特許第5944191号(P5944191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944191
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】メラノサイト分化誘導促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/97 20060101AFI20160621BHJP
   A61Q 19/04 20060101ALI20160621BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20160621BHJP
   A61K 36/03 20060101ALI20160621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160621BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160621BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20160621BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20160621BHJP
   A23L 2/38 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
   A61K8/97
   A61Q19/04
   A61Q5/00
   A61K36/03
   A61P43/00 105
   A61P17/00
   !A23L33/105
   !A23L2/00 F
   !A23L2/38 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-63963(P2012-63963)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-194001(P2013-194001A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直和
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
(72)【発明者】
【氏名】井上 悠
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖司
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−191008(JP,A)
【文献】 特開2009−167121(JP,A)
【文献】 特開2003−081777(JP,A)
【文献】 特開2013−010693(JP,A)
【文献】 Biological and Pharmaceutical Bulletin,2000年,Vol. 23,No. 8,Pages 962-967
【文献】 生薬学雑誌,2006年,Vol.60,No.1,Pages 9-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/97
A61K 36/03
A61P 17/00
A61P 43/00
A61Q 5/00
A61Q 19/04
A23L 2/38
A23L 2/52
A23L 33/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガゴメコンブ、オニコンブ及びホソメコンブから選択される1種又は2種以上の海藻の抽出物を含有することを特徴とする、メラノサイト分化誘導促進剤。
【請求項2】
ガゴメコンブ、オニコンブ及びホソメコンブから選択される1種又は2種以上の海藻の熱水又は塩酸抽出物を含有することを特徴とする、メラノサイト分化誘導促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のメラノサイト分化誘導促進剤を含有することを特徴とする、色素異常症又は白髪の予防若しくは改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進剤、並びに当該分化誘導促進剤を含有することを特徴とする、メラニン産生促進剤、白髪防止用組成物、皮膚黒化用組成物、及び頭髪若しくは皮膚用外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚や毛髪の色調は、皮膚や毛髪に含有するメラニンの量によって左右される。メラニンは、皮膚や毛髪に存在する色素細胞(メラノサイト)において、チロシンから生合成される。メラノサイトを活性化させることにより、メラニンが合成され、その結果、毛髪は黒色になり、皮膚は褐色になる。
一方、メラノサイトには様々な分化段階(神経堤細胞、色素幹細胞、メラノブラスト等)が存在しており、その分化の異常により様々な色素異常症や白髪化が引き起こされる。よって、このメラノサイトの分化自体を制御する因子の同定が根本的な色素異常症や白髪の解決のために重要である。しかしながら、従来においては、メラノサイト制御因子の探索には、主にメラノーマ細胞(メラノサイトの癌化により生じる)、最終分化後のメラノサイト及びマッシュルーム由来チロシナーゼ等を用いて行うスクリーニング系が用いられていた(特許文献1)。そのため、メラノサイトの分化を制御する因子の探索は従来においてほとんど行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−15472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、メラノサイトの分化自体を制御する因子の同定が根本的な色素異常症及び白髪化の解決のために重要である。
そこで、本願発明は、上述した実情に鑑み、幹細胞からメラノサイトへの分化促進活性を有する素材を見出し、これまでにない根本的な白髪防止改善用組成物、皮膚黒化用組成物、及び頭髪若しくは皮膚用外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導系を用いることにより、メラノサイトの発生、分化、増殖及びメラニン合成の全てを試験管内(in vitro)で再現できることを見出した。さらに本誘導系をスクリーニング系として用いることにより、コンブ属及びワカメ属から選択される1種又は2種以上の海藻の抽出物がメラノサイトの分化を促進する優れた効果を有することを見出し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は、以下を包含する。
(1)コンブ属及びワカメ属から選択される1種又は2種以上の海藻の抽出物を含有することを特徴とする、メラノサイト分化誘導促進剤。
(2)コンブ属の海藻が、ガゴメコンブ、オニコンブ、ホソメコンブ及びナガコンブであることを特徴とする、(1)のメラノサイト分化誘導促進剤。
(3)ワカメ属の海藻が、ワカメである(1)又は(2)のメラノサイト分化誘導促進剤。
(4)(1)〜(3)のいずれかのメラノサイト分化誘導促進剤を含有することを特徴とする、色素異常症又は白髪の予防若しくは改善用組成物。
【発明の効果】
【0006】
本願発明のメラノサイト分化誘導促進剤によれば、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導を顕著に促進することができ、色素異常症及び白髪において、根本的に治療・予防することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願発明に用いるコンブ属(Saccharina)の海藻は、コンブ目コンブ科に属する海藻の一種で、ガゴメコンブ(Saccharina sculpera)、オニコンブ(Saccharina diabolica)、ホソメコンブ(Saccharina religiosa)、ナガコンブ(Saccharina Laminaria longissima)等が挙げられる。また、ワカメ属(Undaria)の海藻は、コンブ目チガイソ科に属する海藻の一種で、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アオワカメ(Undaria peterseniana)等が挙げられる。
