特許第5944206号(P5944206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特許5944206循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法
<>
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000017
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000018
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000019
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000020
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000021
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000022
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000023
  • 特許5944206-循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法 図000024
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944206
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/02 20060101AFI20160621BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   F23C10/02
   G05B23/02 302T
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-91302(P2012-91302)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-221626(P2013-221626A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】塚根 薫子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一芳
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大也
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−89214(JP,A)
【文献】 特開2011−90382(JP,A)
【文献】 特開2000−121046(JP,A)
【文献】 特開2007−213194(JP,A)
【文献】 特開2010−117099(JP,A)
【文献】 特開2002−189019(JP,A)
【文献】 特開2011−220814(JP,A)
【文献】 特開平6−215276(JP,A)
【文献】 特開2006−250377(JP,A)
【文献】 特開2004−241993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/02
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環流動層ボイラの異常監視装置であって、
前記循環流動層ボイラの複数のセンサデータからなる運転データを取得する運転データ取得手段と、
前記運転データのマハラノビス距離に基づいて前記循環流動層ボイラの運転異常の有無を判定する異常判定手段と、
前記循環流動層ボイラにおいてそれぞれの前記センサデータと関連する撮像部位の撮像データを取得する撮像データ取得手段と、
前記異常判定手段で運転異常があると判定された場合に、複数の前記センサデータにおいて、運転異常への貢献が大きい前記センサデータと、運転異常への貢献が大きい前記センサデータに関連する前記撮像部位の前記撮像データとを同期して保存するデータ記録手段と、を備える、循環流動層ボイラの異常監視装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、
前記循環流動層ボイラに運転異常があると判定した場合に、
各前記センサデータが前記マハラノビス距離に与える影響の度合いを示す貢献度を前記センサデータごとに算出し、
前記データ記録手段は、
前記センサデータのうち前記貢献度に基づいて選ばれる高貢献度センサデータと、当該高貢献度センサデータに関連付けられた前記撮像部位の前記撮像データと、を同期して保存する、請求項1に記載の循環流動層ボイラの異常監視装置。
【請求項3】
前記異常判定手段が前記循環流動層ボイラに運転異常があると判定した場合に、前記運転データと前記撮像データとを関連付けて表示するデータ表示手段をさらに備える、請求項1又は2に記載の循環流動層ボイラの異常監視装置。
【請求項4】
前記循環流動層ボイラの正常運転時の前記運転データに基づいて単位空間を作成する単位空間作成手段を更に備える、請求項1〜3の何れか一項に記載の循環流動層ボイラの異常監視装置。
【請求項5】
循環流動層ボイラの異常監視方法であって、
