(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御手段が記憶している多数の加工孔のXY座標上の位置情報に基づいて、薄板状の基板にレーザ加工によって前記多数の加工孔を形成するレーザ加工基板の製造方法において、
前記制御手段が記憶している多数の加工孔をP(P≧2)個のグループに無作為に散らばるように分散させるグループ分散工程と、
前記分散された1グループからPグループまでの各グループをXY座標上に並べられたn×m(n,m≧2)個の加工エリアであるグリッドで区分けする際に、隣のグループ同士を少なくともX座標又はY座標にオフセットするグリッドで区分けするエリア区分け工程と、
前記各グループの中で記憶している多数の加工孔が、前記区分けされたn×m個の加工エリアのうちどの加工エリアに所属するかを決定する所属エリア決定工程と、
前記各グループ毎に且つ前記各加工エリア毎に順番に、その加工エリアに所属する加工孔の位置情報に基づいて基板にレーザ加工を行うレーザ加工工程と、
を備えていることを特徴とするレーザ加工基板の製造方法。
制御手段が記憶している多数の加工孔のXY座標上の位置情報に基づいて、薄板状の基板に対してレーザ加工によって前記多数の加工孔を形成するレーザ加工装置において、
前記制御手段は、
記憶している多数の加工孔をP(P≧2)個のグループに無作為に散らばるように分散させ、
前記分散された1グループからPグループまでの各グループをXY座標上に並べられたn×m(n,m≧2)個の加工エリアであるグリッドで区分けする際に、隣のグループ同士を少なくともX座標又はY座標にオフセットするグリッドで区分けし、
前記各グループの中で記憶している多数の加工孔が、前記区分けされたn×m個の加工エリアのうちどの加工エリアに所属するかを決定し、
前記各グループ毎に且つ前記各加工エリア毎に順番に、その加工エリアに所属する加工孔の位置情報に基づいて基板にレーザ加工を行うように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のレーザ加工法で製造されるメタルマスクには、以下の問題点があった。即ち、近年、メタルマスクでは、加工孔の密度(密集度)が高くなっている。このため、基板のうち加工孔の密集度が高い部分では、レーザ光が短時間で連続的に照射されて、熱歪みが大きくなる。この結果、製造されたメタルマスクでは、熱歪みによる変形が比較的大きく生じていて、レーザ加工の精度が低下しているという問題点があった。
【0006】
また、レーザ加工装置では、1回のレーザ加工による加工エリアが定まっていて、加工エリアの境界線でダメージが蓄積され易い。このダメージは、基板のうち加工孔の密集度が高い部分で、特に大きく蓄積される。この結果、製造されたメタルマスクでは、
図42(A)に示す十字状の加工模様、
図42(B)に示す同心円状の加工模様、
図42(C)に示す蛇行状の加工模様等が生じて、見た目が悪いという問題点もあった。
【0007】
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、レーザ加工されたレーザ加工基板に熱歪みによる変形が生じることを抑制するとともに加工模様が生じることを防止できるレーザ加工基板の製造方法、及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレーザ加工基板の製造方法は、制御手段が記憶している多数の加工孔のXY座標上の位置情報に基づいて、薄板状の基板にレーザ加工によって前記多数の加工孔を形成する方法であって、前記制御手段が記憶している多数の加工孔をP(P≧2)個のグループに無作為に散らばるように分散させるグループ分散工程と、前記分散された1グループからPグループまでの各グループをXY座標上に並べられたn×m(n,m≧2)個の加工エリアであるグリッドで区分けする際に、隣のグループ同士を少なくともX座標又はY座標にオフセットするグリッドで区分けするエリア区分け工程と、前記各グループの中で記憶している多数の加工孔が、前記区分けされたn×m個の加工エリアのうちどの加工エリアに所属するかを決定する所属エリア決定工程と、前記各グループ毎に且つ前記各加工エリア毎に順番に、その加工エリアに所属する加工孔の位置情報に基づいて基板にレーザ加工を行うレーザ加工工程と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この場合には、グループ分散工程により、多数の加工孔をP個のグループに無作為に且つほぼ均等に分散する。このため、各グループを順番にレーザ加工する際に、加工孔の密集度が低い状態で、レーザ光を照射することができて、熱歪みによる変形を抑制できる。
更に、エリア区分け工程により、隣のグループ同士をX座標又はY座標にオフセットするグリッドで区分けする。このため、各グループを順番にレーザ加工する際に、加工エリアの境界線の位置が常に同じにならず、X座標又はY座標にずれる。従って、加工エリアの境界線の位置でレーザ加工によるダメージが蓄積されず、加工模様が生じることを防止できる。
【0010】
また、本発明に係るレーザ加工基板の製造方法において、前記エリア区分け工程では、前記1グループからPグループまでの各グループを、第1グリッドと、前記第1グリッドに対してX座標にオフセットしている第2グリッドと、前記第1グリッドに対してX座標及びY座標にオフセットしている第3グリッドと、前記第1グリッドに対してY座標にオフセットしている第4グリッドとで区分けすることが好ましい。
【0011】
