前記白色マークに有色レーザーを照射して所定本数の前記タイヤコードを表示するレーザー照射工程と、
前記トップ反の切断時に、前記レーザー照射手段により照射された前記タイヤコードと照射されない前記タイヤコードとの間に前記フローティングナイフを入れた状態で前記トップ反を搬送することにより、前記フローティングナイフが前記タイヤコードに沿いながら、所定本数の前記タイヤコード毎に前記トップ反を切断する切断工程と
を備えていることを特徴とするタイヤ用部材の製造方法。
【請求項3】
前記トップ反を切断して大割を形成した後、前記大割を切断して前記タイヤ用部材を製造することを特徴とする請求項2に記載のタイヤ用部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広のトップ反を切断することにより幅狭のタイヤ用部材(繊維コードバンド)を製造するタイヤ用部材の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの各種部材の1つとして、タイヤの耐久性、走行安定性を向上させるために、多数本のタイヤコードが所定のピッチで配列されたタイヤコード配列体の表裏をトッピングゴムにより被覆したタイヤ用部材が使用されている。
【0003】
このようなタイヤ用部材は、所定のピッチで配列された多数本のタイヤコードと前記タイヤコードと略直角方向に織り合わされた横糸とで構成されるすだれ織物の裏表をトッピングゴムで被覆することにより、幅広のトップ反を製造した後、このトップ反を所定本数のタイヤコード毎にカッタで切断することにより製造される。
【0004】
しかし、トップ反のタイヤコードの配列間隔は均一ではなく、タイヤコード自体も蛇行するなどしている。このため、カッタをトップ反の幅方向で固定した状態でトップ反を搬送することにより、トップ反を一定の幅で切断した場合には、タイヤコードが切断され、タイヤ用部材のタイヤコードの本数にバラツキが生じ、一定本数のタイヤコードを有するタイヤ用部材が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、トップ反の表面にタイヤコードにより形成される凹凸をレーザースキャンにより検出する方法が提案されていたが、トップ反の表面の凹凸を検出するだけでは、カッタの切断位置の設定誤差が多く発生するため、狙いのタイヤコードの本数にならないという問題があった。
【0006】
そこで、トップ反のタイヤコードの配列体内に、識別コードをタイヤ用部材の幅に合わせた間隔で混在させる技術が提案されていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−321290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この技術により所定本数のタイヤコードを有するタイヤ用部材を高精度で製造できるようになったが、識別コードを混在させる必要があったため、生産性が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、識別コードを設けることによる生産性の低下を防ぐことができ、所定本数のタイヤコードを有するタイヤ用部材を高精度で製造することができるタイヤ用部材の製造装置および製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
所定のピッチで配列されたタイヤコードと前記タイヤコードと略直角方向に織り合わされた横糸とで構成されるすだれ織物をトッピングゴムで被覆することにより形成された幅広のトップ反を、所定本数の前記タイヤコード毎に切断して複数本の幅狭のタイヤ用部材を製造するタイヤ用部材の製造装置であって、
チョークが前記トップ反の幅方向に移動自在に配置され、前記タイヤコードにより形成された前記トップ反の凹凸状の表面の凸部にチョーク粉を付着させて前記凸部に白色マークを付す白色チョーク線引き手段と、
トップ反の幅方向に移動しながら前記白色マークを順次検知して前記白色マークの個数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段による前記白色マークのカウントが所定数に達した際に、前記白色マークに有色レーザーを照射して所定本数の前記タイヤコードを表示するレーザー照射手段と、
フローティングナイフが前記トップ反の幅方向に移動自在に配置され、前記トップ反の切断時に、前記レーザー照射手段により照射された前記タイヤコードと照射されない前記タイヤコードとの間に前記フローティングナイフを入れた状態で前記トップ反を搬送することにより、
前記フローティングナイフが前記タイヤコードに沿
いながら、所定本数の前記タイヤコード毎に前記トップ反を切断する切断手段と
を備えていることを特徴とするタイヤ用部材の製造装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のタイヤ用部材の製造装置を用いたタイヤ用部材の製造方法であって、
