特許第5944293号(P5944293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944293
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】作業機の油圧回路
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20160621BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20160621BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20160621BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20160621BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   E02F3/43 G
   E02F9/22 K
   F15B11/028 F
   F15B11/16 B
   F15B11/16 Z
   F15B11/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-230019(P2012-230019)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-80812(P2014-80812A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177184
【氏名又は名称】三陽機器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】守安 利文
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 直樹
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特公平07−049667(JP,B2)
【文献】 実開昭61−198347(JP,U)
【文献】 特許第3542373(JP,B2)
【文献】 特開昭57−019429(JP,A)
【文献】 実開昭57−018053(JP,U)
【文献】 実公昭57−030483(JP,Y2)
【文献】 特公平07−049666(JP,B2)
【文献】 実開昭61−204006(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42−3/43
E02F 9/20−9/22
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にアタッチメントが回動可能に装着されると共に基端部が支持ベースに回動可能に支持されるリフトアーム22と、前記アタッチメントを上下方向に回転駆動するための第1シリンダと、前記リフトアーム22を昇降駆動するための第2シリンダと、前記第2シリンダに並設されて当該第2シリンダを補助する補助シリンダとを有する作業機のための油圧回路であって、当該油圧回路は、
油圧源に接続され、切替位置としての第1位置、第2位置及びニュートラルのN位置をそれぞれ有する第1切換弁及び第2切換弁と、
前記第1切換弁と前記第1シリンダを接続し、前記第1切換弁の第1位置で前記アタッチメントをスクイ作動させ、前記第1切換弁の第2位置で前記アタッチメントをダンプ作動させるように配管された第1油圧配管と、
前記第2切換弁と前記第2シリンダを接続し、前記第2切換弁の第1位置で前記リフトアーム22をリフトアップさせ、前記第2切換弁の第2位置で前記リフトアーム22をリフトダウンさせるように配管された第2油圧配管と、
前記第1シリンダのスクイ作動室と前記補助シリンダのリフトアップ作動室を接続する第3油圧配管と、
前記リフトアーム22の昇降高さに対応して、地面に対する前記アタッチメントの角度を一定にするように、前記第2シリンダから前記第1シリンダに流れる油量を調整する分流制御手段とを有し、
前記第1切換弁をN位置にした状態で、
前記第2切換弁を第1位置に切り替えたとき、前記第2シリンダのリフトダウン作動室から流出した圧油が前記アタッチメントをダンプ作動させるように前記第1シリンダのダンプ作動室に供給されると同時に、当該第1シリンダのスクイ作動室から流出した圧油の一部又は全部が前記補助シリンダのリフトアップ作動室に供給されると共に残りの圧油が油圧源に戻され、かつ、
前記第2切換弁を第2位置に切り替えたとき、前記第2シリンダのリフトアップ作動室から流出した圧油が前記アタッチメントをスクイ作動させるように前記第1シリンダのスクイ作動室に供給されると同時に、当該第1シリンダのダンプ作動室から流出した圧油が前記油圧源に戻され、前記補助シリンダのリフトアップ作動室から流出した圧油が前記第1シリンダのスクイ作動室に戻されるように、前記第1から第3油圧配管を構成したことを特徴とする作業機の油圧回路。
