【文献】
Sahnine, C. ; Callonnec, D. ; Zergainoh, N. ; Petrot, F.,Efficient design approach and advanced architectures for universal OFDM systems,Research in Microelectronics and Electronics Conference, 2007. PRIME 2007. Ph.D.,2007年 7月 5日,pp.33-36
【文献】
Hao Lin ; Siohan, P.,OFDM/OQAM with Hermitian Symmetry: Design and Performance for Baseband Communication,Communications, 2008. ICC '08. IEEE International Conference on,2008年 5月23日,pp.652-656
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
M個の実数データシンボルからなる集合を周波数領域から時間領域に変換し、M個の変換されたシンボルからなる集合を提供する、完全変換ステップと呼ばれる変換ステップを含み、
前記完全変換ステップ(22)は、
前記M個の実数データシンボルからなる集合に部分フーリエ変換を適用し、前記M個の変換されたシンボルからなる集合のうちのC個の変換されたシンボルからなる第1の部分集合を提供するサブステップ(221)であって、CはMよりも真に小さい、サブステップと、
前記M個の変換されたシンボルからなる集合のうちの(M−C)個の変換されたシンボルからなる第2の部分集合を、前記第1の部分集合から得るサブステップ(222)であって、(M−C)個の変換されたシンボルからなる前記第2の部分集合は、前記M個の変換されたシンボルからなる集合のうちのC個の変換されたシンボルからなる前記第1の部分集合を補完する部分集合である、サブステップと
を含むものである、OQAM型マルチキャリア信号を提供する変調方法。
前記第1の部分集合が、前記完全変換ステップにおける同じパリティインデックスを有する出力と関連付けられる、変換されたシンボルを含むものである、請求項1に記載の変調方法。
【背景技術】
【0004】
マルチキャリア伝送の技術は、特にマルチパスチャネルに関して非常に多くの利点を有する。したがって、OFDM型変調は、周波数選択性チャネルにおけるフェージングの影響を弱めるのに特によく適している。
【0005】
しかし、このOFDM変調には、周波数の局在性が不十分なマルチキャリア信号が生成するという欠点があるため、時間領域にガードインターバルを導入して干渉を抑える必要がある。ところが、このようなガードインターバルの挿入により、マルチキャリア信号のスペクトル効率が低下する。
【0006】
干渉を抑えるとともにガードインターバルを挿入する必要性を取り除いた代替的な解決策が提案されている。これらの方法は、フィルタ(離散信号用)によって、又は実数値の領域に限定される直交性の特性を通じてより良好な周波数の局在性を可能とするプロトタイプと呼ばれる関数(連続信号用)によって、信号を整形することに依存している。これらは、例えば、特に非特許文献1及び2に記載されているような、無線周波数通信に従来から用いられているOFDM/OQAM型変調又はBFDM/OQAM型変調である。
【0007】
図1は、OFDM/OQAM型マルチキャリア信号を提供する従来のOFDM/OQAM変調装置の構造を正確に示している。この信号は、ベースバンド及び離散時間で表すことができ、以下のようになる。
【数1】
ただし、a
m,nは、時点nにおいてキャリアmにより送信される実数値を有するデータシンボルであり、Mはキャリア周波数の数であり、N=M/2は離散時間シフトであり、h[n]は、長さLを有する、変調装置によって用いられるプロトタイプフィルタであり、Dは、D=L−1となるような、プロトタイプフィルタによってもたらされる遅延であり、φ
m,nは、直交性を可能にするような、実部と虚部とが交互に現れるように選ばれる位相項であり、例えば、
【数2】
に等しい。
【0008】
図1に示しているように、実数値を搬送するデータシンボルa
m,nは、マルチキャリア信号のキャリアの時間及び周波数において特に直交演算(quadrature operation)を確保することを可能にする前処理すなわち事前変調11を受ける。
【0009】
より具体的には、この前処理演算において、実数データシンボルa
m,nに、マルチキャリア信号のキャリアの時間及び周波数の位相シフトを与えるπ/2を用いた第1の位相項と、プロトタイプフィルタの長さを考慮することを可能にする第2の項とを乗ずる。この前処理モジュールの出力として得られるデータシンボルを
【数3】
とすると、以下のように表すことができる。
【数4】
【0010】
次に、これらのデータシンボルは、逆離散フーリエ変換(inverse discrete Fourier transform, IDFT)モジュール12において、従来のように、サイズMのIDFTにより周波数領域から時間領域に変換される。IDFTモジュール12の出力として得られる変換された信号は、u
0,n〜u
2N−1,nと表せば、次に、プロトタイプフィルタh[n](符号13)によりフィルタリングされ、次いで、サブサンプリング及びオフセットがされて、OFDM/OQAM型マルチキャリア信号s[k]が得られる。より具体的には、プロトタイプフィルタh[n]は、
【数5】
によって定められるM個の多相(polyphase)要素G
l(z)を含む多相形式で表すことができる。
【0011】
さらに、OFDM/OQAM型変調の場合、シンボル時点nにおけるキャリアmのデータシンボルa
