特許第5944269号(P5944269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944269
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20160621BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20160621BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20160621BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20160621BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H02J3/38 130
   H02J13/00 311R
   H02J3/00 170
   H02J7/35 B
   H02J7/35 K
   H01M10/44 P
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-188244(P2012-188244)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-45636(P2014-45636A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−130638(JP,A)
【文献】 特開2011−61992(JP,A)
【文献】 特開2009−268247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H01M 10/44
H02J 3/00 − 5/00
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家の元にそれぞれ設けられた太陽光発電部において発電された電力及び商用電源からの電力を当該需要家の元に設けられた負荷へと供給可能であると共に、前記太陽光発電部からの余剰電力を前記商用電源へと逆潮流させることが可能な電力供給システムであって、
各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部が受ける日射量をそれぞれ検出する日射量検出部と、
各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの出力電圧をそれぞれ検出する第一電圧検出部と、
各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの出力電流をそれぞれ検出する電流検出部と、
前記商用電源から各需要家への供給電圧をそれぞれ検出する第二電圧検出部と、
各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの電力を充放電可能な蓄電装置と、
各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部が受ける日射量に基づいて、当該太陽光発電部において発電されると予測される予測電力をそれぞれ算出し、
前記複数の需要家のうち少なくとも1つの需要家において、
前記太陽光発電部からの出力電圧及び出力電流に基づいて算出される前記太陽光発電部からの出力電力が前記予測電力よりも小さく、
かつ、
前記商用電源からの供給電圧が前記太陽光発電部からの出力電圧よりも大きい場合、
各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの出力電力を前記蓄電装置に充電させる制御手段と、
を具備することを特徴とする、
電力供給システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記蓄電装置に充電された電力を夜間に各需要家に設けられた負荷へと放電することを特徴とする、
請求項1に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の需要家の元にそれぞれ設けられた太陽光発電部において発電された電力及び商用電源からの電力を当該需要家の元に設けられた負荷へと供給可能であると共に、前記太陽光発電部からの余剰電力を前記商用電源へと逆潮流させることが可能な電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の需要家の元にそれぞれ設けられた太陽光発電部において発電された電力及び商用電源からの電力を当該需要家の元に設けられた負荷へと供給可能であると共に、前記太陽光発電部からの余剰電力を前記商用電源へと逆潮流させることを可能とした電力供給システムの技術は公知となっている。
【0003】
従来の電力供給システムにおいて、商用電源から太陽光発電部を有する需要家の住宅等へと供給される電力の電圧(配電線の電圧)は所定の変動幅内に収まるように調節されている。
【0004】
需要家の住宅に設けられた負荷によって多くの電力が消費される場合(例えば、需要家(居住者)が帰宅している夜間の時間帯等)には、商用電源からの電力の電圧は低下する傾向にある。
【0005】
