特許第5944190号(P5944190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944190
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】発泡性部材の取付具、及び発泡充填具
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   B62D25/04 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-60272(P2012-60272)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-193502(P2013-193502A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101905
【氏名又は名称】イイダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】砂地 浩之
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−299824(JP,A)
【文献】 特開平09−047719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により発泡体となる発泡性部材を支持する支持部と、前記支持部に設けられる取付部とを備え、
前記取付部の有する係止部が車両を構成する車両部材の有する貫通孔に係止されることで前記車両部材に取り付けられた後に、前記発泡体により前記貫通孔を閉塞する用途に用いられる発泡性部材の取付具であって、
前記支持部は、前記車両部材に対向して配置される基部を備え、
前記取付部は、前記基部に離間して立設される第1係止部と第2係止部とを有し、前記第1係止部と前記第2係止部とは前記貫通孔の開口縁において異なる位置に係止されるように構成され、
前記基部は、前記貫通孔に連通する連通孔を有し、
前記連通孔は、
前記第1係止部と前記第2係止部との間に位置し、かつ前記取付具が前記車両部材に取り付けられた状態で前記貫通孔に向かい合う部位に位置することを特徴とする発泡性部材の取付具。
【請求項2】
加熱により発泡体となる発泡性部材を支持する支持部と、前記支持部に設けられる取付部とを備え、
前記取付部の有する係止部が車両を構成する車両部材の有する貫通孔に係止されることで前記車両部材に取り付けられた後に、前記発泡体により前記貫通孔を閉塞する用途に用いられる発泡性部材の取付具であって、
前記支持部は、前記車両部材に対向して配置される基部を備え、
前記取付部は、前記基部に離間して立設される第1係止部と第2係止部とを有し、前記第1係止部と前記第2係止部とは前記貫通孔の開口縁において異なる位置に係止されるように構成され、
前記基部は、前記貫通孔に連通する連通孔を有し、
前記連通孔は、
前記第1係止部と前記第2係止部との間の部位であり、かつ前記取付具が前記車両部材に取り付けられた状態で前記貫通孔に向かい合う部位に形成されるとともに、前記貫通孔に向かい合う部位とは異なる部位まで拡大されていることを特徴とする発泡性部材の取付具。
【請求項3】
前記第1係止部と前記第2係止部との間には、前記第1係止部と前記第2係止部とを連結する連結部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の発泡性部材の取付具。
【請求項4】
前記支持部は、前記基部に立設される壁部を有し、前記壁部と前記連通孔との間に前記発泡性部材が支持される構成であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発泡性部材の取付具。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発泡性部材の取付具を備え、
前記支持部には前記発泡性部材が支持されてなり、
前記車両部材を第1車両部材としたとき、前記第1車両部材と、前記第1車両部材に組み付けられる第2車両部材とにより形成される車両構造に前記発泡体を充填する構成とされていることを特徴とする発泡充填具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される発泡性部材の取付具、及びそれを備えた発泡充填具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を構成する車両部材には、電着塗装の際に電着液を流通させるための貫通孔が形成されることがある。電着液が流通される貫通孔は、電着塗装後において、例えば埃等の侵入を許容することになるため、電着塗装後では閉塞されていることが好ましい。