【請求項2】
前記分流制御手段を、通過油量を絞るための2つの絞り部を有する分流制御弁で構成し、当該2つの絞り部の開口比に応じて、一方の絞り部を通して前記第1シリンダに圧油を供給し、他方の絞り部を通して残りの圧油を油圧源に戻すようにしたことを特徴とする請求項1の作業機の油圧回路。
【請求項3】
前記第1切換弁に切替位置としての第3位置を追加し、前記第2切換弁をN位置にした状態で、前記第3位置で前記第1シリンダの前記スクイ作動室を前記ダンプ作動室に接続するように前記第1油圧配管を構成したことを特徴とする請求項1記載の作業機の油圧回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1の油圧回路を備えたことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどに装着して重量物を昇降するフロントローダなどの作業機の油圧回路と、当該油圧回路を備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機はトラクタなどに着脱自在に装着するアタッチメント機器であり、図7のように、トラクタ10の前側に装着するものはフロントローダ20と呼ばれる。このフロントローダ20は、リフトシリンダ21によって昇降するリフトアーム22を有し、このリフトアーム22の先端に、バケット23をはじめとして、フォーク、グレーダ、ロールグラブ、コンテナバケット、ローディングフック等の各種先端アタッチメントが作業内容に応じて取り付けられる。以下、アタッチメントがバケット23であるとして説明することとする。リフトアーム22の先端側上部にはダンプシリンダ24が配設され、このダンプシリンダ24によって、バケット23が前傾(ダンプ作動)又は後傾(スクイ作動)するように構成されている。
【0003】
リフトアーム22の昇降作動とバケット23のダンプ及びスクイ作動は、図8のようにトラクタ10の運転席に設けられた例えばジョイスティック式操作レバー25を、前後左右に操作することで行うようにしている。この操作レバー25は、リフトアーム22の昇降やバケット23のダンプ、スクイ作動の各単独操作のほか、リフトアーム22を上昇又は下降させながらバケット23をダンプ又はスクイ作動させるなど、複合操作ができるようになっている。
【0004】
ところで、フロントローダ20の油圧回路は、例えば特許文献1(特許第3096922号公報)のように、積荷の落下や荷崩れを防止するために、レベリング機構を装備したものが知られている(図9参照)。このレベリング機構によって、リフトアーム22の昇降動作と同時にバケット23がダンプ又はスクイ作動して、地面に対するバケット23の角度がほぼ一定に維持される。
【0005】
すなわち、リフトシリンダ21の横に平行制御シリンダ27を並設し、この平行制御シリンダ27によってバケット23の平行度(地面に対する水平度)を維持する。平行制御シリンダ27の作動室はダンプシリンダ24のスクイ作動室と連結され、リフトアーム22の昇降時に、リフトアーム22の高さに合わせてダンプシリンダ24のスクイ作動室に対する圧油の出し入れを行い、バケット23のレベリングを行うようにしている。
【0006】
また、平行制御シリンダ27を使用しないレベリング機構として、例えば特許文献2(特許第3542373号公報)のような油圧回路も知られている。この油圧回路は、図10に示すように、リフトシリンダ21を作動させてリフトアーム22を上昇させる時は、リフトシリンダ21のヘッド側から出る圧油をダンプシリンダ24のダンプ作動室に導入する。また、リフトアーム22を下降させる時は、リフトシリンダ21のキャップ側から出る圧油を分流制御弁56を通してダンプシリンダ24のスクイ作動室に導入する。このようにして、バケット23のレベリングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3096922号公報
【特許文献2】特許第3542373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フロントローダ20の最大持上力と最大持上高さは、フロントローダ20を装着するトラクタ10の強度やバランス、リフトシリンダ21と油圧ポンプの能力等によって決まる。しかし、バケット23がリフトアーム22の回動支点から水平方向に遠ざかるにつれて、持上可能重量が小さくなるという構造上の制約がある。また、アタッチメントの種類は多種多様であり、大型のアタッチメントになるとそれ自体でかなりの重量がある。このため、フロントローダの使用状態によっては、最大持上力を充分に発揮できない場合がある。
【0009】