この場合には、各グループを順番にレーザ加工する際に、加工エリアの境界線の四辺を順番に打ち消し合うように交差させることができる。従って、合計2個又は3個のグリッドを用いて区分けする場合に比べて、各加工エリアの境界線の位置で生じるダメージを減らすことができ、加工模様が生じることをより効果的に防止できる。
【0012】
また、本発明に係るレーザ加工基板の製造方法において、前記X座標にオフセットするグリッド同士では、オフセットする量が1つの加工エリアのX座標長さの半分であり、前記Y座標にオフセットするグリッド同士では、オフセットする量が1つの加工エリアのY座標長さの半分であることが好ましい。特に、各加工エリアは、正方形であると良い。
【0013】
この場合には、各グループを順番にレーザ加工する際に、各加工エリアの境界線をX座標及びY座標で対称的に打ち消し合うように交差させることができる。即ち、各加工エリアの境界線において、辺全体が残らず効率的に打ち消し合うように交差させることができる。従って、加工模様が生じることをより効果的に防止できる。
【0014】
また、本発明に係るレーザ加工基板の製造方法において、前記所属エリア決定工程では、前記各加工孔のうちその全体の形状が前記区分けされた加工エリアに含まれない場合には、前記加工孔をはみ出し加工孔として前記オフセットする全てのグリッドの中でどの加工エリアに所属するかを再決定し、前記レーザ加工工程では、前記各グループ毎に且つ前記各加工エリア毎に順番に加工孔の位置情報に基づいて行うレーザ加工とは別に、前記再決定されたはみ出し加工孔の位置情報に基づいてレーザ加工を行うことが好ましい。
【0015】
この場合には、各加工孔のうちその全体の形状が区分けされた加工エリアに含まれない加工孔を、はみ出し加工孔としてオフセットする全てのグリッドの中でどの加工エリアに所属するかを再決定する。そして、再決定されたはみ出し加工孔の位置情報に基づいてレーザ加工を行う。こうして、加工エリアを跨ぐ加工孔が存在する場合であっても、その加工孔をはみ出し加工孔として的確に形成できる。
【0016】
本発明に係るレーザ加工装置は、制御手段が記憶している多数の加工孔のXY座標上の位置情報に基づいて、薄板状の基板に対してレーザ加工によって前記多数の加工孔を形成するものであって、前記制御手段は、記憶している多数の加工孔をP(P≧2)個のグループに無作為に散らばるように分散させ、前記分散された1グループからPグループまでの各グループをXY座標上に並べられたn×m(n,m≧2)個の加工エリアであるグリッドで区分けする際に、隣のグループ同士を少なくともX座標又はY座標にオフセットするグリッドで区分けし、前記各グループの中で記憶している多数の加工孔が、前記区分けされたn×m個の加工エリアのうちどの加工エリアに所属するかを決定し、前記各グループ毎に且つ前記各加工エリア毎に順番に、その加工エリアに所属する加工孔の位置情報に基づいて基板にレーザ加工を行うように構成されていることを特徴とする。
【0017】
この場合には、制御手段が、多数の加工孔をP個のグループに無作為に且つほぼ均等に分散させる。このため、各グループを順番にレーザ加工する際に、加工孔の密集度が低い状態で、レーザ光を照射することができて、熱歪みによる変形を抑制できる。
更に、制御手段が、隣のグループ同士をX座標又はY座標にオフセットするグリッドで区分けする。このため、各グループを順番にレーザ加工する際に、加工エリアの境界線の位置が常に同じにならず、X座標又はY座標にずれる。従って、加工エリアの境界線の位置でレーザ加工によるダメージが蓄積されず、加工模様が生じることを防止できる。
【0018】
また、本発明に係るレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記1グループからPグループまでの各グループを、第1グリッドと、前記第1グリッドに対してX座標にオフセットしている第2グリッドと、前記第1グリッドに対してX座標及びY座標にオフセットしている第3グリッドと、前記第1グリッドに対してY座標にオフセットしている第4グリッドとで区分けするように構成されていることが好ましい。
【0019】
この場合には、各グループを順番にレーザ加工する際に、加工エリアの境界線の四辺を順番に打ち消し合うように交差させることができる。従って、合計2個又は3個のグリッドを用いて区分けする場合に比べて、各加工エリアの境界線の位置で生じるダメージを減らすことができ、加工模様が生じることをより効果的に防止できる。
【0020】
また、本発明に係るレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記X座標にオフセットするグリッド同士では、オフセットする量を1つの加工エリアのX座標長さの半分とし、前記Y座標にオフセットするグリッド同士では、オフセットする量を1つの加工エリアのY座標長さの半分とするように構成されていることが好ましい。特に、各加工エリアは、正方形であると良い。
【0021】
この場合には、各グループを順番にレーザ加工する際に、各加工エリアの境界線をX座標及びY座標で対称的に打ち消し合うように交差させることができる。即ち、各加工エリアの境界線において、辺全体が残らず効率的に打ち消し合うように交差させることができる。従って、加工模様が生じることをより効果的に防止できる。
【0022】
また、本発明に係るレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記各加工孔のうちその全体の形状が前記区分けされた加工エリアに含まれない場合には、前記加工孔をはみ出し加工孔として前記オフセットする全てのグリッドの中でどの加工エリアに所属するかを再決定し、前記各グループ毎に且つ前記各加工エリア毎に順番に加工孔の位置情報に基づいて行うレーザ加工とは別に、前記再決定されたはみ出し加工孔の位置情報に基づいてレーザ加工を行うように構成されていることが好ましい。
