特許第5944254号(P5944254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944254
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】放射線画像取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20160621BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20160621BHJP
   G01N 23/04 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G01T1/20 L
   G01T1/20 G
   G01T1/20 J
   G01T7/00 A
   G01N23/04
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-161919(P2012-161919)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-21015(P2014-21015A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】杉山 元胤
(72)【発明者】
【氏名】須山 敏康
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−312734(JP,A)
【文献】 特開2000−039407(JP,A)
【文献】 特開平11−211677(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/101879(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/101880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00− 7/12
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて放射線を出射する放射線源と、
前記対象物を保持する保持部と、
前記放射線源から出射され、対象物を透過した前記放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記放射線の入射面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第1の撮像手段と、
前記波長変換部材の前記入射面とは反対側の面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第2の撮像手段と、
前記放射線源と前記波長変換部材との間で前記保持部の位置を調整する保持部位置調整手段と、
前記第1の撮像手段の位置を調整する撮像位置調整手段と、を備え、
前記撮像位置調整手段は、前記第1の撮像手段の光軸と前記波長変換部材の前記入射面とが交わる点を回転中心として、前記第1の撮像手段を回転させることを特徴とする放射線画像取得装置。
【請求項2】
前記撮像位置調整手段は、前記第1の撮像手段の光軸と前記波長変換部材の前記入射面とがなす角度を保ちながら、前記第1の撮像手段と前記波長変換部材とを回転させることを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項3】
前記撮像位置調整手段は、前記第2の撮像手段の光軸と前記波長変換部材の前記反対側の面とがなす角度を保ちながら、前記第1の撮像手段と前記波長変換部材と前記第2の撮像手段とを回転させることを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項4】
前記第1の撮像手段の視野に前記対象物が入っているか否かを検出する検出手段を備えることを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記第1の撮像手段によって撮像された第1の画像および前記第2の撮像手段によって撮像された第2の画像に基づいて、前記第1の撮像手段の視野に前記対象物が入っているか否かを検出することを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記第1の画像と前記第2の画像との光強度差に基づいて、前記第1の撮像手段の視野に前記対象物が入っているか否かを検出することを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記第1の画像と前記第2の画像との差分画像に基づいて、前記第1の撮像手段の視野に前記対象物が入っているか否かを検出することを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記第1の画像と前記第2の画像との輝度の比に基づいて、前記第1の撮像手段の視野に前記対象物が入っているか否かを検出することを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記保持部位置調整手段によって前記保持部が動かされる間に前記第1の撮像手段によって連続して撮像された連続画像に基づいて、前記第1の撮像手段の視野に前記対象物が入っているか否かを検出することを特徴とする請求項記載の放射線画像取得装置。
【請求項10】
前記第1の撮像手段、前記波長変換部材、および前記第2の撮像手段の回転角度に基づいて、前記第1の撮像手段によって撮像された第1の画像および前記第2の撮像手段によって撮像された第2の画像の画像演算を行う画像演算手段を備えることを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の放射線画像取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載されるように、X線源から発せられて撮像対象物を透過したX線を平板状のシンチレータに照射し、シンチレータで発光した可視光(シンチレーション光)をシンチレータの両面に積層させた固体光検出器により検出し、各固体光検出器から出力された画像信号を重ね合わせて放射線画像を取得する装置が知られている。この装置では、シンチレータにおけるX線の入射面およびその裏面に光検出素子をカップリングさせており、入射面側の光検出素子と裏面側の光検出素子とのそれぞれにおいて可視光を検出することで、可視光の検出効率を高めている。
