(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944230
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 43/02 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
B65D43/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-124259(P2012-124259)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249085(P2013-249085A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】川西 正人
【審査官】
神山 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−024942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D43/02、41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部を取り囲む外周壁を有するとともに該外周壁の内側に該口部の上部開口を覆う天壁を備え、該口部に着脱自在に装着されるキャップにおいて、
前記外周壁の上端部に、前記天壁の縁部に連結する下向きの段差壁を設け、
前記段差壁に、該段差壁の表裏を半径方向に貫いて前記口部と前記外周壁との相互間につながる開口を設けることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記段差壁は、前記開口の内側に、その一部を前記段差壁に一体連結させた弾性片を備える請求項1に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に着脱自在に装着されるキャップに関するものであり、特に、内容物を充填した容器にキャップを装着するに当たって、口部の外面に内容物が付着したままでキャップを装着することによる不具合を解決することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品調味料や飲料等の内容物を容器に充填する充填工程では、内容物を充填する時や充填後の容器をコンベヤ等で搬送する時に、容器の口部の外面に内容物が付着することがあり、この状態のままでキャップを装着すると、付着した内容物が口部とキャップとの間で固化してキャップが開けにくくなることがある。また、口部の外面はキャップの外周壁で覆われているとはいえ、それらの相互間の隙間には外気が入り込むことから、時間が経過すると、付着したままの内容物が腐敗するおそれもある。
【0003】
このような不具合を解決する技術として、例えば特許文献1には、周壁部に小孔を穿設したキャップが示されていて、この小孔に水や湯を流し込むことによって口部の外面を洗浄することができる瓶口洗浄方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−37254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示されたキャップは、小孔を設ける部位がキャップの周壁部であって外側から容易に視認できるため、見栄えが損なわれるという問題がある。一方、目立ちにくいように小孔の開口面積を小さくすると、水や湯を流し込みにくくなって、十分に洗浄することができないという不具合が生じることとなる。このため、これら相反する2つの課題をともに解決できる新規のキャップが強く求められていた。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、キャップを装着したままで容器の口部の外面を洗浄することができ、しかも、このような機能を持たせてもなお、見栄えが損なわれることがないキャップを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の口部を取り囲む外周壁を有するとともに該外周壁の内側に該口部の上部開口を覆う天壁を備え、該口部に着脱自在に装着されるキャップにおいて、
前記外周壁の上端部に、前記天壁の縁部に連結する下向きの段差壁を設け、
前記段差壁に、該段差壁の表裏を
半径方向に貫いて前記口部と前記外周壁との相互間につながる開口を設けることを特徴とするキャップである。
【0008】
前記段差壁は、前記開口の内側に、その一部を前記段差壁に一体連結させた弾性片を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
容器に装着されるキャップとして、容器の口部を取り囲む外周壁の上端部に、下向きの段差壁を設けて天壁の縁部に連結するとともに、この段差壁の表裏を貫いて口部と外周壁との相互間につながる開口を設けたので、この開口は、側方から見る場合には外周壁にて隠れることになり、また、上方から見る場合には視線と略平行となって目立ちにくくなるため、キャップの見栄えが損なわれることがない。また、この開口を通して水等を流し込むことができるので、口部の外面に付着した内容物を洗い流すことができる。
【0010】
段差壁に設けた開口の内側に、その一部を段差壁に一体連結させた弾性片を設ける場合は、開口をより目立ちにくくすることができるので、良好な外観を呈することができる。また、弾性片によって開口の大部分が覆われるので、口部と外周壁との間に埃等が入り込み難くなり、口部の外面の洗浄を行う際には、流し込む水等によって弾性片が変位して開口面積が確保されるので、付着した内容物を十分に洗い流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従うキャップの実施の形態を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すキャップの側面図及び断面図を、中心線を境として半分ずつ示した図である。
【
図3】
図2に示すキャップの要部を示す部分拡大断面図である。
【
図4】
図1に示すキャップのB−Bに沿う断面図である。
【
図5】
図3に示すキャップについて弾性片の変形例を示す図であり、(a)は、弾性片の下部を段差壁に一体連結させた図であり、(b)及び(c)は弾性片の側部を一体連結させた図である。
【
図6】本発明に従うキャップの他の実施の形態を示す、(a)は、天壁の裏面に中栓を設けたキャップの断面図であり、(b)は、天壁の裏面にパッキンを設けたキャップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従うキャップの実施の形態を示す平面図であって、