このような貫通孔の閉塞に用いられる孔閉塞具としては、加熱されることで発泡体を形成する発泡性部材と、発泡体を覆うカバー部材とを備えた構成が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の塞ぎ具は、車両部材の有する貫通孔に係止されることで車両部材に取り付けられる。このとき、カバー部材は、貫通孔に向かい合うとともに車両部材と離間されて配置される。これにより、電着塗装で用いられる電着液は、貫通孔、及びカバー部材と車両部材との間隙を流路として流通される。そして、電着塗装後の乾燥によって発泡性部材が加熱されることで発泡体が形成され、この発泡体により貫通孔は閉塞される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−299824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように車両部材の有する貫通孔を発泡体によって閉塞させる場合、発泡性部材を支持するとともに貫通孔に取り付けられる取付具が用いられる。こうした従来の取付具においては、車両の電着塗装において電着液の流れを円滑にするという観点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電着液を円滑に流通させることの容易な発泡性部材の取付具、及び発泡充填具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために請求項に記載の発明の発泡性部材の取付具は、加熱により発泡体となる発泡性部材を支持する支持部と、前記支持部に設けられる取付部とを備え、前記取付部の有する係止部が車両を構成する車両部材の有する貫通孔に係止されることで前記車両部材に取り付けられた後に、前記発泡体により前記貫通孔を閉塞する用途に用いられる発泡性部材の取付具であって、前記支持部は、前記車両部材に対向して配置される基部を備え、前記取付部は、前記基部に離間して立設される第1係止部と第2係止部とを有し、前記第1係止部と前記第2係止部とは前記貫通孔の開口縁において異なる位置に係止されるように構成され、前記基部は、前記貫通孔に連通する連通孔を有し、前記連通孔は、前記第1係止部と前記第2係止部との間に位置し、かつ前記取付具が前記車両部材に取り付けられた状態で前記貫通孔に向かい合う部位に位置することを要旨とする。
上記の目的を達成するために請求項に記載の発明の発泡性部材の取付具は、加熱により発泡体となる発泡性部材を支持する支持部と、前記支持部に設けられる取付部とを備え、前記取付部の有する係止部が車両を構成する車両部材の有する貫通孔に係止されることで前記車両部材に取り付けられた後に、前記発泡体により前記貫通孔を閉塞する用途に用いられる発泡性部材の取付具であって、前記支持部は、前記車両部材に対向して配置される基部を備え、前記取付部は、前記基部に離間して立設される第1係止部と第2係止部とを有し、前記第1係止部と前記第2係止部とは前記貫通孔の開口縁において異なる位置に係止されるように構成され、前記基部は、前記貫通孔に連通する連通孔を有し、前記連通孔は、前記第1係止部と前記第2係止部との間の部位であり、かつ前記取付具が前記車両部材に取り付けられた状態で前記貫通孔に向かい合う部位に形成されるとともに、前記貫通孔に向かい合う部位とは異なる部位まで拡大されていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項に記載の発泡性部材の取付具において、前記第1係止部と前記第2係止部との間には、前記第1係止部と前記第2係止部とを連結する連結部が設けられていることを要旨とする。
ここで、発泡性部材から発泡体が形成される過程では、発泡性部材が発泡を伴って流動した流動体が形成され、その流動体が硬化されることで発泡体の形成が完了する。このとき、上記のように連結部が設けられる構成によれば、流動体が連結部に到達したとき、連結部は流動体の流動抵抗となる。これにより、流動体が貫通孔及びその付近に留まり易くなる。
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発泡性部材の取付具において、前記支持部は、前記基部に立設される壁部を有し、前記壁部と前記連通孔との間に前記発泡性部材が支持される構成であることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、発泡性部材の加熱によって流動した流動体が壁部に到達したとき、流動体の流動は壁部によって規制される。これにより、流動体が貫通孔に留まり易くなる。
【0014】
