特許第5944317号(P5944317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5944317生分解性たばこフィルタートウおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944317
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】生分解性たばこフィルタートウおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/10 20060101AFI20160621BHJP
   D01F 2/28 20060101ALI20160621BHJP
   D06M 13/02 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
   A24D3/10
   D01F2/28 Z
   !D06M13/02
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-534772(P2012-534772)
(86)(22)【出願日】2010年9月17日
(65)【公表番号】特表2013-507949(P2013-507949A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】GB2010051562
(87)【国際公開番号】WO2011048397
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年9月9日
(31)【優先権主張番号】0918633.9
(32)【優先日】2009年10月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505300508
【氏名又は名称】イノヴィア フィルムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100105991
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,コリン
(72)【発明者】
【氏名】モファット,ジェイミー
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−140654(JP,A)
【文献】 特表平11−500629(JP,A)
【文献】 特開平11−279201(JP,A)
【文献】 国際公開第00/053832(WO,A1)
【文献】 特表2008−504456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/10
3/02
D01F 2/28
D06M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースおよびセルロースアセテートの複合フィラメントを含む生分解性たばこフィルタートウであって、
前記複合フィラメントは、セルロースおよびセルロースアセテートを含むドープから紡糸した繊維、または、同様に構成されたドープから流延した細断フィルムである、生分解性たばこフィルタートウ。
【請求項2】
1種または複数のさらなる熱可塑性材料をさらに含む、請求項1に記載のフィルタートウ。
【請求項3】
前記さらなる熱可塑性材料が、PHB、PHVB、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ−2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアニリンおよびポリエチレングリコールの1つまたは複数から選択される、請求項2に記載のフィルタートウ。
【請求項4】
セルロースとセルロースアセテートの重量比が10:90〜90:10である、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタートウ。
【請求項5】
セルロースとセルロースアセテートの重量比が20:80〜80:20である、請求項4に記載のフィルタートウ。
【請求項6】
セルロースとセルロースアセテートの重量比が30:70〜70:30である、請求項5に記載のフィルタートウ。
【請求項7】
1種または複数の可塑剤をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルタートウ。
【請求項8】
前記フィルタートウの酸化分解反応を促進する触媒をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルタートウ。
【請求項9】
前記トウ上の静電荷を低減するための1種または複数の潤滑剤をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルタートウ。
【請求項10】
チッピングラッパーで包まれた請求項1から9のいずれか一項に記載のたばこフィルタートウを含むたばこフィルター。
【請求項11】
喫煙に適した物質および請求項10に記載のたばこフィルターを含むたばこ。
【請求項12】
セルロースおよびセルロースアセテートの複合フィラメントを含むたばこフィルタートウの製造方法であって、
イオン性液体中またはN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)中のセルロースおよびセルロースアセテートのブレンドを含む溶液ドープを用意するステップと、前記ブレンドをプロトン性溶媒中に紡糸または流延して繊維またはフィルムを生成するステップと、繊維またはフィルムをたばこフィルタートウに転換するステップとを含む、たばこフィルタートウの製造方法。
【請求項13】
