【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0015】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造について>
図1〜
図3は、本実施の形態の半導体装置の要部断面図であり、
図4は、本実施の形態の半導体装置の要部平面図である。
図1と
図2とは、同じ領域の断面図が示されており、いずれも
図4のA−A線の断面図に対応している。
図3は、
図1および
図2とは異なる領域の断面図が示されており、
図4のB−B線の断面図に対応している。
【0016】
但し、
図1では、半導体層SM1と半導体層EPとがそれぞれどの領域であるかが分かりやすいように、半導体層EP全体をドットのハッチングで示し、半導体層SM1全体を細線の斜線のハッチングで示しており、n
−型半導体領域EXおよびn
+型半導体領域SDの形成領域についての図示はしていない。また、
図2では、n
−型半導体領域EXとn
+型半導体領域SDとがそれぞれどの領域であるかが分かりやすいように、n
−型半導体領域EX全体に同じハッチングを付し、n
+型半導体領域SD全体に他の同じハッチングを付してある。従って、
図1と
図2とを合わせて見れば、半導体層SM1および半導体層EPの構成と、半導体層SM1および半導体層EPにおけるn
−型半導体領域EXおよびn
+型半導体領域SDの形成領域とを、理解しやすい。また、
図4は、素子分離領域STと、素子分離領域STによって規定された活性領域ARと、ゲート電極GEと、サイドウォールスペーサSW2,SW3との平面レイアウトが示されており、他の部材の図示は省略している。活性領域ARは、素子分離領域STによって規定された(平面的に囲まれた)半導体層SM1に対応している。
【0017】
図1〜
図4に示されるように、本実施の形態の半導体装置は、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を備えた半導体装置である。
【0018】
また、
図1〜
図4に示されるように、本実施の形態の半導体装置は、SOI(SOI:Silicon On Insulator)基板SUBを用いた半導体装置である。
【0019】
SOI基板SUBは、単結晶シリコンなどからなる基板(半導体基板、支持基板)SB1と、基板SB1の主面上に形成された酸化シリコンなどからなる絶縁層(埋め込み絶縁膜、埋め込み酸化膜、BOX(Buried Oxide)層)BXと、絶縁層BXの上面上に形成された単結晶シリコンなどからなる半導体層(SOI層)SM1とを有している。基板SB1は、絶縁層BXとそれよりも上の構造とを支持する支持基板である。これら基板SB1、絶縁層BXおよび半導体層SM1により、SOI基板SUBが形成されている。SOI基板SUBの主面には、MISFETが形成されている。ここでは、MISFETがnチャネル型のMISFETの場合について説明する。
【0020】
SOI基板SUBには、素子分離領域(素子分離構造)STが形成されている。この素子分離領域STは、素子分離溝(素子分離用の溝)ST1に埋め込まれた絶縁体(例えば酸化シリコン)により形成されている。素子分離溝ST1およびそれを埋めている素子分離領域STは、半導体層SM1および絶縁層BXを貫通して、その底部が基板SB1に達しており、素子分離領域STの下部は、基板SB1内に位置している。すなわち、半導体層SM1、絶縁層BXおよび基板SB1にかけて形成された素子分離溝ST1に、素子分離領域STが埋め込まれた状態となっている。このため、素子分離領域STの一部は、絶縁層BXの下面よりも下方に位置している。
【0021】
素子分離領域STは、SOI基板SUBの主面に、半導体層SM1および絶縁層BXを貫通して底部が基板SB1に達する(すなわち底部が基板SB1中に位置する)素子分離溝ST1を、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術などを用いて形成し、この素子分離溝ST1に、成膜技術およびCMP技術などを用いて絶縁膜(例えば酸化シリコン膜)を埋め込むことで、形成することができる。
【0022】
SOI基板SUBにおいて、素子分離領域STに規定された(平面的に囲まれた)活性領域ARでは、基板SB1上に絶縁層BXおよび半導体層SM1が下から順に積層された構造となっている。
【0023】
素子分離領域STに規定された(平面的に囲まれた)活性領域ARの半導体層SM1上に、ゲート絶縁膜GIを介して、ゲート電極GEが形成されている。
【0024】
ゲート電極GEは、導電膜により形成されており、例えば、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜、ドープトポリシリコン膜)のようなシリコン膜により形成することができる。ゲート電極GEをシリコン膜により形成した場合は、そのシリコン膜には不純物が導入されて低抵抗とされている。他の形態として、ゲート電極GEを、金属膜または金属伝導を示す金属化合物膜により形成することもでき、この場合、ゲート電極GEはメタルゲート電極となる。
【0025】
ゲート絶縁膜GIは、例えば薄い酸化シリコン膜からなるが、酸窒化シリコン膜とすることもできる。他の形態として、ゲート絶縁膜GIに、窒化シリコンよりも誘電率が高い高誘電率ゲート絶縁膜(例えば酸化ハフニウム膜または酸化アルミニウム膜などの金属酸化物膜)を用いることもできる。
【0026】
ゲート電極GEの下部の半導体層SM1が、MISFETのチャネルが形成される領域(チャネル形成領域)となる。
【0027】
ゲート電極GEの側壁上には、絶縁膜IL2を介して、側壁絶縁膜としてサイドウォールスペーサ(サイドウォール、側壁絶縁膜)SW2が形成されている。サイドウォールスペーサSW2は、絶縁膜からなり、側壁絶縁膜とみなすことができる。
【0028】
サイドウォールスペーサSW2は、ゲート電極GE(の側壁)には接しておらず、サイドウォールスペーサSW2とゲート電極GE(の側壁)との間には、絶縁膜IL2が介在している。また、サイドウォールスペーサSW2は、半導体層SM1には接しておらず、サイドウォールスペーサSW2と半導体層SM1との間には、絶縁膜IL2が介在している。
【0029】
半導体層SM1上には、エピタキシャル層(エピタキシャル半導体層)である半導体層EPが形成されている。半導体層EPは、半導体層SM1上にエピタキシャル成長により形成されており、例えばシリコン(単結晶シリコン)からなる。すなわち、半導体層SM1のうち、ゲート電極GEおよび絶縁膜IL2で覆われていない領域上に、半導体層EPが選択的に形成されている。半導体層EPは、ゲート電極GEの両側(ゲート長方向の両側)に形成されている。
【0030】
半導体層EPは、絶縁膜IL2から露出される部分の半導体層SM1上に形成されており、絶縁膜IL2上に半導体層EPは乗り上げていない。また、半導体層EPの形成後にサイドウォールスペーサSW2が形成されており、半導体層EP上にサイドウォールスペーサSW2の一部が乗り上げている。すなわち、サイドウォールスペーサSW2の一部が半導体層EP上に存在(位置)している。
【0031】
具体的には、サイドウォールスペーサSW2におけるゲート長方向の外端部が半導体層EPの上に位置している。ここで、サイドウォールスペーサSW2におけるゲート長方向の外端部とは、ゲート長方向(そのサイドウォールスペーサSW2が側壁に形成されているゲート電極GEのゲート長方向)に沿った(平行な)方向の端部であって、ゲート電極GEに隣接する側とは反対側の端部に対応している。換言すれば、サイドウォールスペーサSW2におけるゲート電極GEに隣接する側とは反対側の端部が、半導体層EPの上に位置している。すなわち、サイドウォールスペーサSW2において、ゲート電極GEに近い側は、半導体層EP上には位置していないが、ゲート電極GEから遠い側は、半導体層EP上に乗り上げている。別の見方をすると、半導体層EPの端部(ゲート電極GEに対向する側の端部)付近上に、サイドウォールスペーサSW2の一部が乗り上げている。
【0032】
半導体層SM1上に半導体層EPが形成され、素子分離領域ST上には半導体層EPが形成されない。このため、半導体層SM1と素子分離領域STとの境界(平面視での境界)に、半導体層EPの側壁(側面)EP1が形成される。半導体層EPの側壁(側面)EP1は、平面視で素子分離領域STに隣接する側壁(側面)である。この半導体層EPの側壁EP1上には、サイドウォールスペーサSW3が形成されている。サイドウォールスペーサSW3は、サイドウォールスペーサSW2と同工程で形成されている。このため、サイドウォールスペーサSW3とサイドウォールスペーサSW2とは、同じ絶縁膜(後述の絶縁膜IL4)により形成されたものであるため、結果的に、サイドウォールスペーサSW3とサイドウォールスペーサSW2とは、同材料の絶縁膜により形成されている。例えば、サイドウォールスペーサSW2が単層の絶縁膜からなる場合は、サイドウォールスペーサSW3も同材料の単層の絶縁膜からなり、サイドウォールスペーサSW2が積層の絶縁膜からなる場合は、サイドウォールスペーサSW3も同じ積層の絶縁膜からなる。なお、本実施の形態では、発明の理解を簡単にするため、サイドウォールスペーサSW2とサイドウォールスペーサSW3をそれぞれ区別して説明しているが、これらは一体化している膜である。つまり、
図4の素子分離領域ST上のゲート電極GEの側壁等では、サイドウォールスペーサSW2とサイドウォールスペーサSW3は繋がっている。
【0033】
半導体層EPの側壁EP1は、平面視で素子分離領域STに隣接しているため、半導体層EPの側壁EP1上に形成されたサイドウォールスペーサSW3の底面(下面)は、素子分離領域ST上に位置している。つまり、サイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁EP1上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置している。従って、サイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁EP1に対向する側面と、素子分離領域STに対向する底面とを有している。
【0034】
また、
図1等では省略しているが、ゲート長方向(
図4のA−A断面の延長線上)における半導体層EPの側壁EP1にもサイドウォールスペーサSW3は形成されている。すなわち、サイドウォールスペーサSW3は活性領域ARに形成された半導体層EPを囲むように形成されている。言い換えれば、サイドウォールスペーサSW3は、ゲート長方向およびゲート幅方向において、半導体層EPの側壁EP1に形成されている。
【0035】
ゲート電極GEの両側(ゲート長方向の両側)の半導体層SM1,EPには、MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域が形成されており、このソースまたはドレイン用の半導体領域は、n
−型半導体領域EXと、n
−型半導体領域EXよりも高不純物濃度のn
+型半導体領域SDとにより形成されている。すなわち、半導体層SM1と半導体層EPとの積層構造において、チャネル形成領域を挟んで互いに離間する領域に、(一対の)n
−型半導体領域(エクステンション領域、LDD領域)EXが形成され、n
−型半導体領域EXの外側(チャネル形成領域から離れる側)に、n
−型半導体領域EXよりも不純物濃度が高い、ソース・ドレイン用の(一対の)n
+型半導体領域SDが形成されている。ソースまたはドレイン領域用の半導体領域は、n
−型半導体領域EXとn
−型半導体領域EXよりも不純物濃度が高いn
+型半導体領域SDとを有しているため、LDD(Lightly Doped Drain)構造を備えている。
【0036】
n
−型半導体領域EXは、チャネル形成領域に隣接しており、n
+型半導体領域SDは、チャネル形成領域からn