請求項に記載の発明の発泡充填具は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発泡性部材の取付具を備え、前記支持部には前記発泡性部材が支持されてなり、前記車両部材を第1車両部材としたとき、前記第1車両部材と、前記第1車両部材に組み付けられる第2車両部材とにより形成される車両構造に前記発泡体を充填する構成とされていることを要旨とする。
【0015】
車両構造の一部に充填された発泡体は、例えば車両構造の補強効果、振動抑制効果、異音の発生を抑制する効果等を発揮する。ここで、従来、発泡体を充填する発泡充填具は、それを取り付けるための取付孔を車両部材に貫設し、その取付孔を利用して車両部材に取り付けられる。一方、電着液を流通させる貫通孔は、発泡充填具を取り付ける取付孔よりも大きく設定されることで、電着液の流量が確保され易くなる。このため、従来の車両部材には、目的に応じて異なる寸法の孔が貫設される。ところが、目的に応じた孔を車両部材に貫設することは、例えば車両部材の形成が煩雑となる。この点、上記発泡充填具によれば、第1車両部材において発泡充填具を取り付ける取付孔を別途設ける工程を省略することができるようになる。また、取付孔を省略できる結果、第1車両部材の剛性が維持され易くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電着液を円滑に流通させることの容易な発泡性部材の取付具、及び発泡充填具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の発泡充填具を分解した状態、及び車両部材の一部を示す斜視図。
図2】発泡性部材の一部を切り欠いて第1取付部を示す部分斜視図。
図3】(a)は発泡性部材の一部を切り欠いて第1連通孔が位置する領域を説明する部分平面図、(b)は発泡性部材の一部を切り欠いて第1連通孔が位置する部位を説明する部分平面図。
図4】車両部材に発泡充填具を取り付ける状態を説明する斜視図。
図5】車両部材に発泡充填具が取り付けられた状態を示す斜視図。
図6】(a)は図5の6a−6a線で示す部分断面図、(b)は発泡体が形成された状態を示す部分断面図。
図7】第2実施形態の孔閉塞具を分解した状態、及び車両部材の一部を示す斜視図。
図8】(a)は車両部材に発泡充填具が取り付けられた状態を示す部分断面図、(b)は発泡体が形成された状態を示す部分断面図。
図9】(a)及び(b)は取付具の変更例を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明の取付具を発泡充填具に適用した第1実施形態について図1図6に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、発泡充填具11は、発泡性部材12と、車両を構成する第1車両部材であるパネル71に発泡性部材12を取り付ける取付具13とを備える。発泡性部材12は、加熱により発泡体となる。取付具13は、発泡性部材12を支持する支持部21と、支持部21に設けられる第1取付部31及び第2取付部32とを備える。
【0020】
支持部21は、パネル71に対向して配置される基部22から構成される。基部22は板状をなすとともに、基部22の外形はパネル71を備える車両構造に対応した形状とされる。本実施形態の基部22は、パネル71の有する第1貫通孔72及び第2貫通孔73に対応して配置される第1取付基部23及び第2取付基部24と、車両構造において発泡体を充填する部位に対応した形状をなす外縁基部25とから構成される。各取付基部23,24は、各貫通孔72,73に対応した第1連通孔26及び第2連通孔27を有している。発泡性部材12は、基部22と同様の外形をなし、各取付部31,32が挿入される第1挿入孔12a及び第2挿入孔12bを有している。
【0021】
ここで、第1取付部31及びその周辺と、第2取付部32及びその周辺とは、同様の構造となっているため、以下では図1において右側に位置する第1取付部31及びその周囲の構造を中心に説明する。
【0022】
図2に示すように、第1取付部31は、第1取付基部23に立設される第1係止部41と第2係止部42とを有する。各係止部41,42は、第1貫通孔72の寸法に対応して離間して配置されている。第1係止部41は、板状をなす第1係止本体部41aと、その先端側に位置する第1係止片41bとを有している。第2係止部42についても、第1係止部41と同様に、第2係止本体部42a及び第2係止片42bを有している。各係止本体部41a,42aは、第1取付基部23に対して垂直となるように立設されるとともに、互いに平行となるように配置されている。各係止片41b,42bは、各係止本体部41a,42aが対向する側の面とは反対側となる面から離間する方向に突出している。各係止片41b,42bは、弾性変形を伴って第1貫通孔72の開口縁において異なる位置に係止される。