【0003】
また、下記特許文献2に記載されるように、互いに重ねられた2枚のシンチレータと1枚の検出器とを用い、入射面側のシンチレータから出射されるシンチレーション光を検出器の一方の面で検出し、反対側のシンチレータから出射されるシンチレーション光を検出器の他方の面で検出する装置が知られている。この装置では、検出器の各面において、2種類の異なる波長で画像を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−27866号公報
【特許文献2】特表2000−510729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、X線源は点光源であるため、対象物は少なくともX線の照射領域に配置される必要がある。たとえば、撮像対象となる対象物が大きく、その対象物の全体像を撮像したい場合には、よりシンチレータに近い位置に対象物を配置する必要がある。対象物をシンチレータに近づけることにより、シンチレータに対する投影拡大率を低くすることができ、対象物の全体像をシンチレータの範囲内に収めることができる。
【0006】
本発明者らは、シンチレータにおけるX線の入射面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第1の撮像手段と、入射面とは反対側の面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第2の撮像手段とを備えた放射線画像取得装置を鋭意研究している。このような放射線画像取得装置では、第1の撮像手段すなわち入射面側の撮像手段は、シンチレータを基準として対象物と同じ側に位置する。
【0007】
上記したように拡大率を調整するため、対象物をシンチレータに近づけた場合、入射面側の撮像手段の視野に対象物が入り込んでしまうことがある。入射面側の撮像手段の視野に対象物が入ると、たとえば、対象物による「けられ」が画像に生じてしまう。そこで、入射面側の撮像手段の視野に対象物が入ることを防止しつつ、所望の拡大率で画像を取得することができる放射線画像取得装置が望まれている。
【0008】
本発明は、入射面側の撮像手段の視野に対象物が入ることを防止しつつ、所望の拡大率で画像を取得することができる放射線画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線画像取得装置は、対象物に向けて放射線を出射する放射線源と、対象物を保持する保持部と、放射線源から出射され、対象物を透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる波長変換部材と、波長変換部材の放射線の入射面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第1の撮像手段と、波長変換部材の入射面とは反対側の面から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第2の撮像手段と、放射線源と波長変換部材との間で保持部の位置を調整する保持部位置調整手段と、第1の撮像手段の位置を調整する撮像位置調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この放射線画像取得装置によれば、第1の撮像手段および第2の撮像手段によって、波長変換部材の放射線の入射面とその反対側の面とから出射されるシンチレーション光がそれぞれ集光され、撮像される。第1の撮像手段は、入射面側の撮像手段であり、第2の撮像手段は、入射面とは反対側の撮像手段である。保持部位置調整手段によって、放射線源と波長変換部材との間で保持部の位置を調整することにより、対象物を波長変換部材に近づけたり、波長変換部材から遠ざけたりすることができる。対象物を波長変換部材に近づけることにより、拡大率を低くすることができる。対象物を波長変換部材から遠ざけ、放射線源に近づけることにより、拡大率を高くすることができる。ここで、対象物を波長変換部材に近づけた場合であっても、撮像位置調整手段によって、第1の撮像手段の位置を調整することにより、第1の撮像手段の視野に対象物が入るのを防止することができる。したがって、入射面側の撮像手段である第1の撮像手段の視野に対象物が入ることを防止しつつ、所望の拡大率で画像を取得することができる。
【0011】
撮像位置調整手段は、第1の撮像手段の光軸と波長変換部材の入射面とが交わる点を回転中心として、第1の撮像手段を回転させる。この構成によれば、第1の撮像手段の位置が調整されても、波長変換部材から第1の撮像手段までの光路長は変わらない。よって、画像に対する補正が容易になる。
【0012】
撮像位置調整手段は、第1の撮像手段の光軸と波長変換部材の入射面とがなす角度を保ちながら、第1の撮像手段と波長変換部材とを回転させる。この構成によれば、第1の撮像手段の位置が調整されても、第1の撮像手段の光軸と波長変換部材の入射面とがなす角度は一定に保たれるため、画像に対する補正がより一層容易になる。また、第1の撮像手段におけるキャリブレーションを頻繁に行う必要がなく、利便性が向上する。
【0013】
撮像位置調整手段は、第2の撮像手段の光軸と波長変換部材の反対側の面とがなす角度を保ちながら、第1の撮像手段と波長変換部材と第2の撮像手段とを回転させる。この構成によれば、第1の撮像手段、波長変換部材、および第2の撮像手段は、上記の点を回転中心として一体に移動する。よって、第1の撮像手段および第2の撮像手段の位置が調整されても、第1の撮像手段、波長変換部材、および第2の撮像手段の相対的な位置関係は変わらない。そのため、画像間演算を行いやすい画像を撮像することができる。また、第2の撮像手段におけるキャリブレーションを頻繁に行う必要がなく、利便性が向上する。
