特許第5944212号(P5944212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944212
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】携帯作業機用ショルダーハーネス
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/00 20060101AFI20160621BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   A01G23/00 501H
   A01D34/68 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-95771(P2012-95771)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-220093(P2013-220093A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年1月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100085707
【弁理士】
【氏名又は名称】神津 堯子
(72)【発明者】
【氏名】加茂 慶太
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真義
(72)【発明者】
【氏名】多田 修
(72)【発明者】
【氏名】千葉 光胤
【審査官】 柴田 和雄
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭43−024362(JP,Y1)
【文献】 特開昭59−014718(JP,A)
【文献】 特開2010−252687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/68
A01G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の背中に位置決めされる背部材と、作業者の左右の肩部に夫々位置する左右のショルダーベルトとを少なくとも含むハーネスネットワークに連結された係止具を有し、該係止具に作業機が取り付けられるショルダーハーネスにおいて、
前記左右のショルダーベルトが非対称の形状を有し、
作業機とは反対側のショルダーベルトの肩部の前側部分が、該ショルダーベルトに加わる引っ張り力の方向に向かって湾曲又は傾斜した形状に形作られており、
作業機と同じ側のショルダーベルトの肩部の前側部分が真っ直ぐな形状に形作られており、
前記左右のショルダーベルトの前端が作業者の前方且つ中央部分で合流しており、
前記係止具が中継部材に吊り下げられ、該中継部材を介して前記係止具が前記左右のショルダーベルトの合流部分に連結されていることを特徴とする携帯作業機用ショルダーハーネス。
【請求項2】
前記左右のショルダーベルトの合流部分に抜き差し可能なジョイントバックルを有する、請求項に記載の携帯作業機用ショルダーハーネス。
【請求項3】
前記左右のショルダーベルトの合流部分に、前記中継部材が連結されている、請求項1又は2に記載の携帯作業機用ショルダーハーネス。
【請求項4】
前記中継部材が、前記背部材に連結されている、請求項3に記載の携帯作業機用ショルダーハーネス。
【請求項5】
作業者の背中に位置決めされる背部材と、作業者の左右の肩部に夫々位置する左右のショルダーベルトとを少なくとも含むハーネスネットワークに連結された係止具を有し、該係止具に作業機が取り付けられるショルダーハーネスにおいて、
前記左右のショルダーベルトが非対称の形状を有し、
作業機とは反対側のショルダーベルトの肩部の前側部分が、該ショルダーベルトに加わる引っ張り力の方向に向かって湾曲又は傾斜した形状に形作られており、
作業機と同じ側のショルダーベルトの肩部の前側部分が真っ直ぐな形状に形作られており、
前記左右のショルダーベルトの前端が中継部材に連結され、
該中継部材に前記係止具が吊り下げられていることを特徴とする携帯作業機用ショルダーハーネス。
【請求項6】
前記中継部材が、前記背部材に連結されている、請求項に記載の携帯作業機用ショルダーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り払い機、剪枝機などの携帯作業機を支持するためのショルダーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯作業機は作業者が携帯して作業することから、作業中、作業者の両腕に負担がかかる。これを軽減するためにショルダーハーネスが使われている。ショルダーハーネスは、作業者の背中に位置決めされる背部材と、この背部材に連結した左右のショルダーベルトとを少なくとも含むハーネスネットワークで作業者の上半身を包囲する構造を有している。