【0023】
第1連通孔26は、発泡充填具11が取付具13によってパネル71に取り付けられた状態で第1貫通孔72に連通する。図3(a)に二点鎖線で示すように、第1連通孔26は、第1係止部41及び第2係止部42の各基端間を結ぶ直線を一辺とする長方形を外形とした領域A内に位置する。この領域Aは、第1係止部41及び第2係止部42の各基端間を結ぶ直線を同直線と垂直、かつ第1取付基部23の面と平行となるように移動させた軌跡で形成される。第1係止部41及び第2係止部42の各基端を結ぶ直線の長さは、各係止片41b,42bの中央を直線で結んでなる線分を第1取付基部23に対して垂直となる方向に沿って各係止本体部41a,42aの基端位置まで移動したとき、その線分上で示される各係止本体部41a,42a間の距離に相当する。
【0024】
図3(b)には、発泡充填具11がパネル71に取り付けられたときに第1貫通孔72に向かい合う部位を部位Bとして二点鎖線で示している。第1連通孔26は、上記の領域Aであり、かつ部位Bに位置している。このように配置された第1連通孔26と第1貫通孔72との位置関係は、発泡充填具11がパネル71に取り付けられた状態で、第1取付基部23の面に対して垂直方向から第1連通孔26を通じてパネル71側を見たとき、第1貫通孔72内が視認されることで確認される。
【0025】
図3(a)及び図3(b)に示されるように、本実施形態の第1連通孔26は、上記の領域A内であり、第1貫通孔72に向かい合う部位Bとは異なる部位まで連続して形成されている。このように第1連通孔26は、上記の領域Aを利用して拡大されている。第1連通孔26の拡大部分は、発泡充填具11がパネル71に取り付けられた状態で、第1取付基部23の面に対して垂直方向から第1連通孔26を通じてパネル71側を見たとき、パネル71が視認されることで確認される。
【0026】
図2に示すように、第1係止部41と第2係止部42との間には、各係止部41,42を連結する連結部43が設けられている。連結部43は、第1取付基部23の面と垂直方向に延びる板状をなし、第1連通孔26を仕切るように配置されている。
【0027】
各係止本体部41a,42aが対向する側とは反対側に位置する第1取付基部23は、各係止片41b,42bを成形するとともに、その成型用の金型から各係止片41b,42bを抜き出すために一対の補助孔28,28を有している。これら補助孔28,28についても、第1連通孔26と同様に第1貫通孔72に連通される。
【0028】
取付具13を形成する材料としては、発泡性部材12から発泡体を形成させる際の加熱に耐え得る材料から適宜選択することが可能である。こうした材料としては、成形の容易性から樹脂材料が好ましく、例えばポリアミド系樹脂が好適に用いられる。本実施形態の取付具13は、射出成形により一体に成形されているが、取付具13の少なくとも一部を別途成形し、接着や溶着により一体とされてもよい。
【0029】
図1に示すように発泡性部材12は、各取付基部23,24に支持される一対の孔発泡部14,14と外縁基部25に支持される外縁発泡部15とを有している。孔発泡部14は環状をなす一方で、外縁発泡部15は、外縁基部25と同様の形状をなしている。このように構成された発泡性部材12は、各挿入孔12a,12bを利用して各連通孔26,27及び補助孔28を回避するように配置される。具体的には、発泡性部材12は、各連通孔26,27及び補助孔28に重ならないように配置される。また、発泡性部材12は、発泡体により各貫通孔72,73が閉塞されるとともに、車両構造における所望の部位に発泡体が充填される位置に支持されている。
【0030】
発泡性部材12は、発泡性材料を押出成形、プレス成形、射出成形等の周知の成形法により成形することで得られる。発泡性部材12は、例えば接着剤、粘着剤、支持具をインサートして発泡性部材12を成形するインサート成形等による溶着等によって支持部21に固定することができる。このように発泡性部材12を支持部21に支持させる方法は、特に限定されず、支持部21に突起や爪を設けて、支持部21に発泡性部材12を係止させてもよい。
【0031】
発泡性材料には、基材、発泡剤、及び架橋剤を含有する他に、充填剤、可塑剤等が適宜含有されている。基材としては、合成樹脂、エラストマー及びゴムが挙げられる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、EVA(エチレン/ビニルアセテートコポリマー)等が挙げられる。エラストマーとしては、RB(ポリブタジエンエラストマー)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。ゴムとしては、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、UR(ウレタンゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)等が挙げられる。発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等が挙げられ、架橋剤としては周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド、充填剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。