一方、需要家の住宅に設けられた負荷がほとんど電力を消費しない場合(例えば、需要家が外出している昼間の時間帯等)には、商用電源からの電力の電圧はほとんど低下しない。
【0006】
これに加えて、負荷がほとんど電力を消費しない昼間の時間帯には、太陽光を利用して太陽光発電部において多くの電力が発電される。当該発電された電力も負荷によって消費されることはほとんどないため、余った電力(余剰電力)は商用電源へと逆潮流され、電力会社へと売却(売電)される。
【0007】
この余剰電力が商用電源へと逆潮流される場合、通常の電力の供給方向(商用電源から需要家側へ向かう方向)とは逆方向に電力を供給するために、需要家側の電圧が高くなるように調節される。すると、もともと商用電源からの電力の電圧がほとんど低下していない上に、さらに複数の需要家側から電圧が上げられるため、配電線の電圧が前述の所定の変動幅を超えて上昇してしまうおそれがある。
【0008】
これを防止するために、従来の電力供給システムでは、配電線の電圧が所定の変動幅を超えるおそれがあると判断した場合、太陽光発電部による発電量を抑制(減少)する制御が行われる。これによって、配電線の電圧を所定の変動幅内に収まるように調節することができる。しかし、このような太陽光発電部による発電量をあえて抑制する制御を行うと、本来発電できるはずの電力を無駄にすることになる。
【0009】
そこで、従来の電力供給システムのような電力の無駄を無くすための技術が公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0010】
特許文献1に記載の技術は、発電部(太陽光発電部)において発電される電力や負荷において消費される電力の予測値等から、余剰電力が発生する時間帯と当該余剰電力の電力量の予測値を算出し、当該余剰電力が発生する時間帯に負荷を起動させるものである。
【0011】
このように構成することによって、従来であれば逆潮流させるはずの余剰電力を負荷によって有効利用することができると共に、前述のような太陽光発電部による発電量を抑制する制御の実行を防止することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、余剰電力が発生する時間帯に負荷を起動させることで当該余剰電力を消費させているため、当該時間帯には本来必要のない負荷にまで余剰電力を供給してしまう場合があり、当該余剰電力の有効利用が十分になされないおそれがある点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012−95483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、太陽光発電部において発電された余剰電力を有効利用することが可能な電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
即ち、請求項1においては、複数の需要家の元にそれぞれ設けられた太陽光発電部において発電された電力及び商用電源からの電力を当該需要家の元に設けられた負荷へと供給可能であると共に、前記太陽光発電部からの余剰電力を前記商用電源へと逆潮流させることが可能な電力供給システムであって、各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部が受ける日射量をそれぞれ検出する日射量検出部と、各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの出力電圧をそれぞれ検出する第一電圧検出部と、各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの出力電流をそれぞれ検出する電流検出部と、前記商用電源から各需要家への供給電圧をそれぞれ検出する第二電圧検出部と、各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの電力を充放電可能な蓄電装置と、各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部が受ける日射量に基づいて、当該太陽光発電部において発電されると予測される予測電力をそれぞれ算出し、前記複数の需要家のうち少なくとも1つの需要家において、前記太陽光発電部からの出力電圧及び出力電流に基づいて算出される前記太陽光発電部からの出力電力が前記予測電力よりも小さく、かつ、前記商用電源からの供給電圧が前記太陽光発電部からの出力電圧よりも大きい場合、各需要家の元に設けられた前記太陽光発電部からの出力電力を前記蓄電装置に充電させる制御手段と、を具備するものである。
【0017】
請求項2においては、前記制御手段は、前記蓄電装置に充電された電力を夜間に各需要家に設けられた負荷へと放電するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、太陽光発電部において発電された余剰電力を有効利用することができる。
【0020】
請求項2においては、蓄電装置に充電された電力を夜間に放電することで当該電力を有効利用すると共に、電力を充電するための当該蓄電装置の空き容量を再度確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る電力供給システムの全体的な構成を示したブロック図。
