(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0021】
先ず、
図1には、本発明に従う構造を有するフィルムコンデンサ素子の一実施形態が、その縦断面形態において示されている。かかる
図1から明らかなように、本実施形態のフィルムコンデンサ素子10は、ベース誘電体膜層としての樹脂フィルム12を有している。そして、樹脂フィルム12の厚さ方向の一方の面に、第一金属蒸着膜層14と誘電体膜層16と第二金属蒸着膜層18とが、その順番で、積層形成されている。即ち、ここでは、樹脂フィルム12の一方の面に、第一及び第二の二つの金属蒸着膜層14,18と一つの誘電体膜層16とを、交互に積層してなる一つの積層体20にて、フィルムコンデンサ素子10が構成されているのである。
【0022】
より具体的には、樹脂フィルム12は、ポリプロピレン製の長手の二軸延伸フィルムからなり、1〜10μm程度の厚さを有している。この樹脂フィルム12には、従来のフィルムコンデンサの誘電体膜層を構成する樹脂フィルムが、何れも使用可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニリデン等からなる樹脂フィルムが用いられ得る。また、それらの樹脂フィルムは、必ずしも、二軸延伸フィルムでなくとも良い。
【0023】
第一金属蒸着膜層14と第二金属蒸着膜層18は、何れもアルミニウムからなっている。それら第一金属蒸着膜層14と第二金属蒸着膜層18は、フィルムコンデンサ素子10を用いて作製されるフィルムコンデンサの内部電極を構成するものであって、公知の手法に従って、樹脂フィルム12上と誘電体膜層16上にそれぞれ積層形成される。即ち、第一及び第二金属蒸着膜層14,18は、フィルムコンデンサの内部電極を形成する公知の金属材料を蒸着材として用いて、PVDやCVDの範疇に属する、従来から公知の蒸着法を実施することにより、樹脂フィルム12上や誘電体膜層16上に積層形成されるのである。従って、第一金属蒸着膜層14と第二金属蒸着膜層18は、アルミニウムに限定されるものではなく、例えば、亜鉛等からなるものであっても良い。なお、それら第一金属蒸着膜層14と第二金属蒸着膜層18は、互いに異なる金属材料にて構成されていても、何等差し支えない。
【0024】
また、ここでは、第一金属蒸着膜層14と第二金属蒸着膜層18のそれぞれの幅(
図1の左右方向での寸法)が、樹脂フィルム12の幅よりも所定寸法小さくされている。そして、第一金属蒸着膜層14が、樹脂フィルム12の幅方向一方側(
図1の左側)の端部を除いた部分に積層されている一方、第二金属蒸着膜層18が、誘電体膜層16の幅方向他方側(
図1の右側)の端部を除いた部分に積層されている。これにより、樹脂フィルム12の幅方向一方側の端部に、第一金属蒸着膜層16の非形成部位からなる第一マージン部22が、樹脂フィルム12の長さ方向に沿って延びるように形成されている。また、誘電体膜層16の、第一マージン部22側とは反対の幅方向他方側の端部に、第二金属蒸着膜層18の非形成部位からなる第二マージン部24が、誘電体膜層16(樹脂フィルム12)の長さ方向に沿って延びるように形成されている。なお、本実施形態では、第一金属蒸着膜層14が形成されていない樹脂フィルム12の幅方向一方側の端縁部に、第二金属蒸着膜層18の一部が積層形成されている。これにより、樹脂フィルム12の幅方向一方側の端部のうち、第二金属蒸着膜層18の形成部位を除いた、端縁部から幅方向内側に所定寸法だけ入り込んだ部分のみが、第一マージン部22とされている。
【0025】
一方、誘電体膜層16は、ポリユリアからなっている。このポリユリアからなる誘電体膜層16は、2種類以上の原料モノマーの蒸気を真空中で重合させる公知の蒸着重合法によって、第一金属蒸着膜層14上に積層形成されている。このような誘電体膜層16にあっては、不純物の少ない良好な品質が確保されると共に、その厚さが、樹脂フィルム12の厚さよりも十分に薄くされている。これにより、フィルムコンデンサ素子10を用いて作製されるフィルムコンデンサの小型・高性能化が効果的に図られるようになっている。
【0026】
また、誘電体膜層16は、樹脂フィルム12よりも小さな幅を有し、樹脂フィルム12上において、その幅方向中央部に配置されている。これにより、第一金属蒸着膜層14の第一マージン部22側とは反対側の端部には、誘電体膜層16が何等設けられておらず、そのような第一金属蒸着膜層14の端部が、後述する正極側及び負極側の二つのメタリコン電極のうちの一方と連結される第一連結部26とされている。また、第二金属蒸着膜層18のうちの第二マージン部24側とは反対側の端部部位が、樹脂フィルム12の第一マージン部22側の端部に直接に積層されて、後述する二つのメタリコン電極の他方と連結する第二連結部28とされている。
【0027】
なお、誘電体膜層16の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.001〜10μm程度とされていることが望ましい。何故なら、誘電体膜層16を0.001μm未満の膜厚で形成することは容易ではない。そのため、誘電体膜層16の膜厚が、現実的には、0.001μm以上とされるからである。また、誘電体膜層16の厚さが10μmを超える場合には、誘電体として誘電体膜層16を有するフィルムコンデンサの小型化を促進することが困難となるからである。
【0028】
誘電体膜層16を構成するポリユリアは、樹脂フィルム12よりも高い比誘電率が確保されるだけでなく、原料モノマー(ジイソシアネートとジアミン等)の重合に際して、加熱処理が不要であり、しかも、水やアルコール等の脱離が全くない重付加重合反応において形成される。それ故、ここでは、原料モノマーの重合時に加熱処理を実施するための設備が不要となって、低コスト化が実現され得る。また、加熱処理時の熱によって、樹脂フィルム12が変形する、所謂熱負けが惹起されることが有利に回避され得る。更に、重合反応によって脱離した水やアルコール等を、重合反応が進行する真空チャンバ内から除去する必要がない。そのため、脱離された水やアルコール等を除去するための設備も不要となる。これによっても、低コスト化が、有利に実現可能となる。加えて、ポリユリア樹脂膜は、優れた耐湿性を有している。それによって、誘電体膜層16の高い耐電圧が、より安定的に確保され得ることとなる。
【0029】
