(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の化粧料について、具体例を挙げて説明する。なお、化粧料に用いられる各成分は、いずれも単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
本発明の化粧料は、光輝性粉体を包含しているハイドロゲル粒子を含有する。ここで、ハイドロゲルとは、三次元網目構造を有する高分子が水に膨潤したものである。また、ハイドロゲル粒子は、三次元網目構造を有する高分子および水を含む粒子である。
また、ハイドロゲル粒子の概念には、外層である外皮と内層である芯成分とからなる、内層と外層が同心状のカプセルは含まれない。カプセルは殻(外皮)を持つが、ハイドロゲル粒子はこれを持たないため、カプセルに比べて、皮膚に適用したときにハイドロゲル粒子がよりスムーズに破壊されて延ばしやすく、カス残りがないという優れた効果が発現される。
【0013】
ハイドロゲル粒子を形成する高分子材料として、寒天、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻抽出物;グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、カシアガム等の植物種子粘質物質;
ペクチン、アラビノガラクタン等の植物果実粘質物;
キサンタンガム、スクレログルカン、プルラン、デキストラン、ジュランガム、カード
ラン等の微生物廃生粘質物;
ゼラチン、アルブミン、カゼイン等の動物蛋白質;
大豆蛋白質、小麦蛋白質等の植物蛋白質;
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース等のセルロースおよびその誘導体;
澱粉、澱粉リン酸エステル、澱粉グリコール酸エステル等の澱粉およびその誘導体が挙げられる。
これらのうち、物理的に崩壊しやすく脆いゲル粒子を形成する高分子を用いるという観点からは、ハイドロゲル粒子がカラギーナン、寒天、ジュランガム、キサンタンガム、ゼラチンおよびペクチンからなる群から選択される1種又は2種以上により形成されることが好ましく、寒天を用いることがより好ましい。
【0014】
また、ハイドロゲル粒子には、架橋型ハイドロゲルよりも非架橋型ハイドロゲルを用いることが好ましい。架橋型ハイドロゲルを用いた粒子では、粒子内部よりも表面のほうが硬い等の粒子内で硬さに分布が生じることがあるが、非架橋型ハイドロゲルを用いた粒子では、粒子内のゲルの硬さをより均一化できる。このため、皮膚等に塗布した際に手指等でより円滑に崩壊させることができる。
ここで、「非架橋型ハイドロゲル」とは、ゲル化がイオン、たとえば、カリウムイオンやカルシウムイオン等との反応によって生じるのではなく、ゲル化剤が寒天である場合のようにゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるものをいう。寒天の水への溶解温度は、一般に75℃以上、その主なものについては75〜90℃程度であり、寒天を水に溶解させた後、冷却したときのゲル化温度は30〜45℃程度である。
【0015】
また、ハイドロゲル粒子に含まれる水と、ハイドロゲル粒子における水を除いた高分子との質量比(水/高分子)は、たとえば5〜5×10
4が好ましく、7〜5×10
3がより好ましく、10〜5×10
2がさらに好ましい。
【0016】
ハイドロゲル粒子の平均粒子径(個数平均)は、化粧料中のハイドロゲル粒子の外観の美しさをより顕著にみせる観点から、たとえば0.5mm以上であり、好ましくは1mm以上が好ましい。また、ハイドロゲル粒子の平均粒子径の上限に特に制限はなく、化粧料の用途等に応じて適宜設定することができるが、化粧料を肌に塗布した後の肌のパール感をより一様なものとする観点からは、ハイドロゲル粒子の平均粒子径は、たとえば8mm以下であり、5mm以下とすることが好ましい。
【0017】
なお、ハイドロゲル粒子の平均粒子径は、たとえば、任意に選択した5個のハイドロゲル粒子を黒紙上に配置し、ノギス等を用いて計測する。測定は、一つの粒子について5回おこない、平均値とする。そして、所定の個数の粒子について粒子径を測定し、それらの平均値を求めることにより、個数平均粒子径が得られる。
【0018】
次に、ハイドロゲル粒子に含まれる光輝性粉体について説明する。
