特許第5944440号(P5944440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5944440リン光発光ダイオード中の、カルバゾールを含む物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944440
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】リン光発光ダイオード中の、カルバゾールを含む物質
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20160621BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160621BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160621BHJP
   C07D 401/14 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 409/14 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 405/14 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 491/048 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 495/04 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 495/14 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 491/147 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 209/86 20060101ALN20160621BHJP
   C07D 403/14 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/10
   H05B33/22 D
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
   !C07D401/14
   !C07D409/14
   !C07D405/14
   !C07D491/048
   !C07D495/04 105A
   !C07D495/14 D
   !C07D491/147
   !C07D209/86
   !C07D403/14
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2014-136574(P2014-136574)
(22)【出願日】2014年7月2日
(62)【分割の表示】特願2010-540808(P2010-540808)の分割
【原出願日】2008年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-196342(P2014-196342A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】61/017,480
(32)【優先日】2007年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/017,391
(32)【優先日】2007年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/209,928
(32)【優先日】2008年9月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/275,894
(32)【優先日】2008年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュン・リン
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・ボリソヴィッチ・ドヤトキン
(72)【発明者】
【氏名】ゼイナブ・エルシナウィー
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5575661(JP,B2)
【文献】 特開2008−078362(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0220011(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/029652(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/127063(WO,A1)
【文献】 特開2005−002101(JP,A)
【文献】 米国特許第02944058(US,A)
【文献】 Journal of Applied Physics (2007), 101(2), 024512/1-024512/7,2007年 1月24日,Vol.101(2),p.024512-1〜024512-7
【文献】 Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry,1993年,Vol.(8),p.1547-1555
【文献】 Journal of Organic Chemistry,1957年,Vol.22,p.1169-1171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
H05B 33/10
C07D 401/14
C07D 405/14
C07D 409/14
C07D 491/048
C07D 495/04
C07D 209/86
C07D 403/14
C07D 491/147
C07D 495/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード;
カソード;及び、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された第一の有機層、を含む有機発光デバイスであって、
前記有機層が下記式:
【化1】
式中、
aは1〜2であり;
bは0であり;
mは1又は2であり;
nは0であり;
Xは、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンからなる群から選択され;
XはRで置換されており、Rは、水素、アルキル、トリフェニレン、ピリジン、及びピリミジンからなる群から選択される。
で表されるカルバゾール含有化合物を含み、
前記第一の有機層が発光層であり、且つ前記カルバゾール含有化合物が前記第一の有機層中のホストであり、
前記発光層が下記式:
【化2】
(式中、n=1、2、又は3であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、及びR1iはそれぞれ独立に、H、ヒドロカルビル、ヘテロ原子置換ヒドロカルビル、シアノ、フルオロ、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cであり、R2a〜cはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル又はヘテロ原子置換ヒドロカルビルであり、R1a〜i及びR2a〜cの任意の2つが連結して飽和もしくは不飽和の、芳香族もしくは非芳香族の環を形成してもよく;
X−Yは補助配位子である。)
で表されるリン光発光体をさらに含む、有機発光デバイス
(但し、上記式Iの化合物が以下の化合物1G〜6G及び8G〜79Gからなる群から選択される有機発光デバイスを除く。)。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
(各式中、aは1〜2を表す。)
【請求項2】
アノード;
カソード;及び、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された第一の有機層、を含む有機発光デバイスであって、
前記有機層が下記式:
【化17】
(式中、
aは1〜2であり;
bは0であり;
mは1又は2であり;
nは0であり;
Xは、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンからなる群から選択され;