そして、本実施形態のフィルムコンデンサ素子10では、特に、そのような誘電体膜層16を蒸着重合法により形成する際に使用される2種類以上の原料モノマーが、全て、脂肪族モノマーからなっており、また、それら2種類以上の原料モノマーのうちの少なくとも1種が、それら2種類以上の脂肪族モノマーのうちの他の脂肪族モノマーが有する官能基と反応可能な官能基を三つ以上有している。
【0030】
すなわち、フィルムコンデンサ素子10においては、誘電体膜層16がポリユリアにて構成されているところから、誘電体膜層16を形成する原料モノマーとして、脂肪族アミンの少なくとも1種と、脂肪族イソシアネートの少なくとも1種とが用いられる。そして、それら脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートとからなる2種類以上の原料モノマーのうちの少なくとも何れか一種が、それら2種類以上の原料モノマーのうちの他の脂肪族アミンや脂肪族イソシアネートが有する官能基と反応する官能基を三つ以上有しているのである。換言すれば、原料モノマーとして使用される脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートの全てが、3官能モノマーとされるか、またはそれらのうちの全部でない幾つかのものだけが、2官能モノマー若しくは1官能モノマーとされるのである。
【0031】
なお、ポリユリアからなる誘電体膜層16を形成する原料モノマーのうち、他の原料モノマーの官能基と反応可能な官能基を三つ以上有する脂肪族アミンとしては、例えば、三つ以上の官能基の全てがアミノ基(−NH
2 )からなるトリス(2−アミノエチル)アミンやトリスアミノメタン等が挙げられ、また、三つ以上の官能基がアミノ基(−NH
2 )とヒドロキシル基(−OH)からなる1,3−ジアミノ−2−プロパノールやトリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられ、三つ以上の官能基がアミノ基(−NH
2 )とカルボキシル基(−COOH)からなる2,3−ジアミノプロパン酸や2,6−ジアミノピメリン酸等が挙げられる。三つ以上の官能基がアミノ基(−NH
2 )とヒドロキシル基(−OH)からなる脂肪族アミンと、脂肪族イソシアネートとを原料モノマーとして用いる場合には、誘電体膜層16が、ポリユリアとポリウレタンの共重合体にて構成されることとなる。
【0032】
また、ポリユリアからなる誘電体膜層16を形成する原料モノマーのうち、他の原料モノマーの官能基と反応可能な官能基を三つ以上有する脂肪族イソシアネートとしては、例えば、三つ以上の官能基の全てがイソシアネート基(−NCO)からなる1,3,6−トリイソシアネートヘキサンや1,3,5−トリイソシアネートヘキサンや1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン等が挙げられる。
【0033】
ポリユリアからなる誘電体膜層16を形成する原料モノマーのうち、他の原料モノマーの官能基と反応可能な官能基を一つだけ又は二つだけ有する脂肪族アミンや脂肪族イソシアネートとしては、ポリユリアを蒸着重合法によって形成する際に、従来より一般に用いられる脂肪族アミンや脂肪族イソシアネートが、何れも使用可能である。
【0034】
そして、本実施形態のフィルムコンデンサ素子10においては、ポリユリアからなる誘電体膜層16が、具体的には、三つのアミノ基(−NH
2 )を有する脂肪族アミンであるトリス(2−アミノエチル)アミンと、二つのイソシアネート基(−NCO)を有する脂肪族イソシアネートである1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとからなる原料モノマーを用いて、形成されている。なお、誘電体膜層16がポリユリアからなるものであっても、原料モノマーたる脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートとして、トリス(2−アミノエチル)アミンと1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとは別のものだけを、或いはそれらに加えて、別のものを使用することも、勿論可能である。
【0035】
かくして、本実施形態に係るフィルムコンデンサ素子10では、誘電体膜層16が、芳香族アミンや芳香族イソシアネートを何等含まない、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートだけからなる原料モノマーを用いた蒸着重合法によって形成されていることによって、それらの原料モノマーの蒸着重合時における高い反応性が、より安定的に確保されている。
【0036】
そして、特に、本実施形態においては、誘電体膜層16の原料モノマーたる脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートのうちの一方(ここでは、脂肪族アミン)が3官能モノマーからなる一方、他方が2官能モノマーからなるため、それら3官能モノマーと2官能モノマーとが蒸着重合した誘電体膜層16を構成するポリユリアの分子構造が、
図2に模式的に示されるように、互いに架橋した網目構造とされている。これに対して、従来のフィルムコンデンサ素子では、例えば、互いに反応可能な官能基(アミノ基とイソシアネート基)をそれぞれ二つずつ有するジアミンとジイソシアネートとが蒸着重合した誘電体膜層を構成するポリユリアの分子構造が、架橋していない鎖状構造となる。
【0037】
これによって、本実施形態のフィルムコンデンサ素子10にあっては、
図2に示されるような網目状分子構造を備えた、ポリユリアからなる誘電体膜層16が、従来のフィルムコンデンサ素子の、鎖状分子構造を有するポリユリアからなる誘電体膜層と比較して、明らかに異なる物性を有するものとなっている。しかも、かかる誘電体膜層16は、原料モノマーとして、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートだけが用いられており、これによっても、従来のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層との間で、物性に明確な差異が生じている。
【0038】
