特許第5944196号(P5944196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944196
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/20 20160101AFI20160621BHJP
   H02P 6/12 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H02P6/02 351K
   H02P6/02 351P
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-73147(P2012-73147)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-207882(P2013-207882A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100143557
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 美保
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 堅
(72)【発明者】
【氏名】民辻 敏泰
(72)【発明者】
【氏名】梅田 等
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−040864(JP,A)
【文献】 特開平08−172789(JP,A)
【文献】 特開平07−175533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータから供給された前記直流電力に基づいて動作するとともに、モータに駆動信号を出力するモータ駆動部と、
前記AC/DCコンバータと前記モータ駆動部とを接続する経路に配置されている起動補助回路とを備え、
前記起動補助回路は、
前記交流電源から前記AC/DCコンバータへ前記交流電力の供給が開始されてからの第1の所定期間は、前記モータ駆動部からの前記駆動信号の出力を遅延させ、
前記モータ駆動部からの前記駆動信号の出力が開始されてからの第2の所定期間は、前記モータの駆動コイルに流れる電流が所定値以下に制限されるように前記モータ駆動部の駆動電圧を徐々に増加させる、モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記起動補助回路は、
前記第1の所定期間に前記モータ駆動部からの前記駆動信号の出力を遅延させる起動遅延回路と、
前記第2の所定期間に前記モータの駆動コイルに流れる電流の制限を行う電流制限回路とを有し、
前記起動遅延回路は、
前記第1の所定期間を設定する遅延時間設定回路と、
前記遅延時間設定回路により設定された前記第1の所定期間の経過後に、前記AC/DCコンバータから前記モータ駆動部に前記直流電力が供給されるようにするスイッチ回路とを含み、
前記電流制限回路は、
前記直流電力の電流値を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路で検出された前記電流値に応じて、前記スイッチ回路の動作を制御する過電流フィードバック回路とを含む、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記起動遅延回路は、前記遅延時間設定回路に蓄積された電気エネルギを放電するリセット回路及び前記スイッチ回路に供給される電流を制限するダンパ回路のうち少なくともいずれか一方をさらに有する、請求項2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記電流制限回路は、前記直流電力の電流値の大きさに応じて、前記過電流フィードバック回路に供給する直流電圧の電圧レベルを調整する電圧レベル調整回路をさらに備える、請求項2又は3に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記起動補助回路は、前記モータのロータがロック状態となった後の再起動時において、前記モータ駆動部からの前記駆動信号の出力が開始されてから前記モータが正常回転に達するまでの第3の所定期間は、前記モータの駆動コイルに流れる電流が所定値以下に制限されるように前記モータ駆動部の駆動電圧を徐々に増加させる、請求項1から4のいずれか1つに記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記第2の所定期間は、前記モータ駆動部からの前記駆動信号の出力が開始されてから