図2】1つの住宅における電力供給システムの構成を示したブロック図。
図3】電力供給システムによる余剰電力を有効利用するための制御の様子を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1の構成について説明する。
【0023】
電力供給システム1は、複数の需要家の元で太陽光を利用して発電された電力及び商用電源200からの電力を当該需要家の元に設けられた負荷へと供給可能であると共に、太陽光を利用して発電された電力のうち余剰電力を商用電源200へと逆潮流させることが可能なものである。電力供給システム1は、主として太陽光発電部10、パワーコンディショナ20、負荷40、日射量センサ50、第一電圧センサ60、第二電圧センサ70、電流センサ80、ホームサーバ90、蓄電装置100、インバータ110及びセンターサーバ120を具備する。
【0024】
なお、図1に示すように、電力会社の商用電源200からの電力は、図示せぬ変圧器を介して複数の需要家の住宅H・H・・・へと供給可能とされている。また、図2に示すように、電力供給システム1を構成する太陽光発電部10、パワーコンディショナ20、負荷40、日射量センサ50、第一電圧センサ60、第二電圧センサ70、電流センサ80、ホームサーバ90及びインバータ120は、各住宅Hに設けられている。よって以下では、これらの構成部材についての説明は、図2に示すように1つの住宅Hに着目して行うものとし、他の住宅H・H・・・の構成も同様であるものとする。
【0025】
図1及び図2に示す太陽光発電部10は、太陽光を利用して発電する装置であり、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部10は、例えば、住宅Hの屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。
【0026】
図2に示すパワーコンディショナ20は、太陽光発電部10において発電された直流電力を交流電力に変換し、商用電源200の電圧、周波数、位相に合わせる機能を有するものである。パワーコンディショナ20は、太陽光発電部10に接続される。
【0027】
負荷40は、住宅H内において電力が消費される電化製品等が接続される回路である。具体的には、例えば、住宅H内に設けられるコンセントや照明、エアコン、冷蔵庫等に電力を供給する回路である。図2においては負荷40を1つ図示しているが、実際には負荷40(回路)は複数設けることが可能である。
【0028】
日射量センサ50は、本発明に係る日射量検出部の実施の一形態であり、日射量を測定するものである。日射量センサ50は、太陽光発電部10の近傍(太陽光発電部10と同様に日当たりの良い場所)に設置される。
【0029】
第一電圧センサ60は、本発明に係る第一電圧検出部の実施の一形態であり、回路の所定位置における電圧を測定するものである。第一電圧センサ60は、パワーコンディショナ20の出力側に設けられ、当該パワーコンディショナ20からの電圧、すなわち太陽光発電部10からの電圧(出力電圧)Vtを測定することができる。
【0030】
第二電圧センサ70は、本発明に係る第二電圧検出部の実施の一形態であり、回路の所定位置における電圧を測定するものである。第二電圧センサ70は、商用電源200の供給側(商用電源200から需要家の住宅Hへと電力を供給する配電線)に設けられ、当該商用電源200からの電圧(供給電圧)Vsを測定することができる。
【0031】
電流センサ80は、本発明に係る電流検出部の実施の一形態であり、回路を流れる電流を測定するものである。電流センサ80は、パワーコンディショナ20の出力側に設けられ、当該パワーコンディショナ20からの電流、すなわち太陽光発電部10からの電流(出力電流)を測定することができる。
【0032】
図1及び図2に示すホームサーバ90は、本発明に係る制御手段の実施の一形態であり、電力供給システム1内の情報を管理すると共に、各機器の運転を制御するものである。ホームサーバ90は、RAMやROM等の記憶部、CPU等の演算処理部等により構成される。
【0033】
ホームサーバ90は日射量センサ50に接続され、当該日射量センサ50により測定された日射量の情報を受信することができる。
ホームサーバ90は第一電圧センサ60に接続され、当該第一電圧センサ60により測定された出力電圧Vtの情報を受信することができる。
ホームサーバ90は第二電圧センサ70に接続され、当該第二電圧センサ70により測定された供給電圧Vsの情報を受信することができる。
ホームサーバ90は電流センサ80に接続され、当該電流センサ80により測定された前記出力電流の情報を受信することができる。
【0034】
また、ホームサーバ90は、第一電圧センサ60により測定された出力電圧Vt、及び電流センサ80により測定された前記出力電流に基づいて、パワーコンディショナ20からの電力、すなわち太陽光発電部10からの電力(出力電力)Ptを測定(算出)することができる。
【0035】