前記ドープが、セルロースおよび/またはセルロースアセテートの溶解を促進するための非プロトン性溶媒をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記非プロトン性溶媒が、DMSO、DMF、THFまたはジオキサンの1つまたは複数を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にたばこフィルタートウにおいて使用するための生分解性複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
最初のたばこフィルターは1920年代に開発され、クレープ紙から、場合によってはセルロース詰綿と共に構成されていた。その後、喫煙と健康との間の有害な関連に関する懸念が生じたため、タールレベルを低下させるフィルターに対する需要が急増した。活性炭などの他の機能性成分の添加が可能となる、紙シース内にセルロースアセテート繊維を含むデュアルフィルターが開発された。
【0003】
健康に関するさらなる懸念、タール、ニコチンおよび一酸化炭素レベルの低下に関する法律および市場圧力の増加により、フィルター技術における開発の継続が必要となっている。今日では、たばこの世界市場は、1年につき5.8兆本超であり、その97%は現在フィルターを含有している。フィルター付きたばこの80.4%は標準的セルロースアセテート繊維から作製されており(4.5兆本)、16.6%は「特殊な」フィルターに分類され、3%はポリプロピレンから作製されている。
【0004】
一般に、たばこフィルターは、チップペーパーで包まれた“フィルタートウ”(一般にセルロースアセテートのけん縮繊維)を含む。本発明はフィルタートウ成分に関する。
【0005】
たばこおよびたばこフィルターの製造業者にとって最も急を要する問題の1つは、フィルターの生分解速度である。セルロースアセテートフィルターは、生分解するのに環境条件に応じて1カ月から3年の間かかり、これは、ごみの問題を回避するのに十分な速さではない。ほとんど全ての海岸清掃調査で、廃棄されたたばこフィルターが上位を占めている。ごみの問題は単に視覚的な問題ではなく、使用済みのたばこフィルターに吸着された毒素が環境に浸出し、潜在的バイオハザードを引き起こすことが分かっている。
【0006】
生分解性フィルタートウを調製するための様々なアプローチが提案されており、そのアプローチは、セルロースアセテートと他の生分解性ポリマーとの複合材、セルロースアセテートの分解速度を高めるための添加剤、生分解性を高めるための低置換度(DS)のセルロースアセテート、ならびにPHB/PVBおよびデンプンなどの生分解性ポリマーをフィルタートウ原材料として使用するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、今日まで、ごみの問題を克服するために十分に急速に分解する消費者の期待に応えるフィルターを生成するための満足のいく市販の溶液は発見されていない。上記アプローチに対して1つの大きな制約を課すことにより、達成することができる生分解性速度とフィルター材料が示す吸収プロフィール/味覚特性との間の許容される妥協点が見出されている。
【0008】
本発明は、これらの問題に取り組もうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、セルロースおよびセルロースアセテートの複合フィラメントを含む生分解性たばこフィルタートウが提供される。
【0010】
セルロースおよびセルロースアセテートは、一般に、繊維またはフィルムの形態に流延(cast)される。いずれの形態の流延法も本発明の生分解性たばこフィルタートウを調製するのに適している。流延してフィルムの形態にする場合、次いで、得られたフィルムを細断してたばこフィルタートウに適した材料を生成することが必要である。本発明において好ましいフィルタートウは、セルロースおよびセルロースアセテートの凝固液から紡糸した繊維を含む。
【0011】
本明細書におけるセルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントへの言及は、セルロースおよびセルロースアセテートを含むドープから紡糸した繊維、または同様に構成されたドープから流延した細断フィルムを意味するものと理解すべきものである。
【0012】
本発明者らは、セルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントが、セルロースまたはセルロースアセテートのみを含む同等のフィラメントより著しく優れた生分解性を有することを見出した。いかなるそのような理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、複合材中のアセテートの存在がセルロースの結晶化度を乱し、それにより複合材がセルロースのみより急速に生分解し得ると考えている。
【0013】
従来、セルロースはビスコースから流延または紡糸されており、そのような条件下ではセルロースアセテートが加水分解する見込みがあるため、セルロースアセテートを同じブレンドから流延または紡糸することは困難または不可能である。逆に、セルロースアセテートは従来アセトンから流延または紡糸されており、アセトン中のセルロースの溶解度は限られているため、同じブレンドからセルロースを流延または紡糸することは困難または不可能である。
【0014】
しかし、本発明者らは、イオン性液体(IL)からまたはN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)からセルロースおよびセルロースアセテートを流延または紡糸することにより、これらの材料の複合ブレンドを含む紡糸繊維および流延フィルムを形成することが可能であることを見出した。そのような複合材の高められた生分解性およびたばこフィルタートウの製造における使用に対するそれらの適合性は、今まで認識されていなかった。
