(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
操作装置によって入力される目標回転数のアナログ値をデジタル変換することによって単位時間のステップ毎に作成される前記目標回転数の指令値に基づいて、燃料供給量を制御するエンジン回転数制御装置であって、
前記指令値を補正するノイズ除去処理部を備えており、第1入力値は前記ノイズ除去処理部に入力される前記指令値であり、第1出力値は前記ノイズ除去処理部から出力される前記指令値であり、
前記ノイズ除去処理部は、直近の前記ステップ群において、連続する増加ステップの数が第1所定数以上の場合または連続する減少ステップの数が前記第1所定数以上の場合に今回の前記第1出力値を今回の前記第1入力値と同一に設定し、連続する前記増加ステップの数が前記第1所定数以上ではなく且つ連続する前記減少ステップの数が前記第1所定数以上でもない場合に今回の前記第1出力値を前回の前記第1出力値と同一に設定するように構成されており、
前記増加ステップは、今回の前記第1入力値が前回の前記第1出力値よりも第1設定幅以上大きい前記ステップであり、
前記減少ステップは、今回の前記第1入力値が前回の前記第1出力値よりも第1設定幅以上小さい前記ステップであり、
前記ノイズ除去処理部によって補正された後に前記第1出力値である前記指令値を補正する移動平均部を備えており、第2入力値は前記移動平均部に入力される前記指令値であって前記第1出力値と同一であり、第2出力値は前記移動平均部から出力される前記指令値であり、前記移動平均部は、直近の第2所定回数の前記第2入力値に基づいて移動平均値を算出し、今回の前記第2出力値を前記移動平均値と同一に設定するように構成されている、エンジン回転数制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】目標回転数に関連するエンジンの構成を示すブロック図である。
【
図2】参考形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】ノイズ除去処理及び移動平均処理の実行フローを示すフロー図である。
【
図5】増速時にAD変換装置から制御装置に入力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図6】増速時に参考形態の制御装置の移動平均部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図7】増速時に制御装置のノイズ除去処理部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図8】増速時に制御装置の移動平均部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図9】瞬間的なノイズの発生時にAD変換装置から制御装置に入力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図10】瞬間的なノイズの発生時に参考形態の制御装置の移動平均部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図11】増速時に制御装置のノイズ除去処理部6から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図12】短周期のノイズの発生時にAD変換装置から制御装置に入力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図13】短周期のノイズの発生時に参考形態の制御装置の移動平均部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図14】短周期のノイズの発生時に制御装置のノイズ除去処理部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図15】不感帯処理の実行フローを示すフロー図である。
【