【0023】
この場合には、各加工孔のうちその全体の形状が区分けされた加工エリアに含まれない加工孔を、はみ出し加工孔としてオフセットする全てのグリッドの中でどの加工エリアに所属するかを再決定する。そして、再決定されたはみ出し加工孔の位置情報に基づいてレーザ加工を行う。こうして、加工エリアを跨ぐ加工孔が存在する場合であっても、その加工孔をはみ出し加工孔として的確に形成できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のレーザ加工基板の製造方法、及びレーザ加工装置によれば、レーザ加工されたレーザ加工基板に熱歪みによる変形が生じることを抑制するとともに加工模様が生じることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
本発明に係るレーザ加工基板の製造方法、及びレーザ加工装置の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1(A)は、本実施形態のレーザ加工装置1を示した側面図であり、
図1(B)は、
図1(A)の矢印V方向から見たときのレーザ加工装置1を示した平面図である。
【0027】
図1(A)では、鉛直方向をZ方向(図中上下方向)とし、Z方向と直交する方向をX方向としている。また、
図1(B)では、左右方向をX方向とし、X方向と直交する方向をY方向(図中上下方向)としている。本実施形態では、或る原点に対してX方向に延びる軸がX座標軸(以下、単に「X軸」と呼ぶ)であり、或る原点に対してY方向に延びる軸がY座標軸(以下、単に「Y軸」と呼ぶ)である。
【0028】
レーザ加工装置1は、被加工対象である基板Kにレーザ光を照射して、所定の開口パターンが形成されたメタルマスク(レーザ加工基板)を製造するものである。即ち、メタルマスクは、厚さ0.2mm以下の非常に薄いステンレス板である基板Kに対して、レーザ加工で微細な開口パターンが形成されたものである。
【0029】
レーザ加工装置1は、
図1(A)に示すように、主に、ベース2に連結された第1移動装置10と、基板Kを固定する固定装置20と、アーム3に連結された第2移動装置30と、第2移動装置30に取付けられている加工ヘッド40と、制御手段50とを備えている。
【0030】
第1移動装置10は、基板KをX方向及びY方向に移動させるものである。この第1移動装置10は、
図1(A)に示すように、ベース2に連結されているX軸移動装置11と、X軸移動装置11と固定装置20とに連結されているY軸移動装置12とを有する。X軸移動装置11は、図示しないボールネジ機構によってX方向に往復移動可能に構成されている。Y軸移動装置12は、図示しないボールネジ機構によってY方向に往復移動可能に構成されている。
【0031】
固定装置20は、基板KをXY座標平面(Z方向と直交する平面)に固定するものである。この固定装置20は、
図1(B)に示すように、枠状に形成されていて、図示しない挟持装置によって基板Kの周縁部を挟持している。
【0032】
第2移動装置30は、加工ヘッド40をX方向及びY方向に移動させるものである。この第2移動装置は、図示しないX軸移動装置及びY軸移動装置を有し、X軸移動装置とY軸移動装置は、リニアモータ駆動機構によってそれぞれX方向及びY方向に高精度に往復移動可能に構成されている。
【0033】
加工ヘッド40は、基板Kに向けてレーザ光及び加工ガスを照射するものである。この加工ヘッド40では、図示しないレーザ発信器が光学レンズに向けてレーザ光を発射することで、基板Kにレーザ光を照射することができる。この加工ヘッド40には、首振り機構が搭載されていて、所定の範囲内でレーザ光を照射することができる。
【0034】
制御手段50は、第1移動装置10、第2移動装置30、加工ヘッド40の動作を制御するものである。ここで、
図2は、制御手段50の電気的な構成を示した図である。制御手段50は、
図2に示すように、CPU51と、ROM52と、RAM53と、第1駆動ドライバ54と、第2駆動ドライバ55と、加工ヘッドドライバ56とを有している。
【0035】
CPU51、ROM52、RAM53は、バスラインを介して互いに接続されている。また、操作キー4(
図1(A)参照)、LCD5(
図1(A)参照)、第1駆動ドライバ54、第2駆動ドライバ55、加工ヘッドドライバ56は、バスラインと入出力ポート57を介して互いに接続されている。操作キー4は、レーザ加工における指令値等を入力するためのものであり、LCD5は、レーザ加工された結果の情報値等を表示するためのものである。
【0036】
CPU51は、ROM52やRAM53に記憶される固定値やプログラムに従って、入出力ポート57に接続された各部を制御するものである。ROM52は、後述する
図3に示したレーザ加工プログラムPr1を格納する書換不能なメモリである。RAM53は、レーザ加工装置1の各操作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。
【0037】
第1駆動ドライバ54は、第1移動装置10(X軸移動装置11及びY軸移動装置12)に接続されていて、CPU51からの制御信号に基づいて第1移動装置10を所定の位置に移動させる。第2駆動ドライバ55は、第2移動装置30に接続されていて、CPU51からの制御信号に基づいて第2移動装置30を所定の位置に移動させる。加工ヘッドドライバ56は、加工ヘッド40に接続されていて、CPU51からの制御信号に基づいて加工ヘッド40を所定の範囲で首振り移動させる。
