特許第5944508号(P5944508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944508
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】オプトエレクトロニクス部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20160621BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20160621BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20160621BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20160621BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01L33/50
   C09K11/80CPP
   C09K11/64CQH
   C09K11/59CQD
   C09K11/08 J
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-529033(P2014-529033)
(86)(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公表番号】特表2014-529912(P2014-529912A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2012069003
(87)【国際公開番号】WO2013053601
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年3月6日
(31)【優先権主張番号】102011115879.4
(32)【優先日】2011年10月12日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルトナー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】イエルマン フランク
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー ティム
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/020756(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/020751(WO,A1)
【文献】 特表2009−545660(JP,A)
【文献】 特表2010−525092(JP,A)
【文献】 特開2011−176300(JP,A)
【文献】 特開2003−273409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプトエレクトロニクス部品であって、
− 一次電磁放射を放出する活性領域を有し、前記一次電磁放射が、430nm〜470nmの範囲から選択される波長である、積層体(1)と、
− 前記一次電磁放射のビーム経路に配置されており、前記一次電磁放射を少なくとも部分的に二次電磁放射に変換する変換材料と、
を備えており、
− 前記変換材料が、一般組成式A12を有する第1の蛍光体(6−1)と、第2の蛍光体(6−2)とを備えており、ここで、AはLuおよびCeの組合せであり、Luは前記第1の蛍光体(6−1)中に、90mol%以上の範囲から選択される割合で存在し、BはAlおよびGaの組合せであり、Gaの割合は10mol%〜40mol%の範囲から選択することができ、
記第2の蛍光体(6−2)が、MAlSiNまたはSiであ、Mが、Ca、Sr、Ba、およびEuの組合せであり、Baが、前記第2の蛍光体(6−2)において、50mol%以上である割合で存在し、Caが、前記第2の蛍光体(6−2)において、2.5mol%〜25mol%の範囲から選択される割合で存在し、Euが、前記第2の蛍光体(6−2)において、0.5mol%〜10mol%の範囲から選択される割合で存在し、が、Sr、Ca、Mg、Li、Eu、およびこれらの組合せを含む群から選択され、Mが、少なくともCaおよびSrを含んでおり、Caの含有量は60mol%以下である
オプトエレクトロニクス部品。
【請求項2】
前記第2の蛍光体(6−2)が(Sr0.36Ba0.5Ca0.1Eu0.04Siである、
請求項1に記載のオプトエレクトロニクス部品。
【請求項3】
前記一次電磁放射が、440nm〜455nmの範囲から選択される波長を有する、
請求項に記載のオプトエレクトロニクス部品。
【請求項4】
前記二次電磁放射が、前記第1の蛍光体(6−1)によって放出される第1の二次電磁放射と、前記第2の蛍光体(6−2)によって放出される第2の二次電磁放射とから構成される、
請求項1から請求項のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス部品。
【請求項5】
前記第1の二次電磁放射が、490nm〜575nmの範囲から選択される波長を有する、
請求項に記載のオプトエレクトロニクス部品。
【請求項6】
前記第2の二次電磁放射が、600nm〜750nmの範囲から選択される波長を有する、