【0003】
図6は、特許文献1に開示のショルダーハーネスの概要を示す。図6に示す従来の第1のショルダーハーネス1は、背部材2に連結された脇ベルト11を含み、この脇ベルト11の前端が作業者の前方で左右のショルダーベルトSBと合流することでハーネスネットワーク4が構成されている。そして、このハーネスネットワーク4に、ヒップパッド5を備えたフックなどの係止具8が連結されている。この係止具8に作業機(図示せず)が着脱可能に取り付けられる。具体的には、ヒップパッド5の上部に横方向に延びるトンネル部5aが形成され、このトンネル部5aに挿通された一本の連続した懸垂紐6の一端が背部材2に連結され、他端が脇ベルト11に連結されている。ヒップパッド5は、また、第2の懸垂部材である懸垂ベルト7によって背部材2に連結されている。図中、参照符号SBはショルダーベルトを示す。
【0004】
図7は、特許文献2に開示のショルダーハーネスの概要を示す。図7に示す従来の第2のショルダーハーネス10のハーネスネットワーク13は、背部材2の上端部に連結されて斜めに延びる第1の斜行ベルト11Aを含んでいる。この第1の斜行ベルト11Aは、背部材2の上端部から作業者の左脇を斜め下方に進みながら作業者の前方まで延びて腰ベルト12と合流している。したがって、この第1の斜行ベルト11Aは実質的に脇ベルトを構成している。腰ベルト12は背部材2を横断して作業者の右側に延長した延長部12aを有し、この延長部12aの先端が、背部材2の上端部から斜めに延びる第2の斜行ベルト11Bに連結されている。ヒップパッド5を備えた係止具8は、前後の2本の懸垂ベルト14、15を介してハーネスネットワーク13に連結されている。具体的には、前側懸垂ベルト14が第1斜行ベルト11Aと腰ベルト12の合流部分に連結され、他方、後側懸垂ベルト15が腰ベルト12の延長部12aとショルダーベルトSBとの合流部分に連結されている。
【0005】
図8は、特許文献3、4に開示のショルダーハーネスの概要を示す。図8に示す従来の第3のショルダーハーネス20は、背部材2に連結された腰ベルト3および脇ベルト11を含んでハーネスネットワーク21が構成されている。ヒップパッド5を備えた係止具8は、前後の2本の懸垂ベルト14、15を介してハーネスネットワーク21に連結されている。具体的には、前側懸垂ベルト14が脇ベルト11の前端に連結され、後側懸垂ベルト15が背部材2に連結されている。図中、参照符号16は、抜き挿し可能なジョイントバックルを示し、このジョイントバックル16は作業者の胸部に位置決めされる。
【0006】
図9は、特許文献5に開示のショルダーハーネスの概要を示す。図9に示す従来の第4のショルダーハーネス30は、背部材2に連結された左右の2本の脇ベルト31、32を含んでハーネスネットワーク33が構成されている。係止具8を含むヒップパッド5は、前後の2本の懸垂ベルト14、15を介してハーネスネットワーク33に連結されている。具体的には、前側懸垂ベルト14が左側脇ベルト31の前端に連結され、後側懸垂ベルト15が背部材2に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2008/076010号A1公報
【特許文献2】USP5,913,464号公報
【特許文献3】US6,247,624B1号公報
【特許文献4】WO2008/147256A1号公報
【特許文献5】特開2005−143453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のショルダーハーネスに含まれる左右のショルダーベルトSBは、共に同じ形状を有し、作業者の左右の肩部の前方を上下に真っ直ぐに延びる形状に形作られている。図10を参照して具体的に説明すると、この図10は、代表例として特許文献4に開示のショルダーハーネスの構成図を模式的に図示するものである。すなわち、この図10は、ここに添付の図8に図示のショルダーハーネスを装着した作業者Pを前方から見た正面図である。
【0009】
ショルダーベルトSBは、一般的に、作業者Pの肩部に当接する肩部18とバンド19とで構成され、肩部18は芯材とパッドとで構成され、この肩部18の形状は芯材によって既定される。図10から分かるように、従来のショルダーベルトSBは、その肩部18が左右対称に形作られており、作業者Pの肩部から真っ直ぐに延びる形状が採用されている。
【0010】