すなわち、従来のフィルムコンデンサ素子においては、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートだけを原料モノマーとして用いた蒸着重合により得られる誘電体膜層が、芳香族アミンと芳香族イソシアネートだけを原料モノマーとして用いた蒸着重合により得られる誘電体膜層に比して、耐熱性に劣るものとなる。しかしながら、本実施形態に係るフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層16は、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートのうちの一方(ここでは、脂肪族アミン)に原料モノマーに3官能モノマーが用いられていることにより、分子構造が網目構造とされている。そのため、原料モノマーとして、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートだけが用いられているにも拘わらず、芳香族アミンと芳香族イソシアネートだけを原料モノマーとして用いた蒸着重合によって得られる誘電体膜層と同等以上の耐熱性が実現されている。これは、誘電体膜層16の分子構造が網目構造とされていることで、かかる誘電体膜層16を構成するポリユリアの分子運動が束縛され、その結果、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートとを蒸着重合したポリユリアの耐熱性が有利に高められることによるものと考えられる。
【0039】
また、従来のフィルムコンデンサ素子にあっても、誘電体膜層が、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートだけを原料モノマーとして用いた蒸着重合により形成されるものである場合、かかる誘電体膜層が、芳香族アミンと芳香族イソシアネートだけを原料モノマーとして用いた蒸着重合により得られる誘電体膜層に比して、良好な柔軟性を発揮する。しかしながら、本実施形態に係るフィルムコンデンサ素子10の誘電体膜層16は、分子構造が網目構造とされていることにより、柔軟性が更に一層高められて、クラックの発生も有利に防止される。これは、誘電体膜層16の分子構造が網目構造とされていることで、かかる誘電体膜層16を構成するポリユリアの分子同士の結合力が高められ、それによって、誘電体膜層16の脆弱性が低下することが大きく影響すると考えられる。
【0040】
そして、特に、本実施形態に係るフィルムコンデンサ素子10の誘電体膜層16にあっては、分子構造が網目構造とされて、耐熱性と柔軟性がより十分に高められていることにより、自己回復性の飛躍的な向上が、有利に実現される。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0041】
すなわち、従来のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層では、上記したように、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネートだけを原料モノマーとして用いた蒸着重合により形成される誘電体膜層が、芳香族アミンと芳香族イソシアネートだけを原料モノマーとして用いた蒸着重合により形成される誘電体膜層に比して、高い柔軟性を有する。そのため、前者の誘電体膜層の方が、後者の誘電体膜層よりも高い自己回復性を発揮する。しかしながら、単に、原料モノマーとして、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネート用いただけの誘電体膜層では、大電圧が瞬間的に印加される等して、絶縁破壊が生じたときに、短絡部の周辺部位が割れて飛び散るように破壊される。
【0042】
これに対して、本実施形態に係るフィルムコンデンサ素子10の誘電体膜層16においては、網目状の分子構造を有していることにより、耐熱性が高められているため、絶縁破壊が生じた際に、短絡電流によって生ずる熱エネルギーによる誘電体膜層16の損傷の程度が有利に抑制される。しかも、かかる誘電体膜層16が、網目状の分子構造を有していることによって、より高い柔軟性が発揮されるため、絶縁破壊が生じたときに、短絡部の周辺部位が収縮して、そこに微細な孔だけが生ずるようになる。この微細な孔は、絶縁破壊により短絡部の周辺部位が割れて飛び散って形成される破壊部分よりも十分に小さくされる。それ故、本実施形態のフィルムコンデンサ素子10の誘電体膜層16では、大電圧の瞬間的な印加後に、誘電体膜層16の両面に形成される第一及び第二金属蒸着膜層14,18間での絶縁状態が復帰するまでの時間が、単に、原料モノマーとして、脂肪族アミンと脂肪族イソシアネート用いただけの誘電体膜層よりも、有利に短くされ、以て、より優れた自己回復性が発揮されるのである。
【0043】
ところで、本実施形態のフィルムコンデンサ素子10は、例えば、
図3に示される如き構造を有する製造装置30を用いて製造される。
【0044】
図3から明らかなように、フィルムコンデンサ素子10の製造装置30は、真空槽32を有している。この真空槽32は、図示しない真空ポンプの作動により、内部が所定の圧力にまで減圧されて、真空状態とされるようになっている。真空槽32内には、回転ドラム34が配置されている。この回転ドラム34は、電動モータ等の回転駆動装置(図示せず)により、一方向(ここでは、時計回りの方向であって、
図4における白抜き矢印の方向)に連続的に回転駆動するようになっており、また、その外周面に対して、樹脂フィルム12が巻き付けられるようになっている。真空槽32内の回転ドラム34の周囲には、第一オイル層形成装置36と、第一金属蒸着膜形成装置38と、誘電体膜層形成装置40と、第二オイル層形成装置42と、第二金属蒸着膜層形成装置44とが、その順番で、時計回りの方向に並べられ、且つ回転ドラム34の周方向に互いに間隔を開けて配置されている。
【0045】
第一オイル層形成装置36は、回転ドラム34に巻き付けられた樹脂フィルム12の表面(外周面)の幅方向の一端部のみに、薄膜形態を呈するオイル層を、蒸着等によって形成するものである。また、第二オイル層形成装置42は、かかる樹脂フィルム12の表面に第一の金属蒸着膜14を介して積層される誘電体膜層16の表面の両端部のうち、第一オイル層形成装置36にてオイル層が形成される樹脂フィルム12の一端部とは幅方向の反対側の他端部のみに、薄膜形態を呈するオイル層を、蒸着等によって形成するものである。
【0046】