−型半導体領域EXの分だけ離間しかつn
−型半導体領域EXに接する位置に形成されている。
【0037】
SOI基板SUBの厚み方向に見ると、n
−型半導体領域EXは、半導体層EPから半導体層SM1にかけて形成されており、n
+型半導体領域SDも、半導体層EPから半導体層SM1にかけて形成されている。
【0038】
半導体層EPには、ソースまたはドレイン用の半導体領域(n
−型半導体領域EXおよびn
+型半導体領域SDに対応)が形成されているため、半導体層EPを、ソース・ドレイン用(ソース・ドレイン形成用)の半導体層(エピタキシャル半導体層)とみなすことができる。
【0039】
n
+型半導体領域SDの上部(表層部)には、金属とn
+型半導体領域SD(を構成する半導体層EP)との反応層(化合物層)である金属シリサイド層MSが形成されている。すなわち、半導体層EPの上部に、金属と半導体層EPを構成する元素との化合物層である金属シリサイド層MSが形成されている。金属シリサイド層MSは、例えば、コバルトシリサイド層、ニッケルシリサイド層、またはニッケル白金シリサイド層などである。また、ゲート電極GEがシリコン膜からなる場合は、ゲート電極GEの上部にも金属シリサイド層MSが形成されている。
【0040】
SOI基板SUBの主面上には、ゲート電極GE、サイドウォールスペーサSW2,SW3、半導体層EPおよび金属シリサイド層MSを覆うように、層間絶縁膜として絶縁膜IL5が形成されている。絶縁膜IL5は、例えば、窒化シリコン膜とその窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜(窒化シリコン膜よりも厚い酸化シリコン膜)との積層膜、あるいは、酸化シリコン膜の単体膜などとすることができる。絶縁膜IL5用の酸化シリコン膜としては、酸化シリコンを主体とし、炭素(C)、フッ素(F)、窒素(N)、ホウ素(B)およびリン(P)のうちの一種以上を更に含有することもできる。
【0041】
絶縁膜IL5には後述のコンタクトホールCNT(ここでは図示せず)が形成され、コンタクトホールCNT内には後述のプラグPG(ここでは図示せず)が形成されているが、ここではその図示は省略する。また、絶縁膜IL5上には、後述の絶縁膜IL6(ここでは図示せず)および後述の配線M1(ここでは図示せず)が形成されているが、ここではその図示は省略する。
【0042】
<半導体装置の製造工程について>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造工程を、図面を参照して説明する。
図5は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す工程フロー図である。
図6〜
図37は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0043】
まず、
図6に示されるように、SOI基板SUBを準備する(
図5のステップS1)。
【0044】
SOI基板SUBは、支持基板として単結晶シリコンなどからなる基板SB1と、基板SB1の主面上に形成された酸化シリコンなどからなる絶縁層BXと、絶縁層BXの上面上に形成された単結晶シリコンなどからなる半導体層SM1とを有している。
【0045】
支持基板である基板SB1の厚みに比べて半導体層SM1の厚みは薄い。半導体層SM1の厚みは、例えば、3〜20nm程度とすることができる。
【0046】
SOI基板SUBは、種々の手法を用いて製造することができる。例えば、表面に酸化膜を形成した半導体基板(シリコン基板)と、もう1枚の半導体基板(シリコン基板)とを、高熱および圧力を加えることで接着して貼り合わせた後、片側のシリコン層(シリコン基板)を薄膜化することで、SOI基板SUBを形成することができる。あるいは、Si(シリコン)からなる半導体基板の主面に対して高いエネルギーでO
2(酸素)をイオン注入し、その後の熱処理でSi(シリコン)と酸素とを結合させ、半導体基板の表面よりも少し深い位置に埋込み酸化膜(BOX膜)を形成するSIMOX(Silicon Implanted Oxide)法で、SOI基板SUBを形成することができる。更に他の手法、例えばスマートカット(Smart Cut)プロセスなどを用いて、SOI基板SUBを製造することもできる。
【0047】
次に、
図7に示されるように、SOI基板SUBに素子分離領域STを形成する(
図5のステップS2)。
【0048】
素子分離領域STを形成するには、例えば、SOI基板SUB(半導体層SM1)の主面に、半導体層SM1および絶縁層BXを貫通して底部が基板SB1に達する素子分離溝ST1を、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術などを用いて形成する。素子分離溝ST1は、半導体層SM1および絶縁層BXを貫通し、素子分離溝ST1の底部が基板SB1に到達している(基板SB1の厚みの途中に素子分離溝ST1の底部が位置している)ため、素子分離溝ST1の底部では、基板SB1が露出される。それから、この素子分離溝ST1に、成膜技術およびCMP技術などを用いて絶縁膜を埋め込むことで、素子分離領域STを形成することができる。例えば、SOI基板SUBの主面上に、素子分離溝ST1を埋めるように絶縁膜を形成してから、素子分離溝ST1の外部のその絶縁膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)法などにより除去することで、素子分離溝ST1に埋め込まれた絶縁膜からなる素子分離領域STを形成することができる。素子分離領域STによって平面的に囲まれた活性領域を構成する半導体層SM1に、以下に説明するようにMISFETが形成される。
【0049】
図8および
図9は、それぞれステップS2で素子分離領域STを形成した段階におけるA−A断面図(
図8)およびB−B断面図(
図9)である。ここで、A−A断面図とは、上記
図1および
図2に相当する断面図であり、上記
図4のA−A線に相当する位置での断面図に対応するものである。また、B−B断面図とは、上記
図3に相当する断面図であり、上記
図4のB−B線に相当する位置での断面図に対応するものである。なお、
図8〜
図46は、SOI基板SUBに関しては、
図6および
図7において二点鎖線で囲まれた領域RG1の厚みの範囲(すなわちSOI基板SUBの表層部分)について図示してあり、SOI基板SUBの深さが深い領域(
図6および
図7における領域RG1よりも深い領域)については、図示を省略している。
【0050】
次に、半導体層SM1のうち、nチャネル型MISFETを形成する予定の領域における半導体層SM1に対して、p型ウエル(p型半導体領域)とするためのp型不純物(例えばホウ素)をイオン注入などにより導入する。
【0051】
次に、
図10(A−A断面図)および
図11(B−B断面図)に示されるように、SOI基板SUBの主面上に、すなわち半導体層SM1の主面上に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEを形成する(
図5のステップS3)。
【0052】
ゲート電極GEの上部には、絶縁膜IL1が形成されていることが好ましい。ゲート電極GE上に絶縁膜IL1を形成していた場合は、後述のステップS5でゲート電極GE上にエピタキシャル層が形成されるのを防止できる。一方、ゲート電極GE上に絶縁膜IL1を形成しなかった場合は、ゲート電極GEが半導体(例えばポリシリコン)で構成されていれば、後述のステップS5でゲート電極GE(の上面)上にエピタキシャル層(半導体層EPと同種の半導体材料からなるエピタキシャル半導体層)が形成され得る。ゲート電極GE(の上面)上にエピタキシャル層が形成された場合は、後述のステップS11において、ゲート電極GE上のエピタキシャル層の上部(上層部)に金属シリサイド層MSが形成されることになる。
【0053】
このステップS3(ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GE形成工程)の具体例について説明する。まず、SOI基板SUBの主面上に、すなわち半導体層SM1の主面上に、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜(後でゲート絶縁膜GIとなる絶縁膜、例えば酸化シリコン膜)を形成してから、この絶縁膜上にゲート電極GE用の導電膜(例えばポリシリコン膜)を形成し、この導電膜上に絶縁膜IL1(例えば窒化シリコン膜)を形成する。この段階では、半導体層SM1上に、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜と、ゲート電極GE用の導電膜と、絶縁膜IL1とが下から順に積層された状態となる。それから、ゲート電極GE用の導電膜と絶縁膜IL1との積層膜を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、パターニングされた導電膜(ゲート電極GE用の導電膜)からなるゲート電極GEを形成することができる。ゲート電極GEと半導体層SM1との間には、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜が残存し、これがゲート絶縁膜GIとなる。このため、ゲート電極GEは、半導体層SM1上にゲート絶縁膜GIを介して形成された状態となる。また、ゲート電極GE上には、ゲート電極GEとほぼ同じ平面形状にパターニングされた絶縁膜IL1が形成されている状態となる。すなわち、ゲート電極GEは、上部に絶縁膜IL1が積層された積層構造を有することになる。また、ゲート電極GE用の導電膜をパターニングする際に、絶縁膜IL1をハードマスクとして用いることもできる。
【0054】
また、ゲート絶縁膜GI用の絶縁膜のうち、ゲート電極GEで覆われた部分が残存してゲート絶縁膜GIとなるが、ゲート電極GEで覆われた部分以外は、ゲート電極GE用の導電膜のパターニング工程で行うドライエッチングや、あるいはそのドライエッチング後にウェットエッチングを行うことによって除去され得る。
【0055】
次に、ゲート電極GEの側壁上に、側壁絶縁膜としてサイドウォールスペーサ(サイドウォール、側壁絶縁膜)SW1を形成する(
図5のステップS4)。
【0056】
ステップS4のサイドウォールスペーサSW1形成工程は、次のようにして行うことができる。
【0057】
まず、
図12(A−A断面図)および
図13(B−B断面図)に示されるように、SOI基板SUBの主面(主面全面)上に、すなわち半導体層SM1上に、ゲート電極GEを覆うように、絶縁膜IL2を形成する。それから、SOI基板SUBの主面(主面全面)上に、すなわち絶縁膜IL2上に、絶縁膜IL3を形成する。これにより、絶縁膜IL2と絶縁膜IL2上の絶縁膜IL3との積層膜LMが、SOI基板SUBの主面上に、ゲート電極GEを覆うように、形成された状態となる。それから、
図14(A−A断面図)および
図15(B−B断面図)に示されるように、異方性エッチング技術により積層膜LM(絶縁膜IL2と絶縁膜IL3との積層膜LM)をエッチバック(エッチング、ドライエッチング、異方性エッチング)することにより、ゲート電極GEの両方の側壁上にサイドウォールスペーサSW1を形成する。このエッチバック工程では、積層膜LMの堆積膜厚の分だけ積層膜LMを異方性エッチング(エッチバック)することにより、ゲート電極GEの両方の側壁(側面)上に積層膜LMを残してサイドウォールスペーサSW1とし、他の領域の積層膜LMを除去する。これにより、ゲート電極GEの両方の側壁上に残存する積層膜LMにより、サイドウォールスペーサSW1が形成される。
【0058】