引き続き図10を参照して、左右のショルダーベルトSBの前端を互いに連結するジョイントバックル16に対して前側懸垂ベルト14によって係止具8(ヒップパッド5)が連結され、この係止具8は、また、背部材2に対して後側懸垂ベルト15によって連結する構成が採用されている。前後の懸垂ベルト14、15は比較的長尺の且つ幅広のバンドで構成されている。したがって、作業者Pは、係止具8に取り付けた作業機を自由に移動させることができるが、作業機を係止具8に取り付けたときには、作業機の重量によって前側懸垂ベルト14又は後側懸垂ベルト15に引っ張り力が発生する。引っ張り力は、主に、ジョイントバックル16を介して、作業機(係止具8)とは反対側の左側のショルダーベルトSB(Le)に右斜め下に向かう力F(係止具8に向かう力)として伝わる。前側懸垂ベルト14に加わる引っ張り力Fは、作業者が作業機を移動させるのに伴って変化する。
【0011】
作業機を吊り下げた側とは反対側の左側のショルダーベルトSB(Le)に引っ張り力Fが作用すると、作業員の首に接近する肩部18の移動を伴った変形を伴いながら、この肩部18が右側に引き寄せられる傾向になる。すなわち、左側ショルダーベルトSB(Le)の肩部18は、その芯材が作業者Pの首に接近する移動を伴いながら撓んだ形状に変形しながら正規位置から変位した位置ずれを生じる。そして、左側ショルダーベルトSB(Le)の肩部18の変形や位置ずれは、作業中の前側懸垂ベルト14に加わる引っ張り力Fの変化に伴って変化する。この現象は、作業者Pにとって不快であるだけでなく、作業者Pの左肩の負担が大きくなり、作業者の疲れを蓄積させる要因となる。
【0012】
本発明の目的は、左右のショルダーベルトを備えたショルダーハーネスを前提として、作業機とは反対側のショルダーベルトの変形や位置ずれを抑制して作業者の肩の負担を軽減できる作業機用ショルダーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の技術的課題は、本発明の一つの観点によれば、
作業者の背中に位置決めされる背部材と、作業者の左右の肩部に夫々位置する左右のショルダーベルトとを少なくとも含むハーネスネットワークに連結された係止具を有し、該係止具に作業機が取り付けられるショルダーハーネスにおいて、
前記左右のショルダーベルトが非対称の形状を有し、
作業機とは反対側のショルダーベルトの肩部の前側部分が、該ショルダーベルトに加わる引っ張り力の方向に向かって湾曲又は傾斜した形状に形作られており、
作業機と同じ側のショルダーベルトの肩部の前側部分が真っ直ぐな形状に形作られており、
前記左右のショルダーベルトの前端が作業者の前方且つ中央部分で合流しており、
前記係止具が中継部材に吊り下げられ、該中継部材を介して前記係止具が前記左右のショルダーベルトの合流部分に連結されていることを特徴とする携帯作業機用ショルダーハーネスを提供することにより達成される。
上記の技術的課題は、また、本発明の他の観点によれば、
作業者の背中に位置決めされる背部材と、作業者の左右の肩部に夫々位置する左右のショルダーベルトとを少なくとも含むハーネスネットワークに連結された係止具を有し、該係止具に作業機が取り付けられるショルダーハーネスにおいて、
前記左右のショルダーベルトが非対称の形状を有し、
作業機とは反対側のショルダーベルトの肩部の前側部分が、該ショルダーベルトに加わる引っ張り力の方向に向かって湾曲又は傾斜した形状に形作られており、
作業機と同じ側のショルダーベルトの肩部の前側部分が真っ直ぐな形状に形作られており、
前記左右のショルダーベルトの前端が中継部材に連結され、
該中継部材に前記係止具が吊り下げられている、請求項1に記載の携帯作業機用ショルダーハーネスを提供することにより達成される。
【0014】
本発明のショルダーハーネスによれば、作業機とは反対側のショルダーベルトの肩部の前側部分が、該ショルダーベルトに加わる引っ張り力の方向に向かって湾曲又は傾斜した形状に形作られているため、作業機を移動させることに伴って作業機とは反対側のショルダーベルトに引っ張り力が作用しても、これを原因とする当該ショルダーベルトの肩部の移動や変形を抑制できるため、ショルダーベルトのフィット感を維持することができる。そして、これにより作業者の肩の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の基本構成図である。
図2】実施例のショルダーハーネスに含まれるハーネスネットワークを正面から見た図である。
図3】実施例のショルダーハーネスに含まれる背プレートに一体成形されたショルダ部を示す図である。
図4】実施例のショルダーハーネスに含まれる中継プレート及びこれに吊り下げられたヒップパッドを示す斜視図である。
図5】変形例のショルダーハーネスの構成図を示す。
図6】従来のショルダーハーネスの構成図である。
図7】他の形式の従来のショルダーハーネスの構成図である。
図8】別の形式の従来のショルダーハーネスの構成図である。
図9】更に他の従来のショルダーハーネスの構成図である。