【0008】
抽出に使用する溶媒としては、例えば、水(熱水)、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が好ましい。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いても良い。また、これら溶媒に酸やアルカリを添加してpH調整を行うこともできる。0.01〜1N、特に0.1Nの塩酸で抽出することが最も好ましい。
【0009】
上述の溶媒を用いて、本願発明で用いる海藻を溶媒抽出する。溶媒抽出方法は、特に限定されないが、加熱による抽出が好ましい。例えば、本願発明で用いる海藻に水を加え、95〜100℃における熱水抽出を行うことで、抽出物を得ることができる。あるいは、本願発明で用いる海藻乾燥物に無機酸(例えば、塩酸)を加え、4℃程度で抽出を行うことで、本願発明で用いる海藻抽出物を得ることができる。
【0010】
このようにして得られた海藻抽出物を本願発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤の有効成分とする。本願発明のメラノサイト分化誘導促進剤は、本願発明の海藻抽出物をそのまま使用しても良く、本願発明の海藻抽出物の効果を損なわない範囲内で、外用剤、注射剤、内用剤等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、キレート剤、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、保存料、溶解補助剤、溶剤等の成分を配合することができる。
【0011】
本願発明のメラノサイト分化誘導促進剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤等の皮膚に適用されるものや、経口用には、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤等が挙げられる。また、注射液、座薬等が挙げられる。
【0012】
本願発明に用いる海藻抽出物の配合量は、本願発明のメラノサイト分化誘導促進剤全量に対し、固形物に換算して0.00001重量%以上、好ましくは0.0001〜10重量%が良い。0.00001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を越えて配合した場合、効果の増強は認められにくく不経済である。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0013】
次に本願発明を詳細に説明するため、実施例として本願発明に用いる海藻抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本願発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。
【0014】
製造例1 ガゴメコンブの熱水抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ガゴメコンブの熱水抽出物を3.2g得た。
製造例2 ガゴメコンブの塩酸抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ガゴメコンブの塩酸抽出物を2.4g得た。
製造例3 ガゴメコンブの50%エタノール抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ガゴメコンブの50%エタノール抽出物を2.5g得た。
製造例4 ガゴメコンブのエタノール抽出物
ガゴメコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ガゴメコンブのエタノール抽出物を4.3g得た。
製造例5 ガゴメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ガゴメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
製造例6 オニコンブの熱水抽出物
オニコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オニコンブの熱水抽出物を3.5g得た。
製造例7 オニコンブの塩酸抽出物
オニコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オニコンブの塩酸抽出物を2.5g得た。
製造例8 オニコンブの50%エタノール抽出物
オニコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オニコンブの50%エタノール抽出物を3.2g得た。
製造例9 オニコンブのエタノール抽出物
オニコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オニコンブのエタノール抽出物を5.5g得た。
製造例10 オニコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
オニコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、オニコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を375g得た。
製造例11 ホソメコンブの熱水抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ホソメコンブの熱水抽出物を5.2g得た。
製造例12 ホソメコンブの塩酸抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ホソメコンブの塩酸抽出物を3.5g得た。
製造例13 ホソメコンブの50%エタノール抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ホソメコンブの50%エタノール抽出物を4.4g得た。
製造例14 ホソメコンブのエタノール抽出物
ホソメコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ホソメコンブのエタノール抽出物を5.2g得た。
製造例15 ホソメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ホソメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
製造例16 ナガコンブの熱水抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ナガコンブの熱水抽出物を2.2g得た。
製造例17 ナガコンブの塩酸抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ナガコンブの塩酸抽出物を1.8g得た。
製造例18 ナガコンブの50%エタノール抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ナガコンブの50%エタノール抽出物を2.4g得た。
製造例19 ナガコンブのエタノール抽出物
ナガコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ナガコンブのエタノール抽出物を3.6g得た。
製造例20 ナガコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ナガコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
製造例21 ワカメの熱水抽出物
ワカメの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ワカメの熱水抽出物を3.2g得た。
製造例22 ワカメの塩酸抽出物
ワカメの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ワカメの塩酸抽出物を2.7g得た。
