(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
ガス保守可能なケーブルに止水処理を施した止水部と、前記ケーブルに流れるガスを前記止水部の上流側から下流側へ前記止水部を迂回して流すバイパス部であって、前記下流側から前記上流側への水の流れを止める逆止弁を有するバイパス部と、を備えることを特徴とするガス保守可能なケーブルの止水構造が明らかとなる。
このような止水構造によれば、ガス保守可能なケーブルの浸水を途中で止めることができる。
【0015】
前記ケーブルは、外被の内側に導電性フィルムを有し、前記止水部では、前記外被及び前記導電性フィルムが除去されており、前記バイパス部は、上流側の前記導電性フィルムと下流側の前記導電性フィルムとを前記止水部を迂回して電気的に接続することが望ましい。これにより、上流側の導電性フィルムと下流側の導電性フィルムを同電位にできる。
【0016】
前記バイパス部は、導体と被覆とを有し、上流側の前記導電性フィルムと下流側の前記導電性フィルムとを電気的に接続する電線と、前記電線の内部の水の流れを止める封止部とを有することが望ましい。これにより、電線(例えば後述するアース線)の内部の水の流れを止めることができる。
【0017】
前記ケーブルの外被を除去し、前記外被の除去部分を止水用ケースで覆い、前記止水用ケース内に樹脂を充填することによって、前記止水部が形成されることが望ましい。これにより、ケーブル内の隙間を樹脂で埋めることによって止水処理を施すことができる。
【0018】
前記バイパス部は、前記止水部の上流側に設けられ、前記ケーブルの外被の除去部分を覆う上流側バイパス用ケースと、前記止水部の下流側に設けられ、前記ケーブルの外被の除去部分を覆う下流側バイパス用ケースと、前記上流側バイパス用ケースと前記下流側バイパス用ケースとを、前記逆止弁を介して連結するバイパス管とを備えることが望ましい。これにより、通常の状態では、ケーブルを流れるガスは、止水部の上流側からバイパス部を経由して下流側に流れることができる。また、ガスの供給が停止した状況下でケーブルに水が侵入したときに、水が止水部を迂回してバイパス部に侵入しても、逆止弁によって上流側への浸水を止めることができる。
【0019】
ガス保守可能なケーブルに止水処理を施した止水部を形成する工程と、前記止水部を迂回してガスを前記止水部の上流側から下流側へ流すバイパス部であって、前記下流側から前記上流側への水の流れを止める逆止弁を有するバイパス部を形成する工程とを備えることを特徴とするガス保守可能なケーブルの止水構造の製造方法が明らかになる。
このような製造方法によれば、ガス保守可能なケーブルの浸水を途中で止めることができる止水構造を製造できる。
【0020】
前記ケーブルの外被を除去し、前記外被の除去部分を止水用ケースで覆い、前記止水用ケース内に樹脂を充填することによって、前記止水部を形成することが望ましい。これにより、ケーブル内の隙間を樹脂で埋めることによって止水処理を施すことができる。
【0021】
前記ケーブルの外被を除去した後、心線の隙間を広げるようにピンを挿入し、前記ピンを挿入したまま前記止水用ケース内に樹脂を充填することによって、前記止水部を形成することが望ましい。これにより、これにより、隙間無く樹脂を埋めることができる。
【0022】
前記止水用ケース内の樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂を前記止水用ケースによって圧迫することが望ましい。これにより、止水部の止水機能がより向上する。
【0023】
前記ケーブルの外被を除去し、前記外被の除去部分を止水用ケースで覆い、前記止水用ケース内に樹脂を充填することによって、前記止水部を形成し、前記止水部の形成後に、前記止水部の上流側において、前記ケーブルの外被を除去し、除去部分を覆うように上流側バイパス用ケースを設け、前記止水部の下流側において、前記ケーブルの外被を除去し、除去部分を覆うように下流側バイパス用ケースを設けることによって、前記上流側バイパス用ケースと、前記下流側バイパス用ケースと、前記逆止弁を有し前記上流側バイパス用ケースと前記下流側バイパス用ケースとを連結するバイパス管と、を備えた前記バイパス部を形成することが望ましい。これにより、通常の状態では、ケーブルを流れるガスを、止水部の上流側からバイパス部を経由して下流側に流すことができる止水構造を製造できる。また、ガスの供給が停止した状況下でケーブルに水が侵入したときに、水が止水部を迂回してバイパス部に侵入しても、逆止弁によって上流側への浸水を止めることができる止水構造を製造できる。また、止水部を形成した後に止水部の上流側及び下流側で外被を除去するので、除去部分の間の外被15が長さ方向にずれにくい。
【0024】
ガス保守可能なケーブルに止水構造を形成するための止水キットであって、前記ケーブルの外被を除去した止水用除去部分を覆うための止水用ケースと、止水処理のために前記止水用ケースの内部に充填される樹脂を包装した樹脂パックと、前記止水用除去部分の上流側で前記ケーブルの外被を除去した上流側除去部分を覆うための上流側バイパス用ケースと、前記止水用除去部分の下流側で前記ケーブルの外被を除去した下流側除去部分を覆うための下流側バイパス用ケースと、逆止弁を有し、前記上流側バイパス用ケースと前記下流側バイパス用ケースとを連結するためのバイパス管とを備えることを特徴とする止水キットが明らかとなる。
このような止水キットによれば、ガス保守可能なケーブルの浸水を途中で止めることができる止水構造を組み立てられる。
【0025】
前記樹脂パックは、主剤と硬化剤とを仕切って包装しているとともに、内部で前記主剤と前記硬化剤とを混合可能であることが望ましい。これにより、作業者は必要なときに2液を混合できる。
【0026】
===止水構造===
<概要>
図1は、止水構造1の全体斜視図である。
図2は、止水構造1の概要の説明図である。
【0027】
以下の説明では、
図1及び
