【実施例】
【0013】
次に本願発明を詳細に説明するため、実施例として本願発明に用いる海藻抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本願発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。
【0014】
製造例1 ガゴメコンブの熱水抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ガゴメコンブの熱水抽出物を3.2g得た。
製造例2 ガゴメコンブの塩酸抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ガゴメコンブの塩酸抽出物を2.4g得た。
製造例3 ガゴメコンブの50%エタノール抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ガゴメコンブの50%エタノール抽出物を2.5g得た。
製造例4 ガゴメコンブのエタノール抽出物
ガゴメコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ガゴメコンブのエタノール抽出物を4.3g得た。
製造例5 ガゴメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ガゴメコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ガゴメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
製造例6 オニコンブの熱水抽出物
オニコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オニコンブの熱水抽出物を3.5g得た。
製造例7 オニコンブの塩酸抽出物
オニコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オニコンブの塩酸抽出物を2.5g得た。
製造例8 オニコンブの50%エタノール抽出物
オニコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オニコンブの50%エタノール抽出物を3.2g得た。
製造例9 オニコンブのエタノール抽出物
オニコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オニコンブのエタノール抽出物を5.5g得た。
製造例10 オニコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
オニコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、オニコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を375g得た。
製造例11 ホソメコンブの熱水抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ホソメコンブの熱水抽出物を5.2g得た。
製造例12 ホソメコンブの塩酸抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ホソメコンブの塩酸抽出物を3.5g得た。
製造例13 ホソメコンブの50%エタノール抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ホソメコンブの50%エタノール抽出物を4.4g得た。
製造例14 ホソメコンブのエタノール抽出物
ホソメコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ホソメコンブのエタノール抽出物を5.2g得た。
製造例15 ホソメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ホソメコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ホソメコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
製造例16 ナガコンブの熱水抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ナガコンブの熱水抽出物を2.2g得た。
製造例17 ナガコンブの塩酸抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ナガコンブの塩酸抽出物を1.8g得た。
製造例18 ナガコンブの50%エタノール抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ナガコンブの50%エタノール抽出物を2.4g得た。
製造例19 ナガコンブのエタノール抽出物
ナガコンブの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ナガコンブのエタノール抽出物を3.6g得た。
製造例20 ナガコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ナガコンブの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ナガコンブの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
製造例21 ワカメの熱水抽出物
ワカメの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ワカメの熱水抽出物を3.2g得た。
製造例22 ワカメの塩酸抽出物
ワカメの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、ワカメの塩酸抽出物を2.7g得た。
製造例23 ワカメの50%エタノール抽出物
ワカメの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ワカメの50%エタノール抽出物を3.1g得た。
製造例24 ワカメのエタノール抽出物
ワカメの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、ワカメのエタノール抽出物を3.9g得た。
製造例25 ワカメの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ワカメの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、ワカメの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を380g得た。
【0015】
比較製造例としてオキナワモズクを用いた。オキナワモズクは、ナガマツモ目ナガマツモ科オキナワモズク属に属する海藻であり、コンブ属やワカメ属ではない。