m,nは、2進列の形式の初期データをQ元(Q-ary)シンボルへ変換することを含む通常の予備演算(不図示)から得られる。22K個の状態を有し、各状態が複素数値に対応している正方形コンステレーションを有する直交振幅変調(quadrature amplitude modulation)QAMの場合には、この変換は、2進から2K進(2Kary)へのものである。例えば、4QAM演算の場合、4つの状態は、(1+i)と、(1−i)と、(−1+i)と、(−1−i)とである。この場合、OFDM/OQAM伝送の状況と同様、実部と虚部は別々に処理される。これは、K個の状態を有し、各状態が実数値(例えば4QAMの場合は、1又は−1)に対応する1次元コンステレーションが得られることを意味する。換言すれば、データシンボルa
m,nは、PAM(Pulse Amplitude Modulation, パルス振幅変調)型の2進からK進(Kary)への変換の結果である。
【0012】
しかし、OFDM/OQAM型変調は、ガードインターバルを挿入する必要性を取り除くことができるため、スペクトル効率のレベルにおいて、OFDM変調と比べてOFDM/OQAM型変調により利得がもたらされるにもかかわらず、OFDM変調は多くの場合、実装が簡単であることから好まれる。
【0013】
特に、OFDM/OQAM変調は、演算の複雑度(すなわち、乗算及び加算の数)の観点からOFDM変調よりも複雑である。
【0014】
確かに、所与の数のサブキャリアと、2つの変調システムのデータシンボルについて同一の固定ビットレートとに関して、OFDM/OQAM変調では、実数データシンボルのレート、すなわちOFDM変調のレートの2倍のレートの逆離散フーリエ変換(inverse discrete Fourier transform, IDFT)が必要である。したがって、同じ数のマルチキャリアシンボルを変調装置の出力として生成するにあたり、OFDM/OQAM変調装置によって実行されるIDFTにおける演算数は、OFDM変調装置によって実行される演算数の2倍である。
【0015】
さらに、OFDM/OQAM変調ではプロトタイプフィルタによる整形が必要であり、これにより特別な演算が行われる。その一方で、OFDM変調装置は、特別な演算を何ら必要としない矩形フィルタを用いる。しかし、この複雑度のコストは、比較的短い長さL(キャリア数Mの数倍に等しい)のプロトタイプフィルタの場合、比較的小さいことに留意されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、従来技術よりも複雑度の低いOFDM/OQAM型又はBFDM/OQAM型のマルチキャリア信号を生成する新規な変調方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、従来技術のこれらの全ての欠点を有しない新規な手法を、OQAM型マルチキャリア信号を提供する変調方法として提案する。
【0019】
本発明によれば、本方法は、M個の実数データシンボルからなる集合を周波数領域から時間領域へと変換してM個の変換されたシンボルを提供する、完全変換ステップと呼ばれる、変換ステップを行う。この完全変換ステップは、前記M個の実数データシンボルからなる集合に部分フーリエ変換を適用し、C個の変換されたシンボルからなる第1の部分集合(subset)を提供するサブステップであって、CはMよりも真に小さい、サブステップと、前記第1の部分集合を補完する、(M−C)個の変換されたシンボルからなる第2の部分集合を前記第1の部分集合から得るサブステップとを含む。
【0020】
したがって、本発明は、従来技術よりも複雑度の低いOFDM/OQAM変調又はBFDM/OQAM型変調、より一般的にはOQAMと呼ばれる変調の新規な手法を提案するものである。
【0021】
より具体的には、本発明は、部分フーリエ変換(partial Fourier transform)型アルゴリズムを用いることで、周波数・時間変換モジュールの出力の一部のみを計算し、計算された第1の出力から周波数・時間変換モジュールの残りの出力を推定(deduce)することを提案するものである。
【0022】
このようにして、従来実行されていた演算(乗算、加算)の数は、かなり減少する。
【0023】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1の部分集合と前記第2の部分集合とはサイズが同一である。つまり、C=M/2である。
【0024】
したがって、第1のサブステップにおいて、例えば、周波数・時間変換モジュールの出力の上半分に相当する、このモジュールの出力の半分が計算される。そして、第2のサブステップにおいて、本例では、周波数・時間変換モジュールの出力の下半分に相当する、このモジュールの出力の残り半分が得られる。
【0025】
例えば、前記第1の部分集合には、前記完全変換ステップの出力と関連付けられる、同じパリティインデックスを有する変換されたシンボルが含まれる。
【0026】
詳細には、特に、P. Duhamel及びH. Hollmannによる「Implementation of "split-radix" FFT algorithms for complex, real, and real symmetric data」、「Acoustics, Speech, and Signal Processing」(IEEE International Conference ICASSP' 85., vol. 10, April 1985, pp. 784-787)に記載されているような周波数間引き(decimation in frequency)を行う基数分割(split-radix)型の従来の逆高速フーリエ変換を考える場合、変換の入力インデックスは元々の順序であり、出力インデックスは、「ビット反転(bit reversal)」順序として知られている別の順序である。この場合、偶数パリティのサイズMの変換の場合、最初のM/2個の出力は偶数パリティインデックスを有する。したがって、偶数パリティインデックスを有する出力のみの計算を可能にする部分フーリエ変換を行うことができる。
【0027】