前述した特許文献1(特許第3096922号公報)のフロントローダは、平行制御シリンダ27がリフトシリンダに並設されているので、形式上はリフトアームの持上力の一部を負担する形にはなっている。しかしながら、平行制御シリンダ27はダンプシリンダ24をレベリング制御するためのものであり、平行制御シリンダ27のシリンダ断面積とダンプシリンダ24のヘッド側断面積は一定の比率に設定しなければならないという設計上の制約がある。
【0010】
特許文献2(特許第3542373号公報)のフロントローダは、リフトアーム22の持上力をリフトシリンダ21にのみ依存する。このため、リフトアーム22とアタッチメントであるバケット23を水平方向に延ばした状態でリフトアーム22を持ち上げたり、重量のある積荷を持ち上げたりする場合に、リフトシリンダ21の力が不足気味になる場合がある。
【0011】
本発明の目的は、レベリング機構を備えた作業機において、油圧供給源としての油圧ポンプやリフトシリンダの仕様を変更することなく、リフトアームの先端アタッチメントに作用する荷重力を利用して、リフトアームの持上力を必要な大きさで増大させることにある。また、レベリング機構を最適化するにあたり、リフトシリンダやダンプシリンダの利用可能なシリンダ径による設計上の制約を受けないようにすることにある。
【0012】
本発明は前記課題を以下の手段により解決するものである。
すなわち、本発明に係る作業機の油圧回路は、先端部にアタッチメントが回動可能に装着されると共に基端部が支持ベースに回動可能に支持されるリフトアームと、前記アタッチメントを上下方向に回転駆動するための第1シリンダと、前記リフトアーム22を昇降駆動するための第2シリンダと、前記第2シリンダに並設されて当該第2シリンダを補助する補助シリンダとを有する作業機のための油圧回路であって、当該油圧回路は、油圧源に接続され、切替位置としての第1位置、第2位置及びニュートラルのN位置をそれぞれ有する第1切換弁及び第2切換弁と、前記第1切換弁と前記第1シリンダを接続し、前記第1切換弁の第1位置で前記アタッチメントをスクイ作動させ、前記第1切換弁の第2位置で前記アタッチメントをダンプ作動させるように配管された第1油圧配管と、前記第2切換弁と前記第2シリンダを接続し、前記第2切換弁の第1位置で前記リフトアーム22をリフトアップさせ、前記第2切換弁の第2位置で前記リフトアーム22をリフトダウンさせるように配管された第2油圧配管と、 前記第1シリンダのスクイ作動室と前記補助シリンダのリフトアップ作動室を接続する第3油圧配管と、前記リフトアーム22の昇降高さに対応して、地面に対する前記アタッチメントの角度を一定にするように、前記第2シリンダから前記第1シリンダに流れる油量を調整する分流制御手段とを有し、前記第1切換弁をN位置にした状態で、前記第2切換弁を第1位置に切り替えたとき、前記第2シリンダのリフトダウン作動室から流出した圧油が前記アタッチメントをダンプ作動させるように前記第1シリンダのダンプ作動室に供給されると同時に、当該第1シリンダのスクイ作動室から流出した圧油の一部又は全部が前記補助シリンダのリフトアップ作動室に供給されると共に残りの圧油が油圧源に戻され、かつ、前記第2切換弁を第2位置に切り替えたとき、前記第2シリンダのリフトアップ作動室から流出した圧油が前記アタッチメントをスクイ作動させるように前記第1シリンダのスクイ作動室に供給されると同時に、当該第1シリンダのダンプ作動室から流出した圧油が前記油圧源に戻され、前記補助シリンダのリフトアップ作動室から流出した圧油が前記第1シリンダのスクイ作動室に戻されるように、前記第1から第3油圧配管を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リフトアームを昇降駆動する第2シリンダに補助シリンダを並設すると共に、アタッチメントを上下方向に駆動する第1シリンダのスクイ作動室と、前記補助シリンダのリフトアップ作動室を第3油圧配管で接続したので、アタッチメントに作用する積荷の荷重力によりスクイ作動室に発生する圧油を第3油圧配管で取り出して補助シリンダの持上力として活用することができる。このため、大重量の積荷を持ち上げたり、リフトアームを水平方向に延ばした状態で昇降させたりするような使用状態において、従来の油圧回路であればリフトシリンダの持上力が不足する場合であっても、積荷の荷重力を補助シリンダで持上力として活用することができるから、重い積荷でも安定的に昇降させることができる。また、分流制御手段で第2シリンダから第1シリンダに流れる油量を調整することでレベリング機構を最適化することができるので、補助シリンダの容積をレベリングを行う第1シリンダの容積に合わせて限定する必要がなく、第1、第2及び補助シリンダの各シリンダサイズや各リンク寸法間の設計的自由度が広がり、結果としてリフトアームの持上力を必要な大きさで増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るフロントローダの側面図とその油圧回路(ニュートラル時)である。