前記チョークを移動させて前記トップ反の表面の凸部にチョーク粉を付着させてマークを付す白色チョーク線引き工程と、
トップ反の幅方向に移動しながら前記白色マークを順次検知して前記白色マークの個数をカウントするカウント工程と、
前記白色マークのカウントが所定数に達した際に、前記白色マークに有色レーザーを照射して所定本数の前記タイヤコードを表示するレーザー照射工程と、
前記トップ反の切断時に、前記レーザー照射手段により照射された前記タイヤコードと照射されない前記タイヤコードとの間に前記フローティングナイフを入れた状態で前記トップ反を搬送することにより、
前記フローティングナイフが前記タイヤコードに沿
いながら、所定本数の前記タイヤコード毎に前記トップ反を切断する切断工程と
を備えていることを特徴とするタイヤ用部材の製造方法である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
前記トップ反を切断して大割を形成した後、前記大割を切断して前記タイヤ用部材を製造することを特徴とする請求項2に記載のタイヤ用部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、識別コードを設けることによる生産性の低下を防ぐことができ、所定本数のタイヤコードを有するタイヤ用部材を高精度で製造することができるタイヤ用部材の製造装置および製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態のタイヤ用部材の製造装置を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態のタイヤ用部材の製造装置の白色チョーク線引き手段の動作を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態のタイヤ用部材の製造装置のカウント手段の動作を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態のタイヤ用部材の製造装置のフローティングナイフを説明する図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態のタイヤ用部材の製造装置を模式的に示す図であって、(a)は、装置全体を示す斜視図であり、(b)は、白色チョーク線引き手段を模式的に示す斜視図であり、
図2は、本実施の形態のタイヤ用部材の製造装置の白色チョーク線引き手段の動作を模式的に示す図であり、
図3は、本実施の形態のタイヤ用部材の製造装置のカウント手段の動作を模式的に示す図である。
【0017】
1.タイヤ用部材の製造装置
タイヤ用部材の製造装置は、
図2に示すように、幅広のトップ反80を、所定本数のタイヤコード82毎にタイヤコード82に沿って切断してタイヤ用部材を得る装置である。なお、トップ反80は、上記のように所定のピッチで配列されたタイヤコード82とタイヤコード82と略直角方向に織り合わされた横糸とで構成されるすだれ織物をトッピングゴムで被覆することにより形成される。
【0018】
(1)装置の全体構成
図1に示すように、タイヤ用部材の製造装置は、白色チョーク線引き手段10と、カウント手段20と、レーザーを照射するレーザー照射手段(図示省略)と、フローティングナイフ90を有する切断手段と、これらの手段を制御する制御手段(図示省略)とを備えている。
【0019】
本実施の形態の特徴は、白色チョーク線引き手段10およびカウント手段20により、フローティングナイフ90の切断位置を決定する点にある。
【0020】
(2)白色チョーク線引き手段
図1(a)に示すように、白色チョーク線引き手段10は、左右一対の支持柱11と、支持柱11間に架設される横移動用梁12と、線引き具13とを備えている。
【0021】
横移動用梁12はボールネジであって、横移動用梁12には線引き具13が螺合されている。このため、線引き具13は横移動用梁12の回転により横移動用梁12に沿ってトップ反の幅方向に移動可能となっている。
【0022】
線引き具13は、チョーク131の高さ位置を調整する高さ調整機構(図示せず)と、チョーク131の下端からトップ反80の凸部までの距離を測定するレーザ測距離儀(図示せず)を有しており、タイヤコード82により形成されたトップ反80の表面の凸部にチョークが接触するように、チョーク131の高さ位置が自動的に設定できるようになっている。
【0023】
そして、チョーク131をトップ反80の幅方向に移動させることにより、チョーク131によりトップ反80の凸部にトップ反80の幅方向に白色マークMが連続的に付される(
図2参照)。
【0024】
(3)カウント手段
図1(a)に示すように、カウント手段20は、左右一対の支持柱21と、支持柱21間に架設される横移動用梁22と、白色カウントセンサ23(
図3参照)とを備えている。
【0025】