したがって、本発明による第1のサブステップでは、例えば、周波数・時間変換モジュールの出力の前半(first half)のみの計算を可能とする周波数間引きを行う基数分割型部分IFFTを行い、偶数パリティインデックスを有する出力のみを含む第1の部分集合が提供される。次に、第2のサブステップでは、偶数パリティインデックスを有する出力から、奇数パリティインデックスを有する出力を推定することができる。この種の「基数分割」アルゴリズムは高速であるという利点を有する。
【0028】
当然のことながら、Cooley-Tukeyによる「An Algorithm for the Machine Calculation of Complex Fourier Series」(Math. Computat., 1965)にて提案されているアルゴリズム等の別の周波数・時間変換アルゴリズムも用いることができる。このようなアルゴリズムは実際、電子部品において「基数分割」アルゴリズムよりも容易に実装することができる。
【0029】
1つの特徴によれば、本発明による変調方法は、前記完全変換ステップに対して予備的に実施される前記実数データシンボルの前処理ステップを含む。
【0030】
この種の前処理ステップは、事前変調ステップとも呼ばれ、実数シンボルに位相項(
【数6】
)を乗じて、OQAMマルチキャリア信号の時間におけるπ/2の位相シフトを確保することを可能とする。また、この前処理ステップでは、プロトタイプフィルタの長さを考慮した項(
【数7】
)による乗算も行い、キャリアの周波数におけるπ/2の位相シフトを確保するだけでなく、プロトタイプフィルタの因果関係を考慮することを可能にする。したがって、本発明による変調方法を実行する変調装置は、因果性プロトタイプフィルタの使用に基づいているため物理的に実施可能である。
【0031】
詳細には、前記得るステップでは、第1の数学的関係を用いて、前記第1の部分集合の第1の部分から前記第2の部分集合の第1の部分を決定し、第2の数学的関係を用いて、前記第1の部分集合の第2の部分から前記第2の部分集合の第2の部分を決定する。前記第1の部分集合における第1の部分及び第2の部分、並びに前記第2の部分集合における第1の部分及び第2の部分は、それぞれ相補的なものである。
【0032】
例えば、第1の部分集合が偶数パリティインデックスを有する出力を含み、第2の部分集合が奇数パリティインデックスを有する出力を含むことを考えると、偶数パリティインデックスを有する出力の前半は、第1の数学的関係から、奇数パリティインデックスを有する出力の前半を得るために用いられる。偶数パリティインデックスを有する出力の後半(second half)は、第2の数学的関係から、奇数パリティインデックスを有する出力の後半を得るために用いられる。
【0033】
偶数パリティ値としてL(奇数パリティ値としてD)を有する第1の態様に基づいて、遅延パラメータD=L−1と、qM+2pに等しい長さLを有するプロトタイプフィルタとを有するODFM/OQAM型変調装置又はBFDM/OQAM型変調装置を考える。ただし、q及びpは、q≧0かつ0≦p≦M/2−1となるような整数であり、Mは4で割り切れる。このとき2つのケースが考えられる。第1のケースでは、0≦p≦M/4−1であるとし、以下の関係を用いて、第1の部分集合から第2の部分集合を推定することができる。
・第1の数学的関係:0≦k≦M/4+p−1となるような整数kについて、
【数8】
・第2の数学的関係:0≦k≦M/4−p−1となるような整数kについて、
【数9】
ただし、u
m,nは、時点nにおける、完全変換ステップのインデックスmを有する出力に関連付けられる変換されたシンボルであり、
*は共役作用素(conjugate operator)である。
【0034】
Lが偶数パリティ値である第2のケースでは、M/4≦p≦M/2−1であると考えられ、以下の関係を用いて、第1の部分集合から第2の部分集合を推定することができる。
・第1の数学的関係:0≦k≦p−M/4−1となるような整数kについて、
【数10】
・第2の数学的関係:0≦k≦3M/4−p−1となるような整数kについて、
【数11】
【0035】
奇数パリティ値としてDを有する第2の態様によれば、D=qM+2p−1となるような遅延パラメータD<L−1を有し、Lはプロトタイプフィルタの長さであり、q及びpは、q≧0かつ0≦p≦M/2−1となるような整数であり、Mは4で割り切れるようなBFDM/OQAM型変調装置を考えることができる。2つのケースが考えられる。第1のケースでは、0≦p≦M/4−1であるとし、以下の関係を用いて第1の部分集合から第2の部分集合を推定することができる。
・第1の数学的関係:0≦k≦M/4+p−1となるような整数kについて、
【数12】
・第2の数学的関係:0≦k≦M/4−p−1となるような整数kについて、
【数13】
【0036】
Lが偶数パリティ数である第2のケースでは、M/4≦p≦M/2−1であると考えられ、この場合、以下の関係を用いて、第1の部分集合から第2の部分集合を推定することができる。
・第1の数学的関係:0≦k≦p−M/4−1となるような整数kについて、
【数14】
・第2の数学的関係:0≦k≦3M/4−p−1となるような整数kについて、
【数15】
【0037】
したがって、L−1よりも真に小さな遅延Dを有する変調装置に本発明を用いることができる。
【0038】
第3の態様によれば、D=qN−1となるような遅延パラメータD<L−1を有し、q=2q’+1であり、q’は整数であり、Mは2で割り切れるようなBFDM/OQAM型変調装置と、長さLを有する線形位相プロトタイプフィルタとの特定の場合が考えられる。
【0039】
この特定の場合において、単一の数学的関係、すなわち、0≦k≦M/2−1となるような整数kについて、
【数16】
という関係を用いて、第1の部分集合から第2の部分集合を推定することができる。
【0040】
さらに、線形位相フィルタのこの特定の場合において、本発明による変調方法は、0≦k≦M/2−1について、
【数17】
となるような多相要素を用いる、M個の変換されたシンボルの多相フィルタリングを含む。
【0041】
換言すれば、周波数・時間変換モジュールの出力は2つ一組で共役であり、プロトタイプフィルタの多相要素は2つ一組でパラ共役(para-conjugate)である。
