【実施例】
【0016】
本発明の実施形態及び具体例を
図1〜
図5の図面に基づいて説明する。なお、この説明において「左」、「右」という用語は、ショルダーハーネスを作業者が装着したときに作業者の左側に位置する場合を「左」と呼び、作業者の右側に位置する場合を「右」と呼ぶ。また、「前」、「後」という用語は、ショルダーハーネスを作業者が装着したときに作業者の前側に位置する場合を「前」と呼び、作業者の後側に位置する場合を「後」と呼ぶ。
【0017】
先ず
図1を参照して、本発明に従うショルダーハーネス100は、そのハーネスネットワーク102を構成する要素として左右のショルダーベルト104を有する。前述した
図10と対比して
図1を見ると分かるように、作業機(ヒップパッド106を備えた係止具108)と同じ側に位置する右側ショルダーベルト104Riは従来と同様に直線状に延びる肩部110Riを有し、この肩部110Riから幅広のバンド112Riがジョイントバックル108に連結されている。これに対して、作業機(ヒップパッド106)とは反対側の左側ショルダーベルト104Leは、その肩部110Leが右側に向けて斜行又は湾曲して延びている。すなわち、左右のショルダーベルト104Le、104Riは非対象である。
【0018】
任意であるが、ショルダーハーネス100は作業機とは反対側に位置する脇ベルト114を有していてもよい。同様に任意であるが、ショルダーハーネス100は、背部材に連結された腰ベルト116を有していてもよい。更に好ましくは、吊り下げベルト118を介して係止具108を支持する中継部材としての中継プレート120を有し、この中継プレート120を保持部材122を介してハーネスネットワーク102に連結するのがよい。
【0019】
本発明の従うショルダーハーネス100に含まれる左右のショルダーベルト104は
図6乃至
図9を参照して説明した従来のショルダーハーネスに含まれる左右のショルダーベルトに適用可能である。
【0020】
本発明の従うショルダーハーネス100は、作業機(ヒップパッド106)とは反対側の左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leが右側に向けて斜行又は湾曲して延びていることから、作業機からの引っ張り力Fが左側ショルダーベルト104Leに作用したとしても、この左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leの変形又は位置ずれを抑制することができ、肩部への負担を軽減することができる。
【0021】
実施例(図2〜図4):
図2は、実施例のショルダーハーネス200を示す。実施例のショルダーハーネス200のハーネスネットワーク202は、作業者の背中に対面して位置する背部材として合成樹脂成型品の背プレート204を有し、この背プレート204の本体204aの上端の両側部には、前方に延びる左右一対の細長い形状の延長部206Ri、206Leが一体的に形成されている。背プレートこの一対の延長部206Ri、206Leは、夫々、作業者の左右の肩部に位置決めされる。図中、参照符号208は通気用の開口を示し、この通気用開口208は、背プレート本体204a、左右の延長部206Le、206Riの全域に数多く設けられている。この左右の延長部206Le、206Riを備えた背プレート204は、例えばPE、PP、ナイロンのような合成樹脂を一体成形することで作られている。左右の延長部206Le、206Riは、左右のショルダーベルト216Le、216Riの肩部の芯材を構成し、この左右の延長部206Le、206Riには、夫々、細長い形状に形作られたショルダクッション210が固定される。
【0022】
左右の延長部206Le、206Riの先端部には、夫々、引張り強さに優れたポリエステル繊維からなる従来から周知の幅広のバンド212が連結され、そして、この左右のショルダバンド212Le、212Riの先端は合流している。この合成樹脂製の延長部206Le、206Ri及びその各々に連結された左右のバンド212Le、212Riは、夫々、左右のショルダーベルト216Le、216Riを構成し、好ましい態様として、その先端にジョイントバックル214Le、214Riを設けるのがよい。このジョイントバックル214Le、214Riは従来から周知の抜き差し可能な、互いに対をなすジョイントバックルで構成されている。
【0023】