前記循環流動層ボイラの複数のセンサデータからなる運転データを取得する運転データ取得工程と、
前記運転データのマハラノビス距離に基づいて前記循環流動層ボイラの運転異常の有無を判定する異常判定工程と、
前記循環流動層ボイラにおいてそれぞれの前記センサデータと関連する撮像部位の撮像データを取得する撮像データ取得工程と、
前記異常判定工程で運転異常があると判定された場合に、複数の前記センサデータにおいて、運転異常への貢献が大きい前記センサデータと、運転異常への貢献が大きい前記センサデータに関連する前記撮像部位の前記撮像データとを同期して保存するデータ記録工程と、を備える、循環流動層ボイラの異常監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載の監視システムが知られている。この監視システムでは、監視対象データのマハラノビス距離を算出すると共に、マハラノビス距離に基づいて監視対象データの異常の有無を判定する。監視対象データに異常があると判定されたときは、複数の監視対象データからマハラノビス距離の望大特性に寄与率の高い監視対象データを異常信号として抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011―90382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力プラント等のプロセス系システムの監視システムには、多変量解析やデータマイニングを用いて、監視対象データにおける異常の有無を判定するものがある。このような判定手段によれば、既知の現象に起因する異常の有無は判定可能であるが、例えば噴破のような発生確率の極めて低い現象に起因する異常の有無や、発生したことのない未知の現象に起因する異常の有無を判定することは困難である。
【0005】
マハラノビス・タグチ・システム(以下「MTS」ともいう)の手法を用いたシステムでは、まず、正常に動作しているシステムから取得されたデータに基づいて単位空間が作成される。次に、この単位空間の中心から監視対象データまでの隔たりがマハラノビス距離として算出される。そして、このマハラノビス距離に基づいて異常の有無を判定する。このMTSによれば、発生確率の極めて低い現象に起因する異常の有無や、発生したことのない未知の現象に起因する異常の有無を判定することができる。さらに、MTSによれば、複数の監視対象データからマハラノビス距離に与える影響の度合いである貢献度が高い監視対象データを抽出することも可能である。
【0006】
しかしながら、電力プラント等のプロセス系システムでは、取得可能な監視対象データが制限されていると共に、給水・蒸気系統及び燃料・排気ガス系統等が複雑に組み合わされている。従って、MTSを用いた異常監視システムをプロセス系システムに適用した場合には、異常信号から異常の原因となる現象を確実に特定できない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、運転異常の原因をより確実に特定可能な循環流動層ボイラの異常監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異常監視装置は、循環流動層ボイラの異常監視装置であって、循環流動層ボイラのセンサデータからなる運転データを取得する運転データ取得手段と、運転データのマハラノビス距離に基づいて循環流動層ボイラの運転異常の有無を判定する異常判定手段と、循環流動層ボイラの所定の撮像部位の撮像データを取得する撮像データ取得手段と、異常判定手段で運転異常があると判定された場合に、センサデータと当該センサデータに関連する撮像部位の撮像データとを同期して保存するデータ記録手段と、を備える。
【0009】
また、本発明の異常監視方法は、循環流動層ボイラの異常監視方法であって、循環流動層ボイラのセンサデータからなる運転データを取得する運転データ取得工程と、運転データのマハラノビス距離に基づいて循環流動層ボイラの運転異常の有無を判定する異常判定工程と、循環流動層ボイラの所定の撮像部位の撮像データを取得する撮像データ取得工程と、異常判定工程で運転異常があると判定された場合に、センサデータと当該センサデータに関連する撮像部位の撮像データとを同期して保存するデータ記録工程と、を備える。
【0010】
この異常監視装置及び異常監視方法では、単位空間に対する運転データのマハラノビス距離に基づいて、異常判定手段が循環流動層ボイラの運転異常の有無を判定している。従って、未知の現象に起因する異常が生じた場合であっても、運転中の循環流動層ボイラに運転異常があることを判定することができる。また、循環流動層ボイラの所定の撮像部位の撮像データを撮像データ取得手段が取得している。そして、センサデータと、当該センサデータに関連する撮像部位の撮像データとをデータ記録手段が同期して保存するので、センサデータと撮像データとに基づいて運転異常の原因を分析することが可能となる。従って、運転異常の原因をより確実に特定することができる。
【0011】
