(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力信号をA/D変換処理してデジタル波形データを生成して出力するA/D変換部と、前記デジタル波形データを予め規定されたサンプリング周期でサンプリングして生成したサンプリングデータを記憶する記憶部と、前記サンプリング周期を規定するクロック信号を生成するクロック信号生成部と、前記クロック信号に従って前記デジタル波形データを前記サンプリング周期でサンプリングして前記サンプリングデータを生成すると共に当該生成したサンプリングデータを前記記憶部に記憶させる第1のデータ処理を実行するデータ処理部と、前記入力信号の信号波形を表示する表示部と、前記データ処理部を制御して前記第1のデータ処理を実行させると共に前記信号波形を前記表示部に表示させるための表示用データを生成する制御部と、前記サンプリングデータに基づいて生成された記録用波形データを記録する波形データ記録部とを備え、
前記データ処理部は、前記表示用データを生成するための表示用波形データを一時的に記憶するバッファを備えると共に、前記サンプリング周期の1周期内に予め規定された第1の処理時間内に前記第1のデータ処理を実行し、前記制御部の制御に従って前記記憶部から前記サンプリングデータを読み出して前記表示用波形データを生成して前記バッファに記憶させる第2のデータ処理を前記サンプリング周期の1周期内に前記第1の処理時間とは別個に予め規定された第2の処理時間内に実行し、かつ前記制御部の制御に従って前記記憶部から前記サンプリングデータを読み出して前記記録用波形データを生成して前記バッファに記憶させる第3のデータ処理を前記サンプリング周期の1周期内に前記第1の処理時間および前記第2の処理時間とは別個に予め規定された第3の処理時間内に実行し、
前記制御部は、前記第2のデータ処理が完了したときに前記表示用波形データを前記バッファから読み出して当該読み出した表示用波形データに基づいて前記表示用データを生成して前記表示部に出力することによって前記信号波形を表示させると共に、予め規定されたデータ量の前記サンプリングデータが前記第1のデータ処理によって前記記憶部に記憶されたときに前記データ処理部を制御して前記第3のデータ処理を実行させ、かつ当該第3のデータ処理が完了したときに前記バッファから前記記録用波形データを読み出して前記波形データ記録部に記録させる波形記録装置。
前記制御部は、前記クロック信号に基づいて規定される前記サンプリング周期が予め規定された周期よりも長いときに、当該サンプリング周期の1周期内に前記第2の処理時間を複数回規定して当該1周期内に前記第2のデータ処理を複数回実行させる請求項1記載の波形記録装置。
入力信号をA/D変換処理してデジタル波形データを生成して出力するA/D変換部と、前記デジタル波形データを予め規定されたサンプリング周期でサンプリングして生成したサンプリングデータを記憶する記憶部と、前記サンプリング周期を規定するクロック信号を生成するクロック信号生成部と、前記クロック信号に従って前記デジタル波形データを前記サンプリング周期でサンプリングして前記サンプリングデータを生成すると共に当該生成したサンプリングデータを前記記憶部に記憶させるデータ処理Aを実行するデータ処理部と、前記サンプリングデータに基づいて生成された記録用波形データを記録する波形データ記録部と、前記データ処理部を制御して前記データ処理Aを実行させると共に前記記録用波形データを前記波形データ記録部に記録させる制御部とを備え、
前記データ処理部は、前記記録用波形データを一時的に記憶するバッファを備えると共に、前記サンプリング周期の1周期内に予め規定された処理時間A内に前記データ処理Aを実行し、かつ、前記制御部の制御に従って前記記憶部から前記サンプリングデータを読み出して前記記録用波形データを生成して前記バッファに記憶させるデータ処理Bを前記サンプリング周期の1周期内に前記処理時間Aとは別個に予め規定された処理時間B内に実行し、
前記制御部は、予め規定されたデータ量の前記サンプリングデータが前記データ処理Aによって前記記憶部に記憶されたときに前記データ処理部を制御して前記データ処理Bを実行させると共に当該データ処理Bが完了したときに前記バッファから前記記録用波形データを読み出して前記波形データ記録部に記録させる波形記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、出願人が開示している波形記録計には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している波形記録計では、制御部が、アドレスカウンタを監視することによって、表示用データの生成処理や記録用波形データの生成処理に必要な波形データがストレージメモリに記憶されたときに、その波形データをストレージメモリから読み出して、表示用データや記録用波形データの生成処理を実行する構成が採用されている。この場合、制御部が生成処理に必要な複数の波形データをストレージメモリから読み出すときには、ストレージメモリに記憶されている多数の波形データのうちのいずれが読出し対象の波形データであるか(読み出し対象の波形データがどのアドレスに記憶されているか)を特定し、かつ、特定した波形データをストレージメモリから1つずつ読み出す必要がある。このため、ストレージメモリから複数の波形データを読み出す処理が制御部にとって大きな負担となっている。
【0007】
したがって、制御部が、ストレージメモリから波形データを読み出す処理と並行して他の処理を実行しているときには、波形データを読み出す処理に割り当てられる制御部の処理能力が低下することに起因して、必要な波形データの読み出しに、すなわち表示用データや記録用波形データの生成処理に、長時間を要することとなる。このため、信号波形の表示や記録用波形データの記録をスムーズに実行するのが困難となるおそれがあり、この点を改善するのが好ましい。
【0008】
また、この種の波形記録計(波形記録装置)では、信号波形の表示や記録用波形データの記録に際して、ストレージメモリに記憶された波形データのすべてを使用せずに、ストレージメモリに記憶された順で数個おきに波形データを抽出して、抽出した波形データに基づいて表示用データや記録用波形データを生成する処理を実行することがある。この場合、制御部がストレージメモリに記憶されている各波形データのうちから任意の波形データだけを抽出する(任意の波形データだけをストレージメモリから読み出す)場合には、その任意の波形データが記憶されているアドレスを個別に特定する必要が生じる。このため、任意の波形データだけをストレージメモリから読み出す場合には、その波形データが記憶されているアドレスの特定処理が煩雑であり、これに起因して、表示用データや記録用波形データの生成に必要な波形データの読み出しに長時間を要することとなる。
【0009】