【0038】
ところで、近年、製造するメタルマスクでは、加工孔の密度(密集度)が高くなっている。このため、基板Kのうち加工孔の密集度が高い部分では、レーザ光が短時間で連続的に照射されて、熱歪みが大きくなる。この結果、従来のレーザ加工方法によって製造されたメタルマスクでは、熱歪みによる変形が比較的大きく生じていた。具体的に、熱歪みによる変形は、数mm程度生じていて、蛍光灯の下では肉眼でも確認できるものであった。
【0039】
更に、レーザ加工装置1では、1回のレーザ加工による加工エリアが定まっていて、加工エリアの境界線でダメージが蓄積され易い。このダメージは、基板Kのうち加工孔の密集度が高い部分で、特に大きく蓄積される。この結果、従来のレーザ加工方法によって製造されたメタルマスクでは、
図42(A)に示す十字状の加工模様、
図42(B)に示す同心円状の加工模様、
図42(C)に示す蛇行状の加工模様等が生じて、見た目が悪かった。
【0040】
そこで、出願人は、上記した問題点を解決すべく、レーザ加工による孔開けを無作為に分散させるとともに、加工エリアの境界線の位置をずらしながらレーザ加工を行うことを考案した。即ち、出願人は、レーザ加工によって加工孔を形成する際の加工順序を工夫して、制御手段50が上述したレーザ加工を行うように構成した。以下、本実施形態におけるレーザ加工を詳細に説明する。
【0041】
図3は、制御手段50のROM52が格納するレーザ加工プログラムPr1を示したフローチャートである。レーザ加工プログラムPr1は、
図3に示すように、初期工程S100と、グループ分散工程S200と、エリア区分け工程S300と、所属エリア決定工程S400と、レーザ加工工程S500とを備えている。制御手段50のCPU51が、このレーザ加工プログラムPr1の各工程S100〜S500を実行するようになっている。
【0042】
<初期工程>
初期工程S100では、
図4に示すように、先ず、基板Kに形成する複数の加工孔の位置情報(位置及び範囲)が取得される(S101)。加工孔の位置情報は、予め作業者が作成したい開口パターンに応じて操作キー4(
図1(A)参照)を操作することで、制御手段50のRAM53に記憶させていたものである。ここで、作業者は操作キー4を操作することで、開口パターンのうち本実施形態のレーザ加工プログラムPr1を適用する複数の加工孔を選択できるようになっている。
【0043】
本実施形態では、
図5(A)に示した60000個の加工孔hを基板Kに形成する場合を例として説明する。
図5(B)は、
図5(A)に示した中央部分を拡大した図である。
図5(B)に示すように、各加工孔hは、全て同一の丸孔であり、その径が50μmである。そして、隣合う加工孔hは、X方向又はY方向に100μmずつ離れて配置されている。なお、本実施形態の基板Kは、長方形であって、1辺の長さが500mmで他辺の長さが600mmであり、この基板Kの一部分に60000個の密集した加工孔hが形成される。
【0044】
ここで、60000個の加工孔hのうち、例えば、
図6(A)に示した1つの加工孔haの位置情報が取得される場合を説明する。この場合、予め設定された原点(0,0)を基準として、レーザ光が最初に照射されるXY座標と、レーザ光が照射される範囲のXY座標(レーザの軌跡)が取得される。レーザ光が最初に照射される点をイニシャルホールと呼ぶことにすると、例えば、加工孔haのイニシャルホールの座標(X0,Y0)が(−6.000,−0.500)として取得される。こうして、60000個の全ての加工孔hの位置情報が取得されるようになっている。
【0045】
図4に示した初期工程S100の説明に戻る。各加工孔hの位置情報が取得された後、各加工孔hが
図6(B)に示した加工エリアEに入るか否かが判断される(S102)。ここで、加工エリアEとは、加工ヘッド40が第2移動装置30の移動によって基板Kにレーザ光を照射することができる範囲である。
【0046】
本実施形態では、加工エリアEは、X方向の長さが10mmでありY方向の長さが10mmである正方形のエリアになっている。このため、
図6(A)に示した加工孔haは、径が50μmの丸孔であるため、加工エリアEに入ると判断される。こうして、
図5(A)に示した60000個の加工孔hは、それぞれ加工エリアEに入ると判断される。
【0047】
一方、仮に、
図6(B)に示す加工孔hbの位置情報が取得された場合について説明する。
図6(B)に示す加工孔hbでは、X方向の長さが12mmであるため、加工エリアEに入らないと判断される。この場合、
図4に示したS102からS103に進み、加工エリアEに入らない加工孔hbは除外される。従って、例えば、60000個の加工孔hの他に、加工孔hbを含む開口パターンを形成する場合、加工エリアEに入らない加工孔hbを除外して、加工孔hbに対して本実施形態の加工方法を適用しないようになっている。
【0048】
こうして、本実施形態では、加工エリアEに入る加工孔hのみが、ナンバリングされる(S104)。即ち、60000個の加工孔hは、加工データファイルに現れる順番に、hole1,hole2,hole3,・・・・hole59999,hole60000として、ナンバリングされる。なお、加工データファイルに現れる順番にナンバリングを行うため、番号が近いhole(例えばhole1とhole2)では、XY座標が近くなる。
【0049】
<グループ分散工程>
次に、グループ分散工程S200について説明する。
