特許第5944275号(P5944275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944275
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】自動校正機能を有する船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/42 20060101AFI20160621BHJP
   B63H 25/30 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B63H25/42 C
   B63H25/30 Z
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-192523(P2012-192523)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46864(P2014-46864A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】常陸 純一
(72)【発明者】
【氏名】原 直裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 淳
(72)【発明者】
【氏名】林 晃良
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0088384(US,A1)
【文献】 特開2001−317503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/42,25/30,25/02,
20/00−20/36
F15B 11/00,15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータによって操舵するアウトドライブ装置を備えた船舶であって、
前記油圧アクチュエータのピストン位置検出装置と、作動油の方向を切り替える比例電磁弁と、前記比例電磁弁を制御する制御装置と、を具備し、
前記制御装置によって、
前記アウトドライブ装置の校正として、自動的に油圧アクチュエータ及び比例電磁弁の動作確認、油圧アクチュエータの可動範囲の設定、及び比例電磁弁の設定が行われ、油圧アクチュエータ及び比例電磁弁が正常に動作しない場合、アウトドライブ装置の校正が中止されるように構成され
前記油圧アクチュエータのピストンを所定量だけ一側方向と他側方向とに移動させた際に、前記ピストン位置検出装置の検出値が所定値以上に変化していない場合、前記アウトドライブ装置の校正が中止されるように構成された
自動校正機能を有する船舶。
【請求項2】
前記制御装置によって、
前記油圧アクチュエータの動作確認において正常と判定された後に、前記ピストンを油圧アクチュエータの一側に向けて移動させ、前記ピストン位置検出装置が第1所定範囲内の一の検出値を所定時間出力した場合、ピストンが油圧アクチュエータの一側端に到達したと判定し、ピストンを油圧アクチュエータの他側に向けて移動させ、ピストン位置検出装置が第2所定範囲内の一の検出値を所定時間出力した場合、ピストンが油圧アクチュエータの他側端に到達したと判定して油圧アクチュエータの可動範囲を設定し、
前記ピストン位置検出装置が第1所定範囲内の一の検出値、若しくは/及び第2所定範囲内の一の検出値を所定時間出力しない場合、又は検出した第1所定範囲内の一の検出値と第2所定範囲内の一の検出値との差が所定値以下である場合、前記アウトドライブ装置の校正を中止する
請求項1に記載の自動校正機能を有する船舶。
【請求項3】
前記制御装置によって、
電流フィードバック制御を行う比例電磁弁駆動回路から前記比例電磁弁が作動しない大きさの電流を比例電磁弁に流して、前記ピストン位置検出装置の検出値が変動した場合、比例電磁弁駆動回路に短絡故障が有ると判断して前記アウトドライブ装置の校正を中止する
請求項1又は請求項2に記載の自動校正機能を有する船舶。
【請求項4】
前記制御装置によって、
前記比例電磁弁駆動回路に短絡故障が無いと判定された後に、比例電磁弁駆動回路から前記比例電磁弁に流す電流値を変化させて、前記ピストン位置検出装置の検出値が変動した電流値のうち最小の電流値を最小電流値に設定する
請求項3に記載の自動校正機能を有する船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動校正機能を有する船舶に関する。詳しくは、アウトドライブ装置の自動校正機能を有する船舶の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船体内部にエンジンを配置し、船体外部に配置されたアウトドライブ装置へ動力を伝達する船内外機(インボートエンジン・アウトボートドライブ)を具備する船舶が知られている(例えば特許文献1参照)。アウトドライブ装置は、スクリュープロペラを回転することによって船体を推進させる推進装置である。アウトドライブ装置は、操舵用油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)によって自在に回動される(例えば特許文献2参照)。操舵用油圧シリンダは、油圧を受けて摺動するピストンを備え、該ピストンがロッドを介して操舵アームを駆動することによってアウトドライブ装置を回動させる。
【0003】
このようなアウトドライブ装置を船体に対して適切な状態で組み付けるためには、油圧シリンダ、作動油の流れ方向を切り替える比例電磁弁、ピストン位置検出装置の配管、配線等の適否、油圧シリンダのストロークエンドの設定等といったアウトドライブ装置の校正を実施する必要がある。しかし、アウトドライブ装置の校正は、作業工程が複雑であることに加え、アウトドライブ装置周辺に配置されたエンジン等の構造物によって目視による確認が困難である場合がある。従って、アウトドライブ装置の校正は、熟練した作業者によらなければ校正結果にばらつきが生じる場合があり問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−1992号公報