一方、例えば、ストレージメモリの所定のアドレス範囲内に記憶されている波形データのすべてを読み出した後に必要な波形データだけを使用して表示用データや記録用波形データを生成することにより、抽出すべき波形データが記憶されているアドレスの特定処理を不要とすることが可能となる。しかしながら、この場合には、表示用データや記録用波形データの生成に際して使用されない波形データを読み出す分だけ、表示用データや記録用波形データの生成に要する時間の短縮が困難となる。このように、出願人が開示している波形記録計では、信号波形の表示や記録用波形データの記録に際して、所望の波形データを抽出して表示用データや記録用波形データを生成する処理に長時間を要するという現状があり、この点を改善するのが好ましい。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、信号波形の表示や波形データの記録時における制御部の負担を十分に軽減して表示や記録をスムーズに実行し得る波形記録装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく請求項1記載の波形記録装置は、入力信号をA/D変換処理してデジタル波形データを生成して出力するA/D変換部と、前記デジタル波形データを予め規定されたサンプリング周期でサンプリングして生成したサンプリングデータを記憶する記憶部と、前記サンプリング周期を規定するクロック信号を生成するクロック信号生成部と、前記クロック信号に従って前記デジタル波形データを前記サンプリング周期でサンプリングして前記サンプリングデータを生成すると共に当該生成したサンプリングデータを前記記憶部に記憶させる第1のデータ処理を実行するデータ処理部と、前記入力信号の信号波形を表示する表示部と、前記データ処理部を制御して前記第1のデータ処理を実行させると共に前記信号波形を前記表示部に表示させるための表示用データを生成する制御部と
、前記サンプリングデータに基づいて生成された記録用波形データを記録する波形データ記録部とを備え、前記データ処理部は、前記表示用データを生成するための表示用波形データを一時的に記憶するバッファを備えると共に、前記サンプリング周期の1周期内に予め規定された第1の処理時間内に前記第1のデータ処理を実行
し、前記制御部の制御に従って前記記憶部から前記サンプリングデータを読み出して前記表示用波形データを生成して前記バッファに記憶させる第2のデータ処理を前記サンプリング周期の1周期内に前記第1の処理時間とは別個に予め規定された第2の処理時間内に実行し、
かつ前記制御部の制御に従って前記記憶部から前記サンプリングデータを読み出して前記記録用波形データを生成して前記バッファに記憶させる第3のデータ処理を前記サンプリング周期の1周期内に前記第1の処理時間および前記第2の処理時間とは別個に予め規定された第3の処理時間内に実行し、前記制御部は、前記第2のデータ処理が完了したときに前記表示用波形データを前記バッファから読み出して当該読み出した表示用波形データに基づいて前記表示用データを生成して前記表示部に出力することによって前記信号波形を表示させる
と共に、予め規定されたデータ量の前記サンプリングデータが前記第1のデータ処理によって前記記憶部に記憶されたときに前記データ処理部を制御して前記第3のデータ処理を実行させ、かつ当該第3のデータ処理が完了したときに前記バッファから前記記録用波形データを読み出して前記波形データ記録部に記録させる。
【0013】
さらに、請求項
2記載の波形記録装置は、請求項
1記載の波形記録装置において、前記制御部は、前記クロック信号に基づいて規定される前記サンプリング周期が予め規定された周期よりも長いときに、当該サンプリング周期の1周期内に前記第2の処理時間を複数回規定して当該1周期内に前記第2のデータ処理を複数回実行させる。
【0014】
また、請求項
3記載の波形記録装置は、入力信号をA/D変換処理してデジタル波形データを生成して出力するA/D変換部と、前記デジタル波形データを予め規定されたサンプリング周期でサンプリングして生成したサンプリングデータを記憶する記憶部と、前記サンプリング周期を規定するクロック信号を生成するクロック信号生成部と、前記クロック信号に従って前記デジタル波形データを前記サンプリング周期でサンプリングして前記サンプリングデータを生成すると共に当該生成したサンプリングデータを前記記憶部に記憶させるデータ処理Aを実行するデータ処理部と、前記サンプリングデータに基づいて生成された記録用波形データを記録する波形データ記録部と、前記データ処理部を制御して前記データ処理Aを実行させると共に前記記録用波形データを前記波形データ記録部に記録させる制御部とを備え、前記データ処理部は、前記記録用波形データを一時的に記憶するバッファを備えると共に、前記サンプリング周期の1周期内に予め規定された処理時間A内に前記データ処理Aを実行し、かつ、前記制御部の制御に従って前記記憶部から前記サンプリングデータを読み出して前記記録用波形データを生成して前記バッファに記憶させるデータ処理Bを前記サンプリング周期の1周期内に前記処理時間Aとは別個に予め規定された処理時間B内に実行し、前記制御部は、予め規定されたデータ量の前記サンプリングデータが前記データ処理Aによって前記記憶部に記憶されたときに前記データ処理部を制御して前記データ処理Bを実行させると共に当該データ処理Bが完了したときに前記バッファから前記記録用波形データを読み出して前記波形データ記録部に記録させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の波形記録装置では、データ処理部が、デジタル波形データをサンプリングして生成したサンプリングデータを記憶部に記憶させる第1のデータ処理を、クロック信号に基づいて規定されるサンプリング周期の1周期内に予め規定された第1の処理時間内に実行し、かつ、制御部の制御に従って記憶部からサンプリングデータを読み出して表示用波形データを生成してバッファに記憶させる第2のデータ処理を、サンプリング周期内に第1の処理時間とは別個に予め規定された第2の処理時間内に実行すると共に、制御部が、第2のデータ処理が完了したときに表示用波形データをバッファから読み出して読み出した表示用波形データに基づいて表示用データを生成して表示部に出力することによって信号波形を表示させる。
【0016】
したがって、請求項1記載の波形記録装置によれば、サンプリング周期の1周期内において必ず実行しなくてはならない第1のデータ処理のための第1の処理時間とは別個に規定された第2の処理時間、すなわち、サンプリング周期の1周期内における空き時間を有効に活用して、データ処理部が制御部にとって表示用データの生成時に必要とされるサンプリングデータを読み出して表示用波形データとしてバッファに記憶させておくため、制御部が、記憶部からサンプリングデータを直接読み出す処理を行うことなく、バッファから表示用波形データを読み出して表示用データを生成することができる。これにより、表示用データに基づく信号波形の表示処理時における制御部の負担を十分に軽減することができるため、信号波形をスムーズに表示させることができる。また、信号波形についての表示条件を途中で変更する必要が生じたときには、制御部が、データ処理部を制御して、変更後の表示条件に合わせて表示用波形データを生成してバッファに記憶させる第2のデータ処理を第2の処理時間内に実行させるため、変更後の表示条件に合わせて第1のデータ処理(サンプリング処理)を最初から実行し直すことなく、新たな表示条件に合致する信号波形を表示部に表示させることができる。
【0017】
また、請求項