図7に示すように、holeの数(60000個)だけ1〜Pまでの乱数を発生させて、無作為の整数を取得する(S201)。ここで、Pとは、60000個のholeを分散させたいグループ数を意味していて、本実施形態では「9」である。なお、乱数を発生させる方法は、特に限定されない。こうして、60000回、1〜9までのランダムな整数を取得する。そして、各holeと無作為に取得された1〜9までの整数とをセットで記憶して、各holeのグループを決定する(S202)。
【0050】
例えば、1回目に無作為に取得した整数が5である場合、hole1と5とをセットで記憶して、hole1を5グループとして決定する。次に、2回目に無作為に取得した整数が3である場合、hole2と3とをセットで記憶して、hole2を3グループとして決定する。これを繰り返して、60000回目に無作為に取得した整数が8である場合、hole60000と8とをセットで記憶して、hole60000を8グループとして決定する。こうして、グループ分散工程S200では、全てのhole1〜hole60000が、1グループから9グループまでの何れかのグループに無作為に入るように、決定される。
【0051】
グループ分散工程S200が行った作業について、
図8〜
図16を用いて分かり易く説明する。hole1〜hole60000のグループが決定したということは、
図5(A)に示した一つのXY座標平面に位置するhole1〜hole60000が、
図8(A)に示した1グループP1、
図9(A)に示した2グループP2、
図10(A)に示した3グループP3、
図11(A)に示した4グループP4、
図12(A)に示した5グループP5、
図13(A)に示した6グループP6、
図14(A)に示した7グループP
7、
図15(A)に示した8グループP8、
図16(A)に示した9グループP9とに無作為且つほぼ均等に分散されたことを意味する。
【0052】
なお、
図8(A)〜
図16(A)のグループP1〜P9に含まれる加工孔を全て重ね合わせると、
図5(A)に示した一つのXY座標平面に位置する60000個の加工孔hになる。
図8(B)〜
図16(B)は、
図8(A)〜
図16(A)に示した中央部分を拡大した図である。
【0053】
こうして、
図5(A)に示した60000個の密集度が高い加工孔hが、1グループP1から9グループP9までの各グループに密集度が低くなるように分散される。従って、1グループP1から9グループP9まで順番にレーザ加工することで、加工孔hの密集度が低い状態で、レーザ光を照射することができて、熱歪みによる変形を抑制できるようになっている。
【0054】
<エリア区分け工程>
続いて、エリア区分け工程S300について説明する。
図17に示すように、N個のグリッドGを用意する(S301)。ここで、グリッドGとは、上述した各グループP1〜P9を加工エリアE毎に区分けするためのものであり、本実施形態のグリッドGは、
図18に示すように、加工エリアEがXY座標上に4×4個(4行4列)並んだものである。
【0055】
図18に示すグリッドGは、4行4列に並ぶ加工エリアEの中心がXY座標の原点(0,0)に一致していて、オフセットしていない。この
図18に示すグリッドGのことを、第1グリッドG1と呼ぶことにする。そして、4行4列に並ぶ加工エリアEのうち、例えば2行3列に位置する加工エリアEを加工エリアE23と呼ぶことにする。
【0056】
そして、本実施形態では、合計4(N=4)個のグリッドGが用意されている。
図19に示すグリッドGは、
図18に示す第1グリッドG1に対して、1つの加工エリアEのX座標長さ(10mm)の半分(5mm)だけオフセットしている。この
図19に示すグリッドGを、第2グリッドG2と呼ぶことにする。また、
図20に示すグリッドGは、
図18に示す第1グリッドG1に対して、1つの加工エリアEのX座標長さの半分とY座標長さ(10mm)の半分(5mm)だけオフセットしている。この
図20に示すグリッドGを、第3グリッドG3と呼ぶことにする。
【0057】
更に、
図21に示すグリッドGは、
図18に示す第1グリッドG1に対して、1つの加工エリアEのY座標長さの半分だけオフセットしている。この
図21に示すグリッドGを、第4グリッドG4と呼ぶことにする。こうして、互いにX座標又はY座標にオフセットする4個のグリッドG1〜G4が用意される(ステップ301)。
【0058】
次に、上述した9個のグループP1〜P9と、4個のグリッドG1〜G4とを対応付ける(S302)。具体的には、
図22に示すように、1グループP1では第1グリッドG1を用いて、第1グリッドG1の各加工エリアEで区分けされるようにする。また、
図23に示すように、2グループP2では第2グリッドG2を用いて、第2グリッドG2の各加工エリアEで区分けされるようにする。
【0059】
また、
図24に示すように、3グループP3では第3グリッドG3を用いて、第3グリッドG3の各加工エリアEで区分けされるようにする。また、
図25に示すように、4グループP4では第4グリッドG4を用いて、第4グリッドG4の各加工エリアEで区分けされるようする。
【0060】
そして、第4グリッドG4以降のグリッドは存在しないため、
図26に示すように、5グループP5では第1グリッドG1を用いて、第1グリッドG1の各加工エリアEで区分けされるようにする。こうして、以下同様に、
図27に示すように、6グループP6では第2グリッドG2を用いて、第2グリッドG2の各加工エリアEで区分けされるようにする。
【0061】
また、
図28に示すように、7グループP7では第3グリッドG3を用いて、第3グリッドG3の各加工エリアEで区分けされるようにする。また、