蓄電装置100は、電力を充電すること、及び当該充電した電力を放電することが可能なものである。本実施形態に係る蓄電装置100は、電力を充放電可能なリチウムイオン電池やニッケル水素電池等からなる蓄電池、及び供給されてくる交流電力を整流して前記蓄電池に充電させる充電器等を具備する。蓄電装置100の電力の入力側は、各住宅Hに設けられるパワーコンディショナ20及び商用電源200に接続される。蓄電装置100の電力の出力側は、後述する各住宅Hに設けられるインバータ110に接続される。
【0036】
インバータ110は、蓄電装置100からの直流電力を交流電力に変換して放電することが可能なものである。インバータ110の電力の入力側は、蓄電装置100の電力の出力側と接続される。インバータ110の電力の出力側は、負荷40に接続される。
【0037】
図1に示すセンターサーバ120は、本発明に係る制御手段の実施の一形態であり、電力供給システム1内の情報を管理すると共に、各機器の運転を制御するものである。ホームサーバ90は、RAMやROM等の記憶部、CPU等の演算処理部等により構成される。
【0038】
センターサーバ120は各住宅H・H・・・に設けられたホームサーバ90・90・・・にそれぞれ接続され、各住宅H・H・・・に関する各種の情報を受信することができる。
センターサーバ120は蓄電装置100に接続され、当該蓄電装置100の運転を制御することができる。
センターサーバ120は各住宅H・H・・・に設けられたインバータ110・110・・・にそれぞれ接続され、当該インバータ110・110・・・の運転を制御することができる。
【0039】
以下では、図1及び図2を用いて、上述の如く構成された電力供給システム1における電力の供給態様の概略について、1つの住宅Hに着目して説明する。
【0040】
太陽光発電部10において発電された直流電力は、パワーコンディショナ20において交流電力に変換され、負荷40に供給可能とされる。また、商用電源200からの交流電力も負荷40に供給可能とされる。すなわち、需要家は、太陽光発電部10及び商用電源200からの電力によって、照明を点灯させたり、エアコンを使用したりすることができる。
【0041】
この場合において、負荷40で消費する電力が太陽光発電部10からの電力だけで十分まかなえる場合は、商用電源200からの電力を用いないようにすることも可能である。これによって、電力料金を節約することができる。
【0042】
次に、上述の如く構成された電力供給システム1において発生する逆潮流の概略について説明する。
【0043】
上述の如く、負荷40で消費する電力が太陽光発電部10からの電力だけで十分まかなえる場合は、商用電源200からの電力を用いることなく太陽光発電部10からの電力だけを負荷40に供給する。
【0044】
負荷40で消費する電力が太陽光発電部10からの電力だけで十分まかなえる場合の具体例としては、需要家(住宅Hの居住者)が外出している昼間の時間帯等がある。
【0045】
このような昼間の時間帯(特に晴天時)には、太陽光発電部10が太陽の光を十分に受けて大量の電力を発電する一方、居住者は住宅Hから外出していることが多いため負荷40が用いられることが少なく、太陽光発電部10からの電力をあまり消費することがない。従って、太陽光発電部10において発電された電力が負荷40で消費しきれずに余ってしまう場合がある。
【0046】
この余った電力(余剰電力)は、配電線を介して商用電源200に供給(逆潮流)することで、電力会社に売ることができる。
【0047】
余剰電力を商用電源200へと逆潮流させる場合、通常の電力の供給方向(商用電源200から需要家の住宅Hへ向かう方向)とは逆方向に電力を供給するために、太陽光発電部10において発電された電気の電圧(出力電圧Vt)が高くなるようにパワーコンディショナ20によって調節されている。これによって、通常とは逆に、商用電源200へと電力を供給することができる。
【0048】
次に、上述のような逆潮流を行う場合に発生し得る問題点について説明する。
【0049】
上述の如く逆潮流を行うために太陽光発電部10からの出力電圧Vtを高く調節すると、それに伴って商用電源200への配電線の電圧も上昇する。特に、図1に示すように1つの変圧器(不図示)を介して接続されている複数の住宅H・H・・・それぞれに太陽光発電システム(太陽光発電部10等)が設けられている場合、当該配電線の電圧の上昇が発生し易い。しかし、当該配電線における電圧は所定の変動幅内に収めなければならない旨が定められているため、当該電圧が前記所定の変動幅を超えて上昇するおそれがある場合、パワーコンディショナ20によって太陽光発電部10による発電量を抑制する制御(以下、この制御を単に「発電抑制制御」と記す)が行われる。
【0050】
当該発電抑制制御によって、配電線の電圧を前記所定の変動幅内に収まるように調節することができるものの、太陽光発電部10が本来発電できるはずの発電量が抑制されるため、当該抑制された分の電力を無駄にすることになる。
【0051】
そこで以下では、図1から図3までを用いて、上述の電力の無駄の発生を防止し、余剰電力を有効利用するための電力供給システム1による制御態様について説明する。
【0052】
ステップS101において、各住宅H・H・・・のホームサーバ90は、日射量センサ50により測定された日射量に基づいて、太陽光発電部10で発電されると予測される電力(予測電力)Peを算出する。当該予測電力Peを算出する際に用いられる日射量と発電される電力との関係を示すマップは、予めホームサーバ90に記憶されている。