【0015】
したがって、本発明のたばこフィルタートウは、イオン性液体(IL)からまたはN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)からブレンドとして紡糸または流延されたセルロースおよびセルロースアセテートの繊維またはフィルムから形成することが好ましい。
【0016】
セルロースおよび他のポリマーを溶解するためのILおよびNMMOの使用は、例えばアラバマ大学のUS20050288484およびUS20070006774、ノースカロライナ州立大学のUS20080188636およびHolbreyらのWO2005098546において十分に報告されている。前述の刊行物において開示されているものを含めた広範囲のイオン性液体が、セルロースおよびセルロースアセテートを溶解するため、ならびにそこからブレンドとして繊維またはフィルムを流延するために適している。好適なILの一般的タイプとしては、ハロゲン、ホスフェート、カルボキシレートまたは金属塩化物アニオンと組み合わせたイミダゾール、ピロール、チアゾールまたはピラゾールカチオンをベースにしたものが挙げられる。特に好ましいILとしては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIM−Cl)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(BMIM−Ac)および1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM−Ac)が挙げられる。
【0017】
そこから繊維を紡糸またはフィルムを流延するセルロースおよびセルロースアセテートの溶液は、本明細書においてドープと呼ぶ。ドープは、セルロースおよび/またはセルロースアセテートの溶解を促進するためのDMSO、DMF、THFまたはジオキサンなどの非プロトン性溶媒も含み得る。1つの特に好ましい非プロトン性溶媒はDMSOである。
【0018】
ドープ中のセルロースアセテートおよびセルロースのブレンドは、本発明のたばこフィルタートウに遮水機能などのさらなる機能を付加することができる1種または複数のさらなる熱可塑性材料、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(例えばPHBおよび/またはPHVBなど)なども含み得る。他の機能性添加剤としては、機能的目的、例えば、吸収および/または味覚プロフィールの変更、(例えば、水溶性材料による)分解増強、ならびに例えば湿潤強度に関連した加工性改善などのためのトリアセチン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ−2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアニリンおよびポリエチレングリコールを挙げることができる。(トリアセチンは、可塑剤として作用するだけではなく味覚プロフィールを改善することができる。)
【0019】
ドープ中、したがって本発明のたばこフィルタートウ中のセルロースとセルロースアセテートの重量比は10:90〜90:10、例えば20:80〜80:20、または30:70〜70:30である。
【0020】
一般に、ドープは、最大で約50%w/w、好ましくは最大で約40%w/w、より好ましくは最大で約30%w/w、最も好ましくは最大で約20%w/wの固形分を含む。
【0021】
本発明のフィルタートウは、複合フィラメントのけん縮を促進することができる1種または複数の可塑剤、例えばトリアセチンなどをさらに含み得る。本発明のたばこフィルタートウにおいて、セルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントは、遮煙接点を設けるようにけん縮していることが好ましい。可塑剤は、ドープ中に含まれていてもよく、あるいは紡糸または流延の後に、例えばけん縮の前または間のフィルタートウの表面への噴霧により添加してもよい。
【0022】
本発明のフィルタートウは、フィルタートウの酸化分解反応を促進する触媒をさらに含み得る。好適な触媒としては、酸化および塩化鉄ならびに酸化および塩化銅が挙げられ、それらは、複合フィラメントを水溶性の鉄または銅塩、例えば、硫酸塩または塩化物などの水溶液に浸漬し、水酸化ナトリウムまたは他の好適な沈殿剤を用いた処理により酸化物(好ましくはナノ形態)をフィラメントの表面または内部に沈殿させることにより該トウに導入することができる。
【0023】
該トウは、静電荷を低減するための1種または複数の潤滑剤も含み得る。好ましい潤滑剤としては鉱油が挙げられる。繊維の紡糸またはフィルムの流延の間に、例えば、乳化剤と共に1%w/wの鉱油を複合フィラメントに適用することができる。
【0024】
本発明のフィルタートウは、フィラメントあたり1、5または9デニール(フィラメント厚さ(フィラメントあたりのデニール)は1本の未けん縮フィラメント9000mあたりの質量(グラム)と定義される)で製造されたセルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントを含むことが好ましい。
【0025】
総トウ質量(総デニール)(一般に何千本もの、例えば11000本の個々の繊維を含む未けん縮フィルタートウ9000mの総質量と定義される)は、繊維紡糸において用いられる方法および該トウ中の個々の繊維の本数に応じて著しく変動する。1つの一般的なトウ質量は35000gであろう。
【0026】
本発明のフィルタートウは、表面積を最大にするために三葉形のフィラメント断面(場合により三角形の紡糸口金孔を使用して形成される)を有する繊維を含むことが好ましい。
【0027】