【0042】
したがって、この対称性を用いて、フィルタリングの別々の時点で生じる乗算の結果の一部を再利用し、フィルタリングの複雑度を減少させることができる。
【0043】
本発明はまた、上述した変調方法のステップをコンピュータに実行させるための命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0044】
実際に、本発明の方法は、様々な方法、特に有線の形式又はソフトウェア形式で実施することができる。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、OQAM型マルチキャリア信号を提供する変調装置に関する。
【0046】
本発明によれば、この変調装置は、周波数領域から時間領域へと、M個の実数データシンボルからなる集合をM個の変換されたシンボルに変換する手段を備えている。この手段は、部分フーリエ変換を行い、前記M個の実数データシンボルからなる集合を部分変換して、C個の変換されたシンボルからなる第1の部分集合を提供する手段であって、CはMよりも真に小さい、手段と、前記第1の部分集合を補完する、(M−C)個の変換されたシンボルからなる第2の部分集合を前記第1の部分集合から得る手段とを備えている。
【0047】
この種の変調装置は、特に、上述した変調方法を実施するものである。この変調装置は例えば、送信シーケンスに存在するOFDM/OQAM変調装置又はBFDM/OQAM変調装置である。
【0048】
この変調装置は、もちろん、本発明による変調方法に関する別の特徴を備えていてもよく、これらの特徴は、組み合わせることもできるし、単独とすることもできる。このように、この装置の特徴及び利点は、上述した方法の特徴及び利点と同様である。したがって、これ以上詳細には説明しない。
【0049】
本発明の別の特徴及び利点は、単なる例示であって必ずしも網羅的ではない例として与える特定の実施形態の以下の説明と以下の図面とからより明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[1.一般原理]
本発明の一般原理は、OFDM/OQAM変調装置又はBFDM/OQAM変調装置における周波数領域から時間領域への変換処理の複雑度を抑えた特定の実施態様に依存している。
【0052】
このために、本発明は、上記変換処理により出力される出力係数のある部分のみを典型的な方法により計算して第1の部分集合(subset)を得て、第2の部分集合を形成する出力係数の他の部分を上記第1の部分集合から推定(deduce)することを提案するものである。
【0053】
図2は、OFDM/OQAM型又はBFDM/OQAM型のマルチキャリア信号を提供するための、本発明の変調方法により行われる主なステップのより精密な説明図である。本方法は、特に、上記非特許文献1に記載されているようなOFDM/OQAM変調装置又は上記非特許文献2に記載されているようなBFDM/OQAM型変調装置において実施することができる。
【0054】
本発明によれば、本方法では、M個の実数データシンボルからなる集合を周波数領域から時間領域へと変換するステップ22を行い、完全変換シンボル(complete transformation symbols)と呼ばれる、M個の変換されたシンボルを提供する。本発明による完全変換ステップ(complete transformation step)22は、
図1のIDFTモジュール12において実施することにより、
図1に示した変調装置において実施することができる。
【0055】
a
m,nと表記するこれらM個の実数データシンボルには、変換処理22の前に、特に、変調装置の出力として得られるマルチキャリア信号のキャリアの時間及び周波数の直角位相(quadrature)を提供するとともにプロトタイプフィルタの長さを考慮するために、
図1の前処理モジュール11において前処理がなされうる。従来技術の参照において定めた表記と同じ表記を用いると、この前処理モジュールの出力として得られるシンボルは、
【数18】
と表される。具体的には以下のようになる。
【数19】
ただし、M=2Nである。
【0056】
本発明による完全変換ステップ22では、以下の2つのサブステップを行う。
・M個の実数データシンボルからなる集合に対して部分フーリエ変換(partial Fourier transform)を行い、C個の変換シンボルからなる第1の部分集合(subset)を得る第1のサブステップ221。ただし、CはMよりも真に小さい。
・第1の部分集合を補完する、(M−C)個の変換されたシンボルからなる第2の部分集合を第1の部分集合から得る第2のサブステップ222。
【0057】
図3からわかるように、完全変換ステップ22の出力として得られる変換されたシンボルのインデックスは、必ずしも元の順序で分類されておらず、ビット反転(bit reversal)を受けている。
【0058】
例えば、第1の部分集合には、u
0,n,u
2,n,u
4,n,...,u
M−2,nと表される、C=M/2個の変換されたシンボルが含まれる。そして、第1の部分集合を補完する第2の部分集合には、u
1,n,u
3,n,...,u
M−1,nと表される、M−C=M/2個の変換されたシンボルが含まれる。
【0059】
実際、本発明者は、OFDM/OQAM変換器又はBFDM/OQAM変調装置の周波数・時間変換モジュールの別々の出力の間に数学的関係が存在することを示している。結果として、本発明者の研究によれば、もはや、このモジュールの出力の全てを計算する必要はなく、その一部のみを計算し、その計算結果から他の部分を推定することができる。このように、本発明によれば、従来の周波数・時間変換モジュールから出力される情報の冗長性を利用して、その出力の全てを計算しないようにする。
【0060】
変換モジュールの別々の出力の間のこの数学的関係は、特に、データシンボルa
m,nが実数であることと、各時点nにおいて周波数・時間変換モジュールの入力mに存在する特定の位相項
【数20】
とに起因している。
【0061】