XはRで置換されており、Rは、水素、アルキル、トリフェニレン、ピリジン、及びピリミジンからなる群から選択される。)
で表されるカルバゾール含有化合物を含み、
前記第一の有機層が発光層であり、且つ前記カルバゾール含有化合物が前記第一の有機層中のホストであり、
前記発光層がリン光発光体をさらに含み、
前記リン光発光体が、下記式を有するモノアニオン性の二座配位子を含むリン光性金属錯体を含む化合物である、有機発光デバイス
【化18】
式中、E1a〜qは、C及びNからなる群から選択され、全体で18π電子系を含み、但し、E1aとE1pとは異なることを条件とし;
1a〜iはそれぞれ独立に、H、ヒドロカルビル、ヘテロ原子置換ヒドロカルビル、シアノ、フルオロ、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cであり、R2a〜cはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル又はヘテロ原子置換ヒドロカルビルであり、R1a〜i及びR2a〜cの任意の2つが連結して飽和もしくは不飽和の、芳香族もしくは非芳香族の環を形成してもよく;但し、R1a〜iはNに結合している場合はH以外であり;
前記金属は、40より大きな原子番号をもつ非放射性金属からなる群から選択され;
前記二座配位子は別の配位子と連結して三座、四座、五座、又は六座配位子を構成してもよい。
(但し、上記式Iの化合物が以下の化合物1G〜6G及び8G〜79Gからなる群から選択される有機発光デバイスを除く。)。
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
(各式中、aは1〜2を表す。)
【請求項3】
非発光層である第二の有機層をさらに含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第一の有機層が前記第二の有機層に隣接している、請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記リン光発光体が425nm〜495nmの三重項エネルギーを有し、Xが、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、及びトリフェニレンからなる群から選択され、且つ、Rが、水素及びアルキルからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記三重項エネルギーが440nm〜480nmである、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記リン光発光体が、495nm〜570nmの三重項エネルギーを有し、Xが、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択され、且つ、Rが、水素、アルキル、ピリジン、及びピリミジンから選択される、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記三重項エネルギーが510nm〜530nmである、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
記カルバゾール含有化合物が10〜100質量%の濃度を有する、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項10】
記カルバゾール含有化合物が40〜99.9質量%の濃度を有する、請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
0.1〜30質量%の濃度を有するリン光発光体をさらに含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
デバイスを含む消費者製品であって、前記デバイスがさらに、
アノード;
カソード;及び、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された有機層、を含み、
前記有機層が下記式:
【化33】
式中、
aは1〜2であり;
bは0であり;
mは1又は2であり;
nは0であり;
Xは、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンからなる群から選択され;
XはRで置換されており、Rは、水素、アルキル、トリフェニレン、ピリジン、及びピリミジンからなる群から選択される。
で表されるカルバゾール含有化合物を含み、
前記第一の有機層が発光層であり、且つ前記カルバゾール含有化合物が前記第一の有機層中のホストであり、
前記発光層が下記式:
【化34】
(式中、n=1、2、又は3であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、及びR1iはそれぞれ独立に、H、ヒドロカルビル、ヘテロ原子置換ヒドロカルビル、シアノ、フルオロ、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cであり、R2a〜cはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル又はヘテロ原子置換ヒドロカルビルであり、R1a〜i及びR2a〜cの任意の2つが連結して飽和もしくは不飽和の、芳香族もしくは非芳香族の環を形成してもよく;
X−Yは補助配位子である。)
で表されるリン光発光体をさらに含み、かつ
フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面、映画館またはスタジアムのスクリーン、及び標識からなる群から選択される消費者製品。
【請求項13】
第一の電極を準備する工程;
ホストとリン光発光体とを共堆積させて発光層を形成させる工程;及び
第二の電極を堆積させる工程、を含む、有機発光デバイスの製造方法であって、
前記発光層が前記ホストとして下記式I:
【化35】
式中、
aは1〜2であり;
bは0であり;
mは1又は2であり;
nは0であり;
Xは、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンからなる群から選択され;
XはRで置換されており、Rは、水素、アルキル、トリフェニレン、ピリジン、及びピリミジンからなる群から選択される。
で表されるカルバゾール含有化合物を含み、かつ
前記リン光発光体が下記式:
【化36】
(式中、n=1、2、又は3であり;
1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、及びR1iはそれぞれ独立に、H、ヒドロカルビル、ヘテロ原子置換ヒドロカルビル、シアノ、フルオロ、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cであり、R2a〜cはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル又はヘテロ原子置換ヒドロカルビルであり、R1a〜i及びR2a〜cの任意の2つが連結して飽和もしくは不飽和の、芳香族もしくは非芳香族の環を形成してもよく;
X−Yは補助配位子である。)
で表される、有機発光デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記第一の電極がアノードであり、前記第二の電極がカソードである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第一の電極の後で且つ前記発光層の前に有機層を堆積させる、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記有機層が正孔輸送層である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
下記式:
【化37】
(式中、
aは1〜2であり;
bは0であり;
mはであり;
nは0であり;
Xは、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンからなる群から選択され;
XはRで置換されており、Rは、水素、アルキル、トリフェニレン、ピリジン、及びピリミジンからなる群から選択される。)