前記モータが定常回転に達するまでの期間である、請求項1から5のいずれか1つに記載のモータ駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動制御装置に関し、特に、交流電力を直流電力に変換してモータに供給するモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源から供給される交流電力を入力して、AC/DCコンバータにより直流電力に変換し、この直流電力を利用してモータを駆動制御する駆動制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、モータの制御装置において、誘起電圧に含まれる高調波成分を除去することで、モータのトルクリップルを低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1に記載されているようなモータ駆動制御装置においては、以下のような問題がある。
【0006】
(1)交流電源から交流電力が供給されるのと同時にモータが起動すると、AC/DCコンバータの動作が不安定になる。特に、モータの定格に合わせた省電力化電源では、回路の立ち上がりが困難になる場合がある。
【0007】
すなわち、AC/DCコンバータに負荷が直接に接続されている場合、AC/DCコンバータ内部の起動電流と負荷電流とが同時に流れることになる。そのため、AC/DCコンバータの起動が不安定になりやすくなる。AC/DCコンバータの起動が不安定な状態では、負荷への電力の供給が困難になる。このような問題に対しては、例えば起動時などにおいて、AC/DCコンバータが十分に安定するまで、負荷をAC/DCコンバータから切り離す必要がある。
【0008】
(2)モータの始動時には、モータに定格以上の電流が流れる。その影響で、モータの始動時において、AC/DCコンバータの動作が不安定になる場合がある。電力容量に十分余裕のあるAC/DCコンバータを用いた場合には、このような問題は通常発生しない。しかしながら、定格に近く、余裕がさほどない回路では、始動時に過電流が発生すると、保護動作が行われることになる。すなわち、AC/DCコンバータが停止したり、間欠モード動作が行われたりする場合がある。
【0009】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、簡易な回路構成でありながら、モータの起動開始時にAC/DCコンバータが安定に動作するモータ駆動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明のある局面に従うと、モータ駆動制御装置は、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータと、AC/DCコンバータから供給された直流電力に基づいて動作するとともに、モータに駆動信号を出力するモータ駆動部と、AC/DCコンバータとモータ駆動部とを接続する経路に配置されている起動補助回路とを備え、起動補助回路は、交流電源からAC/DCコンバータへ交流電力の供給が開始されてからの第1の所定期間は、モータ駆動部からの駆動信号の出力を遅延させ、モータ駆動部からの駆動信号の出力が開始されてからの第2の所定期間は、モータの駆動コイルに流れる電流が所定値以下に制限されるようにモータ駆動部の駆動電圧を徐々に増加させる。
【0011】
好ましくは、起動補助回路は、第1の所定期間にモータ駆動部からの駆動信号の出力を遅延させる起動遅延回路と、第2の所定期間にモータの駆動コイルに流れる電流の制限を行う電流制限回路とを有し、起動遅延回路は、第1の所定期間を設定する遅延時間設定回路と、遅延時間設定回路により設定された第1の所定期間の経過後に、AC/DCコンバータからモータ駆動部に直流電力が供給されるようにするスイッチ回路とを含み、電流制限回路は、直流電力の電流値を検出する電流検出回路と、電流検出回路で検出された電流値に応じて、スイッチ回路の動作を制御する過電流フィードバック回路とを含む。
【0012】
好ましくは、起動遅延回路は、遅延時間設定回路に蓄積された電気エネルギを放電するリセット回路及びスイッチ回路に供給される電流を制限するダンパ回路のうち少なくともいずれか一方をさらに有する。
【0013】
好ましくは、電流制限回路は、直流電力の電流値の大きさに応じて、過電流フィードバック回路に供給する直流電圧の電圧レベルを調整する電圧レベル調整回路をさらに備える。
【0014】
好ましくは、起動補助回路は、モータのロータがロック状態となった後の再起動時において、モータ駆動部からの駆動信号の出力が開始されてからモータが正常回転に達するまでの第3の所定期間は、モータの駆動コイルに流れる電流が所定値以下に制限されるようにモータ駆動部の駆動電圧を徐々に増加させる。