本発明において用いられる光輝性粉体は、光輝性を有する粉体であり、薄片状粉体である。有色のものおよび無色(白色)のもののいずれをも使用し得る。ただし、光輝性のない白色顔料、体質顔料などは含まない。
【0019】
光輝性粉体として、具体的には、以下に詳述する複合顔料のほか、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、アルミニウム末などの金属粉、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末やポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末などのラメ、その他の板状粉体などが例示される。中でも光輝性を有する複合顔料が、種類が豊富であり好ましい。
【0020】
ここで、光輝性を有する複合顔料とは、屈折率の低い物質と屈折率の高い物質を層状にすることにより層の境界における多重反射光が干渉し、パール状の干渉色と光沢が現れる現象を利用した顔料である。具体的には、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被覆雲母チタン、黄酸化鉄被覆雲母チタン、コンジョウ被覆雲母チタン、酸化クロム被覆雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母、ベンガラ・酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、酸化鉄・無水ケイ酸被覆ガラス末、銀・無水ケイ酸被覆ガラス末、金・無水ケイ酸被覆ガラス末などが挙げられる。美麗なパール様外観の観点から好ましくは、ベンガラ・酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、酸化鉄・無水ケイ酸被覆ガラス末、銀・無水ケイ酸被覆ガラス末、金・無水ケイ酸被覆ガラス末であり、更に好ましくは酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、酸化鉄・無水ケイ酸被覆ガラス末、銀・無水ケイ酸被覆ガラス末、金・無水ケイ酸被覆ガラス末である。
【0021】
光輝性を有する複合顔料の市販品としては、BASF社のFlamencoシリーズ(たとえばFlamenco Supreme Sparkle)、Timicaシリーズ(たとえばTimica Extra Large Sparkle)、Cloisonneシリーズ(たとえばCloisonne(r) Sparkle Red 424J)、Merck社の、Timironシリーズ(たとえばTimiron(r) Diamond Cluster MP−149)、Coloronaシリーズ(たとえばColorona(r) Karat Gold MP−24)、ECKART 社のPRESTIGEシリーズ(たとえば、PRESTIGE Sparkling Lemon Gold)、日本板硝子株式会社のメタシャインシリーズ(たとえばMC1080RY)、日本光研工業株式会社のプロミネンスシリーズ(たとえばPROMINENCE(r) RYH)、などが例示される。
【0022】
また、本発明の化粧料で使用できる光輝性粉体は、そのまま使用することができる。また、所定の処理の後用いてもよく、中でも親水処理を行ったものを用いることが好ましい。具体的には、各種の親水性処理剤、樹脂、無機ケイ素系化合物等で親水処理を行ったものを用いることができる。本発明では、ハイドロゲル粒子への親和性の点から、ポリエチレングリコール、寒天、シリカ等による被覆処理がより好ましく、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明において、ハイドロゲル粒子中の光輝性粉体は、薄片状粉体であり、その平均粒子径は、ハイドロゲル粒子のパール様外観をより顕著に発揮させる観点からは、20μm以上であり、40μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましい。
一方、化粧料を肌に塗布した後、肌の過度のギラつきを抑える観点からは、ハイドロゲル粒子中の光輝性粉体の平均粒子径は200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