【0032】
図4に示すように、発泡充填具11はパネル71に取り付けられた後、そのパネル71には第2車両部材としてのピラーリンフォース74が組み付けられる。図5に示すように、発泡充填具11は、Bピラーの下部を構成する車両構造に適用される。このとき、外縁基部25及び外縁発泡部15は、パネル71とピラーリンフォース74との境界に沿って配置される。
【0033】
次に、取付具13を備えた発泡充填具11の作用を説明する。
発泡充填具11の取り付けられた車両は、電着塗装工程に供される。電着塗装工程では、車両が電着槽に浸漬されることで、電着液がパネル71及びピラーリンフォース74に接触される。ここで、上述した各貫通孔72,73は、電着液の流路として形成されている。すなわち、各貫通孔72,73を電着液が流通することで、パネル71及びピラーリンフォース74に塗装が円滑に施されるとともに、電着液の排出が円滑に行われる。このような各貫通孔72,73を利用して発泡充填具11が取り付けられることで、パネル71に発泡充填具11を取り付けるための取付孔を別途形成する工程を省略することができるようになる。また、このような取付孔を省略できる結果、パネル71の剛性が維持され易くなる。
【0034】
ここで、第1取付部31及びその周辺と、第2取付部32及びその周辺とは、同様の作用を奏するため、以下では第1取付部31及びその周囲の作用を説明する。
電着塗装工程において電着液は、図6(a)に矢印で示すように第1連通孔26を流通する。第1連通孔26は、上記の領域A内に位置することで、第1連通孔26の開口を広く設定することが容易となる。さらに、第1連通孔26は、取付具13がパネル71に取り付けられた状態で第1貫通孔72に向かい合う部位Bに位置することで、第1貫通孔72と第1連通孔26とを直線的に流通させる流路が確保される。
【0035】
続いて、車両は乾燥工程に供される。乾燥工程では、電着液の乾燥及び焼き付けが行われる。この乾燥工程における加熱により、発泡性部材12から発泡体が形成される。そして、図6(a)及び図6(b)に示すように、孔発泡部14から形成された発泡体81により第1貫通孔72が閉塞される。ここで、発泡性部材12から発泡体81が形成される過程では、発泡性部材12が発泡を伴って流動した流動体が形成され、その流動体は離間して配置される第1係止本体部41aと第2係止本体部42aとの間を通じて第1貫通孔72へ流動する。そして流動体が加熱により硬化されることで発泡体81の形成が完了する。このとき、第1取付部31には連結部43が設けられているため、連結部43に流動体が到達したとき、連結部43は流動体の流動抵抗となる。これにより、流動体が第1貫通孔72及びその付近に留まり易くなる。
【0036】
図6(b)に示すように、パネル71とピラーリンフォース74とにより形成される車両構造は、外縁発泡部15から形成された発泡体81により充填される。具体的には、パネル71とピラーリンフォース74とに跨って発泡体81が形成されることで、パネル71とピラーリンフォース74との境界部位が発泡体81により充填される。
【0037】
発泡体81により第1貫通孔72が閉塞されることで、例えば埃等が第1貫通孔72から侵入され難くなる。また、パネル71とピラーリンフォース74との境界部位に発泡体81が充填されることで、強度、剛性、制振性等が向上される。また、発泡体81は、第1貫通孔72及び間隙部位における空気の流通を抑制するため、空気の流通を要因とする異音の発生が抑制される。
【0038】
上述した第1実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
(1)支持部21は、パネル71に対向して配置される基部22を備えている。各取付部31,32は、各係止部41,42を有している。基部22は、各貫通孔72,73に連通する連通孔26,27を有している。連通孔26,27は上記の領域A内に位置することで、連通孔26,27の開口を広く設定することが容易となる。さらに、連通孔26,27が上記の部位Bに位置することで、貫通孔72,73と連通孔26,27とを直線的に流通させる流路が確保される。これにより、電着液を円滑に流通させることの容易な取付具13及び発泡充填具11が提供される。