また、本発明の異常監視装置では、異常判定手段が、循環流動層ボイラに運転異常があると判定した場合に、各センサデータがマハラノビス距離に与える影響の度合いを示す貢献度をセンサデータごとに算出し、データ記録手段が、センサデータのうち貢献度に基づいて選ばれる高貢献度センサデータと、当該高貢献度センサデータに関連付けられた撮像部位の撮像データと、を同期して保存してもよい。この場合、マハラノビス距離に対する貢献度を算出することにより、運転異常の原因である可能性を含むセンサデータが抽出されるので、運転異常の原因をより迅速に特定することができる。さらに、高貢献度センサデータと、当該センサデータに関連付けられた撮像部位の撮像データとを関連付けてデータ記録手段が同期して保存するので、高貢献度センサデータと撮像データとに基づいて運転異常の原因を分析することが可能となる。従って、運転異常の原因をより確実且つ迅速に特定することができる。
【0012】
また、異常判定手段が循環流動層ボイラに運転異常があると判定した場合に、運転データと撮像データとを関連付けて表示するデータ表示手段をさらに備えてもよい。この場合、運転異常があると判定されたその場で、センサデータと撮像データとに基づいて運転異常の原因を分析することができる。
【0013】
また、本発明の異常監視装置では、単位空間を作成する単位空間作成手段を更に備え、単位空間は、循環流動層ボイラの正常運転時の運転データに基づいて作成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法によれば、運転異常の原因をより確実に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の異常監視装置の構成を示す図である。
図2】循環流動層ボイラに配置された運転データ取得手段の例を示す図である。
図3】循環流動層ボイラに配置された撮像データ取得手段の例を示す図である。
図4】センサデータに関連付けられた撮像部位の一例を示す図である。
図5】異常監視装置の一部を構成するハードウエアを示す図である。
図6】単位空間を作成する工程を示す図である。
図7】循環流動層ボイラの運転異常の有無を監視する工程を示す図である。
図8】マハラノビス距離に対する貢献度を算出する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明による異常監視装置及び異常監視方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の異常監視装置1は循環流動層ボイラ2(以下、単に「ボイラ」ともいう)の運転状態を監視する。まず、ボイラ2について説明する。ボイラ2は、図2図4に示すように、外部循環型(Circulating Fluidized Bed型)の循環流動層ボイラである。このボイラ2は、縦長の筒形状をなす流動層型の火炉3を備えている。火炉3の中間部には、燃料を投入する燃料投入口3aと、上部には燃焼ガスを排出するガス出口3bと、が設けられている。燃料投入装置5からこの火炉3に供給される燃料は、燃料投入口3aを介して火炉3の内部に投入される。
【0018】
火炉3のガス出口3bには固気分離装置として機能するサイクロン7が接続されている。サイクロン7の排出口7aはガスラインを介して後段のガス処理系に接続されている。また、サイクロン7の底部出口からはダウンカマーと称されるリターンライン9が下方に延びており、リターンライン9の下端は火炉3の中間部側面に接続されている。
【0019】
火炉3内では、下部の給気ライン3cから導入される燃焼・流動用の空気により、燃料投入口3aから投入された燃料を含む固形物が流動し、燃料は流動しながら約800〜900℃で燃焼する。サイクロン7には、火炉3で発生した燃焼ガスが固体粒子を同伴しながら導入される。サイクロン7は、遠心分離作用により固体粒子と気体とを分離し、リターンライン9を介して分離された固体粒子を火炉3に戻すと共に、固体粒子が除かれた燃焼ガスを排出口7aからガスラインを通じて後段のガス処理系に送出する。
【0020】
この火炉3では「炉内ベット材」と呼ばれる固形物が発生し底部に溜まるが、この炉内ベット材で不純物(低融点物質等)が濃縮されて起こるベット材の焼結及び溶融固化、或いは不燃夾雑物による動作不良を抑制することが必要である。このため、火炉3では、底部の排出口3dから炉内ベット材が定期的に外部に排出されている。排出されたベット材は、循環ライン(図示せず)上で金属などの不適物を取り除いた後、再び火炉3に投入される。
【0021】
上記のガス処理系は、サイクロン7の排出口7aにガスラインを介して接続されたガス熱交換装置13と、このガス熱交換装置13の排出口13aにガスラインを介して接続されたバグフィルタ(集塵器)15とを備えている。ガス熱交換装置13には、排ガスの流路を横切るように水を流動させるボイラチューブ13bが設けられている。サイクロン7から送られた高温の排ガスがこのボイラチューブ13bに接触することで、排ガスの熱がチューブ内の水に回収され、発生した高温の水蒸気がボイラチューブ13bを通じて発電用のタービンに送られる。バグフィルタ15は、この可燃性ガスに未だ同伴している飛灰等の微粒子を除去する。バグフィルタ15の排出口15aから排出された清浄なガスはガスライン及びポンプ17を経由して煙突19から外部に排出される。
【0022】
続いて、異常監視装置1について説明する。図1に示すように、異常監視装置1は、ボイラ2の運転データに基づいてボイラ2の運転異常の有無を判別する。次に、異常監視装置1は、ボイラ2に運転異常があると判定したときには、運転異常の原因となる可能性を含むセンサデータである高貢献度センサデータを抽出する。そして、異常監視装置1は、センサデータと、当該センサデータに関連付けられたボイラの部位を撮像した撮像データとを同期して記録する。