本発明のフィルタートウはけん縮繊維を含むことが好ましく、そのけん縮構造は、延伸(荷重25kg)フィルタートウと未延伸(荷重0.25kg)フィルタートウの比であるけん縮指数により定義される。けん縮指数は、製造の精密な方法に応じて著しく変動する。
【0028】
本発明のたばこフィルタートウの含水率は、好ましくは少なくとも約2%w/w、より好ましくは少なくとも約5%w/w、さらにより好ましくは少なくとも約10%w/wである。帯電を防止するために含水率が重要であることが分かっているが、含水率が非常に高いとトウのけん縮を保持することが困難となり得るため、好ましくは、高すぎてはいけない(例えば、50%w/w以下)。
【0029】
本発明のフィルタートウは、絡み合ったフィラメントを含むことが好ましい。
【0030】
本発明によれば、チッピングラッパーで包まれた上記のたばこフィルタートウを含むたばこフィルターも提供される。
【0031】
チッピングラッパーは、それ自体が生分解性物質であることが好ましく、例えば、紙または代替の生分解性物質、例えば、セルロース、PLA、ヒドロキシアルカノエート、デンプンベースのポリマー、または他の形態のバイオポリマーなどを含み得る。
【0032】
チッピングラッパーがバイオポリマーを含む場合、チッピングラッパーは、特に伸長および管カールに関連して好適な性質を達成するために、約25重量%以下の量の軟化剤を含むことが好ましい。
【0033】
バイオポリマー系チッピングラッパー中の軟化剤は、任意の好適な材料から選択することができるが、グリセロール、プロパン−1,2−ジオール、およびドイツたばこ(German Tobacco Ordnance)(TVO)の一覧から選択される任意の他の好適な軟化剤から選択することが好ましい。
【0034】
本発明によれば、喫煙に適した物質および上記のたばこフィルターを含むたばこも提供される。
【0035】
本発明によれば、イオン性液体中またはNMMO中のセルロースおよびセルロースアセテートのブレンドを含む溶液を用意するステップと、このブレンドをプロトン性溶媒中に紡糸または流延して繊維またはフィルムを生成するステップと、繊維またはフィルムをたばこフィルタートウに転換するステップとを含む、たばこフィルタートウの製造方法も提供される。
【0036】
該ブレンドの再生式流延に好ましいプロトン性溶媒は水である。
【0037】
本発明の方法において、複合セルロース/セルロースアセテート材料は、水および/または他のプロトン性溶媒中の溶液を再生することにより、任意の比で生成することができる。水中での凝固速度はドープのセルロースアセテート含量次第であることが分かっており、セルロースアセテートのレベルの増大により凝固速度が低下する。
【0038】
次に、以下の図面を参照する以下に続く実施例において本発明をより具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】i)セルロースアセテート;ii)セルロース;ならびにiii)本発明のセルロースおよびセルロースアセテートのブレンドの繊維を示す3枚のスライドの写真である。
図2】嫌気条件下で2週間の生分解後の図1のスライドの写真である。
図3】嫌気条件下で4週間の生分解後の図1のスライドの写真である。
図4】嫌気条件下で6週間の生分解後の図1のスライドの写真である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0040】
ブレンドしたセルロース/セルロースアセテートの湿紡繊維の生分解性を、同等のセルロースの湿紡繊維および同等のセルロースアセテートの湿紡繊維と比較して評価した。
【0041】
標準的湿紡装置を使用して、i)セルロース(DP約800)およびii)1:1 セルロース:セルロースアセテート(Eastman、CA−398−30)の10%固形分のEMIM−Ac:DMSO(20:80)溶液から繊維を紡糸した。70μmのオリフィス直径を有する40−オリフィスの紡糸口金を使用し、それを清浄な水を含有する室温の凝固浴槽に浸した。繊維を湿った状態でリールアップし、リール上で徹底的に洗浄し、次いで、50℃で乾燥した。
【0042】
図1〜4を参照すると、嫌気環境下での生分解速度が、同じ条件下でのセルロースの生分解速度を上回り、セルロースアセテートの生分解速度を大きく上回ることは、これらの複合材料の驚くべき性質である(付属書類1を参照せよ)。(この理論は決して拘束力があるものと見なすべきではないが)2種の成分が均質に混合した複合材を形成し、分解速度の向上はセルロースの結晶化度の低下に起因すると考えられる。該複合材のセルロース成分の分解がセルロースアセテート成分の分子スケールでの付着につながると考えられる。本発明者らは、本発明のたばこフィルタートウの好気条件下での生分解速度が同様に向上することも見出した。
【0043】
たばこフィルタートウの製造におけるこれらの複合材料の適用により、セルロースアセテートのみを使用することにより達成される所望の吸収プロフィール/味覚特性の両方を有すると同時に生分解速度が大きく向上した製品を達成する経路がもたらされる。
【実施例2】
【0044】
乾式紡糸法を使用して本発明のフィルタートウを製造する。セルロースジアセテートおよびセルロース(1:1ブレンド)を10%固形分でEMIM−Ac:DMSO(20:80)に溶解することによりドープを最初に調製する。TiO2を添加して外観を白化する。次いで、ドープを濾過し、チャンバ中に紡糸すると、フィラメントの固化が引き起こされ、薄くなる。10000本超のフィラメントを一連の紡糸キャビネットから紡糸し、それらを合わせて1本の帯にする。スタッファーボックスを使用してフィルタートウにけん縮構造をエンボス加工し、得られたフィルタートウをチップペーパーで包んでたばこフィルターを形成する。
【0045】
得られたたばこフィルターが実施例1に示す有益な生分解性性質を保持し、許容される味覚特性を有することが分かった。
図1
図2
図3
図4