第一金属蒸着膜形成装置38は、アルミニウムや亜鉛等の所定の金属を加熱し、蒸発させて、かかる金属蒸気を、回転ドラム34に巻き付けられた樹脂フィルム12の表面に吹き付けることにより、樹脂フィルム12の表面上に、第一金属蒸着膜層14を形成するものである。また、第二金属蒸着膜層形成装置44は、第一金属蒸着膜層形成装置38と同様な構造を有し、回転ドラム34に巻き付けられた樹脂フィルム12の表面に、第一金属蒸着膜層14を介して積層される誘電体膜層16上に、第二金属蒸着膜層18を形成するものである。
【0047】
なお、第一及び第二金属蒸着膜層形成装置38,44から吹き出される金属蒸気は、第一及び第二オイル層形成装置36,42にて形成されるオイル層上には付着しない。これによって、樹脂フィルム12表面の幅方向一端部や誘電体膜層16表面の幅方向他端部にそれぞれ形成されたオイル層上に、第一の金属蒸着膜層14や第二の金属蒸着膜層18が積層されないようになっている。
【0048】
誘電体膜層形成装置40は、第一モノマーポット46と第二モノマーポット48とを有している。それら第一及び第二モノマーポット46,48には、ヒータ50が、それぞれ内蔵されている。また、第一モノマーポット46は、内部に収容された脂肪族アミンからなる原料モノマー52をヒータ50にて加熱して、脂肪族アミンからなる原料モノマー52の蒸気を発生させるようになっている。一方、第二モノマーポット48は、内部に収容された脂肪族イソシアネートからなる原料モノマー54をヒータ50にて加熱して、脂肪族イソシアネートからなる原料モノマー54の蒸気を発生させるようになっている。
【0049】
そして、かかる誘電体膜層形成装置40にあっては、第一及び第二モノマーポット46,48で発生した2種類の原料モノマー52,54の蒸気を、吹出口56を通じて、回転ドラム34に巻き付けられた樹脂フィルム12の表面上や、かかる樹脂フィルム12の表面に積層形成される第一金属蒸着膜層14の表面上に吹き出して、それら樹脂フィルム12上や第一金属蒸着膜層14上で、2種類の原料モノマー52,54の蒸気を重合させるようになっている。そして、それにより、樹脂フィルム12上や第一金属蒸着膜層14上に、誘電体膜層16を形成するように構成されたものである。
【0050】
なお、ここでは、例えば、誘電体膜層形成装置40の吹出口56の開口幅が、樹脂フィルム12の幅より狭くされていること等によって、かかる吹出口56から吹き出される2種類の原料モノマー52,54の蒸気が、樹脂フィルム12の幅方向両端部を除いた幅方向中間部分のみに吹き付けられるようになっている。
【0051】
また、第一及び第二金属蒸着膜層形成装置38,44とは同一の構造を有する別の金属蒸着膜層形成装置を、必要に応じて、第一金属蒸着膜層形成装置38と誘電体膜層形成装置40との間や、第二金属蒸着膜層形成装置44と第一オイル層形成装置36との間に、それぞれ配置し、第一金属蒸着膜層形成装置38にて形成される第一金属蒸着膜層14の前記第一連結部26上や、第二金属蒸着膜層形成装置44にて形成される第二金属蒸着膜層18の前記第二連結部28上に、それぞれ補助金属蒸着膜層を形成しても良い。これにより、第一及び第二連結部26,28を厚肉化して、それらをヘビーエッジ部とすることも可能である。
【0052】
このような構造を有する製造装置30を用いて、フィルムコンデンサ素子10を製造する際には、先ず、予備作業として、第一及び第二オイル層形成装置36,42内に所定のオイルを収容する一方、第一及び第二金属蒸着膜層形成装置38,44内に、所定の金属材料をセットする。また、脂肪族アミンからなる原料モノマー52の所定量と、脂肪族イソシアネートからなる原料モノマー54の所定量とを、それぞれ準備し、それらを誘電体膜層形成装置40の第一及び第二モノマーポット46,48内にそれぞれ収容する。なお、原料モノマー52としては、例えば、3官能脂肪族アミンである、液状のトリス−(2−アミノエチル)アミン等が、また、原料モノマー54としては、例えば、2官能脂肪族イソシアネートである、液状の1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が、それぞれ準備される。
【0053】
次いで、回転ドラム34に樹脂フィルム12を巻き付けた後、真空槽32内を真空状態とする。その一方で、回転ドラム34を、
図3の白抜き矢印の方向に回転駆動させ、真空槽32内が所定の真空状態となったら、第一オイル層形成装置36と、第一金属蒸着膜形成装置38と、誘電体膜層形成装置40と、第二オイル層形成装置42と、第二金属蒸着膜層形成装置44とを、それぞれ作動させる。
【0054】
そして、回転ドラム34に巻き付けられた樹脂フィルム12が、回転ドラム34の回転により、第一オイル層形成装置36の配設位置と対応する位置に到達したら、第一オイル層形成装置36にて、樹脂フィルム12の表面の幅方向一方の端部のうち、端縁部から内側に所定寸法だけ入り込んだ部位に、オイル層(図示せず)を、樹脂フィルム12の全周に連続して延びるように形成する。
【0055】
その後、オイル層が形成された樹脂フィルム12部分が、回転ドラム34の回転によって、第一金属蒸着膜層形成装置38の配設位置と対応する位置に達したら、第一金属蒸着膜層形成装置38にて、アルミニウム蒸気を、樹脂フィルム12の表面のうちのオイル層形成側端部を除く部分に吹き付ける。このとき、樹脂フィルム12表面の端部に設けられたオイル層上には、アルミニウム蒸気が付着しない。これによって、
図1に示されるように、樹脂フィルム12表面の幅方向一方の端縁から内側に所定寸法だけ入り込んだ部位に、第一マージン部22を形成すると共に、この第一マージン部22の形成側端部を除く樹脂フィルム12の表面部分に、アルミニウムからなる第一金属蒸着膜層14を積層形成する。
【0056】
引き続いて、
図3に示されるように、第一金属蒸着膜層14が形成された樹脂フィルム12部分が、回転ドラム34の更なる回転により、誘電体膜層形成装置40の配設位置と対応する位置に達したら、3官能脂肪族アミンからなる原料モノマー52の蒸気と、2官能脂肪族イソシアネートからなる原料モノマー54の蒸気とを、誘電体膜層形成装置40の吹出口56から、樹脂フィルム12の幅方向における第一マージン部22側とは反対側の端部を除く第一金属蒸着膜層14部分上と第一マージン部22上とに対して、それぞれ吹き付けて、それら2種類の原料モノマー52,54の蒸気を蒸着重合させる。これにより、
図1に示されるように、第一マージン部22側とは反対側の端部を除く第一金属蒸着膜層14部分上と第一マージン部22上に、誘電体膜層16を積層形成する。また、そうして、第一金属蒸着膜層14の第一マージン部22側とは反対側の端部を、誘電体膜層16が形成されていない第一連結部26とする。