請求項または請求項に記載のオプトエレクトロニクス部品。
【請求項7】
AがCeを備えており、前記第1の蛍光体(6−1)の中に、0.5mol%〜5mol%の範囲から選択される割合で存在している、
請求項1から請求項のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス部品。
【請求項8】
前記第1の蛍光体(6−1)が((Lu0.975Ce0.025(Al0.75Ga0.2512)である、
請求項1から請求項のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス部品。
【請求項9】
一次電磁放射と二次電磁放射とから構成される全体的発光を有する、
請求項1から請求項のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプトエレクトロニクス部品および蛍光体に関する。
【0002】
<関連出願>
本特許出願は、独国特許出願第10 2011 115 879.4号の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
例えば発光ダイオード(LED)などの放射放出部品は、放射源によって放出される放射を、異なる(例えばより長い)波長を有する放射に変換する目的で、変換体材料をしばしば含んでいる。この場合、変換体材料の効率は、一般的には、温度や電流の強さ、動作電流に依存する。部品の動作時の温度が高いと、明るさの大きな損失や部品の経年劣化現象にもつながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、安定性が改善されたオプトエレクトロニクス部品および蛍光体を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立特許請求項の特徴を備えた部品および蛍光体によって達成される。部品および蛍光体の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項に記載されており、以下の説明および図面から明らかである。
【0006】
一実施形態によるオプトエレクトロニクス部品は、一次電磁放射を放出する活性領域を有する積層体と、一次電磁放射のビーム経路に配置されており、一次電磁放射を少なくとも部分的に二次電磁放射に変換する変換材料と、を備えている。
【0007】
変換材料は、一般組成式A12を有する第1の蛍光体を備えており、Aは、Y、Lu、Gd、Ce、およびこれらの組合せを含む群から選択され、Bは、AlおよびGaの組合せを備えている。さらに、変換材料は、第2の蛍光体を備えており、これは以下の第2の蛍光体の群およびそれらの組合せから選択される。
− 陽イオンMを備えたM−Al−Si−N系の蛍光体であって、Mが、Ca、またはCaと、Ba、Sr、Mg、Zn、Cdからなる群からの少なくとも1種類のさらなる元素との組合せを備えており、この第2の蛍光体が、部分的にMに置き換わっているEuによって活性化され、この第2の蛍光体が、系M−AlN−Siに割り当てることのできる相を形成し、構成要素M:Alの原子比率が≧0.375であり、原子比率Si/Alが≧1.4である、蛍光体
− 陽イオンMを備えたM−Al−Si−N系の蛍光体であって、Mが、CaまたはBaまたはSrを備えており、Mを、Mg、Zn、Cdからなる群からの少なくとも1種類のさらなる元素とさらに組み合わせることができ、この第2の蛍光体が、部分的にMに置き換わっているEuによって活性化され、第2の蛍光体がLiFをさらに含んでおり、Mに対するLiFの割合が少なくとも1mol%である、蛍光体
− 蛍光体MAlSiN・Si
− 蛍光体MAlSiN
− 蛍光体MSiであって、Mが、Ca、Sr、Ba、およびEuの組合せであり、Mが、Sr、Ca、Mg、Li、Eu、およびこれらの組合せを含む群から選択され、Mが、Sr、Ca、Mg、Li、Eu、およびこれらの組合せを含む群から選択される、蛍光体。
【0008】
この場合、第1の蛍光体もしくは第2の蛍光体またはその両方は、上の化学式に従った数学的に正確な組成を必ずしも有する必要はない。むしろ、これらの蛍光体は、例えば、1種類または複数種類の追加のドーパントおよび追加の構成成分を含んでいることができる。しかしながら、説明を簡潔にする目的で、上の化学式は、本質的な構成成分のみを含んでいる。
【0009】
特に、一実施形態による第2の蛍光体は、MAlSiN・SiO、MAlSiN、MSiのうちの1種類または複数種類である。
【0010】
ここで指摘しておくべき点として、用語「部品」は、例えば発光ダイオード(LED)やレーザダイオードなどの完成した部品のみならず、基板や半導体層も意味するものとし、したがって、例えば銅層および半導体層の複合体もすでに部品であり得、上位の第2の部品(例えば電気接続部がさらに存在する)の一部を形成することができる。本発明によるオプトエレクトロニクス部品は、例えば、薄膜半導体チップ、特に、薄膜発光ダイオードチップとすることができる。
【0011】
この場合、「積層体」とは、複数の層(例えばp型にドープされた半導体層とn型にドープされた半導体層の層列)を備えた積層体であって、層が互いに上下に配置されている積層体を意味するものと理解されたい。
【0012】