【0039】
(2)第1係止部41と第2係止部42との間には、各係止部41,42を連結する連結部43が設けられている。こうした連結部43は流動体の流動抵抗となるため、流動体が貫通孔72,73及びその付近に留まり易くなる。従って、例えば貫通孔72,73から発泡体81が過剰に突出して形成されることが抑制される。
【0040】
(3)連通孔26,27は、上記の領域A内であり、取付具13がパネル71に取り付けられた状態で貫通孔72,73に向かい合う部位Bとは異なる部位まで連続して形成されている。この構成によれば、基部22において上記の領域Aをさらに有効に利用して電着液を流通させることができる。従って、電着液を円滑に流通させることがさらに容易となる。
【0041】
(4)発泡充填具11は、パネル71とパネル71に組み付けられるピラーリンフォース74とにより構成される車両構造に発泡体81を充填する構成とされている。こうした車両構造の一部に充填された発泡体81は、例えば車両構造の補強効果、振動抑制効果、異音の発生を抑制する効果等を発揮する。ここで、従来、発泡体を充填する発泡充填具は、それを取り付けるための取付孔を車両部材に貫設し、その取付孔を利用して車両部材に取り付けられる。一方、電着液を流通させる貫通孔72,73は、発泡充填具を取り付ける取付孔よりも大きく設定されることで、電着液の流量が確保され易くなる。このため、従来のパネル等の車両部材には、目的に応じて異なる寸法の孔が貫設される。ところが、目的に応じた孔を車両部材に貫設することは、例えば車両部材の形成が煩雑となる。この点、本実施形態の発泡充填具11によれば、パネル71において発泡充填具11を取り付ける取付孔を別途設ける工程を省略することができるようになる。また、そうした取付孔を省略できる結果、パネル71の剛性が維持され易くなる。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の取付具を孔閉塞具に適用した第2実施形態について図7及び図8を参照して第1実施形態と異なる点を中心に説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部材には、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
図7及び図8(a)に示すように、孔閉塞具51は、加熱により発泡体となる発泡性部材52と、車両を構成する車両部材であるパネル91に発泡性部材52を取り付ける取付具53とを備える。取付具53は、発泡性部材52を支持する支持部54と、支持部54に設けられる取付部55を備える。
【0044】
本実施形態の支持部54は、パネル91に対向して配置される基部としての取付基部54aを備える。取付基部54aは板状をなすとともに取付基部54aの外形は、パネル91の有する貫通孔92に対応した形状とされる。取付部55は、第1実施形態の各取付部31,32と同様に構成されている。取付部55は、第1係止部41及び第2係止部42を有している。第1係止部41は、第1係止本体部41a及び第1係止片41bを有している。第2係止部42は、第2係止本体部42a及び第2係止片42bを有している。
【0045】
取付基部54aは、第1実施形態と同様に第1係止部41及び第2係止部42の各基端間を結ぶ直線を一辺とする長方形を外形とした領域A内に位置する連通孔56を有している。連通孔56は、孔閉塞具51がパネル91に取り付けられたときに貫通孔92に向かい合う部位Bに位置する。連通孔56は、上記の領域A内であり、貫通孔92に向かい合う部位Bとは異なる部位まで連続して形成されている。
【0046】
支持部54は、取付基部54aに立設される壁部54bを有している。壁部54bは、取付部55を囲む環状をなしている。こうした壁部54bと連通孔56との間には、発泡性部材52が支持される。発泡性部材52は挿入孔52aを有した環状をなし、連通孔56及び補助孔57を回避する位置であるとともに、発泡体により貫通孔92が閉塞される位置に支持されている。
【0047】
次に、取付具53を備えた孔閉塞具51の作用について説明する。
孔閉塞具51の取り付けられた車両の電着塗装工程において、電着液は、図8(a)に矢印で示すように連通孔56を流通する。連通孔56は、上記の領域A内に位置することで、連通孔56の開口を広く設定することが容易となる。さらに、連通孔56は、上記の部位Bに位置することで、貫通孔92と連通孔56とを直線的に流通させる流路が確保される。続いて、車両の乾燥工程における加熱により、発泡性部材52から発泡体が形成される。そして、図8(a)及び図8(b)に示すように、発泡性部材52から形成された発泡体82により貫通孔92が閉塞される。このとき、支持部54は、取付基部54aに立設される壁部54bを有し、壁部54bと連通孔56との間に発泡性部材52が支持される構成である。このため、発泡性部材52の加熱によって流動した流動体が壁部54bに到達したとき、流動体の流動は壁部54bによって規制される。これにより、流動体が貫通孔92に留まり易くなる。