で表されるカルバゾール含有化合物を、有機発光デバイスの発光層中でリン光発光体のためのホストとして使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年12月28日に出願した米国仮出願番号No.61/017,480号に対する優先権を主張する、2008年9月12日に出願した米国特許出願第12/209,928号に対する一部継続出願であり、これに対する優先権及び米国特許法第120条に基づく利益を主張する。この出願はまた、2007年12月28日に出願した米国仮出願第61/017,391号に対する優先権も主張する。これらの全ての出願の内容はそれら全体を参照により本願に完全に援用する。
【0002】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサルディスプレイコーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は、カルバゾールを含む新規な有機物質に関する。特に、この物質はオリゴカルバゾールを含んでいる。この物質は有機発光デバイス(OLED)に有用でありうる。
【背景技術】
【0004】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対して、コスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本願に援用する。
【0006】
リン光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式Iを有する。
【化1】
【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができる、ポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特定に寄与していると考えられる場合は、配位子は「光活性」といわれる。
【0013】
本明細書で用いるように、「三重項エネルギー」の用語は、与えられた物質のリン光スペクトルにおいて認識可能な最も高いエネルギー特徴部分に対応するエネルギーをいう。この最も高いエネルギー特徴部分はそのリン光スペクトル中の最大強度を有するピークである必要はなく、例えば、そのようなピークの高エネルギー側の明確な肩(ショルダー)の極大であることができる。三重項エネルギーは、米国特許第7,279,704号明細書の第6欄に詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0014】
OLEDについてのより詳細、及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、これを参照によりその全体を本願に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【特許文献5】米国特許第4,769,292号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0230980号公報
【特許文献7】米国特許第5,703,436号明細書
【特許文献8】米国特許第6,097,147号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0174116号公報
【特許文献10】米国特許第5,247,190号明細書
【特許文献11】米国特許第6,091,195号明細書
【特許文献12】米国特許第5,834,893号明細書
【特許文献13】米国特許第6,013,982号明細書
【特許文献14】米国特許第6,087,196号明細書
【特許文献15】米国特許第6,337,102号明細書
【特許文献16】米国特許出願第10/233,470号明細書
【特許文献17】米国特許第6,294,398号明細書
【特許文献18】米国特許第6,468,819号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
[本発明のまとめ]
新しい群の、カルバゾールを含む化合物を提供する。特に、単分散の線状の3,9−連結オリゴカルバゾリルを有する化合物(本明細書では「オリゴカルバゾール」という)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書に記載したこのカルバゾール含有化合物は以下の式を有する。
【0019】
【化2】
【0020】
式中、aは1〜20であり、bは0〜20であり、mは0〜2であり、nは0〜2であり、m+nは少なくとも1である。Xは、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、フェナントレン、フルオレン、クリセン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される。XはRで置換されており、Rは、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、クリセン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される。好ましくは、aは1〜20であり、nは0である。
【0021】
具体的なカルバゾール含有物質の例には、本明細書に記載した化合物1G〜79Gが含まれる。
【0022】
加えて、有機発光デバイスを提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された第一の有機層を有する。この第一の有機層は、式Iを有するカルバゾール含有化合物をさらに含んでいる。好ましくは、この第一の有機層は、ホスト及びリン光発光体を有する発光層であり、上記カルバゾール含有化合物がそのホストである。このデバイスは、有機層中に10〜100質量%のカルバゾール含有化合物を含んでいてもよい。好ましくは、カルバゾール含有化合物は、発光層中に40〜99.9質量%で存在し、この発光層は0.1〜30質量%の濃度を有するリン光発光体をさらに含む。
【0023】
さらに、このデバイスは非発光性の第二の有機層をさらに含んでいてもよく、上記カルバゾール含有化合物はそのようなデバイスのその第二の層中の物質として好ましく用いることもできる。
【0024】
消費者製品も提供する。この製品は、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含むデバイスを含み、その有機層が、式Iを有するカルバゾール含有化合物をさらに含む。
【0025】
有機発光デバイスを製作する方法も提供する。この方法は、第一の電極を準備する工程、ホストとリン光発光体とを共堆積させて発光層を形成させる工程であって、この発光層が式Iを有するカルバゾール含有化合物を含む工程、そして第二の電極を堆積させる工程、を含む。第一の電極はアノードであってもよく、第二の電極はカソードであってもよい。有機層、好ましくは正孔輸送層を、アノードの後、且つ発光層の前に堆積させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は有機発光デバイスを示している。
図2図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示している。
図3図3はオリゴカルバゾール含有化合物を示している。
【0027】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードの間に配置され且つ電気的にそれらに接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、その有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子は、それぞれ、反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在すると、励起エネルギー状態を有する局在化した電子-正孔対である「励起子」が形成される。この励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在しうる。非発光機構、例えば熱的緩和も起こりうるが、一般には望ましくないと考えられる。
【0028】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0029】