図16】長周期且つ低振幅のノイズの発生時にAD変換装置から制御装置に入力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図17】長周期且つ低振幅のノイズの発生時に参考形態の制御装置の移動平均部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図18】長周期且つ低振幅のノイズの発生時に制御装置のノイズ除去処理部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図19】長周期且つ低振幅のノイズの発生時に制御装置の不感帯処理部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【
図20】長時間継続する低振幅の指令値の発生時に制御装置の不感帯処理部から出力される指令値の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本実施形態の構成)
図1は、目標回転数に関連するエンジン1の構成を示すブロック図である。エンジン1は、操作レバー(操作装置)2、AD変換装置3、エンジン回転数制御装置4、及びスロットル弁5を備えている。操作レバー2は、エンジン1の目標回転数を設定するための入力装置であり、操作者によって操作される。AD変換装置3は、操作レバー2によって入力される目標回転数のアナログ値をデジタル変換する。これにより、目標回転数の指令値が、単位時間のステップ毎に作成される。制御装置4は、作成された指令値に基づいて、スロットル弁5の目標開度を作成する。スロットル弁5の開度に応じて、吸気量及び燃料供給量が変更され、エンジン1の出力が変化する。本実施形態では、エンジン1は、インジェクター方式を採用しており、吸気量に応じて燃料供給量が自動的に変更される。ここで、制御装置4は、スロットル弁5の制御を介して、燃料供給量を制御している。
【0014】
以下では、本実施形態に係る制御装置4(図
3)による指令値の補正を、参考形態に係る制御装置104(図
2)による指令値の補正と比較しながら説明する。
【0015】
図2は、参考形態に係る制御装置104の構成を示すブロック図である。制御装置104は、移動平均部7及びスロットル開度算出部9を備えている。移動平均部7は、目標回転数の指令値を補正する。補正の内容は後述する。スロットル開度算出部9は、補正された指令値に基づいて、スロットル弁5の目標開度を作成する。
【0016】
図3は、本実施形態に係る制御装置4の構成を示すブロック図である。制御装置4は、ノイズ除去処理部6、移動平均部7、不感帯処理部8、及びスロットル開度算出部9を備えている。ノイズ除去処理部6、移動平均部7、及び不感帯処理部8は、目標回転数の指令値を補正する。指令値は、まずノイズ除去処理部6で補正され、次に移動平均部7で補正され、最後に不感帯処理部8で補正される。補正の内容は後述する。スロットル開度算出部9は、補正された指令値に基づいて、スロットル弁5の目標開度を作成する。
【0017】
図4−14を参照して、ノイズ除去処理部6及び移動平均部7による補正を説明する。この説明において、
図5−14の指令値の時間変化を示す図を用いながら、
図4のフロー図を随時参照する。
【0018】
図5−14、16−20はいずれも指令値の時間変化の図である。これらの図において、横軸は時間(ステップ)を示しており、縦軸は指令値の大きさを示している。ここで、指令値の大きさは、以下で登場するビット数に対応する指数表記ではなく、通常の表記で示されている。また、一点鎖線は指令値の真値を示している。指令値の真値は、操作者が操作レバー2の操作において意図している指令値を指している。
【0019】
図4は、ノイズ除去処理及び移動平均処理の実行フローを示すフロー図である。ノイズ除去処理部6が工程P1−P3を担当し、移動平均部7が工程P4を担当する。工程P1−P4の内容は、詳しくは後述する。
【0020】
図5は、増速時にAD変換装置3から制御装置4に入力される指令値の時間変化を示す図である。ステップ毎に、指令値が制御装置4に入力されている。第1入力値A(i)は、ステップS(i)において制御装置4(ノイズ除去処理部6)に入力された指令値A(i)を指している。変化幅d(i)は、今回の第1入力値A(i)から前回の第1入力値A(i−1)を引くことによって得られる値を指している。ここで、符号iは自然数であり、符号iの増大は時間の経過を示している。ステップS(1)−S(4)の間、第1入力値A(i)は同一値である。また、ステップS(8)以後も、第1入力値A(i)は同一値である。一方、ステップS(4)−S(8)の間、第1入力値A(i)は増大しており、変化幅d(i)は3ビット以上の大きさを有している。