図10】従来のショルダーハーネスに含まれる左右のショルダーベルトに由来する問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
本発明の実施形態及び具体例を図1図5の図面に基づいて説明する。なお、この説明において「左」、「右」という用語は、ショルダーハーネスを作業者が装着したときに作業者の左側に位置する場合を「左」と呼び、作業者の右側に位置する場合を「右」と呼ぶ。また、「前」、「後」という用語は、ショルダーハーネスを作業者が装着したときに作業者の前側に位置する場合を「前」と呼び、作業者の後側に位置する場合を「後」と呼ぶ。
【0017】
先ず図1を参照して、本発明に従うショルダーハーネス100は、そのハーネスネットワーク102を構成する要素として左右のショルダーベルト104を有する。前述した図10と対比して図1を見ると分かるように、作業機(ヒップパッド106を備えた係止具108)と同じ側に位置する右側ショルダーベルト104Riは従来と同様に直線状に延びる肩部110Riを有し、この肩部110Riから幅広のバンド112Riがジョイントバックル108に連結されている。これに対して、作業機(ヒップパッド106)とは反対側の左側ショルダーベルト104Leは、その肩部110Leが右側に向けて斜行又は湾曲して延びている。すなわち、左右のショルダーベルト104Le、104Riは非対象である。
【0018】
任意であるが、ショルダーハーネス100は作業機とは反対側に位置する脇ベルト114を有していてもよい。同様に任意であるが、ショルダーハーネス100は、背部材に連結された腰ベルト116を有していてもよい。更に好ましくは、吊り下げベルト118を介して係止具108を支持する中継部材としての中継プレート120を有し、この中継プレート120を保持部材122を介してハーネスネットワーク102に連結するのがよい。
【0019】
本発明の従うショルダーハーネス100に含まれる左右のショルダーベルト104は図6乃至図9を参照して説明した従来のショルダーハーネスに含まれる左右のショルダーベルトに適用可能である。
【0020】
本発明の従うショルダーハーネス100は、作業機(ヒップパッド106)とは反対側の左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leが右側に向けて斜行又は湾曲して延びていることから、作業機からの引っ張り力Fが左側ショルダーベルト104Leに作用したとしても、この左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leの変形又は位置ずれを抑制することができ、肩部への負担を軽減することができる。
【0021】
実施例(図2図4
図2は、実施例のショルダーハーネス200を示す。実施例のショルダーハーネス200のハーネスネットワーク202は、作業者の背中に対面して位置する背部材として合成樹脂成型品の背プレート204を有し、この背プレート204の本体204aの上端の両側部には、前方に延びる左右一対の細長い形状の延長部206Ri、206Leが一体的に形成されている。背プレートこの一対の延長部206Ri、206Leは、夫々、作業者の左右の肩部に位置決めされる。図中、参照符号208は通気用の開口を示し、この通気用開口208は、背プレート本体204a、左右の延長部206Le、206Riの全域に数多く設けられている。この左右の延長部206Le、206Riを備えた背プレート204は、例えばPE、PP、ナイロンのような合成樹脂を一体成形することで作られている。左右の延長部206Le、206Riは、左右のショルダーベルト216Le、216Riの肩部の芯材を構成し、この左右の延長部206Le、206Riには、夫々、細長い形状に形作られたショルダクッション210が固定される。
【0022】
左右の延長部206Le、206Riの先端部には、夫々、引張り強さに優れたポリエステル繊維からなる従来から周知の幅広のバンド212が連結され、そして、この左右のショルダバンド212Le、212Riの先端は合流している。この合成樹脂製の延長部206Le、206Ri及びその各々に連結された左右のバンド212Le、212Riは、夫々、左右のショルダーベルト216Le、216Riを構成し、好ましい態様として、その先端にジョイントバックル214Le、214Riを設けるのがよい。このジョイントバックル214Le、214Riは従来から周知の抜き差し可能な、互いに対をなすジョイントバックルで構成されている。
【0023】
図3は、背プレート204に含まれる左右の延長部206Le、206Riを抽出した平面図である。図3から分かるように、背プレート204の本体204aの上端から連続して延びる左右の延長部206Le、206Riが左右非対象となっている。図3から良く分かるように、左側の延長部206Leは先端に向かうに従って右側に湾曲する形状に形作られている。これに対して右側延長部206Riは従来と同様に真っ直ぐに延びている。
