(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の如き構成の農業用トラクタにおいては、オペレータが前記機体の後進時に前記PTO軸を駆動することができないことを煩わしく思い、前記リバーススイッチのカプラを機体(制御装置)から取り外してしまう虞があった。また、当該リバーススイッチの回路に断線が生じたりする虞があった。前記リバーススイッチにこのような異常が発生した場合、前記接点が配置される回路が開放状態に保持されるが、上記の構成では、当該回路が開放状態であることが、前記リバーススイッチの異常に起因するのか、それとも前記後進操作具が前進側(あるいはニュートラル)に操作されていることに起因するのか、判別がつかなかった。そのため、前記リバーススイッチにこのような異常が発生しているときに、PTO軸が駆動することを確実に防止することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記を考慮して、リバーススイッチのカプラが外された場合や、リバーススイッチを制御装置に繋ぐ配線に断線が生じた場合に、PTO軸が駆動することを確実に防止し、リバーススイッチの信頼性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、請求項1においては、PTOクラッチの伝達又は遮断を切り換えるアクチュエータと、後進操作を検出するリバーススイッチと、を備える作業車両において、前記リバーススイッチは、ノーマルクローズ型の第一接点と、当該第一接点と連動して切り替わるノーマルオープン型の第二接点と、を有し、後進操作されている間は前記第一接点がクローズかつ前記第二接点がオープンとなる一方、後進操作されていない間は前記第一接点がオープンかつ前記第二接点がクローズとなるように、各接点がそれぞれ制御装置に接続され、当該制御装置は、前記第一接点からの入力電圧が設定電圧よりも高い場合、及び、前記第一接点からの入力電圧が設定電圧以下かつ前記第二接点からの入力電圧が設定電圧以下である場合、前記PTOクラッチが遮断状態となるように前記アクチュエータを制御する、ことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1に記載の作業車両において、前記PTOクラッチを伝達状態又は遮断状態の何れかに選択するPTOスイッチと、後進時においても前記PTO軸を駆動可能としたい場合にON操作するオーバーライドスイッチと、をさらに具備し、前記制御装置は、前記第一接点からの入力電圧が
設定電圧よりも高く、かつ、前記PTOスイッチ及び前記オーバーライドスイッチがともにONである場合、前記PTOクラッチが伝達状態となるように前記アクチュエータを制御する、ことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3においては、請求項1又は請求項2に記載の作業車両において、前記制御装置は、電源スイッチがONにされた後、所定の異常判定時間の間に、前記第一接点からの入力電圧が設定電圧以下であることが検出されなかった場合、及び、前記電源スイッチがONにされた後、前記所定の異常判定時間の間に、前記第二接点からの入力電圧が設定電圧よりも高いことが検出できなかった場合、前記リバーススイッチに異常が発生していると判定し、前記PTOクラッチが遮断状態となるように前記アクチュエータを制御する、ことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4においては、請求項3に記載の作業車両において、前記リバーススイッチに異常が発生していると判定された場合、その後前記電源スイッチが一旦OFFとされた後再度ONとされ、当該電源スイッチが再度ONにされた後、前記所定の異常判定時間の間に、前記第一接点からの入力電圧が設定電圧以下であることが検出されるとともに、前記第二接点からの入力電圧が設定電圧よりも高いことが検出された場合に限り、前記所定の異常判定時間の経過後に、前記PTOクラッチを伝達状態とすることができることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、後進操作具の後進側への操作が検出された場合、リバーススイッチのカプラが外された場合、及び、リバーススイッチを制御装置に繋ぐ配線に断線が生じた場合には、PTOクラッチが伝達状態とならない。よって、機体の後進時、及び、リバーススイッチに異常が発生しているときに、PTO軸が駆動することを確実に防止でき、リバーススイッチの信頼性を向上させることができる。
【0014】
請求項2においては、PTOスイッチがONであり、かつ、オーバーライドスイッチがONである場合に限り、機体の後進時においてもPTO軸を駆動させることが可能となる。
【0015】
請求項3においては、ユーザーがリバーススイッチによる後進操作の検出を意図的に回避しようとして、リバーススイッチを取付フレームから脱落させたり、リバーススイッチのカプラを取り外したりした場合においては、PTOクラッチが伝達状態とならないようにする。よって、リバーススイッチに異常が発生しているときに、PTO軸が駆動することを確実に防止でき、リバーススイッチの信頼性を向上させることができる。
