特許第5944263号(P5944263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944263
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/06 20060101AFI20160621BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20160621BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20160621BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20160621BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B60K11/06
   B60K11/04 L
   B60K13/04 B
   F01N3/025 101
   F01N3/24 E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-171434(P2012-171434)
(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公開番号】特開2014-31053(P2014-31053A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】黒川 義秋
(72)【発明者】
【氏名】石橋 文雄
(72)【発明者】
【氏名】林 惠一
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−031955(JP,A)
【文献】 実開昭56−024323(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00 − 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、をボンネットに納めたトラクタにおいて、
前記排気浄化装置を覆うフードと、前記フードから空気を引き出す排風ダクトと、を具備し、
前記排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気を前記ボンネットの外側へ排出し、
さらに、
前記ボンネットは、回動軸を中心として回動自在に構成されており、
前記フードは、前記ボンネットに取り付けられて該ボンネットとともに回動する、
ことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
エンジンと、前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、をボンネットに納めたトラクタにおいて、
前記排気浄化装置を覆うフードと、前記フードへ空気を送る送風ダクトと、前記フードから空気を逃す排風ダクトと、を具備し、
前記排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気を前記ボンネットの外側へ排出する、
ことを特徴とするトラクタ。
【請求項3】
エンジンと、前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、をボンネットに納めたトラクタにおいて、
前記排気浄化装置を覆うフードと、前記フードから空気を引き出す排風ダクトと、を具備し、
前記排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気を前記ボンネットの外側へ排出し、
さらに、
前記排気浄化装置から排気を排出するテールパイプを具備し、
前記排風ダクトは、前記テールパイプに沿うように形成されて該テールパイプとともに保護カバーで覆われる、
ことを特徴とするトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出される排気には、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)のほか、スス等に代表される粒子状物質(PM)が含まれている。従って、これらの環境負荷物質を取り除くべく、排気浄化装置を備えた作業車両が存在していた。例えばトラクタにおいては、エンジンの上方に排気浄化装置が配置され、これらが一体としてボンネットに納められていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、トラクタの排気浄化装置は、一般的に酸化触媒担持体とスートフィルタで構成される。酸化触媒担持体は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を酸化するものであるため、エンジンの運転状態や酸化反応の状況によっては非常に高温となる。また、スートフィルタは、ススを捕集するとともに捕集したススを酸化するものであるため、エンジンの運転状態や酸化反応の状況によっては非常に高温となる。