図29に示すように、8グループP8では第4グリッドG4を用いて、第4グリッドG4の各加工エリアEで区分けされるようにする。最後に、
図30に示すように、9グループP9では第1グリッドG1を用いて、第1グリッドG1の各加工エリアEで区分けされるようにする。
【0062】
このように、各グループP1〜P9を互いにX座標又はY座標にオフセットする4個のグリッドG1〜G4を用いて区分けするのは、以下の理由に基づく。仮に、
図31に示すように、1グループP1から4グループP4を第1グリッドG1のみを用いて区分けすると、1グループP1、2グループP2、3グループP3、4グループP4を順番にレーザ加工する際に、加工エリアEの境界線L1の位置が常に同じになる。この場合、加工エリアEの境界線L1の位置でレーザ加工によるダメージが蓄積され、
図40(A)(B)(C)に示すような加工模様が生じることになる。なお、
図31及び
図32では、各グループP1〜P9のうち、1グループP1から4グループP4までを代表的に示し、5グループP5から9グループP9までを省略している。
【0063】
これに対して、本実施形態では、
図32に示すように、X座標又はY座標にオフセットする4個のグリッドG1〜G4を用いて区分けするため、1グループP1、2グループP2、3グループP3、4グループを順番にレーザ加工する際に、加工エリアEの境界線L
1の位置が、X座標に5mm又はY座標に5mmずつ、ずれることになる。こうして、加工エリアEの境界線L1の位置でレーザ加工によるダメージが蓄積されなくなり、加工模様が生じることを防止できるようになっている。
【0064】
<所属エリア決定工程>
次に、所属エリア決定工程S400について説明する。
図33に示すように、各加工孔hの所属する加工エリアEを決定する。即ち、先ず、1グループP1において、
図22に示すように、各加工孔h(各hole)が、第1グリッドG1で区分けされた加工エリアEのうちどの加工エリアEに所属するかが決定される。次に、第2グループP2において、
図23に示すように、各加工孔hが第2グリッドG2で区分けされた加工エリアEのうちどの加工エリアEに所属するかが決定される。これが、9グループP9まで繰り返される。
【0065】
例えば、
図6(A)に示した加工孔haが所属する加工エリアEについて説明する。加工孔haでは、上述したように、位置情報としてイニシャルホールの座標(X0,Y0)が(−6.000,−0.500)として取得されている。そして、加工孔haは、hole1としてナンバリングされ、5グループ5Pに分散されたものとする。この場合、5グループ5Pは、
図26に示すように、第1グリッドG1で区分けされるため、hole1(加工孔ha)は、イニシャルホールの座標に基づいて、第1グリッドG1のどの加工エリアEに所属するかが決定される。
【0066】
即ち、
図34に示すように、加工孔haのイニシャルホールの座標(X0,Y0)が(−6.000,−0.500)であるため、hole1は、5グループP5において加工エリアE32に所属すると決定される。なお、第1グリッドG1は原点に対してオフセットしていないため、第1グリッドG1の加工エリアE32は、X座標が−10から0までの領域でY座標が−10から0までの領域である。こうして、hole1〜hole
60000は、各グループP1〜P9に分散された後に、所属する加工エリアEが決定される。
【0067】
<レーザ加工工程>
最後に、レーザ加工工程S500について説明する。
図35に示すように、各グループP1〜P9毎に且つ各加工エリアE毎に順番に、加工孔h(hole)の位置情報に基づいてレーザ加工を行う(S501)。即ち、先ず、1グループP1において、加工エリアE11に所属する加工孔hのレーザ加工を行い、加工エリアE12,E13,E14,E21,E22,E23,E24,E31,E32,E33,E34,E41,E42,E43,E44の順番に所属する加工孔hのレーザ加工を行う。
【0068】
次に、2グループP2において、加工エリアE11に所属する加工孔hのレーザ加工を行い、加工エリアE12,E13,E14,E21,E22,E23,E24,E31,E32,E33,E34,E41,E42,E43,E44の順番に所属する加工孔hのレーザ加工を行う。これを、9グループP9まで行う。こうして、60000個全ての加工孔hがレーザ加工によって基板Kに形成される。
【0069】
そして、ステップS501の後に、上述した初期工程S100で(
図4参照)加工エリアEに入らない加工孔として除外された加工孔が、レーザ加工によって基板Kに形成される(S502)。即ち、仮に60000個の加工孔hの他に、
図6(B)に示すような加工孔hbを含む開口パターンを形成する場合には、除外された加工孔hbは、本実施形態のレーザ加工方法が適用されずに、従来と同様のレーザ加工方法によって基板Kに形成されるようになっている。こうして、本実施形態のレーザ加工方法によって、
図5(A)に示した60000個の加工孔hを有するメタルマスクが、製造される。
【0070】
<第1実施形態の作用効果>
本実施形態によれば、
図5(A)に示した60000個の密集度が高い加工孔hを、
図8(A)〜
図16(A)に示した1グループP1から9グループP9までの各グループに密集度が低くなるように無作為且つほぼ均等に分散する。このため、各グループP1〜P9を順番にレーザ加工する際に、加工孔hの密集度が低い状態で、レーザ光を照射することができて、熱歪みによる変形を抑制できる。
【0071】
更に、各グループP1〜P9を互いにX座標又はY座標にオフセットするグリッドG1〜G4を用いて区分けするため、各グループP1〜P9を順番にレーザ加工する際に、加工エリアEの境界線L1の位置が常に同じにならず(