サイドウォールスペーサSW1は、絶縁膜IL2と絶縁膜IL2上の絶縁膜IL3との積層膜LMにより形成されている。具体的には、サイドウォールスペーサSW1は、半導体層SM1上からゲート電極GEの側壁上にかけてほぼ一様な厚みで連続的に延在する絶縁膜IL2と、絶縁膜IL2を介して(絶縁膜IL2の分だけ)半導体層SM1およびゲート電極GEから離間する絶縁膜IL3とで形成されている。すなわち、サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL3と半導体層SM1との間と、サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL3とゲート電極GEとの間とに、サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL2が介在している。
【0059】
絶縁膜IL2と絶縁膜IL3とは、異なる材料からなる。好ましくは、絶縁膜IL2は酸化シリコン膜からなり、絶縁膜IL3は窒化シリコン膜からなる。他の形態として、絶縁膜IL2を窒化シリコン膜とし、絶縁膜IL3を酸化シリコン膜とすることもできる。絶縁膜IL2,IL3は、例えばCVD法などにより形成することができる。
【0060】
次に、
図16(A−A断面図)および
図17(B−B断面図)に示されるように、エピタキシャル成長により、半導体層SM1上に、エピタキシャル層(エピタキシャル成長層、エピタキシャル半導体層)である半導体層EPを形成する(
図5のステップS5)。すなわち、半導体層SM1上に、半導体層EPをエピタキシャル成長させる。なお、
図16および
図17では、半導体層EPにドットのハッチングを付してある。
【0061】
ステップS5では、エピタキシャル成長により半導体層EPを形成するため、半導体層SM1の露出面(Si面)上に、エピタキシャル層(半導体層EP)が選択的に成長する。絶縁膜上には、エピタキシャル層は成長しない。このため、ステップS5では、半導体層SM1の主面(表面)のうち、ゲート電極GEおよびサイドウォールスペーサSW1で覆われていない領域(露出面)上に、エピタキシャル層(半導体層EPとなるエピタキシャル層)が選択的に成長することになる。
【0062】
このため、半導体層EPは、ゲート電極GEの両側の領域(より特定的にはゲート電極GEとその側壁上に形成されたサイドウォールスペーサSW1とからなる構造体の両側の領域)の半導体層SM1上に形成される。すなわち、半導体層SM1上において、ゲート電極GE(より特定的にはゲート電極GEとその側壁上のサイドウォールスペーサSW1とからなる構造体)の両側に、ゲート電極GE(より特定的にはゲート電極GEとその側壁上のサイドウォールスペーサSW1とからなる構造体)と隣り合うように、半導体層EPが形成される。半導体層EPは、ゲート電極GEから、サイドウォールスペーサSW1の分だけ離間して(ゲート電極GEのゲート長方向に離間して)、形成される。
【0063】
半導体層EPは、エピタキシャル成長により形成されたエピタキシャル層(エピタキシャル半導体層)であり、例えばシリコン(単結晶シリコン)からなる。半導体層EPは、半導体層SM1の露出面(すなわちゲート電極GEおよびサイドウォールスペーサSW1で覆われていない部分の半導体層SM1の上面)上に選択的にエピタキシャル成長し、サイドウォールスペーサSW1、絶縁膜IL1および素子分離領域ST上には形成されない。
【0064】
半導体層EPをエピタキシャル成長させる際には、ゲート電極GEは、上面が絶縁膜IL1で覆われ、側面(側壁)がサイドウォールスペーサSW1で覆われているため、ゲート電極GEをポリシリコン膜により形成した場合でも、ゲート電極GEの表面にエピタキシャル層が形成されるのを防止することができる。なお、他の形態として、ゲート電極GEを半導体膜(例えばポリシリコン膜)により形成しかつそのゲート電極GEの上面上にステップS5で半導体層EPと同種の半導体層をエピタキシャル成長させたい場合は、ゲート電極GE上への絶縁膜IL1の形成を省略しておけばよい。
【0065】
半導体層EPは、半導体層SM1のほぼ平坦な上面上に形成されるため、半導体層EPの上面は、半導体層SM1の上面よりも高い位置になる。このため、ステップS5で形成された半導体層EPの上面は、ゲート電極GEの直下における半導体層SM1の上面よりも高い位置になる。なお、高さをいうときは、SOI基板SUBの主面に略垂直な方向の高さに対応している。
【0066】
また、エピタキシャル層は、下地の半導体領域の不純物濃度が高いと、成長しにくくなり、成長速度が遅くなる傾向にある。後述のn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程(後述のステップS7に対応)と後述のn
+型半導体領域SD形成用のイオン注入工程(後述のステップS9に対応)とを行う前に、ステップS5で半導体層EPを形成することで、半導体層EPをエピタキシャル成長する際に、半導体層EPの下地(ここでは半導体層SM1)の不純物濃度を低くすることができる。これにより、半導体層EPを成長させやすくなり、また、半導体層EPの成長速度を高めることができる。
【0067】
また、半導体層EPの側壁(EP1,EP2)は、SOI基板SUBの主面に対して、略垂直な場合(この場合、半導体層EPの側壁と半導体層SM1の上面とのなす角度は略直角である)と、傾斜している場合(この場合、半導体層EPの側壁と半導体層SM1の上面とのなす角度は鋭角である)とがあり得る。
【0068】
なお、半導体層SM1と半導体層SM1上に形成された半導体層EPとを合わせたものを、以下では、半導体層SM2と称することとする。
【0069】
次に、
図18(A−A断面図)および
図19(B−B断面図)に示されるように、サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL3を、エッチングにより除去する(
図5のステップS6)。ステップS6のエッチングにより、サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3が除去され、サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL2が露出される。
【0070】
このステップS6では、絶縁膜IL2のエッチング速度よりも絶縁膜IL3のエッチング速度が大きく(速く)なるような条件(エッチング条件)で、エッチングを行う。換言すれば、ステップS6では、絶縁膜IL3のエッチング速度よりも絶縁膜IL2のエッチング速度が小さく(遅く)なるような条件(エッチング条件)で、エッチングを行う。つまり、ステップS6では、絶縁膜IL3よりも絶縁膜IL2がエッチングされにくいようなエッチング条件で、エッチングを行う。絶縁膜IL2と絶縁膜IL3とは異なる材料により形成されているため、絶縁膜IL2に対する絶縁膜IL3のエッチング選択比を確保することができる。
【0071】
このため、ステップS6のエッチング工程では、サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3をエッチングして除去し、サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL2をエッチングストッパ膜として機能させることができる。これにより、ステップS6では、サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL2は、除去されずに残存する。
【0072】
なお、ステップS6のエッチングの条件によっては、サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3が除去されたことで露出した絶縁膜IL2の表層部(上層部)がエッチングによって除去される場合もあるが、この場合でも、絶縁膜IL2は完全には除去されず、絶縁膜IL2を層状に残存させるように、ステップS6のエッチング条件を設定することが好ましい。つまり、ステップS6の前後で絶縁膜IL2の厚みは同じか、あるいは、ステップS6の前よりもステップS6の後の方が絶縁膜IL2の厚みは薄くなるが、ステップS6を行っても、絶縁膜IL2は層状に残存し、サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL2で覆われていた部分の半導体層SM1とゲート電極GEの側壁とが露出されないようにすることが好ましい。これにより、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3を除去しても、ゲート電極GEの側壁上から半導体層SM1上にかけて絶縁膜IL2が連続的に(層状に)延在した状態は維持される。
【0073】
また、ステップS6では、半導体層EPが、できるだけエッチングされないようにすることが好ましい。このため、ステップS6では、絶縁膜IL3のエッチング速度よりも半導体層EPのエッチング速度が小さく(遅く)なるような条件(エッチング条件)で、エッチングを行うことが好ましい。換言すれば、ステップS6では、半導体層EPのエッチング速度よりも絶縁膜IL3のエッチング速度が大きく(速く)なるような条件(エッチング条件)で、エッチングを行うことが好ましい。つまり、ステップS6では、絶縁膜IL3よりも半導体層EPがエッチングされにくいようなエッチング条件で、エッチングを行うことが好ましい。これにより、ステップS6において、サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3をエッチングにより除去するとともに、半導体層EPがエッチングされるのを抑制または防止することができる。
【0074】
従って、ステップS6では、絶縁膜IL3よりも絶縁膜IL2および半導体層EPがエッチングされにくいようなエッチング条件で、エッチングを行うことが好ましいことになる。
【0075】
ステップS6では、絶縁膜IL3を選択的にエッチングできるエッチング法を用いることが好ましく、ウェットエッチングが好ましい。窒化シリコンは、酸化シリコンやシリコンなどに対して高選択比のエッチングが可能であり、この場合、ウェットエッチングを好適に用いることができる。このため、絶縁膜IL3が窒化シリコンからなり、絶縁膜IL2が酸化シリコンからなる場合は、ウェットエッチングにより、絶縁膜IL3をエッチングして除去するとともに、絶縁膜IL2および半導体層EPのエッチングを的確に抑制または防止することができる。このため、絶縁膜IL2と絶縁膜IL3とは異なる材料からなるが、絶縁膜IL2を酸化シリコン膜とし、かつ絶縁膜IL3を窒化シリコン膜とする組み合わせを、好適に用いることができる。
【0076】
つまり、半導体層EPおよび絶縁膜IL2に対する絶縁膜IL3の高いエッチング選択比を確保できるように、絶縁膜IL2と絶縁膜IL3との各材料を選択することが好ましく、この観点で、絶縁膜IL2を酸化シリコン膜とし、かつ、絶縁膜IL3を窒化シリコン膜とすることは好適である。
【0077】
また、ゲート電極GE上の絶縁膜IL1を、絶縁膜IL3と同材料により形成しておけば、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3をエッチングにより除去するとともに、ゲート電極GE上の絶縁膜IL1もエッチングにより除去することができる。ゲート電極GE上から絶縁膜IL1を除去しておけば、後述のステップS11でゲート電極GEの上部に金属シリサイド層MSを形成することが可能になる。
【0078】
また、ステップS5でゲート電極GEおよびサイドウォールスペーサSW1で覆われていない部分の半導体層SM1上に半導体層EPを形成した後、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3を除去しているため、ステップS6後に残存する絶縁膜IL2(サイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL2)上に、半導体層SM1は乗り上げていない。すなわち、半導体層EPの側面は、絶縁膜IL2の端部に隣接(または近接)しているが、半導体層SM1上に延在する部分の絶縁膜IL2の上には、半導体層EPは形成されていない。