具体的には、ユーザーが、リバーススイッチのカプラを外さないまま、リバーススイッチを機体に取り付けるための取付フレームから脱落させた状態で、電源スイッチをONにした場合においては、第一接点からの入力電圧は
設定電圧よりも高く、第二接点からの入力電圧は
設定電圧以下に、保持されるので、PTOクラッチが遮断状態となる。
また、ユーザーが、リバーススイッチのカプラを取り外した状態で、電源スイッチをONにした場合においては、第二接点からの入力電圧は
設定電圧以下に保持されるので、PTOクラッチが遮断状態となる。
よって、リバーススイッチに異常が発生しているときに、PTO軸が駆動することを確実に防止でき、リバーススイッチの信頼性を向上させることができる。
【0016】
請求項4においては、リバーススイッチに異常が発生している場合、ユーザーに、一旦エンジンを停止させてリバーススイッチの異常を正すことを促すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る作業車両の実施の一形態である農業用トラクタ1について、添付の図面を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、トラクタ1は、機体に連結した作業機にPTO軸を介して動力を伝達可能な作業車両である。トラクタ1の機体2の前後には、前輪3及び後輪4がそれぞれ配置される。機体2の前部には、トラクタ1の動力源であるエンジン5が搭載され、当該エンジン5はボンネット6により覆われる。
図2に示すように、エンジン5には、当該エンジン5を始動・停止するためのエンジン始動・停止手段7が設けられる。当該エンジン始動・停止手段7は、具体的には、例えばエンジン5への燃料供給経路に設けられる燃料供給弁を開閉するためのアクチュエータであるソレノイド等により構成される。エンジン始動・停止手段7は、制御装置40に電気的に接続される。
【0020】
図1に示すように、機体2の後部には操縦部8が設けられる。当該操縦部8には、ステアリングハンドル9が設けられ、当該ステアリングハンドル9の後方にはユーザー(オペレータ)が着座する着座シート10が設けられる。ステアリングハンドル9の近傍には、電源スイッチ11、ミッドPTOスイッチ12、リアPTOスイッチ13、及びオーバーライドスイッチ14等が設けられる(
図2参照)。また、ステアリングハンドル9の下方には、後進操作具15(
図1参照)及びリバーススイッチ16が設けられる。
【0021】
エンジン5の後方にはクラッチハウジングが配設され、当該クラッチハウジングの後方にはミッションケース17が配設される。そして、エンジン5の動力が、前記クラッチハウジングに収容された主クラッチや、ミッションケース17に収容された変速装置を経て、後輪4に伝達されると同時に、四輪駆動・前輪増速駆動切換機構を介して前輪3に伝達されるように構成されている。
【0022】
ミッションケース17の後面には、リアPTO軸21が後ろ向きに突出するように設けられる。また、ミッションケース17の底部には、前向きに突出するミッドPTO軸22が配設される。リアPTO軸21は、破砕作業機やロータリ作業機等の、機体2の後方に連結された作業機(不図示)にエンジン5からの動力を伝達するためのものである。ミッドPTO軸22は、芝刈り用のモア作業機23等の、機体2の中央下方に配設された作業機にエンジン5からの動力を伝達するためのものである。そして、当該エンジン5の動力が、前記クラッチハウジングに収容された主動軸等を介して、リアPTO軸21と、ミッドPTO軸22と、に伝達されるように構成されている。
【0023】
前記主動軸からミッドPTO軸22への動力伝達経路の中途部、すなわちエンジン5とミッドPTO軸22との間には、ミッドPTOクラッチ24が配置される(
図2参照)。ミッドPTOクラッチ24は、例えば電磁クラッチにより構成され、ミッドPTO軸21への動力の伝達又は遮断がPTOソレノイド25により切り換えられるものである。すなわち、PTOソレノイド25に通電を行うことにより、ミッドPTOクラッチ24が伝達状態(「接」)となり、PTOソレノイド25への通電を停止することにより、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態(「断」)となる。ここで、ミッドPTO軸22は本発明に係る「PTO軸」の実施の一形態であり、ミッドPTOクラッチ24は本発明に係る「PTOクラッチ」の実施の一形態であり、PTOソレノイド25は本発明に係る「アクチュエータ」の実施の一形態である。PTOソレノイド25は、制御装置40に電気的に接続される。
【0024】
同様に、前記主動軸からリアPTO軸21への動力伝達経路の中途部、すなわちエンジン5とリアPTO軸21との間には、リアPTOクラッチ(不図示)が配置される。
【0025】