【0014】
上記放射線画像取得装置は、第1の撮像手段の視野に対象物が入っているか否かを検出する検出手段を備える。この構成によれば、検出手段によって、対象物が第1の撮像手段の視野に入っているか否かが検出されるため、画像における「けられ」の発生を確実に防止することができる。
【0015】
検出手段は、第1の撮像手段によって撮像された第1の画像および第2の撮像手段によって撮像された第2の画像に基づいて、第1の撮像手段の視野に対象物が入っているか否かを検出する。この構成によれば、対象物が第1の撮像手段の視野に入っているか否かを精度良く検出することができる。
【0016】
検出手段は、第1の画像と第2の画像との光強度差に基づいて、第1の撮像手段の視野に対象物が入っているか否かを検出する。この構成によれば、対象物が第1の撮像手段の視野に入っているか否かを精度良く検出することができる。
【0017】
検出手段は、第1の画像と第2の画像との差分画像に基づいて、第1の撮像手段の視野に対象物が入っているか否かを検出する。この構成によれば、対象物が第1の撮像手段の視野に入っているか否かを精度良く検出することができる。
【0018】
検出手段は、第1の画像と第2の画像との輝度の比に基づいて、第1の撮像手段の視野に対象物が入っているか否かを検出する。この構成によれば、対象物が第1の撮像手段の視野に入っているか否かを精度良く検出することができる。
【0019】
検出手段は、保持部位置調整手段によって保持部が動かされる間に第1の撮像手段によって連続して撮像された連続画像に基づいて、第1の撮像手段の視野に対象物が入っているか否かを検出する。この構成によれば、第1の撮像手段の視野から対象物が外れた時点、あるいは、第1の撮像手段の視野に対象物が入った時点を精度良く検出することができる。その結果として、放射線源に対する波長変換部材の傾斜角を最小限に抑えることができ、あおりの少ない画像を取得しやすい。
【0020】
上記放射線画像取得装置は、第1の撮像手段、波長変換部材、および第2の撮像手段の回転角度に基づいて、第1の撮像手段によって撮像された第1の画像および第2の撮像手段によって撮像された第2の画像の画像演算を行う画像演算手段を備える。この構成によれば、対象物のコンピュータ断層撮影(Computed Tomography;CT)画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、入射面側の撮像手段である第1の撮像手段の視野に対象物が入ることを防止しつつ、所望の拡大率で画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る放射線画像取得装置の斜視図である。
図2図1の放射線画像取得装置を別の角度から見た斜視図である。
図3図1の放射線画像取得装置の平面図である。
図4】対象物を波長変換部材に近づけた状態を示す平面図である。
図5】第1の撮像手段の位置を調整した状態を示す平面図である。
図6】(a)〜(c)は、第1の撮像手段による撮像画像の例である。
図7】第1の撮像手段および波長変換部材の回転角度を示す説明図である。
図8】回転アクチュエータの駆動による角度変更方法を示す図である。
図9】手動による角度変更方法を示す図である。
図10】第2実施形態に係る放射線画像取得装置の斜視図である。
図11図10の放射線画像取得装置を別の角度から見た斜視図である。
図12図10の放射線画像取得装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0024】
図1図3に示されるように、第1実施形態の放射線画像取得装置1は、対象物Aの放射線画像を取得するための装置である。放射線画像取得装置1は、対象物Aに向けて白色X線等の放射線を出射する放射線源2と、放射線源2から出射されて対象物Aを透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる波長変換板(波長変換部材)6と、波長変換板6の放射線の入射面6aから出射されるシンチレーション光を集光して撮像する表面観察用光検出器(第1の撮像手段)3と、入射面6aとは反対側の面である裏面6b(図3参照)から出射されるシンチレーション光を集光して撮像する裏面観察用光検出器(第2の撮像手段)4と、を備えている。
【0025】
放射線源2は、X線出射点2aからコーンビームX線を出射する。対象物Aは、半導体デバイス等の電子部品であり、たとえば半導体集積回路である。対象物Aは、半導体デバイスに限られず、食料品等であってもよい。放射線画像取得装置1は、たとえば工業製品の非破壊解析を目的として、対象物Aの放射線画像を取得する。
【0026】
波長変換板6は、平板状の波長変換部材であり、例えばGd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、Gd2SiO5:Ce、Lu0.4Gd1.6SiO5、Bi4Ge3O12、Lu2SiO5:Ce、Y2SiO5、YAlO3:Ce、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm等のシンチレータである。波長変換板6の厚さは数μm〜数mmの範囲で検出する放射線のエネルギー帯によって適切な値に設定されている。
【0027】
波長変換板6は、対象物Aを透過したX線を可視光に変換する。比較的低いエネルギーのX線は、波長変換板6の表の面である入射面6aで変換され、入射面6aから出射される。また、比較的高いエネルギーのX線は、波長変換板6の裏面6bで変換され、裏面6bから出射される。
【0028】