【0024】
図2に戻って、上述した左右のショルダバンド212Le、212Riには、夫々、長さ調整バックル218が設けられている。この長さ調整バックル218によって左右のショルダーベルト216Le、216Riは、夫々、独立してその長さ寸法を調整することができる。
【0025】
実施例のショルダーハーネス200は、作業者の左の体側に沿って横方向に延びる幅広の脇ベルト220を好ましくは有し、この脇ベルト220は、幅広のポリエステル繊維バンド222とその内側に縫い込つけたクッション材224とで構成されている。脇ベルト220は、その後端が背プレート204の下端部に連結され、前端が左側ジョイントバックル214Leに対して長さ調整可能に連結されている。
【0026】
図2に図示の仮想線230は、ハーネスネットワーク202と、図4に図示の中継プレート232とを連結する保持部材を示す。保持部材230は前側保持ベルト230Frと後側保持ベルト230Reとで構成され、これらは、ポリエステル繊維からなる従来から周知の幅広のバンドで構成されている。前側保持ベルト230Frは右側ジョイントバックル214Riと、中継部材としての中継プレート232(図4)とに連結されている。他方、後側保持ベルト230Reは中継プレート232と背プレート204とに連結されている。
【0027】
図2の参照符号236は、右側ジョイントバックル214Riに形成されたスリットを示し、このスリット236に前側保持ベルト230Frが連結される。また参照符号238は、背プレート204に形成されたスリットを示し、このスリット238に後側保持ベルト230Reが連結される。好ましくは、前後の保持ベルト230Fr、230Reの各々に長さ調整バックル(図示せず)を設けるのがよい。
【0028】
図4を参照して、この図4の上側に描いてある中継プレート232には、その上部に幅方向に離間して位置する2つの前後のスリット240、242が形成されている。前側スリット240には上記前側保持ベルト230Frが連結され、他方、後側スリット242には上記後側保持ベルト230Reが連結される。
【0029】
図4に図示の参照符号250はヒップパッドを示す。このヒップパッド250の上端部と、その上方に位置する中継プレート232の幅方向中間部分とが吊り下げ部材である1本の幅広のベルト252によって連結されている。変形例として、中継プレート232の幅方向に離間してこの中継プレート232に連結した複数の吊り下げベルトでヒップパッド250と中継プレート232とを連結するようにしてもよい。吊り下げベルト252はポリエステル繊維からなる従来から周知の幅広のバンドで構成され、好ましくは長さ調整バックル又はジョイントバックル254を備えているのがよい。図4に示す参照符号260は従来から既知のフックであり、このフック260が作業機(図示せず)を係止する係止部材を構成している。
【0030】
図2図4に図示の実施例のショルダーハーネス200は比較的軽量な作業機に好適に適用される。比較的重い作業機に適用するには、背プレート204を下方に延長し、その下端部に、長さ調整可能な腰ベルトを連結してもよい。腰ベルトを、従来と同様に、左右に2分割したポリエステル繊維からなる幅広のバンドで構成し、この左右のバンドの前端つまり作業者の腹部中央に相当する位置にジョイントバックルを設ければよい。そして、この腰ベルトの右側バンドと中継プレート232とを連結するのが好ましい。腰ベルトの右側バンドを中継プレート232に連結する方法として、中継プレート232に、例えばその幅方向に延びるトンネルを設け、このトンネルに右側バンドを挿通させてもよいし、腰ベルトの右側バンドを中継プレート232に固定してもよい。腰ベルトを中継プレート232に固定する方法として、一本の右側バンドの長手方向中間部分に中継プレート232を固定してもよいし、右側バンドを二本の分割バンドで構成し、相対的に後方に位置する後側分割バンドの前端を中継プレート232に連結し、前側分割バンドの後端を中継プレート232に連結するようにしてもよい。
【0031】
この変形例のショルダーハーネスは比較的重い作業機に好適に適用可能である。この変形例を比較的重い作業機に適用する場合には、背プレート204は、比較的剛性を備えた構造であるのがよい。また、左右のショルダバンド212Le、212Riを背プレート204からジョイントバックル214まで連続して延びる合成繊維の幅広のバンドで構成してもよい。この形式のショルダーハーネスはWO2008/147256A1公報に詳しく説明されていることから、この公報を本明細書に援用する。
【0032】