【特許文献2】特開平10−7090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、ばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置の校正を実施することができる自動校正機能を有する船舶の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、油圧アクチュエータによって操舵するアウトドライブ装置を備えた船舶であって、前記油圧アクチュエータのピストン位置検出装置と、作動油の方向を切り替える比例電磁弁と、前記比例電磁弁を制御する制御装置と、を具備し、前記制御装置によって、前記アウトドライブ装置の校正として、自動的に油圧アクチュエータ及び比例電磁弁の動作確認、油圧アクチュエータの可動範囲の設定、及び比例電磁弁の設定が行われ、油圧アクチュエータ及び比例電磁弁が正常に動作しない場合、アウトドライブ装置の校正が中止されるように構成され、前記油圧アクチュエータのピストンを所定量だけ一側方向と他側方向とに移動させた際に、前記ピストン位置検出装置の検出値が所定値以上に変化していない場合、前記アウトドライブ装置の校正が中止されるように構成された自動校正機能を有する船舶である。
【0008】
請求項2においては、前記制御装置によって、前記油圧アクチュエータの動作確認において正常と判定された後に、前記ピストンを油圧アクチュエータの一側に向けて移動させ、前記ピストン位置検出装置が第1所定範囲内の一の検出値を所定時間出力した場合、ピストンが油圧アクチュエータの一側端に到達したと判定し、ピストンを油圧アクチュエータの他側に向けて移動させ、ピストン位置検出装置が第2所定範囲内の一の検出値を所定時間出力した場合、ピストンが油圧アクチュエータの他側端に到達したと判定して油圧アクチュエータの可動範囲を設定し、前記ピストン位置検出装置が第1所定範囲内の一の検出値、若しくは/及び第2所定範囲内の一の検出値を所定時間出力しない場合、又は検出した第1所定範囲内の一の検出値と第2所定範囲内の一の検出値との差が所定値以下である場合、前記アウトドライブ装置の校正を中止するものである。
【0009】
請求項3においては、前記制御装置によって、電流フィードバック制御を行う比例電磁弁駆動回路から前記比例電磁弁が作動しない大きさの電流を比例電磁弁に流して、前記ピストン位置検出装置の検出値が変動した場合、比例電磁弁駆動回路に短絡故障が有ると判断して前記アウトドライブ装置の校正を中止するものである。
【0010】
請求項4においては、前記制御装置によって、前記比例電磁弁駆動回路に短絡故障が無いと判定された後に、比例電磁弁駆動回路から前記比例電磁弁に流す電流値を変化させて、前記ピストン位置検出装置の検出値が変動した電流値のうち最小の電流値を最小電流値に設定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、作業者が手動で目視しながらアウトドライブ装置の校正を実施する必要がない。また、異常があればアウトドライブ装置の校正が中止される。これにより、油圧アクチュエータ等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置の校正を実施することができる。
【0013】
また、油圧アクチュエータのピストン位置に関わらず、油圧アクチュエータの異常、比例電磁弁の異常、位置センサの異常が一時に判定される。これにより、油圧アクチュエータ等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置の校正を実施することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、位置センサを利用して油圧アクチュエータのストロークエンドを検出するのでアウトドライブ装置に過大な油圧負荷をかけることがない。これにより、油圧アクチュエータ等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置の校正を実施することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、位置センサを利用して比例電磁弁の駆動回路における短絡故障を検出することができる。これにより、油圧アクチュエータ等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置の校正を実施することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、位置センサを利用して比例電磁弁の最小電流値が設定される。これにより、油圧アクチュエータ等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置の校正を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自動校正機能を有する船舶の全体概要を示す図。
図2】自動校正機能を有する船舶の構成を示す図。
図3】アウトドライブ装置の構成を示す図。
図4】アウトドライブ装置の取り付け構造を示す図。
図5】操舵用油圧アクチュエータの構成を示す一の図。
図6】操舵用油圧アクチュエータの構成を示す他の図。
図7】比例電磁弁の構成を示す図。
図8】比例電磁弁のドライバの校正を示す概略図。
図9】自動校正機能を有する船舶の校正の制御フローを示す図。
図10】自動校正機能を有する船舶の接続確認制御Aの制御フローを示す図。
図11】自動校正機能を有する船舶のアクチュエータ校正制御Bの制御フローを示す図。
図12】自動校正機能を有する船舶の短絡故障確認制御Cの制御フローを示す図。
図13】自動校正機能を有する船舶のドライバ校正制御Dの制御フローを示す図。
図14】自動校正機能を有する船舶のアウトドライブ装置の操船制御と自動校正機能との関係における制御フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、図1から図8を用いてアウトドライブ装置10を備えた船舶100の全体概要及び構成について説明する。なお、図1及び図2の船舶100は、アウトドライブ装置10を二台備えた、いわゆる二軸推進方式の船舶を示している。但し、一軸推進方式等であっても成立し、これに限定するものではない。
【0019】
図1及び図2に示すように、船舶100は、アクセルレバー2の操作に応じてエンジン5の運転状態が調節され、ひいてはスクリュープロペラ15の回転速度が変更されて推進する。船舶100は、船体1にアウトドライブ装置10と、油圧アクチュエータ20と、比例電磁弁30と、制御装置40とが具備される。船舶100は、船体1にアウトドライブ装置10を制御するための操舵ハンドル3やジョイスティックレバー4を具備する。さらに、船体1には、操舵ハンドル3又はジョイスティックレバー4の近傍にこれらの操作状況等の表示を行うモニタ6が設置される。船舶100は、操舵ハンドル3やジョイスティックレバー4の操作に応じてアウトドライブ装置10を回動可能に構成される。