表面観察用光検出器3(以下、「表面(おもて面)検出器3」と称する)は、波長変換板6に投影された対象物Aの投影像(すなわち放射線透過像)を波長変換板6の入射面6a側から撮像する間接変換方式の撮像手段である。すなわち、表面検出器3は、入射面6a側の撮像手段である。表面検出器3は、波長変換板6の入射面6aから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部3aと、集光レンズ部3aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部3bと、を有する。表面検出器3は、レンズカップリング型の検出器である。集光レンズ部3aは、視野23のシンチレーション光を集光する。撮像部3bとしては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等のエリアセンサが用いられる。
【0029】
裏面観察用光検出器4(以下、「裏面(うら面)検出器4」と称する)は、波長変換板6に投影された対象物Aの投影像(すなわち放射線透過像)を波長変換板6の裏面6b側から撮像する間接変換方式の撮像手段である。すなわち、裏面検出器4は、裏面6b側の撮像手段である。裏面検出器4は、波長変換板6の裏面6bから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部4aと、集光レンズ部4aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部4bと、を有する。裏面検出器4は、レンズカップリング型の検出器であり、上記の表面検出器3と同様の構成を有している。集光レンズ部4aは、ミラー5を介して、視野24のシンチレーション光を集光する。撮像部4bとしては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等のエリアセンサが用いられる。
【0030】
ミラー5は、波長変換板6の裏面6bから出射された光を反射し、反射した光を裏面検出器4へ向ける。これにより、裏面検出器4の被曝を防ぐことができる。
【0031】
図3に示されるように、放射線画像取得装置1は、表面検出器3および裏面検出器4における撮像タイミングを制御するタイミング制御部27と、表面検出器3および裏面検出器4から出力された画像信号を入力し、入力した各画像信号に基づいて画像処理等の所定の処理を実行する画像処理装置28と、画像処理装置28から出力された画像信号を入力し、放射線画像を表示する表示装置29とを備えている。タイミング制御部27および画像処理装置28は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。表示装置29としては、公知のディスプレイが用いられる。なお、タイミング制御部27および画像処理装置28は、単一のコンピュータにより実行されるプログラムとして構成してもよいし、個別に設けられるユニットとして構成してもよい。
【0032】
画像処理装置28は、画像取得部28aと、検出部(検出手段)28bと、画像処理部(画像演算手段)28cとを有している。画像取得部28aは、表面検出器3および裏面検出器4から出力される画像信号を入力する。検出部28bは、画像取得部28aによって入力された画像信号に示される放射線画像に基づいて、対象物Aが表面検出器3の視野23に入っているか否かを検出する。画像処理部28cは、画像取得部28aによって入力された画像信号に基づいて差分演算や加算演算といった画像間演算などの所定の処理を実行する。画像処理部28cは、画像処理後の画像信号を表示装置29に出力する。
【0033】
図1図3に示されるように、上記した放射線源2、表面検出器3、裏面検出器4、および波長変換板6は、板状のベース10上に搭載されている。ベース10の一方の端部には、放射線源2が載置され、固定されている。放射線源2の光軸Xは、ベース10の延在方向に平行である。放射線源2の光軸X上には、対象物Aおよび波長変換板6が配置される。すなわち、対象物Aは、放射線源2のX線出射点2aと波長変換板6との間に配置される。対象物Aは、投影角度変更ステージ(保持部)11によって保持されている。
【0034】
投影角度変更ステージ11は、対象物Aを保持すると共に、対象物Aを回転させるためのものである。投影角度変更ステージ11によって対象物Aを回転させることにより、様々な投影角度の放射線画像を取得できる。投影角度変更ステージ11は、図示しない駆動機構を有しており、駆動機構によって、対象物Aを回転軸線L1周りに回転させる。回転軸線L1は、ベース10の延在方向に直交している。回転軸線L1は、放射線源2の光軸Xに交差しており、かつ、対象物Aの略中心を通っている。なお、回転軸線L1は、対象物Aの略中心を通る場合に限られず、対象物Aから外れた位置に位置してもよい。
【0035】
さらに、投影角度変更ステージ11は、拡大率変更ステージ(保持部位置調整手段)12によって支持されている。拡大率変更ステージ12は、放射線源2と波長変換板6との間で、放射線源2の光軸に沿って対象物Aを移動させるためのものである。拡大率変更ステージ12は、対象物Aを移動させ、放射線源2(X線の焦点)と対象物Aの距離FOD(Focus−Object Distance)を変更することにより、放射線源2(X線の焦点)と波長変換板6の距離FID(Focus−Image Distance)に対するFODの比率を調整する。これによって、放射線画像の拡大率を変更できる。拡大率変更ステージ12は、ベース10に取り付けられて、放射線源2の光軸Xに平行に延在している。拡大率変更ステージ12は、図示しない駆動機構を有しており、駆動機構によって、投影角度変更ステージ11を放射線源2と波長変換板6との間でスライド移動させる。投影角度変更ステージ11の移動方向は、放射線源2の光軸Xに平行である。
【0036】
ベース10の他方の端部には、ベース10に対して回転可能な回転体20が取り付けられている。この回転体20は、撮影角度変更ステージ(撮像位置調整手段)17によって支持されている。撮影角度変更ステージ17は、駆動機構17aを有しており、駆動機構17aによって、回転体20を回転軸線L2周りに回転させる。回転軸線L2は、回転軸線L1と平行である。回転軸線L2は、ベース10の延在方向に直交している。回転軸線L2は、放射線源2の光軸Xに交差しており、かつ、波長変換板6の入射面6a上を通っている。また、回転軸線L2は、表面検出器3の光軸3cに交差する。すなわち、撮影角度変更ステージ17は、表面検出器3の光軸3cと波長変換板6の入射面6aとが交わる点(すなわち、後述する点α)を回転中心として、回転体20を回転させる。