【0021】
図6は、増速時に参考形態の制御装置104の移動平均部7から出力される指令値の時間変化を示す図である。移動平均部7は、直近の3回の第1入力値A(i−2)、A(i−1)、A(i)に基づいて移動平均値を算出し、今回の第1参考出力値C0(i)をその移動平均値と同一に設定する。第1参考出力値C0(i)は、移動平均部7から出力される指令値を指している。第1入力値A(i)がステップS(4)−S(8)の間増大しており、これに対応して第1参考出力値C0(i)がステップS(4)−S(10)の間増大している。
【0022】
図7は、増速時に制御装置4のノイズ除去処理部6から出力される指令値の時間変化を示す図である。ノイズ除去処理部6による補正を概略的に説明すると、次の通りである。ノイズ除去処理部6は、第1入力値A(i)が継続的に増大している場合、又は第1入力値A(i)が継続的に減少している場合に、今回の第1入力値A(i)を補正することなくそのまま今回の第1出力値B(i)として出力する。つまり、今回の第1入力値A(i)に応じて、指令値が更新される。一方、それ以外の場合に、ノイズ除去処理部6は、今回の第1入力値A(i)を無視し、今回の第1出力値B(i)を前回の第1出力値B(i−1)と同一に設定する。つまり、今回の第1入力値A(i)に関係なく、指令値が維持される。この場合、今回の第1入力値A(i)がノイズとして除去されている。
【0023】
上述の補正は、具体的には次のように行われる。
【0024】
まず、第1入力値A(i)の増大は、増加ステップの存在に基づいて判定される。増加ステップは、今回の第1入力値A(i)が前回の第1出力値B(i−1)よりも第1設定幅n以上大きいステップである。
図7に示される第1差W1(i)は、今回の第1入力値A(i)から前回の第1出力値B(i−1)を引くことによって得られる差である。このため、第1差W1(i)が
ゼロよりも第1設定幅n以上大きいならば、今回のステップS(i)は増加ステップである。加えて、連続する増加ステップの数が第1所定数N以上
の場合に、第1入力値A(i)が継続的に増大していると判断される。また、減少ステップは、今回の第1入力値A(i)が前回の第1出力値B(i−1)よりも第1設定幅n以上小さいステップである。第1差W1(i)が
ゼロよりも第1設定幅n以上小さいならば、今回のステップS(i)は減少ステップである。連続する減少ステップの数が第1所定数N以上
の場合に、第1入力値A(i)が継続的に減少していると判断される。本実施形態では、第1所定数Nは3であり、第1設定幅nは3ビットである。
【0025】
図4の工程P1に示される条件は、直近のステップ群において、連続する増加ステップの数が第1所定数N以上
または連続する減少ステップの数が第1所定数N以上
の場合に、満たされる。工程P1の条件が満たされる場合、工程P2が実行され、工程P1の条件が満たされない場合、工程P3が実行される。工程P2において、ノイズ除去処理部6は、今回の第1出力値B(i)を、今回の第1入力値A(i)と同一に設定する。つまり、指令値が新たに更新される。工程P3において、ノイズ除去処理部6は、今回の第1出力値B(i)を、前回の第1出力値B(i−1)と同一に設定する。つまり、指令値が維持される。
【0026】
図7を参照して、ノイズ除去処理部6による補正を、ステップS(4)−S(9)について説明する。ノイズ除去処理部6は、第1差W1(i)に基づいて、今回のステップS(i)が増加ステップ、減少ステップ、又は中立ステップであることを検出する。上述したように、第1差W1(i)が
ゼロよりも第1設定幅n以上大きいならば、今回のステップS(i)は増加ステップである。第1差W1(i)が
ゼロよりも第1設定幅n以上小さいならば、今回のステップS(i)は減少ステップである。それ以外の場合、今回のステップS(i)は中立ステップである。また、ノイズ除去処理部6は、増加ステップの連続及び減少ステップの連続を特定するために、過去のステップで得られた第1差W1(i)を記憶している。
【0027】