この場合、要素Bに関する「AlおよびGaの組合せ」とは、第1の蛍光体の要素BがAlおよびGaを含んでおり、Bがさらなる元素を含んでいない場合にはAlおよびGaの割合の合計が100%であり、AlおよびGa以外のさらなる元素がBに使用されている場合には、AlおよびGaの割合の合計が100%未満であることを意味する。
【0013】
第1の蛍光体の要素Aに、Y、Lu、Gd、Ceを含んだ群から選択される1種類または少なくとも2種類の元素を使用することが同様に可能である。ここでの元素の割合の合計は100%である。
【0014】
本明細書において、放射性蛍光体に関する色は、電磁放射のそれぞれのスペクトル領域を表す。
【0015】
本明細書において、電磁放射、特に、紫外スペクトル領域から赤外スペクトル領域までの1つまたは複数の波長を有する電磁放射は、光とも称する。光は、可視光とすることができ、特に、約350nm〜約800nmの範囲内の可視スペクトル領域の1つまたは複数の波長を備えている。本明細書において、可視光は、例えば、当業者に公知であるいわゆるCIE−1931色空間図またはCIE標準色度図によるcxおよびcy色位置座標を有する色位置によって特徴付けることができる。
【0016】
本明細書において、白色光、または白色の発光印象または色印象を有する光は、プランキアン黒体放射体の色位置に対応する色位置を有する光、またはプランキアン黒体放射体の色位置から、cx/cy色位置座標を単位として0.07未満、好ましくは0.05未満(例えば0.03)ずれている色位置を有する光を意味する。さらに、本明細書において白色の発光印象として記載されている発光印象は、60以上、好ましくは80以上、特に好ましくは90以上の演色評価数(CRI)(当業者に公知である)を有する光によってもたらすことができる。
【0017】
本発明者は、オプトエレクトロニクス部品の動作時に、一次電磁放射の波長または波長範囲と第1の蛍光体および第2の蛍光体とを組み合わせる結果として、さまざまな周囲温度および動作電流においてオプトエレクトロニクス部品の安定性が高まることを見出した。さらに、従来のオプトエレクトロニクス部品と比較して、一次電磁放射から二次電磁放射への変換の効率が増大し、明るさが高まり、部品によって放出される光の演色評価数(CRI、R9、Ra8)が高くなり、色印象がより良好となる。
【0018】
一実施形態によると、積層体は半導体積層体とすることができ、半導体積層体において使用される半導体材料は、少なくとも部分的にエレクトロルミネセンス(電界発光)を有することができるならば、制約されない。一例として、インジウム、ガリウム、アルミニウム、窒素、リン、ヒ素、酸素、ケイ素、炭素、およびこれらの組合せから選択した元素から構成される化合物が使用される。しかしながら、別の元素および添加物を使用することも可能である。活性領域を有する積層体は、例えば、窒化物化合物半導体材料系であってもよい。この場合、「窒化物化合物半導体材料系」とは、半導体積層体または少なくともその一部が、窒化物化合物半導体材料、好ましくはAlGaIn1−n−mN(0≦n≦1、0≦m≦1、n+m≦1)を含んでいる、またはこのような材料からなることを意味する。この場合、この材料は、上の化学式に従った数学的に正確な組成を必ずしも有する必要はない。そうではなく、この材料は、例えば1種類または複数種類のドーパントと追加の構成成分とを含んでいてもよい。しかしながら、説明を簡潔にする目的で、上の化学式は、結晶格子の本質的な構成成分(Al、Ga、In、N)のみを含んでいる。しかし、これらの構成成分は、その一部分をわずかな量のさらなる物質によって置き換える、もしくは補足する、またはその両方を行うことができる。
【0019】
半導体積層体は、活性領域として、例えば、従来のpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW構造)、または多重量子井戸構造(MQW構造)を備えていてもよい。活性領域に加えて、半導体積層体は、さらなる機能層および機能領域を備えていてもよく、例えば、p型またはn型にドープされた電荷キャリア輸送層(すなわち電子またはホールの輸送層)、p型またはn型にドープされた閉じ込め層またはクラッド層、バッファ層、電極、およびこれらの組合せを備えていてもよい。活性領域、またはさらなる機能層および機能領域に関連するこのような構造は、特にその構造および機能に関して当業者に公知であるため、ここではこれ以上詳しく説明しない。
【0020】
これに代えて、オプトエレクトロニクス部品として有機発光ダイオード(OLED)を選択することが可能であり、例えば、OLEDによって放出される一次電磁放射が、一次電磁放射のビーム経路に位置している変換材料によって二次電磁放射に変換される。
【0021】
例えば、MSiタイプの第2の蛍光体は、高い温度(例えば85℃〜120℃など)において、あるいは変化する周囲温度および電流の強さまたは電流において、極めて高い安定性を示す。この高い安定性と、さらには、例えばMSiタイプの第2の蛍光体の発光の最適化された位置は、極めて安定した演色評価数(CRI、および8つの基準色による演色評価数Ra8)と、飽和した赤(R9)の高い演色評価数を示す(0より大きいすべての条件下でCRI80を維持する)。さらに、例えばMSiタイプの第2の蛍光体は、さらなる安定化方策なしにオプトエレクトロニクス部品において使用することができ、湿気に対して安定的であり、熱的に安定的である。