【0037】
回転体20は、撮影角度変更ステージ17によって支持されるX線防護ボックス14と、表面検出器3が載置される表面カメラ台座13と、X線防護ボックス14および表面カメラ台座13を連結する連動アーム16とを有している。
【0038】
X線防護ボックス14は、たとえば鉛などのX線遮蔽材料からなる箱体であり、裏面検出器4を収容する。X線防護ボックス14は、放射線源2から出射されたX線を遮蔽することにより、裏面検出器4の被曝を防ぐ。X線防護ボックス14の放射線源2に対向する面には、四角形の開口が形成されている。波長変換板6は、この開口に嵌め込まれて、X線防護ボックス14に固定されている。
【0039】
X線防護ボックス14の内部には、裏面検出器4およびミラー5が固定されている。ミラー5の反射面は、ベース10の延在方向に対して直交すると共に、波長変換板6の裏面6bに対して45度をなす。裏面検出器4の集光レンズ部4aは、ミラー5に対向している。裏面検出器4の光軸4cは、ベース10の延在方向に平行である。裏面検出器4の光軸4cは、波長変換板6の裏面6bに平行である。すなわち、光軸4cは、ミラー5の反射面に直交する。ミラー5は、波長変換板6の裏面6bから出射されたシンチレーション光を反射し、この光を裏面検出器4に向ける。なお、波長変換板6の裏面6bに対するミラー5および光軸4cの角度は、上記した角度に限られず、適宜設定することができる。裏面検出器4によって、波長変換板6の裏面6bから出射されたシンチレーション光を集光可能な構成であればよい。
【0040】
連動アーム16は、ベース10の他方の端部から一方の端部へ延びている。すなわち、連動アーム16は、X線防護ボックス14における波長変換板6の側方近傍から、放射線源2の側方まで延びている。この連動アーム16は、放射線源2の光軸Xに干渉しない位置に配置される。表面カメラ台座13上には、表面検出器3が固定されている。よって、表面検出器3は、放射線源2の側方に配置される。言い換えれば、表面検出器3は、対象物Aの位置を通り放射線源2の光軸Xに直交する仮想平面を基準として、放射線源2と同じ側に配置される。表面検出器3の集光レンズ部3aは、波長変換板6に対向している。表面検出器3の光軸3cは、ベース10の延在方向に平行であると共に、波長変換板6の入射面6aに直交する。なお、波長変換板6の入射面6aに対する光軸3cの角度は、上記した角度に限られず、適宜設定することができる。表面検出器3によって、波長変換板6の入射面6aから出射されたシンチレーション光を集光可能な構成であればよい。なお、撮像部3bの受光面は入射面6aと略平行であるほうが好ましい。
【0041】
以上の構成により、波長変換板6、表面検出器3、ミラー5、および裏面検出器4を含む回転体20は、回転軸線L2を中心にして、一体となって回転可能になっている。すなわち、撮影角度変更ステージ17は、表面検出器3の光軸3cと波長変換板6の入射面6aとがなす角度を90度に保ちながら、表面検出器3と波長変換板6とを回転させる。さらに、撮影角度変更ステージ17は、裏面検出器4の光軸4cと波長変換板6の裏面6bとがなす角度を90度に保ちながら、表面検出器3と波長変換板6と裏面検出器4とを回転させる。撮影角度変更ステージ17は、放射線源2の光軸Xに対して、表面検出器3の光軸3cおよび裏面検出器4の光軸4cのなす角度を変更する。撮影角度変更ステージ17による回転体20の回転に伴い、表面検出器3の視野23および裏面検出器4の視野24も回転する。
【0042】
このように、表面検出器3、裏面検出器4、および波長変換板6が一体となって回転するため、表面検出器3、波長変換板6、および裏面検出器4の相対的な位置関係は変わらない。そのため、表面検出器3および裏面検出器4によって取得される画像は、画像処理装置28において画像間演算を行いやすい画像となる。また、波長変換板6に対する表面検出器3および裏面検出器4の角度も一定であるため、表面検出器3および裏面検出器4におけるキャリブレーションを頻繁に行う必要がなく、利便性が高くなっている。
【0043】
ベース10上に固定された放射線源2の光軸Xは、波長変換板6の入射面6aの法線Bに対して角度θをなす。すなわち、放射線源2は、対象物Aおよび入射面6aに対峙すると共に、入射面6aの法線Bから外れた位置に配置されている。換言すれば、放射線源2の光軸Xは、入射面6aに対して鋭角をなす。角度θは、回転体20の回転に伴って変化する。
【0044】
ここで、放射線の光軸Xは、放射線源2のX線出射点2aと波長変換板6の入射面6a上の任意の点γとを結ぶ直線である。本実施形態では、任意の点γが入射面6aの中心点となるように設定されており、この場合、比較的ムラなく放射線が照射される。また、法線Bとは、入射面6a上の任意の点αから延びる入射面6aに対して垂直な直線である。本実施形態では、任意の点αが入射面6aの中心点となるように設定されており、放射線の光軸Xと法線Bとは、入射面6aの任意の点γ(すなわち任意の点α)で交わる。もちろん、任意の点γおよび任意の点αは入射面6aの中心点である必要はなく、同一の点である必要もない。
【0045】
表面検出器3の集光レンズ部3aの光軸3cは、入射面6aの法線Bに一致している。表面検出器3は、入射面6aの法線B方向に出射されたシンチレーション光を撮像可能であるため、あおりの少ない画像を取得しやすい。集光レンズ部3aは、入射面6a上に焦点を合わせ、入射面6aから法線B方向に出射されたシンチレーション光を撮像部3bに向けて集光する。なお、表面検出器3の光軸3cは、入射面6aの法線Bに一致していなくてもよい。
【0046】