図2に示すように、「長さ方向」、「上流」、「下流」、「上」及び「下」を定義する。すなわち、ケーブル10の方向を「長さ方向」とする。また、ケーブル10内に流れるガスの方向を基準にして「上流」と「下流」が定義される。また、止水構造1から見て樹脂注入口32Aのある側を「上」とし、逆側を「下」とする。
【0028】
ケーブル10は、ガス保守可能な構造になっており、ケーブル10内の隙間はガスの通路になっている。通常、ケーブル10の上流にある局舎側のケーブル末端からガス(例えば乾燥空気)が大気圧以上の圧力で送り出され、ケーブル10内にガスが充填されている。
図2中には、ガスの流れる方向が白抜きの矢印で示されている。
【0029】
ガスの供給が停止した状況下でケーブル10の外被の損傷箇所から水が侵入すると、ガスの通路であったケーブル10内の隙間を伝って水が逆流(走水)するおそれがある。
図2中には、このときの水の流れる方向が黒塗り矢印で示されている。水がケーブル10の下流側から上流側へ流れると、つまり、水が局舎側に向かって流れると、幹線ケーブルが浸水するおそれがある。
【0030】
止水構造1の中央部には、ケーブル10に止水処理を施した止水部20が形成されている(
図2参照)。止水部20では、ケーブル10の外被が除去されており、ケーブル10内の多数のメタル心線11の隙間を樹脂で埋めることによって止水処理が施されている。これにより、下流側から上流側への水の流れは、止水部20によって止められることになる。但し、ガスの流れも、止水部20によって止められることになる。
【0031】
そこで、止水部20を迂回してガスを流すためのバイパス部40が設けられている。これにより、ケーブル10を流れるガスは、止水部20の上流側からバイパス部40のバイパス管46を経由して下流側に流れることになる。但し、バイパス部40を経由して水が下流側から上流側に流れるおそれがある。
【0032】
このため、本実施形態では、バイパス部40に逆止弁47が設けられている。バイパス部40に逆止弁47が設けられることにより、通常の状態では、ケーブル10を流れるガスは、止水部20の上流側からバイパス部40を経由して下流側に流れることができる。また、ガスの供給が停止した状況下でケーブル10の外被の損傷箇所から水が侵入し、水が止水部20を迂回してバイパス部40に侵入しても、逆止弁47によって上流側への浸水を止めることができるのである。
【0033】
このように、本実施形態の止水構造1の主な構成要素は、ガス保守可能なケーブル10と、止水部20と、逆止弁47を有するバイパス部40である。以下、これらの構成要素について詳しく説明する。
【0034】
<ケーブル10>
図3は、ケーブル10の断面図である。
【0035】
ケーブル10は、内側から順に、多数のメタル心線11と、押さえ巻き12と、LAPシース13とを備えている。LAPシース13は、アルミニウムテープ14(導電性フィルム)と、外被15とから構成されている。ケーブル10は、例えば、電話通信用のLAPシースケーブルである。この場合、ケーブル10は、例えば1024本のメタル心線11を備えている。
【0036】
ケーブル10は、ガス保守可能な構造になっており、主に、メタル心線11同士の間、メタル心線11と押さえ巻き12との間、押さえ巻き12とLAPシース13との間に隙間がある。ケーブル10内のこれらの隙間は、ガスの通路になる。また、ガスの供給が停止した状況下でケーブル10内に水が侵入すると、これらの隙間は水の通路にもなる。
【0037】
ケーブル10に流れるガスは、例えば乾燥空気である。但し、乾燥空気に限られず、不活性ガスや、匂い付きのガスなどであっても良い。
【0038】
図2に示すように、本実施形態の止水構造1では、ケーブル10の3箇所で外被15(及びアルミニウムテープ14)が除去されている。以下の説明では、止水構造1の中央部における外被15の除去部分のことを止水用除去部分17と称し、止水用除去部分17の上流側における外被15の除去部分のことを上流側除去部分18と称し、止水用除去部分17の下流側における外被15の除去部分のことを下流側除去部分19と称する。
【0039】
止水用除去部分17は、止水処理を施すために外被15が除去された部分である。上流側除去部分18は、止水部20の上流側でガスをケーブル10から取り出すために外被15が除去された部分である。下流側除去部分19は、止水部20の下流側でガスをケーブル10に供給するために外被15が除去された部分である。
【0040】
<止水部20>
図4は、止水部20に用いられる止水用ケース22の斜視図である。
図5Aは、止水用ケース22の正面図である。
図5Bは、止水用ケース22の側面図である。
図5Cは、止水用ケース22の断面図である。以下、これらの図と
図1及び
図2を用いて、止水部20の構成について説明する。
【0041】
止水部20は、止水構造1の中央部に位置している。止水部20は、ガス保守可能なケーブル10に止水処理を施した部分である。止水用除去部分17において樹脂がメタル心線11の隙間を埋めることによって、止水処理が施されている。止水用除去部分17は、止水用ケース22で覆われており、止水用ケース22に樹脂が充填されることによって、止水処理が施された止水部20が形成されている。
【0042】
止水部20を構成する樹脂は、密封用混和物であり、例えばSUD用コンパウンドである。止水部20を構成する樹脂は、主剤と硬化剤の2液を混合させた直後のジェリー状の混和物を止水用ケース22に充填し、止水用ケース22内で硬化させたものである。
【0043】
止水用ケース22は、ケーブル10の外被15の除去された止水用除去部分17を覆うための筒状の容器である。止水用ケース22に樹脂を充填する前は、止水用ケース22は、止水用除去部分17の周囲に樹脂充填用の空間を形成しつつ、止水用除去部分17の上流側及び下流側においてケーブル10の外周と密着している。なお、止水用ケース22内の樹脂を硬化させた後は、止水用ケース22は、硬化した樹脂を外側から圧迫して、止水部20の止水機能をより向上させる機能もある。