【0015】
好ましくは、第2の所定期間は、モータ駆動部からの駆動信号の出力が開始されてからモータが定常回転に達するまでの期間である。
【発明の効果】
【0016】
これらの発明に従うと、起動補助回路は、AC/DCコンバータへ交流電力の供給が開始されてから所定期間だけ、モータ駆動部からの駆動信号の出力を遅延させ、駆動信号の出力が開始されてから所定期間だけ、モータの駆動コイルに流れる電流を制限する。したがって、簡易な回路構成でありながら、モータの起動開始時にAC/DCコンバータが安定に動作するモータ駆動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態の1つに係るモータ駆動制御装置の回路構成を概略的に示すブロック図である。
図2】モータ駆動制御装置の起動補助回路の回路構成を示すブロック図である。
図3】起動補助回路の回路構成の具体的な例を示す図である。
図4】モータ駆動制御装置の動作中における起動遅延回路の電位と直流電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0019】
[実施の形態]
【0020】
図1は、本発明の実施の形態の1つに係るモータ駆動制御装置1の回路構成を概略的に示すブロック図である。
【0021】
[モータ駆動制御装置の大まかな構成の説明]
【0022】
図1に示されるように、モータ駆動制御装置(以下、単に駆動制御装置ということがある。)1は、AC/DCコンバータ2と、モータ駆動部3と、起動補助回路4とを備えている。AC/DCコンバータ2は、交流電源Vacに接続されている。駆動制御装置1は、交流電源Vacに基づいてモータ20に電力を供給し、モータ20を駆動させる。モータ20は、例えば、DCブラシレスモータである。
【0023】
AC/DCコンバータ2は、交流電源Vacから供給される交流電力を、直流電力に変換する。
【0024】
モータ駆動部3は、AC/DCコンバータ2から供給される直流電力に基づいて動作する。本実施の形態では、モータ駆動部3は、モータ20に駆動信号を出力し、モータ20を駆動させる。モータ駆動部3は、モータ20を駆動するための一般的な構成を有している。すなわち、モータ駆動部3は、例えば、PWM信号生成回路及びインバータ回路を含むものである。
【0025】
起動補助回路4は、モータ駆動部3に接続されている。起動補助回路4は、本実施の形態において、AC/DCコンバータ2とモータ駆動部3とを接続する経路に配置されている。すなわち、図1に示されるように、起動補助回路4は、AC/DCコンバータ2の出力側の2つのラインに、ポイントA1,B1で接続されている。また、起動補助回路4は、モータ駆動部3の入力側の2つのラインに、ポイントA2,B2で接続されている。ポイントA1,A2のあるラインが高圧側のラインとなり、ポイントB1,B2があるラインが低圧側のライン(例えば、GND側ライン)となる。
【0026】
起動補助回路4は、モータ駆動部3に対する遅延動作と、モータ20に流れる駆動電流の電流制限動作とを行う。遅延動作は、交流電源VacからAC/DCコンバータ2へ交流電力の供給が開始されてから所定の遅延期間(第1の所定期間)に行われる。遅延動作では、起動補助回路4は、モータ駆動部3からの駆動電力の出力を遅延させる。他方、電流制限動作は、駆動電力の出力が開始されてから、モータ20が定常回転に達するまでの所定の起動期間(第2の所定期間)に行われる。電流制限動作では、起動補助回路4は、モータ20の駆動コイルに流れる電流が所定値以下に制限されるように、モータ駆動部3の駆動電圧を徐々に増加させる。このような遅延動作や電流制限動作についての詳細は、後述する。
【0027】
図2は、モータ駆動制御装置1の起動補助回路4の回路構成を示すブロック図である。
【0028】
図2に示されるように、起動補助回路4には、起動遅延回路5と、電流制限回路6とが設けられている。起動遅延回路5と電流制限回路6とは、互いに接続されている。電流制限回路6は、ポイントA1,B1に接続されている。起動遅延回路5は、ポイントA2,B2に接続されている。なお、図2においては、起動遅延回路5に含まれる要素の一部(具体的には、リセット回路及びダンパ回路)の図示が省略されている。これについては、図3において示すとともに、その詳細は後述する。
【0029】
起動遅延回路5は、遅延時間設定回路7と、スイッチ回路8とを有している。
【0030】