図3は、背プレート204に含まれる左右の延長部206Le、206Riを抽出した平面図である。
図3から分かるように、背プレート204の本体204aの上端から連続して延びる左右の延長部206Le、206Riが左右非対象となっている。
図3から良く分かるように、左側の延長部206Leは先端に向かうに従って右側に湾曲する形状に形作られている。これに対して右側延長部206Riは従来と同様に真っ直ぐに延びている。
【0024】
図2に戻って、上述した左右のショルダバンド212Le、212Riには、夫々、長さ調整バックル218が設けられている。この長さ調整バックル218によって左右のショルダーベルト216Le、216Riは、夫々、独立してその長さ寸法を調整することができる。
【0025】
実施例のショルダーハーネス200は、作業者の左の体側に沿って横方向に延びる幅広の脇ベルト220を好ましくは有し、この脇ベルト220は、幅広のポリエステル繊維バンド222とその内側に縫い込つけたクッション材224とで構成されている。脇ベルト220は、その後端が背プレート204の下端部に連結され、前端が左側ジョイントバックル214Leに対して長さ調整可能に連結されている。
【0026】
図2に図示の仮想線230は、ハーネスネットワーク202と、
図4に図示の中継プレート232とを連結する保持部材を示す。保持部材230は前側保持ベルト230Frと後側保持ベルト230Reとで構成され、これらは、ポリエステル繊維からなる従来から周知の幅広のバンドで構成されている。前側保持ベルト230Frは右側ジョイントバックル214Riと、中継部材としての中継プレート232(
図4)とに連結されている。他方、後側保持ベルト230Reは中継プレート232と背プレート204とに連結されている。
【0027】
図2の参照符号236は、右側ジョイントバックル214Riに形成されたスリットを示し、このスリット236に前側保持ベルト230Frが連結される。また参照符号238は、背プレート204に形成されたスリットを示し、このスリット238に後側保持ベルト230Reが連結される。好ましくは、前後の保持ベルト230Fr、230Reの各々に長さ調整バックル(図示せず)を設けるのがよい。
【0028】
図4を参照して、この
図4の上側に描いてある中継プレート232には、その上部に幅方向に離間して位置する2つの前後のスリット240、242が形成されている。前側スリット240には上記前側保持ベルト230Frが連結され、他方、後側スリット242には上記後側保持ベルト230Reが連結される。
【0029】
図4に図示の参照符号250はヒップパッドを示す。このヒップパッド250の上端部と、その上方に位置する中継プレート232の幅方向中間部分とが吊り下げ部材である1本の幅広のベルト252によって連結されている。変形例として、中継プレート232の幅方向に離間してこの中継プレート232に連結した複数の吊り下げベルトでヒップパッド250と中継プレート232とを連結するようにしてもよい。吊り下げベルト252はポリエステル繊維からなる従来から周知の幅広のバンドで構成され、好ましくは長さ調整バックル又はジョイントバックル254を備えているのがよい。
図4に示す参照符号260は従来から既知のフックであり、このフック260が作業機(図示せず)を係止する係止部材を構成している。
【0030】
図2〜
図4に図示の実施例のショルダーハーネス200は比較的軽量な作業機に好適に適用される。比較的重い作業機に適用するには、背プレート204を下方に延長し、その下端部に、長さ調整可能な腰ベルトを連結してもよい。腰ベルトを、従来と同様に、左右に2分割したポリエステル繊維からなる幅広のバンドで構成し、この左右のバンドの前端つまり作業者の腹部中央に相当する位置にジョイントバックルを設ければよい。そして、この腰ベルトの右側バンドと中継プレート232とを連結するのが好ましい。腰ベルトの右側バンドを中継プレート232に連結する方法として、中継プレート232に、例えばその幅方向に延びるトンネルを設け、このトンネルに右側バンドを挿通させてもよいし、腰ベルトの右側バンドを中継プレート232に固定してもよい。腰ベルトを中継プレート232に固定する方法として、一本の右側バンドの長手方向中間部分に中継プレート232を固定してもよいし、右側バンドを二本の分割バンドで構成し、相対的に後方に位置する後側分割バンドの前端を中継プレート232に連結し、前側分割バンドの後端を中継プレート232に連結するようにしてもよい。