なお、「PTOクラッチ」は、本実施形態のような電磁クラッチに限定するものではなく、例えば多版式のクラッチや油圧式のクラッチ等であってもよい。また、「アクチュエータ」は、本実施形態のようなソレノイドに限定するものではなく、他の電動アクチュエータ等であってもよい。
【0026】
電源スイッチ11は、トラクタの電源スイッチであり、例えばキースイッチ等により構成される。電源スイッチ11は、制御装置40に電気的に接続される。
【0027】
ミッドPTOスイッチ12は、本発明に係る「PTOスイッチ」の実施の一形態であり、ミッドPTOクラッチ24の状態を伝達状態又は遮断状態の何れかに人為的に選択するための操作具である。ミッドPTOスイッチ12は、制御装置40に電気的に接続される。ミッドPTOスイッチ12のON状態はミッドPTOクラッチ24の伝達状態(「接」)に対応し、OFF状態は当該ミッドPTOクラッチ24の遮断状態(「断」)に対応している。
【0028】
図3に示すように、本実施形態のミッドPTOスイッチ12とオーバーライドスイッチ14は、一つの操作具12aでON/OFF操作可能としている。オーバーライドスイッチ14は、機体2の後進時においてもミッドPTO軸22を駆動可能としたい場合に、ユーザーがON操作するものである。具体的には、本実施形態のミッドPTOスイッチ12とオーバーライドスイッチ14の操作具12aは、
図3に示すように、その突出量を三段階に切り換えることが可能となっている(x<y<z)。つまり、三つのポジションに切り換えることが可能となっている。突出量が最小(x)となるポジションとしたとき(
図3(a)参照)、ミッドPTOスイッチ12がOFFとなるとともにオーバーライドスイッチ14がOFFとなる。突出量が最大(z)となるポジションとしたとき(
図3(c)参照)、ミッドPTOスイッチ12がONとなるとともにオーバーライドスイッチ14がONとなる。突出量が最小と最大の中間(y)となるポジションとしたとき(
図3(b)参照)、ミッドPTOスイッチ12がONとなるとともにオーバーライドスイッチ14がOFFとなる。ただし、本発明に係る「オーバーライドスイッチ」は、ミッドPTOスイッチ12とは別体で、別途設ける構成とし、それぞれ別々に操作する構成としてもよい。
【0029】
オーバーライドランプ18は、オーバーライドスイッチ14がON操作されている間点灯するランプである。オーバーライドランプ18は制御装置40に電気的に接続される。
【0030】
リアPTOスイッチ13は、前記リアPTOクラッチの状態を伝達状態又は遮断状態の何れかに人為的に選択するための操作具である。リアPTOスイッチ13は、制御装置40に電気的に接続される。リアPTOスイッチ13のON状態は前記リアPTOクラッチの伝達状態(「接」)に対応し、OFF状態は当該リアPTOクラッチの遮断状態(「断」)に対応している。
【0031】
図1に示す後進操作具15は、機体2を後進させるときにユーザーが人為操作する操作具である。本実施形態の後進操作具15は、ペダルにより構成される。後進操作具15は、リンク機構を介して、
図4に示すプレート19と連動する構成となっている。プレート19はリバーススイッチ16の作動突部16a近傍に配置される。ただし、「後進操作具」は、ペダルの如き構成のものに限定するものではなく、例えばレバー等により構成してもよい。
【0032】
リバーススイッチ16は、後進操作具15の後進操作を検出するものである。リバーススイッチ16について
図4を参照して具体的に説明すると、当該リバーススイッチ16は、全体としてはプッシュ式のスイッチであり、その内部に、ノーマルクローズ型の第一接点31と、ノーマルオープン型の第二接点32と、を有する。第一接点31と第二接点32とは並列に配置され、連動して切り替わる構成となっている。第一接点31及び第二接点32の一方(出力側)は、カプラ35を介して制御装置40に電気的に接続される(
図2参照)。より詳しくは、第一接点31の一方は、制御装置40の第一接続部33に接続される。第二接点32の一方は、制御装置の第二接続部34に接続される。第一接点31及び第二接点32の他方(入力側)は、電源回路に接続され、所定の印加電圧が加えられている。ただし、他方をアースと接続する構成とすることも可能である。
【0033】
リバーススイッチ16は、取付フレーム(不図示)を介して、機体2に装着されている。前記取付フレームに取り付けられた状態において、リバーススイッチ16の本体部16bから突出された作動突部16aは、前記プレート19の回動によって押し込み・突出可能となっている。すなわち、後進操作具15が後進側に操作されていない間(前進時及び中立時)は、リバーススイッチ16の作動突部16aがプレート19によって本体部16bに押し込まれることにより、第一接点31がオープンかつ第二接点32がクローズとなっている(
図4(a)参照)。一方、後進操作具15が後進側に操作されている間(後進時)は、作動突部16aからプレート19が離間し、本体部16bに内装される付勢部材16cによって押し出されることにより作動突部16aが本体部16bに押し込まれていない状態となり、第一接点31がクローズかつ第二接点32がオープンとなる(