このようにして、表面検出器3は、放射線源2の光軸X上から外して配置されている。すなわち、表面検出器3は、放射線源2からの放射線の出射領域(放射線束22が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源2からの放射線による表面検出器3の被曝が防止され、表面検出器3の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。また、表面検出器3は、集光レンズ部3aの中心から波長変換板6の入射面6aに降ろした垂線が入射面6aの範囲内であるように配置され、かつ、波長変換板6の入射面6a上方に配置されている。これにより、比較的多くのシンチレーション光を検出可能となる。
【0047】
裏面検出器4の集光レンズ部4aの光軸4cは、ミラー5を介して、裏面6bの法線Cに一致している。裏面検出器4は、裏面6bの法線C方向に出射されたシンチレーション光を撮像可能であるため、あおりの少ない画像を取得しやすい。ここで、法線Cとは、裏面6b上の任意の点βから延び、裏面6bに対して垂直な直線である。特に、本実施形態では、任意の点βが裏面6bの中心点に設定されており、入射面6a上の任意の点αと裏面6b上の任意の点βは同一直線上に位置し、この直線は法線Bと法線Cに一致する。集光レンズ部4aは、裏面6b上に焦点を合わせ、裏面6bから法線C方向に出射されたシンチレーション光を撮像部4bに向けて集光する。なお、裏面検出器4の光軸4cは、裏面6bの法線Cに一致していなくてもよい。
【0048】
放射線画像取得装置1では、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長と、波長変換板6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長とは、等しくなっている。なお、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長と、波長変換板6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長とは異なっていてもよい。この場合、画像処理等により画像の大きさなどを合わせる必要がある。
【0049】
上述したように、表面検出器3、裏面検出器4、および波長変換板6は一体となって回転するため、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長、および、ンチレータ6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長のそれぞれは、回転体20の回転によっても変わらず、一定である。よって、表面検出器3および裏面検出器4のそれぞれによって取得される画像に対する補正が容易になっている。
【0050】
続いて、上記の構成を有する放射線画像取得装置1の動作について説明する。まず、表面検出器3および裏面検出器4による撮像が同時に行われるよう、タイミング制御部27による制御が行われる。タイミング制御部27の撮像タイミング制御により、対象物Aの放射線透過像を異なるエネルギー帯で画像化することができる。詳述すると、表面検出器3によって比較的低いエネルギー帯の放射線透過像が画像化され、また、裏面検出器4によって比較的高いエネルギー帯の放射線透過像が画像化される。これにより、デュアルエナジー撮像が実現される。なお、放射線画像取得装置1では、表面検出器3と裏面検出器4との撮像タイミングをそれぞれ異なるように制御することが可能である。また、表面検出器3と裏面検出器4とのそれぞれにおける露光時間や撮影枚数が異なるように制御してもよい。
【0051】
表面検出器3および裏面検出器4の機能に関し、換言すると、表面検出器3によって、比較的入射面6a側で変換された蛍光(シンチレーション光)が検出される。入射面6a側で変換された蛍光の検出は、蛍光のボケが少なく、また、蛍光の輝度が高いといった特長を有する。これは、表面観察においては、波長変換板6の内部における拡散や自己吸収の影響を低減できるためである。一方、裏面検出器4では、波長変換板6の比較的裏面6b側で変換された蛍光が検出される。この場合も、波長変換板6の内部における拡散や自己吸収の影響を低減できる。
【0052】
次に、表面検出器3および裏面検出器4のそれぞれによって、表裏両面の放射線画像に対応する画像信号が画像処理装置28に出力される。表面検出器3および裏面検出器4のそれぞれから出力された画像信号が画像処理装置28の画像取得部28aに入力されると、画像処理装置28の画像処理部28cによって、入力した画像信号に基づいて差分演算や加算演算といった画像間演算などの所定の処理が実行され、画像処理後の画像信号が表示装置29に出力される。そして、画像処理装置28から出力された画像処理後の画像信号が表示装置29に入力されると、表示装置29によって、入力した画像処理後の画像信号に応じた放射線画像が表示される。特に、画像処理装置28では、投影角度変更ステージ11によって対象物Aを回転させることにより、対象物Aの3次元画像を作成することもできる。
【0053】
ここで、本実施形態の放射線画像取得装置1によれば、所望の拡大率で対象物Aの画像を取得することができ、さらには、表面検出器3の視野23に対象物Aが入ることを防止できる。以下、図3図6を参照して、放射線画像取得装置1による対象物Aの撮影をより詳しく説明する。
【0054】
図3に示されるように、通常の撮影状態においては、対象物Aは、放射線源2から出射されるコーンビーム状のX線の範囲内(すなわち放射線束22の範囲内)に配置される。このとき、表面検出器3の視野23が対象物Aを含まないように、表面検出器3が配置されている。この場合、図6(a)に示されるように、撮影画像Paには、波長変換板6の発光部分P1の中に、投影像P2aが写り込む。このように、対象物Aをある程度の拡大率で撮影する場合には、対象物Aによるケラレは生じない。
【0055】