なお、本発明において、ハイドロゲル粒子中の光輝性粉体の平均粒子径は、たとえば電子顕微鏡観察、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定機によって、測定される。具体的には、レーザー回折/散乱法の場合、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(たとえば、堀場製作所社製、LA−920)で測定する。
【0024】
本発明において、光輝性粉体のハイドロゲル粒子中の含有量は、0.005質量%以上10質量%以下の範囲である。光輝性粉体が0.005質量%以上であると、光輝性粉体の美麗なパール様外観効果を化粧料に充分付与することができ、一方、10質量%以下であると光輝性粉体の充分な分散性が得られるとともに、経済的にも有利である。中でもハイドロゲル粒子中の光輝性粉体の含有量は0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜4質量%であることがより好ましい。
【0025】
また、化粧料(全組成物)中の光輝性粉体を含むハイドロゲル粒子の含有量は、1質量%以上99質量%以下が好ましく、化粧料中のハイドロゲル粒子の外観の美しさをより顕著にみせる点から、5質量%以上80質量%以下がより好ましく、肌に塗布した後も、肌上で美麗なパール様外観を呈する点から、10質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
次に、光輝性粉体を内包するハイドロゲル粒子の光学特性について説明する。
本発明において、ハイドロゲル粒子は、透明性が高く、輝度ムラが大きい構成となっており、これらのバランスにより、きらびやかで美しい外観が得られる。
【0027】
このうち、ハイドロゲル粒子の透明性については、ハイドロゲル粒子を潰してガラス板に塗布した際の、塗布物の全透過率が厚さ15μmにおいて60%以上であり、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。これにより、ハイドロゲル粒子が効率よく効果的にパール様外観をさらに呈する構成となる
また、上記方法により測定されるハイドロゲル粒子の塗布物の全透過率の上限に特に制限はなく100%以下が好ましく、99.8%以下がより好ましい。
【0028】
なお、ハイドロゲル粒子の全透過率は、たとえばHaze−meter HM−150(村上色彩技術研究所社製)等のヘイズメーターを用いて測定することができる。
測定には、波長550nmをピークとした光を用いる。測定試料の調製は以下のようにおこなう。すなわち、測定対象のハイドロゲル粒子を1g秤量し、これを潰し、透明なガラス板へ塗布を0.025mmのコーター(YOSHIMITSU社製)を用いて行い、塗布物の全透過率を測定する。測定後、膜厚計(YOSHIMITSU社製)を用いて、サンプルの実際の膜厚を測定する。
ここで、全透過率(Tt)は、サンプルの厚みの影響を受ける為、本発明においては、あらかじめ塗布したサンプルの実際の厚さ(L(μm))を測定し、以下の換算式を用いて、厚さ15μmのときの全透過率(Tt15)を算出する。
(換算式)
【0030】
また、ハイドロゲル粒子の輝度ムラについては、ハイドロゲル粒子を黒紙上に配置し、配置面から5cmの距離からデジタルカメラで撮影して得られるハイドロゲル粒子の画像の中心部の領域において、ピクセルごとの輝度の標準偏差を4以上とする。中でもハイドロゲル粒子のパール様外観に優れる観点から、5以上が好ましく、8以上がより好ましい。
輝度の標準偏差を上記範囲とすることにより、ハイドロゲル粒子の外観に好適な煌きを与え、化粧料中で、各ハイドロゲル粒子が美しく輝くため、これまでにない独特の外観を有する組成物を得ることができる。
一方、上記輝度の標準偏差の上限は、100以下が好ましく、75以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。
【0031】
以下、ハイドロゲル粒子の輝度の標準偏差の測定方法をさらに詳細に説明する。
照明用ライトとして、色評価用蛍光ランプ(たとえばFHF32N−EDL、東芝ライテック社製)を用いる。照明用ライトの明るさは、ハイドロゲル粒子の設置位置における照度が200Lx程度になるように設置する。尚、カメラ(たとえばCX4、RICOH社製)の高さは、カメラと対象物との距離が5cmとなるよう設置する。