【0044】
止水用ケース22の上部には、樹脂注入口32Aと、2つの空気抜き口33Aがある。樹脂注入口32A及び空気抜き口33Aは、樹脂注入口32Aが空気抜き口33Aの間に挟まれるようにして、長さ方向に沿って設けられている。樹脂注入口32A及び空気抜き口33Aには、通常、ネジがセットされている。樹脂注入口32A及び空気抜き口33Aは、止水用ケース22の内部空間(樹脂充填用の空間)と連通している。
【0045】
なお、樹脂注入口32Aは、止水用ケース22の上部中央ではなく、長さ方向の上流側又は下流側に偏って設けられても良い。また、空気抜き口33Aは、1つでも良いし、2つ以上であっても良い。但し、空気抜き口33Aは、樹脂の充填時に止水用ケース22内の空気を抜く機能を確保するために、樹脂注入口32Aと同じ高さか、樹脂注入口32Aよりも高く配置する必要がある。
【0046】
止水用ケース22は、筒形状の側面を開くことができる。これにより、止水用ケース22の側面からケーブル10を内部に被せ込むことができる。
【0047】
止水用ケース22は、ケース本体23と、止水用パッキン24とを備えている。
【0048】
ケース本体23は、金属製の筒状の部材である。ケース本体23は、半円筒状の上ケース23A及び下ケース23Bをヒンジでつなげた構成であり、ヒンジの反対側に留め具が形成されている。留め具を外し、留め具側の上ケース23Aと下ケース23Bとを離すようにすれば、ヒンジを中心にして止水用ケース22の側面が開くことになる。
【0049】
上ケース23Aの上側には、台座ベース31と、樹脂用継手台32と、2個の空気用継手台33とが設けられている。台座ベース31は、樹脂用継手台32及び空気用継手台33の基台であり、長さ方向に沿って取り付けられている。
【0050】
樹脂用継手台32は、樹脂注入口32Aを開口とする樹脂注入通路を備えている。樹脂注入口32Aにはネジ穴が形成されている。通常時には、樹脂注入口32Aにネジがセットされている。樹脂注入時には、チューブを連結するための継手が樹脂注入口32Aに接続されることになる。樹脂用継手台32の下部の管は、止水用ケース22の内部空間(樹脂充填用の空間)と連通している(
図5C参照)。また、樹脂用継手台32の下部の管の外周には、ナットを固定するためのネジ山が形成されている。樹脂用継手台32は、上ケース23A及び止水用パッキン24を挟み込むようにして、ナットで固定されている。
【0051】
空気用継手台33は、空気抜き口33Aを開口とする空気抜き通路を備えている。空気抜き口33Aにはネジ穴が形成されている。通常時には空気抜き口33Aにネジがセットされている。樹脂注入時にはネジが外されて、空気抜き口33Aが開放されることになる。
図5Cに示す樹脂用継手台32の場合とほぼ同様に、空気用継手台33の下部の管は止水用ケース22の内部空間(樹脂充填用の空間)と連通している。また、空気用継手台33の下部の管の外周には、ナットを固定するためのネジ山が形成されている。空気用継手台33は、上ケース23A及び止水用パッキン24を挟み込むようにして、ナットで固定されている。
【0052】
止水用パッキン24は、ケース本体23の内側に取り付けられた筒状のゴムパッキンである。止水用パッキン24の外径はケース本体23の内径とほぼ等しい。また、止水用パッキン24の長さ方向の寸法は、ケース本体23の長さ方向の寸法とほぼ等しい。
【0053】
図6Aは、止水用パッキン24の斜視図である。
図6Bは、止水用パッキン24の上面図である。
図6Cは、止水用パッキン24の断面図である。
【0054】
筒形状の止水用パッキン24の側面にはスリット24Aが形成されている。止水用ケース22の側面を開いてケーブル10を被せ込むとき、止水用パッキン24の側面のスリット24Aを開くことになる。
【0055】
止水用パッキン24の上側には、3個の穴が形成されている。それぞれの穴には、樹脂用継手台32や空気用継手台33の下部の管が挿入されており、これにより樹脂注入通路や空気抜き通路が形成されている。また、樹脂用継手台32や空気用継手台33の下部の管が止水用パッキン24の内側からナットで固定されることによって、止水用パッキン24がケース本体23に取り付けられている(
図5C参照)。
【0056】
止水用パッキン24の長さ方向の両端部の内周面は、ケーブル10の外周と密着する接触面24Bになる。このため、接触面24Bの内径は、ケーブル10の外周に密着できる寸法に設計されている。これにより、止水用パッキン24の長さ方向の端部には、ケーブル10の外周との間から樹脂を漏洩させないための隔壁が形成されている。
【0057】
止水用パッキン24の中央部(接触面24Bと接触面24Bの間)の内面には凹部24Cが形成されている。凹部24Cの内径は、接触面24Bの内径よりも大きく形成されている。接触面24Bがケーブル10の外周と密着していても、凹部24Cの内面とケーブル10との間に空間が形成され、この空間に樹脂が充填されている。止水用パッキン24の上側の3個の穴は、いずれも凹部24Cと連通している。
【0058】
ケーブル10の止水用除去部分17の全てが止水用パッキン24の凹部24Cに対向するように、止水用ケース22がケーブル10に取り付けられている。また、止水用除去部分17に隣接し外被15が除去されていない部分が止水用パッキン24の接触面24Bに対向(密着)するように、止水用ケース22がケーブル10に取り付けられている。このようにして、止水用ケース22は、止水用除去部分17を覆うように、ケーブル10に取り付けられている。
【0059】
<バイパス部40>
バイパス部40は、ケーブル10を流れるガスを止水部20の上流側から下流側へ止水部20を迂回して流すための部材である。
図1及び