まず、ステップS(4)における処理を説明する。今回の第1差W1(4)を検討すると、今回の第1入力値A(4)が前回の第1出力値B(3)に等しいので、今回の第1差W1(4)は、ゼロである。このため、今回のステップS(4)は中立ステップである。連続する増加ステップの数は0であり、連続する増加ステップの数も0であり、どちらも3(第1所定数N)より小さい。このため、ノイズ除去処理部6は、今回の第1入力値A(4)を無視し、今回の第1出力値B(4)を前回の第1出力値B(3)と同一に設定する。
【0028】
次に、ステップS(5)における処理を説明する。今回の第1差W1(5)を検討すると、今回の第1入力値A(5)は前回の第1出力値B(4)よりも3ビット以上大きい。このため、今回のステップS(5)は増加ステップである。ただし、前回のステップS(4)は中立ステップである。連続する増加ステップの数は1であり、3(第1所定数N)より小さい。このため、ノイズ除去処理部6は、今回の第1入力値A(5)を無視し、今回の第1出力値B(5)を前回の第1出力値B(4)と同一に設定する。
【0029】
ステップS(6)における処理を説明する。今回の第1差W1(6)を検討すると、今回の第1入力値A(6)は前回の第1出力値B(5)よりも3ビット以上大きい。このため、今回のステップS(6)は増加ステップである。ステップS(5)、S(6)が増加ステップであるので、連続する増加ステップの数は2である。しかし、連続する増加ステップの数は、3(第1所定数N)より小さい。このため、ノイズ除去処理部6は、今回の第1入力値A(6)を無視し、今回の第1出力値B(6)を前回の第1出力値B(5)と同一に設定する。
【0030】
ステップS(7)における処理を説明する。今回の第1差W1(7)を検討すると、今回の第1入力値A(7)は前回の第1出力値B(6)よりも3ビット以上大きい。このため、今回のステップS(7)は増加ステップである。ステップS(5)、S(6)、S(7)が増加ステップであるので、連続する増加ステップの数は3である。連続する増加ステップの数は、3(第1所定数N)に等しい。このため、ノイズ除去処理部6は、今回の第1入力値A(7)を無視せず、今回の第1出力値B(7)を今回の第1入力値A(7)と同一に設定する。つまり、指令値が更新される。
【0031】
ステップS(8)における処理を説明する。今回の第1差W1(8)を検討すると、今回の第1入力値A(8)は前回の第1出力値B(7)よりも3ビット以上大きい。このため、今回のステップS(8)は増加ステップである。ステップS(5)−S(8)が増加ステップであるので、連続する増加ステップの数は4である。連続する増加ステップの数は、3(第1所定数N)より大きい。このため、ノイズ除去処理部6は、今回の第1入力値A(8)を無視せず、今回の第1出力値B(8)を今回の第1入力値A(8)と同一に設定する。
【0032】
ステップS(9)における処理を説明する。今回の第1差W1(9)を検討すると、今回の第1入力値A(9)は前回の第1出力値B(8)に等しいので、今回の第1差W1(9)は、ゼロである。今回のステップS(9)は中立ステップである。このため、ノイズ除去処理部6は、今回の第1入力値A(9)を無視し、今回の第1出力値B(9)を前回の第1出力値B(8)と同一に設定する。
【0033】
ステップS(3)以前に第1入力値が変化していない場合、ステップS(3)以前の各ステップでは、ステップS(4)における処理と同様に、今回の第1出力値B(i)が前回の第1出力値B(i−1)と同一に設定される。同じく、ステップS(10)以後に第1入力値が変化していない場合、ステップS(10)以後の各ステップでは、ステップS(9)における処理と同様に、今回の第1出力値B(i)が前回の第1出力値B(i−1)と同一に設定される。
【0034】
連続する増加ステップが発生する代わりに、連続する減少ステップが発生する場合も、上述と同様の補正が実行される。
【0035】
工程P2又は工程P3の処理が終了すると、工程P4が実行される。
【0036】