図4(b)参照)。制御装置40の第一接続部33及び第二接続部34は、それぞれの印加電圧を検出できるようになっている。
【0034】
また、トラクタ1には前述した制御装置40が搭載される。当該制御装置40は、エンジン始動・停止手段7を制御したり、アクチュエータとしてのPTOソレノイド25を制御したりするものである。制御装置40は、前述したエンジン始動・停止手段7、PTOソレノイド25、オーバーライドランプ18、電源スイッチ11、ミッドPTOスイッチ12、オーバーライドスイッチ14、リアPTOスイッチ13、及びリバーススイッチ16と電気的に接続される。
【0035】
以下では、制御装置40により実行される制御フロー100について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、制御フロー100は、ステップS101〜ステップS115により構成される。
【0036】
電源スイッチ11がONにされるとともにエンジン5が始動されたとき、制御装置40は制御フロー100を開始する(START)。そして、まず始めに制御装置40は、電源スイッチ11がONにされてから所定の異常判定時間の間に、第一接点31からの入力電圧が設定電圧以下であるか否か、すなわち第一接続部33の検出電圧が例えば0Vであることが検出できたか否かを判定する(ステップS101)。「所定の異常判定時間」は、例えば20秒間とすることができるが、これに限定するものではなく、任意の時間に設定することが可能である。所定の異常判定時間の間、第一接続部33の検出電圧が継続して
設定電圧(例えば、12V)であった場合、制御装置40は、リバーススイッチ16に異常が発生していると判定し、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS109)。すなわち、エンジン5を停止させずにミッドPTOクラッチ24を「断」とする。
【0037】
所定の異常判定時間の間に一度でも第一接点31からの入力電圧が設定電圧以下である、すなわち第一接続部33の検出電圧が例えば0Vであることが検出できた場合(ステップS101,Yes)、制御装置40は、続いて、電源スイッチ11がONにされてから所定の異常判定時間の間に、第二接点32からの入力電圧が設定電圧よりも高いことが検出できたか否か、すなわち第二接続部34の検出電圧が
設定電圧(例えば、12V)であることが検出できたか否かを判定する(ステップS102)。所定の異常判定時間の間、第二接続部34の検出電圧が継続して例えば0Vであった場合、制御装置40は、リバーススイッチ16に異常が発生していると判定し、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS109)。すなわち、エンジン5を停止させずにミッドPTOクラッチ24を「断」とする。
【0038】
所定の異常判定時間の間にリバーススイッチ16の異常が検出されなかった場合(ステップS102,Yes)、制御装置40は、続いて、後進操作具15が後進側に操作されているか否かを判定する。具体的には、制御装置40は、第一接点31からの入力電圧が設定電圧よりも高い場合、すなわち第一接続部33の検出電圧が
設定電圧である場合、後進操作具15が操作されていると判断し、ステップS104に移行する。一方、第一接点31からの入力電圧が設定電圧以下である場合、すなわち第一接続部33に電圧が印加されていない場合、ステップS107に移行する。
【0039】
後進操作具15が後進側に操作されている場合(ステップS103,Yes)、制御装置40は、続いて、ミッドPTOスイッチ12及びオーバーライドスイッチ14がそれぞれONであるか否かを判定する(ステップS104,S105)。ミッドPTOスイッチ12がOFFの場合(ステップS104,No)、制御装置40は、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS110)。すなわち、後進操作具15の後進側への操作が検出された場合には、原則的に、エンジン5を停止させずにミッドPTOクラッチ24を「断」として、後進時にミッドPTO軸22が駆動することを防止するのである。
【0040】
ミッドPTOスイッチ12がONであるがオーバーライドスイッチ14がOFFである場合(ステップS105,No)、制御装置40は、続いて、リアPTOスイッチ13がOFFであるか否かを判定する(ステップS106)。リアPTOスイッチ13がONである場合(ステップS106,No)、制御装置40は、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS111)。すなわち、機体2の後進時においてユーザーがリアPTO軸21を駆動させることを望んでいる場合であると判断し、エンジン5の稼動状態を保持する一方、ミッドPTO軸22は駆動させないように、ミッドPTOクラッチ24を「断」とするのである。リアPTOスイッチ13がOFFである場合(ステップS106,Yes)、制御装置40は、エンジン5を停止するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS112)。すなわち、機体2の後進時においてユーザーがリアPTO軸22を駆動させることを望んでいないにも関わらず、ミッドPTOスイッチ12がONとされているため、作業を停止させるべきものと判断し、エンジン5を停止させるのである。