【0023】
異常監視装置1は、MTS(Mahalanobis taguchi System:マハラノビス・タグチ・システム)の手法に基づいて、ボイラ2の運転異常の有無を判別する。パターン認識を目的とするMTSの特徴は、単位空間を定義し、その中心から対象データまでの距離をマハラノビス距離として求める点である。単位空間とは、パターン認識の中心又は基準である。既存のデータ群の中心と対象データとの距離であるマハラノビス距離は、全変数間の相関を利用して求める。マハラノビス距離の詳細は後述する。
【0024】
異常監視装置1は、運転データを取得する運転データ取得部21と、撮像データを取得する撮像データ取得部22と、機能的構成要素として運転データ及び撮像データを処理するデータ処理部23と、を備えている。以下、各構成要素の機能について説明する。
【0025】
運転データ取得部21は、ボイラ2の運転状態を示す運転データを取得する。後述するように、運転データ取得部21が備える温度センサ24、圧力センサ26及び流量センサ27は、ボイラ2の各部位に設置されている。運転データとは、これらのセンサのセンサデータからなるデータ群をいう。運転データは、ボイラ2の各部位の温度、圧力、流量といったデータを含み、ボイラ2の運転状態を示す。運転データ取得部21で取得された運転データは、データ処理部23に出力される。
【0026】
温度センサ24、圧力センサ26、及び流量センサ27の配置例について説明する。なお、以下に説明する例では、温度センサ24a〜24d,24f〜24kが図1に示す温度センサ24に属し、圧力センサ26a〜26d,26f〜26kが図1に示す圧力センサ26に属し、流量センサ27e,27h,27jが図1に示す流量センサ27に属する。
【0027】
図2に示すように、火炉3の排出口3d付近には、温度センサ24aと、圧力センサ26aとが配置されている。温度センサ24aは火炉3の下部の温度データを取得し、圧力センサ26aは火炉3の下部の圧力データを取得する。火炉3の中間部には、温度センサ24bと、圧力センサ26bとが配置されている。温度センサ24bは火炉3の中間部の温度データを取得し、圧力センサ26bは火炉3の中間部の圧力データを取得する。火炉3の内側上面3eには、温度センサ24cと、圧力センサ26cとが配置されている。温度センサ24cは火炉3の上部の温度データを取得し、圧力センサ26cは火炉3の上部の圧力データを取得する。ガス出口3bには、温度センサ24dと、圧力センサ26dとが配置されている。温度センサ24dはガス出口3bにおける排出ガスの温度データを取得し、圧力センサ26dはガス出口3bにおける排出ガスの圧力データを取得する。
【0028】
給気ライン3cには、流量センサ27eが配置されている。流量センサ27eは、給気ライン3cを流通する空気の流量データを取得する。
【0029】
ガス熱交換装置13の熱交換部13c付近には、温度センサ24fと、圧力センサ26fとが配置されている。温度センサ24fはガス熱交換装置13内の排気ガスの温度データを取得し、圧力センサ26fはガス熱交換装置13内の排気ガスの圧力データを取得する。ガス熱交換装置13の排出口13a付近には、温度センサ24gと、圧力センサ26gとが配置されている。温度センサ24gは排出口13aから排出される排気ガスの温度データを取得し、圧力センサ26gは排出口13aから排出される排気ガスの圧力データを取得する。
【0030】
ガス熱交換装置13の熱交換部13cより上流側には、温度センサ24hと流量センサ27hとが配置されている。温度センサ24hは排ガスの熱を回収する前のチューブ内の水の温度データを取得し、流量センサ27hは排ガスの熱を回収する前のチューブ内の水の流量データを取得する。ボイラチューブ13bの熱交換部13cより下流側には、温度センサ24jと圧力センサ26jと流量センサ27jとが配置されている。温度センサ24jはチューブ内の水蒸気の温度データを取得し、圧力センサ26jはチューブ内の水蒸気の圧力データを取得し、流量センサ27jはチューブ内の水蒸気の流量データを取得する。
【0031】
バグフィルタ15の排出口15a付近には、温度センサ24kと、圧力センサ26kとが配置されている。温度センサ24kは排出口15a付近の排ガス温度のデータを取得し、圧力センサ26kは排出口15a付近の排ガス圧力のデータを取得する。
【0032】
図1に示すように、撮像データ取得部22は、ボイラ2の所定の撮像部位の撮像データを取得する。後述するように、撮像データ取得部22が備える複数のカメラ28は、ボイラ2の各部位に設置されている。撮像データとは、これらカメラ28により撮像されたボイラ2の所定の撮像部位の画像データである。撮像データは、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。撮像データ取得部22において取得された撮像データは、データ処理部23に出力される。
【0033】