遅延時間設定回路7は、上述の遅延動作に係る所定の遅延時間を設定するものである。遅延時間設定回路7は、ポイントA1すなわちAC/DCコンバータ2の出力ラインと、スイッチ回路8とに接続されている。また、遅延時間設定回路7は、ポイントA2,B2に接続されている。
【0031】
スイッチ回路8は、遅延時間設定回路7により設定された遅延時間の経過後にオンとなる。スイッチ回路8がオンとなると、モータ駆動部3に、AC/DCコンバータ2からの直流電力が供給される。
【0032】
電流制限回路6は、電流検出回路9と、過電流フィードバック回路(過電流F/B回路)10と、電圧レベル調整回路11とを有している。
【0033】
電流検出回路9は、AC/DCコンバータ2から出力される直流電力の電流値を検出する。電流検出回路9は、ポイントB1に接続されている。また、電流検出回路9は、電圧レベル調整回路11を介して、ポイントA1に接続されている。電流検出回路9の出力側端子は、スイッチ回路8に接続されている。
【0034】
過電流フィードバック回路10は、電流検出回路9で検出される直流電力の電流値に応じて、スイッチ回路8のオン動作を制御する。過電流フィードバック回路10は、電圧レベル調整回路11を介して、ポイントA1に接続されている。また、過電流フィードバック回路10は、電流検出回路9を介して、ポイントB1に接続されている。過電流フィードバック回路10の出力側端子は、スイッチ回路8に入力される。スイッチ回路8は、例えば、過電流フィードバック回路10から入力された電圧に応じて、オン、オフする。
【0035】
電圧レベル調整回路11は、AC/DCコンバータ2から出力される直流電力の電流値の大きさに応じて、過電流フィードバック回路10に供給する直流電圧の電圧レベルを調整する。電圧レベル調整回路11は、ポイントA1に接続されている。電圧レベル調整回路11は、電流検出回路9及び過電流フィードバック回路10のそれぞれに接続されている。
【0036】
AC/DCコンバータ2から出力される直流電力の電流値が小さいときには、過電流フィードバック回路10に供給する電圧レベルを大きくする必要がある。電圧レベル調整回路11は、そのような動作条件のときに、特に有効な回路となる。
【0037】
[起動補助回路4の回路構成の具体例]
【0038】
図3は、起動補助回路4の回路構成の具体的な例を示す図である。
【0039】
図3に示されるように、本実施の形態において、起動補助回路4の各回路は、例えば次のような回路素子を用いて構成されている。
【0040】
起動遅延回路5において、遅延時間設定回路7は、抵抗素子R1とコンデンサC1とを有している。抵抗素子R1とコンデンサC1とは、直列に接続されている。抵抗素子R1の一端は、ポイントA2に接続されており、コンデンサC1の一端は、ポイントB2に接続されている。なお、本実施の形態において、ポイントA2は、ポイントA1に接続されている(換言すると、ポイントA1は、分岐して、電圧レベル調整回路11とポイントA2とに繋がっている。)。
【0041】
スイッチ回路8は、スイッチ素子Q1を有している。スイッチ素子Q1は、例えば、バイポーラトランジスタである。スイッチ素子Q1のコレクタ端子は、ポイントB2に接続されており、エミッタ端子は、電流検出回路9に接続されている。
【0042】
本実施の形態において、起動遅延回路5は、さらに、ダイオードD1(リセット回路の一例)と抵抗素子R2(ダンパ回路の一例)とを有している。ダイオードD1のカソードは、ポイントA2に接続されている。ダイオードD1のアノードは、抵抗素子R1とコンデンサC1との接続点と、抵抗素子R2の一端とに接続されている。抵抗素子R2の他端は、スイッチ素子Q1のベース端子に接続されている。
【0043】
なお、ダイオードD1や抵抗素子R2は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0044】
電流制限回路6において、電流検出回路9は、抵抗素子R3を有している。抵抗素子R3の一端は、スイッチ素子Q1のエミッタ端子と電圧レベル調整回路11とを接続するラインに接続されている。抵抗素子R3の他端は、ポイントB1と過電流フィードバック回路10とを接続するラインに接続されている。
【0045】
過電流フィードバック回路10は、スイッチ素子Q2を有している。スイッチ素子Q2は、例えば、バイポーラトランジスタである。スイッチ素子Q2のコレクタ端子は、抵抗素子R2及びスイッチ素子Q1のベース端子に接続されている。スイッチ素子Q2のエミッタ端子は、ポイントB1に接続されている。スイッチ素子Q2のベース端子は、電圧レベル調整回路11に接続されている。
【0046】