図2に示すように、バイパス部40は、止水部20の上流側に設けられた上流側のバイパス用ケース42と、止水部20の下流側に設けられた下流側のバイパス用ケース42と、上流側及び下流側のバイパス用ケース42を連結するバイパス管46とを備えている。バイパス管46には、逆止弁47が設けられている。また、上流側及び下流側のバイパス用ケース42の間には、アース線用配管48も連結されている。
【0060】
図7は、上流側のバイパス用ケース42の斜視図である。
図8Aは、上流側のバイパス用ケース42の正面図である。
図8Bは、上流側のバイパス用ケース42の側面図である。
図8Cは、上流側のバイパス用ケース42の断面図である。以下、これらの図と
図1及び
図2を用いて、バイパス部40の構成について説明する。なお、下流側のバイパス用ケース42は上流側のバイパス用ケース42と長さ方向に対称な構成であるので、ここでは主に上流側のバイパス用ケース42について説明し、下流側のバイパス用ケース42の説明を一部省略することがある。
【0061】
上流側のバイパス用ケース42は、ケーブル10の外被15の除去された上流側除去部分18を覆うための筒状の容器である。上流側のバイパス用ケース42は、上流側除去部分18から漏れ出たケーブル10内のガスを取り込み、バイパス管46に送り出すための部材である。これに対し、下流側のバイパス用ケース42は、バイパス管46から供給されるガスを下流側除去部分19からケーブル10に供給するための部材である。
【0062】
バイパス用ケース42は、内部空間と連通する2つの通路を有している。2つの通路は、バイパス用ケース42の上側に、長さ方向に沿って設けられている。2つの通路のうちの外側の通路はガス通路であり、内側の通路はアース線通路である。なお、2つの通路のうちの外側の通路をアース線通路にし、内側の通路をガス通路にしても良い。ガス通路はバイパス管46と連絡し、アース線通路はアース線用配管48と連絡している。
【0063】
バイパス用ケース42は、止水用ケース22とほぼ同様に、筒形状の側面を開くことができる。これにより、バイパス用ケース42の側面からケーブル10を内部に被せ込むことができる。
【0064】
バイパス用ケース42は、ケース本体43と、バイパス用パッキン44とを備えている。
【0065】
ケース本体43は、金属製の筒状の部材である。ケース本体43は、半円筒状の上ケース43A及び下ケース43Bをヒンジでつなげた構成であり、ヒンジの反対側に留め具が形成されている。留め具を外し、留め具側の上ケース43Aと下ケース43Bとを離すようにすれば、ヒンジを中心にしてバイパス用ケース42の側面が開くことになる。
【0066】
上ケース43Aの上側には、台座ベース51と、ガス用継手台52と、アース線用継手台53とが設けられている。台座ベース51は、ガス用継手台52及びアース線用継手台53の基台であり、長さ方向に沿って取り付けられている。
【0067】
ガス用継手台52は、ガス通路を備えている。ガス用継手台52には、バイパス管46と連結するための継手が取り付けられている。ガス用継手台52の下部の管は、バイパス用ケース42の内部空間と連通している。また、ガス用継手台52の下部の管の外周には、ナットを固定するためのネジ山が形成されている。ガス用継手台52は、上ケース43A及びバイパス用パッキン44を挟み込むようにして、ナットで固定されている。
【0068】
アース線用継手台53は、アース線71を配線するためのアース線通路を備えている。アース線用継手台53には、アース線用配管48と連結するための継手が取り付けられている。アース線用継手台53の下部の管は、バイパス用ケース42の内部空間と連通している(
図8C参照)。また、アース線用継手台53の下部の管の外周には、ナットを固定するためのネジ山が形成されている。アース線用継手台53は、上ケース43A及びバイパス用パッキン44を挟み込むようにして、ナットで固定されている。
【0069】
バイパス用パッキン44は、ケース本体43の内側に取り付けられた筒状のゴムパッキンである。バイパス用パッキン44の外径は、ケース本体43の内径とほぼ等しい。また、バイパス用パッキン44の長さ方向の寸法は、ケース本体43の長さ方向の寸法とほぼ等しい。
【0070】
図9Aは、バイパス用パッキン44の斜視図である。
図9Bは、バイパス用パッキン44の上面図である。
図9Cは、バイパス用パッキン44の断面図である。
【0071】
筒形状のバイパス用パッキン44の側面にはスリット44Aが形成されている。バイパス用ケース42の側面を開いてケーブル10を被せ込むとき、バイパス用パッキン44の側面のスリット44Aを開くことになる。
【0072】
バイパス用パッキン44の上側には、2個の穴が構成されている。それぞれの穴には、ガス用継手台52やアース線用継手台53の下部の管が挿入されており、これによりガス通路やアース線通路が形成されている。また、ガス用継手台52やアース線用継手台53の下部の管がバイパス用パッキン44の内側からナットで固定されることによって、バイパス用パッキン44がケース本体43に取り付けられている(
図8C参照)。
【0073】
バイパス用パッキン44の長さ方向の両端部の内周面は、ケーブル10の外周と密着する接触面44Bになる。バイパス用パッキン44の接触面44Bの内径は、止水用パッキン24の接触面24Bの内径と等しく、ケーブル10の外周に密着できる寸法に設計されている。これにより、バイパス用パッキン44の長さ方向の端部には、ケーブル10の外周との間からガスを漏洩させないための隔壁が形成されている。
【0074】
バイパス用パッキン44の中央部(接触面44Bと接触面44Bの間)の内面には凹部44Cが形成されている。凹部44Cの内径は、接触面44Bの内径よりも大きく形成されている。接触面44Bがケーブル10の外周と密着しても、凹部44Cの内面とケーブル10との間に空間が形成され、この空間にケーブル10に流れるガスが充満することになる。バイパス用パッキン44の上側の2個の穴は、いずれも凹部44Cと連通している。
【0075】