【0020】
図3に示すように、アウトドライブ装置10は、スクリュープロペラ15を回転させることによって船体1を推進させる。また、アウトドライブ装置10は、船体1の進行方向に対して回動することによって該船体1を旋回させる。図3に示すように、アウトドライブ装置10は、主に入力軸11と、切換クラッチ12と、駆動軸13と、出力軸14と、スクリュープロペラ15と、で構成される。
【0021】
入力軸11は、エンジン5の回転動力を切換クラッチ12に伝達する。入力軸11の一端部は、エンジン5の出力軸に取り付けられたユニバーサルジョイントと連結され、その他端部は、アッパーハウジング10Uの内部に配置された切換クラッチ12と連結される。
【0022】
切換クラッチ12は、入力軸11等を介して伝達されたエンジン5の回転動力を正回転方向又は逆回転方向に切換可能とする。切換クラッチ12は、ディスクプレートを備えるインナードラムと連結された正回転用ベベルギア、ならびに、逆回転用ベベルギアを有し、入力軸11に連結されたアウタードラムのプレッシャープレートをいずれのディスクプレートに押し付けるかによって回転方向の切り換えを行なう。
【0023】
駆動軸13は、切換クラッチ12等を介して伝達されたエンジン5の回転動力を出力軸14に伝達する。駆動軸13の一端部に設けられたベベルギアは、切換クラッチ12に設けられた正回転用ベベルギア、ならびに、逆回転用ベベルギアと歯合され、その他端部に設けられたベベルギアは、ロアハウジング10Rの内部に配置された出力軸14のベベルギアと歯合される。
【0024】
出力軸14は、駆動軸13等を介して伝達されたエンジン5の回転動力をスクリュープロペラ15に伝達する。出力軸14の一端部に設けられたベベルギアは、上述したように駆動軸13のベベルギアと歯合され、その他端部には、スクリュープロペラ15が取り付けられている。
【0025】
スクリュープロペラ15は、回転することによって推進力を発生させる。スクリュープロペラ15は、出力軸14等を介して伝達されたエンジン5の回転動力によって駆動され、回転軸周りに配置された複数枚のブレード15aが周囲の水をかくことによって推進力を発生させる。
【0026】
なお、アウトドライブ装置10は、船体1の船尾板(トランサムボード)に取り付けられたジンバルハウジング7に支持されている。具体的には、アウトドライブ装置10は、該アウトドライブ装置10のジンバルリング16が喫水線wlから略垂直方向となるようにジンバルハウジング7に支持されている。なお、ジンバルリング16とは、アウトドライブ装置10に取り付けられた略円筒形状の回動軸であり、アウトドライブ装置10は、該ジンバルリング16を中心として回動する。
【0027】
ジンバルリング16の上側端部には、船体1の内部に延設された操舵アーム19が取り付けられている。そして、操舵アーム19は、ジンバルリング16を中心にアウトドライブ装置10を回動させる。なお、操舵アーム19は、操舵ハンドル3やジョイスティックレバー4の操作に応じて連動する油圧アクチュエータ20によって駆動される。
【0028】
ここで、図4から図6を用いてアウトドライブ装置10の取り付け構造について詳細に説明する。
【0029】
船尾板(トランサムボード)の前面側には、ブラケット8が取り付けられている。また、船尾板(トランサムボード)の後面側には、ジンバルハウジング7が取り付けられている。そして、ジンバルハウジング7には、回動軸17・17が略垂直方向に設けられ、ジンバルリング16は、回動軸17・17によって回動自在に支持されている。また、ジンバルリング16の中途部には、回動軸18・18が水平方向に設けられ、アッパーハウジング10Uの前上部は、回動軸18・18によって回動自在に支持されている。
【0030】
回動軸17の上側端部には、操舵アーム19が取り付けられている。操舵アーム19は、船体1及びブラケット8に設けられた貫通孔1H・8Hを通って船体1の内部に延設されている。そして、操舵アーム19の端部には、油圧アクチュエータ20が連結されている(図3参照)。従って、アウトドライブ装置10は、油圧アクチュエータ20が作動することによって、ジンバルリング16を中心に左右に回動するのである。
【0031】
なお、ジンバルリング16の下部とアッパーハウジング10Uとの間には、昇降用油圧アクチュエータ9が介装されている(図3参照)。従って、アウトドライブ装置10は、昇降用油圧アクチュエータ9が作動することによって、回動軸18・18を中心に上下に回動するのである。
【0032】
油圧アクチュエータ20は、アウトドライブ装置10の操舵アーム19を駆動して該アウトドライブ装置10を回動させる。図5に示すように、油圧アクチュエータ20は、主にシリンダスリーブ21と、ピストン22と、ロッド23と、第一シリンダキャップ24と、第二シリンダキャップ25と、位置センサ26と、で構成される。なお、本実施形態に係る油圧アクチュエータ20は、いわゆる片ロッド型の油圧アクチュエータであるが、図6に示すように両ロッド型であっても良い。
【0033】
シリンダスリーブ21は、ピストン22を摺動可能に内設する。シリンダスリーブ21の両端部には、周方向に突設された鍔部が設けられており、該鍔部には、第一シリンダキャップ24又は第二シリンダキャップ25が固設される。
【0034】
ピストン22は、油圧を受けることによってシリンダスリーブ21の内部を摺動する。ピストン22には、該ピストン22の中心軸と同軸に貫通孔22hが設けられており、該貫通孔22hには、ロッド23が挿通されている。また、ピストン22の外周面には、その周方向にリング溝が設けられており、該リング溝には、シールリングが環装されている。更に、各シールリングの間であってピストン22の外周面には、永久磁石222が取り付けられている。
【0035】
ロッド23は、ピストン22の摺動を操舵アーム19に伝達する。ロッド23の一端部には、該ロッド23の外径を縮径した縮径部23taが設けられている。そして、ロッド23は、ピストン22の貫通孔22hに縮径部23taを挿通した状態でナット231が螺合されて該ピストン22と固設される。また、ロッド23の他端部には、該ロッド23の外径を縮径した縮径部23tbが設けられている。そして、ロッド23は、クレビス27の貫通孔27hに縮径部23tbを挿通した状態でナット232が螺合されて該クレビス27と固設される。なお、クレビス27とは、ロッド23と操舵アーム19とを連結する連結部材である。