【0079】
また、本実施の形態では、ステップS6で、サイドウォールスペーサSW1の一部(ここでは絶縁膜IL3)を除去し、かつ、他の一部(ここでは絶縁膜IL2)を残しているが、他の形態として、ステップS6で、サイドウォールスペーサSW1の全部を除去することも可能である。両者を合わせて表現すると、ステップS6では、サイドウォールスペーサSW1の少なくとも一部を除去することになる。
【0080】
但し、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1の全部を除去する場合に比べて、ステップS6で、サイドウォールスペーサSW1の一部(ここでは絶縁膜IL3)を除去し、かつ、他の一部(ここでは絶縁膜IL2)を残した場合は、次のような利点を得られる。すなわち、半導体層SM1やゲート電極GEが露出してオーバーエッチングされるのを防止することができる。また、サイドウォールスペーサSW1のうち、ステップS6で除去されずにゲート電極GEの側壁上に残存した部分を、後述のステップS7でゲート電極GEとともにイオン注入阻止マスクとして機能させる(すなわち残存部をオフセットスペーサとして機能させる)ことができるため、n
−型半導体領域EXとゲート電極GEとのオーバーラップ量を制御することができる。ステップS6でサイドウォールスペーサSW1の一部(ここでは絶縁膜IL3)を除去し、かつ、他の一部(ここでは絶縁膜IL2)を残す場合には、サイドウォールスペーサSW1を絶縁膜IL2,IL3を有する積層膜LMで形成すれば好ましく、これにより、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1の除去部(絶縁膜IL3)と残存部(絶縁膜IL2)とを的確に設定しやすくなる。
【0081】
次に、
図20(A−A断面図)および
図21(B−B断面図)に示されるように、半導体層SM2(すなわち半導体層SM1,EP)におけるゲート電極GEの両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、n
−型半導体領域(エクステンション領域、LDD領域)EXを形成する(
図5のステップS7)。
【0082】
なお、
図20および
図21では、イオン注入を矢印で模式的に示してある。また、ステップS7のイオン注入により不純物(ドーパント)が注入された領域(すなわちn
−型半導体領域EX)が分かるように、
図20および
図21では、ステップS7のイオン注入により不純物(ドーパント)が注入された領域(すなわちn
−型半導体領域EX)全体に同じハッチングを付してある。また、後述の
図22〜
図25では、図面を見やすくするために、n
−型半導体領域EXを示すハッチングを省略し、半導体層EP全体にドットのハッチング(
図16〜
図19の半導体層EPと同じハッチング)を付し、半導体層SM1全体に斜線のハッチング(
図6〜
図19の半導体層SM1と同じハッチング)を付してある。但し、実際には、
図22〜
図25においても、
図20および
図21とほぼ同じ領域に、n
−型半導体領域EXが形成されている。
【0083】
ステップS7のイオン注入(n
−型半導体領域EXを形成するためのイオン注入)では、ゲート電極GEがマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。また、絶縁膜IL2のうち、ゲート電極GEの側壁上に延在する部分も、マスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。絶縁膜IL2のうち、半導体層SM1上に延在する部分は、厚み(SOI基板SUBの主面に略垂直な方向の厚み)が薄いため、不純物イオンは通過することができる(すなわち、イオン注入の注入エネルギーを、半導体層SM1上に延在する部分の絶縁膜IL2を注入イオンが通過できる値に設定する)。
【0084】
このため、ステップS7のイオン注入により、n
−型半導体領域EXは、半導体層SM1および半導体層EP(の積層体)において、ゲート電極GEの側壁上に延在する部分の絶縁膜IL2に対して自己整合して形成される。
【0085】
本実施の形態では、ゲート電極GEの側壁上に絶縁膜IL2が形成されている状態で、ステップS7のイオン注入を行ってn
−型半導体領域EXを形成するため、ゲート電極GEの側壁上の絶縁膜IL2は、オフセットスペーサとして機能することができる。n
−型半導体領域EXとゲート電極GEとのオーバーラップ量は、ゲート電極GEの側壁上に延在する部分の絶縁膜IL2の厚みにより、制御することができる。ここで、n
−型半導体領域EXとゲート電極GEとのオーバーラップ量とは、n
−型半導体領域EXのうち、ゲート電極GEの直下に位置する部分の寸法(ゲート長方向の寸法)に対応している。
【0086】
次に、ゲート電極GEの側壁上と半導体層EPの側壁上とに、側壁絶縁膜としてサイドウォールスペーサ(サイドウォール、側壁絶縁膜)SW2,SW3を形成する(
図5のステップS8)。
【0087】
ステップS8のサイドウォールスペーサSW2,SW3形成工程は、次のようにして行うことができる。
【0088】
まず、
図22(A−A断面図)および
図23(B−B断面図)に示されるように、SOI基板SUBの主面(主面全面)上に、ゲート電極GEおよび半導体層EPを覆うように、サイドウォールスペーサSW2,SW3形成用の絶縁膜IL4を形成する。サイドウォールスペーサSW2,SW3形成用の絶縁膜IL4は、単層の絶縁膜(単層膜)または複数層の絶縁膜(積層膜)とすることができる。単層の場合、例えば窒化シリコン膜の単層膜を用いることができ、複数層の場合、例えば酸化シリコン膜とその上の窒化シリコン膜との積層膜を用いることができる。それから、
図24(A−A断面図)および
図25(B−B断面図)に示されるように、異方性エッチング技術により、絶縁膜IL4をエッチバック(エッチング、ドライエッチング、異方性エッチング)することにより、ゲート電極GEの側壁上にサイドウォールスペーサSW2を形成するとともに、半導体層EPの側壁上にサイドウォールスペーサSW3を形成する。
【0089】
このエッチバック工程では、絶縁膜IL4の堆積膜厚の分だけ絶縁膜IL4を異方性エッチング(エッチバック)することにより、ゲート電極GEの側壁上にこの絶縁膜IL4を残してサイドウォールスペーサSW2とし、半導体層EPの側壁上にこの絶縁膜IL4を残してサイドウォールスペーサSW3とし、他の領域の絶縁膜IL4を除去する。
【0090】
ステップS8の直前の段階で、ゲート電極GEの側壁上には絶縁膜IL2が形成されていたため、ステップS8では、サイドウォールスペーサSW2は、ゲート電極GEの側壁上に絶縁膜IL2を介して形成される。すなわち、サイドウォールスペーサSW2とゲート電極GE(の側壁)との間には、絶縁膜IL2が介在している。また、サイドウォールスペーサSW2と半導体層SM1との間には、絶縁膜IL2が介在している。このため、サイドウォールスペーサSW2を形成すると、絶縁膜IL2は、半導体層SM1とサイドウォールスペーサSW2の間の領域と、ゲート電極GEとサイドウォールスペーサSW2の間の領域の、両領域にわたって延在した状態になる。また、半導体層SM2(すなわち半導体層SM1,EP)に形成されているn
−型半導体領域EXの上方にサイドウォールスペーサSW2が形成されているが、サイドウォールスペーサSW2とn
−型半導体領域EXの一部との間には、絶縁膜IL2が介在している。
【0091】
ステップS8で形成されたサイドウォールスペーサSW2は、一部が半導体層EP上に乗り上げている。すなわち、サイドウォールスペーサSW2の一部が半導体層EP上に存在している。具体的には、サイドウォールスペーサSW2におけるゲート長方向の外端部が半導体層EPの上に位置している。換言すれば、サイドウォールスペーサSW2におけるゲート電極GEに隣接する側とは反対側の端部が、半導体層EPの上に位置している。すなわち、サイドウォールスペーサSW2において、ゲート電極GEに近い側は、半導体層EP上には位置していないが、ゲート電極GEから遠い側は、半導体層EP上に乗り上げている。別の見方をすると、半導体層EPの端部(ゲート電極GEに対向する側の端部)付近上に、サイドウォールスペーサSW2の一部が乗り上げている。
【0092】
サイドウォールスペーサSW2の一部が半導体層EP上に乗り上げるようにするためには、ステップS8で形成されたサイドウォールスペーサSW2の厚みT2を、上記サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL3(すなわち上記ステップS6で除去した絶縁膜IL3)の厚みT1よりも大きく(厚く)する(すなわちT1<T2)。
【0093】
ここで、サイドウォールスペーサSW2の厚みT2は、ゲート長方向(そのサイドウォールスペーサSW2が側壁に形成されているゲート電極GEのゲート長方向に対応)に沿った方向の厚み(寸法)に対応し、
図24に示されている。サイドウォールスペーサSW2の厚みT2は、サイドウォールスペーサSW2,SW3形成用の絶縁膜IL4の成膜時の膜厚(堆積膜厚)を調整することにより、制御することができる。また、サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL3の厚みT1は、ゲート長方向(そのサイドウォールスペーサSW1が側壁に形成されているゲート電極GEのゲート長方向に対応)に沿った方向の厚み(寸法)に対応し、上記
図14に示されている。このため、厚みT2の測定方向と厚みT1の測定方向とは同じである。サイドウォールスペーサSW1を構成する絶縁膜IL3の厚みT1は、絶縁膜IL3の成膜時の膜厚(堆積膜厚)を調整することにより、制御することができる。従って、サイドウォールスペーサSW2,SW3形成用の絶縁膜IL4の成膜時の膜厚(堆積膜厚)は、絶縁膜IL3の成膜時の膜厚(堆積膜厚)よりも大きく(厚く)することが好ましい。
【0094】
また、SOI基板SUBにおいては、素子分離領域STを形成したことで、半導体層SM1は、複数の区画(すなわち活性領域)に分割され、それぞれの活性領域を構成する半導体層SM1は、素子分離領域STにより周囲を囲まれた状態となっている。そして、各活性領域を構成する半導体層SM1に、上述の工程および後述の工程によりMISFETが形成される。
【0095】
ステップS5で、半導体層EPは、半導体層SM1上に成長し、素子分離領域ST上には成長しないため、半導体層SM1と素子分離領域STとの境界(平面視での境界)に、半導体層EPの側壁(側面)EP1が形成される。半導体層EPの側壁(側面)EP1は、平面視で素子分離領域STに隣接する側壁(側面)である。そして、ステップS8では、半導体層EPの側壁EP1上に、サイドウォールスペーサSW3が形成される。半導体層EPの側壁EP1は、平面視で素子分離領域STに隣接しているため、半導体層EPの側壁EP1上に形成されたサイドウォールスペーサSW3の底面(下面)は、素子分離領域ST上に位置することになる。すなわち、サイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁EP1上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置している。つまり、サイドウォールスペーサSW3は、素子分離領域ST上に位置し、かつ半導体層EPの側壁EP1に隣接した状態となっている。このため、サイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁EP1に対向する側面と、素子分離領域STに対向する底面とを有している。
【0096】
素子分離領域STに隣接する位置に、半導体層EPの側壁EP1があり、この半導体層EPの側壁EP1上にサイドウォールスペーサSW3を形成するが、このサイドウォールスペーサSW3は、