ケーブル10の上流側除去部分18の全てがバイパス用パッキン44の凹部44Cに対向するように、上流側のバイパス用ケース42がケーブル10に取り付けられている。また、上流側除去部分18に隣接し外被15が除去されていない部分がバイパス用パッキン44の接触面44Bに対向(密着)するように、上流側のバイパス用ケース42がケーブル10に取り付けられている。このようにして、上流側のバイパス用ケース42は、上流側除去部分18を覆うように、ケーブル10に取り付けられている。同様に、下流側のバイパス用ケース42は、下流側除去部分19を覆うように、ケーブル10に取り付けられている。
【0076】
バイパス管46は、止水部20を迂回してガスを流すための配管である。バイパス管46の一端は、継手を介して、上流側のバイパス用ケース42のガス用継手台52に接続されている。バイパス管46の他端は、継手を介して、下流側のバイパス用ケース42のガス用継手台52に接続されている。これにより、バイパス管46は、上流側のバイパス用ケース42で取り込まれたガスを下流側のバイパス用ケース42へ送ることができる。
【0077】
バイパス管46には逆止弁47が設けられている。逆止弁47は、上流側から下流側へのガスの流れは止めずに、下流側から上流側への水の流れは止める弁である。逆止弁47は、一方向へのガスの流れを許容しつつ、逆方向への水の流れを止める機能があれば、種々の方式のものを適宜採用することができる。また、逆止弁47は、逆方向へのガスの流れも止めるものでも良いし、逆方向へのガスの流れは許容するものでも良い。
【0078】
通常の状態では、ケーブル10を流れるガスは、上流側のバイパス用ケース42内の上流側除去部分18で漏れ出し、上流側のバイパス用ケース42に取り込まれ、上流側のバイパス用ケース42のガス通路を介してバイパス管46に送られて、バイパス管46の逆止弁47を通過する。バイパス管46を通過したガスは、下流側のバイパス用ケース42に送られ、下流側のバイパス用ケース42内の下流側除去部分19からケーブル10に戻る。このようにして、通常の状態では、ケーブル10を流れるガスは、止水部20の上流側から下流側へ止水部20を迂回して流れる。
【0079】
ガスの供給が停止した状況下でケーブル10の外被15の損傷箇所から水が侵入した場合、ガスの通路であったケーブル10内の隙間を伝って水が逆流(走水)することがある。逆流した水が本実施形態の止水構造1に達すると、下流側のバイパス用ケース42内の下流側除去部分19から水が漏れ出し、下流側のバイパス用ケース42に取り込まれ、バイパス用ケース42のガス通路を介してバイパス管46に送られることになる。但し、バイパス管46に逆止弁47が設けられているため、バイパス管46に送られた水の流れは、逆止弁47によって止められ、それ以上に上流側へ逆流することが防止される。これにより、本実施形態の止水構造1よって、上流側への浸水を止めることができる。
【0080】
アース線用配管48は、止水部20を迂回してアース線71(ボンド線)を配線するための配管である。アース線71は、止水構造1よりも上流側のケーブル10のアルミニウムテープ14(導電性フィルム)と、止水構造1よりも下流側のケーブル10のアルミニウムテープ14とを電気的に接続している。アース線71は、アース線用配管48内に配線されている。
上流側のバイパス用ケース42内において、上流側除去部分18の上流側の外被15の下のアルミニウムテープ14が、アース線用配管48に配線されたアース線71と接続されている。また、下流側のバイパス用ケース42内において、下流側除去部分19の下流側の外被15の下のアルミニウムテープ14が、アース線用配管48に配線されたアース線71と接続されている。なお、アース線用配管48のアース線71は、継手を介してバイパス用ケース42のアース線通路内を通り、ケーブル10のアルミニウムテープ14に接続されている。
【0081】
アース線71は、導体と、導体を覆う被覆とから構成された電線(ボンド線)であり、導体と被覆との間に隙間がある。このため、ガスの供給が停止した状況下でケーブル10の外被15の損傷箇所から水が侵入し、下流側除去部分19から下流側のバイパス用ケース42内に水が漏れ出すと、水がアース線71の導体と被覆との間の隙間に侵入し、アース線用配管48を通じて水が上流側へ流れるおそれがある。そこで、本実施形態では、アース線用配管48に封止部49を設けている。
【0082】
図10は、封止部49の説明図である。封止部49は、アース線71の内部の水の流れを止めるためにアース線用配管48に設けられた部分である。
【0083】
封止部49では、アース線71の被覆が除去され、その除去部分の周囲を樹脂(密封用混和物)で充填して止水処理を施しつつ、アース線用配管48が樹脂で密封されている。このような構成により、封止部49は、アース線71の内部の水の流れを止めることができる。また、封止部49は、アース線用配管48も密封しているため、アース線用配管48内での上流側への浸水を止めることができる。なお、導線が撚線の場合、封止部49の被覆の除去部分で撚りを解いておけば、線の間に樹脂を隙間無く埋めやすくなる。
【0084】
<保持具>
本実施形態の止水構造1は、上記の構成要素(ケーブル10、止水部20、バイパス部40など)の他に、把持具61及び連結棒62からなる保持具を備えている(
図1、
図2参照)。
【0085】
把持具61は、ケーブル10の外被15が長さ方向にずれることを防止するための部材である。把持具61は2箇所に設けられている。上流側の把持具61は、上流側のバイパス用ケース42のすぐ上流側でケーブル10に取り付けられており、上流側のバイパス用ケース42が上流側にずれることを防止している。下流側の把持具61は、下流側のバイパス用ケース42のすぐ下流側でケーブル10に取り付けられており、下流側のバイパス用ケース42が下流側にずれることを防止している。
【0086】