従って、排気浄化装置は、ボンネット内で放熱することとなり、該ボンネット内の温度が高くなる原因となっていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−106286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エンジンと排気浄化装置をボンネットに納めたトラクタにおいて、ボンネット内の温度を下げるための技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、エンジンと、前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、をボンネットに納めたトラクタにおいて、前記排気浄化装置を覆うフードと、前記フードから空気を引き出す排風ダクトと、を具備し、前記排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気を前記ボンネットの外側へ排出し、さらに、前記ボンネットは、回動軸を中心として回動自在に構成されており、前記フードは、前記ボンネットに取り付けられて該ボンネットとともに回動するものである。
【0008】
請求項2においては、エンジンと、前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、をボンネットに納めたトラクタにおいて、前記排気浄化装置を覆うフードと、前記フードへ空気を送る送風ダクトと、前記フードから空気を逃す排風ダクトと、を具備し、前記排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気を前記ボンネットの外側へ排出するものである。
【0009】
請求項3においては、エンジンと、前記エンジンの排気を浄化する排気浄化装置と、をボンネットに納めたトラクタにおいて、前記排気浄化装置を覆うフードと、前記フードから空気を引き出す排風ダクトと、を具備し、前記排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気を前記ボンネットの外側へ排出し、さらに、前記排気浄化装置から排気を排出するテールパイプを具備し、前記排風ダクトは、前記テールパイプに沿うように形成されて該テールパイプとともに保護カバーで覆われるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気をボンネットの外側へ排出できる。これにより、ボンネットの内側に熱せられた空気がこもらないため、該ボンネット内の温度を下げることが可能となる。ひいては、ボンネットが高温になるのを防ぐことが可能となる。
【0012】
また、フードがボンネットに取り付けられて該ボンネットとともに回動する。これにより、整備を行なう際にフードを脱着する必要がなく、整備性を向上させることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、排気浄化装置からの放熱によって熱せられた空気をボンネットの外側へ排出できる。これにより、ボンネットの内側に熱せられた空気がこもらないため、該ボンネット内の温度を下げることが可能となる。ひいては、ボンネットが高温になるのを防ぐことが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、排風ダクトがテールパイプに沿うように形成されて該テールパイプとともに保護カバーで覆われる。これにより、テールパイプを覆うための保護カバーが排風ダクトも覆うため、部品点数を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】トラクタの全体構成を示す図。
図2】ボンネットに納められたエンジンと排気浄化装置を示す図。
図3】第一実施形態に係る換気装置を示す図。
図4】第二実施形態に係る換気装置を示す図。
図5】ボンネットを回動させた状態を示す図。
図6】排風ダクトの支持構造を示す図。
図7】他の実施形態に係る排風ダクトの配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、トラクタ100の全体構成について簡単に説明する。なお、本発明の技術的思想は、以下に説明するトラクタ100に限るものではなく、その他のトラクタにも適用することが可能である。
【0017】
図1は、トラクタ100の全体構成を示す図である。図2は、ボンネット7に納められたエンジン2と排気浄化装置3を示す図である。なお、図2Aは正面図であり、図2Bは側面図を示している。
【0018】
トラクタ100は、フレーム1と、エンジン2と、排気浄化装置3と、トランスミッション4と、フロントアクスル5と、リヤアクスル6と、ボンネット7と、キャビン8と、で構成されている。
【0019】
フレーム1は、トラクタ100の主たる構造体であり、該トラクタ100の骨格をなす。以下に説明するエンジン2等は、フレーム1に取り付けられる。
【0020】
エンジン2は、燃料の燃焼によって動力を発生させる。エンジン2は、オペレータがアクセルペダル81等を操作することによって運転状態を変更することができる。なお、本実施形態におけるエンジン2は、空気を圧縮した後に燃料を噴射するディーゼルエンジンとされる。