1記載の波形記録装置によれば、データ処理部が、制御部の制御に従って記憶部からサンプリングデータを読み出して記録用波形データを生成してバッファに記憶させる第3のデータ処理を、サンプリング周期内に第1の処理時間および第2の処理時間とは別個に予め規定された第3の処理時間内に実行すると共に、制御部が、第3のデータ処理が完了したときにバッファから記録用波形データを読み出して波形データ記録部に記録させることにより、第1の処理時間や第2の処理時間とは別個に規定された第3の処理時間、すなわち、サンプリング周期の1周期内における空き時間を有効に活用して、データ処理部が、波形データ記録部に制御部によって記録されるサンプリングデータを読み出して記録用波形データとしてバッファに記憶させておくため、制御部が、記憶部からサンプリングデータを直接読み出す処理を必要とすることなく、バッファから記録用波形データを読み出して波形データ記録部に記録させることができる。これにより、記録用波形データの記録処理時における制御部の負担を十分に軽減することができるため、記録用波形データをスムーズに記録させることができる。また、記録条件を途中で変更する必要が生じたときには、制御部が、データ処理部を制御して、変更後の記録条件に合わせて記録用波形データを生成してバッファに記憶させる第3のデータ処理を第3の処理時間内に実行させるため、変更後の記録条件に合わせて第1のデータ処理(サンプリング処理)を最初から実行し直すことなく、新たな記録条件に合致する記録用波形データを波形データ記録部に記録させることができる。
【0018】
さらに、請求項
2記載の波形記録装置によれば、クロック信号に基づいて規定されるサンプリング周期が予め規定された周期よりも長いときに、制御部が、サンプリング周期の1周期内に第2の処理時間を複数回規定して1周期内に第2のデータ処理を複数回実行させることにより、サンプリング周期が長いことで、表示用波形データの生成周期(すなわち、表示用データの生成周期)が長くなる事態を招くことなく、十分に短い間隔で表示用波形データを生成して表示用データの生成周期を十分に短くすることができるため、信号波形をスムーズにスクロール表示させることができる。
【0019】
また、請求項
3記載の波形記録装置では、データ処理部が、デジタル波形データをサンプリングして生成したサンプリングデータを記憶部に記憶させるデータ処理Aを、クロック信号に基づいて規定されるサンプリング周期の1周期内に予め規定された処理時間A内に実行し、かつ、制御部の制御に従って記憶部からサンプリングデータを読み出して記録用波形データを生成してバッファに記憶させるデータ処理Bを、サンプリング周期内に処理時間Aとは別個に予め規定された処理時間B内に実行すると共に、制御部が、データ処理Bが完了したときにバッファから記録用波形データを読み出して波形データ記録部に記録させる。
【0020】
したがって、請求項
3記載の波形記録装置によれば、サンプリング周期の1周期内において必ず実行しなくてはならないデータ処理Aのための処理時間Aとは別個に規定された処理時間B、すなわち、サンプリング周期の1周期内における空き時間を有効に活用して、波形データ記録部に制御部によって記録されるサンプリングデータを読み出して記録用波形データとしてバッファに記憶させておくため、制御部が、記憶部からサンプリングデータを直接読み出す処理を必要とすることなく、バッファから記録用波形データを読み出して、その値を記録用波形データとして波形データ記録部に記録させることができる。これにより、記録用波形データの記録処理時における制御部の負担を十分に軽減することができるため、記録用波形データをスムーズに記録させることができる。また、記録条件を途中で変更する必要が生じたときには、制御部が、データ処理部を制御して、変更後の記録条件に合わせて記録用波形データを生成してバッファに記憶させるデータ処理Bを処理時間B内に実行させるため、変更後の記録条件に合わせてデータ処理A(サンプリング処理)を最初から実行し直すことなく、新たな記録条件に合致する波形データを記録用波形データ記録部に記録させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る波形記録装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示す波形記録装置1は、A/D変換部2、クロック信号生成部3、データ処理部4、記憶部5、操作部6、表示部7、波形データ記録部8および制御部9を備えて、入力信号Siについての信号波形の表示、および入力信号Siについての記録用波形データD3の記録を実行可能に構成されている。A/D変換部2は、制御部9の制御に従い、入力信号SiをA/D変換処理してデジタル波形データD0を生成して出力する。クロック信号生成部3は、データ処理部4によるデジタル波形データD0を対象とするサンプリング処理の周期(サンプリング周期)を規定するクロック信号Scを生成して出力する。
【0024】
データ処理部4は、制御部9の制御に従い、A/D変換部2から出力されたデジタル波形データD0を、クロック信号生成部3から出力されたクロック信号Scに基づいて規定されるサンプリング周期でサンプリングしてサンプリングデータD1を生成すると共に、生成したサンプリングデータD1を記憶部5に記憶させる処理(「第1のデータ処理」および「データ処理A」の一例)を実行する。この場合、データ処理部4は、アドレスカウンタ4aを備え、記憶部5にサンプリングデータD1を記憶させる都度、そのサンプリングデータD1を記憶させた領域のアドレスを特定可能な情報(すなわち、記憶部5においてサンプリングデータD1の記憶が完了した領域のアドレスを特定可能な情報:以下、単に「アドレス情報」ともいう)をアドレスカウンタ4aに記憶させる構成が採用されている。
【0025】
また、データ処理部4は、バッファ4bを備えると共に、制御部9の制御に従い、記憶部5からサンプリングデータD1を読み出すと共に、読み出たサンプリングデータD1に基づいて、制御部9が表示用データD2を生成する際に使用するサンプリングデータD1a(「表示用波形データ」の一例)を生成してバッファ4bに記憶させる処理(「第2のデータ処理」の一例)を実行する。さらに、データ処理部4は、制御部9の制御に従い、記憶部5からサンプリングデータD1を読み出してサンプリングデータD1b(「記録用波形データ」の一例)を生成してバッファ4bに記憶させる処理(「第3のデータ処理」および「データ処理B」の一例)を実行する。
【0026】
この場合、この波形記録装置1では、入力信号Siについての信号波形の表示、および入力信号Siについての記録用波形データD3の記録を実行するときに、後述するようにして、クロック信号Scによって規定されるサンプリング周期の1周期内に、上記の「第1のデータ処理」を実行する時間(「第1の処理時間」の一例)と、「第2のデータ処理」を実行する時間(「第2の処理時間」の一例)と、「第3のデータ処理(データ処理B)」を実行する時間(「第3の処理時間」の一例)と、記憶部5等への制御部9のアクセスを許容する「開放区間」(後述する一連の処理とは別の処理に際して、必要が生じたときに制御部9が記憶部5等にアクセスできるようにアクセス権を開放する区間)とがそれぞれ別個に規定されて、規定された時間内に、予め規定された各種の処理が実行される構成が採用されている。
【0027】
具体的には、
図2に示すように、この波形記録装置1では、クロック信号Scに基づいて規定される時点t0から次の時点t0までの1周期内に、「第1の処理時間」、「第2の処理時間」、「第3の処理時間」および「開放区間」がそれぞれ期間的に重なり合うことなく別個に規定される。より具体的には、一例として、クロック信号生成部3から出力されるクロック信号Scの立ち下がりの時点t0から所定時間が経過した時点t1から時点t2までの間が「第1の処理時間」として規定されて、データ処理部4が、この処理時間内にデジタル波形データD0に基づいてサンプリングデータD1を生成して(デジタル波形データD0をサンプリングして)記憶部5に記憶させる「第1のデータ処理」を実行する構成が採用されている。この「第1のデータ処理」については、入力信号Siについての信号波形の表示や記録用波形データD3の記録処理(以下、「波形表示記録処理」ともいう)が終了するまで、データ処理部4によって毎周期毎に繰り返して実行される。