より最近、三重項状態から光を発する(「リン光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)(“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。リン光は、米国特許第7,279, 704号明細書の第5〜6欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0030】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0031】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材及びアノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F4-TCNQでドープしたm-MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報により詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0032】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0033】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省かれうる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0034】
具体的に記載されていない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように、積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0035】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての堆積、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0036】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0037】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0038】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0039】
新しい群のカルバゾール含有化合物(これはOLEDに有利に用いることができる)を提供する(図3にも示す)。特に、3,9−連結オリゴカルバゾリル化合物(「オリゴカルバゾール含有化合物」)を提供する。カルバゾールは、高い三重項エネルギーを有する窒素含有ヘテロ芳香族であり、正孔輸送性及び電子輸送性を有する。ホスト材料としてカルバゾール含有化合物を用いることの一つの利点は、それらが同時に十分に大きな三重項エネルギーとキャリア輸送特性を有することである。3,9−連結オリゴカルバゾリル基(すなわち、窒素に対してパラ位で連結された複数のカルバゾール基)は、OLEDに有用でありうる単分散で明確に規定されたπ共役オリゴマーである。カルバゾールモノマーからオリゴカルバゾールとなってもその三重項エネルギーには最小限の低下しかない。加えて、カルバゾール基のオリゴマー化は、そのHOMO準位を調整して正孔安定性を向上させることを可能にする。
【0040】
本明細書に記載したオリゴカルバゾール含有化合物は、比較的低い電気化学的酸化電位を有する。そうして、これらの化合物は容易に酸化され且つ酸化から逆戻りし、これが全体としてホスト安定性を向上させる。特に、本明細書に開示した物質は、フェロセン/フェロセニウム(vs. Fc+/Fc)に対して、約0.9V未満、約0.85V未満、約0.8V未満、及び約0.75V未満の酸化電位を有しうる。カルバゾールの周りのこの化合物の非対称配置が、より低い酸化電位と、その酸化電位の可逆的性質をもたらしていると考えられる。本明細書で用いるように、「非対称」の用語は、その化合物のカルバゾール部分に関して対称ではないような、化合物中の化学基の配置をいう。
【0041】
改善された電荷バランス及び電荷安定性に加えて、本明細書で提供する物質は、より良いフィルム形成も、もたらしうる。特に、非対称構造(例えば、3,9−連結オリゴカルバゾール構造)を有する物質は、向上したフィルム形成を与えうる。この向上したフィルム形成は、この化合物の非対称構造による低下した結晶性の結果であると考えられる。
【0042】
本明細書に記載したカルバゾール含有化合物は以下の式を有する:
【化3】
【0043】
上記式中、aは1〜20であり、bは0〜20であり、mは0〜2であり、nは0〜2であり、m+nは少なくとも1である。Xは、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、フェナントレン、フルオレン、クリセン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される。XはRで置換されており、Rは、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、クリセン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される。
【0044】
一つの側面では、aが1〜20であり且つnが0であるカルバゾール含有化合物が提供される。一つの側面では、aが1又は2であり且つnが0である特定のカルバゾール含有化合物が提供される。
【0045】
別の側面では、aが1であり、bが1であり、且つnが1である特定のカルバゾール含有化合物が提供される。
【0046】
この化合物のX基は、比較的高い三重項エネルギーを有する芳香族基から選択される電子輸送物質である。好ましくは、Xは低いLUMO準位を有し(例えば、ヘテロ芳香族)且つ芳香族環による非局在化をもたらす(例えば、最大で4つまでの共役した芳香族環)。Xとして比較的高い三重項エネルギーを有する基を用いることによって、そのカルバゾール部分によるこの化合物の全体として高い三重項エネルギーが維持されうる。したがって、オリゴカルバゾール部分とX部分の両方を同じ分子内に有する本明細書記載の物質は、有利な高い三重項エネルギーを保ち、さらには電荷バランスとデバイス安定性をも向上させうる。
【0047】
一つの側面では、Xが、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フェナントレン、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される、特定のカルバゾール含有化合物が提供される。別の側面では、Xが、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される、特定のカルバゾール含有化合物が提供される。
【0048】
この化合物のXは、置換基Rでさらに置換されている。置換基Rは、オリゴカルバゾールとXの両方を同じ化合物内に有する利点を保つために充分に高い三重項エネルギーを有することが好ましい。Rとして用いることができるそのような基の例には、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、クリセン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される。
【0049】
一つの側面では、Rが、水素、アルキル、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フェナントレン、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される、特定の化合物が提供される。それらの高い三重項エネルギーによって、これらのR基は、緑色又は赤色発光体を有するデバイスに適している。特に、これらのR基は、緑色発光体を有するデバイスに特に適している。別の側面では、Rが、水素、アルキル、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランから選択される、特定の化合物が提供される。それらのなお高い三重項エネルギーによって、これらのR基は、赤色、緑色、又は青色発光体を有するデバイスに用いるために適している。特に、これらのR基は青色発光体を有するデバイスに特に適している。
【0050】
カルバゾール含有化合物の具体例には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0051】
【化4】
【0052】
【化5】
【0053】
【化6】
【0054】
【化7】
【0055】
【化8】
【0056】
【化9】