連結棒62は、2つの把持具61を連結するための部材である。連結棒62は2つ設けられており、2つの把持具61を上下で連結している。連結棒62が2つの把持具61を連結することにより、止水構造1が長さ方向にずれることが防止されている。また、連結棒62が2つの把持具61を連結することにより、止水構造1でのケーブル10の曲げが抑制され、止水構造1が強固になる。
【0087】
===組み立て方法===
図11は、止水構造1の組み立て方法のフロー図である。以下、組み立て方法の各工程を順に説明する。
【0088】
<S001:止水キットの準備>
まず、作業者は、本実施形態の止水構造1に必要な部材からなる止水キットを準備する(S001)。止水キットは、止水用ケース22と、バイパス部40(上流側のバイパス用ケース42、下流側のバイパス用ケース42、逆止弁47を有するバイパス管46、アース線用配管48など)と、樹脂パック81(
図14A参照)とを備えている。
【0089】
樹脂パック81は、止水処理のために止水用ケース22に充填される樹脂を包装したものである。樹脂を予め包装しておくことにより、作業者は、樹脂を計量しなくても、止水処理に適した量の樹脂を容易に準備することができる。
【0090】
樹脂パック81には、主剤と硬化剤とが仕切られて包装されている。また、仕切りを裂いたり外したりすることによって、樹脂パック81の内部で主剤と硬化剤とを混合させることができる。これにより、作業者は、必要なときに2液を混合できる。
【0091】
<S002:ケーブルの前処理>
作業者は、ケーブル10の前処理を行う(S002)。
図12A〜
図12Dは、ケーブル10の前処理の説明図である。
【0092】
作業者は、まず、クロージャの位置を基準にして、止水用ケース22の取り付け位置を決定する。ここでは、クロージャの下流側端部から所定長さLだけ離れた位置を止水用ケース22(つまり止水構造1)の中心位置に決定する(
図12A参照)。
【0093】
なお、この段階で、ケーブル10が止水用ケース22の接触面24Bやバイパス用ケース42の接触面44Bと接触する領域を特定することが可能である。この領域に長さ方向の傷があるとガスや樹脂が漏洩するおそれがあるため、作業者は、この領域に対して、長さ方向の傷が無くなるように周方向にケーブル10の外周を研磨すると良い。ケーブル10の外被15を除去した後にケーブル10の研磨を行うと、外被15がずれやすいため、ケーブル10の研磨作業は、外被15を除去する前に行うことが望ましい。また、ガスや樹脂の漏洩を防ぐため、作業者は、この領域を洗浄しても良い。
【0094】
次に、作業者は、
図12Aで決定した位置を中心にした所定範囲の外被15を除去し、止水用除去部分17を形成する(
図12B参照)。止水用除去部分17ではメタル心線11を露出させる必要があるため、作業者は、外被15だけでなく、アルミニウムテープ14及び押さえ巻き12も除去する。
【0095】
図12Cに示すように、作業者は、止水用除去部分17の端において、メタル心線11を束ねるように自己融着テープを巻いても良い。これにより、止水用除去部分17の端でメタル心線11が密に束ねられるため、後で止水用ケース22に樹脂を充填したときに、樹脂が止水用除去部分17からケーブル10の内部へ漏洩しにくくなる。
【0096】
次に、作業者は、止水用除去部分17のメタル心線11の束の外側から内側に向かって、ピンを挿入する(
図12D参照)。これにより、後で止水用ケース22に樹脂を充填したときに、樹脂がメタル心線11の束の内部まで浸透しやすくなり、隙間無く樹脂を埋めることができる。
【0097】
<S003:止水用ケースの取り付け>
ケーブル10の前処理を終えた後、作業者は、止水用ケース22をケーブル10に取り付ける(S003)。
図13A及び
図13Bは、止水用ケース22の取り付けの説明図である。
【0098】
作業者は、まず、止水用ケース22と接触する領域(止水用パッキン24の接触面24Bの位置)に予めシーリングテープを巻く(
図13A参照)。シーリングテープは、止水用除去部分17の外側に巻かれることになる。
【0099】
次に、作業者は、止水用ケース22のケース本体23と止水用パッキン24を側面から開いてケーブル10を被せ込み、止水用ケース22をケーブル10に取り付ける(
図13B参照)。このとき、作業者は、止水用パッキン24の接触面24Bをシーリングテープに合わせ、ケーブル10の止水用除去部分17の全てを止水用パッキン24の凹部24Cに対向させて、止水用ケース22で止水用除去部分17を覆う。その後、作業者は、止水用ケース22の留め具のボルトを所定のトルクで締め付けて、止水用ケース22をケーブル10に固定する。
【0100】
<S004:保持具の取り付け>
止水用ケース22をケーブル10に取り付けた後、作業者は、保持具(把持具61及び連結棒62)をケーブル10に取り付ける。
図13Cは、保持具の取り付けの説明図である。
【0101】
2つの把持具61が止水用ケース22の上流側と下流側に取り付けられ、連結棒62が2つの把持具61を連結することにより、外被15が長さ方向にずれることと、ケーブル10の曲げが抑制される。これにより、止水用ケース22とケーブル10との間に隙間ができることが防止される。
【0102】
この後、作業者は、止水用ケース22の止水用パッキン24とケーブル10との間に液体(例えば水)を塗布し、空気抜き口33Aのネジを外して空気抜き口33Aを開放し、空気抜き口33Aから圧縮空気を入れて、止水用ケース22とケーブル10との間に隙間が無いことを確認しても良い。
【0103】
<S005:樹脂の注入>
保持具(把持具61及び連結棒62)を取り付けた後、作業者は、止水用ケース22に樹脂を注入する。
図14A〜
図14Cは、樹脂の注入の説明図である。
【0104】
まず、作業者は、止水用ケース22の樹脂用継手台32の樹脂注入口32Aのネジを外し、樹脂注入口32Aに、チューブを連結するための継手を取り付けておく。また、作業者は、止水用ケース22の空気用継手台33の空気抜き口33Aのネジを全て外し、空気抜き口33Aを開放する。
【0105】
次に、作業者は、止水キットの樹脂パック81の仕切りを外す(