図8は、増速時に制御装置4の移動平均部7から出力される指令値の時間変化を示す図である。制御装置4の移動平均部7は、直近のM回の第2入力値に基づいて移動平均値を算出し、今回の第2出力値C(i)をその移動平均値と同一に設定するように構成されている。本実施形態では、Mは3である。これが、工程P4で行われる処理である。なお、第2入力値は、ステップS(i)において移動平均部7に入力された指令値を指している。本実施形態に係る制御装置4では、第1出力値B(i)がノイズ除去処理部6から移動平均部7に入力されるので、第2入力値は第1出力値B(i)に等しい。また、第2出力値C(i)は、移動平均部7から出力される指令値を指している。
【0037】
本実施形態では、移動平均部7は、直近の3回の第1出力値B(i−2)、B(i−1)、B(i)に基づいて移動平均値を算出し、今回の第2出力値C(i)をその移動平均値と同一に設定する。
図7において第1出力値B(i)がステップS(6)−S(8)の間増大しており、これに対応して、
図8に示されるように第2出力値C(i)がステップS(6)−S(10)の間増大している。
【0038】
図9は、瞬間的なノイズの発生時にAD変換装置3から制御装置4に入力される指令値の時間変化を示す図である。
図9において、ステップS(2)−S(5)の間に、ひげ状の瞬間的なノイズが発生している。
【0039】
図10は、瞬間的なノイズの発生時に参考形態の制御装置104の移動平均部7から出力される指令値の時間変化を示す図である。瞬間的なノイズの発生に対応して、第1参考出力値C0(i)がステップS(2)−S(8)の間、増加している。瞬間的なノイズが鈍らされているが、除去されていない。
【0040】
図11は、増速時に制御装置4のノイズ除去処理部6から出力される指令値の時間変化を示す図である。
図9において、ステップS(3)は増加ステップであり、ステップS(4)、S(5)は減少ステップである。連続する増加ステップの数は1であり、連続する減少ステップの数は2であり、どちらの数も3(第1所定数N)よりも小さい。このため、ノイズ除去処理部6は、
図9の状況が継続する間、今回の第1入力値A(i)を無視し、今回の第1出力値B(i)を前回の第1出力値B(i−1)と同一に設定する。この結果、瞬間的なノイズが完全に除去される。
【0041】
図12は、短周期のノイズの発生時にAD変換装置3から制御装置4に入力される指令値の時間変化を示す図である。
図12において、短周期のノイズが連続的に発生している。
【0042】
図13は、短周期のノイズの発生時に参考形態の制御装置104の移動平均部7から出力される指令値の時間変化を示す図である。短周期のノイズの発生に対応して、第1参考出力値C0(i)が変動している。短周期のノイズが鈍らされているが、除去されていない。
【0043】
図14は、短周期のノイズの発生時に制御装置4のノイズ除去処理部6から出力される指令値の時間変化を示す図である。
図12において、連続する増加ステップの数は常に3(第1所定数N)より小さく、連続する減少ステップの数も常に3(第1所定数N)より小さい。このため、ノイズ除去処理部6は、
図12の状況が継続する間、今回の第1入力値A(i)を無視し、今回の第1出力値B(i)を前回の第1出力値B(i−1)と同一に設定する。この結果、短周期のノイズが完全に除去される。
【0044】
工程P4が終了すると、ノイズ除去処理及び移動平均処理の実行フローが終了する。
【0045】
図15−20を参照して、不感帯処理部8による補正を説明する。この説明において、
図16−20の指令値の時間変化を示す図を用いながら、
図15のフロー図を随時参照する。
【0046】
図15は、不感帯処理の実行フローを示すフロー図である。
図15の実行フローは、
図4の実行フローの次に実行される。不感帯処理部8が工程P5−P8を担当している。工程P5−P8の内容は、詳しくは後述する。
【0047】
図16は、長周期且つ低振幅のノイズの発生時にAD変換装置3から制御装置4に入力される指令値の時間変化を示す図である。
図16において、長周期且つ低振幅のノイズが定期的に発生している。
【0048】
図17は、長周期且つ低振幅のノイズの発生時に参考形態の制御装置104の移動平均部7から出力される指令値の時間変化を示す図である。長周期且つ低振幅のノイズの発生に対応して、第1参考出力値C0(i)が変動している。ノイズが長周期且つ低振幅であるので、ノイズがあまり鈍らされていない。つまり、第1参考出力値C0(i)の位相が、第1入力値A(i)の位相に対して遅れているが、第1参考出力値C0(i)の最大振幅は第1入力値A(i)の最大振幅に対してあまり減少していない。