【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
加えて、有機発光デバイスを提供する。このデバイスは、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードとの間に配置された第一の有機層を含み、その第一の有機層は式Iを有するカルバゾール含有化合物を含む。そのようなデバイスに用いるためのカルバゾール含有化合物の具体例には、化合物1G〜化合物79Gからなる群から選択される化合物が含まれる。一つの側面では、その第一の有機層は発光層であり、カルバゾール含有化合物はその第一の有機層中のホストである。
【0065】
デバイスは、有機層中に、カルバゾール含有化合物10〜100質量%を含みうる。上で論じたように、このカルバゾール含有化合物は、デバイスのいくつかの有機層に用いることができ、それには発光層、阻止層、及び輸送層が含まれるがこれらに限定されない。このカルバゾール含有化合物は、発光層中に40〜99.9質量%の濃度で存在することが好ましい。カルバゾール含有化合物は、デバイスの発光層中のホスト又は共ホストとして用いてもよい。カルバゾール含有化合物に加えて、発光層は、0.1〜30質量%の濃度をもつリン光発光体をさらに含んでもよい。
【0066】
一つの側面では、発光層はリン光発光体をさらに含む。別の側面では、そのリン光発光体は下記式を有するイリジウム錯体である。
【0067】
【化17】
【0068】
上記式中、n=1、2、又は3であり;R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、及びR1iはそれぞれ独立に、H、ヒドロカルビル、ヘテロ原子置換ヒドロカルビル、シアノ、フルオロ、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cであり、R2a〜cはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル又はヘテロ原子置換ヒドロカルビルであり、R1a〜i及びR2a〜cの任意の2つが連結して飽和もしくは不飽和の芳香族もしくは非芳香族の環を形成してもよく;X−Yは補助配位子である。これらのリン光発光体の多くは、狭いリン光発光線形状、高い三重項エネルギー、又はその両方を有する。これらのリン光発光体を含むデバイスは、改善されたスペクトル線形状及び改善された寿命を有しうる。
【0069】
なお別の側面では、リン光発光体は、下記式を有するモノアニオン性の二座配位子を含むリン光性金属錯体を含む化合物である。
【0070】
【化18】
【0071】
式中、E1a〜qは、C及びNからなる群から選択され、全体で18π電子系を含み、但し、E1aとE1pとは異なることを条件とし;R1a〜iはそれぞれ独立に、H、ヒドロカルビル、ヘテロ原子置換ヒドロカルビル、シアノ、フルオロ、OR2a、SR2a、NR2a2b、BR2a2b、又はSiR2a2b2cであり、R2a〜cはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル又はヘテロ原子置換ヒドロカルビルであり、R1a〜i及びR2a〜cの任意の2つが連結して飽和もしくは不飽和の芳香族もしくは非芳香族の環を形成してもよく;但し、R1a〜iはNに結合している場合はH以外であり;金属は、40より大きな原子番号をもつ非放射性金属からなる群から選択され;この二座配位子は別の配位子と連結して三座、四座、五座、又は六座配位子を構成してもよい。これらのリン光発光体の多くは良好な特性をも有し、デバイスに用いた場合に有利な特性をデバイスにもたらす。
【0072】
さらに、このデバイスは、非発光層である第二の層をさらに含んでもよい。デバイスに含まれ、光を発しない全ての層は、本明細書において、「非発光層」ということができる。一つの側面では、上記第一の層は第二の有機層に隣接している。
【0073】
上で議論したとおり、本明細書に記載したカルバゾール含有化合物は、発光層のホスト物質として有利に用いることができる。しかし、このカルバゾール含有化合物は、正孔及び電子の両方に対する、阻止特性、妨害特性、並びに輸送性を、その相対的エネルギー及び相対的可動性に応じて有することもできる。したがって、これらの化合物は、デバイスの様々な位置において様々な有機層中の物質として有用でありうる。
【0074】
本明細書に開示したカルバゾール含有化合物は、第一の発光エネルギーがそれぞれ、約570nm〜670nm、約495nm〜570nm、及び約425nm〜495nmである、赤色、緑色、及び青色デバイスに用いることができる。好ましくは、第一の発光エネルギーは、赤色、緑色、及び青色デバイスに対して、それぞれ、約610nm〜630nm、510nm〜530nm、及び440nm〜480nmである。特定のドーパントに対して、ホストの三重項エネルギーは、消光を引き起こさないために、ドーパントのものよりも30nm高いことが通常は必要とされる。
【0075】
一つの側面では、495nm〜570nmの三重項エネルギーを有するリン光発光体を有するデバイスに用いるために良く適合した化合物を提供する。これらの化合物については、Xは、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フェナントレン、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択され、且つ、Rは、水素、アルキル、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フェナントレン、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンから選択される。そのようなデバイスの発光体は、510nm〜530nmの三重項エネルギーを有することが好ましい。上記の基から選択されるX及びRを有するカルバゾール含有化合物は、赤色デバイスにも容易に用いることができる。
【0076】
別の側面では、425nm〜495nmの三重項エネルギーを有するリン光発光体を有するデバイスに用いるために良く適合した化合物を提供する。これらの化合物については、Xは、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、及びチエノジピリジンからなる群から選択され、且つ、Rは、水素、アルキル、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランからなる群から選択される。そのようなデバイスの発光体は、440nm〜480nmの三重項エネルギーを有することが好ましい。上述した基から選択されるX及びRを有するカルバゾール含有化合物は、緑色及び赤色デバイスにも容易に用いることができる。
【0077】
デバイスを含む消費者製品も提供し、そのデバイスはさらに、アノード、カソード、及び有機層を含む。その有機層は、式Iを有するカルバゾール含有化合物をさらに含む。
【0078】
有機発光デバイスの製造方法も提供し、その方法は、第一の電極を準備する工程、ホスト及びリン光発光体を共に堆積させて発光層を形成させ、発光層が式Iを有するカルバゾール含有化合物を含む工程、並びに、第二の電極を堆積させる工程、を含む。一つの側面では、その第一の電極はアノードであり、第二の電極はカソードである。有機層を、第一の電極を堆積させた後、且つ発光層を堆積させる前に堆積させてもよく、その有機層は正孔輸送層であってもよい。
【0079】
有機発光デバイスの特定の層に有用であるとして本明細書に記載した物質は、そのデバイスに存在する広範囲のその他の物質と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい広範囲の、ホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層とともに用いることができる。以下に記載又は言及した物質は、本明細書に開示した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非限定的な例であり、当業者は文献を容易に閲覧して、組み合わせて有用でありうるその他の物質を特定することができる。
【0080】