【0028】
また、この波形記録装置1では、時点t2から時点t3までの間が「第2の処理時間」として規定されて、この処理時間内に、データ処理部4が、制御部9の制御に従って記憶部5からサンプリングデータD1を読み出して、表示部7に信号波形を表示させるための表示用データD2の基となるサンプリングデータD1aを生成してバッファ4bに記憶させる「第2のデータ処理」を実行する構成が採用されている。この「第2のデータ処理」については、記録用波形データD3の記録と共に入力信号Siについての信号波形をリアルタイムに表示させるときにはデータ処理部4によって毎周期毎に実行され、信号波形をリアルタイムに表示させないときには、制御部9から処理の実行を指示されたときにだけデータ処理部4によって実行される。
【0029】
さらに、この波形記録装置1では、時点t3から時点t4までの間が「第3の処理時間」として規定されて、この処理時間内に、データ処理部4が、制御部9の制御に従って記憶部5からサンプリングデータD1を読み出して、波形データ記録部8に記憶させる記録用波形データD3の基となるサンプリングデータD1bを生成してバッファ4bに記憶させる「第3のデータ処理」を実行する構成が採用されている。この「第3のデータ処理」については、制御部9から処理の実行を指示されたときにだけデータ処理部4によって実行される。また、この波形記録装置1では、時点t4から時点t5までの間が「開放区間」として規定されており、制御部9は、この「開放区間」内に、必要に応じて記憶部5かから任意のサンプリングデータD1を読み出す。なお、本例の波形記録装置1では、上記のバッファ4bへのサンプリングデータD1a,D1bの記憶が完了していれば、制御部9が、任意のタイミングでこれらサンプリングデータD1a,D1bをバッファ4bから読み出すことが可能となっている。
【0030】
記憶部5は、ストレージメモリとして機能し、データ処理部4によって生成されたサンプリングデータD1を記憶する。操作部6は、波形記録装置1の動作条件を設定するための操作スイッチ(図示せず)を備えて、スイッチ操作に応じた操作信号を制御部9に出力する。表示部7は、後述するように、制御部9によって生成される表示用データD2に基づき、波形記録装置1の動作条件を設定するための設定画面(図示せず)や、入力信号Siの信号波形を表示するための波形表示画面(図示せず)などを表示する。なお、本例の波形記録装置1では、波形表示画面等を表示するための表示部7を備えて構成されているが、外部装置としての「表示部」に波形表示画面等を表示させる構成を採用することもできる。
【0031】
波形データ記録部8は、一例として、ハードディスクドライブや不揮発性メモリ等の記憶媒体を備えて構成されて、制御部9の制御に従い、上記のサンプリングデータD1bに基づいて生成される記録用波形データD3(サンプリングデータD1bの値を順次追記することによって波形データ記録部8内に生成される記録用波形データD3)などを記録する。なお、本例の波形記録装置1では、記録用波形データD3などを記録するための波形データ記録部8を備えて構成されているが、外部装置としての「波形データ記録部(USBメモリや各種メモリカード等)」に記録用波形データD3などを記録させる構成を採用することもできる。
【0032】
制御部9は、波形記録装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部9は、操作部6から出力される操作信号(処理開始を指示する信号)に応じて、A/D変換部2を制御して、入力信号Siを対象とするA/D変換処理を実行させると共に、クロック信号生成部3を制御してクロック信号Scの生成処理を開始させる。また、制御部9は、データ処理部4を制御して上記の「第1のデータ処理」を実行させると共に、必要に応じて、「第2のデータ処理」および「第3のデータ処理」を実行させる。さらに、制御部9は、バッファ4bからサンプリングデータD1a,D1bを読み出す処理、サンプリングデータD1aに基づいて信号波形を表示部7に表示させるための表示用データD2を生成する処理、およびサンプリングデータD1bの値を波形データ記録部8に順次追記する(記録させる)ことで波形データ記録部8内に記録用波形データD3を生成する処理(以下、「サンプリングデータD1bの値を記録用波形データD3として記録させる処理」ともいう)を実行する。
【0033】
この波形記録装置1による信号波形の表示および記録用波形データD3の記録に際しては、まず、操作部6を操作して、入力信号Siについてのサンプリング周期(クロック信号生成部3に生成させるクロック信号Scの周期:サンプリングレート)、入力信号Siについての信号波形の表示条件(いずれの時点における信号波形を、どのような表示倍率で表示させるか等)、および入力信号Siについての記録用波形データD3の記録条件(単位時間当りの平均値、上限値および下限値のうちのいずれのデータを記録するかや、圧縮率等)を設定する。この際に、一例として、サンプリング周期を5ms間隔の周期とし、入力信号Siの信号波形を50ms間隔でプロットしてリアルタイムに表示させ、かつ25ms間隔の周期で入力信号Siについての平均値を演算して記録用波形データD3として記録させる旨の条件を設定する。
【0034】
次いで、操作部6の処理開始スイッチ(図示せず)が操作されたときに、制御部9は、波形表示記録処理を開始する。具体的には、制御部9は、波形表示記録処理の開始に先立って設定された条件に従い、サンプリングデータD1a,D1bの生成(バッファ4bへの記憶)に関する処理条件を特定可能な情報をデータ処理部4に出力する。また、制御部9は、A/D変換部2を制御して入力信号SiについてのA/D変換処理を開始させると共に、クロック信号生成部3を制御してクロック信号Scの生成を開始させる。これにより、A/D変換部2が入力信号SiをA/D変換処理したデジタル波形データD0をデータ処理部4に出力すると共に、クロック信号生成部3がクロック信号Scを生成してデータ処理部4に出力する。次いで、制御部9は、データ処理部4を制御してデジタル波形データD0についてのサンプリング処理を開始させる。
【0035】
この際に、データ処理部4は、クロック信号生成部3から出力されたクロック信号Scに従い、上記した時点t1から時点t2の間にデジタル波形データD0をサンプリングしてサンプリングデータD1を生成し、生成したサンプリングデータD1を記憶部5に記憶させ、かつ、サンプリングデータD1を記憶させたアドレスのアドレス情報をアドレスカウンタ4aに記憶させる。この処理(以下、「サンプリング処理」ともいう)については、前述したように、クロック信号Scに基づいて規定されたサンプリング周期の各周期毎に時点t1から時点t2まで毎回実行される。これにより、データ処理部4によって生成されたサンプリングデータD1が記憶部5に順次追記されると共に、アドレスカウンタ4a内のアドレス情報が記憶部5に記憶された最新のサンプリングデータD1についてのアドレス情報に更新される。
【0036】
また、制御部9は、アドレスカウンタ4aに記憶されるアドレス情報を監視することにより、50ms分のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶されたとき(すなわち、上記のサンプリング処理が10回実行される都度)、サンプリングデータD1aをバッファ4bに記憶させる処理(第2のデータ処理)を実行するようにデータ処理部4を制御する。具体的には、一例として、10回のサンプリング処理が完了して10個のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶される都度、制御部9は、その10個のサンプリングデータD1のうちの最先のサンプリングデータD1(10個のサンプリングデータD1のうちの最初に生成されたサンプリングデータD1)が記憶されているアドレスのアドレス情報をデータ処理部4に出力する。