図14A参照)。その後、作業者は、樹脂パック81の内部で主剤と硬化剤とを色むら無く混合する(
図14B参照)。本実施形態では、注入直前に2液を混合するため、所定の粘度の樹脂を止水用ケース22に注入できる。
【0106】
次に、作業者は、樹脂パック81と樹脂注入口32Aとを接続する(
図14C参照)。具体的には、作業者は、樹脂パック81にチューブを取り付け、チューブの他端を樹脂用継手台32の継手に接続する。
【0107】
このとき、作業者は、止水用ケース22に対して樹脂パック81を所定の高さHになるように吊り下げて、樹脂パック81の樹脂を止水用ケース22に注入する(
図14C参照)。樹脂パック81の位置が低すぎると、樹脂を充填する圧力が低くなり、止水用除去部分17のメタル心線11の間に樹脂が充分に浸透せず、メタル心線11の間に隙間が残り、止水処理が不十分になるおそれがある。一方、樹脂パック81の位置が高すぎると、樹脂を充填する圧力が高くなり、多量の樹脂がケーブル10の内部を伝って流れてしまい、止水部20の樹脂の量が不十分になるおそれがある。このため、作業者は、樹脂パック81の位置を所定の高さHに保つため、樹脂パック81は、吊り金具に吊り下げておくことが望ましい。
【0108】
止水用ケース22の内部空間に樹脂が充填されると、空気抜き口33Aから樹脂が溢れ出てくるので、作業者は、樹脂の出てきた空気抜き口33Aにネジをセットして、空気抜き口33Aを塞ぐ。2つの空気抜き口33Aを塞いだ直後の段階では、止水用除去部分17のメタル心線11の間に樹脂が未だ十分浸透していないおそれがある。このため、作業者は、樹脂が硬化する所定時間(例えば1日)が経過するまで、止水用ケース22の樹脂注入口32Aに樹脂パック81を接続したままにしておき、樹脂の注入を継続しておく。また、作業者は、樹脂パック81を吊り金具に吊り下げておき、樹脂パック81の位置を所定の高さHに保つようにする。
【0109】
なお、本実施形態では、ピンを挿入したまま止水用ケース22内に樹脂を充填している。これにより、ピンの周囲を伝ってメタル心線11の束の外側から内側へ樹脂が入り込むため、樹脂がメタル心線11の束の内部まで浸透し、隙間無く樹脂を埋めることができる。
【0110】
<S006:樹脂の後処理>
樹脂の注入から所定時間(例えば1日)が経過した後、作業者は、樹脂パック81に残った樹脂が硬化しているか否かを確認する。樹脂パック81の樹脂が硬化していれば、止水ケースに充填された樹脂も硬化し、止水処理が施されていると考えられる。つまり、この段階で、止水部20が形成されていると考えられる。
【0111】
樹脂の硬化を確認した後、作業者は、樹脂用継手台32から継手を外し、樹脂注入口32Aにネジをセットして、樹脂注入口32Aを塞ぐ。また、作業者は、次のバイパス用ケース42の取り付けのため、把持具61から連結棒62を外しておく。
【0112】
また、樹脂の硬化を確認した後、作業者は、止水用ケース22の留め具のボルトを増し締めする。これにより、止水用ケース22内で硬化した樹脂が止水用ケース22から圧迫され、止水部20の止水機能がより向上する。なお、この増し締めは樹脂を外側から圧迫することが目的であるため、増し締め時のボルトの締め付けトルクは、止水用ケース22をケーブル10に最初に取り付けたとき(
図13B参照)のボルトの締め付けトルクよりも、強くしている。
【0113】
<S007:バイパス部の取り付け>
樹脂の後処理を終えた後、作業者は、バイパス部40を取り付ける。
図15A〜
図15Eは、バイパス部40の取り付けの説明図である。
【0114】
まず、作業者は、所定範囲の外被15(及びアルミニウムテープ14)を除去し、上流側除去部分18と下流側除去部分19を形成する(
図15A参照)。上流側除去部分18及び下流側除去部分19では、止水用除去部分17とは異なり、押さえ巻き12は残しても良い。
【0115】
本実施形態では、止水部20を形成した後に上流側除去部分18と下流側除去部分19とを形成しているため、止水用除去部分17と上流側除去部分18の間の外被15や、止水用除去部分と下流側除去部分19の間の外被15は、長さ方向にずれにくい。これに対し、もし仮に、止水用除去部分17を形成するときに上流側除去部分18と下流側除去部分19を形成すると(止水部20を形成する前に上流側除去部分18と下流側除去部分19を形成すると)、除去部分の間の外被15が長さ方向にずれやすくなってしまう。
【0116】
次に、作業者は、上流側除去部分18の上流側のケーブル10のアルミニウムテープ14にアース線71を接続する(
図15B参照)。同様に、作業者は、下流側除去部分19の下流側のケーブル10のアルミニウムテープ14にアース線71を接続する(
図15B参照)。そして、作業者は、ケーブル10に接続されているアース線71を、バイパス用ケース42から出ているアース線71と接続する(
図15C参照)。これにより、上流側除去部分18よりも上流側のケーブル10のアルミニウムテープ14(導電性フィルム)と、下流側除去部分19の下流側のケーブル10のアルミニウムテープ14が、電気的に接続される。
【0117】
次に、作業者は、バイパス用ケース42と接触する領域(バイパス用パッキン44の接触面44Bの位置)に予めシーリングテープを巻き、バイパス用ケース42をケーブル10に取り付ける(
図15D参照)。このとき、作業者は、ケーブル10の上流側除去部分18の全てをバイパス用パッキン44の凹部44Cに対向させて、上流側のバイパス用ケース42で上流側除去部分18を覆う。また、作業者は、ケーブル10の下流側除去部分19の全てをバイパス用パッキン44の凹部44Cに対向させて、下流側のバイパス用ケース42で下流側除去部分19を覆う。
【0118】
バイパス用ケース42をケーブル10に取り付けた後、作業者は、連結棒62で2つの把持具61を連結する(
図15E参照)。これにより、本実施形態の止水構造1の組み立てが完了する。
【0119】