本明細書に開示した物質に加えて及び/又はそれと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質を、OLEDに用いることができる。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLED中で用いることができる物質の非限定的な例を、以下の表1に示している。表1は、物質の非限定的な群、各群に対する非限定的な化合物の例、及びそれらの物質を開示している参考文献を示している。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】
【表11】
【0092】
【表12】
【実施例】
【0093】
[化合物例]
いくつかのカルバゾール含有化合物を以下のように合成した。
【0094】
化合物8
【化19】
【0095】
〔ステップ1〕
固体のKI(22.1 g, 133 mmol)を550mLの酢酸中、カルバゾール(33.4 g, 200 mmol)に添加した。この混合物は、120℃に30分間加熱した後、透明になった。それを100℃に冷やして戻し、KIO(21.4 g, 100 mmol)を少しずつ添加した。この混合物を室温でさらに2時間この温度で撹拌した。混合物を冷やした後、500mLの水を添加して全ての生成物を沈殿させた。固体を濾過し、熱水で洗った。粗生成物をCHClから一度再結晶し、次にEtOAc/ヘキサンから再結晶して、24gの純粋な3-ヨードカルバゾールを得た。
【0096】
〔ステップ2〕
トシルクロライド(8.4 g, 44 mmol)を、200mLのアセトン中の3-ヨードカルバゾール(11.7 g, 40 mmol)と粉砕したKOH(2.7 g, 48 mmol)の溶液に添加した。この混合物を3時間還流させ、次に冷やした。それを、撹拌下、1Lの冷水中に注いだ。30分の撹拌後、液体をデカンテーションした。こうして粗生成物を、ビーカー壁上に粘着性の固体として得た。約11gの純粋な3-ヨード-9-トシルカルバゾールをCHCl/EtOHからの再結晶後に得た。
【0097】
〔ステップ3〕
3-ヨード-9-トシルカルバゾール(10.6 g, 24 mmol)、カルバゾール(4.8 g, 29 mmol)、CuI(0.4 g, 2.0 mmol)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(0.3 g, 2.4 mmol)、三塩基性リン酸カリウム(10.6 g, 50 mmol)、及び150mLのトルエンを、500mLの丸底フラスコに入れた。反応物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。3-(9-カルバゾリル)-9-トシルカルバゾールの収量は10gだった。
【0098】
〔ステップ4〕
3-(9-カルバゾリル)-9-トシルカルバゾール(10.0 g, 21 mmol)、NaOH(8.0g, 200 mmol)、80mLのTHF、40mLのMeOH、及び40mLの水を、500mLの丸底フラスコに入れた。反応物を12時間加熱還流させた。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。3-(9-カルバゾリル)-カルバゾールの収量は8gだった。
【0099】
〔ステップ5〕
3-(9-カルバゾリル)-カルバゾール(3.0 g, 9 mmol)、2-ブロモピリジン(1.9 g, 12 mmol)、CuI(0.2 g, 1.0 mmol)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(0.2 g, 1.5 mmol)、三塩基性リン酸カリウム(5.3 g, 25 mmol)、及び150mLのトルエンを、500mL丸底フラスコに入れた。反応物を加熱還流させ、窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。収量は2.2gだった。この生成物を真空昇華によってさらに精製した。H NMRの結果によって、所望の化合物であることを確かめた。EOX=0.86V(擬可逆)、Ered=−2.91V(可逆)(vs. Fc+/Fc, 0.10M Bun4NPF6溶液(DMF)、Pt作用電極及び補助電極、非水Ag/Ag+参照電極、並びに50〜5000 mVs-1で変動させたスキャン速度)。
【0100】
化合物15
【化20】
【0101】
4-ヨードジベンゾチオフェン(3.0 g, 10 mmol)、3-(9-カルバゾリル)カルバゾール(2.3 g, 7 mmol)、Pd(dba)(0.5 g, 0.5 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos, 0.8 g, 2.0 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(2.9 g、30 mmol)、及び200mLのキシレンを、500mLの丸底フラスコに入れた。反応物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。収量は3.0gだった。この生成物を真空昇華によってさらに精製した。H NMRの結果によって、所望の化合物であることを確かめた。EOX=0.77V(擬可逆)、Ered=−2.79V(可逆)(vs. Fc+/Fc, 0.10M Bun4NPF6溶液(DMF)、Pt作用電極及び補助電極、非水Ag/Ag+参照電極、並びに50〜5000 mVs-1で変動させたスキャン速度)。
【0102】
化合物17
【0103】
【化21】
【0104】
3-(9-カルバゾリル)カルバゾール(2.3 g, 7 mmol)、2-ブロモベンゾチオフェン(2.8g, 11 mmol)、CuI(0.2 g, 1.0 mmol)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(0.2 g, 1.5 mmol)、三塩基性リン酸カリウム(5.3 g, 25 mmol)、及び150mLのトルエンを、500mLの丸底フラスコに入れた。反応物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。収量は3.0gだった。生成物を真空昇華によってさらに精製した。H NMRの結果によって、所望の化合物であることを確かめた。EOX=0.74V(擬可逆)、Ered=−2.78V(可逆)(vs. Fc+/Fc, 0.10M Bun4NPF6溶液(DMF)、Pt作用電極及び補助電極、非水Ag/Ag+参照電極、並びに50〜5000 mVs-1で変動させたスキャン速度)。
【0105】
化合物17’(化合物17G(a=2))
【0106】
【化22】
【0107】
〔ステップ1〕
3-(9-カルバゾリル)カルバゾール(9.8 g, 30 mmol)、3-ヨード-9-トシルカルバゾール(16.1 g, 36 mmol)、CuI(1.7 g, 9 mmol)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(2.1 g, 18 mmol)、三塩基性リン酸カリウム(12.7 g, 60 mmol)、及び250mLのトルエンを、500mLの丸底フラスコに入れた。反応物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。3-(9-(3-(9-カルバゾリル)カルバゾリル)-9-トシルカルバゾールの収量は20gだった。それを上述したようにして脱トシル化して、12gの3-(9-(3-(9-カルバゾリル)カルバゾリル)カルバゾールを得た。
【0108】
〔ステップ2〕
3-(9-(3-(9-カルバゾリル)カルバゾリル)カルバゾール(3.0 g, 6 mmol)、2-ブロモベンゾチオフェン(2.1 g, 7.8 mmol)、CuI(0.4 g, 1.8 mmol)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(0.4 g, 3.6 mmol)、三塩基性リン酸カリウム(3.2 g, 15 mmol)、及び150mLのトルエンを、500mLの丸底フラスコに入れた。反応物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。冷却後、混合物をシリカゲルカラムで精製した。収量は2.9gだった。生成物を真空昇華によってさらに精製した。H NMRの結果によって、所望の化合物であることを確かめた。EOX=0.81V(擬可逆)、Ered=−2.78V(可逆)(vs. Fc+/Fc, 0.10M Bun4NPF6溶液(DMF)、Pt作用電極及び補助電極、非水Ag/Ag+参照電極、並びに50〜5000 mVs-1で変動させたスキャン速度)。