図31参照)、X座標又はY座標にずれる(
図32参照)。従って、加工エリアEの境界線L1の位置でレーザ加工によるダメージが蓄積されず、
図42(A)(B)(C)に示すような加工模様が生じることを防止できる。
【0072】
また、本実施形態によれば、
図22〜
図30に示すように、第1グリッドG1と、X座標にオフセットする第2グリッドG2と、X座標及びY座標にオフセットする第3グリッドG3と、Y座標にオフセットする第4グリッドG4との合計4個のグリッドGで区分けする。このため、各グループP1〜P9を順番にレーザ加工する際に、
図32に示すように、各加工エリアEの境界線L1の四辺を順番に打ち消し合うように交差させることができる。従って、合計2個又は3個のグリッドで区分けする場合に比べて、各加工エリアEの境界線L1の位置で生じるダメージを減らすことができ、加工模様が生じることをより効果的に防止できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、
図18〜
図21に示すように、互いにオフセットする4個のグリッドG1,G2,G3,G4は、正方形の加工エリアEがXY座標上に並べられたものであり、X座標にオフセットする量及びY座標にオフセットする量が、1つの加工エリアのX座標長さ(10mm)、Y座標長さ(10mm)の半分(5mm)になっている。このため、各グループP1〜P9を順番にレーザ加工する際に、
図32に示すように、各加工エリアEの境界線L1をX座標及びY座標で対称的に打ち消し合うように交差させることができる。即ち、各加工エリアEの境界線L1において、辺全体が残らず効率的に打ち消し合うように交差させることができる。従って、加工模様が生じることをより効果的に防止できる。
【0074】
ここで、製造されたメタルマスクについて詳細に説明する。従来のレーザ加工方法によって、60000個の加工孔hが形成されたメタルマスクでは、蛍光灯の下に配置すると、
図42(A)(B)(C)に示すような加工模様を肉眼で確認できた。これに対して、本実施形態のレーザ加工方法によって、60000個の加工孔hが形成されたメタルマスクでは、蛍光灯の下に配置しても、
図42(A)(B)(C)に示すような加工模様を肉眼で確認できなかった。
【0075】
そして、
図36に、本実施形態のレーザ加工方法によって製造されたメタルマスクの厚さ方向(Z方向)の変化を示す。
図36では、加工孔hが形成されてX方向長さが約7mmでありY方向長さが約6.5mmの領域が示されている。そして、1番濃い部分f1が、レーザ加工によって約+1.000〜+2.000μm変化した部分であり、2番目に濃い部分f2が、レーザ加工によって約0.000〜+1.000μm変化した部分である。また、3番目に濃い部分f3が、レーザ加工によって約0.000〜−2.000μm変化した部分であり、最も薄い部分f4が、レーザ加工によって約−2.000〜−5.000μm変化した部分である。
【0076】
従来のレーザ加工方法によって製造されたメタルマスクでは、熱歪みによる変形が約数mm単位で生じて、変形を肉眼で確認できる場合があった。これに対して、本実施形態のレーザ加工方法によって製造されたメタルマスクでは、
図36に示すように、熱歪みによる変形は多くても±5μmであり、変形を肉眼で全く確認できなかった。
【0077】
なお、出願人は、加工孔hの個数(60000個)、大きさ(径が50μm)、配置(100μmずつ離れた配置)等を同一の条件にして、グループ数Pのみを変化させた場合、グループ数Pが5以上の整数であるとき、製造されたメタルマスクで加工模様が生じないことを確認した。しかし、グループ数Pが大きくなるほど、熱歪みによる変形を抑制できるが、レーザ加工時間が多くなる。
【0078】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。第2実施形態では、基板Kに形成する開口パターンと、所属エリア決定工程と、レーザ加工工程とが第1実施形態と主に異なっている。従って、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同一部分については説明を省略する。
【0079】
第2実施形態で基板Kに形成する開口パターンは、
図37に示すように、第1実施形態と同様の60000個の加工孔hと、比較的大きな1つ丸孔である加工孔hcとを有するものである。この丸孔hcは、イニシャルホールの座標(X0,Y0)が(−1.000,16.500)であり、径が2mmのものである。
【0080】
こうして、上述した初期工程S100では(
図4参照)、60000個の加工孔hの位置情報が取得されるとともに、加工孔hcの位置情報が取得される(S101)。そして、この加工孔hcは、1つの加工エリアEに入ることができるものであり、hole60001としてナンバリングされる(S104)。
【0081】
第2実施形態では、グループ分散工程S200により(
図7参照)、hole60001(加工孔hc)が、1グループP1に入るように決定された場合を仮定して(S202)、以下に所属エリア決定工程S400Aとレーザ加工工程S500Aを説明する。なお、1グループP1は、上述したように第1グリッドG1で区分けされるグループである。
【0082】
<所属エリア決定工程>
所属エリア決定工程S400Aでは、
図38に示すように、先ず、各加工孔h,hcが、区分けされた各加工エリアEに含まれるか否かが判断される(S402)。ここで、各加工エリアEに含まれるか否かは、加工孔h,hcの全体の形状が1つの加工エリア内の領域に入るか否かによって判断される。即ち、加工孔h,hcのイニシャルホールの座標だけでなく、加工孔h,hcの外形形状の座標が、加工エリア内の領域に入るか否かが判断される。