撮影条件が整った後に、KODAK Gray Cards(Cat.No.1527795)を用いてカメラのホワイトバランスをとる。その後、ハイドロゲル粒子を所定の位置、黒紙(王子特殊紙社製テンカラー)上に設置してカメラで撮影する。ここで、黒紙の輝度の標準偏差は0.93、輝度の平均値は21.19である。
【0032】
Adobe Photoshop C3において、撮影画像をヒストグラム表示し、チャンネルは輝度とする。ハイドロゲル粒子の中心を画像上で目視判断し、その範囲を15px×15px(0.375mm×0.375mm)の範囲で選択し、標準偏差を得る。1mm以下のサンプルに関しては5px×5pxを選択する。
また、上記条件でColorChecker No.24(black)(ColorChecker、GretagMacbeth社製)を上記条件で撮影した場合、標準偏差は0.76、輝度の平均値は31.14である。
尚、ハイドロゲル粒子の撮影に用いられるデジタルカメラとしては、ハイドロゲル粒子画像をデジタルデータとして取得できるものであれば特に限定はない。
【0033】
かかるデジタルカメラでハイドロゲル粒子を撮ると、官能評価でパール粒子の煌きが強く感じられる粒子では、輝度の分布が広く、官能評価でパール粒子の煌きが弱いと感じられる粒子では、輝度の分布が狭い。
本発明においては、この輝度のばらつきを数値化し、標準偏差を特定の範囲に設定することにより、ハイドロゲル粒子およびこれを含む化粧料自体に特有の美観を与えるとともに、化粧料として使用したときに、肌に自然で美しいパール感を与えることができる。
輝度の標準偏差を求める際には、たとえばパーソナルコンピュータを用いる。このとき、デジタルカメラで撮影した画像について、ピクセル毎に輝度を求め、その標準偏差と平均値を算出できる演算ソフト(たとえば、アドビ社製フォトショップ)を用いる。
【0034】
ハイドロゲル粒子は、ハイドロゲル粒子のパール外観を損なわない範囲で化粧料有効成分等の光輝性粉体以外の成分を含んでいてもよい。光輝性粉体以外の成分として、保湿剤、化粧品用着色剤、日焼け止め剤、皮膚保護剤、制汗剤、洗浄剤、香料、抗菌剤、殺菌剤、感触向上剤、泡安定化剤およびこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
保湿剤としては、グリセリン、グリコール、ソルビトール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。外観における光輝性粉体の識別性の観点から、これらの含有量はハイドロゲル粒子中に0.01〜90質量%が好ましく、0.1〜80質量%がより好ましく、1〜50質量%がさらに好ましく、5〜30質量%がよりさらに好ましい。
【0036】
化粧料用着色剤としては、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色219号、赤色228号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、だいだい色401号、青色404号等の有機顔料が挙げられ、油溶性染料としては、たとえば赤色505号、赤色501号、赤色225号、黄色404号、黄色405号、黄色204号、だいだい色403号、青色403号、緑色202号、紫色201号等が挙げられ、建染染料としては、たとえば赤色226号、青色204号、青色201号が挙げられ、レーキ染料としては、たとえば種々の酸性染料をアルミニウムやバリウムでレーキしたもの等が挙げられる。
【0037】
日焼け止め剤としては、たとえばベンゾフェノン化合物、ジベンゾイルメタン誘導体およびシンナート誘導体、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機系化合物などが挙げられる。これらの含有量は、ハイドロゲル粒子中0〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0038】
また、化粧料有効成分として、ハイドロゲル粒子のパール様外観を損なわない範囲で光輝性粉体以外の粉体を使用することができる。このような粉体として体質顔料、合成高分子粒子、天然高分子系粒子等が挙げられる。
体質顔料としては、タルク、カオリン、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