【0049】
図18は、長周期且つ低振幅のノイズの発生時に制御装置4のノイズ除去処理部6から出力される指令値の時間変化を示す図である。
図18において、連続する増加ステップの数は3(第1所定数N)以上
であり、連続する減少ステップの数も3(第1所定数N)以上
である。このため、ノイズ除去処理部6は、これらの第1入力値A(i)を無視しない。この結果、第1出力値B(i)の位相が第1入力値A(i)の位相に対して遅れるように、第1出力値B(i)が作成される。つまり、長周期且つ低振幅のノイズが残留する。
【0050】
なお、ノイズ除去処理部6から出力される指令値は、更に移動平均部7で処理を受けるが、移動平均部7から出力される指令値も、位相の遅れを除いて、ノイズ除去処理部6から出力される指令値から大きく変化しない。ノイズが長周期且つ低振幅である場合、上述したように、移動平均処理は指令値の最大振幅をあまり減少させない。
【0051】
図19は、長周期且つ低振幅のノイズの発生時に制御装置4の不感帯処理部8から出力される指令値の時間変化を示す図である。
図19において、破線は第2出力値C(i)を示しており、実線は第3出力値D(i)を示している。不感帯処理部8は、第3入力値に基づいて、第3出力値D(i)を作成する。第3入力値は不感帯処理部8に入力される指令値である。第3入力値は、ノイズ除去処理部6から出力される第2出力値C(i)に等しい。
【0052】
不感帯処理部8による補正を概略的に説明すると、次の通りである。不感帯処理部8は、第3入力値が比較的大きく変動する場合、今回の第3入力値を補正することなくそのまま今回の第3出力値D(i)として出力する。つまり、今回の第3入力値に応じて、指令値が更新される。一方、不感帯処理部8は、第3入力値があまり変動していない場合、今回の第3入力値を無視し、今回の第3出力値D(i)を前回の第3出力値D(i−1)と同一に設定する。つまり、今回の第3入力値に関係なく、指令値が維持される。この場合、今回の第3入力値がノイズとして除去されている。
【0053】
上述の補正は、具体的には次のように行われる。
【0054】
まず、第3入力値の変動の程度は、小変動ステップの存在に基づいて判定される。小変動ステップは、今回の第3入力値(第2出力値C(i))と前回の第3出力値D(i−1)との差の絶対値が第2設定幅mより小さいステップである。今回のステップが小変動ステップである場合、第3入力値があまり変動していないと判断される。不感帯処理部8は、第2差W2(i)に基づいて、今回のステップS(i)が小変動ステップであるか否かを検出する。第2差W2(i)は、今回の第3入力値から前回の第3出力値D(i−1)を引くことによって得られる差である。
【0055】
第2設定幅mの大きさは、ノイズ除去処理部6による補正において除去されなかったノイズを除去できるように、設定されている。ここで、指令値は、移動平均部7の移動平均処理によって鈍らされるので、第2差W2(i)
の絶対値は一般に第1差W1(i)
の絶対値よりも小さくなる。このため、第1差W1(i)
の絶対値が第1設定幅n以上
でも、第2差W2(i)
の絶対値が第1設定幅nよりも小さくなる可能性がある。そこで、本実施形態では、第2設定幅mは第1設定幅nと同一値に設定されており、第2設定幅mは3ビットである。このため、不感帯処理部8は、ノイズ除去処理部6によって除去されなかったノイズを除去できる。ただし、第2設定幅mは、第1設定幅nと同一でなくても良い。上述したように、移動平均の影響により、第2差W2(i)が第1差W1(i)に対して変動する。このため、例えば、移動平均の数に応じて、第2設定幅mを第1設定幅nよりも小さく又は大きく設定しても良い。
【0056】
このため、次のようなノイズが、不感帯処理部8によって除去される長周期且つ低振幅のノイズである。長周期は、増加ステップ又は減少ステップが第1所定数N以上
であることを指している。低振幅は、第1差W1(i)
の絶対値が第1設定幅n以上
であり且つ第2差W2(i)
の絶対値が第2設定幅mよりも小さいことを指している。
【0057】