【0036】
第一シリンダキャップ24は、シリンダスリーブ21の一端部を密封する。第一シリンダキャップ24には、シリンダスリーブ21とピストン22で構成された第一油室Oc1に連通する第一油路24pが設けられている。また、シリンダスリーブ21に嵌入される周壁面には、その周方向にリング溝が設けられてシールリングが環装されている。これにより、第一油室Oc1は、所定の油圧に耐え得る耐圧室を構成している。
【0037】
第二シリンダキャップ25は、シリンダスリーブ21の他端部を密封するとともに、ロッド23を摺動可能に支持する。第二シリンダキャップ25には、シリンダスリーブ21とピストン22で構成された第二油室Oc2に連通する第二油路25pが設けられている。また、シリンダスリーブ21に嵌入される周壁面には、その周方向にリング溝が設けられてシールリングが環装されている。更に、第二シリンダキャップ25には、シリンダスリーブ21の中心軸と同軸に貫通孔25hが設けられており、該貫通孔25hには、ロッド23が摺動可能に挿通される。なお、貫通孔25hの内周面には、その周方向にリング溝が設けられており、該リング溝には、シールリングが嵌挿されている。これにより、第二油室Oc2は、所定の油圧に耐え得る耐圧室を構成している。
【0038】
位置センサ26は、ピストン22に取り付けられた永久磁石222の磁力を検出する。位置センサ26は、少なくともピストン22が摺動できる範囲内において該ピストン22の摺動方向に対して平行となるようにシリンダスリーブ21の外周面に取り付けられている。これにより、制御装置40は、ピストン22の位置を把握することができ、ひいてはアウトドライブ装置10の舵角度を把握することができるのである。また、制御装置40は、単位時間毎にピストン22の位置を把握することで該ピストン22の摺動方向を認識できる。
【0039】
なお、位置センサ26は、主に磁束密度の変化に応じて出力電圧を変換する、いわゆるホール素子で構成されている。ホール素子は、磁界と電流の相互作用によって電子にローレンツ力が作用することを利用し、ローレンツ力に起因する電位差(ホール電圧)から磁界の強さを検出する。なお、本実施形態においては、位置センサ26の主な構成要素としてホール素子を用いているが、磁界の強さに応じて電気抵抗値が変化する磁気抵抗素子を用いても良く、これに限定するものではない。
【0040】
比例電磁弁30は、油圧アクチュエータ20の作動油の流動方向を変更する。図7及び図8に示すように、比例電磁弁30は、主にバルブボディ31と、スプールシャフト32と、第一ソレノイド33と、第二ソレノイド34と、で構成される。バルブボディ31は、スプールシャフト32を摺動可能に内設する。スプールシャフト32は、バルブボディ31の内部を摺動することによって作動油の油路を切り換える。第一ソレノイド33は、スプールシャフト32を一方に摺動させる。第二ソレノイド34は、スプールシャフト32を他方に摺動させる。比例電磁弁30は、ドライバ35から第一ソレノイド33又は第二ソレノイド34に電流Iが供給される。なお、本実施形態における比例電磁弁30は、いわゆる直動形比例電磁弁であるが、パイロット形比例電磁弁であっても良く、作動形式を限定するものではない。
【0041】
ドライバ35は、制御装置40からの信号に基づいて比例電磁弁30に電流Iを流す。図8に示すように、ドライバ35は、PWM回路(パルス幅変調回路)36と、比例電磁弁駆動回路37と、電流検出回路38とから構成される。PWM回路36は、制御装置40からの制御信号を受信可能に構成される。また、PWM回路36は、受信した制御信号に基づいて比例電磁弁駆動回路37に制御パルスを送信可能に構成される。比例電磁弁駆動回路37は、PWM回路36から受信した制御パルスに基づいて比例電磁弁30に電流Iを供給可能に構成される。電流検出回路38は、比例電磁弁30に供給された電流Iが通電可能に構成される。電流検出回路38は、電流Iが流れる図示しないシャント抵抗での電圧低下から電流値を検出する。また、電流検出回路38は、減算器39を介して検出した電流値をPWM回路36に入力可能に構成される。つまり、ドライバ35は、制御信号と電流検出値との偏差に基づいて電流フィードバック制御を行う。
【0042】
図2に示すように、制御装置40は、アクセルレバー2、操舵ハンドル3及びジョイスティックレバー4等からの検出信号に基づいて制御信号を作成する。そして、制御装置40は、制御信号を比例電磁弁30のドライバ35等に送信する。また、制御装置40は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)からの情報に基づいて制御信号を作成するとともに、作成した制御信号を比例電磁弁30等に送信することも可能としている。つまり、制御装置40は、オペレータが手動で行なう操船のほかに、自らの位置と設定された目的地とから航路を算出して自動で操船を行なう、いわゆる自動航法を可能としている。
【0043】
制御装置40は、船体1にアウトドライブ装置10を組み付けた際に行うアウトドライブ装置10の自動校正機能を有する。具体的には、制御装置40は、油圧アクチュエータ20の油圧管の接続確認及び可動範囲の設定、位置センサ26の電線の配線の適否判定、比例電磁弁30の油圧管の配管の適否判定、比例電磁弁30のドライバ35の短絡故障の有無判断等を行う自動校正を実施することができる。制御装置40は、自動校正を実施するための各種プログラムやデータ等が記憶されている。
【0044】
このように構成されるアウトドライブ装置10を備えた船舶100について、船体1を左旋回させる場合、制御装置40は、油圧アクチュエータ20のピストン22を図5図6に示す矢印Lの方向に摺動させる必要がある。従って、制御装置40は、比例電磁弁30に制御信号を送信することによって第二ソレノイド34を作動させる。これにより、第二ソレノイド34は、スプールシャフト32を所定の位置まで摺動させる(図8B参照)。その結果、油圧アクチュエータ20のピストン22は、図5図6に示す矢印Lの方向に摺動することとなる。
【0045】