【0022】
さらに、MSiタイプの第2の蛍光体の色位置は、成分M、Ca2+、Sr2+、Ba2+、およびEu2+の陽イオンの比率を変化させることによって、外部の観察者の目の感度に適合させることができ、同時に、全体的発光の熱的に安定的かつ電流に安定的な挙動(すなわち外部の観察者によって知覚される成分の電磁放射)が達成され、同時に十分に高い演色評価数が得られるように、第1の蛍光体の一次電磁放射および二次電磁放射(以下では第1の二次電磁放射)の発光に適合させることができる。部品の色位置の明確な安定化をさらに観察することができる。
【0023】
Siタイプの第2の蛍光体の二次電磁放射(以下では第2の二次電磁放射)は、陽イオンCa2+、Sr2+、Ba2+の平均イオンサイズを減少させることによって、または、MSiタイプの第2の蛍光体におけるEuの割合を増大させることによって、より高い波長にシフトさせることができる。
【0024】
本発明者は、(Sr,Ba,Eu)Siタイプの蛍光体においてSrを部分的にCaによって置き換えることによって、第2の二次放射のスペクトル領域から深紅成分を過度に発光させることなく、長期的安定性が大幅に改善されると同時に、発光における長波長シフトにつながることを見出した。MがCa、Sr、Ba、およびEuの組合せであるMSiタイプの第2の蛍光体の発光の温度消光挙動は、(Sr,Ba,Eu)Siタイプの蛍光体と比較して大幅に良好であり、ただし、(Sr,Eu)Siタイプの蛍光体においてCaによってSrを部分的に置き換えることによって、温度消光挙動が損なわれる。したがって、MSiタイプの第2の蛍光体の要素Mにおける陽イオンCa2+、Sr2+、Ba2+、およびEu2+の比率を変えることにより、変化する周囲温度もしくは動作電流またはその両方における、熱的により安定的なオプトエレクトロニクス部品につながり、例えば、高い明るさ値、より安定的な色位置、より安定的な色温度、および安定的かつ高い演色評価数(Ra8、CRI、R9)が、オプトエレクトロニクス部品の動作時に達成される。
【0025】
さらなる実施形態によると、変換材料の第2の蛍光体はMSiであり、ここでCaは、第2の蛍光体において、2.5mol%〜25mol%の範囲、好ましくは5〜15mol%の範囲から選択される割合である。
【0026】
さらに、第2の蛍光体は、MSiであってもよく、40mol%以上、ここで例えば40mol%〜70mol%、好ましくは50mol%以上の割合のBaを含んでいる。
【0027】
本発明の少なくとも一実施形態によると、第2の蛍光体はMSiであり、0.5mol%〜10mol%の範囲、好ましくは2mol%〜6mol%の範囲(特に好ましくは4mol%)から選択される割合のEuを含んでいる。この場合、Euは、第2の蛍光体の活性化もしくはドーピングまたはその両方の役割を果たし得る。
【0028】
本発明の少なくとも一実施形態によると、第2の蛍光体は、組成(Sr0.36Ba0.5Ca0.1Eu0.04Siを有する。組成(Sr0.36Ba0.5Ca0.1Eu0.04Siを有する第2の蛍光体においては、Sr、Ba、Ca、およびEuの組合せの結果として、高い熱的安定性、部品の長期的安定性、色位置の安定性、および演色評価数(Ra8、CRI、R9)の安定性が達成される。
【0029】
これに代えて、またはこれに加えて、変換材料において、MAlSiN・SiOタイプ、特に、(Sr1−x−yCaEu)AlSiN・SiO(0≦x≦1、0.003≦y≦0.007)、またはMAlSiN、特に、(Sr1−a−bCaEu)AlSiN(0≦a≦1、0.003≦b≦0.007)の第2の蛍光体を使用することが可能であり、これら2つの第2の蛍光体は、MSiタイプの第2の蛍光体の発光と同程度の発光を有する。
【0030】
これに代えて、またはこれに加えて、変換材料において、陽イオンMを備えたM−Al−Si−N系からの第2の蛍光体を使用することが可能である。ここで、Mは、Ca、またはCaと、Ba、Sr、Mg、Zn、Cdからなる群からの少なくとも1種類のさらなる元素との組合せを備えており、この第2の蛍光体は、部分的にMに置き換わっているEuによって活性化され、この第2の蛍光体は、系M−AlN−Siに割り当てることのできる相を形成しており、構成要素M:Alの原子比率が≧0.375であり、原子比率Si/Alが≧1.4である。
【0031】
本発明の少なくとも一実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体は、化学量論組成式MAlSi18:Euを有する。特に、MはCaである。この化学量論組成式は、出発物質の組成の結果として得られ、したがって、化合物における特定の制限内で変化し得る。
【0032】
−Al−Si−N系からの第2の蛍光体は、変化する温度における顕著な熱的安定性と、発光の重心波長(centroid wavelength)の高い安定性とを有する。
【0033】
本発明の少なくとも一実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体は、585nm〜620nmの範囲内の主波長を有する。
【0034】
本発明の少なくとも一実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体は、組成Ca5−δAl4−2δSi8+2δ18:Eu(│δ│≦0.5)を有する。