図15を参照すると、工程P5に示される条件は、今回のステップS(i)が小変動ステップである場合に、満たされる。工程P5の条件が満たされる場合、工程P6の判定を経由して、原則として工程P8が実行される。工程P8において、不感帯処理部8は、今回の第3出力値D(i)を、前回の第3出力値D(i−1)と同一に設定する。つまり、今回の第3入力値に関係なく、指令値が維持される。この場合、今回の第3入力値がノイズとして除去されている。一方、工程P5の条件が満たされない場合、工程P7が実行される。工程P7において、不感帯処理部8は、今回の第3出力値D(i)を今回の第3入力値と同一に設定する。つまり、今回の第3入力値に応じて、指令値が更新される。
【0058】
工程P6の判定は、第3入力値が長時間継続する場合に第3入力値をノイズとして除去することなく有意の信号として扱うために、設けられている。工程P6において、不感帯処理部8は、有信号ステップの継続時間が所定時間T以上
の場合に、今回の第3出力値D(i)を今回の前記第3入力値と同一に設定する。有信号ステップは、今回の第3入力値と前回の第3出力値D(i−1)との差の絶対値が0より大きい小変動ステップを指している。工程P6の条件が満たされる場合に、工程P7が実行される。つまり例外的に、今回の第3入力値がノイズとして除去されない。一方、工程P6の条件が満たされない場合、上述の工程P8が実行される。
【0059】
図20は、長時間継続する低振幅の指令値の発生時に制御装置4の不感帯処理部8から出力される指令値の時間変化を示す図である。
図20において、長時間継続する低振幅の指令値が発生している。
図20において、破線は第3入力値(第2出力値C(i))を示しており、実線は第3出力値D(i)を示している。時刻t0において、有信号ステップの継続時間が所定時間Tに到達している。時刻t0以後、継続時間が所定時間T以上の大きさになるので、工程P6の条件が満たされる。
【0060】
工程P7又は工程P8が終了すると、不感帯処理の実行フローが終了する。不感帯処理の実行フローが終了すると、再びノイズ除去処理及び移動平均処理の実行フローが開始される。
【0061】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係るエンジン回転数制御装置4は、上述の構成により次の効果を有している。
【0062】
(1)本実施形態に係るエンジン回転数制御装置4は、指令値を補正するノイズ除去処理部6を備えている。ノイズ除去処理部6は、直近のステップ群において、連続する増加ステップの数が第1所定数Nよりも小さく且つ連続する減少ステップの数が前記第1所定数Nよりも小さい場合、今回の第1出力値B(i)を前回の第1出力値B(i−1)と同一に設定するように構成されている。
【0063】
上述の構成によれば、第1入力値A(i)が継続的に増大しておらず且つ第1入力値A(i)が継続的に減少していない場合に、第1入力値A(i)がノイズとして扱われ、前回の第1出力値B(i−1)が指令値として維持される。このため、本実施形態に係るエンジン回転数制御装置4は、操作者が意図しない目標回転数の指令値の微小な変動を除去できる。したがって、制御装置4は、ハンチングの発生も防止できる。
【0064】
(2)本実施形態に係るエンジン回転数制御装置4は、移動平均部7及び不感帯処理部8を備えている。移動平均部7は、直近の第2所定数M回の第2入力値(第1出力値B(i))に基づいて移動平均値を算出し、今回の第2出力値C(i)を移動平均値と同一に設定するように構成されている。不感帯処理部8は、今回のステップが小変動ステップである場合、今回の第3出力値C(i)を前回の第3出力値C(i−1)と同一に設定するように構成されている。
【0065】
このため、本実施形態に係るエンジン回転数制御装置4は、長周期且つ低振幅のノイズによる指令値の微小な変動を除去できる。
【0066】
(3)本実施形態に係るエンジン回転数制御装置4において、不感帯処理部8は、直近のステップ群において、有信号ステップの継続時間が所定時間T以上
の場合に、今回の第3出力値C(i)を今回の第3入力値(第2出力値B(i))と同一に設定する。
【0067】
このため、本実施形態に係るエンジン回転数制御装置4は、指令値の微小な変動が長時間継続する場合に、その指令値をノイズとして除去することなく有意の信号としてエンジン回転数に反映できる。