【0037】
これに応じて、データ処理部4は、制御部9から出力されたアドレス情報のアドレスに記憶されているサンプリングデータD1を含む最新の10個のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出すと共に、一例として、読み出した各サンプリングデータD1の各値のうちの絶対値が最も大きい値を特定してサンプリングデータD1aとしてバッファ4bに記憶させる処理(第2のデータ処理)を、時点t2から時点t3までの間(第2の処理時間)に実行する。この際に、1周期内の時点t2からt3までの間にバッファ4bへのサンプリングデータD1aの記憶が完了しなかったときには、データ処理部4は、次の周期における時点t2から時点t3までの間に、終了していない処理を継続して実行する。また、バッファ4bへのサンプリングデータD1aの記憶が完了したときに、データ処理部4は、「第2のデータ処理」が完了した旨を制御部9に報知する。
【0038】
さらに、制御部9は、アドレスカウンタ4aに記憶されるアドレス情報を監視することにより、25ms分のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶されたとき(すなわち、上記のサンプリング処理が5回実行される都度)、サンプリングデータD1bをバッファ4bに記憶させる処理(第3のデータ処理)を実行するようにデータ処理部4を制御する。具体的には、一例として、5回のサンプリング処理が完了して5個のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶される都度、制御部9は、その5個のサンプリングデータD1のうちの最先のサンプリングデータD1が記憶されているアドレスのアドレス情報をデータ処理部4に出力する。
【0039】
これに応じて、データ処理部4は、制御部9から出力されたアドレス情報のアドレスに記憶されているサンプリングデータD1を含む最新の5個のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出すと共に、読み出した各サンプリングデータD1に基づいて、25msの範囲内のサンプリング値の平均値(5個のサンプリングデータD1の各値の平均値)を演算して、演算結果をサンプリングデータD1bとしてバッファ4bに記憶させる処理(第3のデータ処理)を、時点t3から時点t4までの間(第3の処理時間)に実行する。この際に、1周期内の時点t3からt4までの間にサンプリングデータD1bの生成、およびバッファ4bへのサンプリングデータD1bの記憶が完了しなかったときには、データ処理部4は、次の周期における時点t3からt4までの間に、終了していない処理を継続して実行する。また、バッファ4bへのサンプリングデータD1bの記憶が完了したときに、データ処理部4は、「第3のデータ処理」が完了した旨を制御部9に報知する。
【0040】
一方、制御部9は、データ処理部4から「第2のデータ処理」が完了した旨が報知されたときに、任意のタイミング(他に優先して実行すべき処理が存在しないタイミング)でバッファ4bからサンプリングデータD1aを読み出すと共に、読み出したサンプリングデータD1aに基づいて表示用データD2を生成して表示部7に出力する処理を実行する。これにより、50ms毎に1プロットの周期で表示部7に入力信号Siについての信号波形(図示せず)が表示される。この信号波形の表示に関する一連の処理については、波形表示記録処理が終了するまで、または、信号波形の表示条件が変更されるまで、繰り返して実行される。
【0041】
また、制御部9は、データ処理部4から「第3のデータ処理」が完了した旨が報知されたときに、任意のタイミング(他に優先して実行すべき処理が存在しないタイミング)でバッファ4bからサンプリングデータD1bを読み出すと共に、読み出したサンプリングデータD1bの値を記録用波形データD3として波形データ記録部8に記録させる処理を実行する。これにより、25ms毎に1つの周期で入力信号SiについてのサンプリングデータD1bの値が記録用波形データD3として波形データ記録部8に追記(記録)される。この記録用波形データD3の記録に関する一連の処理については、波形表示記録処理が終了するまで、または、記録用波形データD3の記録条件が変更されるまで、繰り返して実行される。
【0042】
一方、この種の波形記録装置1による波形表示記録処理に際しては、表示部7に表示させている信号波形についての表示条件や、記録用波形データD3の記録条件を途中で変更する必要が生じることがある。具体的には、一例として、入力信号Siの信号波形を50ms間隔でプロットして信号波形を表示させている状態において、プロットの間隔を100msに変更する(信号波形を時間軸方向に1/2倍の倍率で圧縮する)には、操作部6を操作して、そのように表示条件を変更する。これに応じて、制御部9は、サンプリングデータD1aの生成(バッファ4bへの記憶)に関する処理条件を特定可能な情報を新たに生成してデータ処理部4に出力する。
【0043】
また、制御部9は、アドレスカウンタ4aに記憶されるアドレス情報を監視することにより、100ms分のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶されたとき(すなわち、上記のサンプリング処理が20回実行される都度)、サンプリングデータD1aをバッファ4bに記憶させる処理(第2のデータ処理)を実行するようにデータ処理部4を制御する。具体的には、一例として、20回のサンプリング処理が完了して20個のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶される都度、制御部9は、その20個のサンプリングデータD1のうちの最先のサンプリングデータD1(20個のサンプリングデータD1のうちの最初に生成されたサンプリングデータD1)が記憶されているアドレスのアドレス情報をデータ処理部4に出力する。
【0044】
これに応じて、データ処理部4は、制御部9から出力されたアドレス情報のアドレスに記憶されているサンプリングデータD1を含む最新の20個のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出すと共に、一例として、読み出した各サンプリングデータD1の各値のうちの絶対値が最も大きい値を特定してサンプリングデータD1aとしてバッファ4bに記憶させる処理(第2のデータ処理)を、時点t2から時点t3までの間に実行する。また、バッファ4bへのサンプリングデータD1aの記憶処理が完了したときに、データ処理部4は、処理が完了した旨を制御部9に報知する。これに応じて、制御部9は、任意のタイミングでバッファ4bからサンプリングデータD1aを読み出すと共に、読み出したサンプリングデータD1aに基づいて表示用データD2を生成して表示部7に出力する。これにより、50ms毎に1プロットの周期で表示部7に表示されていた入力信号Siについての信号波形に続いて、100ms毎に1プロットの周期で新たな信号波形が表示される。
【0045】