図25のように、半導体層EPの側壁EP1上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置している。しかしながら、後述の
図39のように素子分離領域STに窪み部であるディボット(DT)が生じた場合は、そのディボット(DT)に隣接する領域では、半導体層EPの側壁EP1だけでなく、半導体層SM1の側面SM1aも露出された状態になる(これについては後で再度説明する)。この場合、半導体層EPの側壁EP1上にサイドウォールスペーサSW3を形成すると、素子分離領域STのディボット(DT)に隣接する領域では、後述の
図42のように、サイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁EP1上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置し、かつ半導体層SM1の側面SM1aも覆うことになる。半導体層SM1の側面SM1aは、サイドウォールスペーサSW3で覆われたことで、後述のステップS11での金属シリサイド層MSの形成が防止される。
【0097】
サイドウォールスペーサSW2とサイドウォールスペーサSW3とは、同じ絶縁膜IL4を用いて、同工程で形成されている。このため、サイドウォールスペーサSW2が例えば窒化シリコン膜からなる場合は、サイドウォールスペーサSW3も窒化シリコン膜からなり、サイドウォールスペーサSW2が例えば酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜からなる場合は、サイドウォールスペーサSW3も酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜からなる。
【0098】
次に、
図26(A−A断面図)および
図27(B−B断面図)に示されるように、半導体層SM2(すなわち半導体層SM1,EP)におけるゲート電極GEおよびサイドウォールスペーサSW2の両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、n
+型半導体領域SDを形成する(
図5のステップS9)。
【0099】
なお、
図26および
図27では、イオン注入を矢印で模式的に示してある。また、ステップS9のイオン注入により不純物(ドーパント)が注入された領域(すなわちn
+型半導体領域SD)が分かるように、
図26および
図27では、ステップS9のイオン注入により不純物(ドーパント)が注入された領域(すなわちn
+型半導体領域SD)全体に同じハッチングを付してある。また、
図26および
図27では、ステップS9のイオン注入では不純物(ドーパント)が注入されずに、n
−型半導体領域EXのままとなっている領域全体に他の同じハッチング(n
−型半導体領域EXを示すハッチング)を付してある。また、後述の
図28〜
図37では、図面を見やすくするために、n
−型半導体領域EXを示すハッチングと、n
+型半導体領域SDを示すハッチングとを省略してある。そして、後述の
図28〜
図37では、半導体層EP全体にドットのハッチング(
図16〜
図19、
図22〜
図25の半導体層EPと同じハッチング)を付し、半導体層SM1全体に斜線のハッチング(
図6〜
図19、
図22〜
図25の半導体層SM1と同じハッチング)を付してある。但し、実際には、
図28〜
図37においても、
図26および
図27あるいは上記
図2とほぼ同じ領域に、n
−型半導体領域EXおよびn
+型半導体領域SDが形成されている。
【0100】
ステップS9のイオン注入(n
+型半導体領域SDを形成するためのイオン注入)では、ゲート電極GEおよびサイドウォールスペーサSW2が(更にゲート電極GEとサイドウォールスペーサSW2との間の絶縁膜IL2も)、マスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。このため、ステップS9のイオン注入により、n
+型半導体領域SDは、サイドウォールスペーサSW2に対して自己整合して形成される。n
+型半導体領域SDは、n
−型半導体領域EXよりも、不純物濃度が高い。
【0101】
ステップS7のイオン注入(n
−型半導体領域EX形成用のイオン注入)では、ゲート電極GEで覆われていない部分の半導体層SM2(SM1,EP)にn型不純物が注入され、ステップS9のイオン注入(n
+型半導体領域SD形成用のイオン注入)では、ゲート電極GEおよびサイドウォールスペーサSW2で覆われない部分の半導体層SM2(SM1,EP)にn型不純物が注入される。
【0102】
ステップS8でサイドウォールスペーサSW2を形成する前に、n
−型半導体領域EXを形成するためのイオン注入(ステップS7)を行い、ステップS8でサイドウォールスペーサSW2を形成した後で、n
+型半導体領域SDを形成するためのイオン注入(ステップS9)を行っている。このため、ステップS9までを行うと、n
−型半導体領域EXは、サイドウォールスペーサSW2の直下の部分の半導体層SM2(SM1,EP)に形成されている状態となる。従って、n
−型半導体領域EXは、半導体層SM2において、チャネル形成領域(ゲート電極GEの直下に位置する部分の半導体層SM1)に隣接して形成され、n
+型半導体領域SDは、半導体層SM2において、チャネル形成領域からn
−型半導体領域EXの分だけ離間しかつn
−型半導体領域EXに接する(隣接する)位置に形成された状態となる。
【0103】
次に、n
+型半導体領域SDおよびn
−型半導体領域EXなどに導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う(
図5のステップS10)。また、イオン注入領域がアモルファス化された場合は、このステップS10の活性化アニール時に、結晶化させることができる。
【0104】
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、n
+型半導体領域SDの表面(上層部)、すなわち半導体層EPの表面(上層部)に、低抵抗の金属シリサイド層MSを形成する(
図5のステップS11)。
【0105】
ステップS11の金属シリサイド層MS形成工程は、次のようにして行うことができる。すなわち、まず、n
+型半導体領域SDの表面(具体的にはゲート電極GE、絶縁膜IL2およびサイドウォールスペーサSW2で覆われていない部分の半導体層EPの表面)を露出させる。それから、
図28(A−A断面図)および
図29(B−B断面図)に示されるように、ゲート電極GE、絶縁膜IL2、サイドウォールスペーサSW2,SW3およびn
+型半導体領域SDを覆うように、SOI基板SUBの主面(全面)上に、金属膜MEを形成する。金属膜MEは、例えばコバルト(Co)膜、ニッケル(Ni)膜、またはニッケル白金合金膜などからなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。それから、熱処理によって、金属膜MEとn
+型半導体領域SD(を構成する半導体層EP)とを反応させる。これにより、
図30(A−A断面図)および
図31(B−B断面図)に示されるように、n
+型半導体領域SDの表面(すなわち半導体層EPの表面)に、金属膜MEとn
+型半導体領域SD(を構成する半導体層EP)との反応層(金属と半導体の反応層)である金属シリサイド層MSが形成される。その後、未反応の金属膜MEは除去し、
図30(A−A断面図)および
図31(B−B断面図)は、この段階が示されている。
【0106】
半導体層EPがシリコン層でかつ金属膜MEがコバルト膜の場合は、金属シリサイド層MSはコバルトシリサイド層であり、半導体層EPがシリコン層でかつ金属膜MEがニッケル膜の場合は、金属シリサイド層MSはニッケルシリサイド層であり、半導体層EPがシリコン層でかつ金属膜MEがニッケル白金合金膜の場合は、金属シリサイド層MSはニッケル白金シリサイド層となる。金属シリサイド層MSを形成したことで、n
+型半導体領域SDの拡散抵抗やコンタクト抵抗などを低抵抗化することができる。
【0107】
n
+型半導体領域SDの表面(上層部)に金属シリサイド層MSが形成されるが、n
+型半導体領域SDの表面に形成された金属シリサイド層MSは、主として半導体層EPに形成される。また、半導体層EPの側壁EP1はサイドウォールスペーサSW3で覆われているため、半導体層EPの側壁EP1に金属シリサイド層MSが形成されるのを防止できる。
【0108】
また、ゲート電極GEをポリシリコン膜のようなシリコン膜により形成し、かつゲート電極GEの上面が露出した状態(すなわち上記絶縁膜IL1をゲート電極GE上から除去した状態)で上記金属膜MEを形成した場合には、ステップS11において、ゲート電極GEを構成するSiと金属膜MEとが反応することにより、ゲート電極GEの上部にも金属シリサイド層MSが形成される。ゲート電極GEの側壁は絶縁膜IL2およびサイドウォールスペーサSW2で覆われているため、ゲート電極GEの側壁に金属シリサイド層MSは形成されない。
【0109】
ステップS11では、半導体層EP上に、金属と半導体層EP(を構成する元素)との化合物層(反応層)である金属化合物層、ここでは金属シリサイド層MSが形成される。半導体層EPがシリコン(Si)層の場合は、半導体層EP上に金属シリサイド層MSが形成されるが、半導体層EPがSiGe(シリコンゲルマニウム)層の場合は、金属シリサイド層MSの代わりに、金属シリコンジャーマナイド層が形成され、また、半導体層EPがGe(ゲルマニウム)層の場合は、金属シリサイド層MSの代わりに、金属ジャーマナイド層が形成される。
【0110】
次に、
図32(A−A断面図)および
図33(B−B断面図)に示されるように、SOI基板SUBの主面(主面全面)上に、層間絶縁膜として絶縁膜(層間絶縁膜)IL5を形成する(
図5のステップS12)。すなわち、ゲート電極GE、半導体層EP、サイドウォールスペーサSW2,SW3および金属シリサイド層MSを覆うように、SOI基板SUBの主面上に絶縁膜IL5を形成する。
【0111】
絶縁膜IL5は、例えば、窒化シリコン膜とその窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜(窒化シリコン膜よりも厚い酸化シリコン膜)との積層膜、あるいは、酸化シリコン膜の単体膜などとすることができる。絶縁膜IL5用の酸化シリコン膜としては、酸化シリコンを主体とし、炭素(C)、フッ素(F)、窒素(N)、ホウ素(B)およびリン(P)のうちの一種以上を更に含有することもできる。
【0112】
絶縁膜IL5の形成後、必要に応じて、絶縁膜IL5の上面をCMP法で研磨するなどして絶縁膜IL5の上面の平坦性を高めることもできる。
【0113】
次に、
図34(A−A断面図)および
図35(B−B断面図)に示されるように、絶縁膜IL5上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜IL5をドライエッチングすることにより、絶縁膜IL5にコンタクトホール(貫通孔、孔)CNTを形成する。コンタクトホールCNTは、絶縁膜IL5を貫通するように形成される。
【0114】
コンタクトホールCNTは、例えば、n
+型半導体領域SDの上部(すなわち半導体層EPの上層部分に形成された金属シリサイド層MSの上部)などに形成される。半導体層EPの上部に形成されたコンタクトホールCNTの底部では、半導体層EP上の金属シリサイド層MSが露出される。
【0115】
次に、コンタクトホールCNT内に、接続用の導電体部として、タングステン(W)などからなる導電性のプラグPGを形成する(埋め込む)。プラグPGは、次のようにして形成することができる。
【0116】