したがって、本発明は、周波数領域から時間領域への変換の処理が「基数分割」型アルゴリズムによって実施されたとしても、Cooley-Tukeyにより上述した文献において提案されている逆高速フーリエ変換アルゴリズム等の同等のアルゴリズムによって実施されたとしても、該処理の複雑度を低減するものである。
【0062】
[2.OFDM/OQAM変調装置の場合]
A)第1の適用例:L=qM
以下、長さLが周波数・時間変換のサイズMの倍数、すなわちL=qMであるプロトタイプフィルタを有するOFDM/OQAM型変調装置を考慮した本発明の第1の適用例を説明する。ただし、qは整数であり、Mは4で割り切れる。
【0063】
この場合において、例えば、従来のIFFT型の周波数・時間変換を考えた場合、任意の正の整数n及び0≦k≦M/4−1となるような整数kについて、以下の式が得られる。
【数21】
【0064】
より具体的には、IFFTの出力の前半(first half)の値の間において以下の関係が得られる。
【数22】
ただし、作用素
*は、共役作用素(conjugate operator)に相当するものである。以下のような関係に書き換えることもできる。
【数23】
【0065】
任意の正の整数n及び0≦k≦M/4−1となるような整数kについて、IFFTの出力の後半(second half)の値の間において以下の関係が得られる。
【数24】
【0066】
その結果、
【数25】
という関係と、
【数26】
という関係とを考慮すれば、本発明において周波数・時間変換ステップ22の全ての出力を得るにあたり、以下を行えば十分である。
・第1のサブステップ221において、出力の第1の部分集合(0≦k≦M/4−1の場合のu
k,n及びu
3M/4−1−k,n)を計算すること。
・それに基づき、上述した関係を用いて、出力の第1の部分集合を補完する第2の部分集合(0≦k≦M/4−1の場合のu
M/2−1−k,n及びu
3M/4+k,n)を第2のサブステップ222において推定すること。
【0067】
したがって、この例によれば、第2のサブステップ222の終了時に周波数・時間変換ステップ22の全ての出力を得るためには、第1のサブステップ221においては、部分フーリエ変換又は間引き(pruned)フーリエ変換(間引きIFFT)を用いて出力の半分を計算することで十分である。
【0068】
本発明を実施する効率的な方法は、第1のサブステップ221において、同じパリティインデックスを有する周波数・時間変換ステップ22の出力を計算することにある。この選択によってデータが失われることはない。なぜならば、上述した関係により、パリティインデックスの異なる出力を2つずつ関連付けることが可能となるからである(例えば、Mが8に等しい場合、奇数パリティインデックスを有する出力u
3,nは、以下の式に基づいて、偶数パリティインデックスを有する出力u
0,nと関連付けられる)。
【数27】
【0069】
一例として、
図3に示すように、サイズMが32に等しい周波数・時間変換を行うOQAMマルチキャリア変調装置を考える。
【0070】
基数分割型アルゴリズムを用いてIFFTを行う「従来」の場合を考えると、M個の出力は、インデックス0〜31に対応するM個の入力から計算される。このようなアルゴリズムは、Mlog
2M−3M+4回の実数の乗算と、3Mlog
2M−3M+4回の実数の加算とに相当する演算複雑度によって表される。
【0071】
本発明によれば、これらM個の出力を計算するのではなく、偶数パリティインデックスを有する出力に相当する出力の前半のみを計算する。続いて、上述した関係を用いることにより、奇数パリティインデックスを有する出力に相当する出力の後半を推定することができる。なぜならば、上述した関係により、2つを一組として、パリティインデックスの異なる出力を関連付けることができるからである。
【0072】
この複雑度の低減の原理は、長さL=(2q+1)Nを有するプロトタイプフィルタを対象とする場合にも当てはまる。実際、この場合、パリティの異なる出力間の関係は、異なるインデックス間を除いて常に検証される。
【0073】
B)第2の適用例:L=qM+q
1
以下、長さがより一般的にL=qM+q
1の形式であるプロトタイプフィルタを有するOFDM/OQAM変調装置を考慮した本発明の第2の適用例を説明する。ただし、q及びq
1は、q≧0及び0≦q1≦M−1となるような整数であり、Mは4で割り切れる。
【0074】
次に、まず、q1が偶数パリティ値である場合を考える。
【0075】
このとき、第1の場合すなわち0≦p≦M/4−1において、L=qM+2pと記述することができる。
【0076】
この場合、任意の正の整数n及び0≦k≦M/4+p−1となるような整数kについて、第1の例について行った計算と同様の計算を行うと、以下の式が得られる。
【数28】
【0077】
したがって、IFFTの出力の前半の値の間において以下の関係が得られる。
【数29】
【0078】
任意の正の整数n及び0≦k≦M/4−p−1となるような整数kについて、IFFTの出力の後半の値の間において以下の関係が得られる。
【数30】
【0079】
結果として、
【数31】
という関係と、
【数32】
という関係とを考慮すれば、本発明において周波数・時間変換ステップ22の全ての出力を得るにあたり、以下を行えば十分である。
・第1のサブステップ221において、出力の第1の部分集合(0≦k≦M/4+p−1の場合のu
k,nと、0≦k≦M/4−p−1の場合のu
3M/4+p+k,n)を計算すること。
・それに基づき、上述した関係を用いて、出力の第1の部分集合を補完する第2の部分集合(0≦k≦M/4+p−1の場合のu
M/2+2p−k−1,nと、0≦k≦M/4−p−1の場合のu
3M/4+p−k−1,n)を第2のサブステップ222において推定すること。
【0080】
第2の場合すなわちM/4≦p≦M/2−1において、L=qM+2pと記述することもできる。
【0081】
この場合、任意の正の整数n及び0≦k≦p−M/4−1となるような整数kについて、前の計算と同様の計算を行うと、以下の式が得られる。
【数33】