【0083】
このため、例えば、上述した加工孔ha(
図34参照)では、その全体の形状が第1グリッドG1の加工エリアE32に含まれると判断されて、S403に進み、加工エリアE32に所属すると決定される。一方、加工孔hcでは、
図39に示すように、イニシャルホールの座標(−1.000,16.500)が加工エリアE12に入るものの、その全体の形状が加工エリアE12に入らない。従って、加工孔hcでは、第1グリッドG1で区分けされた各加工エリアEに含まれないと判断されて、S404に進み、はみ出し加工孔hcとされる。
【0084】
そして、はみ出し加工孔hc(加工孔hc)においては、全てのグリッドG1〜G4の中でどの加工エリアEに所属するかが再決定される。即ち、はみ出し加工孔hcは、第1グリッドG1で区分けされた各加工エリアEに含まれなかったため、互いにオフセットするその他のグリッドG2,G3,G4で区分けされた各加工エリアEに含まれるか否かが判断される。
【0085】
要するに、はみ出し加工孔hcは、はみ出さない加工エリアEが見つかるまで、第1グリッドG1の各加工エリアE11,・・・,E44の他に、第2グリッドG2の各加工エリアE11,・・・,E44、第3グリッドG3の各加工エリアE11,・・・,E44、第4グリッドG4の各加工エリアE11,・・・,E44に含まれるか否かが判断される。その結果、はみ出し加工孔hcでは、
図40に示すように、その全体の形状が第2グリッドG2の加工エリアE12に含まれると判断されて、第2グリッドG2の加工エリアE12に所属すると決定される(S405)。
【0086】
<レーザ加工工程>
レーザ加工工程S500Aでは、
図41に示すように、先ず、各グループP1〜P9毎に且つ各加工エリアE毎に順番に、加工孔hの位置情報に基づいてレーザ加工を行う(S503)。即ち、はみ出し加工孔hc以外の加工孔hについて、先にレーザ加工を行う。
【0087】
その後、上述したレーザ加工(S503)とは別に、各グリッドG1〜G4毎に且つ各加工エリアE毎に順番に、はみ出し加工孔hcの位置情報に基づいてレーザ加工を行う(S504)。即ち、第1グリッドG1において、加工エリアE11に所属するはみ出し加工孔があればレーザ加工を行い、加工エリアE12,E13,E14,E21,E22,E23,E24,E31,E32,E33,E34,E41,E42,E43,E44の順番に所属するはみ出し加工孔があればレーザ加工を行う。そして、第2グリッドG2、第3グリッドG3、第4グリッドG4でも、各加工エリアEに所属するはみ出し加工孔があればレーザ加工を行う。こうして、はみ出し加工孔hcは、第2グリッドG2の加工エリアE12に所属するものとして、レーザ加工によって形成される。
【0088】
最後に、初期工程S100で(
図4参照)加工エリアEに入らない加工孔として除外された加工孔が、レーザ加工によって形成される(S505)。こうして、第2実施形態のレーザ加工方法によって、
図37に示した加工孔h,hcを有するメタルマスクが、製造される。
【0089】
<第2実施形態の作用効果>
第2実施形態によれば、加工孔hcをはみ出し加工孔としてオフセットする全てのグリッドG1〜G4の中で、どの加工エリアEに所属するかを再決定する(
図38のS405)。そして、再決定されたはみ出し加工孔hcの位置情報に基づいてレーザ加工を行う。こうして、加工孔hcのように、加工エリアEを跨ぐ加工孔が存在する場合であっても、その加工孔をはみ出し加工孔として的確に形成できる。第2実施形態のその他の作用効果は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
以上、本発明に係るレーザ加工基板の製造方法、及びレーザ加工装置の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0091】
各実施形態において、加工孔hを9個のグループP1〜P9に分散させ、各グループP1〜P9を4個のグリッドG1〜G4で区分けしたが、分散させるグループの数(P)は9個に限定されるものではなく、区分けするグリッドGの個数も4個に限定されるものではない。基板Kに形成する加工孔の個数、大きさ、位置、密集度に応じて適宜変更可能であり、分散させるグループの数が例えば2〜4個であっても良く、区分けするグリッドGの個数が例えば4の倍数又は3の倍数であっても良い。
【0092】
また、各実施形態において、1つのグリッドGにつき、4×4個(4行4列)の加工エリアEが並べられているが、加工エリアEが並べられる個数は、4×4個に限定されるものではない。基板Kに形成する加工孔の個数、大きさ、位置、密集度に応じて適宜変更可能であり、加工エリアEが並べられる個数が例えば2×2個であっても良い。
【0093】
また、各実施形態において、X座標にオフセットするグリッドG同士では、オフセットする量が1つの加工エリアEのX方向長さ(10mm)の半分(5mm)であり、Y座標にオフセットするグリッドG同士では、オフセットする量が1つの加工エリアEのY方向長さ(10mm)の半分(5mm)であるが、オフセットする量は適宜変更可能である。また、加工エリアEは10mm×10mmの正方形であるが、加工エリアの形状及び大きさは適宜変更可能である。
【0094】
また、各実施形態において、レーザ加工によって製造されたレーザ加工基板は、メタルマスク(ステンシル)として用いられるものであるが、その他の用途で用いられるものであっても良い。