合成高分子粒子としては、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、テトロン粉末、エポキシ樹脂粉末、シリコーン粒子(メチルシリコーンゴム粒子、ポリメチルシルセスキオキサン粒子)、架橋ポリアクリル酸アルカリ塩粒子、(メタ)アクリル酸エステル系粒子、ポリイミド系粒子、ポリウレタン系粒子が挙げられる。
天然高分子系粒子としては、キトサン粒子、澱粉粒子、セルロース粒子、シルク粉末、結晶セルロース粉末等が挙げられる。これらの粉体は、皮膚等に残留したとき、サラサラ感を向上させる等の感触向上剤として機能し得る。当該粉体はハイドロゲル粒子中に0〜10質量%が好ましく、0〜2質量%がより好ましい。
【0039】
なお、ハイドロゲル粒子の白濁を防ぐ観点から、ハイドロゲル粒子は油剤を実質的に含まない構成とするとすることが好ましく、特に、屈折率1.4以上の油剤を実質的に含まない構成とするとすることが好ましい。具体的には、ハイドロゲル粒子中の屈折率1.4以上の油剤の含有量を0.01質量%以下とすることが好ましい。
【0040】
次に、本発明におけるハイドロゲル粒子およびこれを含む化粧料の製造方法を説明する。
まず、光輝性粉体を内包するハイドロゲル粒子は、たとえば以下の方法で製造することができる。すなわち、ハイドロゲル形成高分子をイオン交換水に分散し、その溶解温度で充分に溶解させる。その後、ゲル化温度以上の温度で、光輝性粉体を混合する。又はハイドロゲル形成高分子と光輝性粉体をイオン交換水に分散、混合した後にハイドロゲル形成高分子を溶解温度で充分に溶解させても良い。このように添加混合した後、一般的な滴下法、噴霧法、或いは、攪拌法等によりハイドロゲル粒子を得ることができる。
滴下法は、孔から混合液を吐出させ、吐出された混合液がその表面張力又は界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を空気等の気相中又は液相中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。なお、粒径の均一なハイドロゲル粒子を製造する観点から、孔から吐出される混合液に振動を与えることが好ましい。
噴霧法は、噴霧ノズルを用い、噴霧ノズルから混合液を気相に噴霧させると共に、その表面張力によって液滴を形成させ、その液滴を気相で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
攪拌法は、混合液と実質的に混じり合わない性状を有し且つゲル化温度以上の温度に調整した液体に混合液を投入し、攪拌による剪断力により混合液を微粒化し、界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を混合液と実質的に混じり合わない液中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
なかでも、滴下法が製造安定性の観点から好ましい。
【0041】
このようにして得られたハイドロゲル粒子は、光輝性粉体を内包しており、オイル洗浄後又はそのまま化粧料に配合される。
たとえば、あらかじめハイドロゲル粒子を調製しておき、基剤に所定量のハイドロゲル粒子を添加混合して化粧料を得ることができる。又は、ハイドロゲル粒子の分散液に、水、活性剤等の基剤を加えることで配合して化粧料とすることもできる。
【0042】
本発明の化粧料は、たとえば基剤(ハイドロゲル粒子を除く外相)中に上記ハイドロゲル粒子が分散してなる構成である。
基剤の材料としては、水、増粘剤、その他の高分子材料等が挙げられる。
増粘剤としては、特開平11−12119号公報に記載の水溶性アルキル置換多糖誘導体、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリル酸ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体の塩類等の増粘剤等が挙げられる。
また、上記以外の高分子材料として、寒天、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻抽出物;
グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、カシアガム等の植物種子粘質物質;