プラグPGを形成するには、まず、コンタクトホールCNTの内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜IL5上に、スパッタリング法またはプラズマCVD法などによりバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜を、CVD法などによってバリア導体膜上にコンタクトホールCNTを埋めるように形成する。その後、コンタクトホールCNTの外部(絶縁膜IL5上)の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去する。これにより、絶縁膜IL5の上面が露出し、絶縁膜IL5のコンタクトホールCNT内に埋め込まれて残存するバリア導体膜および主導体膜により、プラグPGが形成される。なお、図面の簡略化のために、
図34および
図35では、プラグPGを構成するバリア導体膜と主導体膜とを一体化して示してある。
【0117】
n
+型半導体領域SDの上部(すなわち半導体層EPの上部)に形成されたコンタクトホールCNTに埋め込まれたプラグPGは、その底部でn
+型半導体領域SD(半導体層EP)の表面上の金属シリサイド層MSに接して電気的に接続される。このため、後述の配線M1からプラグPGを通じて、n
+型半導体領域SD(半導体層EP)の表面上の金属シリサイド層MSに(従って金属シリサイド層MSの下のn
+型半導体領域SDやそれと電気的に接続されたn
−型半導体領域EXに)所望の電位(ソース電位またはドレイン電位)を供給することが可能となる。
【0118】
また、図示はしないけれども、コンタクトホールCNTおよびそこに埋め込まれたプラグPGがゲート電極GEの上部にも形成された場合は、そのプラグPGは、そのプラグPGの底部でゲート電極GE(ゲート電極GE上に金属シリサイド層MSを形成した場合はその金属シリサイド層MS)に接して電気的に接続される。
【0119】
次に、
図36(A−A断面図)および
図37(B−B断面図)に示されるように、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜IL5上に、配線形成用の絶縁膜IL6を形成する。絶縁膜IL6は、単体膜(単体絶縁膜)または積層膜(積層絶縁膜)とすることができる。
【0120】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線を形成する。まず、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜IL6の所定の領域に配線溝(配線M1を埋め込むための溝)を形成した後、SOI基板SUBの主面上(すなわち配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜IL6上)にバリア導体膜(バリアメタル膜)を形成する。バリア導体膜は、例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜などを用いることができる。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜(主導体膜)を形成する。銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の銅めっき膜、シード層およびバリアメタル膜をCMP法により除去して、配線溝内に、銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。なお、図面の簡略化のために、
図36では、配線M1を構成する銅めっき膜、シード層およびバリアメタル膜を一体化して示してある。配線M1は、プラグPGに接続され、プラグPGを介して、n
+型半導体領域SDなどと電気的に接続される。このため、配線M1からプラグPGおよび金属シリサイド層MS(n
+型半導体領域SD上に形成されかつプラグPGに接する金属シリサイド層MS)を通じてn
+型半導体領域SDに所定の電圧(ソース電圧またはドレイン電圧)が印加できるようになっている。
【0121】
その後、デュアルダマシン法により2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。また、配線M1および2層目以降の配線は、ダマシン配線に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。
【0122】
また、本実施の形態では、MISFEとして、nチャネル型のMISFETを形成する場合について説明したが、導電型を逆にして、pチャネル型のMISFETを形成することもできる。また、同一のSOI基板SUBにnチャネル型のMISFETとpチャネル型のMISFETとの両方を形成することもできる。
【0123】
<本実施の形態の主要な特徴について>
本実施の形態の半導体装置は、支持基板である基板SB1と基板SB1上の絶縁層BXと絶縁層BX上の半導体層SM1とを有する基板(SOI基板SUB)を用いた半導体装置であり、半導体層SM1上にゲート絶縁膜GIを介して形成されたゲート電極GEを有している。そして、本実施の形態の半導体装置は、更に、ゲート電極GEの側壁上に形成されたサイドウォールスペーサ(側壁絶縁膜)SW2と、半導体層SM1上に形成された、ソース・ドレイン用の半導体層(エピタキシャル半導体層)EPと、半導体層EPの側壁(EP1)上に形成されたサイドウォールスペーサ(側壁絶縁膜)SW3とを有している。
【0124】
半導体層EPの側壁(EP1)上にサイドウォールスペーサ(側壁絶縁膜)SW3を形成したことで、半導体層EPの側壁(EP1)が露出したことによる不具合を防止できる。例えば、上記
図34に示すようにコンタクトホールCNTを形成する際に、マスクずれ等によってコンタクトホールCNTの位置が半導体層EPと素子分離領域STの両方に跨ってしまう場合がある。その時、コンタクトホールCNTを形成するためのエッチングによって、素子分離領域STが掘り込まれ、基板SB1にまで達してしまう恐れがある。これは、後述の
図38に示すようなディボットDTが発生していると、より深刻な問題となる。そこで、本実施の形態のように、半導体層EPの側壁(EP1)上にサイドウォールスペーサ(側壁絶縁膜)SW3を形成しておけば、サイドウォールスペーサSW3の膜厚の分だけエッチングマージンを増やすことができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0125】
また、本実施の形態では、好ましくは、ソース・ドレイン用のエピタキシャル半導体層である半導体層EPの上部に、金属と半導体層EPを構成する元素との化合物層(ここでは金属シリサイド層MS)が形成されている。
【0126】
半導体層EPの側壁(EP1)上にサイドウォールスペーサ(側壁絶縁膜)SW3を形成し、半導体層EPの上部に、金属と半導体層EPを構成する元素との化合物層(ここでは金属シリサイド層MS)を形成したことで、サイドウォールスペーサSW3で覆われた半導体層EPの側壁への金属シリサイド層MSの形成を抑制または防止することができる。このため、半導体層EPの側壁に形成された金属シリサイド層MSが絶縁層BX側に異常成長することによる不具合(例えば、異常成長した金属シリサイド層MSを通じた半導体層SM1と基板SB1との間のリークまたは短絡など)を、抑制または防止することができる。
【0127】
また、本実施の形態では、好ましくは、SOI基板SUBに形成され、半導体層SM1および絶縁層BXを貫通して底部が支持基板である基板SB1に達する素子分離領域STを有しており、サイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁EP1上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置している。
【0128】
サイドウォールスペーサSW3が、半導体層EPの側壁(EP1)上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置していることで、素子分離領域STに隣接する半導体層EPの側壁(EP1)をサイドウォールスペーサSW3で覆うことができる。このため、素子分離領域STに隣接する位置で半導体層EPの側壁(EP1)に金属シリサイド層MSが形成されてそれが絶縁層BX側に異常成長することによる不具合(例えば、異常成長した金属シリサイド層MSを通じた半導体層SM1と基板SB1との間のリークまたは短絡など)を、抑制または防止することができる。また、たとえ素子分離領域STにディボット(凹部、窪み部)が生じていたとしても、サイドウォールスペーサSW3が存在することで、ディボットによる不具合を抑制または防止することができる。例えば、素子分離領域STのディボットに隣接する位置で半導体層SM1の側面が露出しても、その露出側面を、サイドウォールスペーサSW3で覆うことができる。このため、素子分離領域STのディボットに隣接する位置で半導体層SM1の側面に金属シリサイド層MSが形成されるのを抑制または防止でき、その金属シリサイド層MSが異常成長したことで生じる半導体層SM1と基板SB1との間のリークまたは短絡などを、抑制または防止できる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0129】
また、本実施の形態では、好ましくは、サイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁(EP1)上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置し、かつ半導体層SM1の側面(SM1a)も覆っている。
【0130】
素子分離領域STにディボット(凹部、窪み部)などが生じると、そのディボットに隣接する位置で、半導体層SM1の側面(SM1a)が露出してしまう。しかしながら、半導体層EPの側壁(EP1)上に形成されたサイドウォールスペーサSW3が、素子分離領域ST上に位置し、かつ半導体層SM1の側面(SM1a)も覆っていることで、素子分離領域STに隣接する位置(ディボットに隣接する位置)において、半導体層EPの側壁(EP1)および半導体層SM1の側面(SM1a)への金属シリサイド層MSの形成を抑制または防止することができる。このため、半導体層EPの側壁(EP1)および半導体層SM1の側面(SM1a)に形成された金属シリサイド層MSが絶縁層BX側に異常成長することによる不具合(例えば、異常成長した金属シリサイド層MSを通じた半導体層SM1と基板SB1との間のリークまたは短絡など)を、抑制または防止することができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0131】
また、本実施の形態では、好ましくは、サイドウォールスペーサSW2の一部が、半導体層EP上に位置している。
【0132】
サイドウォールスペーサSW2の一部が、半導体層EP上に位置していることで、サイドウォールスペーサSW2で覆われている部分の半導体層EPの表面に金属シリサイド層MSが形成されにくくすることができる。このため、半導体層EPの表面に形成された金属シリサイド層MSが半導体層SM1中にまで成長して半導体層SM1における半導体領域の実効的な厚みが薄くなることを、抑制または防止することができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0133】
以下、本発明者が検討した検討例を参照しながら、本実施の形態の特徴について、より具体的に説明する。
【0134】
<検討例と本実施の形態について>
SOI基板を用いて半導体装置を製造する場合、SOI基板の半導体層上に、ソース・ドレイン用の半導体層をエピタキシャル成長させる。これにより、例えば、ソース・ドレイン拡散層の深さを浅くしながら抵抗低減を図ることができ、また、サリサイドプロセスで金属シリサイド層を形成するのに適した半導体層の厚みを確保することができる。このような半導体装置について、検討した。