【0041】
ミッドPTOスイッチ12がONでありかつオーバーライドスイッチ14がONである場合(ステップS105,Yes)、制御装置40は、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が伝達状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS113)。すなわち、機体2の後進時においてユーザーがミッドPTO軸22を駆動させることを望んでいる場合と判断し、後進時においても例外的にミッドPTO軸22を駆動させるべく、エンジン5の稼動状態を保持しつつ、ミッドPTOクラッチ24を「接」とするとともに、オーバーライドランプ18を点灯させる。
【0042】
ステップS107において、制御装置40は、第二接点32からの入力電圧が設定電圧よりも高いか否か、すなわち第二接続部34の検出電圧が
設定電圧であるか否かを判定する。第二接点32からの入力電圧が設定電圧以下である場合、すなわち第二接続部34に電圧が印加されていない場合(ステップS107,No)、制御装置40は、リバーススイッチ16のカプラ35が外されているか、或いは、リバーススイッチ16を制御装置40に繋ぐ配線に断線が生じていると判定し、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25の制御を行う(ステップS114)。すなわち、エンジン5を停止させずにミッドPTOクラッチ24を「断」とする。第二接点32からの入力電圧が設定電圧よりも高い場合、すなわち第二接続部34の検出電圧が
設定電圧(例えば、12V)である場合(ステップS107,Yes)、制御装置40は、続いて、ミッドPTOスイッチ12がONであるか否かを判定する(ステップS108)。ミッドPTOスイッチ12がONである場合(ステップS108,Yes)、制御装置40は、機体2の前進時においてユーザーがミッドPTO軸22を駆動させることを望んでいる場合であると判断し、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が伝達状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS115)。一方、ミッドPTOスイッチ12がOFFである場合(ステップS108,No)、制御装置40は、エンジン5を稼動状態に保持するようにエンジン始動・停止手段7を制御するとともに、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(ステップS114)。
【0043】
以上で説明したように、本実施形態に係るトラクタ1は、ミッドPTOクラッチ24の伝達又は遮断を切り換えるPTOソレノイド25と、後進操作を検出するリバーススイッチ16と、を備える。そして、リバーススイッチ16は、ノーマルクローズ型の第一接点31と、当該第一接点31と連動して切り替わるノーマルオープン型の第二接点32と、を有し、後進操作具15が後進側に操作されている間は第一接点31がクローズかつ第二接点32がオープンとなる(
図4(b)参照)一方、後進操作具15が後進側に操作されていない間は第一接点31がオープンかつ第二接点32がクローズとなる(
図4(a)参照)ように、各接点がそれぞれ制御装置40に接続される。そして、制御装置40は、第一接点31からの入力電圧が設定電圧よりも高い場合(
図4(b)参照)、及び、第一接点31からの入力電圧が設定電圧以下かつ第二接点32からの入力電圧が設定電圧以下の場合(
図6(a)参照)、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(
図5のステップS110及びステップS114参照)。
【0044】
このように構成することにより、後進操作具15の後進側への操作が検出された場合(
図4(b)参照)、リバーススイッチ16と制御装置40とを繋ぐカプラ35が取り外された場合(
図6(a)参照)、及び、リバーススイッチ16を制御装置40に繋ぐ配線に断線が生じた場合には、ミッドPTOクラッチ24を遮断状態とすることができる(
図5のステップS110及びステップS114参照)。よって、機体2の後進時、及び、リバーススイッチ16に異常が発生しているときに、ミッドPTO軸22が駆動することを確実に防止でき、リバーススイッチ16の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るトラクタ1は、ミッドPTOクラッチ24を伝達状態又は遮断状態の何れかに選択するミッドPTOスイッチ12と、後進時においてもミッドPTO軸22を駆動可能としたい場合にユーザーがON操作するオーバーライドスイッチ14と、をさらに具備する。そして、制御装置40は、第一接点31からの入力電圧が