【0082】
したがって、IFFTの出力の前半の値の間において以下の関係が得られる。
【数34】
【0083】
任意の正の整数n及び0≦k≦3M/4−p−1となるような整数kについて、IFFTの出力の後半の値の間において以下の関係が得られる。
【数35】
【0084】
結果として、
【数36】
という関係と、
【数37】
という関係とを考慮すれば、本発明において周波数・時間変換ステップ22の全ての出力を得るにあたり、以下を行えば十分である。
・第1のサブステップ221において、出力の第1の部分集合(0≦k≦p−M/4−1の場合のu
k,nと、0≦k≦3M/4−p−1の場合のu
2p+k−M/2,n)を計算すること。
・それに基づき、上述した関係を用いて、出力の第1の部分集合を補完する第2の部分集合(0≦k≦p−M/4−1の場合のu
2p−M/2−k−1,nと、0≦k≦3M/4−p−1の場合のu
M−1−k,n)を第2のサブステップ222において推定すること。
【0085】
したがって、この例によれば、第2のサブステップ222の終了時に周波数・時間変換ステップ22の全ての出力を得るためには、第1のサブステップ221においては、部分フーリエ変換を用いて出力の半分を計算することで十分である。
【0086】
この場合もやはり、上述した関係により、パリティインデックスの異なる出力を、2つを一組として関連付けることができることがわかる。
【0087】
第1の例に関して説明したように、本発明を実施する効率的な方法は、第1のサブステップ221において、同じパリティインデックスを有する周波数・時間変換ステップ22の出力、例えば偶数パリティインデックスを有する出力を計算した後、この値から、奇数パリティインデックスを有する出力を推定することにある。
【0088】
したがって、プロトタイプフィルタの長さが第1の例において変換処理のサイズの倍数(L=qM)である場合に適用される、複雑度を低減する原理は、L=qM+2pの場合にもあてはまる。
【0089】
この複雑度の低減の原理は、q
1が奇数パリティ値の場合は、別の方法で与えられる。
【0090】
実際、この場合には、L=qM+2p+1と記述することが可能であり、変換モジュールの出力は、0≦k≦M−1の場合には以下のように表すことができる。
【数38】
【0091】
1997年7月1日出願の「Method and device for modulating a multicarrier signal of the OFDM/OQAM type, and corresponding demodulation method and device」という名称のFR-97 08547号の特許において提案されているように、変換モジュールの出力は、実数値(a
m,n(−1)
mq)を入力とするIFFTを用いて、循環的置換(circular permutation)をその出力に適用することにより得ることができる。この置換は、0≦p≦M/4−1の場合はM/4−pだけ循環的左方向シフトとなり、M/4≦p≦M/2−1の場合はp−M/4だけ循環的右方向シフトとなる。つまり、0≦p≦M/4−1の場合を選ぶとすると、インデックス0に対応するIFFTの出力は、インデックスM/4−pに対応する出力に置き換わり、インデックス1に対応する出力は、インデックスM/4−p+1に対応する出力に置き換わるなどである。
【0092】
この場合、複雑度の低減は、実数の入力及び非複素(non-complex)の入力に対してIFFTを用いることができるという可能性からもたらされるものである。したがって、上記に示したような基数分割型アルゴリズムを用いることで、演算の複雑度は半分に低減される。
【0093】
先の式がプロトタイプフィルタの長さを考慮したものであるため、因果的な結果を直接的に得ることが可能となる点にも留意されたい。これは、上述した特許にはないものである。
【0094】
[3.BFDM/OQAM変調装置の場合]
本発明による方法は、送信及び受信の際に別々のプロトタイプフィルタを用いる可能性があるBFDM/OQAM変調装置においても実施することができる。したがって、OFDM/OQAMの直交の場合について上記で説明した複雑度低減の原理は、双直交(又は陪直交)(bi-orthogonal)の場合にも適用できる。
【0095】
この場合、周波数・時間変換モジュールの入力に用いられる遅延パラメータDは、より柔軟であり、D≦L−1となるようにすることができる。ただし、Lは、プロトタイプ送信フィルタの長さである。
【0096】
A) D=L−1
まず、D=L−1となるような遅延を対象とすると、周波数・時間変換モジュールの出力において、q
1が偶数パリティ数である場合の第2の適用例で先に定められた関係が得られる。すなわち以下の通りである。
【数39】
ただし、0≦p≦M/4−1である。
そして、M/4≦p≦M/2−1である第2の場合は以下の通りである。
【数40】
【0097】
B) D<L−1
遅延がD<L−1となるような場合、上記の関係は遅延の形態によって異なる。
【0098】
より具体的には、D=qM+q
1−1と記述し、様々な場合を検討する。
・q
1が偶数パリティ数である場合、遅延はD=qM+2p−1の形となり、L=qM+2pである場合の第2の適用例において上記で定められた関係がこの場合も見られる。
・q
1が奇数パリティ数である場合、遅延はD=qM+2pの形となり、L=qM+2p+1である場合の第2の適用例において上記で定められた関係がこの場合も見られる。pの値の区間により2つの場合が考慮する必要がある。
a.0≦p≦M/4−1の場合、変換モジュールの出力は、実数変換(real transformation)とそれに続くM/4−pの循環的左方向置換(circular leftward permutation)により得ることができる。
b.M/4≦p≦M/2−1の場合、変換モジュールの出力は、実数変換とそれに続くp−M/4の右方向循環的置換(rightward circular permutation)によって得ることができる。
【0099】