【0035】
この場合、活性化物質Euは、金属イオンMに、好ましくは0.5〜5mol%の範囲内、特に好ましくは1〜3mol%の範囲内において、部分的に置き換わる。パラメータδは、この場合、│δ│≦0.5の範囲内、好ましくは0.5≦δ≦0.35の範囲内であるべきである。すなわち、第2の蛍光体におけるSiの割合は、Alの割合よりもつねに少なくとも40%高く(Si/Al>1.4)、Ca/(Al+Si)の比はつねに0.375より大きい。
【0036】
本発明の少なくとも一実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体は、化学量論組成式M5−δAl4−2δ+ySi8+2δ−y18−y:Eu(│δ│≦0.5、0≦y≦2)を有する。したがって、AlOとSiNを交換することが可能である。
【0037】
本発明の少なくとも一実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体におけるMは、CaまたはCa1−z(Mg,Sr)と同じである。ここでz≦0.15である。
【0038】
本出願は、独国特許第10 2006 036 577号明細書の内容全体、特に、蛍光体の合成もしくは特性またはその両方を参照する。
【0039】
これに代えて、またはこれに加えて、変換材料において、陽イオンMを備えたM−Al−Si−N系からの第2の蛍光体を使用することが可能である。ここで、Mは、CaまたはBaまたはSrを備えており、Mは、さらに、Mg、Zn、Cdからなる群からの少なくとも1種類のさらなる元素と組み合わせることができ、第2の蛍光体は(部分的にMに置き換わる)Euによって活性化され、第2の蛍光体はさらにLiFを含んでおり、LiFの割合は、Mに対して少なくとも1mol%である。
【0040】
本発明の少なくとも1つのさらなる実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体は、バッチ化学量論組成式(batch stoichiometry)Ca0.88Eu0.02Li0.1AlSi(N0.9670.033の意味における公称組成式を有する。この蛍光体は、約655nmで極大発光となる。
【0041】
本発明の少なくとも一実施形態によると、Ca0.98Eu0.02AlSiNタイプの第2の蛍光体におけるLiFの割合は、0.1mol%、0.15mol%、0.05mol%、または0.2mol%とする。第2の蛍光体におけるLiFの割合を選択することによって、高温における相対的な明るさを改善することができる。第2の蛍光体におけるLiFの割合が高いと、熱的安定性が増大する。
【0042】
本発明の少なくとも一実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体は、610nmより高い主波長を有する。
【0043】
本発明の少なくとも一実施形態によると、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体のMは、Caのみである、またはCaが主成分であり50mol%より大きい程度である、もしくは、M−Al−Si−N系からの第2の蛍光体におけるLiFの割合が、Mに対して少なくとも1mol%かつ最大で15mol%である、またはその両方である。
【0044】
特に、Caは、第2の蛍光体のMとして、70mol%より多く含めることもできる。
【0045】
本出願は、欧州特許第2134810号明細書の内容全体、特に、蛍光体の合成もしくは特性またはその両方を参照する。
【0046】
さらなる実施形態によると、第1の蛍光体および第2の蛍光体は、粒子として成形してもよい。一例として、この場合、MAlSiN・SiOタイプまたはMAlSiNタイプの第2の蛍光体は、例えばSiOもしくはAlまたはその両方による表面被覆をさらに有してもよく、これによって湿気に対する安定性が改善される。
【0047】
一般組成式A12を有する第1の蛍光体の要素Aは、活性化物質もしくはドーパントまたはその両方を備えていることができる。一次電磁放射の波長に最適に適合する第1の蛍光体の組成は、(Al,Ga)に対する(Y,Lu,Gd,Ce)の比率を変化させることによって達成することができる。
【0048】
さらなる実施形態によると、一般組成式A12を有する第1の蛍光体は、要素AとしてCeを備えている。この場合、Ceは、第1の蛍光体中に、0.5mol%〜5mol%の範囲内、好ましくは2mol%〜3mol%の範囲内(特に好ましくは2.5mol%)から選択される割合で存在し得る。Ceは、第1の蛍光体においては活性化物質もしくはドーパントまたはその両方としての役割を果たすことができる。第1の蛍光体における活性化物質としてのCeの濃度が高いことと、第1の蛍光体の吸収極大が一次電磁放射に良好に一致することにより、従来の蛍光体(例えば黄色または緑色を放出する蛍光体)と比較して第1の蛍光体の高い変換効率につながる。
【0049】
さらなる実施形態によると、第1の蛍光体の要素Aは、Luを備えていてもよい。この場合、Luは、第1の蛍光体中に、50mol%以上の範囲、好ましくは90mol%以上の範囲(特に好ましくは97.5mol%)から選択される割合で存在する。
【0050】
さらなる実施形態によると、第1の蛍光体にGaを存在させてもよい。Gaの割合は、10mol%〜40mol%の範囲、好ましくは15mol%〜35mol%の範囲(特に好ましくは25mol%)から選択することができる。