ホームサーバ90は、ステップS101の処理を行った後、ステップS102に移行する。
【0053】
ステップS102において、各住宅H・H・・・のホームサーバ90は、太陽光発電部10からの出力電力Ptが予測電力Peよりも小さいか否かを判定する。
ホームサーバ90は、太陽光発電部10からの出力電力Ptが予測電力Peよりも小さいと判定した場合、ステップS103に移行する。
ホームサーバ90は、太陽光発電部10からの出力電力Ptが予測電力Peよりも小さくない(予測電力Pe以上)であると判定した場合、一旦本制御を終了し、再度ステップS101の処理から再開する。
【0054】
ステップS103において、各住宅H・H・・・のホームサーバ90は、商用電源200からの供給電圧Vsが太陽光発電部10からの出力電圧Vtよりも大きいか否かを判定する。
ホームサーバ90は、商用電源200からの供給電圧Vsが太陽光発電部10からの出力電圧Vtよりも大きいと判定した場合、ステップS104に移行する。
ホームサーバ90は、商用電源200からの供給電圧Vsが太陽光発電部10からの出力電圧Vtよりも大きくない(出力電圧Vt以下)であると判定した場合、一旦本制御を終了し、再度ステップS101の処理から再開する。
【0055】
ステップS104において、ホームサーバ90は、パワーコンディショナ20による発電抑制制御が行われていると予想される旨を、センターサーバ120に報知する。
ホームサーバ90は、ステップS104の処理を行った後、ステップS105に移行する。
【0056】
ステップS105において、センターサーバ120は、各住宅H・H・・・の太陽光発電部10からの電力を蓄電装置100(具体的には、蓄電装置100の蓄電池)に充電させるように当該蓄電装置100(具体的には、蓄電装置100の充電器)を制御する。
【0057】
上述の如く、太陽光発電部10からの出力電力Ptが予測電力Peよりも小さく(ステップS102)、かつ商用電源200からの供給電圧Vsが太陽光発電部10からの出力電圧Vtよりも大きい(ステップS103)場合、パワーコンディショナ20による発電抑制制御が行われていると予想される。
【0058】
よって、少なくとも1つの住宅Hにおいてこの発電抑制制御が行われていると予想される場合、太陽光発電部10からの電力を蓄電装置100に充電させる(ステップS105)。このようにして、太陽光発電部10からの余剰電力を蓄電装置100に充電することで配電線の電圧を低下させ、ひいては当該発電抑制制御を停止させることができる。
【0059】
なお、上述の発電抑制制御を停止させるための制御(図3参照)は、大量の余剰電力が発生すると考えられる昼間の時間帯(太陽光を受けて太陽光発電部10が発電可能な時間帯)に常時行われる。
【0060】
また、このようにして蓄電装置100に一旦充電された電力は、後ほど必要に応じて有効利用することができる。
【0061】
具体的には、センターサーバ120は、夜間の時間帯(太陽光を受けて太陽光発電部10が発電することができない時間帯)に、各住宅H・H・・・のインバータ110・110・・・の動作を制御して、蓄電装置100に充電された電力を各住宅H・H・・・の負荷40へと放電(供給)する。
【0062】
これによって、昼間の時間帯に発生した余剰電力を、太陽光発電することができない夜間の時間帯に有効利用することができる。また、夜間に蓄電装置100に充電された電力を消費することで、次の昼間に再度余剰電力を充電するための空き容量を確保することができる。
【0063】
また、夜間の時間帯に、蓄電装置100に充電された電力を各住宅H・H・・・の負荷40へと放電(供給)する際、住宅Hごとに供給する電力量を調節することも可能である。
【0064】
具体的には、昼間の時間帯に各住宅H・H・・・で発生する余剰電力量を各ホームサーバ90・90・・・に記憶させ、当該情報をセンターサーバ120に報知する。センターサーバ120は、昼間の時間帯に発生した各住宅H・H・・・の余剰電力量の比率と、夜間の時間帯に各住宅H・H・・・に供給される電力量の比率が同じになるように、各住宅H・H・・・のインバータ110・110・・・の動作を制御する。
【0065】
これによって、本実施形態の如く複数の需要家で共通の蓄電装置100を用いたとしても、公平な電力のやり取りを行うことが可能となる。
【0066】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、複数の需要家の元にそれぞれ設けられた太陽光発電部10において発電された電力及び商用電源200からの電力を当該需要家の元に設けられた負荷40へと供給可能であると共に、太陽光発電部10からの余剰電力を商用電源200へと逆潮流させることが可能な電力供給システム1であって、各需要家の元に設けられた太陽光発電部10が受ける日射量をそれぞれ検出する日射量センサ50(日射量検出部)と、各需要家の元に設けられた太陽光発電部10からの出力電圧Vtをそれぞれ検出する第一電圧センサ60(第一電圧検出部)と、各需要家の元に設けられた太陽光発電部10からの出力電流をそれぞれ検出する電流センサ80(電流検出部)と、商用電源200から各需要家への供給電圧Vsをそれぞれ検出する