電圧レベル調整回路11は、抵抗素子R4,R5を有している。抵抗素子R4と抵抗素子R5とは、直列に接続されており、抵抗素子R4がポイントA1に接続され、抵抗素子R5が抵抗素子R3及びスイッチ素子Q1のエミッタ端子に接続されている。スイッチ素子Q2のベース端子は、抵抗素子R4と抵抗素子R5との接続点に接続されている。
【0047】
[動作説明]
【0048】
図4は、モータ駆動制御装置1の動作中における起動遅延回路5の電位P1と直流電圧P2との関係を示す図である。
【0049】
図4を参照しながら、モータ20の起動時における起動補助回路4の動作と、ロック状態からの再起動時における起動補助回路4の動作とについて説明する。
【0050】
図4において、一点鎖線は、モータ駆動部3の低圧側(GND側)電位P1を示す。電位P1は、スイッチ素子Q1のコレクタ端子の電位、すなわちポイントB2の電位である。また、実線は、AC/DCコンバータ2から出力される直流電圧P2を示す。直流電圧P2は、ポイントA1とポイントB1との電位差(ポイントA1の電位と等しい)であって、ポイントA2の電位である。また、直流電圧P2と電位P1との電位差が、モータ駆動部3に入力される直流電圧となる。
【0051】
[起動時の遅延動作]
【0052】
モータ20の起動開始、すなわち駆動制御装置1の起動開始からの所定の遅延期間において、モータ駆動部3に対して、遅延動作が行われる。
【0053】
時刻t0に、交流電源Vacから交流電力の供給が開始されると、AC/DCコンバータ2が起動開始する。これにより、電位P1及び直流電圧P2は共に上昇し、時刻t1でV1(V)となる。
【0054】
このとき、遅延時間設定回路7は、電気エネルギを蓄積することで、モータ駆動部3の動作を遅延させる。すなわち、AC/DCコンバータ2が起動開始すると、遅延時間設定回路7において、抵抗素子R1を介して、コンデンサC1が充電される。時刻t2において、コンデンサC1の電位が所定の高さまで上昇すると、抵抗素子R2を介してスイッチ素子Q1に電荷が供給される。スイッチ素子Q1のベース端子の電圧が高くなり、スイッチ素子Q1が通電状態になると、モータ駆動部3が動作を開始する。
【0055】
このようにしてコンデンサC1が所定の電位まで充電されるまでの時間が、遅延期間(=遅延時間が設定されている期間)となる。遅延期間は、図4における、時刻t1から時刻t2までの期間である。この遅延期間では、電位P1は、V1(V)のまま維持される。他方、直流電圧P2は、徐々に上昇して、時刻t2で定常時の電位V2(V)になる。
【0056】
ここで、抵抗素子R2は、スイッチ回路8に供給される電流を制限するダンパ回路として機能する。すなわち、抵抗素子R2は、スイッチ素子Q1に流れる電流の上昇を緩やかにし、スイッチ素子Q1がソフトにスイッチングを行うのを補助する働きをする。なお、抵抗素子R2は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0057】
また、ダイオードD1は、遅延時間設定回路7に蓄積された電気エネルギを放電するリセット回路として機能する。すなわち、ダイオードD1は、AC/DCコンバータ2が停止したとき、コンデンサC1に充電されたエネルギを速やかに放電して、遅延時間設定回路7をリセットする働きをする。ダイオードD1を設けることは、交流電源Vacが短時間にオン、オフを繰り返すような場合に、特に有効になり、駆動制御装置1を確実に動作させることができる。なお、ダイオードD1は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0058】
[電流制限動作]
【0059】
モータ駆動部3が動作を開始してから所定の起動期間(第2の所定期間)、モータ20に流れる駆動電流の電流制限が行われる(起動時の電流制限動作)。
【0060】
電流制限回路6では、ポイントA1の電圧から電流検出回路9の抵抗素子R3を用いて検出された電圧が、電圧レベル調整回路11の抵抗素子R4,R5で分圧され、スイッチ素子Q2のベース端子に印加される。そして、スイッチ素子Q2のベース端子の電位が所定の電圧に達したときに、スイッチ素子Q2がオンとなる。これにより、時刻t2から時刻t3までの起動期間中において、スイッチ素子Q1の電流が制限される。
【0061】
すなわち、モータ20の回転が上昇して定格負荷(定常運転)に達するまで、スイッチ素子Q2が過電流制限素子として、スイッチ素子Q1を制御する。具体的には、図4に示されるように、電位P1は、時刻t2でのV1(V)から徐々に低下し、時刻t3で0となる。他方、直流電圧P2は、この間、V2(V)のままである。P2とP1の差分である(P2−P1)(V)がモータ20を駆動させるためにモータ駆動部3に供給される駆動電圧となる。すなわち、駆動電圧について、P1(V)分の電流制限が行われることになる。電流制限は、定格を超えないように、モータ駆動部3に流れる電流が所定値以下となるように行われる。