一方、図4に示されるように、拡大率を変更したい場合や、試料が大きくコーンビーム内(すなわち放射線束22内)に対象物Aが納まらない場合、拡大率変更ステージ12を用いて、対象物Aを波長変換板6に近づく方向へ移動させる。このとき、表面検出器3の視野23に対象物Aが入ってしまうことがある。この場合、対象物Aが波長変換板6からの光を遮光してしまう。よって、図6(b)に示されるように、撮影画像Pbには、波長変換板6の発光部分P1の中に、投影像P2bだけではなく、対象物AによるケラレP3が写り込んでしまう。このように、拡大率を下げると表面検出器3の視野23に対象物Aが入ってしまい、ケラレが生じる。
【0056】
そこで、図5に示されるように、表面検出器3の光軸3cと波長変換板6の入射面6aとが交わる点α(すなわち回転軸線L2)を中心に、撮影角度変更ステージ17を用いて、X線防護ボックス14を回転させる。このとき、X線防護ボックス14の回転に伴い、連動アーム16により、表面検出器3および表面カメラ台座13も同じ回転中心で同じ角度だけ回転する。すなわち、回転体20が回転する。このとき、表面検出器3と波長変換板6との位置関係は保たれるので、キャリブレーション条件を変える必要はない。このように表面検出器3を回転移動させることで、図6(c)に示されるように、影画像Pcには、波長変換板6の発光部分P1の中に、対象物Aによるケラレの無い投影像P2cが写り込む。このように、表面検出器3のカメラ撮影角度を深くすることで、対象物Aによるケラレを無くすことができる。
【0057】
このように、撮影角度変更ステージ17によって、回転軸線L2を中心に表面検出器3を回転させることにより、表面検出器3の視野23に対象物Aが入ることを防止できる。図7に示す例では、角度θから更に角度Δθだけ表面検出器3を回転させることにより、対象物Aを表面検出器3の視野23から外している。
【0058】
放射線画像取得装置1では、画像処理装置28の検出部28bによって、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することができる。検出部28bは、以下に示す各種の処理を行うことにより、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出する。
【0059】
具体的には、検出部28bは、表面検出器3によって撮像された入射面画像および裏面検出器4によって撮像された裏面画像に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することができる。
【0060】
また、検出部28bは、入射面画像と裏面画像との光強度差に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することもできる。
【0061】
また、検出部28bは、入射面画像と裏面画像との差分画像に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することもできる。
【0062】
また、検出部28bは、入射面画像と裏面画像との輝度の比に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することもできる。
【0063】
さらにまた、検出部28bは、拡大率変更ステージ12によって投影角度変更ステージ11が動かされる間に表面検出器3によって連続して撮像された入射面の連続画像に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することもできる。
【0064】
以上説明した本実施形態の放射線画像取得装置1によれば、表面検出器3および裏面検出器4によって、波長変換板6の入射面6aと裏面6bとから出射されるシンチレーション光がそれぞれ集光され、撮像される。拡大率変更ステージ12によって、放射線源2と波長変換板6との間で投影角度変更ステージ11の位置を調整することにより、対象物Aを波長変換板6に近づけたり、波長変換板6から遠ざけたりすることができる。対象物Aを波長変換板6に近づけることにより、拡大率を低くすることができる。対象物Aを波長変換板6から遠ざけ、放射線源2に近づけることにより、拡大率を高くすることができる。ここで、対象物Aを波長変換板6に近づけた場合であっても、撮影角度変更ステージ17によって、表面検出器3の位置を調整することにより、表面検出器3の視野23に対象物Aが入るのを防止することができる。したがって、入射面側の撮像手段である表面検出器3の視野23に対象物Aが入ることを防止しつつ、所望の拡大率で画像を取得することができる。また、対象物Aによるケラレの発生を防止することができる。
【0065】
また、撮影角度変更ステージ17は、表面検出器3の光軸3cと波長変換板6の入射面6aとが交わる点αを回転中心として、表面検出器3を回転させるため、表面検出器3の位置が調整されても、波長変換板6から表面検出器3までの光路長は変わらない。よって、画像に対する補正が容易である。
【0066】
また、表面検出器3の位置が調整されても、表面検出器3の光軸3cと波長変換板6の入射面6aとがなす角度は一定に保たれるため、画像に対する補正がより一層容易になる。また、表面検出器3におけるキャリブレーションを頻繁に行う必要がなく、利便性が向上する。
【0067】
また、表面検出器3、波長変換板6、および裏面検出器4は、上記の点αを回転中心として一体に移動する。よって、表面検出器3および裏面検出器4の位置が調整されても、表面検出器3、波長変換板6、および裏面検出器4の相対的な位置関係は変わらない。そのため、画像間演算を行いやすい画像を撮像することができる。また、裏面検出器4におけるキャリブレーションを頻繁に行う必要がなく、利便性が向上する。
【0068】
従来、対象物Aのサイズが大きかったり、拡大率が低かったり(すなわち波長変換板6に近い)すると、表面検出器3の視野23に対象物Aが被ってしまうことになり、結果として撮影可能エリアが制限されていた。放射線画像取得装置1によれば、光軸3cを動かせる角度範囲を広げることで、撮影可能エリアを広げることができる。
【0069】
また、対象物Aが小さいときには放射線源2の光軸Xと表面検出器3の光軸3cとのなす角をなるべく小さくすることで、波長変換板6の傾きによる「あおり」の影響を低減し、解像度の損失あるいは低下を極力減らすことができる。