図2】本発明の実施形態に係るフロントローダの側面図とその油圧回路(リフトアップ時)である。
図3】本発明の実施形態に係るフロントローダの側面図とその油圧回路(リフトダウン時)である。
図4】本発明の実施形態に係るフロントローダの側面図とその油圧回路(スクイ時)である。
図5】本発明の実施形態に係るフロントローダの側面図とその油圧回路(ダンプ時)である。
図6】本発明の実施形態に係るフロントローダの側面図とその油圧回路(ターボダンプ時)である。
図7】従来のフロントローダを装着したトラクタの側面図である。
図8】従来のトラクタの操作レバーの操作方向を示す斜視図である。
図9】従来のフロントローダの側面図とその油圧回路(リフトアップ時)である。
図10】従来の別のフロントローダの側面図とその油圧回路(リフトアップ時)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る作業機としてのフロントローダとその油圧回路を、図面に基づいて説明する。
(フロントローダとその油圧回路)
図1に示すように、フロントローダ20の本体を構成するリフトアーム22の先端部に、アタッチメントとしてのバケット23が支持ピン26によって回動可能に取り付けられている。リフトアーム22の基端部は、図7のトラクタ10に固定的に設けられた支持ベースとしての支持ブラケット29に取り付けられている。すなわち、支持ブラケット29の上部に支持ピン30が設けられ、この支持ピン30によって、リフトアーム22の基端部が回動可能に支持されている。また、リフトアーム22の長手方向中間部の下側に設けられたブラケット32に支持ピン33が設けられ、この支持ピン33と支持ブラケット29の下部に設けられた支持ピン31との間に、リフトシリンダ21が配設されている。
【0016】
リフトシリンダ21は、片ロッド複動型の油圧シリンダであって、そのキャップ側が前記支持ピン31を介して支持ブラケット29に連結され、ヘッド側が前記支持ピン33を介してリフトアーム22のブラケット32に連結されている。本発明の特徴は、リフトシリンダ21に補助シリンダ60を並設したことと、この補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aを、第3油圧配管63によって後述するダンプシリンダ24のスクイ作動室24aと接続したことにある。なお、補助シリンダ60の詳細は油圧回路の基本動作を説明した後に説明する。
【0017】
リフトアーム22の長手方向中間部の上側にブラケット34が配設され、このブラケット34に支持ピン35が設けられている。また、リフトアーム22の先端側には、バケット23の背面に支持ピン39で連結された第1リンク40と、リフトアーム22の先端部に支持ピン41で連結された第2リンク42が配設されている。この第1リンク40と第2リンク42が連結ピン43によって互いに連結され、この連結ピン43と前記ブラケット34の支持ピン35との間に、ダンプシリンダ24が配設されている。ダンプシリンダ24はリフトシリンダ21と同様に片ロッド複動型の油圧シリンダであって、そのキャップ側が前記支持ピン35によってブラケット34に支持され、またヘッド側が連結ピン43によって第1リンク40および第2リンク42に連結されている。
【0018】
油圧源としての油圧ポンプ50はトラクタ10に装備され、この油圧ポンプ50とフロントローダ20が図示しない油圧カプラ等を介して着脱可能に接続されるようになっている。油圧ポンプ50に対して、図示するように第1切換弁51と第2切換弁52が並列状態で接続されている。従って、第1切換弁51と第2切換弁52は単独又は同時に操作可能である。この第1切換弁51と第2切換弁52の操作は、前述した図8の操作レバー25で行うことができる。
【0019】
油圧ポンプ50の出口側にはリリーフ弁49が接続され、このリリーフ弁49を通して所定圧以上の圧油を油圧タンク55に逃がすようにしている。第1切換弁51は、切換位置としての第1位置I、第2位置IIおよびニュートラルのN位置を有し、ダンプシリンダ24に第1油圧配管53を介して接続されている。第2切換弁52は、切換位置としての第1位置I、第2位置II及びニュートラルのN位置を有し、第2油圧配管54を介してリフトシリンダ21に接続されている。また、第2切換弁52に分流制御弁56が接続され、この分流制御弁56が第4油圧配管57を介して第1油圧配管53のスクイ側53aに接続されている。
【0020】
第4油圧配管57には、ブレーキ弁58が接続されている。このブレーキ弁58は、リフトアップ作動時に、ダンプシリンダ24のスクイ作動室24aから排出されて油圧タンク55に戻る圧油の流れを制御することでダンプシリンダ24を制御するためのものである。そのために、リフトシリンダ21のリフトダウン作動室21bから排出されて第2切換弁52を通りダンプシリンダ24のダンプ作動室24bに向かう圧油からのパイロット圧を配管44を通じてブレーキ弁58に導入し、ダンプ作動室24bに続く第1油圧配管53のダンプ側53bに所定の圧力(例えば294kPa=約3kgf/cm2)が立って初めてブレーキ弁58を開放するようにしている。