【0109】
化合物16
【0110】
【化23】
【0111】
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた100mLの丸底フラスコに、8-ヨード-3,4-ジヒドロジベンゾ[b,d]フラン(332 mg, 1 mmol)、3-(9-カルバゾリル)カルバゾール(294 mg, 1 mmol)、Pd(OAc)(23 mg, 10 mol%)、P(t-Bu)(1 mLの1 Mトルエン溶液, 1 mmol)、カリウムtert-ブトキシド(150 mg, 1.5 eq)、及び100mLのキシレンを仕込んだ。フラスコを窒素で満たし、反応混合物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。次に、反応物を室温に冷やし、シリカ栓を通して濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチル混合物9:1)にかけて、410mgの9-(ジベンゾ[b,d]フラン-2-イル)-9H-3,9’-ビカルバゾールを白色固体として得た。その構造はNMR及びMSスペクトルによって確認した。
【0112】
化合物23
【0113】
【化24】
【0114】
〔ステップ1〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた300mLの丸底フラスコに、5-クロロ-メトキシフェニルボロン酸(5.00 g, 33 mmol)、2-アミノ-3-ブロモピリジン(5.70 g, 33 mmol)、Pd(dba)(604 mg, 2 mol%)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(542 mg, 4 mol%)、三塩基性リン酸カリウム・一水和物(22.8 mg, 3 eq)、及び100mLのトルエンを仕込んだ。フラスコを窒素で満たし、反応混合物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。次に、反応物を室温に冷やし、シリカ栓を通して濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチル混合物1:1)にかけて、5.0gの3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)ピリジン-2-アミンを黄色固体として得た。その構造はNMR及びMSスペクトルによって確認した。
【0115】
〔ステップ2〕
3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)ピリジン-2-アミン(5.00 g, 21 mmol)を、THF(409 mL)、HBF(50%水溶液、36 mL)、及び15mLの水の混合物中に溶かした。この溶液を−5℃に冷やし、亜硝酸ナトリウム(1.70 g、20 mLの水中)を滴下して添加した。反応を−5℃で1時間保ち、次に室温まで温め、室温で夜通し撹拌した。この反応混合物のpHを10に調節し、酢酸エチル(4x25 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチル9:1混合物)にかけた。クロマトグラフィーの生成物は3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-2-フルオロピリジンを含んでおり、純粋な6-クロロベンゾフロ[2,3-b]ピリジン(1.52 g、無色の長い針状晶)を、ヘキサン/酢酸エチルからの再結晶によって得た。
【0116】
〔ステップ3〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた300mLの丸底フラスコに、6-クロロベンゾフロ[2,3-b]ピリジン(2.04 g, 10 mmol)、3-(9-カルバゾリル)カルバゾール(3.32 g, 10 mmol)、Pd(OAc)(450 mg, 20 mol%)、P(t-Bu)(10 mL, トルエン中の1M溶液, 10 mmol)、カリウムtert-ブトキシド(1.92 g, 20 mmol)、及び150 mLのキシレンを仕込んだ。フラスコを窒素で満たし、反応混合物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で36時間撹拌した。次に、反応物を室温に冷やし、水で洗い、シリカ栓を通して濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチル混合物4:1)にかけて、3.01gの6-(9H-3,9’-ビカルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジンを白色固体として得て、その構造はNMR及びMSスペクトルによって確認した。
【0117】
化合物20
【0118】
【化25】
【0119】
〔ステップ1〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた500mLの丸底フラスコに、5-クロロ-2-メトキシフェニルボロン酸(9.78 g, 52 mmol)、3-アミノ-2-クロロピリジン(7.00 g, 55 mmol)、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos, 0.43 g, 2 mol%)、酢酸パラジウム(II)(112 mg, 1 mol%)、炭酸カリウム(21.7 g, 157 mmol)、180mLのアセトニトリル、及び20mLの水を仕込んだ。フラスコを窒素で満たし、窒素雰囲気下で24時間加熱還流させた。次に、反応物を室温に冷やし、500mLの水で希釈し、酢酸エチル(5x40 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチルの濃度勾配混合物)にかけて、2-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)ピリジン-3-アミンを白色結晶として得た(9.5 g、その構造はNMRによって確認した)。
【0120】
〔ステップ2〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた500mLの丸底フラスコに、2-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)ピリジン-3-アミン(9.00 g, 39 mmol)、70mLのTHF、70mLのHBF(水中50%)、及び40mLの水を仕込んだ。反応混合物を−10℃に冷やし、亜硝酸ナトリウム(5.6g)の溶液(20 mLの水中)を滴下により添加した。反応混合物を徐々に室温まで温め、夜通し撹拌した。反応混合物を500mLの水で希釈し、酢酸エチル(4x50 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させ、残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチル 9/1混合物)にかけて、8-クロロベンゾフロ[3,2-b]ピリジン(6.00 g, ヘキサン/酢酸エチルからの無色の針状晶)を得た。
【0121】
〔ステップ3〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた100mLの丸底フラスコに、8-クロロベンゾフロ[3,2-b]ピリジン(2.04 g, 10 mmol)、3-(9-カルバゾリル)カルバゾール(3.32 g, 10 mmol)、Pd(OAc)(450 mg, 20 mol%)、P(t-Bu)(10 mL, トルエン中の1M溶液, 10 mmol)、カリウムtert-ブトキシド(1.92 g, 1.5当量)、及び150 mLのキシレンを仕込んだ。フラスコを窒素で満たし、反応混合物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。次に、反応物を室温に冷やし、シリカ栓を通して濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチル混合物9:1)にかけて、2.5gの8-(9H-3,9’-ビカルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジンを白色固体として得た。その構造はNMR及びMSスペクトルによって確認した。