所定の撮像部位の例と、当該撮像部位を撮像するためのカメラの配置例について説明する。以下に説明する例では、複数のカメラ28a〜28eが図1に示すカメラ28に属する。図3に示すように、所定の撮像部位には、火炉3の排出口3d付近の部位16a及び火炉3の側壁面の部位16bがある。さらに、所定の撮像部位には、ガス熱交換装置13の熱交換部13cの部位16c、熱交換部13cの上流側のボイラチューブ13bの部位16d、及び、熱交換部13cの下流側のボイラチューブ13bの部位16eがある。部位16aを撮像するためのカメラ28aは、火炉3の燃料投入口3a付近に配置されている。部位16bを撮像するためのカメラ28bは、撮像対象となる側壁面に対面する火炉3の内壁に配置されている。部位16cを撮像するためのカメラ28cは、熱交換部13cに対面するガス熱交換装置13の内壁に配置されている。部位16dを撮像するためのカメラ28dは、部位16dの近傍に配置されている。部位16eを撮像するためのカメラ28eは、部位16eの近傍に配置されている。
【0034】
ここで、センサデータに関連付けられた撮像データの一例について説明する。図4に示すように、ガス熱交換装置13の熱交換部13cを撮像するためのカメラ28cは、ガス熱交換装置13の熱交換部13c付近に設けられた温度センサ24fの排ガス温度データと、圧力センサ26fの排ガス圧力データとに関連付けられている。すなわち、温度センサ24fで取得された排ガス温度データ及び/又は圧力センサ26fで取得された排ガス圧力データに異常が表れる場合には、給水・蒸気配管である熱交換部13cに異常がある可能性が高い。従って、温度センサ24fで取得される排ガス温度データ及び圧力センサ26fで取得される排ガス圧力データには、カメラ28cで撮像される熱交換部13cの撮像データが関連付けられている。
【0035】
図1に示すように、データ処理部23は、運転データ取得部21から入力されたセンサデータを処理して、ボイラ2の運転異常の有無を判定する。そして、データ処理部23は、運転異常があると判定した場合には、撮像データ取得部22から入力された撮像データと、センサデータとを同期して記録する。また、データ処理部23は、運転異常があると判定した場合には、撮像データと、センサデータとを同期して、後述する表示部31に表示するための命令を表示部31に出力する。さらに、データ処理部23は、予めボイラ2の正常運転時の運転データを取得し、当該運転データに基づいて後述するMTSの手法による運転異常の判定に用いる単位空間を作成する。このデータ処理部23は、例えば、図5に示すコンピュータ100を用いて実現される。
【0036】
図1及び図5に示すように、コンピュータ100は、本実施形態のデータ処理部23の構成するハードウエアの一例である。コンピュータ100は、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行なうサーバ装置、パーソナルコンピュータ等の各種データ処理装置を含む。コンピュータ100は、CPU41、主記憶装置であるRAM42及びROM43、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置44、ディスプレイ等の出力装置46、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール47、ハードディスク等の補助記憶装置48などを含むコンピュータシステムとして構成されている。なお、入力装置44は後述する入力部29を構成し、出力装置46は後述する表示部31を構成する(図1参照)。図1に示す機能的構成要素は、図5に示すCPU41、RAM42等のハードウエア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU41の制御のもとで入力装置44、出力装置46、通信モジュール47を動作させるとともに、RAM42や補助記憶装置48におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0037】
図1に示すように、データ処理部23には、運転データ取得部21からセンサデータが入力されると共に、撮像データ取得部22から撮像データが入力される。データ処理部23は、単位空間を作成する単位空間作成部32と、所定期間の運転データを一時的に記録する一時記録部33と、運転異常の有無を判定し運転異常があると判定した場合には貢献度を算出する異常判定部34と、センサデータと撮像データとを同期して記録する運転データ同期記録部36と、を有している。
【0038】
単位空間作成部32は、正常な運転時のセンサデータを収集して単位空間を作成する。また、単位空間作成部32は、単位空間に基づいてマハラノビス距離の算出に用いる行列を算出し、記録する。そして、単位空間作成部32は、異常判定部34がマハラノビス距離を算出する際に参照され、単位空間に基づく行列を異常判定部34に出力する。
【0039】
一時記録部33は、運転データ取得部21から出力された運転データと、撮像データ取得部22から出力された撮像データとを、所定の期間だけ記録する機能を有する。そして、一時記録部33は、異常判定部34で運転異常があると判定されたとき、異常発生時点を中心に前後数秒から数分間のセンサデータと撮像データとを同期させて、運転データ同期記録部36に出力する。
【0040】