【0070】
また、検出部28bによって、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かが検出されるため、画像におけるケラレの発生を確実に防止することができる。
【0071】
また、検出部28bは、表面検出器3によって撮像された入射面画像および裏面検出器4によって撮像された裏面画像に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出する。これによれば、対象物Aが視野23に入っているか否かを精度良く検出することができる。
【0072】
また、検出部28bは、入射面画像と裏面画像との光強度差に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することもできる。これによれば、対象物Aが視野23に入っているか否かを精度良く検出することができる。
【0073】
また、検出部28bは、入射面画像と裏面画像との差分画像に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することもできる。これによれば、対象物Aが視野23に入っているか否かを精度良く検出することができる。
【0074】
さらにまた、検出部28bは、拡大率変更ステージ12によって投影角度変更ステージ11が動かされる間に表面検出器3によって連続して撮像された入射面の連続画像に基づいて、表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを検出することもできる。これによれば、表面検出器3の視野23から対象物Aが外れた時点、あるいは、表面検出器3の視野23に対象物Aが入った時点を精度良く検出することができる。その結果として、放射線源2に対する波長変換板6の傾斜角を最小限に抑えることができ、あおりの少ない画像が取得しやすい。
【0075】
ところで、放射線画像取得装置1がX線CT装置である場合には、画像再構成時には放射線源2の光軸Xと波長変換板6の入射面6aに対する角度の情報が必要になる。放射線画像取得装置1では、波長変換板6の入射面6aと表面検出器3の光軸3cとの角度が一定に保たれているので、放射線源2の光軸Xと表面検出器3の光軸3cとの角度を求めることにより、CT画像を得ることができる。
【0076】
具体的には、図8に示されるように、回転アクチュエータである駆動機構17aを駆動して、角度を変更することができる。この場合、撮影した画像を確認し(目視またはアルゴリズムによる検出を行い)、対象物Aが画像に移りこまない位置に表面検出器3の角度を変更する。そして、そのときの角度を検出する。波長変換板6と表面検出器3との角度を駆動機構17aによって変更することで、たとえば駆動機構17aに接続されたPC30によって、変更角度を取得することができる。これにより、光軸Xと光軸3cとの間の角度を得ることができる。
【0077】
また、図9に示されるように、手動で角度を変更することもできる。この場合、目盛り付き回転ステージ(撮像位置調整手段)17A上に波長変換板6および表面検出器3を配置し、手動で角度を変更した際に目盛りを読み取ることで、光軸Xと光軸3cとの間の角度を得ることができる。
【0078】
これらの場合、画像処理装置28の画像処理部28cは、表面検出器3、波長変換板6、および裏面検出器4の回転角度に基づいて、入射面画像および裏面画像の画像演算を行うことができる。画像処理部28cを備える画像処理装置28によれば、対象物AのCT画像を得ることができる。
【0079】
次に、図10図12を参照して、第2実施形態の放射線画像取得装置1Aについて説明する。図10図12に示される放射線画像取得装置1Aが第1実施形態の放射線画像取得装置1と違う点は、横型のX線防護ボックス14を有する回転体20に代えて、縦型のX線防護ボックス14Aを有する回転体20Aを採用した点である。X線防護ボックス14Aでは、波長変換板6の配置そのものは放射線画像取得装置1から変更されていないが、ミラー5Aおよび裏面検出器4Aの配置が変更されている。すなわち、裏面検出器4Aの光軸4cは、ベース10の延在方向に直交している。ミラー5Aの反射面は、ベース10の延在方向に対して45度傾斜している。なお、放射線画像取得装置1Aも、放射線画像取得装置1と同様に、タイミング制御部27、画像処理装置28、および表示装置29を備える。
【0080】
このような放射線画像取得装置1Aによっても、回転軸線L2を中心にして回転体20Aを回転させることにより、表面検出器3の位置を調整できる。したがって、放射線画像取得装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、表面検出器3が回転軸線L2を中心に回転する場合について説明したが、他の回転軸線を中心に回転してもよい。他の回転軸線は、表面検出器3の光軸3cと波長変換板6の入射面6aとの交点を通ることが好ましいが、その交点を通らなくてもよい。表面検出器3の移動は、回転移動に限られず、スライド移動であってもよい。表面検出器3の視野23に対象物Aが入っているか否かを他の手段によって検出してもよい。たとえば、別途、専用の検出器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A…放射線画像取得装置、2…放射線源(放射線源)、3…表面観察用光検出器(第1の撮像手段)、3c…光軸、4…裏面観察用光検出器(第2の撮像手段)、4c…光軸、6…波長変換板(波長変換部材)、6a…入射面、6b…裏面(反対側の面)、11…投影角度変更ステージ(保持部)、12…拡大率変更ステージ(保持部位置調整手段)、17…撮影角度変更ステージ(撮像位置調整手段)、23…視野(第1の撮像手段の視野)、28b…検出部(検出手段)、28c…画像処理部(画像演算手段)、A…対象物、α…点。
図1
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