また、一例として、25ms間隔の周期で記録用波形データD3が波形データ記録部8に記録されている状態において、記録用波形データD3の記録間隔を50msに変更するには、操作部6を操作して、そのように記録条件を変更する。これに応じて、制御部9は、サンプリングデータD1bの生成(バッファ4bへの記憶)に関する処理条件を特定可能な情報を新たに生成してデータ処理部4に出力する。また、制御部9は、アドレスカウンタ4aに記憶されるアドレス情報を監視することにより、50ms分のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶されたとき(すなわち、上記のサンプリング処理が10回実行される都度)、サンプリングデータD1bをバッファ4bに記憶させる処理(第3のデータ処理)を実行するようにデータ処理部4を制御する。具体的には、一例として、10回のサンプリング処理が完了して10個のサンプリングデータD1が記憶部5に記憶される都度、制御部9は、その10個のサンプリングデータD1のうちの最先のサンプリングデータD1が記憶されているアドレスのアドレス情報をデータ処理部4に出力する。
【0046】
これに応じて、データ処理部4は、制御部9から出力されたアドレス情報のアドレスに記憶されているサンプリングデータD1を含む最新の10個のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出すと共に、読み出した各サンプリングデータD1に基づいて、50msの範囲内のサンプリング値の平均値(10個のサンプリングデータD1の各値の平均値)を演算して、演算結果をサンプリングデータD1bとしてバッファ4bに記憶させる処理(第3のデータ処理)を、時点t3から時点t4までの間に実行する。また、バッファ4bへのサンプリングデータD1bの記憶処理が完了したときに、データ処理部4は、処理が完了した旨を制御部9に報知する。これに応じて、制御部9は、任意のタイミングでバッファ4bからサンプリングデータD1bを読み出すと共に、読み出したサンプリングデータD1bの値を記録用波形データD3として波形データ記録部8に記録させる。これにより、50ms間隔での記録用波形データD3の記録処理に続いて、25ms毎に1つの周期で入力信号Siについての新たな記録用波形データD3が波形データ記録部8に記録される処理が実行される。
【0047】
なお、データ処理部4が信号波形をリアルタイムに表示させるためのサンプリングデータD1aを時点t2から時点t3までの間に生成してバッファ4bに記憶させる例について説明したが、この波形記録装置1では、一例として、リアルタイムの信号波形との比較を目的として、リアルタイムの信号波形に加えて(または、リアルタイムの信号波形に代えて)、既に表示を完了している過去の入力信号Siについての信号波形を表示部7に表示させることができるように構成されている。具体的には、操作部6のスイッチ操作によって「過去の信号波形」として表示部7に表示させるべき信号波形の表示条件(いずれの時点のサンプリングデータD1に基づく信号波形をどのような表示倍率で表示させるか)が指定されたときに、制御部9は、指定された条件に従って、サンプリングデータD1aの生成(バッファ4bへの記憶)に関する処理条件を特定可能な情報を生成して、「過去の信号波形」を表示させるための表示用データD2の基となるサンプリングデータD1のアドレス情報と共にデータ処理部4に出力する。
【0048】
これに応じて、データ処理部4は、制御部9から出力されたアドレス情報のアドレスに記憶されているサンプリングデータD1を含む所定数のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出すと共に、一例として、読み出した各サンプリングデータD1の各値のうちの絶対値が最も大きい値を特定してサンプリングデータD1aとしてバッファ4bに記憶させる処理(第2のデータ処理)を、上記の時点t2から時点t3までの間に実行する。また、バッファ4bへのサンプリングデータD1aの記憶処理が完了したときに、データ処理部4は、処理が完了した旨を制御部9に報知する。これに応じて、制御部9は、任意のタイミングでバッファ4bからサンプリングデータD1aを読み出すと共に、読み出したサンプリングデータD1aに基づいて表示用データD2を生成して表示部7に出力する。これにより、過去の信号波形が表示部7に表示される。
【0049】
この場合、波形表示記録処理の開始に先立って設定されるサンプリング周期が予め規定された周期よりも長いときには、表示用データD2を生成するためのサンプリングデータD1aがバッファ4bに記憶される間隔(サンプリングデータD1aの生成周期)が長くなる。このため、例えば、上記の「過去の信号波形」をスクロール表示させるときには、サンプリングデータD1aの生成間隔が長くなることに起因して、信号波形のスムーズなスクロール表示が困難となる。したがって、この波形記録装置1では、波形表示記録処理の開始に先立って設定されたサンプリング周期が、予め規定された周期よりも長いとき(一例として、10ms間隔の周期よりも長い周期が設定されたとき)に、クロック信号Scに基づいて規定されるサンプリング周期の1周期内に、上記の「第2のデータ処理」、および「第3のデータ処理」を複数回実行するように、「第2の処理時間」および「第3の処理時間」を1周期内に複数回規定する構成されている。
【0050】
具体的には、10ms間隔の周期よりも長い周期がサンプリング周期として設定されたときに、制御部9は、
図3に示すように、時点t2から時点t3aまでの間、および時点t5aから時点t3bまでの間の2回に亘って他の処理時間等とは期間的に重なり合うことなく2つの「第2の処理時間」を別個に規定すると共に、時点t3aから時点t4aまでの間、および時点t3bから時点t4bまでの間の2回に亘って他のデータ処理時間等とは期間的に重なり合うことなく2つの「第3の処理時間」を別個に規定する(「サンプリング周期の1周期」内に「第2の処理時間」を2回規定した例)。また、制御部9は、前述した例における時点t4〜t5の間と同様に記憶部5等へのアクセスが許容される「許容区間」を時点t4aから時点t5aまでの間、および時点t4bから時点t5bまでの間の2回に亘って他の処理時間等とは期間的に重なり合うことなく規定する。なお、設定されたサンプリング周期がさらに長いときには、制御部9は、「第2の処理時間」、「第3の処理時間」および「開放区間」を、1周期内に3回以上の複数回に亘って規定する。
【0051】
また、波形表示記録処理に際して、データ処理部4は、制御部9の制御に従い、時点t2から時点t3aまでの間に、指定された数のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出してサンプリングデータD1aを生成すると共に、生成したサンプリングデータD1aをバッファ4bに記憶させる。さらに、データ処理部4は、時点t5aから時点t3bまでの間に、指定された数の他のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出してサンプリングデータD1aを生成すると共に、生成したサンプリングデータD1aをバッファ4bに記憶させる。また、バッファ4bに記憶されたサンプリングデータD1aは、任意のタイミングに制御部9によってバッファ4bから読み出される。
【0052】