【0057】
次に、
図3に示されるように、誘電体膜層16が形成された樹脂フィルム12部分が、回転ドラム34の更なる回転によって、第二オイル層形成装置42の配設位置と対応する位置に達したら、第二オイル層形成装置42にて、誘電体膜層16の第一マージン部22側とは幅方向反対側の端部のみに、オイル層を形成する。ここでは、このオイル層が、第一金属蒸着膜層14の第一連結部26上には形成されないようになっている。
【0058】
その後、誘電体膜層16の端部にオイル層が形成された樹脂フィルム12部分が、回転ドラム34の更なる回転によって、第二金属蒸着膜層形成装置44の配設位置と対応する位置に達したら、第二金属蒸着膜層形成装置44にて、誘電体膜層16の全体と、樹脂フィルム12の第一マージン部22側の端部のうち、誘電体膜層16が形成されていない端縁側部分に、アルミニウム蒸気を吹き付ける。このとき、誘電体膜層16の第一マージン部22側とは幅方向反対側の端部に設けられたオイル層上には、アルミニウム蒸気が付着しない。これによって、
図1に示されるように、誘電体膜層16の第一マージン部22側とは幅方向反対側の端部に、第二マージン部24を形成する。また、それと同時に、誘電体膜層16の表面の第二マージン部24を除く部分と、樹脂フィルム12の第一マージン部22側の端部のうち、誘電体膜層16が形成されていない端縁側部分とに対して、それらの部分に連続する第二金属蒸着膜層18を積層形成する。また、それと共に、樹脂フィルム12の第一マージン部22側の端縁部に形成された第二金属蒸着膜層18部分にて、第二連結部28を形成する。
【0059】
かくして、回転ドラム34を1回転させる間に、
図1に示される如き構造を有するフィルムコンデンサ素子10を製造するのである。
【0060】
そして、そのようなフィルムコンデンサ素子10の複数のものが用いられて、
図4に示される如き構造を有するフィルムコンデンサ58が製造されるのである。
【0061】
すなわち、
図4に示されるように、フィルムコンデンサ58を得る際には、先ず、複数(ここでは、4個)のフィルムコンデンサ素子10を、第二金属蒸着膜層18と樹脂フィルム12とが上下に重ね合わされるように、互いに積層すると共に、互いに積層された複数のフィルムコンデンサ素子10の両側の端面に対して、保護フィルム62,62をそれぞれ、更に積層する。なお、この保護フィルム62,62には、例えば、フィルムコンデンサ素子10の樹脂フィルム12と同じ樹脂製のフィルム等が用いられる。
【0062】
そして、そのような複数のフィルムコンデンサ素子10と保護フィルム62,62の積層体の両側側面に対して、例えば、亜鉛等の金属材料を、公知の手法により溶射して、メタリコン電極60をそれぞれ形成する。それら二つのメタリコン電極60,60は、上下方向において互いに隣り合うフィルムコンデンサ素子10,10のうち、下側に位置するフィルムコンデンサ素子10の第一金属蒸着膜層14の第一連結部26及び第二金属蒸着膜層18の第二連結部28と、上側に位置するフィルムコンデンサ素子10の樹脂フィルム12との間に形成される隙間内に侵入して、第一連結部26上と第二連結部28上に積層形成される。これによって、二つのメタリコン電極60,60が、各フィルムコンデンサ素子10の第一金属蒸着膜層14と第二金属蒸着膜層18とに対して、電気的に確実に接続される。かくして、積層体タイプのフィルムコンデンサ58を製造するのである。なお、このフィルムコンデンサ58には、必要に応じて、図示しない端子等が、各メタリコン電極60にそれぞれ接続される。
【0063】
また、図示されてはいないものの、フィルムコンデンサ素子10を用いて、巻回タイプのフィルムコンデンサを得ることもできる。それには、例えば、先ず、フィルムコンデンサ素子10を、樹脂フィルム12が内側となるように、1回又は複数回、巻回して、巻回物を得る。そして、そのような巻回物の両側の端面に対して、メタリコン電極60をそれぞれ形成する。これによって、巻回タイプのフィルムコンデンサを得るのである。この巻回タイプのフィルムコンデンサにおいても、必要に応じて、各メタリコン電極60に端子等が接続される。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本実施形態のフィルムコンデンサ素子10にあっては、ポリユリアからなる誘電体膜層16の形成に用いられる原料モノマーが、芳香族アミンや芳香族イソシアネートを含まずに、脂肪族アミンの少なくとも1種と、脂肪族イソシアネートの少なくとも1種だけからなると共に、かかる少なくとも1種の脂肪族アミンが、他の脂肪族アミンや脂肪族イソシアネートが有する官能基と反応する官能基を三つ以上有していることで、誘電体膜層16の分子構造が網目構造とされている。そして、それにより、誘電体膜層16において、従来のフィルムコンデンサ素子における誘電体膜層よりも更に一層優れた柔軟性が発揮され得ると共に、十分な耐熱性が有利に確保され得る。しかも、それらに加えて、自己回復性の更なる向上が、効果的に実現され得る。
【0065】
従って、かくの如き本実施形態のフィルムコンデンサ素子10によれば、高い柔軟性を有することで、良好な取扱性が確保され、しかも、十分な耐熱性と極めて高度な自己回復性を有することで、更に一層優れた使用耐久性が発揮されるフィルムコンデンサ58を容易に得ることができるのである。
【0066】
また、かかるフィルムコンデンサ素子10においては、ポリユリアからなる誘電体膜層16の形成に用いられる原料モノマーが、芳香族モノマーよりも蒸発温度の低い脂肪族モノマーのみからなっているため、誘電体膜層16の形成に際して、原料モノマーの加熱温度を低くできる。それにより、原料モノマーの加熱に要するエネルギーを小さくして、誘電体膜層16の形成コスト、ひいてはフィルムコンデンサ素子10の製造コストの低減化を図ることが可能となる。
【0067】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0068】