設定電圧よりも高く、かつ、ミッドPTOスイッチ12及びオーバーライドスイッチ14がともにONである場合(
図3(c)参照)、ミッドPTOクラッチ24が伝達状態となるようにPTOソレノイド25を制御する(
図5のステップS113参照)。
【0046】
このように構成することにより、ミッドPTOスイッチ12がONであり、かつ、オーバーライドスイッチ14がONである場合に限り、機体2の後進時においてもミッドPTO軸22を駆動させることが可能となる。
【0047】
さらに、本実施形態に係るトラクタ1は、ミッドPTOスイッチ12とオーバーライドスイッチ14とは一体的に構成されるものである。このように構成することにより、部品点数を削減することができ、また、ユーザーが行う操作を簡潔にすることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るトラクタ1の制御装置40は、電源スイッチ11がONにされた後、所定の異常判定時間(本実施形態では20秒間)の間に、第一接点31からの入力電圧が設定電圧以下であることが検出されなかった場合、及び、電源スイッチ11がONにされた後、前記所定の異常判定時間の間に、前記第二接点32からの入力電圧が設定電圧よりも高いことが検出できなかった場合、リバーススイッチ16に異常が発生していると判定し、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となるようにPTOソレノイド25を制御するものである(
図5のステップS109参照)。
【0049】
このように構成することにより、ユーザーがリバーススイッチ16による後進操作の検出を意図的に回避しようとして、当該リバーススイッチ16を前記取付フレームから脱落させたり(
図6(b)参照)、リバーススイッチ16と制御装置40とを繋ぐカプラ35を取り外したり(
図6(a)参照)した場合においては、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態とされる。よって、リバーススイッチ16に異常が発生しているときに、ミッドPTO軸22が駆動することを確実に防止でき、リバーススイッチ16の信頼性を向上させることができる。具体的には、ユーザーが、リバーススイッチ16のカプラ35を外さないまま、リバーススイッチ16を前記取付フレームから脱落させた状態で、電源スイッチ11をONにした場合(
図6(b)参照))においては、例えば第一接続部33の検出電圧は
設定電圧に、第二接続部34の検出電圧は0Vに、保持されるので、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となる(
図5のステップS109参照)。また、ユーザーが、リバーススイッチ16のカプラ35を外した状態で、電源スイッチ11をONにした場合(
図6(a)参照)においては、第二接続部34の検出電圧が例えば0Vに保持されるので(
図5のステップS102,Yes)、ミッドPTOクラッチ24が遮断状態となる(
図5のステップS109参照)。よって、リバーススイッチ16に異常が発生しているときに、ミッドPTO軸22が駆動することを確実に防止でき、リバーススイッチ16の信頼性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るトラクタ1は、リバーススイッチ16に異常が発生していると判定された場合、その後電源スイッチ11が一旦OFFとされた後再度ONとされ、当該電源スイッチ11が再度ONにされた後、前記所定の異常判定時間の間に、第一接点31からの入力電圧が設定電圧以下であることが検出されるとともに、第二接点32からの入力電圧が設定電圧よりも高いことが検出された場合に限り、前記所定の異常判定時間の経過後に、ミッドPTOクラッチ24を伝達状態とすることができる。つまり、電源スイッチ11を一旦切ってリスタートさせなければ、ミッドPTOクラッチ24の遮断状態を解除できないのである。
【0051】
このように構成することにより、リバーススイッチ16に異常が発生している場合、ユーザーに、一旦エンジン5を停止させてリバーススイッチ16の異常を正すことを促すことができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、「PTO軸」はミッドPTO軸22であるものとしたが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば「PTO軸」をリアPTO軸21としてもよい。あるいは、「PTO軸」をフロントPTO軸としてもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、「作業車両」は農業用トラクタ1であるものとしたが、本発明はこれに限定するものではなく、建設作業用トラクタ等の、他のPTO軸を備える作業車両としてもよい。