一例として、長さLと、L−1よりも真に小さな遅延Dとを有する、送信における線形位相プロトタイプフィルタを実装するBFDM/OQAM型変調装置を考える。
【0100】
遅延がD=qM+2p−1の形であり、ただし、
【数41】
である場合、セクション3のB)の式を用いることで、周波数・時間変換モジュールのインデックスkを有する出力とインデックスM−1−kを有する出力との関係が得られる。
【0101】
より具体的には、M/4≦p≦3M/4−1である第2の場合において、0≦k≦p−M/4−1について得られた第1の関係は、あり得ない場合(0≦k≦−1)をもたらすため、適用することができない。対照的に、0≦k≦3M/4−p−1について得られた第2の関係を適用して、0≦k≦M/2−1の場合に以下が与えられる。
【数42】
【0102】
その結果、
【数43】
という関係を考慮すれば、本発明において周波数・時間変換ステップ22の全ての出力を得るにあたり、以下を行えば十分である。
・第1のサブステップ221において、出力の第1の部分集合(0≦k≦M/2−1の場合のu
k,n)を計算すること。
・これに基づき、上述した関係を用いて、出力の第1の部分集合を補完する第2の部分集合(0≦k≦M/2−1の場合のu
M−1−k,n)を第2のサブステップ222において推定すること。
【0103】
C) 多相フィルタリング(polyphase filtering)の簡略化
改めて、長さLを有し、遅延がD=qN−1となるように選ばれた送信における線形位相プロトタイプフィルタを実装するBFDM/OQAM変調装置に関する説明を行う。ただし、q=2q’+1であり、q’は整数である。
【0104】
従来、プロトタイプフィルタh[n]の多相(polyphase)要素G
l(z)は、
【数44】
により定められることを思い出していただきたい。
【0105】
しかし、送信におけるプロトタイプフィルタは線形位相フィルタであるため、このことから、その多相要素は、0≦k≦M/2−1の場合に以下の形で表すことができると推定される。
【数45】
【0106】
したがって、多相要素はパラ共役(para-conjugate)である。この場合、この多相フィルタの実装を簡略化することができる。この対称性を用いることによって、プロトタイプフィルタ用に実行される乗算の数を半分にすることができる。
【0107】
より具体的には、周波数・時間変換モジュールの出力は、
【数46】
という関係によって関連付けられる。したがって、周波数・時間変換モジュールの出力は、2つ一組で共役(conjugate)であり、パラ共役の多相要素によってフィルタリングされる。したがって、このことから、共通しているものの、別々のフィルタリング時点で行われる乗算が存在することが推定される。フィルタリング時のこれらの共通した乗算の数は、全体の乗算の半分に等しいため、この段階における乗算の数を半分にすることができる。
【0108】
しかし、フィルタリングの各時点において乗算を保存するために追加のメモリが必要であることに留意する必要がある。
【0109】
図5は、このようなメモリの使用のより精密な説明図である。
【0110】
一例として、2つの異なる時点2n及び2n+1における数学的変換モジュール22の2つの出力u
k,n及びu
M−1−k,nのみを考える。また、長さL=qM=2Mを有するプロトタイプフィルタを考慮する。したがって、各多相要素G
k(z)は、2つの係数(h(0)及びh(1))によって形成される。ゼロ係数による乗算は、G
k(z
2)により2倍のレートで行われるフィルタリングに関連付けられることに留意されたい。
【0111】
この例によれば、多相フィルタの要素G
k(z
2)の出力において、以下のフィルタリングされたシンボルが得られることに留意されたい。
【数47】
【0112】
多相フィルタからの要素G
M−1−k(z
2)の出力において、以下のフィルタリングされたシンボルが得られる。
【数48】
【0113】
実際、0≦k≦M/2−1の場合、周波数・時間変換モジュールの出力は、
【数49】
という関係によって関連付けられ、多相要素は、
【数50】
という関係によって関連付けられることを思い出していただきたい。
【0114】
したがって、計算される情報には冗長性が存在し、フィルタリングの複雑度は半分に低減することができる。より具体的には、フィルタリングされたシンボルu
k,2nh(0)と、u
k,2n+1h(0)と、u
*k,2nh(1)と、u
*k,2n+1h(1)とを計算し、それらをメモリ51に保存し、次いで、このメモリを用いて、フィルタリングされたシンボルu
k,2nh(1)と、u
k,2n+1h(1)と、u
*k,2nh(0)と、u
*k,2n+1h(0)とを決定することができる。
【0115】
つまり、長さL=qM及び遅延D=q’N−1を有するプロトタイプフィルタを考えた場合、複素乗算の数は2qM(4qMではない)に等しい。ただし、q’=2q”+1であり、q”<qである。
【0116】
[3.位相項の修正]
OFDM/OQAM変調又はBFDM/OQAM変調の場合の上記で示した例では、位相項は以下のようになるように選ばれた。
【数51】
【0117】
当然のことながら、本発明は、
【数52】
となるような位相項についても適用することができる。ただし、ε∈{0,1,−1}である。
【0118】
より一般的には、時間・周波数平面のある位置(m,n)と、最も近い4つの近傍位置{(m+1,n),(m−1,n),(m,n+1),(m,n−1)}との間の位相差が±π/2に等しくなるように、位相項φ
m,nを選ぶことができる。
【0119】
[4.複雑度の点で見た性能]
上記の例で示したように、周波数・時間変換モジュールの全ての出力を得るにあたり、このモジュールの出力の第1の部分集合を計算すれば十分である。例えば、周波数・時間変換モジュールの偶数パリティインデックスを有する出力を計算すれば十分である。
【0120】
したがって、この間引きがなされた(pruning)か又は部分的な変換の原理を用いることにより、この周波数・時間変換を行うために実際に用いられるIFFT型高速アルゴリズムのほとんどのものの複雑度を低減することができる。