例えば、前記実施形態では、樹脂フィルム12上に、第一金属蒸着膜層14と誘電体膜層16と第二金属蒸着膜層18とを、その順番で積層形成してなる一つの積層体20にて、フィルムコンデンサ素子10が構成されていた。しかしながら、例えば、樹脂フィルム12上に、第一金属蒸着膜層14と誘電体膜層16とを、その順番で積層形成してなる積層体の複数を更に積層することによって、フィルムコンデンサ素子を構成することも可能である。また、樹脂フィルム12を省略して、金属蒸着膜層14,18の少なくとも一つと誘電体膜層16の少なくとも一つとを交互に積層してなる積層体の少なくとも一つを用いて、フィルムコンデンサ素子を構成することもできる。
【0069】
そして、前記実施形態に係るフィルムコンデンサ素子や上記に例示した各種のフィルムコンデンサ素子をそれぞれ製造する際には、例示した製造装置30とは異なる装置も利用可能である。
【0070】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、また、言うまでもないところである。
【0072】
<実施例1>
先ず、目的とするフィルムコンデンサ素子の製造装置として、
図3に示される如き構造を有する装置を準備した。また、誘電体膜層の原料モノマーとして、アミノ基を三つ有する3官能脂肪族アミンであるトリス−(2−アミノエチル)アミンと、イソシアネート基を二つ有する2官能脂肪族イソシアネートである1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを、液体状態において、それぞれ所定量準備した。そして、そのような3官能脂肪族モノマーの所定量を、誘電体膜層形成装置の第一モノマーポット内に収容する一方、2官能脂肪族イソシアネートの所定量を、誘電体膜層形成装置の第二モノマーポット内に収容した。
【0073】
そして、フィルムコンデンサ素子の製造に際しての予備操作として、製造装置の第一及び第二金属蒸着膜層形成装置内に、蒸着材として、アルミニウムを収容し、第一及び第二オイル層形成装置内には、オイル層の形成に使用される公知のオイルをそれぞれ収容した。また、回転ドラムに対して、ポリプロピレン製の二軸延伸フィルムからなる樹脂フィルムを巻き付けた。
【0074】
その後、製造装置の真空槽内の圧力を0.01Paにまで減圧して、真空槽内を真空状態とした後、第一及び第二オイル層形成装置と、第一及び第二金属蒸着膜層形成装置と、誘電体膜層形成装置とを、それぞれ作動させた。このとき、誘電体膜層装置の第一モノマーポット内に収容されたトリス−(2−アミノエチル)アミンを、第一モノマーポットに内蔵のヒータによって45℃にまで加熱する一方、第二モノマーポット内に収容された1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、第二モノマーポットに内蔵のヒータによって55℃にまで加熱した。そうして、トリス−(2−アミノエチル)アミンと1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのそれぞれの蒸気圧を1Paとした。
【0075】
次に、回転ドラムを回転駆動させて、第一オイル層形成装置により、回転ドラムに巻き付けた樹脂フィルムの幅方向一端部にオイル層を形成した後、第一金属蒸着膜層形成装置により、樹脂フィルムのオイル層形成部位以外の部分に第一金属蒸着膜層を積層形成すると共に、樹脂フィルムのオイル層形成部分に第一マージン部を形成した。なお、かくして形成される第一金属蒸着膜層の厚さは100〜300Åであった。
【0076】
その後、誘電体膜層形成装置により、第一マージン部側とは反対側の端部を除く第一金属蒸着膜層部分と第一マージン部とに対して、トリス−(2−アミノエチル)アミンの蒸気と1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの蒸気とを同時に吹き付けて、それらを蒸着重合させることにより、第一マージン部側とは反対側の端部を除く第一金属蒸着膜層部分上と第一マージン部上に、誘電体膜層を形成した。なお、かくして形成される誘電体膜層の成膜速度は1.0×10
-4μm/min・mm
2 であり、誘電体膜層の厚さは0.5〜3.0μmであった。
【0077】
引き続き、樹脂フィルムに積層形成された誘電体膜層の第一マージン部側とは幅方向反対側の端部に対して、オイル層を第二オイル層形成装置によって形成した。その後、誘電体膜層のオイル層形成部位以外の部分と、樹脂フィルムの第一マージン部側の端部のうち、第一金属蒸着膜層や誘電体膜層が形成されずに剥き出しとされた部分とに対して、第二金属蒸着膜層を第二金属蒸着膜層形成装置によって積層形成すると共に、誘電体膜層のオイル層形成部分に第二マージン部を形成した。なお、第二金属蒸着膜層の厚さは100〜300Åであった。かくして、
図1に示される如き構造を有するフィルムコンデンサ素子を得た。そして、このフィルムコンデンサ素子を実施例1とした。
【0078】
<実施例2>
次に、誘電体膜層の原料モノマーとして、アミノ基を三つ有する3官能脂肪族アミンであるトリス−(2−アミノエチル)アミンと、アミノ基を二つ有する2官能脂肪族アミンである4’4メチレンビスシクロヘキシルアミンと、イソシアネート基を二つ有する2官能脂肪族イソシアネートである1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを、液体状態において、それぞれ所定量準備した。また、目的とするフィルムコンデンサ素子の製造装置として、誘電体膜層形成装置に、第一及び第二モノマーポットに加えて、第三モノマーポットが設けられる以外は、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際に用いられる製造装置と同様な構造を有する製造装置を準備した。そして、かかる製造装置における誘電体膜層形成装置の第一、第二、及び第三モノマーポット内に、準備された3種類の原料モノマーを、それぞれ別個に収容した。
【0079】
その後、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際と同様な操作を実施した。それによって、前記した3官能脂肪族アミンと2官能脂肪族アミンと2官能イソシアネートの3種類の原料モノマーの蒸着重合により誘電体膜層が形成されてなるフィルムコンデンサ素子を得た。そして、このフィルムコンデンサ素子を実施例2とした。
【0080】