【0031】
この変形例のショルダーハーネスは比較的重い作業機に好適に適用可能である。この変形例を比較的重い作業機に適用する場合には、背プレート204は、比較的剛性を備えた構造であるのがよい。また、左右のショルダバンド212Le、212Riを背プレート204からジョイントバックル214まで連続して延びる合成繊維の幅広のバンドで構成してもよい。この形式のショルダーハーネスはWO2008/147256A1公報に詳しく説明されていることから、この公報を本明細書に援用する。
【0032】
実施例のショルダーハーネス200は、
図3を参照して説明したように、これに含まれる左側の左側ショルダーベルト216Leの肩部の芯材を構成する背プレート204の左側延長部206Leが右側に向かって湾曲し、その先端がジョイントバックル214に差し向けられ、これにより左側のショルダーベルト216Leに対してジョイントバックル214に向かう形態が与えられている。より好ましくは、作業者の左肩部分に位置する左側延長部206Leに関し、その先端を中継プレート106又は係止具260に差し向けることができるように、左側延長部206Leの前側部分を湾曲又は斜行した形状に設計するのがよい。
【0033】
右側に位置決めされる作業機の荷重は、右側のショルダーベルト216Reに比べて左側のショルダーベルト216Leの方により多く加わる。そして、作業機を大きく移動させたときには、この左側のショルダーベルト216Leに引っ張り力が作用する傾向になるのは否めない。この引っ張り力F(
図1)が作用する方向と一致するように左側のショルダーベルト216Leの肩部分の形状を予め形作っておくことにより、左側のショルダーベルト216Leに引っ張り力Fが作用しても、これが原因で左側ショルダーベルト216Leの肩部分の形状や位置が変化するのを低減することができる。これにより、仮に片寄った引っ張り力Fが左側ショルダーベルト216Leに作用しても左側ショルダーベルト216Leの肩部分のフィット感を維持することができる。また、仮に片寄った引っ張り力が左側ショルダーベルト216Leに作用しても、左側ショルダーベルト216Leの肩部分の捻れ等の変形が発生しないため左側ショルダーベルト216Leの耐久性の低下も抑えることができる。
【0034】
なお、背プレートとショルダーベルトとが別体構造であるショルダーハーネスにおいては、左側のショルダーベルトの左側の肩パッドに対して、作業者の肩部の前側に相当する部位に
図1に図示する湾曲又は斜行した形状を与える設計を行えばよい。
【0035】
以上、ショルダーハーネス200の背部材の例として合成樹脂成型品の背プレート204を説明したが、背プレート204の本体204aつまり作業者の背中に位置する背部材を幅広の複数のバンドで構成してもよいのは勿論である。
【0036】
変形例(図5):
図5は変形例のショルダーハーネス250を示し、前記
図1を参照して説明した要素と同じ要素に同一の参照符号を付すことによりその説明を省略し、以下に
図5に図示の変形例の特徴部分を説明する。
【0037】
図5に図示の変形例のショルダーハーネス250のハーネスネットワーク252は、
図1に図示のショルダーハーネス100と同様に左右非対象の左右のショルダーベルト104Le、104Riを有している。変形例のショルダーハーネス250にあっては、左右のショルダーベルト104Le、104Riが中継プレート120に直接的に連結されている。この変形例のショルダーハーネス250は、背部材に連結した腰ベルト254を有しているのが好ましく、背部材に連結した腰ベルト254を中継プレート120に連結するのがよい。また、腰ベルト254は、好ましくは、伸縮性を備えた素材で構成するのがよい。
【0038】
この変形例のショルダーハーネス250にあっても、左右非対象のショルダーベルト104Le、104Riを採用し、作業機(ヒップパッド106)とは反対側の左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leが右側に向けて斜行又は湾曲して延びていることから、作業機からの引っ張り力Fが左側ショルダーベルト104Leに作用したとしても、この左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leの変形又は位置ずれを抑制することができ、肩部への負担を軽減することができる。