【0048】
上述した第2実施形態の取付具53を備えた孔閉塞具51によれば、第1実施形態の(1)〜(3)に記載の効果に加えて以下の効果が発揮される。
(5)支持部54は、取付基部54aに立設される壁部54bを有し、壁部54bと連通孔56との間に発泡性部材52が支持される構成とされている。従って、貫通孔92に集中させて発泡体82を充填することが容易となる。
【0049】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・各実施形態における各係止本体部41a,42aの形状は板状に限らず、例えば角柱状、円柱状等に変更することもできる。例えば、図9(a)に示すように各係止本体部41a,42aの形状は変更されてもよい。また、前記各係止部41,42の全体形状は、対象となる形状をなしているが、非対称となる形状に変更されてもよい。
【0050】
・各実施形態の各係止片41b,42bの少なくとも一方は省略されてもよい。例えば、第1係止本体部41aに設けられる第1係止片41bを省略するとともに第1係止本体部41aに溝を形成することで、その溝に第1貫通孔72の開口縁が係止されるように構成されてもよい。
【0051】
・各実施形態では、各貫通孔72,73,92に対して第1及び第2係止部41,42が係止される構成とされている。すなわち、一つの貫通孔に一対の係止部が係止されるように構成されているが、一つの貫通孔に対して三つ以上の係止部が係止されるように構成されてもよい。例えば、三つの係止部を有する取付部では、それら係止部から選択され得る一対の係止部のうち、各基端間を結ぶ一辺が最も長くなる一対の係止部を第1係止部及び第2係止部とし、各係止部に基づいて上記の領域Aは決定される。この場合であっても、第1及び第2係止部の間に位置する領域Aを利用して連通孔の開口を広く設定することが容易となる。
【0052】
・各実施形態における連結部43は、孔や溝を有する連結部に変更されてもよい。連結部43の形状は、板状に限らず、例えば柱状の連結部に変更されてもよい。さらに、各実施形態における連結部43は、図9(b)に示すように省略されてもよい。
【0053】
・各実施形態の補助孔28,57は、例えば各係止片41b,42bの形状や成形用金型の構成に応じて省略されてもよい。また、補助孔28,57に重なるように発泡性部材12,52が設けられていてもよい。
【0054】
・各実施形態の各連通孔26,27,56は、上記の領域A内であり、かつ上記の部位Bのみに位置する連通孔に変更されてもよい。なお、各連通孔26,27,56は、各貫通孔72,73,92とともに形成される直線的な流路の断面積をより広く確保するという観点から、上記の領域A内であり、かつ上記部位Bとなる面積に対して、例えば50%以上の面積が開口されるように貫設されていることが好ましい。
【0055】
・各実施形態の各連通孔26,27,56の数は、特に限定されず、例えば、各取付基部23,24,54aを格子状に形成することで、多数の連通孔を有する構成に変更されてもよい。
【0056】
・第2実施形態における壁部54bは省略されてもよい。また、壁部54bを第1実施形態の取付具13に設けることもできる。また、壁部54bは、各取付部31,32,55を囲むように突起を配列させることで、全体として環状をなす壁部に変更されてもよい。この場合であっても、発泡性部材の加熱によって流動した流動体が壁部に到達したとき、流動体の流動は壁部によって規制される。また、図8(a)に示される壁部54bはパネル91に当接されているが、パネル91から離間するように設けられてもよい。
【0057】
・各実施形態において、発泡性部材12,52の数、外形、支持部21,54に対する発泡性部材12,52の位置等は、適宜変更されてもよい。例えば、支持部21,54に支持させた発泡性部材12,52を乾燥工程と同様の加熱条件(加熱温度及び時間)で加熱することで発泡体81,82を形成させて、各貫通孔72,73,92の閉塞や、車両構造の所望の部位における発泡体81の充填を確認する予備試験を行った結果に基づいて発泡性部材12,52の態様を変更することができる。具体的には、発泡性部材12,52の体積の増減、又は支持部21,54における発泡性部材12,52の位置の変更により、発泡体81,82が形成される領域を変更することができる。なお、各実施形態のように、発泡性部材12,52は貫通孔72,73,92を囲むように配置されることで、発泡体81,82により貫通孔72,73,92を容易に閉塞させることができる。また、第1実施形態の発泡充填具11の場合、発泡性部材12は、発泡体81を充填する部位に沿って配置されることで、その部位を発泡体81により容易に充填することができる。