図2は、
図1に示すキャップの側面図及び断面図を、中心線を境として半分ずつ示した図であって、
図3は、
図2に示すキャップの要部を示す部分拡大断面図であって、
図4は、
図1に示すキャップのB−Bに沿う断面図であって、
図5は、
図3に示すキャップについて弾性片の変形例を示す図であり、(a)は、弾性片の下部を段差壁に一体連結させた図であり、(b)及び(c)は弾性片の側部を一体連結させた図である。
【0013】
図1及び
図2における符号10は、キャップである。キャップ10は、
図2に示すように、容器20の口部21に装着されるものであって、筒状となる口部21を取り囲む外周壁11と、外周壁11の内側に位置して口部21の上部開口22を覆う天壁12とを備えている。これにより、口部21と外周壁11との相互間には、下向き開放の環状空間Kが形成される。また、外周壁11の内周面には、口部21の外周面に設けたねじ部23に適合するねじ部13を設けていて、キャップ10は、口部21に着脱自在に保持される。
【0014】
本実施の形態のキャップは、容器内の圧力低下に起因する容器の変形を防止する減圧吸収機能を備えるものであり、
図2に示すように天壁12は、中央部に凹部12aを有するとともに凹部12aを除いた部分は外向きに突出してドーム状となる隔壁部12bと、隔壁部12bの縁部から立ち上がる筒状部12cと、筒状部12cの上部端縁から水平方向に延在するフランジ部12dとからなり、隔壁部12bは、筒状部12cとの連結部を起点として容器の内側へ変位可能となっていて、また、外向きに突出する隔壁部12b自身は、容器の内側へ向けて凹むように弾性変形可能となっている。
【0015】
図3及び
図4に示すように、外周壁11は、その上端部と一体連結し、下方へ向けて延在する下向きの段差壁14を備えている。本実施の形態において段差壁14は、
図3に示すように周方向に部分的に設けられた切り欠き部15を除いた部位が、
図4に示すように外周壁11の上端部に加えて内周面とも一体連結するものである。そして、段差壁14は、天壁12の縁部となるフランジ部12dの外縁部と段差壁14の下端部とを一体連結させて、天壁12と外周壁11とをつないでいる。
【0016】
また、
図3に示すように段差壁14は、切り欠き部15を設けた部位に、その表裏を貫く開口16を少なくとも1個(ここでは、
図1に示すように均等配置で8個)備えている。これにより、
図3に示すように天壁12の外側の空間と、口部21と外周壁11との相互間に形成される環状空間Kとが、開口16によってつながることになる。開口16は、段差壁14を貫通していればよく、矩形状、正方形状、円形状等の種々のものが採用でき、その形状は問わない。また、開口16は、本実施の形態のキャップを成形する金型に予め開口16の形状に対応する凸部を設けておくことによって、射出成形時に形成することができる。
【0017】
また、本実施の形態では、開口16の内側に、その一部(
図3の例では上部)を段差壁14に一体連結させた弾性片17を設けている。弾性片17と段差壁14との連結は、種々選択することが可能であり、例えば、
図3のように開口16を上向きコ字状のスリットとすることで、段差壁14との連結部を弾性片17の上側とすることや、
図5(a)のように、開口16を下向きコ字状のスリットとすることで、その連結部を弾性片17の下側すること、或いは、
図5(b)、(c)のように、開口16を左右の横向きコ字状のスリットとすることで、その連結部を弾性片17の左側又は右側とすること等、種々変更が可能である。なお、このようなスリット状の開口16及び弾性片17は、上述したように金型に設ける凸部を利用して形成することもできるが、射出成形後にカッター等で段差壁14を破断して形成することもできる。また、本実施の形態において弾性片17は、その全体の厚みを薄くして撓みやすくした平板状のものであるが、例えば段差壁14との連結部のみを他の部位よりも薄くして、この連結部を起点に揺動するようにしてもよい。
【0018】
上記のように構成されるキャップ10は、段差壁14に開口16を設けているので、側方から見る場合には外周壁11にて隠れることとなり、また、上方から見る場合には、開口16が視線と略平行となって目立ちにくくなるため、見栄えが損なわれることがない。
【0019】
また、内容物の充填工程にて口部21の外面に内容物が付着し、その状態のままキャップ10を装着しても、天壁12の外側から洗浄水等をかけることで、開口16を通してこの洗浄水等と環状空間Kに流し込むことができるので、口部21の外面に付着した内容物を洗い流すことができる。
【0020】
弾性片17を設ける場合は、開口16の大部分が覆われてより目立ちにくくなるので、良好な外観を呈することができる。そして、口部21の外面の洗浄を行う際は、スリット状の開口16から直接洗浄水を流れ込ませることができるだけでなく、流れ込む洗浄水等の水圧によって弾性片17がキャップ10の径方向外側に変位し、開口面積が一時的に大きくなって洗浄水をより流れ込ませやすくすることができるので、付着した内容物を十分に洗い流すことができる。
【0021】
天壁12は、上述したように減圧吸収機能を備えるものに限られず、容器20を密閉する機能だけを持つ平板状となるものであってもよい。この場合、
図6(a)に示す実施の形態のように、弾性片17を設けていない位置の外周壁11の内周面に爪部18を周方向に間隔をおいて複数形成し、平板部31の縁部に設けた突起32に係合させるとともに平板部31の裏面に口部21の内周壁に当接する環状のシール部33を設けた中栓30を、この爪部18にて抜け止め保持することが好ましい。なお、爪部18は、周方向に部分的に形成する切り欠き部15を除いた部分に設けられていて、開口16及び弾性片17は、上述した減圧吸収機能を有するキャップと同様に、この切り欠き部15の形成位置に設けられている。
【0022】
また、中栓30に代えて、
図6(b)に示す実施の形態のように、平板状の弾性体(パッキン)40を設けて、これを中栓30と同様に、爪部18で抜け止め保持するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、容器に装着したままで、口部の外面の洗浄を行うことができる上、見栄えも損なわれることのないキャップを提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 キャップ
11 外周壁
12 天壁
14 段差壁
16 開口
17 弾性片
20 容器
21 口部
22 上部開口