なお、かかる実施例2のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さは、実施例1のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さと同じであった。また、実施例2のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層を形成する際には、3官能脂肪族アミンの加熱温度を40℃とすると共に、2官能脂肪族アミンの加熱温度を50℃として、それら3官能脂肪族アミンと2官能脂肪族アミンの蒸気圧を、それぞれ0.5Paとした。一方、2官能脂肪族イソシアネートの加熱温度を60℃として、かかる2官能脂肪族イソシアネートの蒸気圧を1Paとした。また、誘電体膜層の成膜速度は1.0×10
-4μm/min・mm
2 であった。
【0081】
<比較例1>
比較のために、先ず、誘電体膜層の原料モノマーとして、2官能脂肪族アミンである4’4メチレンビスシクロヘキシルアミンと、2官能脂肪族イソシアネートである1’3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを、液体状態において、それぞれ所定量準備した。また、目的とするフィルムコンデンサ素子の製造装置として、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際に用いられる製造装置と同様な構造を有する製造装置を準備した。そして、かかる製造装置における誘電体膜層形成装置の第一及び第二モノマーポット内に、準備された2種類の原料モノマーを、それぞれ、別個に収容した。
【0082】
その後、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際と同様な操作を実施した。それによって、前記した2官能脂肪族アミンと2官能イソシアネートの3種類の原料モノマーの蒸着重合により誘電体膜層が形成されてなるフィルムコンデンサ素子を得た。そして、このフィルムコンデンサ素子を比較例1とした。
【0083】
なお、かかる比較例1のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さは、実施例1のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さと同じであった。また、比較例1のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層を形成する際には、2官能脂肪族アミンの加熱温度を55℃とすると共に、2官能脂肪族イソシアネートの加熱温度を60℃として、それら2官能脂肪族アミンと2官能脂肪族イソシアネートの蒸気圧を、それぞれ1Paとした。誘電体膜層の成膜速度は1.0×10
-4μm/min・mm
2 であった。
【0084】
<比較例2>
また、比較例1のフィルムコンデンサ素子とは別の比較のために、先ず、誘電体膜層の原料モノマーとして、3官能脂肪族アミンであるトリス−(2−アミノエチル)アミンと、イソシアネート基を二つ有する2官能芳香族イソシアネートである4’4−ジイソシアナトジフェニルメタンとを、液体状態において、それぞれ所定量準備した。また、目的とするフィルムコンデンサ素子の製造装置として、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際に用いられる製造装置と同様な構造を有する製造装置を準備した。そして、かかる製造装置における誘電体膜層形成装置の第一及び第二モノマーポット内に、準備された2種類の原料モノマーを、それぞれ、別個に収容した。
【0085】
その後、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際と同様な操作を実施した。それによって、前記した3官能脂肪族アミンと2官能芳香族イソシアネートの3種類の原料モノマーの蒸着重合により誘電体膜層が形成されてなるフィルムコンデンサ素子を得た。そして、このフィルムコンデンサ素子を比較例2とした。
【0086】
なお、かかる比較例2のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さは、実施例1のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さと同じであった。また、比較例2のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層を形成する際には、3官能脂肪族アミンの加熱温度を50℃とすると共に、2官能芳香族イソシアネートの加熱温度を110℃として、それら3官能脂肪族アミンと2官能芳香族イソシアネートの蒸気圧を、それぞれ1Paとした。誘電体膜層の成膜速度は1.0×10
-4μm/min・mm
2 であった。
【0087】
<比較例3>
比較例1及び2のフィルムコンデンサ素子とは別の比較のために、先ず、誘電体膜層の原料モノマーとして、3官能脂肪族アミンであるトリス−(2−アミノエチル)アミンと、アミノ基を二つ有する2官能芳香族アミンである4’4ジアミノジフェニルメタンと、2官能芳香族イソシアネートである4’4−ジイソシアナトジフェニルメタンとを、液体状態において、それぞれ所定量準備した。また、目的とするフィルムコンデンサ素子の製造装置として、実施例2のフィルムコンデンサ素子を製造する際に用いられる製造装置と同様な構造を有する製造装置を準備した。そして、かかる製造装置における誘電体膜層形成装置の第一、第二、及び第三モノマーポット内に、準備された3種類の原料モノマーを、それぞれ、別個に収容した。
【0088】
その後、実施例2のフィルムコンデンサ素子を製造する際と同様な操作を実施した。それによって、前記した3官能脂肪族アミンと2官能芳香族アミンと2官能芳香族イソシアネートの3種類の原料モノマーの蒸着重合により誘電体膜層が形成されてなるフィルムコンデンサ素子を得た。そして、このフィルムコンデンサ素子を比較例3とした。
【0089】
なお、かかる比較例3のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さは、実施例1のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さと同じであった。また、比較例3のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層を形成する際には、3官能脂肪族アミンの加熱温度を40℃とすると共に、2官能芳香族アミンの加熱温度を100℃として、それら3官能脂肪族アミンと2官能芳香族アミンの蒸気圧を、それぞれ0.5Paとした。一方、2官能芳香族イソシアネートの加熱温度を110℃として、かかる2官能芳香族イソシアネートの蒸気圧を1Paとした。また、誘電体膜層の成膜速度は1.0×10