【0021】
また、第2切換弁52と第1油圧配管53のダンプ側53bとの間にチェック弁59が配設されている。このチェック弁59に対し、分流制御弁56の下流側、つまり第4油圧配管57を通り第1油圧配管53のスクイ側53aに向かう管路から配管45を通してパイロット圧が導入されるようになっている。これにより、分流制御弁56からスクイ作動室24aに流れる圧油に圧力がかかった時、すなわちスクイ作動室24aで圧力が立ち上がった時、チェック弁59が開放されるようになっている。なお、第1油圧配管53、第2油圧配管54及び第4油圧配管57に、それぞれ、リリーフ弁46〜48が設けられている。
【0022】
(フロントローダの作動)
前述したフロントローダ20は以下のように作動する。なお、図1図6において、圧油が発生し又は圧油が流れている油圧配管を分かりやすいように太線で示す。
図1は、第1切換弁51と第2切換弁52が共にN位置に切り替えられた状態を示している。このN位置の状態では、油圧ポンプ50の圧油がリフトシリンダ21とダンプシリンダ24のいずれにも供給されない。このため、リフトアーム22は停止状態を維持する。
【0023】
次に、リフトアーム22をリフトアップ作動させる時、図2のように、第1切換弁51をN位置にしたまま第2切換弁52を第1位置Iに切り替える。これにより、油圧ポンプ50の圧油がリフトシリンダ21のリフトアップ室に導入され、リフトアーム22が支持ピンを中心として矢印方向に上昇する。また、リフトシリンダ21のリフトダウン作動室の圧油が第2油圧配管54のリフトダウン側54bと第2切換弁52を通り、ダンプシリンダ24のダンプ作動室に導入される。そして、リフトアーム22が上昇すると共にダンプシリンダ24が伸長作動し、バケット23がダンプ作動することで、地面に対するバケット23の角度が一定に維持される、いわゆるレベリング作動が行われる。
【0024】
次に、リフトアーム22を下降させる時、図3に示すように、第1切換弁51をN位置にしたまま第2切換弁52を第2位置IIに切り替える。これにより、油圧ポンプ50の圧油が第2切換弁52と第2油圧配管54を通って、リフトシリンダ21のリフトダウン作動室21bに導入される。また、リフトシリンダ21のリフトアップ作動室21aの圧油が、第2油圧配管54のリフトアップ側54a、第2切換弁52、分流制御弁56、第4油圧配管57、第1油圧配管53のスクイ側53aを通って、ダンプシリンダ24のスクイ作動室24aに導入される。そして、リフトアーム22がリフトダウンすると共にバケット23がスクイ作動し、地面に対するバケット23の角度が一定に維持される。ダンプシリンダ24のダンプ作動室24bの圧油は、第1油圧配管53のダンプ側53b、チェック弁59、第2切換弁52を通って油圧タンク55に戻される。
【0025】
リフトアーム22を下げてバケット23を地面に付けた状態で、さらにリフトアーム22を下げると、地面から受ける反力によりバケット23がスクイ側に回転しようとする(この時、スクイ作動室24aの圧力が急減する)。この回転を許すと、バケット23を地面に押さえ付けることによってトラクタ10の前輪を浮かせる操作ができない。チェック弁59はこのような場合のバケット23のスクイ側への回転を防止するもので、スクイ作動室24aが負圧になると当該負圧でチェック弁59が自動的に閉じてダンプシリンダ24をロックする。これにより、リフトアーム22のリフトダウンによるトラクタ10の前輪浮かせ操作が可能になる。
【0026】
次に、バケット23がスクイ作動する時は、図4に示すように第2切換弁をN位置にし、第1切換弁51を第1切換位置に切り替える。これにより、油圧ポンプ50の圧油が第1切換弁51と第1油圧配管53のスクイ側53aを通ってダンプシリンダ24のスクイ作動室24aに導入され、これによりバケット23がスクイ作動する。ダンプシリンダ24のダンプ作動室24bの圧油は、第1油圧配管53のダンプ側53bと第1切換弁51を通って油圧タンク55に戻される。
【0027】
次に、バケット23をダンプ作動する時は、図5に示すように、第2切換弁をN位置に切り替え、第1切換弁51を第2切換位置IIに切り替える。これにより、油圧ポンプ50の圧油が第1切換弁51と第1油圧配管53のダンプ側53bを通って、ダンプシリンダ24のダンプ作動室24bに導入される。そして、ダンプシリンダ24が伸長作動してバケット23がダンプ作動する。ダンプシリンダ24のスクイ作動室24aの圧油は、第1油圧配管53のスクイ側53aと第1切換弁51を通って、油圧タンク55に戻される。
【0028】