製造例23 ワカメの50%エタノール抽出物
ワカメの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ワカメの50%エタノール抽出物を3.1g得た。
製造例24 ワカメのエタノール抽出物
ワカメの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ワカメのエタノール抽出物を3.9g得た。
製造例25 ワカメの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ワカメの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ワカメの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を380g得た。
【0015】
比較製造例としてオキナワモズクを用いた。オキナワモズクは、ナガマツモ目ナガマツモ科オキナワモズク属に属する海藻であり、コンブ属やワカメ属ではない。
比較製造例1 オキナワモズクの熱水抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オキナワモズクの熱水抽出物を5.5g得た。
比較製造例2 オキナワモズクの塩酸抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オキナワモズクの塩酸抽出物を3.7g得た。
比較製造例3 オキナワモズクの50%エタノール抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オキナワモズクの50%エタノール抽出物を3.3g得た。
比較製造例4 オキナワモズクのエタノール抽出物
オキナワモズクの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オキナワモズクのエタノール抽出物を5.0g得た。
比較製造例5 オキナワモズクの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、オキナワモズクの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を375g得た。
【0016】
処方例1 化粧水
成分 配合量(部)
1.ガゴメコンブの熱水抽出物(製造例1) 0.1
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0017】
処方例2 クリーム
成分 配合量(部)
1.ガゴメコンブの塩酸抽出物(製造例2) 0.05
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0018】
処方例3 錠剤
成分 配合量(部)
1.オニコンブの熱水抽出物(製造例6) 5.0
2.乾燥コーンスターチ 25.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1〜4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成型する。成型した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0019】
処方例4 飲料
成分 配合量(部)
1.オニコンブの塩酸抽出物(製造例7) 0.05
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分2及び3を成分5の一部に溶解する。次いで、成分1、4及び5を加えて混合する。
【0020】
処方例5 ヘアトニック
成分 配合量(部)
1.ガゴメコンブのエタノール抽出物(製造例4) 5.0
2.エタノール 60.0
3.グリセリン 2.0
4.トウガラシチンキ 0.1
5.酢酸dl−α−トコフェロール 0.1
6.l−メントール 0.05
7.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分1及び成分4〜6を成分2に溶解し、成分3、7を加え、十分撹拌混合し、製品とする。
【0021】
実験例1 本願発明に用いる海藻抽出物の幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進によるメラニン合成促進効果の評価
本実験例では、これまでに山根らが報告しているマウス胚性幹細胞(ES cell:embryonic stem cell)を用いた幹細胞からメラノサイトへの分化誘導系(Yamane T., Hayashi S., Mizoguchi M., Yamazaki H., Kunisada T., Developmental Dynamics, 1999, Vol. 216, Issue 4−5, pp. 450−458)を用いて、本願発明に用いる海藻抽出物のメラノサイトへの分化誘導促進効果とそれに伴うメラニン合成の促進効果について評価した。なお、本実験において、これまでメラニン合成促進効果が確認されているエンドセリン−1についても同様な実験系を用いて評価した。以下に詳細を説明する。
【0022】
6cmプラスチックディッシュにマイトマイシンC処理を施したMEF細胞(Mouse embryonic fibroblast)を培養し、その上にマウスES細胞を10×10〜20×10個播種し、37℃において5%COインキュベーターにて前培養した。使用した培地は、DMEMにES細胞用添加因子(L−グルタミン液、2−メルカプトエタノール液、ヌクレオシド液、非必須アミノ酸液及びESGRO、いずれもchemicon社製)を推奨濃度で添加した後、FBSを15%添加したものを用いた。
次いで、ST2細胞を24wellプレート上でコンフルエントになるまで培養し、そこにMEF細胞から分離した上述の培養ES細胞を250〜500個播種した。当該培養物を、分化誘導培地(α−MEMに10%ウシ胎児血清、100nM デキサメタゾン、20pM 塩基性線維芽細胞増殖因子、10pM コレラトキシン及び100ng/mL エンドセリン−3を添加したもの)で培養し、ES細胞をメラノサイトへ分化誘導した。分化誘導後24日間で、メラノサイトが出現し、メラニン合成を行う様子が観察された。
本誘導系において、上述の分化誘導培地に各濃度(12.5、25、50μg/mL)で本願発明に用いる海藻抽出物を継続して添加し、24日間の分化誘導を行った。また、エンドセリン−1についても同様に実験を行った。その後、Cell Counting Kit−8を用いて相対細胞数を定量し、さらに、細胞をPBS(−)で3回洗浄した後、2N NaOHを用いて60℃で2時間溶解した。溶解物について475nmの吸光度を測定し、メラニン合成量を定量した。その結果、本願発明に用いる海藻抽出物を添加することにより、メラノサイトへの分化が促進され、かつ細胞数当たりのメラニン合成量が濃度依存的に有意に増加した。
【0023】
これらの試験結果を表1に示した。本願発明に用いる海藻抽出物に、陽性対照であるエンドセリン−1と同等以上の顕著なメラノサイト分化誘導促進効果が認められた。なお、オキナワモズクの抽出物には効果がなく、特定の海藻抽出物のみに効果があることが分かった。以上より、本願発明に用いる海藻抽出物が極めて優れた幹細胞からのメラノサイト分化誘導促進効果及びメラニン合成促進効果を有することが明らかとなり、本願発明に用いる海藻抽出物のメラノサイト分化誘導促進剤及びメラニン合成促進剤としての効果が認められた。
【表1】
表中の値は、分化誘導24日目のメラニン合成量/相対細胞数(%)(コントロール比)である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本願発明のメラノサイト分化誘導促進剤によれば、色素異常症及び白髪を治療、予防及び改善することができる。例えば、本願発明において見出された海藻抽出物を用いることにより、根本からの色素異常症及び白髪の解決に繋がる。本願発明で見出された海藻抽出物を経口投与、皮膚への直接注入、塗布、貼付等により導入することで、組織に存在する未分化細胞のメラノサイトへの分化を促進することができる。