【0051】
さらなる実施形態によると、第1の蛍光体は、組成式(Lu0.975Ce0.025(Al0.75Ga0.2512を有する。この組成式(Lu0.975Ce0.025(Al0.75Ga0.2512は、従来の蛍光体との比較において、同じ温度における特に高い絶対的な明るさ値、低減した温度消光挙動、したがって改善された熱的安定性を示す。
【0052】
さらなる実施形態によると、本オプトエレクトロニクス部品の動作時、一次電磁放射が、活性領域を有する積層体によって放出され、変換材料における変換領域に入射し、変換材料は、一次電磁放射のビーム経路に配置されており、一次電磁放射を少なくとも部分的に吸収し、一次電磁放射の波長範囲とは少なくとも部分的に異なる波長範囲を有する二次電磁放射として放出するのに適している。
【0053】
本明細書においては、変換領域とは、オプトエレクトロニクス部品内の領域であって、変換材料を備えており、活性領域を有する積層体の上または上方に、例えば層、膜、またはポッティングとして配置または形成されている領域を意味する。変換材料を備えている層は、さらに部分層または部分領域から構成することができ、個々の部分層または部分領域には異なる組成の変換材料が存在している。
【0054】
本明細書において、活性領域を有する積層体の「上」または「上方」に領域が配置または形成されているとは、この場合、変換領域が、活性領域を有する積層体に機械的もしくは電気的または機械的かつ電気的に直接接触した状態で配置されていることを意味し得る。さらに、このことは、活性領域を有する積層体の上または上方に変換領域が間接的に配置されていることも意味し得る。この場合、さらなる層、さらなる領域、さらなる要素の少なくとも1つを、変換領域と積層体との間に配置することができる。
【0055】
この場合、1つまたは複数の第1および第2の蛍光体を、変換領域の変換材料内に、均一に、またはマトリックス材料中に濃度勾配が存在するように分散させる、または埋め込むことができる。マトリックス材料としては、特に、ポリマ材料またはセラミック材料が適している。マトリックス材料は、シロキサン、エポキシド、アクリレート、メタクリル酸メチル、イミド、カーボネイト、オレフィン、スチレン、ウレタン、これらの誘導体、混合物、コポリマ、またはこれらの化合物からなる群から選択することができ、これらの化合物は、モノマ、オリゴマ、またはポリマの形で存在させ得る。一例として、マトリックス材料は、エポキシ樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリウレタン、またはシリコン樹脂(例えばポリシロキサンまたはその混合物など)を備えている、またはこのような材料とすることができる。
【0056】
変換領域がポッティングとして成形される場合、変換材料は、少なくとも1種類のポッティング化合物と、1つまたは複数の第1および第2の蛍光体と、1つまたは複数の充填材とを備えていることができる。ポッティングは、活性領域を有する積層体に結合することができ、例えばポッティング化合物によってしっかりと接合される。この場合、ポッティング化合物は、例えばポリマ材料とすることができる。特に、ポッティング化合物は、シリコーン、メチル基が置き換えられたシリコーン、例えばポリ(ジメチルシロキサン)および/またはポリメチルフェニルシロキサン、シクロヘキシル基が置き換えられたシリコーン、例えばポリ(ジシクロヘキシル)シロキサン、またはこれらの組合せとすることができる。
【0057】
さらには、変換材料は、例えば、金属酸化物、例えば二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、塩(硫酸バリウムなど)、ガラス粒子などの充填材をさらに備えていてもよい。変換材料における充填材の充填程度は、例えば、20重量%より大きくすることができ、例えば25〜30重量%である。
【0058】
さらなる実施形態によると、変換材料における第1の蛍光体と第2の蛍光体の混合比は、任意に選択可能である。
【0059】
一次電磁放射および二次電磁放射は、赤外から紫外波長範囲、特に可視波長範囲における1つまたは複数の波長もしくは波長範囲またはその両方を備えていることができる。この場合、一次電磁放射のスペクトルもしくは二次電磁放射のスペクトルまたはその両方は、狭帯域とすることができ、すなわち、一次電磁放射もしくは二次電磁放射またはその両方は、単色またはほぼ単色の波長範囲を有することができる。これに代えて、一次電磁放射のスペクトルもしくは二次電磁放射のスペクトルまたはその両方は、広帯域としてもよく、一次電磁放射もしくは二次電磁放射またはその両方は、混合色の波長範囲を有していてもよく、混合色の波長範囲は、連続的なスペクトル、または異なる波長を有する複数の離散的なスペクトル成分を有していてもよい。
【0060】
一例として、一次電磁放射は、紫外線から緑色の波長範囲を有することができ、二次電磁放射は、青色から赤外線の波長範囲を有することができる。特に好ましくは、重なり合った一次電磁放射および二次電磁放射は、白色の発光印象を与え得るものである。これを目的として、一次電磁放射は、青色の発光印象を与えることができ、二次電磁放射は黄色の発光印象を与えることができ、黄色の発光印象は、黄色の波長範囲における二次電磁放射のスペクトル成分、もしくは緑色および赤色の波長範囲におけるスペクトル成分の結果として発生させることができる。