【0135】
図38〜
図41は、本発明者が検討した第1検討例の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図42〜
図44は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。なお、
図42は、上記ステップS8でサイドウォールスペーサSW2,SW3を形成した段階(すなわち上記
図25に相当する工程段階)のB−B断面図に対応している。また、
図43は、上記ステップS11で金属膜MEを形成した段階(すなわち上記
図29に相当する工程段階)のB−B断面図に対応している。また、
図44は、上記ステップS11で金属シリサイド層MSを形成した段階(すなわち上記
図31に相当する工程段階)のB−B断面図に対応している。
【0136】
素子分離領域STを形成したSOI基板SUBにMISFETなどの半導体素子を形成する場合、種々の工程により(例えば、洗浄工程やエッチング工程などで用いる薬液などにより)、
図38に示されるように、素子分離領域STに、窪み部であるディボット(凹部、窪み部)DTが生じてしまう。素子分離領域STにおいて、半導体層SM1に隣接する領域(すなわち素子分離領域STの上面の外周部)にディボットDTが生じると、そのディボットDTに隣接する半導体層SM1の側面SM1aが露出されてしまう。半導体層SM1上に上述のように半導体層EPが形成されると、半導体層SM1とその上の半導体層EPとの積層構造において、
図39に示されるように、素子分離領域STのディボットDTに隣接する領域で、半導体層EPの側壁EP1と半導体層SM1の側面(側壁)SM1aとが露出されることになる。素子分離領域STのディボットDTに隣接する領域で、半導体層EPの側壁EP1と半導体層SM1の側面SM1aとが露出される現象は、半導体層EPの形成前に素子分離領域STにディボットDTが形成された場合だけでなく、半導体層EPの形成後に素子分離領域STにディボットDTが形成された場合にも、発生し得る。
【0137】
素子分離領域STにディボットDTが形成され、そのディボットDTに隣接する領域で、半導体層EPの側壁EP1と半導体層SM1の側面SM1aとが露出された状態のままでサリサイド工程を行った場合が
図40および
図41に示されている。この場合、
図40に示されるようにSOI基板SUBの主面上に上記金属膜MEに相当する金属膜ME101を形成すると、ディボットDTに隣接する領域で、金属膜ME101が半導体層EPの側壁EP1と半導体層SM1の側面SM1aとに接触することになる。
【0138】
この状態で、熱処理を行って金属膜ME101と半導体層EPとを反応させて上記金属シリサイド層MSに相当する金属シリサイド層MS101を形成した状態が、
図41に示されている(但し、熱処理後、金属膜ME101の未反応の部分は除去されている)。半導体層SM1の側面SM1aも金属膜ME101に接触していたことから、
図41に示されるように、半導体層EPの上面だけでなく、半導体層EPの側壁EP1および半導体層SM1の側面SM1aにおいても、金属膜ME101と半導体層SM1とが反応して金属シリサイド層MS101が形成されることになる。
【0139】
支持基板である基板SB1上に絶縁層BXを介して半導体層SM1が形成されたSOI基板SUBを用いて半導体装置を製造する場合、SOI基板SUBに形成した素子分離領域STにおけるディボットDTに起因して、基板SB1と半導体層SM1との間に短絡またはリーク(リーク電流)が生じる懸念がある。これは、絶縁層BXの厚みが薄くなるほど生じやすくなる(例えば絶縁層BXの厚みが10nm程度以下で特に顕著になる)。素子分離領域STにディボットDTが生じると、
図38や
図39に示されるように、ディボットDTに隣接する領域で半導体層SM1の側面SM1aが露出してしまい、
図40や
図41に示されるように、サリサイド工程で金属シリサイド層MS101が半導体層SM1の側面SM1aにも形成され、これが基板SB1と半導体層SM1との間に短絡またはリークが発生する要因となる。例えば、半導体層SM1の側面SM1aに形成された金属シリサイド層MS101が絶縁層BX側に異常成長するなどして、この金属シリサイド層MS101を介して、基板SB1と半導体層SM1との間に短絡またはリークが発生してしまう。これは、半導体装置の性能の低下につながる。また、半導体装置の性能の低下につながる。
【0140】
それに対して、本実施の形態では、半導体層EPの側壁EP1上にサイドウォールスペーサSW3を形成している。このため、
図39のように、素子分離領域STのディボットDTに隣接する領域で半導体層EPの側壁EP1と半導体層SM1の側面SM1aとが露出された状態になったとしても、その後、
図42に示されるように半導体層EPの側壁EP1上にサイドウォールスペーサSW3が形成されることにより、半導体層EPの側壁EP1と半導体層SM1の側面SM1aとは非露出状態となる。
【0141】
すなわち、本実施の形態では、半導体層EPの側壁EP1上にサイドウォールスペーサSW3を形成し、このサイドウォールスペーサSW3は、半導体層EPの側壁EP1上に形成され、かつ素子分離領域ST上に位置している。
図39のように素子分離領域STにディボットDTが生じた場合は、ディボットDTに隣接する領域で半導体層SM1の側面SM1aも露出された状態になるため、サイドウォールスペーサSW3を形成すると、そのサイドウォールスペーサSW3は、
図42のように、半導体層EPの側壁EP1上に形成されかつ素子分離領域ST上に位置し、かつ半導体層SM1の側面SM1aも覆うことになる。
【0142】
このため、本実施の形態では、サイドウォールスペーサSW3を形成した後、
図43に示されるようにサリサイド工程で金属膜MEを形成したときに、金属膜MEが半導体層EPの側壁EP1と半導体層SM1の側面SM1aとに接触するのを防止することができる。特に、金属膜MEが半導体層SM1の側面SM1aに接触するのを防止することができる。すなわち、ディボットDTに隣接する領域において、半導体層EPの側壁EP1上に形成されたサイドウォールスペーサSW3が半導体層SM1の側面SM1aも覆うことで、半導体層SM1の側面SM1aと金属膜MEとの間には、サイドウォールスペーサSW3が介在し、それによって、半導体層SM1の側面SM1aが金属膜MEに接触するのを防ぐことができる。
【0143】
このため、本実施の形態では、熱処理を行って金属膜MEと半導体層EPとを反応させることにより金属シリサイド層MSを形成すると、
図44に示されるように、半導体層EPの上面に金属シリサイド層MSは形成されるが、半導体層EPの側壁EP1および半導体層SM1の側面SM1aにおいては、金属膜MEに接していなかったことで、金属シリサイド層MSの形成を防止できる。特に、半導体層SM1の側面SM1aに金属シリサイド層MSが形成されるのを防止することができる。なお、
図44では、熱処理後、金属膜MEの未反応の部分が除去された段階が示されている。
【0144】
従って、本実施の形態では、SOI基板SUBに形成した素子分離領域STにディボットDTが生じたとしても、そのディボットDTに起因して基板SB1と半導体層SM1との間に短絡またはリーク(リーク電流)が生じるのを、抑制または防止することができる。すなわち、素子分離領域STにディボットDTが生じることで、
図39に示されるように、ディボットDTに隣接する領域で半導体層SM1の側面SM1aが露出したとしても、
図42に示されるように、半導体層EPの側壁EP1に形成したサイドウォールスペーサSW3が半導体層SM1の側面SM1aも覆うことになる。このため、
図43および
図44に示されるように、サリサイド工程で金属シリサイド層MSを形成しても、半導体層SM1の側面SM1aには金属シリサイド層MSが形成されないようにすることができるため、金属シリサイド層MSを介して基板SB1と半導体層SM1との間に短絡またはリークが発生してしまうのを、抑制または防止できる。また、たとえ金属シリサイド層MSに異常成長が生じるとしても、半導体層SM1の側面SM1aには金属シリサイド層MSが形成されていないため、半導体層SM1の側面SM1aに形成された金属シリサイド層MSが絶縁層BX側に異常成長する現象は発生せず、異常成長した金属シリサイド層MSを介して基板SB1と半導体層SM1との間に短絡またはリークが発生するのを防止できる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0145】
また、本実施の形態では、素子分離領域STのディボットDT以外の要因で半導体層SM1の側面SM1aが露出した場合でも、その半導体層SM1の露出した側面SM1aをサイドウォールスペーサSW3で覆うことができる。これにより、半導体層SM1の側面SM1aへの金属シリサイド層MSの形成を防止でき、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0146】
図45および
図46は、本発明者が検討した第2検討例の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0147】
第2検討例では、
図45に示されるように、ゲート電極GEの側壁上にサイドウォールスペーサSW1を形成した状態で、ソース・ドレイン用の半導体層EPを形成する。その後、第2検討例では、本実施の形態とは異なり、サイドウォールスペーサSW1を除去せず、かつ上記サイドウォールスペーサSW2を形成せずに、
図46に示されるように、サリサイド工程を行って半導体層EPの上部に金属シリサイド層MS201(上記金属シリサイド層MSに相当)を形成している。
【0148】
このため、
図45および
図46の第2検討例では、ゲート電極GEの側壁上に形成してあるサイドウォールスペーサSW1は、半導体層EP上に乗り上げておらず、この状態で金属シリサイド層MS201が形成されているため、金属シリサイド層MSは、半導体層EPの上面だけでなく、半導体層EPにおける半導体層EPのゲート電極GE側の側面(側壁)EP2にも形成されやすくなる。ここで、半導体層EPの側面EP2は、ゲート電極GEに対向する側(従って半導体層EPを成長させた段階でサイドウォールスペーサSW1に対向する側)の側面(側壁)に対応している。
【0149】
半導体層EPの側面EP2に金属シリサイド層MS201が形成される場合には、半導体層EPの側面EP2に形成された金属シリサイド層MS201が半導体層SM1側に異常成長するなどして、半導体層SM1における半導体領域の実効的な厚みが薄くなる領域が発生してしまう虞がある。例えば、
図46に示される領域RG2では、半導体層EPの側面EP2に形成された金属シリサイド層MS201が半導体層SM1中にまで成長していることで、半導体層SM1の実効的な厚みが薄くなっている。これは、電流経路が狭くなって抵抗成分(寄生抵抗)を増加させるため、半導体装置の性能を低下させる虞がある。このため、半導体装置の更なる性能向上を図るには、半導体層EPの側面EP2への金属シリサイド層MS201の形成を抑制または防止することが望まれる。
【0150】
それに対して、本実施の形態では、サイドウォールスペーサSW2の一部が、半導体層EP上に位置している(乗り上げている)。サリサイド工程で金属シリサイド層MSを形成する際に、半導体層EPの表面のうち、サイドウォールスペーサSW2で覆われずに露出されていた部分は、上記金属膜MEに接することで、金属シリサイド層MSを形成することができる。一方、半導体層EPの表面のうち、サイドウォールスペーサSW2で覆われている部分は、上記金属膜MEに接しないため、金属シリサイド層MSが形成されにくい。このため、本実施の形態のように、サイドウォールスペーサSW2の一部が半導体層EP上に乗り上げることで、サイドウォールスペーサSW2で覆われている部分の半導体層EPの表面には金属シリサイド層MSが形成されにくくなり、半導体層EPの側面EP2(特に側面EP2の下部)に金属シリサイド層MSが形成されにくくなる。これにより、半導体層EPの側面EP2に金属シリサイド層MSが形成されて半導体層SM1中にまで成長することを、抑制または防止することができる。従って、半導体層SM1における半導体領域の実効的な厚みが薄くなることを抑制または防止することができる。このため、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0151】