次に、ターボダンプについて説明する。このターボダンプを行うためには、図6に示すように、第1切換弁51にターボダンプ切換位置Tを増設する。このターボダンプ切換位置Tによって、ダンプ作動時にスクイ作動室24aから排出される圧油を、第1油圧配管53のスクイ側53aを通り、さらに第1切換弁51のターボダンプ切換位置Tを通り、再びダンプシリンダ24のダンプ作動室24bに導入する。これにより、スクイ作動室24aから排出される圧油をダンプシリンダ24のダンプ作動に利用することができ、ダンプ作動を増速することができる。
【0029】
(補助シリンダとその作動)
補助シリンダ60は、支持ブラケット29の中間高さ位置に設けた支持ピン61と、リフトアーム22に設けた支持ピン62との間に配設されている。補助シリンダ60は、片ロッド単動型の油圧シリンダであって、上昇レベリング時の補助シリンダの容積増大量(押し込み量)は、その時のダンプシリンダのスクイ作動室の容積減少量(吐き出し量)以下になるように設計する。
【0030】
補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aとダンプシリンダ24のスクイ作動室24aが、第3油圧配管63によって、直接連結されている。そして、補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aとダンプシリンダ24のスクイ作動室24aの相互間で、第3油圧配管63を経由した圧油の相互移動が可能とされている。これによって、ダンプシリンダ24のスクイ作動室24aの圧力が補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aに導入され、当該圧力がリフトアーム22を押し上げる方向に作用する。
【0031】
本発明は、このようにダンプシリンダ24のスクイ作動室24aを補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aに直接連結しているので、スクイ作動室24aの圧油をリフトアームの持上力として有効利用することができ、これにより油圧ポンプ50にかかる負荷を低減し、省エネ運転を行うことができる。
【0032】
詳しくは、リフトアップ作動を示す図2のように、バケット23がほぼ水平状態にされ、しかもリフトアーム22もほぼ水平状態にされて、支点ピン30からバケット23の積荷を含む重心Gまでの距離をR1とすると、リフトアーム22に作用する支持ピン30回りのモーメントM1は、M1=R1×Wである。また、バケット23の支持ピン26を中心とする回転モーメントM2は、支持ピン26から重心Gまでの距離をR2とすると、M2=R2×Wである。この回転モーメントM2によって、ダンプシリンダ24のピストンロッドが強く引っ張られ、スクイ作動室24aに大きな油圧が発生する。
【0033】
本発明の油圧回路では、スクイ作動室24aに発生する大きな油圧上昇を、補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aに導入し、リフトアーム22の持ち上げ補助力として有効利用することができる。リフトシリンダ21によるリフトアーム22の持ち上げモーメントをML、補助シリンダによるリフトアーム22の持ち上げモーメントをMAとすると、M1=R1×W=ML+MAで表される。従って、W=(ML+MA)/R1となり、持ち上げ可能な最大荷重が増大する。これにより、重い積荷をバケット23に搭載し、リフトアーム22を水平方向に長く延ばした状態で支持するような場合でも、バケット23の積荷を安定的に昇降移動させることができる。
【0034】
このようにリフトアーム22をリフトシリンダ21と補助シリンダ60の2つのシリンダによって支持し、補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aをダンプシリンダ24のスクイ作動室24aに連結した構造においても、バケット23の角度は従来(特許文献2の発明)通り確保される。
【0035】
すなわち、リフトアーム22を図2のように上昇させる場合は、前述したようにリフトアーム22が上昇すると共にダンプシリンダ24が伸長作動し、バケット23がダンプ作動して地面に対するバケット23の角度が一定に維持される。この時、スクイ作動室24aから補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aに圧油が流れるが、リフトアップ作動ではスクイ作動室24aから第1油圧配管53のスクイ側53aに排出される圧油を第1油圧配管53のダンプ側53bの圧力に応じてブレーキ弁58から逃がす一方なので、その一部又は全部が補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aに流れても、バケット23のレベリング作動にはまったく影響がない。
【0036】