【0061】
積層体によって放出される一次電磁放射は、300〜485nmの範囲、好ましくは430nm〜470nmの範囲、特に好ましくは440〜455nmの範囲、特に、442.5nm〜452.5nmの範囲から選択される波長を有し得る。一実施形態によると、一次電磁放射は、447.5nmの波長を有する。一次電磁放射の波長または波長範囲を440nmより大きい範囲内で選択することによって、オプトエレクトロニクス部品の本質的な熱的安定性が改善される。一次電磁放射および変換材料の波長または波長範囲の選択を通じて、温度もしくは順方向電流Iまたはその両方が変化する場合であっても、本発明の全体的発光の色位置がほとんど影響されず、全体的発光の温度安定化挙動および電流安定化挙動が達成される。全体的発光の色位置安定性は、一次電磁放射と、人の目における青色受容器の感度(CIE−Z:CIE標準による目の青色感度)との最適な相互作用によって、大幅に改善される。さらに、改善された熱的安定性によって、高い温度における部品の効率が大幅に向上する。さらに、一次電磁放射の短波長を選択することにより、オプトエレクトロニクス部品の演色の波長依存性が、従来のオプトエレクトロニクス部品と比較して極めて低い。
【0062】
この場合、さらなる実施形態によると、オプトエレクトロニクス部品は、一次電磁放射と二次電磁放射とから構成される全体的発光を有する。
【0063】
特に、この場合、全体的発光は、オプトエレクトロニクス部品の動作時に外部の観察者によって白色光として知覚することができる。
【0064】
さらなる実施形態によると、二次電磁放射は、第1の蛍光体によって放出される第1の二次電磁放射と、第2の蛍光体によって放出される第2の二次電磁放射とから構成してもよい。第1の二次電磁放射は、490nm〜575nm(好ましくは540nm)の範囲から選択される波長を有し得る。第2の二次電磁放射は、600nm〜750nm(好ましくは630nm)の範囲から選択される波長を有し得る。したがって、第1の蛍光体は、電磁放射の黄色または緑色のスペクトル領域において放射し、第2の蛍光体は、電磁放射の橙色または赤色のスペクトル領域において放射する。
【0065】
変換材料は、吸収スペクトルおよび発光スペクトルを有することができ、吸収スペクトルおよび発光スペクトルは少なくとも部分的に重ならないことが有利である。したがって、吸収スペクトルは、少なくとも部分的に一次電磁放射のスペクトルを備えていることができ、発光スペクトルは、少なくとも部分的に二次電磁放射のスペクトルを備えていることができる。したがって、二次電磁放射は、少なくとも部分的に、変換材料によって一次電磁放射から生成される。
【0066】
少なくとも一実施形態によると、変換材料は、少なくとも1種類の染料をさらに備えている。染料は、例えば、有機染料、無機染料、蛍光染料とすることができる。例示的な染料は、ペリレンまたはクマリンである。
【0067】
特に、例えば層状に成形される変換材料を製造する場合、第1および第2の蛍光体を液体の形で塗布してもよい。適切な場合、第1および第2の蛍光体をマトリックス材料(同様に液体相で存在することができる)と混合して、一緒に塗布する。適切な場合、液体のマトリックス材料と、第1および第2の蛍光体を、例えば、活性領域を有する積層体の上に塗布する。さらに、積層体の上に電極を形成してもよいく、場合によってはマトリックス材料と混合された第1および第2の蛍光体を、この電極に層状に塗布してもよい。乾燥工程もしくは架橋工程またはその両方によって、第1および第2の蛍光体または混合物を硬化させる、もしくは固定する、またはその両方を行ってもよく、層状に成形された変換材料を形成してもよい。
【0068】
一実施形態によると、例えばMSiタイプ(MはCa、Sr、Ba、およびEuの組合せ)の第2の蛍光体は、次のように製造することができる。最初に、出発物質の重量を化学量論的に計量する。Mにアルカリ土類金属成分を使用する場合、合成時における蒸発損失を補正する目的で、アルカリ土類金属成分は余分に計量してもよい。
【0069】
出発物質は、アルカリ土類金属およびそれらの化合物、ケイ素およびその化合物、ユーロピウムおよびその化合物を含む群から選択することができる。この場合、アルカリ土類金属化合物は、合金、水素化物、シリサイド、窒化物、ハロゲン化物、酸化物、およびこれらの化合物の混合物から選択することができる。シリコン化合物は、シリコン窒化物、アルカリ土類金属シリサイド、シリコンジイミド、水素化ケイ素、またはこれらの化合物の混合物から選択することができる。好ましくはシリコン窒化物およびシリコン金属が使用され、これらは安定的であり、容易に入手することができ、好都合である。化合物またはユーロピウムは、酸化ユーロピウム、窒化ユーロピウム、ハロゲン化ユーロピウム、ユーロピウム水素化物、またはこれらの化合物の混合物から選択することができる。好ましくは酸化ユーロピウムが使用され、これは安定的であり、容易に入手することができ、好都合である。
【0070】
結晶化度を改善するためと、蛍光体の結晶成長を支持するため、フラックスを使用することも可能である。この場合、使用するアルカリ土類金属の塩化物およびフッ化物(例えばSrCl、SrF、CaCl、CaF、BaCl、BaF)、ハロゲン化物(例えばNHCl、NHF、KF、KCl、MgF)、およびホウ素含有化合物(例えばHBO、B、Li、NaBO、Na)を使用することが可能である。