また、上記
図45および
図46(第2検討例)を参照して説明した課題は、半導体層EPの側面EP2が傾斜している場合(この場合、半導体層EPの側面EP2と半導体層SM1の上面とのなす角は鋭角となる)に、より発生しやすい。このため、半導体層EPの側面EP2が傾斜している場合に、本実施の形態のようにサイドウォールスペーサSW2の一部が、半導体層EP上に位置している(乗り上げている)ことを適用すれば、その効果は大きい。また、上記
図40および
図41(第1検討例)を参照して説明した課題は、半導体層EPの側壁EP1がSOI基板SUBの主面に対して略垂直な場合と、半導体層EPの側壁EP1が傾斜している場合との両方で生じ得る。このため、本実施の形態のように半導体層EPの側壁EP1上にサイドウォールスペーサSW3を形成することは、半導体層EPの側壁EP1がSOI基板SUBの主面に対して略垂直な場合と、半導体層EPの側壁EP1が傾斜している場合とのいずれに適用しても、その効果が得られる。
【0152】
また、本実施の形態では、サイドウォールスペーサSW2の一部が半導体層EP上に位置している(乗り上げている)状態で、n
+型半導体領域SD形成用のイオン注入(ステップS9に対応)を行っている。このため、たとえ半導体層EPの側面EP2が傾斜している場合でも、側面EP2の傾斜により半導体層EPの厚みが薄くなっている部分をサイドウォールスペーサSW2で覆うことができ、そこにn
+型半導体領域SD形成用のイオン注入で注入されにくくすることができる。ソース・ドレイン用のイオン注入(n
+型半導体領域SD形成用のイオン注入に対応)は高ドーズ量であり、イオン注入される半導体層に、厚みが薄い領域があると、そこが注入ダメージで強固にアモルファス化する虞がある。それに対して、本実施の形態では、サイドウォールスペーサSW2の一部が半導体層EP上に位置している(乗り上げている)ことで、半導体層EPの厚みが薄くなっている部分をサイドウォールスペーサSW2で覆うことができ、そこがn
+型半導体領域SD形成用のイオン注入(ステップS9に対応)で注入ダメージを受けてアモルファス化するのを抑制または防止することができる。
【0153】
また、本実施の形態では、サイドウォールスペーサSW2の一部が半導体層EP上に位置している(乗り上げている)。このため、半導体層EPの側面EP2がSOI基板SUBの主面に対して略垂直な場合は、サイドウォールスペーサSW2の一部が側面EP2を越えて半導体層EPの上面上に位置している(乗り上げている)。すなわち、サイドウォールスペーサSW2におけるゲート長方向の外端部が、半導体層EPの上面上に位置している。一方、半導体層EPの側面EP2が傾斜している場合は、サイドウォールスペーサSW2におけるゲート長方向の外端部は、半導体層EPの側面EP2上に位置しているか、あるいは、側面EP2を越えて半導体層EPの上面上に位置している(この場合側面EP2全体がサイドウォールスペーサSW2で覆われる)が、後者がより好ましく、これにより、上述した効果を高めることができる。
【0154】
また、本実施の形態では、ステップS8でゲート電極GEの側壁上にサイドウォールスペーサSW2を形成するとともに、半導体層EPの側壁(EP1)上にサイドウォールスペーサSW3を形成している。サイドウォールスペーサSW2とサイドウォールスペーサSW3とを同じ絶縁膜(IL4)を用いて同工程で形成しているため、半導体装置の製造工程数を抑制することができる。
【0155】
また、本実施の形態では、ステップS4でゲート電極GEの側壁上にサイドウォールスペーサSW1を形成してから、ステップS5で半導体層EPを形成する。その後、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1の少なくとも一部(ここではサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3)を除去してから、ステップS8でゲート電極GEの側壁上にサイドウォールスペーサSW2を形成している。
【0156】
本実施の形態とは異なり、サイドウォールスペーサSW1を形成していない状態で半導体層EPを形成した場合には、半導体層EPがゲート電極GEに近接し、半導体層EPとゲート電極GEとの間にリーク電流が生じたり、あるいは半導体層EPとゲート電極GEとが接触して短絡する虞がある。
【0157】
それに対して、本実施の形態では、ステップS4でゲート電極GEの側壁上にサイドウォールスペーサSW1を形成してから、ステップS5で半導体層EPを形成しているため、半導体層EPの形成位置を、ゲート電極GEからゲート長方向に、サイドウォールスペーサSW1の厚み(ゲート長方向の厚み)の分だけ、離間させることができる。このため、半導体層EPとゲート電極GEとの間にリーク電流が生じたり、半導体層EPとゲート電極GEとが接触して短絡するのを、的確に防止することができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0158】
また、本実施の形態とは異なり、半導体層EPを形成した後、サイドウォールスペーサSW1を全く除去せずに、サイドウォールスペーサSW2形成工程を行った場合には、n
+型半導体領域SDの形成位置や金属シリサイド層MSの形成位置が、サイドウォールスペーサSW1の厚みとサイドウォールスペーサSW2の厚みの合計の分、ゲート電極GEから(ゲート長方向に)離れることになる。この場合、n
+型半導体領域SDや金属シリサイド層MSの形成位置が、チャネル形成領域から遠くなり過ぎる虞がある。
【0159】
それに対して、本実施の形態では、半導体層EPを形成した後、サイドウォールスペーサSW1の少なくとも一部(ここではサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3)を除去してから、サイドウォールスペーサSW2形成工程を行っている。このため、n
+型半導体領域SDや金属シリサイド層MSの形成位置が、チャネル形成領域から遠くなり過ぎないようにし、形成位置を最適化することができる。つまり、本実施の形態では、サイドウォールスペーサSW1の厚み(ゲート長方向の厚み)により、半導体層EPの形成位置を最適な位置に制御することができ、このサイドウォールスペーサSW1の厚みに影響されずに、サイドウォールスペーサSW2の厚み(ゲート長方向の厚み)により、n
+型半導体領域SDや金属シリサイド層MSの形成位置を最適な位置に制御することができる。このため、半導体層EPの形成位置と、n
+型半導体領域SDや金属シリサイド層MSの形成位置とを、それぞれ最適化することができる。
【0160】
また、本実施の形態では、ステップS7のn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程は、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1の少なくとも一部(ここではサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3)を除去した後で、かつ、ステップS8でサイドウォールスペーサSW2を形成する前に行っている。他の形態として、ステップS3でゲート電極GEを形成した後で、かつ、ステップS4でサイドウォールスペーサSW1を形成する前に、ステップS7に相当するn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程を行うこともできる。この場合、ゲート電極GEがマスク(イオン注入阻止マスク)として機能し、半導体層SM1におけるゲート電極GEの両側の領域に、n型不純物がイオン注入されてn
−型半導体領域EXが形成される。
【0161】
但し、ステップS4でサイドウォールスペーサSW1を形成する前にn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程を行う場合に比べて、ステップS6とステップS8との間にステップS7(n
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程)を行う本実施の形態の場合は、次のような利点を有している。すなわち、エピタキシャル層は、下地の半導体領域の不純物濃度が高いと、成長しにくくなり、成長速度が遅くなる傾向にある。本実施の形態では、ステップS4でサイドウォールスペーサSW1を形成する前にn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程を行うのではなく、ステップS5で半導体層EPを形成した後に、ステップS7でn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程を行っている。このため、n
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程を行っていない状態の半導体層SM1上にステップS5で半導体層EPをエピタキシャル成長させることができる。このため、ステップS5で半導体層EPをエピタキシャル成長させる際の、半導体層EPの下地の半導体層SM1の不純物濃度を低くすることができるため、半導体層EPを成長させやすく、半導体層EPの成長速度を高めることができる。これにより、半導体層EPをより的確に形成することができ、半導体装置の性能をより向上させることができる。また、半導体層EP形成工程に要する時間を短縮でき、半導体装置のスループットを向上させることができる。
【0162】
また、本実施の形態とは異なり、半導体層EPを形成した後、サイドウォールスペーサSW1を全く除去せずに、サイドウォールスペーサSW2形成工程を行う場合には、ゲート電極GEの側壁上にサイドウォールスペーサSW1が形成されている状態でn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程を行うことになる。この場合、サイドウォールスペーサSW1がマスク(イオン注入阻止マスク)として機能するため、チャネル形成領域に隣接する位置にn
−型半導体領域EXを形成しづらくなる。
【0163】
それに対して、本実施の形態では、半導体層EPを形成した後、サイドウォールスペーサSW1の少なくとも一部(ここではサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3)を除去してから、サイドウォールスペーサSW2形成工程を行っている。このため、サイドウォールスペーサSW1の少なくとも一部(ここではサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3)が除去された状態で、ステップS7のn
−型半導体領域EX形成用のイオン注入工程を行うことができる。このため、チャネル形成領域に隣接する位置にn
−型半導体領域EXを的確に形成することができる。また、n
−型半導体領域EXとゲート電極GEとのオーバーラップ量は、ステップS6でサイドウォールスペーサSW1の少なくとも一部(ここではサイドウォールスペーサSW1を構成していた絶縁膜IL3)を除去した際の、残存部の厚み(ここではステップS6後にゲート電極GEの側壁上に残存する絶縁膜IL2の厚み)により、制御することができる。
【0164】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。