また、リフトアーム22を図3のように下降させる場合、リフトシリンダ21のリフトアップ作動室21aから排出された圧油が、分流制御弁56で分流されてダンプシリンダ24のスクイ作動室24aに導入される。分流制御弁56は2つの絞り部56a、56bの穴径の比(分流比)によって圧油を分流し、一方の絞り部56aを通過した圧油をスクイ作動室24aに導入し、残りの圧油は油圧タンク55に戻す。前記分流比は、バケット23が正しくレベリング作動するように、リフトシリンダ21のリフトアップ作動室21a、ダンプシリンダ24のスクイ作動室24a及び補助シリンダ60のリフトアップ作動室60aの各容積の比率に基づいて設定することができる。分流比を適切に設定することにより、分流制御弁56の絞り部56aからレベリングに必要な油量がダンプシリンダ24のスクイ作動室24aに導入され、リフトダウン作動でもバケット23のレベリング作動が正しく行われる。
【0037】
分流制御弁56の分流の仕組みは次の通りである。すなわち、2つの絞り部56a、56bを通過する圧油の量のバランスによって、内部のスプールが軸方向に片側又は反対側に移動する。そして一方の絞り部56a(56b)を通過する圧油の量が増大すると、当該絞り部56a(56b)での圧力損失が増えてスプールを反対側に移動させる力が働き、スプールが反対側に移動する。そうすると今度は一方の絞り部56a(56b)を通過する圧油の量が減少し、この反対に反対側の絞り部56b(56a)を通過する圧油の量が増え、タンクに戻される圧油の量が増大する。
【0038】
分流制御弁56のスプールが以上のような左右動を繰り返すことで、リフトダウン作動時にリフトシリンダ21のリフトアップ作動室21aから排出される圧油が一定割合でダンプシリンダ24のスクイ作動室24aに供給され、これにより地面に対するバケット23の角度が一定に維持される。
【0039】
なお、分流制御弁56は絞り部56a、56bの他に第3の絞り部56cを有する。この第3の絞り部56cは、ダンプシリンダ24を限界までフルでスクイ作動させた状態でリフトアーム22をリフトダウン操作しようとした時に、リフトシリンダ21のリフトアップ作動室21aから排出される圧油を油圧タンク55に徐々に逃がすためのものである。この第3の絞り部56cがないと、バケット23のスクイ角度によってはリフトダウン操作ができなくなることもある。絞り部56cは分流制御弁56の上流側又は下流側に配設することも可能である。
【0040】
分流制御弁56は以上のように構成されている。この分流制御弁56により、レベリング機構の最適化が容易となり、作業機の設計の自由度を高めることができる。すなわち、従来の特許文献1のように平行制御シリンダ27を使用したレベリング機構では、その最適化を図るために、リフトシリンダ21やダンプシリンダ24の取り付け位置やそのリンク機構を、レベリングに対応させて設計する必要があった。リフトシリンダ21やダンプシリンダ24に利用できる市販のシリンダの径(シリンダ容積)の種類は段階的であるため、作業機を設計する場合は利用可能なシリンダ径に合わせて前記取り付け位置やリンク機構を設計する必要があるからである。しかし、本発明では分流制御弁56の絞り部56a、56bの穴径の比でレベリング機構の最適化を図ることができるので、利用可能なシリンダ径による設計上の制約から離れて作業機を自由に設計することが可能になる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、前記実施形態では、分流制御手段として2つの絞り部56a、56bの通過油量で分流作用を行う分流制御弁56を使用したが、この分流制御弁56に代えて、先端アタッチメントの傾斜角やリフトアーム22の傾斜角を角度センサで検知し、当該検知結果に基づいて可変ノズルのノズル開口面積を調節する形式の分流弁に置き換えてもよい。リフトシリンダ21やダンプシリンダ24の向きは、キャップ側とヘッド側を反対にしてもよい。また、補助シリンダは1本だけでなくスペース的余裕があれば例えば2本並設することも可能である。また、リフトアーム22は一体形に限らず長手方向中間部で屈曲可能な形式に変更することもできる。また、先端アタッチメントはバケット23に限らず、フォーク、グレーダ、ロールグラブ、コンテナバケット、ローディングフック等の各種先端アタッチメントを装着可能である。また、本発明はフロントローダ以外の各種作業機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10:トラクタ
20:フロントローダ
21:リフトシリンダ
22:リフトアーム
23:バケット
24:ダンプシリンダ
46〜49 :リリーフ弁
50:油圧ポンプ
51:第1切換弁
52:第2切換弁
53:第1油圧配管
54:第2油圧配管
56:分流制御弁
56a〜56c:絞り部
57:第4油圧配管
58:ブレーキ弁
60:補助シリンダ
63:第3油圧配管
図1
図2
図3
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図10