なお、作業者は、バイパス用ケース42のバイパス用パッキン44とケーブル10との間に液体(例えば水)を塗布し、クロージャから圧縮空気又はガスをケーブル10に供給して、バイパス用ケース42とケーブル10との間に隙間がないことを確認しても良い。
【0120】
===その他===
上記の実施形態は、主に止水構造及びその組み立て方法(製造方法)について記載されているが、その記載の中には、ガス保守方式(ガス保守方法)などの開示が含まれていることは言うまでもない。
【0121】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0122】
<止水構造1について>
前述の止水構造1は、クロージャのすぐ下流側に設けられていた。但し、止水構造1を設ける場所は、このような場所に限られるものではない。止水する目的に適した種々の場所に前述の止水構造1を設けることができる。
【0123】
<ガス保守可能なケーブル10について>
前述のケーブル10は、多数のメタル心線11と、押さえ巻き12と、アルミニウムテープ14と、外被15とから構成されている。但し、ガス保守可能なケーブルは、この構成に限られるものではない。例えば、ケーブルが光ファイバ心線を備えても良いし、押さえ巻きの内側又は外側にフィルム等が配置されていても良い。また、ケーブルが押さえ巻きやアルミニウムテープを備えていなくても良い。
【0124】
<止水部20について>
前述の止水構造1によれば、止水部20に止水用ケース22が取り付けられている。但し、止水部の構成は、これに限られるものではない。
【0125】
図16Aは、止水部の変形例の説明図である。この変形例では、止水用ケース内で樹脂を硬化させた後、止水用ケースが取り外されており、硬化した樹脂が露出している。止水部がこのような構成であっても、止水用除去部分17において樹脂がケーブル10の隙間を埋めていれば、ガス保守可能なケーブル10に止水処理が施されていることになる。この変形例によれば、止水用ケースを使い回すことが可能になる。
【0126】
また、前述の止水構造1によれば、止水用ケース22に樹脂を充填することによって止水処理が施された止水部20が形成されているが、止水処理の方法は、これに限られるものではない。例えば、ケーブルが細い場合、外被の除去部分に樹脂を滴下し、ケーブル内の隙間を樹脂で埋めることによって、止水処理を施した止水部を形成することができる。この場合、外被の除去部分の外側をかしめた後に樹脂を滴下しても良い。
【0127】
<アース線用配管48について>
前述の止水構造1によれば、バイパス部40にアース線用配管48が設けられている。但し、
図16Bに示すように、止水構造が、アース線用配管を備えていなくても良い。ケーブルのシースにアルミニウムテープなどの導電性フィルムが無い場合には(例えば、PEシースケーブルの場合には)、止水構造にアース線用配管を設けなくても良い。また、ケーブルが導電性フィルムを有する場合であっても、導電性フィルムの電位差を許容できるのであれば、止水構造にアース線用配管を設けなくても良い。
【0128】
<組み立て方法について>
前述の止水構造1の組み立て方法によれば、止水部20の形成後(
図11のS006)、外被15を除去して上流側除去部分18と下流側除去部分19を形成している。但し、止水構造1の組み立て方法は、このような順に限られるものではない。
【0129】
例えば、
図17Aに示すように、止水用除去部分17を形成するときに、上流側除去部分18と下流側除去部分19を形成しても良い。この場合、ケーブル10に止水用ケース22及びバイパス用ケース42を取り付けた後(
図17B参照)、止水用ケース22に樹脂を注入すると良い(
図17C参照)。なお、樹脂注入時に、ケーブル10内を伝った樹脂が上流側除去部分18や下流側除去部分19から多量に漏洩してしまうと、バイパス用ケース42内のガス通路が塞がれてしまうおそれがある。これを防止するため、止水用除去部分17とともに上流側除去部分18及び下流側除去部分19を形成する場合には、上流側除去部分18及び下流側除去部分19の押さえ巻き12は残しておくと良い。これにより、上流側除去部分18や下流側除去部分19からの樹脂の漏洩を抑制でき、バイパス用ケース42内のガス通路が塞がれずに済む。
【0130】
図17A〜
図17Cに示す組み立て方法によれば、除去部分の間の外被15が長さ方向にずれやすくなってしまうものの、外被15の除去作業をまとめて行うことができるという利点がある。
【0131】
なお、
図17Aのように、止水部20の形成前に上流側除去部分18と下流側除去部分19を形成した場合、アース線(ボンド線)をアース線用配管48に配線するのではなく、アース線を止水部20に埋め込むように構成しても良い。この場合、上流側除去部分18と下流側除去部分19を形成した後、上流側除去部分18の上流側のケーブル10のアルミニウムテープ14と、下流側除去部分19の下流側のケーブル10のアルミニウムテープ14とをアース線で接続し、アース線を止水用除去部分17のメタル心線11とともに束ねた状態で止水用ケース22に樹脂を充填することによって、アース線を止水部20に埋め込むと良い。さらに、アース線の導体と被覆との隙間を通じて水が上流側へ流れないようにするために、止水部20の位置でアース線の被覆を除去してから、止水用ケース22に樹脂を充填すると良い。また、アース線をケーブル10の外被の外側に配線すると止水用ケース22やバイパス用ケース42と外被との間に隙間ができてしまうため、アース線は外被の内側に配線すると良い。このように、アース線を止水部20に埋め込めば、アース線用配管48は不要になる。
【0132】
<樹脂パック81について>
前述の止水キットによれば、樹脂パック81に主剤と硬化剤が仕切られて包装されていた。但し、止水キットは、このようなものに限られるものではない。例えば、主剤と硬化剤が別々のパックに包装されていても良い。また、作業者が、組み立て現場で主剤や硬化剤を計量して混合するようにしても良い。