船体1を右旋回させる場合、制御装置40は、油圧アクチュエータ20のピストン22を図5図6に示す矢印Rの方向に摺動させる必要がある。従って、制御装置40は、比例電磁弁30に制御信号を送信することによって第一ソレノイド33を作動させる。これにより、第一ソレノイド33は、スプールシャフト32を所定の位置まで摺動させる(図8C参照)。その結果、油圧アクチュエータ20のピストン22は、図5図6に示す矢印Rの方向に摺動することとなる。
【0046】
以下では、船舶100のアウトドライブ装置10における自動校正機能の動作態様について説明する。
【0047】
図1及び図5に示すように、制御装置40は、モニタ6に表示される「校正実施」が選択されると、アウトドライブ装置10を構成する油圧アクチュエータ20のピストン22を動作させて、油圧アクチュエータ20、位置センサ26、比例電磁弁30、及びドライバ35の電線及び油圧管の接続について確認する。次に、制御装置40は、ピストン22を移動させて一側端及び他側端における位置センサ26の値を設定するとともに、油圧アクチュエータ20、位置センサ26、比例電磁弁30、及びドライバ35の電線及び油圧管の誤配線及び誤配管の判定を行う。次に、制御装置40は、比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障の判定を行う。最後に、制御装置40は、油圧アクチュエータ20を作動させるために必要な最小電流値Iminを設定する。
【0048】
次に、図9から図13を用いて上述の制御装置40の自動校正の制御態様について具体的に説明する。
【0049】
図9に示すように、ステップS100において、制御装置40は、モニタ6(図1参照)に表示されている「校正実施」が選択されたことによる校正信号を受信したか否かを判定する。その結果、校正信号を受信したと判定した場合、制御装置40はステップをステップS200に移行させる。一方、校正信号を受信していないと判定した場合、制御装置40は自動校正の制御を終了する。
【0050】
ステップS200において、制御装置40は、接続確認制御Aを開始し、ステップをステップS201に移行させる(図10参照)。接続確認制御Aが終了すると、制御装置40はステップをステップS300に移行させる(図9参照)。
【0051】
ステップS300において、制御装置40は、接続確認制御Aにおける判定結果に基づいて電線又は油圧管に接続不良が無いか否かを判定する。その結果、電線及び油圧管に接続不良が無いと判定した場合、制御装置40はステップをステップS400に移行させる。一方、電線又は油圧管に接続不良が有ると判定した場合、制御装置40は自動校正の制御を終了する。この場合、モニタ6に電線又は油圧管に接続不良が有る旨が表示される。
【0052】
ステップS400において、制御装置40は、アクチュエータ校正制御Bを開始し、ステップをステップS401に移行させる(図11参照)。アクチュエータ校正制御Bが終了すると、制御装置40はステップをステップS500に移行させる(図9参照)。
【0053】
ステップS500において、制御装置40は、アクチュエータ校正制御Bにおける判定結果に基づいて電線の誤配線、油圧管の誤配管又は油圧アクチュエータ20の動作不良が無いか否かを判定する。その結果、電線の誤配線、油圧管の誤配管及び油圧アクチュエータ20の動作不良が無いと判定した場合、制御装置40はステップをステップS600に移行させる。一方、電線の誤配線、油圧管の誤配管又は油圧アクチュエータ20の動作不良が有ると判定した場合、制御装置40は自動校正の制御を終了する。この場合、モニタ6に電線の誤配線、油圧管の誤配管又は油圧アクチュエータ20の動作不良が有る旨が表示される。
【0054】
ステップS600において、制御装置40は、短絡故障確認制御Cを開始し、ステップをステップS601に移行させる(図12参照)。短絡故障確認制御Cが終了すると、制御装置40はステップをステップS700に移行させる(図9参照)。
【0055】
ステップS700において、制御装置40は、短絡故障確認制御Cにおける判定結果に基づいて比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障が無いか否かを判定する。その結果、比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障が無いと判定した場合、制御装置40はステップをステップS800に移行させる。一方、比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障が有ると判定した場合、制御装置40は自動校正の制御を終了する。この場合、モニタ6にドライバ35の短絡故障が有る旨が表示される。
【0056】
ステップS800において、制御装置40は、ドライバ校正制御Dを開始し、ステップをステップS801に移行させる(図13参照)。ドライバ校正制御Dが終了すると、制御装置40は自動校正の制御を終了する(図9参照)。つまり、制御装置40は、接続確認制御A、アクチュエータ校正制御B、短絡故障確認制御C及びドライバ校正制御Dにおいて、動作不良、誤配管又は故障等が有ると判定されると自動校正の制御を終了する。
【0057】
図10に示すように、接続確認制御AのステップS201において、制御装置40は、油圧アクチュエータ20を所定方向に作動させ、ステップをステップS202に移行させる。具体的には、制御装置40は、比例電磁弁30によって作動油の方向を切り換えて油圧アクチュエータ20のピストン22を所定量Svだけ一側、他側、一側の順に移動させ、ステップをステップS202に移行させる。
【0058】
ステップS202において、制御装置40は、油圧アクチュエータ20の作動に伴って位置センサ26の検出値Pが所定値Pv以上変動したか否かを判定する。その結果、位置センサ26の検出値Pが所定値Pv以上変動したと判定した場合、制御装置40はステップをステップS203に移行させる。一方、位置センサ26の検出値Pが所定値Pv以上変動していないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS213に移行させる。
【0059】
ステップS203において、制御装置40は、電線又は油圧管の接続不良が無いと判定して、接続確認制御Aを終了する。具体的には、制御装置40は、位置センサ26、比例電磁弁30、ドライバ35に関する電線の接続不良及び油圧アクチュエータ20に関する油圧管の接続不良が無いと判定して、接続確認制御Aを終了する。