【0062】
時刻t3で電位P1が0となると、時刻t3以降は、駆動電圧として直流電圧P2が印加される定常運転期間になる。
【0063】
[再起動時の電流制限動作]
【0064】
ここで、何らかの要因でモータ20のロータがロック状態となる場合を想定する。本実施の形態において、ロック状態となった後に再起動を行う場合も、起動時と同様に、電流制限動作が行われる。再起動時の電流制限動作は、再起動開始からの所定の再起動期間(第3の所定期間)において行われる。
【0065】
例えば、図4に示されるように、時刻t3から時刻t4まで定常運転期間であった後に、時刻t4から時刻t5までのロック期間を経て、時刻t5から再起動が開始される場合を想定する。このとき、電位P1は、起動時と同様に、時刻t5の直後にV1(V)まで上昇し、その後、ゆっくりと減少し、時刻t6で0となる。このように、この時刻t5から時刻t6までの再起動期間においては、起動時と同様に、駆動電圧についてP1(V)分の電流制限が行われる。なお、再起動期間の長さは、モータ20の負荷状態などで決定されるため、起動期間と同じとは限らない。
【0066】
[実施の形態における効果]
【0067】
以上のように構成された駆動制御装置1では、起動補助回路4の働きにより、交流電源VacからAC/DCコンバータ2へ交流電力の供給が開始されてから遅延期間(第1の所定期間)が経過するまでの間、モータ駆動部3の動作を遅延させることができる。すなわち、遅延期間だけ、モータ駆動部3の駆動信号の出力を遅延させることができる。これにより、交流電源Vacからの交流電力の供給と同時にモータ20が起動するのを防ぐことができる。
【0068】
また、起動補助回路4の働きにより、モータ駆動部3が動作を開始してから起動期間(第2の所定期間)が経過するまでの間、及び、ロック解除後に再起動が開始されてから再起動期間(第3の所定期間)が経過するまでの間、モータ20に流れる駆動電流の電流制限が行われる。これにより、モータ20の駆動開始時に、定格以上の駆動電流が流れることを防止できる。
【0069】
このように、交流電力の供給と同時にモータ20が起動するのを防ぐことができ、定格以上の駆動電流が流れることを防止できるので、AC/DCコンバータ2の動作を安定させることができる。起動補助回路4は簡素な回路素子のみを用いて構成することができるため、製造コストを低く抑えることができる。
【0070】
なお、本実施の形態において、スイッチ素子Q1のコレクタ端子とエミッタ端子との電位差を大きく設定することができる。これにより、交流電源Vacのオン時や、ロック解除後の再起動時において、瞬時的にAC/DCコンバータ2からの直流電力が遮断されること(瞬断)を防止することができる。
【0071】
[その他]
【0072】
なお、起動補助回路の電流制限回路において、電圧レベル調整回路は、設けられていなくてもよい。例えば、AC/DCコンバータ2から出力される直流電力の電流値が大きいときには、図3において、電圧レベル調整回路を設けず、電流検出回路9と過電流フィードバック回路10とはポイントA1には接続されず、電流検出回路9の抵抗素子R3の一端(スイッチ素子Q1のエミッタ端子に接続されている側)と過電流フィードバック回路10のスイッチ素子Q2のベース端子とが抵抗素子を介して接続されるように構成すればよい。
【0073】
モータ駆動制御装置が駆動させる対象は、DCブラシレスモータに限定されず、他種のモータであってもよい。
【0074】
起動遅延回路及び電流制限回路を構成する回路の素子構成は、上述の図3に示されるものに限定されるものではない。例えば、図3におけるスイッチ素子Q1,Q2は、バイポーラトランジスタに限定されず、FET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などであってもよい。
【0075】
スイッチ回路には、半導体を用いたスイッチ素子に代えて、メカニカルリレーなどの機構部品が設けられていてもよい。
【0076】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1 モータ駆動制御装置
2 AC/DCコンバータ
3 モータ駆動部
4 起動補助回路
5 起動遅延回路
6 電流制限回路
7 遅延時間設定回路
8 スイッチ回路
9 電流検出回路
10 過電流フィードバック回路
11 電圧レベル調整回路
20 モータ
D1 ダイオード(リセット回路の一例)
R2 抵抗素子(ダンパ回路の一例)
Vac 交流電源
図1
図2
図3
図4