-4μm/min・mm
2 であった。
【0090】
<比較例4>
比較例1乃至3のフィルムコンデンサ素子とは別の比較のために、先ず、誘電体膜層の原料モノマーとして、2官能芳香族アミンである4’4ジアミノジフェニルメタンと2官能芳香族イソシアネートである4’4−ジイソシアナトジフェニルメタンとを、液体状態において、それぞれ所定量準備した。また、目的とするフィルムコンデンサ素子の製造装置として、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際に用いられる製造装置と同様な構造を有する製造装置を準備した。そして、かかる製造装置における誘電体膜層形成装置の第一及び第二モノマーポット内に、準備された2種類の原料モノマーを、それぞれ、別個に収容した。
【0091】
その後、実施例1のフィルムコンデンサ素子を製造する際と同様な操作を実施した。それによって、前記した2官能芳香族アミンと2官能芳香族イソシアネートの2種類の原料モノマーの蒸着重合により誘電体膜層が形成されてなるフィルムコンデンサ素子を得た。そして、このフィルムコンデンサ素子を比較例4とした。
【0092】
なお、かかる比較例4のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さは、実施例1のフィルムコンデンサ素子の第一及び第二金属蒸着膜層と誘電体膜層のそれぞれの厚さと同じであった。また、比較例4のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層を形成する際には、2官能芳香族アミンの加熱温度を105℃とすると共に、2官能芳香族イソシアネートの加熱温度を110℃として、それら2官能芳香族アミンと2官能芳香族イソシアネートの蒸気圧を、それぞれ1Paとした。誘電体膜層の成膜速度は1.0×10
-4μm/min・mm
2 であった。
【0093】
<評価試験>
次に、前記のようにして製造された実施例1及び2の2種類のフィルムコンデンサ素子と、比較例1乃至4の4種類のフィルムコンデンサ素子とを用い、それら6種類のフィルムコンデンサ素子の比誘電率と耐電圧とを、公知の手法に従って、それぞれ測定した。それらの測定結果を下記表1に示した。
【0094】
また、実施例1及び2と比較例1乃至4の6種類のフィルムコンデンサ素子を用い、それら各フィルムコンデンサ素子の耐熱性と柔軟性と自己回復性とを、それぞれ、以下のようにして調べて、評価し、それらの結果を下記表1に併せて示した。
【0095】
−耐熱性−
先ず、常温で、フィルムコンデンサ素子の誘電体膜層の表面積と厚さとを公知の手法に従って測定し、その測定値から誘電体膜層の体積を算出する。次いで、公知のヒータを用いて、フィルムコンデンサ素子を100℃にまで加熱した後、100℃に加熱されたフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層の表面積と厚さとを公知の手法によって測定し、その測定値から誘電体膜層の体積を算出する。そして、加熱前のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層の体積に対する加熱後のフィルムコンデンサ素子の誘電体膜層の体積変化の割合を算出する。その結果、かかる体積変化の割合が5%以上であったフィルムコンデンサ素子は、耐熱性が低いものと評価し、それを下記表1に×で示した。一方、かかる体積変化の割合が5%未満であったフィルムコンデンサ素子は、耐熱性が高いものと評価し、それを下記表1に○で示した。
【0096】
−自己回復性−
先ず、フィルムコンデンサ素子に対して定格電圧を印加し、市販の測定器[商品名:LCRメータ E4980A(アジレントテクノロジー株式会社製)]を用いて、フィルムコンデンサ素子の静電容量を随時測定しつつ、5分経過する毎に、印加電圧を100Vの単位で段階的に上昇させ、測定される静電容量の値が、定格電圧の印加時の初期値よりも5%以上低下したときの電圧をフィルムコンデンサ素子の耐電圧とした。そして、印加電圧の上昇により、測定される静電容量の値が低下する前に、電流がショートして、試験の続行が不可能となったフィルムコンデンサと、耐電圧の値が定格電圧の1.5倍未満であったフィルムコンデンサ素子は、自己回復性がないか又は自己回復性が不十分なものと評価し、それらを下記表1に×で示した。一方、耐電圧の値が定格電圧の1.5倍以上であったフィルムコンデンサ素子は、十分な自己回復性を有するものと評価し、それを下記表1に○で示した。
【0097】
−柔軟性−
自己回復性の評価試験で絶縁破壊を生じさせたときの誘電体膜層の破壊部分を100倍の倍率で拡大観察し、かかる破壊部分の破壊状態に基づいて評価した。具体的には、誘電体膜層の破壊部分が、割れて飛び散った状態となっているフィルムコンデンサ素子は、柔軟性に乏しいと評価し、それを下記表1に×で示した。また、誘電体膜層の破壊部分が、収縮により形成された孔部となっているフィルムコンデンサ素子は、十分な柔軟性を有するものであると評価し、それを下記表1に○で示した。そして、十分な柔軟性を有するものと評価されたフィルムコンデンサ素子の中でも、クラックの発生がないフィルムコンデンサ素子については、特に優れた柔軟性を有するものと評価し、それを下記表1に◎で示した。
【0098】
【表1】
【0099】
かかる表1の結果から明らかなように、実施例1及び2と比較例1乃至4の6種類のフィルムコンデンサ素子は、何れも、4.5以上の高い比誘電率を有している。また、実施例1及び実施例2のフィルムコンデンサ素子は、比較例1乃至4のフィルムコンデンサ素子よりも耐電圧が高くなる傾向にある。そして、実施例1及び2のフィルムコンデンサ素子は、比較例1乃至4のフィルムコンデンサ素子と同等以上の耐熱性を備えており、また、自己回復性と柔軟性に関しては、実施例1及び2のフィルムコンデンサ素子が、比較例1乃至4のフィルムコンデンサ素子よりも優れている。これは、脂肪族モノマーだけからなり、且つ少なくとも何れか1種が3官能モノマーである2種類以上の原料モノマーを用いた蒸着重合を行って形成された誘電体膜層を有する、本発明に従うフィルムコンデンサ素子が、十分な耐熱性と、より高度な柔軟性とを兼備し、しかも、従来のフィルムコンデンサ素子よりも更に一層優れた自己回復性を発揮することを如実に示しているのである。