ペクチン、アラビノガラクタン等の植物果実粘質物;
キサンタンガム、スクレログルカン、プルラン、デキストラン、ジュランガム、カード
ラン等の微生物廃生粘質物;
ゼラチン、アルブミン、カゼイン等の動物蛋白質;
大豆蛋白質、小麦蛋白質等の植物蛋白質;
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース等のセルロースおよびその誘導体;
澱粉、澱粉リン酸エステル、澱粉グリコール酸エステル等の澱粉およびその誘導体が挙げられる。
これらのうち、物理的に崩壊しやすく、ハイドロゲル粒子を安定に分散させて、浮上や沈降を抑制するという観点からは、基剤が、ポリアクリル酸系(カルボキシビニルポリマー)、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na、およびキサンタンガムからなる群から選択される1種又は2種以上により形成されることが好ましく、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Naがより好ましい。
【0043】
基剤中の増粘剤の含有量は0.001〜10質量%とすることが好ましく、0.01〜5%がより好ましい。
【0044】
基剤の粘度については、ハイドロゲル粒子の沈降又は浮上を抑制する観点から、25℃粘度の下限が、500mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましい。
【0045】
また、基剤中に、化粧料有効成分を配合してもよい。化粧料有効成分として、たとえば、ハイドロゲル粒子内に含まれる化粧料有効成分として前述したものを用いることができる。ハイドロゲル粒子内に含まれる化粧料有効成分と、基剤中に含まれる化粧料有効成分とは、同じ成分であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
ここで、ハイドロゲル粒子の視認性を高める観点からは、基剤の透明度を高めることが好ましい。具体的には、石英セル(type:AB10−UV−0.5、Cat.No.:621016105、光路長0.5mmセル(ジーエルサイエンス社製))に基剤を入れ、紫外可視吸光光度計UV−1800(島津制作所社製)を用いて、測定波長550nmにおいて、透過率を測定する。透過率は40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
また、上記方法により測定される基剤の塗布物の透過率の上限に特に制限はなく100%以下である。
【0047】
また、本発明における化粧料として、たとえば、ローション、美容液、マッサージ剤等のスキンケア化粧料;化粧下地等のメイクアップ下地化粧料;ファンデーション、アイシャドウ、口紅、リップグロス、ボディのデコルテ用等のメイクアップ化粧料;乳液、クリーム、ジェル等の紫外線防御化粧料;ヘアシャンプー、コンディショナー、トリートメント等の毛髪化粧料;ボディシャンプー、シャワー剤、洗顔料、メイク落とし等の洗浄用又は入浴用化粧料が挙げられる。中でも、ローション、美容液、マッサージ剤、ファンデーション、リップグロス、ボディ、ジェル、洗顔料、メイク落としが好ましい。
【0048】
次に、本発明の作用効果を説明する。
本発明においては、化粧料に含まれるハイドロゲル粒子が光輝性粉体を包含しており、光輝性粉体について、平均粒子径が20μm以上、ハイドロゲル粒子中の含有量が0.005質量%以上10質量%以下とそれぞれ特定の範囲、及びハイドロゲル粒子の全透過率が60%以上と特定の範囲となっている。さらに、前記ハイドロゲル粒子の輝度の標準偏差が4以上と特定の範囲となっている。
このようにすることで、光輝性粉体のもつ方向性のある光沢が効果的に発現してハイドロゲル粒子を含む化粧料が美麗なパール様外観を呈するようになるとともに、肌に塗布した後も、肌上で美麗な均一なパール感を呈することができる。たとえば、輝きのあるラメのような風合いを持つようになる。そして、一つ一つのハイドロゲル粒子が化粧料の中で強く光り輝くため、これまでにない独特な外観の化粧料を得ることができる。
一方、光輝性粉体の大きさ及びハイドロゲル粒子の光学特性を上述のようにすることで、肌に塗布した後に、肌上で美麗なパール感を呈しつつ、過度のギラつき等は抑制されて、肌に自然な光沢感を与えることも可能となる。