また、制御部9は、時点t2から時点t3aまでの間にバッファ4bに記憶されたサンプリングデータD1aに基づいて表示用データD2を生成して表示部7に出力すると共に、時点t5aから時点t3bまでの間にバッファ4bに記憶されたサンプリングデータD1aに基づいて新たな表示用データD2を生成して表示部7に出力する。したがって、この例では、クロック信号Scに基づいて規定されるサンプリング周期の1周期内に2回に亘って新たな表示用データD2が生成されて表示部7に出力されるため、例えば、信号波形のスクロール表示を行っているときにも、信号波形がスムーズにスクロールされる。
【0053】
なお、この例では、記録用波形データD3を生成するためのサンプリングデータD1bの記憶処理についても、サンプリング周期の1周期内に2回に亘って実行される。具体的には、データ処理部4は、制御部9の制御に従い、時点t3aから時点t4aまでの間、および時点t3bから時点t4bまでの間の2回に亘って、指定された数のサンプリングデータD1を記憶部5から読み出してサンプリングデータD1bを生成すると共に、生成したサンプリングデータD1bをバッファ4bに記憶させる。また、制御部9は、任意のタイミングでバッファ4bからサンプリングデータD1bを読み出して、その値を記録用波形データD3として波形データ記録部8に記録させる。
【0054】
一方、この波形記録装置1では、記録用波形データD3の記録が不要のときに入力信号Siについての信号波形を表示部7に表示させる波形表示処理だけを実行したり、信号波形の表示が不要のときに、波形データ記録部8に記録用波形データD3を記録させる波形記録処理だけを実行したりすることができるように構成されている。
【0055】
具体的には、記録用波形データD3の記録が不要なときには、波形記録処理を実行することなく、波形表示処理だけを実行するように設定することで、クロック信号Scに基づいて規定される時点t0から次の時点t0までの1周期内に、「第3の処理時間」が規定されることなく、「第1の処理時間」、「第2の処理時間」および「開放区間」がそれぞれ期間的に重なり合うことなく別個に規定される。より具体的には、
図4に示すように、波形記録処理を実行しないように設定されたこの例においても、一例として、クロック信号生成部3からのクロック信号Scの立ち下がりの時点t0から所定時間が経過した時点t1から時点t2までの間が「第1の処理時間」として規定されて、データ処理部4が、この処理時間内にデジタル波形データD0に基づいてサンプリングデータD1を生成して(デジタル波形データD0をサンプリングして)記憶部5に記憶させる「第1のデータ処理」を実行する。
【0056】
また、波形記録処理を実行しないように設定されたこの例では、サンプリング周期の1周期内に、前述した「第3の処理時間」に相当する処理時間が規定されることなく、時点t2から時点t4までの間が「第2の処理時間」として規定されて、この処理時間内にデータ処理部4が制御部9の制御に従って記憶部5からサンプリングデータD1を読み出して、表示部7に信号波形を表示させるための表示用データD2の基となるサンプリングデータD1aを生成してバッファ4bに記憶させる「第2のデータ処理」を実行する。さらに、波形記録処理を実行しないように設定されたこの例においても、制御部9が、任意のタイミングでアドレスカウンタ4aからのアドレス情報の読み出しや、バッファ4bからのサンプリングデータD1aの読み出しなどを実行する。
【0057】
この場合、前述した波形表示記録処理の例と同様にして、波形表示処理の開始に先立って設定されるサンプリング周期が予め規定された周期(一例として、10ms間隔の周期)よりも長いときに、制御部9は、クロック信号Scに基づいて規定されるサンプリング周期の1周期内に、上記の「第2のデータ処理」を複数回実行するように「第2の処理時間」を1周期内に複数回規定する。具体的には、
図5に示すように、規定された周期よりも長い周期がサンプリング周期として設定されたときに、制御部9は、時点t2から時点t4aまでの間、および時点t5aから時点t4bまでの間の2回に亘って他の処理時間等とは期間的に重なり合うことなく2つの「第2の処理時間」を別個に規定すると共に、時点t4aから時点t5aまでの間、および時点t4bから時点t5bまでの間の2回に亘って他の処理時間とは期間的に重なり合うことなく2つの「開放区間」を別個に規定する(「サンプリング周期の1周期」内に「第2の処理時間」を2回規定した例)。また、設定されたサンプリング周期がさらに長いときには、制御部9は、「第2の処理時間」および「開放区間」を、1周期内に3回以上の複数回に亘って規定する。
【0058】
なお、「第1の処理時間」においてデータ処理部4によって実行される「第1のデータ処理」、「第2の処理時間」においてデータ処理部4によって実行される「第2のデータ処理」、および制御部9によって実行されるサンプリングデータD1aの読み出しや表示用データD2の生成処理については、前述した波形表示記録処理時の各処理と同様のため、詳細な説明を省略する。これにより、波形データ記録部8への記録用波形データD3の記録処理が実行されることなく、入力信号Siについての信号波形が表示部7に表示される。
【0059】
また、入力信号Siについての信号波形の表示が不要なときには、波形表示処理を実行することなく、波形記録処理だけを実行するように設定することで、クロック信号Scに基づいて規定される時点t0から次の時点t0までの1周期内に、「第2の処理時間」に相当する処理時間が規定されることなく、「処理時間A」、「処理時間B」および「開放区間」がそれぞれ別個に規定される。より具体的には、
図6に示すように、波形表示処理を実行しないように設定されたこの例においては、一例として、クロック信号生成部3からのクロック信号Scの立ち下がりの時点t0から所定時間が経過した時点t1から時点t2までの間が「処理時間A」として規定されて、データ処理部4が、この処理時間内にデジタル波形データD0に基づいてサンプリングデータD1を生成して(デジタル波形データD0をサンプリングして)記憶部5に記憶させる「データ処理A」を実行する。この「処理時間A」および「データ処理A」については、前述した波形表示記録処理や波形表示処理における「第1の処理時間」および「第1のデータ処理」と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0060】
また、波形表示処理を実行しないように設定されたこの例では、サンプリング周期の1周期内に、前述した「第2の処理時間」に相当する処理時間が規定されることなく、時点t2から時点t4までの間が「処理時間B」として規定されて、この処理時間内にデータ処理部4が制御部9の制御に従って記憶部5からサンプリングデータD1を読み出して、波形データ記録部8に記憶させる記録用波形データD3の基となるサンプリングデータD1bを生成してバッファ4bに記憶させる「データ処理B」を実行する。この「処理時間B」および「データ処理B」については、前述した波形表示記録処理における「第3の処理時間」および「第3のデータ処理」と同様であるため、詳細な説明を省略する。さらに、波形記録処理を実行しないように設定されたこの例においても、制御部9が、任意のタイミングでアドレスカウンタ4aからのアドレス情報の読み出しや、バッファ4bからのサンプリングデータD1bの読み出しなどを実行する。これにより、入力信号Siについての信号波形を表示部7に表示させる波形表示処理が実行されることなく、入力信号Siについての記録用波形データD3が波形データ記録部8に記録される。
【0061】