【0021】
排気浄化装置3は、エンジン2から排出された排気を浄化する。排気浄化装置3は、酸化触媒担持体(Diesel Oxidation Catalyst:以降「DOC」という)31とスートフィルタ(Diesel Particulate Filter:以降「DPF」という)32で構成される。DOC31は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を酸化する。また、DPF32は、ススを捕集するとともに捕集したススを酸化する。なお、排気浄化装置3は、DOC31とDPF32で構成されているが、DOC31又はDPF32のいずれかのみで構成したものであっても良い。
【0022】
トランスミッション4は、トラクタ100の前後進の切り換えや変速を行なう。トランスミッション4は、変速装置として油圧−機械式の無段変速装置(HMT若しくはiHMT)を備えている。但し、静油圧式の無段変速装置(HST)であっても良く、これに限定するものではない。
【0023】
フロントアクスル5は、エンジン2の動力をタイヤ51に伝達する。フロントアクスル5には、トランスミッション4を介してエンジン2の動力が入力される。なお、フロントアクスル5には、操舵装置が並設されており、オペレータがハンドル82を操作することによってタイヤ51を操舵することができる。
【0024】
リヤアクスル6は、エンジン2の動力をタイヤ61に伝達する。リヤアクスル6には、トランスミッション4を介してエンジン2の動力が入力される。
【0025】
ボンネット7は、エンジン2及び排気浄化装置3を覆う外装部品である。ボンネット7は、回動軸7cを中心として上下方向に回動自在に構成されている。このため、オペレータは、エンジン2や排気浄化装置3の整備を容易に行なうことができる。
【0026】
キャビン8は、各種の操作具が配置された操縦室である。キャビン8には、上述したアクセルペダル81やハンドル82に加えて、トラクタ100の運転に用いるその他の操作具が配置されている。
【0027】
次に、第一実施形態に係る換気装置10Aについて説明する。
【0028】
図3は、第一実施形態に係る換気装置10Aを示す図である。図中の矢印は、空気の流れ方向を示している。
【0029】
換気装置10Aは、フード101と、排風ダクト102と、で構成される。
【0030】
フード101は、排気浄化装置3を覆うように形成されている。より詳細に説明すると、フード101は、排気浄化装置3の上部を覆うように形成されている。このため、フード101は、排気浄化装置3からの放熱によって熱せられた空気を受け止めることができる。また、フード101は、排気浄化装置3からのふく射を遮断することができる。なお、排気浄化装置3の近傍にマフラー等が配置されている場合は、フード101がマフラー等も覆うとしても良い。
【0031】
排風ダクト102は、フード101から空気を引き出す機能を有する。より詳細に説明すると、排風ダクト102は、その一端又は中途部にファン102fを備えており、該ファン102fが回転することによってフード101から空気を引き出す。また、排風ダクト102は、テールパイプ91に沿うようにしてボンネット7の外側へ導かれている。このため、排風ダクト102は、排気浄化装置3からの放熱によって熱せられた空気をボンネット7の外側へ排出することができる。なお、ファン102fはモータまたはエンジン2の動力によって駆動される。
【0032】
このように、本トラクタ100は、換気装置10Aを備えるため、排気浄化装置3からの放熱によって熱せられた空気をボンネット7の外側へ排出できる。これにより、ボンネット7の内側に熱せられた空気がこもらないため、該ボンネット7内の温度を下げることが可能となる。ひいては、ボンネット7が高温になるのを防ぐことが可能となる。
【0033】
次に、第二実施形態に係る換気装置10Bについて説明する。
【0034】
図4は、第二実施形態に係る換気装置10Bを示す図である。図中の矢印は、空気の流れ方向を示している。
【0035】
換気装置10Bは、フード103と、送風ダクト104と、排風ダクト105と、で構成される。
【0036】
フード103は、排気浄化装置3を覆うように形成されている。より詳細に説明すると、フード103は、排気浄化装置3の上部を覆うように形成されている。このため、フード103は、排気浄化装置3からの放熱によって熱せられた空気を受け止めることができる。また、フード103は、排気浄化装置3からのふく射を遮断することができる。なお、排気浄化装置3の近傍にマフラー等が配置されている場合は、フード103がマフラー等も覆うとしても良い。
【0037】
送風ダクト104は、フード103へ空気を送る機能を有する。より詳細に説明すると、送風ダクト104は、その一端又は中途部にファン104fを備えており、該ファン104fが回転することによってフード103へ空気を送る。また、送風ダクト104は、ボンネット7の空気取入口の近傍から導かれている。但し、送風ダクト104は、低温の空気をフード103へ送ることができれば良く、吸入口の位置について限定するものではない。なお、ファン104fはモータまたはエンジン2の動力によって駆動される。