【0121】
説明として、周波数間引き(decimation-in-frequency, DIF)型の基数分割IFFTアルゴリズムの場合について提案されている方法を示すために、
図3を再び参照する。
【0122】
まず、以下を思い出していただきたい。
・M=2
rのサイズの変換の場合、r個の計算ステージがある。
図3に示す例によれば、5個の計算ステージ(M=32及びr=5)がある。
・各ステージにおいて必要な計算には、
図4に示す表記を有するバタフライ形状の、
図3の反復的構造によってシンボル化されている複素加算及び複素乗算が含まれる。ただし、1つのIFFTについて、
【数53】
であり、1つのFFTについて、
【数54】
である。
・このDIF型アルゴリズムの場合、偶数パリティインデックスを有する出力は、IFFTの上側部分において得られる。
【0123】
既に示したように、本発明によれば、対象のモジュールがOFDM/OQAM変調装置であろうと、BFDM/OQAM変調装置であろうと、変換モジュールの全ての出力を得ることができるようにするためには、周波数・時間変換モジュールの偶数パリティインデックスを有する出力(M/2個の最初の出力となる)を計算すれば十分である。
【0124】
以下、サイズMの、間引きがなされたIFFTの処理コストが、サイズM/2の、間引きがなされていないIFFTにM/2回の複素加算を加えたもののコストへと低減されることを示す。これは、
図3を参照することによって検証することができる。
図3では、従来、奇数パリティインデックスを有する出力を計算するために用いられていた下側半分全体を取り除くことができることが見てわかる。
【0125】
以下の実証は、FFTに適用するが、IFFTについても同様と推定できる。
【0126】
より具体的には、時間シーケンスx(m)、m=0,...,M−1に対し、FFTは以下により与えられる。
【数55】
【0127】
上記「Implementation of "split-radix" FFT algorithms for complex, real, and real symmetric data」という文献によれば、この式は、以下のように分解することができる。
【数56】
ただし、
【数57】
であり、
【数58】
である。
【0128】
この周波数間引きにより、サイズMのFFTを、サイズM/2のFFTとサイズM/4の2つのFFTとに分解することが可能になる。各分解において、奇数パリティ周波数の計算は以下のようなコストであることに留意されたい。
・M/2−4回の複素乗算(m≠{0,M/8}の場合に、
【数59】
及び
【数60】
による乗算)。ただし、複素乗算M
cは、2つの実数の乗算M
r及び3つの実数の加算A
rと同等である。
・1の8乗根(the eighth root of unity)による2つの乗算。ただし、各乗算は、2つの実数の乗算M
r及び2つの実数の加算A
rと同等である。
【0129】
偶数パリティ周波数は、奇数パリティ周波数よりも必要な計算が少ないため、偶数パリティ周波数を計算することが好ましいことに留意されたい。
【0130】
(X(2k),X(4k+1),X(4k+3))の形で表されるFFTの式によれば、偶数パリティ周波数を計算するコストは、サイズM/2のFFT(すなわち、係数X(2k)のみ)と、このFFTの入力を得るためのM/2回の複素加算(x(m)+x(m+M/2),m=0,...M/2−1)とを計算することと同等である。
【0131】
ここで、「基数分割」型アルゴリズムを用いた、サイズMのFFTを計算する複雑度は、(Mlog
2M−3M+4)回の実数の乗算と、(3Mlog
2M−3M+4)回の実数の加算とに等しいことがわかる。
【0132】
したがって、サイズMのFFTの代わりに、入力においてM/2回の複素加算を有するサイズM/2のFFTを計算することにより、複雑度は、実数の乗算については、(Mlog
2M−3M+4)回から、50%超の利得をもたらす((M/2)log
2M−2M+4)回へと低減され、実数の加算については、(3Mlog
2M−3M+4)回から、同様に50%超の利得をもたらす((3M/2)log
2M−2M+4)回へと低減される。
【0133】
同様の方法で、従来技術におけるサイズMのIFFTに代えて、本発明によるサイズM/2の部分的IFFTを計算することにより、複雑度は、実数の乗算については、(Mlog
2M−3M+4)回から((M/2)log
2M−2M+4)回へと低減され、実数の加算については、(3Mlog
2M−3M+4)回から((3M/2)log
2M−2M+4)回へと低減される。
【0134】
[5.変調装置の構造]
最後に、
図6を参照して、上記で説明した適用例による変調方法を実施するOFDM/OQAM変調装置又はBFDM/OQAM変調装置の簡略化した構造を示す。
【0135】
この変調装置は、バッファメモリを有するメモリ61と、例えばマイクロプロセッサμPを備え、本発明による変調方法を実施するコンピュータプログラム63によって制御される処理ユニット62とを備えている。
【0136】
最初に、コンピュータプログラム63のコード命令が、例えばRAMにロードされ、その後、処理ユニット62のプロセッサにより実行される。処理ユニット62は、M個の実数データシンボルa
m,nを入力する。処理ユニット62のマイクロプロセッサは、コンピュータプログラム63の命令に従って、上述した変調方法のステップを実行して、データシンボルの周波数領域から時間領域への変換を実行し、変換されたシンボルu
m,nを出力する。この目的を達成するために、変調装置は、バッファメモリ61に加えて、部分フーリエ変換を行いC個の変換されたシンボルからなる第1の部分集合を出力する、M個の実数データシンボルからなる集合に対する部分的変換の手段と、この第1の部分集合を補完する(M−C)個の変換されたシンボルからなる第2の部分集合を該第1の部分集合から得る手段とを備えている。ただし、CはMよりも真に小さい。
【0137】
これらの手段は、処理ユニット62内のマイクロプロセッサにより制御される。