異常判定部34は、一時記録部33から出力されたセンサデータと、単位空間作成部32から出力された単位空間に基づく行列とに基づいて、マハラノビス距離を算出する。そして、異常判定部34は、異常判定部34に予め記録された閾値とマハラノビス距離とを比較し、閾値を超えた場合にボイラ2に運転異常があると判定する。異常判定部34は、運転異常があると判定したとき、マハラノビス距離に与える影響の度合いを示す貢献度をセンサデータごとに算出し、高貢献度センサデータを抽出する。そして、異常判定部34は、高貢献度センサデータと、当該高貢献度センサデータに関連付けられた撮像データと、マハラノビス距離と、を同期して記録するように、一時記録部33に命令を出力する。さらに、異常判定部34は、高貢献度センサデータと撮像データとを表示するように、表示部31に高貢献度センサデータと撮像データとを出力する。
【0041】
運転データ同期記録部36は、一時記録部33から出力されたセンサデータと、撮像データと、単位空間に対する運転データのマハラノビス距離と、を同期させて記録する。この運転データ同期記録部36に記録されたデータは、運転異常の原因を分析する場合に分析データとして利用される。なお、運転データ同期記録部36では、それぞれのデータを圧縮して記録してもよい。また、運転データ同期記録部36では、高貢献度センサデータと当該高貢献度センサデータに関連付けられた撮像データとを記録してもよいし、運転データ取得部21と撮像データ取得部22とで取得されたすべてのデータを記録してもよい。
【0042】
データ処理部23は、必要に応じて入力部29と表示部31とを備えていてもよい。入力部29は、例えばキーボード、マウス等の入力装置により構成される。入力部29からは、データ処理に必要な閾値等が入力される。表示部31は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイといった画像表示装置により構成される。表示部31には、運転異常が発生している旨の表示がなされると共に、異常判定部34から出力された高貢献度センサデータ及び撮像データ等が表示される。なお、表示部31は、運転異常が発生していることを確実に報知するために、ベル、音声スピーカー、照明ランプ、LED等を更に備え、これらにより運転異常の発生を報知することとしてもよい。
【0043】
次に、異常監視装置1を用いたMTSの手法による異常監視方法について説明する。異常監視方法は、図6に示す単位空間を作成する工程S10と、図7に示す運転状態を監視する工程S20と、図8に示す要因を分析する工程S30とを有する。
【0044】
<単位空間作成工程S10>
図6を参照して、単位空間を作成する工程S10について説明する。この工程S10は、主としてデータ処理部23の単位空間作成部32で実施される。本実施形態の異常監視方法の目的は、ボイラ2の運転異常の有無の判定であるので、本実施形態の単位空間は正常運転中のボイラ2から取得した運転データの集合である。工程S10では、この運転データの集団である単位空間からマハラノビス距離Dの算出に必要な行列Aを作成する。この工程S10は、運転異常を監視する工程S20が開始される前に実行される。また、工程S10は、予め定めた期間ごと、例えば1年ごとに実行されてもよいし、任意の時期に実行されてもよい。すなわち、運転状態を監視する工程S20が実行される前に工程S10が実行されることにより、行列Aが作成されていればよい。
【0045】
工程S11において運転データを取得する。この運転データは、ボイラ2の正常運転中のボイラ2の運転データである。工程S11では、運転中のボイラ2に運転異常がないことを作業者が確認しながら運転データを取得する。次に、工程S12では、取得した運転データを単位空間に追加する。続いて、工程S13では、単位空間に蓄積されたデータ点数が行列Aを作成するために必要なデータ点数を満たしているかを判定する。より詳細には、工程S13では、運転データにk個のセンサデータx〜xが含まれている場合に、運転データのデータ点数nがk以上であるか否かが判定される。データ点数nがk未満である場合(NO)には工程S11に戻り、さらに運転データの取得が行われる。データ点数nがk以上である場合(YES)には、工程S14において行列Aの作成が行われる。
【0046】
行列Aを作成する工程S14について詳細に説明する。行列Aは、各センサデータx〜x間の相関係数を成分とする相関行列Rの逆行列A=R−1である。まず、センサデータx〜xを規準化する。センサデータx〜xの規準化は、式(1)により行われる。規準化したセンサデータX〜Xでは、平均値がゼロであり、標準偏差が1となる。
【数1】

次に、相関行列Rを求める。式(2)に示すように、相関行列は、k×kの正方行列である。相関行列Rの各成分rijは、規準化したセンサデータXと、規準化したセンサデータXとの相関係数である。
【数2】

次に、式(3)に示される相関行列Rの逆行列Aを求める。
【数3】
【0047】
工程S14において作成された行列Aは、単位空間作成部32に記録され、後述するマハラノビス距離Dを算出する際に、異常判定部34から参照される。
【0048】
<異常監視工程S20>
図7を参照して、ボイラ2の運転状態を監視する異常監視工程S20について説明する。この工程S20は、主としてデータ処理部23の異常判定部34で実施される。まず、工程S21(運転データ取得工程、撮像データ取得工程)において、ボイラ2の各部に配置した温度センサ24a〜24d,24f〜24k、圧力センサ26a〜26d,26f〜26k、及び流量センサ27e,27h,27jにより運転データを取得する。また、運転データの取得に併せて、カメラ28a〜28eにより撮像データを取得する。取得した運転データ及び撮像データは、一時記録部33に記録される。そして、一時記録部33に記録された運転データは、異常判定部34に送信される。次に、工程S21において、運転データのマハラノビス距離Dを算出する。