【0038】
排風ダクト105は、フード103から空気を逃がす機能を有する。より詳細に説明すると、排風ダクト105は、送風ダクト104がフード103へ空気をおくるため、送られた空気量に応じてフード103から空気を逃がす。また、排風ダクト105は、テールパイプ91に沿うようにしてボンネット7の外側へ導かれている。このため、排風ダクト105は、排気浄化装置3からの放熱によって熱せられた空気をボンネット7の外側へ排出することができる。なお、排風ダクト105にファンを備え、該ファンが回転することによってフード103から空気を引き出すとしても良い。
【0039】
このように、本トラクタ100は、換気装置10Bを備えた場合でも、排気浄化装置3からの放熱によって熱せられた空気をボンネット7の外側へ排出できる。これにより、ボンネット7の内側に熱せられた空気がこもらないため、該ボンネット7内の温度を下げることが可能となる。ひいては、ボンネット7が高温になるのを防ぐことが可能となる。
【0040】
次に、本トラクタ100の他の特徴点について説明する。なお、ここでは、第一実施形態に係る換気装置10Aについて説明しているが、換気装置10Bであっても適用可能である。
【0041】
図5は、ボンネット7を上方に回動させた状態を示す図である。
【0042】
上述したように、ボンネット7は、回動軸7cを中心として上下方向に回動自在に構成されている。そして、フード101は、ボンネット7の裏面に支持部材71を介して取り付けられているため、該ボンネット7とともに回動する。つまり、ボンネット7とフード101は、一体となった状態で回動するのである。なお、排風ダクト102の一部は、伸縮可能な蛇腹部となっているため、ボンネット7の回動によっても外れない。
【0043】
このように、本トラクタ100は、フード101がボンネット7に取り付けられて該ボンネット7とともに回動する。これにより、整備を行なう際にフード101を脱着する必要がなく、整備性を向上させることが可能となる。
【0044】
更に、フード101は、ボンネット7との間に空間Sを設けた状態で該ボンネット7に取り付けられている。つまり、フード101とボンネット7との間には、空間Sが設けられている。このため、空間Sが断熱層となってボンネット7への伝熱を低減できる。従って、ボンネット7が高温になるのを防ぐことが可能となる。なお、空間Sに断熱材を配置するとしても良い。
【0045】
図6は、排風ダクト102の支持構造を示す図である。図6Aは側面図であり、図6Bは断面図を示している。
【0046】
上述したように、排風ダクト102は、テールパイプ91に沿うように形成されている。排風ダクト102は、テールパイプ91とともにクランプ92によって固定されている。そして、排風ダクト102は、テールパイプ91とともに保護カバー93で覆われている。
【0047】
このように、本トラクタ100は、排風ダクト102がテールパイプ91に沿うように形成されて該テールパイプ91とともに保護カバー93で覆われる。これにより、テールパイプ91を覆うための保護カバー93が排風ダクト102も覆うため、部品点数を削減することが可能となる。
【0048】
また、図7に示すように、排風ダクト102でテールパイプ91を覆うとしても良い。即ち、排風ダクト102の内側にテールパイプ91が配置された二重管構造とするのである。この場合、排風ダクト102を流れる空気が断熱層となるため、該排風ダクト102が保護カバーとなるのである。
【0049】
このように、本トラクタ100は、排風ダクト102でテールパイプ91を覆うとしても良い。これにより、テールパイプ91を覆うための保護カバー93が不要となるため、部品点数を削減することが可能となる。
【0050】
更に、二重管構造とした場合は、テールパイプ91を流れる排気によって排風ダクト102から空気を引き出すことができる。このため、例えばファン102fの送風能力が小さくとも、排気浄化装置3からの放熱によって熱せられた空気をボンネット7の外側へ排出できる。即ち、ファン102fを小型化することができ、コストを低減することが可能となる。また、ファン102fを小型化することによって、搭載性を向上させることも可能となる。
【符号の説明】
【0051】
100 トラクタ
1 フレーム
2 エンジン
3 排気浄化装置
31 酸化触媒担持体(DOC)
32 スートフィルタ(DPF)
4 トランスミッション
5 フロントアクスル
51 タイヤ
6 リヤアクスル
61 タイヤ
7 ボンネット
71 支持部材
8 キャビン
81 アクセルペダル
82 ハンドル
91 テールパイプ
92 クランプ
93 保護カバー
10A 換気装置
101 フード
102 排風ダクト
102f ファン
10B 換気装置
103 フード
104 送風ダクト
104f ファン
105 排風ダクト
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7