【0060】
ステップS213において、制御装置40は、電線又は油圧管の接続不良が有ると判定して、接続確認制御Aを終了する。具体的には、制御装置40は、位置センサ26、比例電磁弁30、ドライバ35の電線の接続不良又は油圧アクチュエータ20に関する油圧管の接続不良が有ると判定して、接続確認制御Aを終了する。
【0061】
図11に示すように、アクチュエータ校正制御BのステップS401において、制御装置40は、油圧アクチュエータ20のピストン22を一側及び他側に向けて移動させて、ステップをステップS402に移行させる。
【0062】
ステップS402において、制御装置40は、油圧アクチュエータ20のピストン22を一側又は他側に向けて移動した際の位置センサ26の検出値Pが第1校正範囲R1内又は第2校正範囲R2内か否かを判定する。その結果、検出値Pが第1校正範囲R1内又は第2校正範囲R2内であると判定した場合、制御装置40はステップをステップS403に移行させる。一方、検出値Pが第1校正範囲R1内及び第2校正範囲R2内で無いと判定した場合、制御装置40はステップをステップS401に移行させる。
【0063】
ステップS403において、制御装置40は、油圧アクチュエータ20のピストン22を一側又は他側に向けて移動した際の位置センサ26の検出値Pが所定時間t1継続して検出されたか否かを判定する。その結果、検出値Pが所定時間t1継続して検出されたと判定した場合、制御装置40はステップをステップS404に移行させる。一方、検出値Pが所定時間t1継続して検出されていないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS401に移行させる。
【0064】
ステップS404において、制御装置40は、油圧アクチュエータ20のピストン22を一側及び他側に向けて移動させた際の位置センサ26の検出値P1を一側端の位置(以下、単に「一側端位置P1」と記す)、検出値P2を他側端の位置(以下、単に「他側端位置P2」と記す)として設定し、ステップをステップS405に移行させる。なお、本実施形態において、位置センサ26の検出値Pの値は、ピストン22が油圧アクチュエータ20の一側に移動するほど大きくなるように設定されている。
【0065】
ステップS405において、制御装置40は、一側端位置P1が他側端位置P2よりも大きいか否かを判定する。その結果、一側端位置P1が他側端位置P2よりも大きいと判定した場合、制御装置40はステップをステップS406に移行させる。一方、一側端位置P1が他側端位置P2以下であると判定した場合、制御装置40はステップをステップS427に移行させる。
【0066】
ステップS406において、制御装置40は、一側端位置P1と他側端位置P2との差が所定値Lv以上か否かを判定する。その結果、一側端位置P1と他側端位置P2との差が所定値Lv以上であると判定した場合、制御装置40はステップをステップS407に移行させる。一方、一側端位置P1と他側端位置P2との差が所定値Lv未満であると判定した場合、制御装置40はステップをステップS417に移行させる。なお、本実施形態において、所定値Lvは、油圧アクチュエータ20の基準ストロークである。
【0067】
ステップS407において、制御装置40は、誤配線、誤配管及び動作不良が無いと判定して、アクチュエータ校正制御Bを終了する。具体的には、制御装置40は、位置センサ26、比例電磁弁30、ドライバ35に関する電線の誤配線及び油圧アクチュエータ20に関する油圧管の誤配管、油圧アクチュエータ20の動作不良が無いと判定して、アクチュエータ校正制御Bを終了する。
【0068】
ステップS417において、制御装置40は、動作不良と判定して、アクチュエータ校正制御Bを終了する。具体的には、制御装置40は、油圧アクチュエータ20の動作不良であると判定して、アクチュエータ校正制御Bを終了する。
【0069】
ステップS427において、制御装置40は、誤配線又は誤配管が有ると判定して、アクチュエータ校正制御Bを終了する。具体的には、制御装置40は、位置センサ26、比例電磁弁30、ドライバ35に関する電線の誤配線又は油圧アクチュエータ20に関する油圧管の誤配管が有ると判定して、アクチュエータ校正制御Bを終了する。
【0070】
図12に示すように、短絡故障確認制御CのステップS601において、制御装置40は、通常であれば比例電磁弁30を作動させることがない程度の電流I0をドライバ35から比例電磁弁30に流し、ステップをステップS602に移行させる。
【0071】
ステップS602において、制御装置40は、位置センサ26の検出値Pが変動したか否かを判定する。すなわち、制御装置40は、比例電磁弁30がドライバ35からの電流Iで作動したか否かを判定する。その結果、位置センサ26の検出値Pが変動していないと判定した場合、すなわち、ドライバ35から比例電磁弁30に流れる電流Iが電流I0であり比例電磁弁30が作動していないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS603に移行させる。一方、位置センサ26の検出値Pが変動していると判定した場合、すなわち、ドライバ35から比例電磁弁30に流れる電流Iが電流I0よりも大きく比例電磁弁30が作動していると判定した場合、制御装置40はステップをステップS613に移行させる。
【0072】
ステップS603において、制御装置40は、比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障が無いと判定して、短絡故障確認制御Cを終了する。具体的には、制御装置40は、ドライバ35の電流検出回路38が検出する電流値が電流I0の電流値と同一であり、比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障が生じていないと判定して、短絡故障確認制御Cを終了する。
【0073】