比較製造例1 オキナワモズクの熱水抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに精製水800mLを加え、95〜100℃で2時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オキナワモズクの熱水抽出物を5.5g得た。
比較製造例2 オキナワモズクの塩酸抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに0.1N塩酸800mLを加え、4℃で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥することで、オキナワモズクの塩酸抽出物を3.7g得た。
比較製造例3 オキナワモズクの50%エタノール抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに50%エタノール400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オキナワモズクの50%エタノール抽出物を3.3g得た。
比較製造例4 オキナワモズクのエタノール抽出物
オキナワモズクの乾燥物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過し、得られた濾液を濃縮乾固することで、オキナワモズクのエタノール抽出物を5.0g得た。
比較製造例5 オキナワモズクの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
オキナワモズクの乾燥物20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液400mLを加え、常温で7日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過することで、オキナワモズクの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を375g得た。
【0016】
処方例1 化粧水
成分 配合量(部)
1.ガゴメコンブの熱水抽出物(製造例1) 0.1
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0017】
処方例2 クリーム
成分 配合量(部)
1.ガゴメコンブの塩酸抽出物(製造例2) 0.05
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0018】
処方例3 錠剤
成分 配合量(部)
1.オニコンブの熱水抽出物(製造例6) 5.0
2.乾燥コーンスターチ 25.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1〜4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成型する。成型した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0019】
処方例4 飲料
成分 配合量(部)
1.オニコンブの塩酸抽出物(製造例7) 0.05
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分2及び3を成分5の一部に溶解する。次いで、成分1、4及び5を加えて混合する。
【0020】
処方例5 ヘアトニック
成分 配合量(部)
1.ガゴメコンブのエタノール抽出物(製造例4) 5.0
2.エタノール 60.0
3.グリセリン 2.0
4.トウガラシチンキ 0.1
5.酢酸dl−α−トコフェロール 0.1
6.l−メントール 0.05
7.精製水にて全量を100とする。
[製造方法]成分1及び成分4〜6を成分2に溶解し、成分3、7を加え、十分撹拌混合し、製品とする。
【0021】
実験例1 本願発明に用いる海藻抽出物の幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進によるメラニン合成促進効果の評価
本実験例では、これまでに山根らが報告しているマウス胚性幹細胞(ES cell:embryonic stem cell)を用いた幹細胞からメラノサイトへの分化誘導系(Yamane T., Hayashi S., Mizoguchi M., Yamazaki H., Kunisada T., Developmental Dynamics, 1999, Vol. 216, Issue 4−5, pp. 450−458)を用いて、本願発明に用いる海藻抽出物のメラノサイトへの分化誘導促進効果とそれに伴うメラニン合成の促進効果について評価した。なお、本実験において、これまでメラニン合成促進効果が確認されているエンドセリン−1についても同様な実験系を用いて評価した。以下に詳細を説明する。
【0022】
6cmプラスチックディッシュにマイトマイシンC処理を施したMEF細胞(Mouse embryonic fibroblast)を培養し、その上にマウスES細胞を10×10
4〜20×10
4個播種し、37℃において5%CO
2インキュベーターにて前培養した。使用した培地は、DMEMにES細胞用添加因子(L−グルタミン液、2−メルカプトエタノール液、ヌクレオシド液、非必須アミノ酸液及びESGRO、いずれもchemicon社製)を推奨濃度で添加した後、FBSを15%添加したものを用いた。
次いで、ST2細胞を24wellプレート上でコンフルエントになるまで培養し、そこにMEF細胞から分離した上述の培養ES細胞を250〜500個播種した。当該培養物を、分化誘導培地(α−MEMに10%ウシ胎児血清、100nM デキサメタゾン、20pM 塩基性線維芽細胞増殖因子、10pM コレラトキシン及び100ng/mL エンドセリン−3を添加したもの)で培養し、ES細胞をメラノサイトへ分化誘導した。分化誘導後24日間で、メラノサイトが出現し、メラニン合成を行う様子が観察された。
本誘導系において、上述の分化誘導培地に各濃度(12.5、25、50μg/mL)で本願発明に用いる海藻抽出物を継続して添加し、24日間の分化誘導を行った。また、エンドセリン−1についても同様に実験を行った。その後、Cell Counting Kit−8を用いて相対細胞数を定量し、さらに、細胞をPBS(−)で3回洗浄した後、2N NaOHを用いて60℃で2時間溶解した。溶解物について475nmの吸光度を測定し、メラニン合成量を定量した。その結果、本願発明に用いる海藻抽出物を添加することにより、メラノサイトへの分化が促進され、かつ細胞数当たりのメラニン合成量が濃度依存的に有意に増加した。
【0023】
これらの試験結果を表1に示した。本願発明に用いる海藻抽出物に、陽性対照であるエンドセリン−1と同等以上の顕著なメラノサイト分化誘導促進効果が認められた。なお、オキナワモズクの抽出物には効果がなく、特定の海藻抽出物のみに効果があることが分かった。以上より、本願発明に用いる海藻抽出物が極めて優れた幹細胞からのメラノサイト分化誘導促進効果及びメラニン合成促進効果を有することが明らかとなり、本願発明に用いる海藻抽出物のメラノサイト分化誘導促進剤及びメラニン合成促進剤としての効果が認められた。
【表1】
表中の値は、分化誘導24日目のメラニン合成量/相対細胞数(%)(コントロール比)である。