【0049】
なお、本発明における化粧料は、皮膚や毛髪等の所定の部位に、手で又はスポンジ等の道具を用いて塗布することができる。また、必要に応じてマッサージしてもよい。化粧料を塗布することにより、毛髪や皮膚上でハイドロゲル粒子が容易に崩壊し、所定の部位に光輝性粉体が一様に押し広げられるため、塗布部の色むらが生じにくく、塗布した後も肌上で美麗なパール様外観が維持される。また、化粧料が化粧料有効成分を含む場合には、かかる成分が肌上に一様に分布し、残留する。
【0050】
また、本発明において、化粧料が容器から外部へ排出される際に生じる機械力を、ハイドロゲル粒子を崩壊させる物理力として利用することもできる。すなわち、ポンプ又はトリガー等の容器から化粧料を排出する際に、機械力によりハイドロゲル粒子を容易に破壊し、液状、スラリー状、泡状等の形態で排出させることで、光輝性粉体をさらに効率よく均一に分散させることもできる。また、容器は美麗な外観の観点から透明もしくは半透明が好ましい。
【0051】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0052】
以下の実施例において、ハイドロゲル粒子は以下の方法で製造した。ハイドロゲル粒子の製造条件及び得られた粒子の評価結果を表1に示す。また、化粧料の製造条件及び評価結果を表2に示す。
【0053】
製造例1<ハイドロゲル粒子の製造方法>
表1記載の光輝性粉体、ならびに粉体の分散液と、水相成分をそれぞれ80℃及び90℃で加熱溶解した後、水相成分を80℃に冷却し、80℃で光輝性粉体の分散液及び水相成分をアンカー式攪拌機で攪拌混合し、分散液を調製した。この分散液を加熱したまま、10℃に冷却したオイル(メチルポリシロキサン:信越化学工業社製、商品名:シリコーン KF−96A−50CS)中に滴下し、ハイドロゲル粒子を生じさせた。その後、粒子を固液分離/洗浄し、単分散性の高いハイドロゲル粒子1〜9を得た。
【0054】
製造例2<化粧料の製造方法>
実施例1〜8、比較例1及び2において、化粧料は以下の方法で製造した。
アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30)コポリマー(グッドリッチ社製ペムレンTR−1)及びステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸ナトリウムと水酸化カリウムの水溶液を90℃に加熱溶解させ、均一攪拌した後、室温まで冷却した。次に製造例1で得られたハイドロゲル粒子を加え、化粧料を調製した。得られた化粧料について、以下の方法で評価した。
【0055】
製造例3<化粧料の製造方法>
比較例3及び比較例4において、化粧料は以下の方法で製造した。
表1記載の光輝性粉体(ベンガラ・酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末(80μm))と、表2記載の水相成分(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30)コポリマーと水酸化カリウムの水溶液)を90℃に加熱溶解した後、均一に混合し、室温まで冷却した。この製造方法では、ハイドロゲル粒子ができていなかった。
【0056】
得られたハイドロゲル粒子又は化粧料に用いた成分の物性もしくは光学特性は、以下の方法で測定した。
【0057】
<ハイドロゲル粒子の輝度の標準偏差の測定法>
照明用ライトとして、色評価用蛍光ランプ(FHF32N−EDL、東芝ライテック社製)を用いた。照明用ライトの明るさは、ハイドロゲル粒子の設置位置における照度が200Lx程度になるように設置した。尚、カメラ(CX4、RICOH社製)の高さは、カメラと対象物との距離が5.0cmとなるよう設置した。
撮影条件が整った後に、KODAK Gray Cards(Cat.No.1527795)を用いてカメラのホワイトバランスをとった。その後、ハイドロゲル粒子を所定の位置、黒紙(王子特殊紙社製テンカラー)上に設置してカメラで撮影した。ここで、黒紙の標準偏差は0.93、輝度の平均値は21.19であった。
撮影画像はAdobe Photoshop C3において、ヒストグラム表示を行い、チャンネルは輝度とした。ハイドロゲル粒子の中心を画像上で判断し、その範囲を15px×15px(0.375mm×0.375mm)で選択し、標準偏差を得た。