第二電圧センサ70(第二電圧検出部)と、各需要家の元に設けられた太陽光発電部10からの電力を充放電可能な蓄電装置100と、各需要家の元に設けられた太陽光発電部10が受ける日射量に基づいて、当該太陽光発電部10において発電されると予測される予測電力Peをそれぞれ算出し、前記複数の需要家のうち少なくとも1つの需要家において、太陽光発電部10からの出力電圧Vt及び出力電流に基づいて算出される太陽光発電部10からの出力電力Ptが予測電力Peよりも小さく、かつ、商用電源200からの供給電圧Vsが太陽光発電部10からの出力電圧Vtよりも大きい場合、各需要家の元に設けられた太陽光発電部10からの出力電力Ptを蓄電装置100に充電させる制御手段(ホームサーバ90及びセンターサーバ120)と、を具備するものである。
このように構成することにより、太陽光発電部10において発電された余剰電力を有効利用することができる。
【0067】
また、本実施形態の前記制御手段は、蓄電装置100に充電された電力を夜間に各需要家に設けられた負荷40へと放電するものである。
このように構成することにより、蓄電装置100に充電された電力を夜間に放電することで当該電力を有効利用すると共に、電力を充電するための当該蓄電装置100の空き容量を再度確保することができる。
【0068】
なお、上述の発電抑制制御を停止させるための制御(図3参照)において蓄電装置100(蓄電池)が満充電(又は、満充電に近い値まで電力が充電された状態)となった場合には、当該蓄電装置100への充電を停止させるように構成することも可能である。これによって、蓄電装置100への過充電を防止することができる。
【0069】
また、蓄電装置100は、上述の発電抑制制御を停止させるための制御(図3参照)の際に太陽光発電部10からの余剰電力を充電するために用いるだけでなく、通常時においても活用することができる。
【0070】
例えば、太陽光発電部10及び商用電源200からの電力を、適宜の時間帯に蓄電装置100(より詳細には、当該蓄電装置100の蓄電池)に充電する。当該充電する時間帯は需要家が任意に設定することができる。センターサーバ120によって蓄電装置100(より詳細には、当該蓄電装置100の充電器)の運転を制御することで、当該蓄電装置100への充電の可否が制御される。
【0071】
具体的には深夜に充電するように設定すれば、料金の安い深夜電力を蓄電装置100に充電することができる。また、昼間の太陽光が十分に照射される時間帯に太陽光発電部10からの電力を充電するように設定すれば、当該太陽光発電部10において自然エネルギー(太陽光)を利用して発電された電力を蓄電装置100に充電することができる。
【0072】
一方、蓄電装置100に充電された電力を放電して負荷40に供給することも可能である。蓄電装置100から負荷40に電力を供給する時間帯は、需要家が任意に設定することができる。例えば深夜に充電した電力をその他(深夜以外)の時間帯に負荷40に供給することによって、当該時間帯に商用電源200から供給される電力(買電)を減らすことができ、電力料金を節約することができる。
【0073】
また、負荷40で使用する電力が、主に蓄電装置100からの電力だけで十分まかなえる場合は、太陽光発電部10及び商用電源200からの電力を用いないようにすることも可能である。
【0074】
具体的には、深夜において、料金の安い深夜電力を商用電源200から蓄電装置100に充電すると共に、住宅Hに需要家が不在であり負荷40があまり使用されることがない昼間において、太陽光発電部10からの電力を蓄電装置100に充電しておく。当該蓄電装置100に充電された電力を、需要家が住宅Hに帰宅してから就寝するまでの負荷40が多く使用される時間帯に当該負荷40へと供給する。これによって、電力料金を節約することができる。
【0075】
なお、本発明に係る電力供給システムは、個人の需要家の住宅だけでなく、工場等のその他の需要家に対しても適用することが可能である。
【0076】
また、本実施形態においては、本発明に係る制御手段の一実施形態としてホームサーバ90・90・・・及びセンターサーバ120を用いたが、制御手段をセンターサーバ120のみで構成することも可能である。
【0077】
また、上記実施形態においては、本発明に係る第一電圧検出部及び電流検出部を、それぞれ別個のセンサ(第一電圧センサ60及び電流センサ80)で構成するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、電圧と電流を同時に測定することが可能な1つのセンサ(電力センサ等)を、本発明に係る第一電圧検出部及び電流検出部として用いることも可能である。この場合、センサの数を2つ(第一電圧センサ60及び電流センサ80)から1つに削減することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 電力供給システム
10 太陽光発電部
40 負荷
50 日射量センサ(日射量検出部)
60 第一電圧センサ(第一電圧検出部)
70 第二電圧センサ(第二電圧検出部)
80 電流センサ(電流検出部)
90 ホームサーバ(制御手段)
100 蓄電装置
110 インバータ
120 センターサーバ(制御手段)
200 商用電源
図1
図2
図3