白色カウントセンサ23は、横移動用梁22に案内されてトップ反80の一方の側端部から他方の側端部へ移動し、このとき白色カウントセンサ23は、トップ反の表面に幅方向に一直線上に並んだ白色マークMを検知し、白色マークMの個数をカウントする。そして、予め入力されている所定数に達すれば、下記のようにレーザー照射手段により白色マークMに赤色レーザーを照射することにより、反射光が蛍光色となってマークの識別が容易になる(
図1参照)。
【0026】
(4)レーザー照射手段
レーザー照射手段は、カウント手段20によりカウントされた所定数の白色マークMに照射して赤色レーザーを照射して所定本数のタイヤコード82を表示する装置である。なお、レーザーは赤色には限らず、マークの識別が容易になる色であればよい。
【0027】
(5)切断手段
図1に示すように、切断手段は、フローティングナイフ90がトップ反80の幅方向の任意の位置に、トップ反80の幅方向にフリーの状態でセットされる構成となっている。
【0028】
図4は、本実施の形態のタイヤ用部材の製造装置のフローティングナイフを説明する図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図4に示すように、フローティングナイフ90はガイドレールB1で支持されており、フローティングナイフ90の刃先は、ナイフ姿勢切替え手段B2により、非切断時にはトップ反80から離れた姿勢となり、切断時にはトップ反80に入り込んだ姿勢となる。
【0029】
そして、トップ反80の切断時には、フローティングナイフ90を上記のようにセットした後、トップ反80を搬送することにより、フローティングナイフ90がタイヤコード82に沿って移動しながらトップ反80を切断する。
【0030】
2.タイヤ用部材の製造方法
次に、上記のように構成されるタイヤ用部材の製造装置を用いたタイヤ用部材の製造方法について説明する。
【0031】
本実施の形態のタイヤ用部材の製造方法は、白色チョーク線引き工程と、白色カウント工程と、フローティングナイフの位置決定工程と、切断工程とを備えている。以下、各工程について説明する。
【0032】
(1)白色チョーク線引き工程
まず、
図1に示すように、ロール状に巻かれたトップ反80をタイヤ用部材の製造装置まで引き出し、上記のように白色チョーク線引き手段10のチョーク131の高さ位置を自動的に設定した後、線引き具13をトップ反80の幅方向に移動させることにより、トップ反80の表面の凸部にチョーク粉を付着させて白色マークMを連続的に付す。
【0033】
(2)白色カウント工程
次に、
図3に示すように、白色カウントセンサ23がトップ反80の幅方向に移動しながら白色マークMを順次検知して白色マークMのカウントを行った後、予め定められた数に達すれば、
図1に示すように、カウントされた所定数の白色マークM(
図2参照)に赤色レーザーを照射する。
【0034】
(3)フローティングナイフの位置決定工程
次に、作業者が、赤色レーザーで照射された所定数の白色マークMを目安として、所定本数のタイヤコード82を有するタイヤ用部材が切断される位置にフローティングナイフ90をセットする。
【0035】
(4)切断工程
次に、トップ反80を下流側に向けて搬送することにより、タイヤコード82に沿うようにフローティングナイフ90が移動しながらトップ反80を切断し、赤色レーザーが照射された所定本数のタイヤコード82の帯状のタイヤ用部材が製造される。
【実施例】
【0036】
1.実施例、比較例
本実施例においては、上記した本実施の形態のタイヤ用部材の製造方法を用いてトップ反を切断し、一方、比較例1においては予め定められた幅でトップ反を切断し、比較例2においては従来方式のレーザースキャンで決定された幅でトップ反を切断した。
【0037】
2.試験の内容
実施例、比較例1、2共に、幅が約1445mmのトップ反を幅方向に、各タイヤ用部材内のタイヤコードの狙いの本数を80として切断して、トップ反を18分割した。
【0038】
各タイヤ用部材のタイヤコードの本数を測定し、その測定結果より、実施例、比較例1、2におけるタイヤコードの平均本数、標準偏差(σ:18本のタイヤ用部材の測定データから求められた標準偏差)を求めた。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1より、実施例の場合には、タイヤコードの本数の誤差は発生せず、また、比較例1、2に比べて、σも小さくなっていることが分かる。この結果より、トップ反を精度高く切断できることが分かる。
【0041】
以上、実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一及び均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 白色チョーク線引き手段
11 支持柱
12 横移動用梁
13 線引き具
20 カウント手段
21 支持柱
22 横移動用梁
23 白色カウントセンサ
80 トップ反
82 タイヤコード
90 フローティングナイフ
131 チョーク
B1 ガイドレール
B2 ナイフ姿勢切替え手段
M 白色マーク