【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、セルロースおよびセルロースアセテートの複合フィラメントを含む生分解性たばこフィルタートウが提供される。
【0010】
セルロースおよびセルロースアセテートは、一般に、繊維またはフィルムの形態に流延(cast)される。いずれの形態の流延法も本発明の生分解性たばこフィルタートウを調製するのに適している。流延してフィルムの形態にする場合、次いで、得られたフィルムを細断してたばこフィルタートウに適した材料を生成することが必要である。本発明において好ましいフィルタートウは、セルロースおよびセルロースアセテートの凝固液から紡糸した繊維を含む。
【0011】
本明細書におけるセルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントへの言及は、セルロースおよびセルロースアセテートを含むドープから紡糸した繊維、または同様に構成されたドープから流延した細断フィルムを意味するものと理解すべきものである。
【0012】
本発明者らは、セルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントが、セルロースまたはセルロースアセテートのみを含む同等のフィラメントより著しく優れた生分解性を有することを見出した。いかなるそのような理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、複合材中のアセテートの存在がセルロースの結晶化度を乱し、それにより複合材がセルロースのみより急速に生分解し得ると考えている。
【0013】
従来、セルロースはビスコースから流延または紡糸されており、そのような条件下ではセルロースアセテートが加水分解する見込みがあるため、セルロースアセテートを同じブレンドから流延または紡糸することは困難または不可能である。逆に、セルロースアセテートは従来アセトンから流延または紡糸されており、アセトン中のセルロースの溶解度は限られているため、同じブレンドからセルロースを流延または紡糸することは困難または不可能である。
【0014】
しかし、本発明者らは、イオン性液体(IL)からまたはN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)からセルロースおよびセルロースアセテートを流延または紡糸することにより、これらの材料の複合ブレンドを含む紡糸繊維および流延フィルムを形成することが可能であることを見出した。そのような複合材の高められた生分解性およびたばこフィルタートウの製造における使用に対するそれらの適合性は、今まで認識されていなかった。
【0015】
したがって、本発明のたばこフィルタートウは、イオン性液体(IL)からまたはN−メチルモルフォリン−N−オキシド(NMMO)からブレンドとして紡糸または流延されたセルロースおよびセルロースアセテートの繊維またはフィルムから形成することが好ましい。
【0016】
セルロースおよび他のポリマーを溶解するためのILおよびNMMOの使用は、例えばアラバマ大学のUS20050288484およびUS20070006774、ノースカロライナ州立大学のUS20080188636およびHolbreyらのWO2005098546において十分に報告されている。前述の刊行物において開示されているものを含めた広範囲のイオン性液体が、セルロースおよびセルロースアセテートを溶解するため、ならびにそこからブレンドとして繊維またはフィルムを流延するために適している。好適なILの一般的タイプとしては、ハロゲン、ホスフェート、カルボキシレートまたは金属塩化物アニオンと組み合わせたイミダゾール、ピロール、チアゾールまたはピラゾールカチオンをベースにしたものが挙げられる。特に好ましいILとしては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIM−Cl)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(BMIM−Ac)および1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EMIM−Ac)が挙げられる。
【0017】
そこから繊維を紡糸またはフィルムを流延するセルロースおよびセルロースアセテートの溶液は、本明細書においてドープと呼ぶ。ドープは、セルロースおよび/またはセルロースアセテートの溶解を促進するためのDMSO、DMF、THFまたはジオキサンなどの非プロトン性溶媒も含み得る。1つの特に好ましい非プロトン性溶媒はDMSOである。
【0018】
ドープ中のセルロースアセテートおよびセルロースのブレンドは、本発明のたばこフィルタートウに遮水機能などのさらなる機能を付加することができる1種または複数のさらなる熱可塑性材料、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(例えばPHBおよび/またはPHVBなど)なども含み得る。他の機能性添加剤としては、機能的目的、例えば、吸収および/または味覚プロフィールの変更、(例えば、水溶性材料による)分解増強、ならびに例えば湿潤強度に関連した加工性改善などのためのトリアセチン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ−2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアニリンおよびポリエチレングリコールを挙げることができる。(トリアセチンは、可塑剤として作用するだけではなく味覚プロフィールを改善することができる。)