【0049】
ここで、マハラノビス距離Dについて説明する。マハラノビス距離Dは、ばらつきが任意である分布の中心からの距離を測る基準として用いられる。例えば、変数が1つであるマハラノビス距離Dは式(4)に示される。
【数4】

本実施形態では、変数であるセンサデータx〜xは1つではなく、例えばk個ある。式(4)を、k個の変数を有する式に変形する。式(4)で示されたマハラノビス距離Dを式(5)に示すように変形する。
【数5】

この式の第1項及び第3項をベクトル形式に書き換えると共に、第2項を分散共分散行列に書き換える。
【数6】

ここで、変数iと変数jの共分散sijは、相関係数rijにより式(7)のように示される。
【数7】

したがって、マハラノビス距離Dを相関係数で表すと式(8)により示される。
【数8】

さらに、式(8)のセンサデータx〜xを規準化したセンサデータX〜X(式(9)参照)で表すと、式(8)は式(10)のように示される。
【数9】

【数10】

式(10)を変数の数であるkで除して、マハラノビス距離Dを式(11)のように表す。
【数11】

工程S22では、各センサデータx〜xを規準化したセンサデータX〜Xに変換する。そして、規準化したセンサデータX〜Xと行列Aとを式(11)に適用してマハラノビス距離Dを算出する。
【0050】
続いて、工程S23(異常判定工程)において、マハラノビス距離Dと閾値とを比較する。閾値は、例えば、入力部29から入力され、異常判定部34に予め記録されている。閾値は、所望の値に予め設定されている。マハラノビス距離Dが閾値未満である場合(NO)は、運転異常がないと判定され処理は工程S28に移行する。
【0051】
一方、マハラノビス距離Dが閾値以上である場合(YES)は、運転異常があると判定され工程S25に移行する。そして、工程S25において、運転データに含まれるセンサデータx〜xにおいて運転異常の原因となり得るセンサデータ又はセンサデータの組を抽出する。
【0052】
<要因分析工程S30>
図8を参照して、運転異常の要因を分析する要因分析工程S30について説明する。要因分析工程S30では、異常監視工程S20の工程S23においてマハラノビス距離Dが閾値を超えた場合に、マハラノビス距離Dの増大に貢献しているセンサデータx〜x又はセンサデータx〜xの組を分析する。
【0053】
工程S31において、要因分析の対象となるセンサデータx〜xを取得する。ここで、センサデータx〜xは、工程S23において、閾値を超えるマハラノビス距離を構成するセンサデータx〜xである。
【0054】
次に、工程S32において、直交表を作成する。直交表は多くの組み合わせを合理的・系統的に圧縮するものである。MTSの要因分析において一般的に利用される直交表は、第2水準系の直交表である。表1は、運転データが7個のセンサデータx〜xから構成される場合の直交表の一例である。
【表1】
【0055】
続いて、工程S33において、望大特性のSN比を計算する。単位空間に帰属しないセンサデータ、すなわち、運転異常の原因となるセンサデータのマハラノビス距離Dは、大きい方が望ましい。このように、大きいほど望ましい特性を望大特性という。また、センサデータは複数あるので、一般にばらつきを有する。このばらつきも含めた望ましさを数量化したものがSN比である。このSN比は、式(12)により算出される。
【数12】
【0056】
工程S33におけるSN比を算出する手順を詳細に説明する。表1の直交表のデータ数の第1番目の列を参照する。第1番目の列は、すべてのセンサデータx〜x7が第1水準である。従って、すべてのセンサデータx〜x7を用いてマハラノビス距離Dを求める。続いて、表1の直交表の第2番目の列を参照する。第2番目の列は、センサデータx〜xが第1水準であり、センサデータx〜x7が第2水準である。従って、センサデータx〜xを用いてマハラノビス距離Dを求める。以下、表1の直交表の第3番目〜第8番目の列について、同様の手順により、それぞれの列に対応するマハラノビス距離D〜Dを求める。
【0057】
続いて、センサデータx〜x7ごとのSN比を求める。ここでは、センサデータx〜x7ごとに、第1水準のSN比と第2水準のSN比とを求める。ここで、第1水準のSN比とは、マハラノビス距離D〜Dのうち、第1水準であるサンプル数におけるマハラノビス距離を用いて算出されるSN比である。また、第2水準のSN比とは、マハラノビス距離D〜Dのうち、第2水準であるサンプル数におけるマハラノビス距離を用いて算出されるSN比である。
【0058】
例えば、センサデータxの場合、第1水準であるサンプル数は1〜4である。従って、マハラノビス距離D〜Dを用いて第1水準のSN比を算出する。また、第2水準であるサンプル数は5〜8である。従って、マハラノビス距離D〜Dを用いて第2水準のSN比を算出する。センサデータxの第1水準のSN比ηA1は、式(13)により算出される。また、センサデータxの第2水準のSN比ηA2は、式(14)により算出される。
【数13】

【数14】
【0059】
工程S34において、貢献度を求める。センサデータxに着目したとき、第1水準のSN比ηA1と、第2水準のSN比ηA2との差が正の方向に大きい場合には、センサデータxは、運転異常の原因となる可能性を有することを意味する。この第1水準のSN比ηA1と、第2水準のSN比ηA2との差(ηA1−ηA2)を貢献度という。以下、同様の手順でセンサデータx〜xの貢献度を算出する。