このように、この波形記録装置1では、データ処理部4が、デジタル波形データD0をサンプリングして生成したサンプリングデータD1を記憶部5に記憶させる「第1のデータ処理」を、クロック信号Scに基づいて規定されるサンプリング周期の1周期内に予め規定された「第1の処理時間」内に実行し、かつ、制御部9の制御に従って記憶部5からサンプリングデータD1を読み出してサンプリングデータD1aを生成してバッファ4bに記憶させる「第2のデータ処理」を、サンプリング周期内に「第1の処理時間」とは別個に予め規定された「第2の処理時間」内に実行し、制御部9が、「第2のデータ処理」が完了したときにサンプリングデータD1aをバッファ4bから読み出して読み出したサンプリングデータD1aに基づいて表示用データD2を生成して表示部7に出力することによって信号波形を表示させる。
【0062】
したがって、この波形記録装置1によれば、サンプリング周期の1周期内において必ず実行しなくてはならない「第1のデータ処理」のための「第1の処理時間」とは別個に規定された「第2の処理時間」、すなわち、サンプリング周期の1周期内における空き時間を有効に活用して、データ処理部4が制御部9にとって表示用データD2の生成時に必要とされるサンプリングデータD1を読み出してサンプリングデータD1aとしてバッファ4bに記憶させておくため、制御部9が、記憶部5からサンプリングデータD1を直接読み出す処理を行うことなく、バッファ4bからサンプリングデータD1aを読み出して表示用データD2を生成することができる。これにより、表示用データD2に基づく信号波形の表示処理時における制御部9の負担を十分に軽減することができるため、信号波形をスムーズに表示させることができる。また、信号波形についての表示条件を途中で変更する必要が生じたときには、制御部9が、データ処理部4を制御して、変更後の表示条件に合わせてサンプリングデータD1aを生成してバッファ4bに記憶させる「第2のデータ処理」を「第2の処理時間」内に実行させるため、変更後の表示条件に合わせて「第1のデータ処理」(サンプリング処理)を最初から実行し直すことなく、新たな表示条件に合致する信号波形を表示部7に表示させることができる。
【0063】
また、この波形記録装置1によれば、データ処理部4が、制御部9の制御に従って記憶部5からサンプリングデータD1を読み出してサンプリングデータD1bを生成してバッファ4bに記憶させる「第3のデータ処理」を、サンプリング周期内に「第1の処理時間」および「第2の処理時間」とは別個に予め規定された「第3の処理時間」内に実行し、制御部9が、「第3のデータ処理」が完了したときにバッファ4bからサンプリングデータD1bを読み出して、その値を記録用波形データD3として波形データ記録部8に記録させることにより、「第1の処理時間」や「第2の処理時間」とは別個に規定された「第3の処理時間」、すなわち、サンプリング周期の1周期内における空き時間を有効に活用して、データ処理部4が、記録用波形データD3として波形データ記録部8に制御部9によって記録されるサンプリングデータD1を読み出してサンプリングデータD1bとしてバッファ4bに記憶させておくため、制御部9が、記憶部5からサンプリングデータD1を直接読み出す処理を必要とすることなく、バッファ4bからサンプリングデータD1bを読み出してその値を記録用波形データD3として波形データ記録部8に記録させることができる。これにより、記録用波形データD3の記録処理時における制御部9の負担を十分に軽減することができるため、記録用波形データD3をスムーズに記録させることができる。また、記録条件を途中で変更する必要が生じたときには、制御部9が、データ処理部4を制御して、変更後の記録条件に合わせてサンプリングデータD1bを生成してバッファ4bに記憶させる「第3のデータ処理」を「第3の処理時間」内に実行させるため、変更後の記録条件に合わせて「第1のデータ処理」(サンプリング処理)を最初から実行し直すことなく、新たな記録条件に合致する記録用波形データD3を波形データ記録部8に記録させることができる。
【0064】
さらに、この波形記録装置1によれば、クロック信号Scに基づいて規定されるサンプリング周期が予め規定された周期よりも長いときに、制御部9が、サンプリング周期の1周期内に「第2の処理時間」を複数回規定して1周期内に「第2のデータ処理」を複数回実行させることにより、サンプリング周期が長いことで、サンプリングデータD1aの生成周期(すなわち、表示用データD2の生成周期)が長くなる事態を招くことなく、十分に短い間隔でサンプリングデータD1aを生成して表示用データD2の生成周期を十分に短くすることができるため、信号波形をスムーズにスクロール表示させることができる。
【0065】
また、この波形記録装置1では、信号波形の表示が不要なときに、データ処理部4が、デジタル波形データD0をサンプリングして生成したサンプリングデータD1を記憶部5に記憶させる「データ処理A」を、クロック信号Scに基づいて規定されるサンプリング周期の1周期内に予め規定された「処理時間A」内に実行し、かつ、制御部9の制御に従って記憶部5からサンプリングデータD1を読み出してサンプリングデータD1bを生成してバッファ4bに記憶させる「データ処理B」を、サンプリング周期内に「処理時間A」とは別個に予め規定された「処理時間B」内に実行し、制御部9が、「データ処理B」が完了したときにバッファ4bからサンプリングデータD1bを読み出して、その値を記録用波形データD3として波形データ記録部に記録させる。
【0066】
したがって、この波形記録装置1によれば、サンプリング周期の1周期内において必ず実行しなくてはならない「データ処理A」のための「処理時間A」とは別個に規定された「処理時間B」、すなわち、サンプリング周期の1周期内における空き時間を有効に活用して、データ処理部4が記録用波形データD3として波形データ記録部8に制御部9によって記録されるサンプリングデータD1を読み出してサンプリングデータD1bとしてバッファ4bに記憶させておくため、制御部9が、記憶部5からサンプリングデータD1を直接読み出す処理を必要とすることなく、バッファ4bからサンプリングデータD1bを読み出して、その値を記録用波形データD3として波形データ記録部8に記録させることができる。これにより、記録用波形データD3の記録処理時における制御部9の負担を十分に軽減することができるため、記録用波形データD3をスムーズに記録させることができる。また、記録条件を途中で変更する必要が生じたときには、制御部9が、データ処理部4を制御して、変更後の記録条件に合わせてサンプリングデータD1bを生成してバッファ4bに記憶させる「データ処理B」を「処理時間B」内に実行させるため、変更後の記録条件に合わせて「データ処理A」(サンプリング処理)を最初から実行し直すことなく、新たな記録条件に合致する記録用波形データD3を波形データ記録部8に記録させることができる。
【0067】
な
お、入力信号Siについての信号波形を表示する波形表示処理、および入力信号Siについての記録用波形データD3を記録する波形記録処理の双方を実行可能な構成の波形記録装置1において、波形表示処理および波形記録処理(波形表示記録処理)を実行する例、波形記録処理を実行することなく波形表示処理だけを実行する例、および波形表示処理を実行することなく波形記録処理だけを実行する例について説明したが、波形記録処理を実行する機能を有することなく、波形表示処理だけを実行可能に構成された波形記録装置(信号波形の表示を目的として波形データ(サンプリングデータ)を一時的に記録する機能を有する波形記録装置:波形表示装置)や、波形記録処理だけを実行可能に構成された波形記録装置においても、上記の波形記録装置1と同様にサンプリング周期の1周期内に各データ処理時間を規定してデータ処理を実行する構成を採用することにより、波形記録装置1と同様の効果を奏することができる。