【0019】
ドープ中、したがって本発明のたばこフィルタートウ中のセルロースとセルロースアセテートの重量比は10:90〜90:10、例えば20:80〜80:20、または30:70〜70:30である。
【0020】
一般に、ドープは、最大で約50%w/w、好ましくは最大で約40%w/w、より好ましくは最大で約30%w/w、最も好ましくは最大で約20%w/wの固形分を含む。
【0021】
本発明のフィルタートウは、複合フィラメントのけん縮を促進することができる1種または複数の可塑剤、例えばトリアセチンなどをさらに含み得る。本発明のたばこフィルタートウにおいて、セルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントは、遮煙接点を設けるようにけん縮していることが好ましい。可塑剤は、ドープ中に含まれていてもよく、あるいは紡糸または流延の後に、例えばけん縮の前または間のフィルタートウの表面への噴霧により添加してもよい。
【0022】
本発明のフィルタートウは、フィルタートウの酸化分解反応を促進する触媒をさらに含み得る。好適な触媒としては、酸化および塩化鉄ならびに酸化および塩化銅が挙げられ、それらは、複合フィラメントを水溶性の鉄または銅塩、例えば、硫酸塩または塩化物などの水溶液に浸漬し、水酸化ナトリウムまたは他の好適な沈殿剤を用いた処理により酸化物(好ましくはナノ形態)をフィラメントの表面または内部に沈殿させることにより該トウに導入することができる。
【0023】
該トウは、静電荷を低減するための1種または複数の潤滑剤も含み得る。好ましい潤滑剤としては鉱油が挙げられる。繊維の紡糸またはフィルムの流延の間に、例えば、乳化剤と共に1%w/wの鉱油を複合フィラメントに適用することができる。
【0024】
本発明のフィルタートウは、フィラメントあたり1、5または9デニール(フィラメント厚さ(フィラメントあたりのデニール)は1本の未けん縮フィラメント9000mあたりの質量(グラム)と定義される)で製造されたセルロース/セルロースアセテートの複合フィラメントを含むことが好ましい。
【0025】
総トウ質量(総デニール)(一般に何千本もの、例えば11000本の個々の繊維を含む未けん縮フィルタートウ9000mの総質量と定義される)は、繊維紡糸において用いられる方法および該トウ中の個々の繊維の本数に応じて著しく変動する。1つの一般的なトウ質量は35000gであろう。
【0026】
本発明のフィルタートウは、表面積を最大にするために三葉形のフィラメント断面(場合により三角形の紡糸口金孔を使用して形成される)を有する繊維を含むことが好ましい。
【0027】
本発明のフィルタートウはけん縮繊維を含むことが好ましく、そのけん縮構造は、延伸(荷重25kg)フィルタートウと未延伸(荷重0.25kg)フィルタートウの比であるけん縮指数により定義される。けん縮指数は、製造の精密な方法に応じて著しく変動する。
【0028】
本発明のたばこフィルタートウの含水率は、好ましくは少なくとも約2%w/w、より好ましくは少なくとも約5%w/w、さらにより好ましくは少なくとも約10%w/wである。帯電を防止するために含水率が重要であることが分かっているが、含水率が非常に高いとトウのけん縮を保持することが困難となり得るため、好ましくは、高すぎてはいけない(例えば、50%w/w以下)。
【0029】
本発明のフィルタートウは、絡み合ったフィラメントを含むことが好ましい。
【0030】
本発明によれば、チッピングラッパーで包まれた上記のたばこフィルタートウを含むたばこフィルターも提供される。
【0031】
チッピングラッパーは、それ自体が生分解性物質であることが好ましく、例えば、紙または代替の生分解性物質、例えば、セルロース、PLA、ヒドロキシアルカノエート、デンプンベースのポリマー、または他の形態のバイオポリマーなどを含み得る。
【0032】
チッピングラッパーがバイオポリマーを含む場合、チッピングラッパーは、特に伸長および管カールに関連して好適な性質を達成するために、約25重量%以下の量の軟化剤を含むことが好ましい。
【0033】
バイオポリマー系チッピングラッパー中の軟化剤は、任意の好適な材料から選択することができるが、グリセロール、プロパン−1,2−ジオール、およびドイツたばこ
法(German Tobacco Ordnance)(TVO)の一覧から選択される任意の他の好適な軟化剤から選択することが好ましい。
【0034】
本発明によれば、喫煙に適した物質および上記のたばこフィルターを含むたばこも提供される。
【0035】
本発明によれば、イオン性液体中またはNMMO中のセルロースおよびセルロースアセテートのブレンドを含む溶液を用意するステップと、このブレンドをプロトン性溶媒中に紡糸または流延して繊維またはフィルムを生成するステップと、繊維またはフィルムをたばこフィルタートウに転換するステップとを含む、たばこフィルタートウの製造方法も提供される。
【0036】
該ブレンドの再生式流延に好ましいプロトン性溶媒は水である。
【0037】
本発明の方法において、複合セルロース/セルロースアセテート材料は、水および/または他のプロトン性溶媒中の溶液を再生することにより、任意の比で生成することができる。水中での凝固速度はドープのセルロースアセテート含量次第であることが分かっており、セルロースアセテートのレベルの増大により凝固速度が低下する。
【0038】
次に、以下の図面を参照する以下に続く実施例において本発明をより具体的に説明する。