ステップS613において、制御装置40は、比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障が有ると判定して、短絡故障確認制御Cを終了する。具体的には、図8に示すように、比例電磁弁30の駆動回路においてGNDとの短絡故障が生じた場合、比例電磁弁30から電流検出回路38に流れる電流I(図8における実線矢印参照)の一部がGNDに流れる(図8における破線矢印参照)。この結果、電流検出回路38が検出する電流値が電流I0の電流値よりも小さくなる。ドライバ35は、比例電磁弁30に流れている電流Iが電流I0よりも小さいと判断して、電流フィードバック制御により比例電磁弁30に供給する電流Iの電流値を増大させる。増大する電流Iによって比例電磁弁30が作動することで油圧アクチュエータ20が作動する。すなわち、制御装置40は、位置センサ26の検出値Pが変動することで、比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障が生じていると判定して、短絡故障確認制御Cを終了する。
【0074】
図13に示すように、ドライバ校正制御DのステップS801において、制御装置40は、ドライバ35から比例電磁弁30に電流I(n)を所定時間流して、ステップをステップS802に移行させる。
【0075】
ステップS802において、制御装置40は、位置センサ26の検出値Pが変動したか否かを判定する。すなわち、制御装置40は、ドライバ35からの電流I(n)の電流値が比例電磁弁30を駆動させる最小電流値Imin以上か否かを判定する。その結果、位置センサ26の検出値Pが変動したと判定した場合、すなわち、ドライバ35からの電流I(n)の電流値が比例電磁弁30を駆動させる最小電流値Imin以上であると判定した場合、制御装置40はステップをステップS803に移行させる。一方、位置センサ26の検出値Pが変動していないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS823に移行させる。
【0076】
ステップS803において、制御装置40は、ドライバ35から比例電磁弁30に流す電流I(n)の電流値を所定値Ivだけ小さくした電流I(n+1)を所定時間流して、ステップをステップS804に移行させる。
【0077】
ステップS804において、制御装置40は、位置センサ26の検出値Pが変動していないか否かを判定する。その結果、位置センサ26の検出値Pが変動していないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS805に移行させる。一方、位置センサ26の検出値Pが変動していると判定した場合、制御装置40はステップをステップS814に移行させる。
【0078】
ステップS805において、制御装置40は、最小電流値Iminを電流I(n)の電流値に設定して、ドライバ校正制御Dを終了する。
【0079】
ステップS814において、制御装置40は、電流I(n)のnをn=n+1として、すなわち、電流I(n)の電流値を所定値Ivだけ小さくした電流I(n+1)を電流I(n)とし、新たな電流I(n)の電流値を所定値Ivだけ小さくするために、ステップをステップS803に移行させる。
【0080】
ステップS823において、制御装置40は、ドライバ35から比例電磁弁30に流す電流I(n)の電流値を所定値Ivだけ大きくした電流I(n+1)を所定時間流して、ステップをステップS804に移行させる。
【0081】
ステップS824において、制御装置40は、位置センサ26の検出値Pが変動しているか否かを判定する。その結果、位置センサ26の検出値Pが変動していると判定した場合、制御装置40はステップをステップS825に移行させる。一方、位置センサ26の検出値Pが変動していないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS834に移行させる。
【0082】
ステップS825において、制御装置40は、電流I(n+1)の電流値を最小電流値Iminに設定して、ドライバ校正制御Dを終了する。
【0083】
ステップS834において、制御装置40は、電流I(n)のnをn=n+1として、すなわち、電流I(n)の電流値を所定値Ivだけ大きくした電流I(n+1)を電流I(n)とし、新たな電流I(n)の電流値を所定値Ivだけ大きくするために、ステップをステップS823に移行させる。
【0084】
以下では、船舶100のアウトドライブ装置10の制御態様における自動校正機能と操船制御との関係について説明する。
【0085】
制御装置40は、アウトドライブ装置10の制御信号を受信すると、それまでに校正開始信号を受信しているか否かを判定する。制御装置40は、既に校正開始信号を受信しており、かつ校正実施中又は校正が正常に完了していない場合、アウトドライブ装置10の制御信号を無効とする。一方、制御装置40は、既に校正開始信号を受信していない場合、又は、校正開始信号を受信しているが校正が正常に完了している場合、校正開始信号を無効とする。
【0086】
次に、図14を用いて上述の制御装置40の制御態様における自動校正機能と操船制御との関係について具体的に説明する。
【0087】
図14に示すように、ステップS901において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の制御信号を受信すると、ステップをステップS902に移行させる。
【0088】
ステップS902において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の校正開始信号を受信済みか否かを判定する。その結果、アウトドライブ装置10の校正開始信号を受信済みであると判定した場合、制御装置40はステップをステップS903に移行させる。一方、アウトドライブ装置10の校正開始信号を受信していないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS913に移行させる。
【0089】
ステップS903において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の校正の実施中であるか否かを判定する。その結果、アウトドライブ装置10の校正の実施中であると判定した場合、制御装置40はステップをステップS904に移行させる。一方、アウトドライブ装置10の校正の実施中でないと判定した場合、制御装置40はステップをステップ924に移行させる。
【0090】
ステップS904において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の制御信号を無効として、自動校正の制御を継続する。すなわち、本実施形態の自動校正機能を有する船舶100は、アウトドライブ装置10の校正の実施中にアウトドライブ装置10の制御が行えないように構成される。
【0091】