【0058】
・第1実施形態の各取付部31,32及びその周辺の構造は、同様の構成となっているが、上述した変更例を適宜組み合わせることで、各取付部31,32及びその周辺の構造が異なるように構成されてもよい。
【0059】
・第1実施形態の発泡充填具11において、各取付部31,32のいずれか一方を省略してもよい。この場合であっても、第1貫通孔72又は第2貫通孔73が閉塞されることで、第1貫通孔72又は第2貫通孔73から埃等が侵入され難くなる。また、3つ以上の貫通孔を有するパネルに対しては、その貫通孔の数に合わせて取付部を設けた取付具13,53に変更することができる。
【0060】
・第1実施形態の発泡充填具11は、車両の一部を構成する中空構造体に発泡体を充填する発泡充填具に変更されてもよい。こうした発泡充填具は、中空構造体の断面を支持部とともに仕切るように発泡体を充填するものであり、例えば中空構造体の中空部に空気が流通することによる異音を抑制する効果を奏する。中空構造体は、第1車両部材及び第2車両部材によって筒状に形成される構造体であって、具体例としてはピラーが挙げられる。
【0061】
・第1実施形態の発泡充填具11において、外縁基部25を省略するとともに各取付基部23,24を連結する連結基部を備える構成に変更してもよい。こうした連結基部に発泡性部材を設けることで、パネル71と連結基部との間に発泡体を充填する発泡充填具が提供される。この発泡充填具によれば、パネル等の車両部材を部分的に補強することができる。
【0062】
・各実施形態の各貫通孔72,73,92は、円形状であるが、例えば楕円形状、四角形状等に変更されてもよい。
・第1実施形態の発泡充填具11は、第1及び第2車両部材として、ピラーを構成する構成部材、ドアパネル、ルーフパネル、トランクリッド、フロントフードパネル、各種リンフォース等の車両部材に適用することができる。こうした車両部材は、一部品から構成されていてもよいし、二部品を溶接等で接合されたものであってもよい。また、第2実施形態の孔閉塞具51についても、各種車両部材に適用することもできる。
【0063】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記発泡性部材は、貫通孔を閉塞する発泡体と、前記第1車両部材と前記第2車両部材とに跨る発泡体とを形成する発泡充填具。
【0064】
(ロ)前記第1車両部材及び前記第2車両部材は中空構造体を構成し、前記発泡性部材は、前記貫通孔を閉塞する発泡体と、前記中空構造体の中空部に充填され、その中空部を仕切る発泡体とを形成する発泡充填具。
【0065】
(ハ)前記発泡性部材は、貫通孔を閉塞する発泡体と、前記第1車両部材と前記第2車両部材との境界部分に充填される発泡体とを形成する発泡充填具。
(ニ)前記基部は、前記第1取付部が設けられる第1取付基部と、前記第2取付部が設けられる第2取付基部と、前記第1取付基部と前記第2取付基部とを連結する連結基部と、を備え、前記連結基部に前記発泡性部材が設けられ、前記発泡性部材は、前記連結基部と前記第1車両部材との間に充填される発泡体を形成する発泡充填具。
【0066】
(ホ)前記発泡性部材の取付具を備え、前記支持部には前記発泡性部材が支持されてなる発泡充填具又は孔閉塞具の使用方法であって、前記発泡性部材は、前記発泡体により前記貫通孔を充填する位置に設けられてなり、前記車両部材に前記取付具を取り付けて前記連通孔に電着液を流通させた後に、前記発泡性部材を加熱することで前記貫通孔に前記発泡体を充填する発泡充填具又は孔閉塞具の使用方法。
【符号の説明】
【0067】
A…領域、B…部位、11…発泡充填具、12,52…発泡性部材、12a…第1挿入孔、12b…第2挿入孔、13,53…取付具、14…孔発泡部、15…外縁発泡部、21,54…支持部、22…基部、23…第1取付基部、24…第2取付基部、25…外縁基部、26…第1連通孔、27…第2連通孔、28,57…補助孔、31…第1取付部、32…第2取付部、41…第1係止部、41a…第1係止本体部、41b…第1係止片、42…第2係止部、42a…第2係止本体部、42b…第2係止片、43…連結部、51…孔閉塞具、52a…挿入孔、54a…取付基部、54b…壁部、55…取付部、56…連通孔、71,91…パネル、72…第1貫通孔、73…第2貫通孔、74…ピラーリンフォース、81,82…発泡体、92…貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9