また、上記条件でColorChecker No.24(black)(ColorChecker、GretagMacbeth社製)を上記条件で撮影した場合、標準偏差は0.76、輝度の平均値は31.14であった。
【0058】
<ハイドロゲル粒子の透過率の評価方法>
ハイドロゲル粒子の全透過率は、ヘイズメーター(Haze−meter HM−150、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。測定には、波長550nmをピークとした光を用いた。測定試料の調製は以下のように行った。測定対象のハイドロゲル粒子を1g秤量し、これを潰してくずし、透明なガラス板へ塗布を0.025mmのコーター(YOSHIMITSU社製)を用いて行い、塗布物の全透過率を測定した。測定後、膜厚計(YOSHIMITSU社製)を用いて、サンプルの実際の膜厚を測定した。
ここで、全透過率(Tt)は、サンプルの厚みの影響を受ける為、前述した換算式を用いて、厚さ15μmのときの全透過率(Tt15)を算出した。
【0059】
<基剤の透過率の評価方法>
石英セル(type:AB10−UV−0.5、Cat.No.:621016105、光路長0.5mm(ジーエルサイエンス社製))に基剤を入れ、紫外可視吸光光度計UV−1800(島津制作所社製)を用いて、測定波長550nmにおいて、透過率を測定した。実施例1〜8、比較例1〜4の基剤の透過率は100%であった。尚、比較例3、4の透過率については、光輝性粉体(ベンガラ・酸化チタン被覆ガラス末(80μm))を含まない基剤のみで測定した。
【0060】
<ハイドロゲル粒子の粒子径の測定法>
ハイドロゲル粒子の粒子径は任意に選択した5個の粒子を5回繰り返し測定し、平均値とした。
【0061】
次に、化粧料の評価方法を説明する。
(評価方法)
(実施例1〜8および比較例1〜4)
表1および表2に示す組成の化粧料を製造し、10名の専門パネラーが実際に各化粧料を観察、使用した時の「化粧料の外観の美麗なパール感」、「化粧料の外観におけるパール感の目立ち易さ」、「化粧料の外観における光輝性粉体の識別性」、「塗布時のパールのムラづきの無さ」、及び「塗布後の美麗なパール感」を評価し、10名の積算値を記載した。結果を表2に示す。
【0062】
(評価基準)
1)化粧料の外観の美麗なパール感:
5;非常に美麗なパール感を有する
4;美麗なパール感を有する
3;やや美麗なパール感を有する
2;あまり美麗なパール感を有さない
1;美麗なパール感を有さない
【0063】
2)化粧料の外観におけるパールの目立ち易さ:
5;パール感が非常に目立ちやすい
4;パール感が目立ちやすい
3;パール感がやや目立つ
2;パール感があまり目立たない
1;パール感が目立たない
【0064】
3)化粧料の外観における光輝性粉体の識別性:
化粧料と専門評価者の位置を30cm間隔と固定し、化粧料の外観における一つ一つの光輝性粉体の識別性を確認し、以下の基準で評価した。
5;光輝性粉体を非常に識別しやすい
4;光輝性粉体を識別しやすい
3;光輝性粉体をやや識別しやすい
2;光輝性粉体をやや識別しにくい
1;光輝性粉体を識別しにくい
【0065】
4)塗布時のパールのムラづきの無さ
5;パールがムラづきしない
4;パールがあまりムラづきしない
3;パールがややムラづきする
2;パールがムラづきする
1;パールが顕著にムラづきする
【0066】
5)塗布後の美麗なパール感:
5;非常に美麗なパール感を有する
4;美麗なパール感を有する
3;やや美麗なパール感を有する
2;あまり美麗なパール感を有さない
1;美麗なパール感を有さない
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
<ハイドロゲル粒子の美麗な外観>
図1(a)および
図1(b)は、それぞれ、実施例1で用いたハイドロゲル粒子1および比較例1で用いたハイドロゲル粒子8をデジタルカメラで撮影した拡大画像を示す図である。
図1(a)より、光輝性粉体のもつ方向性のある光沢が効果的に発現して、一つ一つの光輝性粉体が識別しやすく、パール感が目立ち易く、美麗なパール様外観を有するハイドロゲル粒子が得られている。一方、
図1(b)は、光輝性粉体のもつ方向性のある光沢が弱く、光輝性粉体の識別がしにくく、パール感が目立ちにくいので、美麗なパール様外観が得られていない。