ステップS913において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の制御信号を無効とする。すなわち、本実施形態の自動校正機能を有する船舶100は、アウトドライブ装置10の校正が実施されていない場合、アウトドライブ装置10の制御が行えないように構成される。
【0092】
ステップS924において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の校正が完了しているか否かを判定する。その結果、アウトドライブ装置10の校正が完了していると判定した場合、制御装置40はステップをステップS925に移行させる。一方、アウトドライブ装置10の校正が完了していないと判定した場合、制御装置40はステップをステップS935に移行させる。
【0093】
ステップS925において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の校正開始信号を無効として、アウトドライブ装置10の制御を継続する。すなわち、本実施形態の自動校正機能を有する船舶100は、アウトドライブ装置10の校正が完了している場合、アウトドライブ装置10の制御中にアウトドライブ装置10の校正が実施できないように構成される。
【0094】
ステップS935において、制御装置40は、アウトドライブ装置10の制御信号を無効として、自動校正の制御を継続する。すなわち、本実施形態の自動校正機能を有する船舶100は、アウトドライブ装置10の校正が完了していない場合、アウトドライブ装置10の制御が行えないように構成される。
【0095】
以上の如く、本発明に係る自動校正機能を有する船舶100は、油圧アクチュエータ20によって操舵するアウトドライブ装置10を備えた船舶100であって、油圧アクチュエータ20のピストン位置検出装置である位置センサ26と、作動油の方向を切り替える比例電磁弁30と、比例電磁弁30を制御する制御装置40と、を具備し、制御装置40によって、アウトドライブ装置10の校正として、自動的に油圧アクチュエータ20及び比例電磁弁30の動作確認、油圧アクチュエータ20の可動範囲の設定、及び比例電磁弁30の設定が行われ、油圧アクチュエータ20及び比例電磁弁30が正常に動作しない場合、アウトドライブ装置10の校正が中止されるように構成されたものである。このように構成することにより、作業者が手動で目視しながらアウトドライブ装置10の校正を実施する必要がない。また、異常があればアウトドライブ装置10の校正が中止される。これにより、油圧アクチュエータ20等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置10の校正を実施することができる。
【0096】
また、制御装置40によって、油圧アクチュエータ20のピストン22を所定量Svだけ一側方向と他側方向とに移動させた際に位置センサ26の検出値Pが所定値Pv以上に変化していない場合、アウトドライブ装置10の校正を中止するものである。このように構成することにより、油圧アクチュエータ20のピストン位置に関わらず、油圧アクチュエータ20の異常、比例電磁弁30の異常、位置センサ26の異常が一時に判定される。これにより、油圧アクチュエータ20等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置10の校正を実施することができる。
【0097】
また、制御装置40によって、油圧アクチュエータ20の動作確認において正常と判定された後に、ピストン22を油圧アクチュエータ20の一側に向けて移動させ、位置センサ26が第1所定範囲R1内の一の検出値P1を所定時間t1出力した場合、ピストン22が油圧アクチュエータ20の一側端に到達したと判定し、ピストン22を油圧アクチュエータ20の他側に向けて移動させ、位置センサ26が第2所定範囲R2内の一の検出値P2を所定時間t1出力した場合、ピストン22が油圧アクチュエータ20の他側端に到達したと判定して油圧アクチュエータ20の可動範囲を設定し、位置センサ26が第1所定範囲R1内の一の検出値P1、若しくは/及び第2所定範囲R2内の一の検出値P2を所定時間t1出力しない場合、又は検出した第1所定範囲R1内の一の検出値P1と第2所定範囲R2内の一の検出値P2との差が所定値Lv以下である場合、アウトドライブ装置10の校正を中止するものである。このように構成することにより、位置センサ26を利用して油圧アクチュエータ20のストロークエンドを検出するのでアウトドライブ装置10に過大な油圧負荷をかけることがない。これにより、油圧アクチュエータ20等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置10の校正を実施することができる。
【0098】
また、制御装置40によって、電流フィードバック制御を行う比例電磁弁駆動回路を有するドライバ35から比例電磁弁30が作動しない大きさの電流I0を比例電磁弁30に流して、位置センサ26の検出値Pが変動した場合、比例電磁弁30の駆動回路に短絡故障が有ると判断してアウトドライブ装置10の校正を中止するものである。このように構成することにより、位置センサ26を利用して比例電磁弁30の駆動回路における短絡故障を検出することができる。これにより、油圧アクチュエータ20等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置10の校正を実施することができる。
【0099】
また、制御装置40によって、比例電磁弁30の駆動回路に短絡故障が無いと判定された後に、前記比例電磁弁駆動回路を有するドライバ35から比例電磁弁30に流す電流I(n)の電流値を変化させて、位置センサ26の検出値Pが変動した電流I(n)のうち最小の電流値を最小電流値Iminに設定するものである。このように構成することにより、位置センサ26を利用して比例電磁弁30の最小電流値Iminが設定される。これにより、油圧アクチュエータ20等が目視できなくてもばらつきを抑制しつつ確実にアウトドライブ装置10の校正を実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 アウトドライブ装置
20 油圧アクチュエータ
26 位置センサ
30 比例電磁弁
40 制御装置
100 自動校正機能を有する船舶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14