実施例のショルダーハーネス200は、図3を参照して説明したように、これに含まれる左側の左側ショルダーベルト216Leの肩部の芯材を構成する背プレート204の左側延長部206Leが右側に向かって湾曲し、その先端がジョイントバックル214に差し向けられ、これにより左側のショルダーベルト216Leに対してジョイントバックル214に向かう形態が与えられている。より好ましくは、作業者の左肩部分に位置する左側延長部206Leに関し、その先端を中継プレート106又は係止具260に差し向けることができるように、左側延長部206Leの前側部分を湾曲又は斜行した形状に設計するのがよい。
【0033】
右側に位置決めされる作業機の荷重は、右側のショルダーベルト216Reに比べて左側のショルダーベルト216Leの方により多く加わる。そして、作業機を大きく移動させたときには、この左側のショルダーベルト216Leに引っ張り力が作用する傾向になるのは否めない。この引っ張り力F(図1)が作用する方向と一致するように左側のショルダーベルト216Leの肩部分の形状を予め形作っておくことにより、左側のショルダーベルト216Leに引っ張り力Fが作用しても、これが原因で左側ショルダーベルト216Leの肩部分の形状や位置が変化するのを低減することができる。これにより、仮に片寄った引っ張り力Fが左側ショルダーベルト216Leに作用しても左側ショルダーベルト216Leの肩部分のフィット感を維持することができる。また、仮に片寄った引っ張り力が左側ショルダーベルト216Leに作用しても、左側ショルダーベルト216Leの肩部分の捻れ等の変形が発生しないため左側ショルダーベルト216Leの耐久性の低下も抑えることができる。
【0034】
なお、背プレートとショルダーベルトとが別体構造であるショルダーハーネスにおいては、左側のショルダーベルトの左側の肩パッドに対して、作業者の肩部の前側に相当する部位に図1に図示する湾曲又は斜行した形状を与える設計を行えばよい。
【0035】
以上、ショルダーハーネス200の背部材の例として合成樹脂成型品の背プレート204を説明したが、背プレート204の本体204aつまり作業者の背中に位置する背部材を幅広の複数のバンドで構成してもよいのは勿論である。
【0036】
変形例(図5
図5は変形例のショルダーハーネス250を示し、前記図1を参照して説明した要素と同じ要素に同一の参照符号を付すことによりその説明を省略し、以下に図5に図示の変形例の特徴部分を説明する。
【0037】
図5に図示の変形例のショルダーハーネス250のハーネスネットワーク252は、図1に図示のショルダーハーネス100と同様に左右非対象の左右のショルダーベルト104Le、104Riを有している。変形例のショルダーハーネス250にあっては、左右のショルダーベルト104Le、104Riが中継プレート120に直接的に連結されている。この変形例のショルダーハーネス250は、背部材に連結した腰ベルト254を有しているのが好ましく、背部材に連結した腰ベルト254を中継プレート120に連結するのがよい。また、腰ベルト254は、好ましくは、伸縮性を備えた素材で構成するのがよい。
【0038】
この変形例のショルダーハーネス250にあっても、左右非対象のショルダーベルト104Le、104Riを採用し、作業機(ヒップパッド106)とは反対側の左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leが右側に向けて斜行又は湾曲して延びていることから、作業機からの引っ張り力Fが左側ショルダーベルト104Leに作用したとしても、この左側ショルダーベルト104Leの肩部110Leの変形又は位置ずれを抑制することができ、肩部への負担を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、刈り払い機、ポールプルーナー(長いメインパイプの先にチェーンソータイプの鋸刃作業部が取り付けられている携帯作業機)、シャフトヘッジトリマ(長いメインパイプの先に往復動刃作業部が取り付けられている携帯作業機)など、作業者が腰部付近に吊り下げて作業可能な携帯作業機の全てに好適に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
100 ショルダーハーネス
102 ハーネスネットワーク
104 ショルダーベルト
106 ヒップパッド
108 係止具(作業機を取り付ける部材)
110 ショルダーベルトの肩部
110Le 左側ショルダーベルトの肩部
110Ri 右側ショルダーベルトの肩部
112 ショルダーベルトのバンド
114 脇ベルト
116 腰ベルト
120 中継部材(中継プレート)
204 背部材(背プレート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10