【0122】
化合物50
【0123】
【化26】
【0124】
〔ステップ1〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた500mLの丸底フラスコに、2-(メチルチオ)フェニルボロン酸(9.48 g, 56 mmol)、3-アミノ-2-ブロモピリジン(7.15 g, 57 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-Phos, 0.92 g, 4 mol%)、Pd(dba)(1.02 g, 2 mol%)、リン酸カリウム水和物(39 g, 3当量)、及び100mLのトルエンを仕込んだ。フラスコを窒素で満たし、窒素雰囲気下で24時間加熱還流させた。次に、反応物を室温に冷やし、500mLの水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(5x40 mL)。有機画分を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル傾斜混合物を用いてカラムクロマトグラフィーにかけて、2-(2-(メチルチオ)フェニル)ピリジン-3-アミンを黄色結晶として得た(9.5 g)。その構造はNMRによって確認した。
【0125】
〔ステップ2〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた500mLの丸底フラスコに、2-(2-(メチルチオ)フェニル)ピリジン-3-アミン(8.42 g, 39 mmol)、70mLのTHF、70mLのHBF(水中50%)、及び40mLの水を仕込んだ。反応混合物を−10℃に冷やし、亜硝酸ナトリウム(5.6 g)の溶液(20 mLの水中)を滴下により添加した。反応混合物を室温まで徐々に温め、夜通し撹拌した。この反応混合物を500mLの水で希釈し、酢酸エチル(4x50 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させ、残留物をシリカゲル上で、ヘキサン/酢酸エチルの9/1混合物を用いてカラムクロマトグラフィーにかけて、アザ-ジベンゾチオフェン(3.5 g、ヘキサン/酢酸エチルから無色針状晶)を得た。
【0126】
〔ステップ3〕
アザ-ジベンゾチオフェン(1.78 g, 6.7 mmol)を75mLの無水THFに溶かし、その溶液をCO/アセトン浴で冷やした。n-ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6 M溶液、7 mL)を滴下により添加し、その反応混合物の色が橙色に変化し、50mLの無水THF中の2.6gのヨウ素の溶液を直ちに添加した。反応混合物を室温まで温め、NaHSOの水溶液で処理し、酢酸エチル(4x40 mL)で抽出した。有機画分を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチルの9/1混合物)にかけた。精製した物質を次に同じ溶媒から再結晶して、目的とするヨード誘導体1.55gを得て、構造はNMR及びGC/MSによって確かめた。
【0127】
〔ステップ4〕
磁気攪拌機及び還流コンデンサーを備えた100mLの丸底フラスコに、ヨード誘導体(1.55 g, 5 mmol)、3-(9-カルバゾリル)カルバゾール(1.66 g, 5 mmol)、Pd(OAc)(225 mg, 20 mol%)、P(t-Bu)(トルエン中の1M溶液5 mL, 5 mmol)、カリウムtert-ブトキシド(0.96 g, 1.5当量)、及び75 mLのキシレンを仕込んだ。フラスコを窒素で満たし、反応混合物を加熱還流させ、且つ窒素雰囲気下で24時間撹拌した。次に、反応物を室温に冷やし、シリカ栓を通して濾過し、蒸発させた。残留物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン/酢酸エチル混合物9:1)にかけて、2.0gのカップリング生成物を白色固体として得た。その構造はNMR及びMSスペクトルによって確認した。
【0128】
〔ステップ5〕
上記の白色生成物を100mLのTHFに溶かし、ドライアイス/アセトン浴で冷やし、ヘキサン中のn-BuLi溶液(1当量)を一度に添加した。1時間後、5mLの水を一度に添加し、反応混合物を室温まで温め、水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。蒸発と、それに続くシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液としてヘキサン/酢酸エチル 9/1混合物)により、1.5gの目的化合物を白色固体として得た。構造はNMR及びMSデータによって確かめた。
【0129】
[デバイス例]
【0130】
全ての例示デバイスは、高真空(<10−7Torr)熱蒸着によって作製した。アノード電極は800Åのインジウムスズ酸化物(ITO)である。カソードは10ÅのLiFと続く1000ÅのAlからなる。全てのデバイスは作製後直ちに窒素グローブボックス(<1ppmのHO及びO)中でエポキシ樹脂で封止したガラス蓋で密閉し、吸湿剤をそのパッケージ内部に組み込んだ。
【0131】
P1が発光ドーパントであり、本発明の化合物である化合物8、化合物15、化合物17、又は化合物17’がホストである具体的なデバイスを提供する。デバイス例1〜4の有機積層は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)としての100ÅのP2、正孔輸送層(HIL)としての300Åの4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)、発光層(EML)としての300Åの9%のP1(Irリン光化合物)でドーピングした本発明の化合物、ETL2としての50Åの本発明の化合物、及びETL1としての400ÅのAlq(トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる。
【0132】
比較例1は、ホストとしてmCBPを用いたことを除いて上記デバイス例と同様に作製した。
【0133】
本明細書で用いるように、以下の化合物は以下の構造を有する。
【0134】
【化27】
【0135】
デバイス構造及びデータは表2及び表3にまとめている。表2はデバイス構造、特に発光層のためのホスト物質、及びETL2のための物質を示している。表3は、これらのデバイスについての対応する測定結果を示している。酸化電位(EOX)は、不可逆(i)又は擬不可逆(q)と示してある。
【0136】
【表13】
【0137】
【表14】
【0138】
デバイス例1〜4から、本発明の化合物をホストとして用いるデバイスが、高い三重項エネルギーを保ちながら、向上したデバイス安定性をもたらすことがわかる。特に、青色又は緑色OLEDにおけるホストとしての化合物8、15、17、又は17’は、低下した酸化電位(EOXvs Fc/Fc)及び向上した電気化学的可逆性をもつデバイスを与え、このことは上記カルバゾール含有化合物、特に非対称単分散線状3,9-連結オリゴカルバゾール化合物が、そのデバイスにおける良い電荷バランス及び電荷安定性をもたらしうることを示している。
【0139】
このデータは、カルバゾール含有化合物、特に3,9-連結オリゴカルバゾールが、リン光OLEDのための優れたホスト及び機能増強(エンハンスメント)層物質であり、通常用いられているmCBPホストと比較して向上した電荷バランスと電荷安定性をもたらすことを示唆している。加えて、このオリゴカルバゾール含有化合物は、その分子の非対称性によって、デバイス作製時に、より良好なフィルム形成ももたらしうる。
【0140】
本明細書に記載した様々な態様は例としてのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、本明細書に記載した多くの物質及び構造は、本発明の精神から離れることなくその他の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲による本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、これは当業者には明らかであろう。どうして本発明が機能するかについての様々な理論は、限定することを意図していないことが理解される。
図1
図2
図3