【0060】
以上の工程S31〜S34により、センサデータx〜x7ごとの貢献度が算出される。この貢献度が最も高いもの、又は、予め設定された貢献度の閾値を超えるものが、高貢献度センサデータ又は高貢献度センサデータの組として抽出される。
【0061】
再び図7を参照すると、工程S26(データ記録工程)において、センサデータと撮像データとを同期して記録する。この工程S26は、主として運転データ同期記録部36により実行される。工程S25において高貢献度センサデータとして抽出されたセンサデータの情報が、異常判定部34から一時記録部33に出力される。一時記録部33は、異常判定部34から出力された情報に基づいて、高貢献度センサデータとして抽出されたセンサデータと、該センサデータに関連付けられた撮像データとを同期して、運転データ同期記録部36に出力する。そして、運転データ同期記録部36は、一時記録部33から出力されたセンサデータと撮像データとを記録する。
【0062】
そして、工程S27において、表示部31に運転異常が発生した旨の表示を行う。この工程S27は、主として表示部31により実行される。異常判定部34から表示部31に運転異常が発生した旨の情報が出力され、この情報に基づいて表示部31は運転異常が発生した旨を報知する。更に、異常判定部34から表示部31には、高貢献度センサデータとして抽出されたセンサデータと、該センサデータに関連付けられたカメラの撮像データとが出力され、表示部31にはこれらが表示される。
【0063】
工程S28において、異常監視工程S20を終了するか否かが判断される。異常監視工程S20を終了しない(NO)と判断した場合、すなわち、異常監視動作を継続する場合には工程S21に移行し工程S21からの動作が再び実施される。異常監視工程S20を終了すると判断した場合(YES)には、異常監視工程S20を終了する。
【0064】
以上のように、本実施形態の循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法では、工程S22で算出された単位空間に対する運転データのマハラノビス距離に基づいて、工程S23で異常判定部34がボイラ2の運転異常の有無を判定している。従って、未知の現象に起因する運転異常が生じた場合であっても、運転中のボイラ2に運転異常があることを判定することができる。また、ボイラ2の所定の撮像部位16a〜16eの撮像データを撮像データ取得部22のカメラ28が取得している。そして、工程S26で貢献度が高いセンサデータと、当該センサデータに関連する撮像部位の撮像データとを運転データ同期記録部36が同期して保存する。従って、センサデータと撮像データとに基づいて運転異常の原因を分析することが可能となる。従って、運転異常の原因をより確実に特定することができる。
【0065】
また、本実施形態の循環流動層ボイラの異常監視装置及び異常監視方法では、工程S30でマハラノビス距離に対する貢献度を算出している。従って、運転異常の原因である可能性を含むセンサデータが抽出されるので、運転異常の原因をより迅速に特定することができる。さらに、工程S26で高貢献度センサデータと、当該センサデータに関連付けられた撮像部位の撮像データとを関連付けてデータ記録手段が同期して保存するので、高貢献度センサデータと撮像データとに基づいて運転異常の原因を分析することが可能となる。従って、運転異常の原因をより確実且つ迅速に特定することができる。
【0066】
また、本実施形態の循環流動層ボイラの異常監視装置1は、表示部31を備えている。従って、運転異常があると判定されたその場で、センサデータと撮像データとに基づいて運転異常の原因を分析することができる。
【0067】
なお、上述した実施形態は異常監視装置1及び異常監視方法の一例を示すものである。本発明に係る異常監視装置1及び異常監視方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施形態に係る異常監視装置1及び異常監視方法を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0068】
センサデータは、温度データ、圧力データ及び流量データ以外のデータを用いてもよい。例えば、酸素濃度、NO濃度、CO濃度、SO濃度といった排ガスに含まれる所望の物質の濃度や、燃料投入口3aから投入される燃料投入量を用いてもよい。また、温度センサ24、圧力センサ26、流量センサ27及びカメラ28が配置される場所は、上述した箇所と異なる場所に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…異常監視装置、2…循環流動層ボイラ、21…運転データ取得部、22…撮像データ取得部、23…データ処理部、24…温度センサ、26…圧力センサ、27…流量センサ、28…カメラ、29…入力部、31…表示部、32…単位空間作成部、33…一時記録部、34…異常判定部、36…運転データ同期記録部、100…コンピュータ、D…マハラノビス距離、x〜x…センサデータ、S10…単位空間作成工程、S20…異常監視工程、S30…要因分析工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8