【0071】
これに代えて、MSiタイプの第2の蛍光体において、AlOユニットによるSiNユニットの電荷中性置換(charge-neutral substitution)が可能である。
【0072】
出発物質を混合する。ここで、出発物質の混合は、ボールミルまたはタンブルミキサの中で行うことが好ましい。混合工程時、混合する材料に十分なエネルギが入力され出発物質が粉砕されるように、条件を選択してもよい。結果としての混合物の均一性および反応性の増加は、結果としての蛍光体の特性にプラスの影響を与え得る。
【0073】
かさ密度を適切に変化させること、もしくは出発物質の混合物の集塊を修正すること、またはその両方によって、二次相の形成を低減することができる。さらには、粒子サイズの分布、粒子の形状、および結果としての第2の蛍光体の歩留りに影響を及ぼすことができる。このための適切な技術は、例えばスクリーニングおよび粒状化であり、適宜、好適な添加物を使用する。
【0074】
その後、混合物に1回または複数回の熱処理を行うことができる。熱処理は、タングステン、モリブデン、または窒化ホウ素から構成されるるつぼの中で行うことができる。熱処理は、窒素雰囲気または窒素/水素雰囲気下でガス気密炉の中で行う。雰囲気は、流動型または静止型とすることができる。さらに、細かく分割された形の炭素が炉室の中に存在しているならば、第2の蛍光体の品質にとってさらに有利であり得る。第2の蛍光体の熱処理を複数回行うことによって、結晶化度または粒径分布をさらに改善することができる。さらなる利点として、第2の蛍光体の改善された光学特性に関連して欠陥密度が低下する、もしくは第2の蛍光体の安定性が高まる、またはその両方である。熱処理の間に、第2の蛍光体を処理することができる、または、出発物質、フラックス、他の物質、またはこれらの物質の混合物などの物質を第2の蛍光体に加えることが可能である。
【0075】
熱処理された蛍光体をさらに粉砕してもよい。第2の蛍光体の粉砕には、従来の工具、例えばモルタルミル、流動層ミル、またはボールミルを使用することができる。粉砕時、作製される断片化されたグレインの割合は、この場合にはできる限り小さく維持するべきであり、なぜならそれによって第2の蛍光体の光学特性が損なわれ得るためである。
【0076】
その後、第2の蛍光体をさらに洗浄することができる。これを目的として、蛍光体を、水または酸性水溶液、例えば、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、硫酸、有機酸、またはこれらの混合物において洗浄することができる。結果として、二次相、ガラス相、または他の不純物を除去することができ、したがって第2の蛍光体の光学特性の改善を達成することができる。さらには、この処理によって、比較的小さい蛍光体粒子のみを取り除き、用途における粒子サイズ分布を最適化することも可能である。さらには、第2の蛍光体を粒子の形に製造することが可能であり、この場合、粒子の表面を特定の方法の処理によって変化させることができ、例えば粒子表面から特定の構成物質を除去することができる。この処理(場合によっては下流の処理に関連する)によって、蛍光体の安定性を改善することができる。
【0077】
一実施形態によると、組成A12を有する第1の蛍光体は、次のように製造することができる。最初に、要素Aの出発物質を用意し、出発物質は、希土類金属の酸化物、希土類金属の水酸化物、および希土類金属の塩(例えば、希土類金属の炭酸塩、希土類金属の硝酸塩、希土類金属のハロゲン化物、およびこれらの組合せ)を含んだ群から選択される。要素Bの出発物質としては、アルミニウムおよびガリウムの酸化物、水酸化物、または塩(例えば炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、またはこれの化合物の組合せ)を選択することが可能である。
【0078】
さらに、出発物質に、溶剤またはフラックス、例えば以下に限定されないが、フッ化物(例えばNHHF、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、BaF、AlF、CeF、YF、LuF、GdF、および類似する化合物)、またはホウ酸、またはこれらの塩を加えてもよい。さらには、上記のフラックスの2種類以上の任意の組合せも適している。
【0079】
出発物質、および該当する場合にはフラックスおよび溶剤を、例えばモルタルミル、ボールミル、乱流ミキサ(turbulent mixer)、プラウシェアミキサ(plough share mixer)、または他の適切な方法によって均一化する。次いで、均一化された混合物を、炉(例えば管状炉、チャンバ炉、押し込み炉(push-through furnace))の中で、還元性雰囲気下で数時間アニーリングする。次いで、アニーリングされた材料を、例えばモルタルミル、ボールミル、流動層ミル、または他のタイプのミルにおいて粉砕する。次いで、粉砕された粉末に対して、さらなる分割および分類ステップ(例えば、スクリーニング、浮選、または沈殿)を行い、適切な場合には洗浄する。反応生成物は、第1の蛍光体を備えている。
【0080】
これに代えて、第1および第2の蛍光体と、適切な場合にはマトリックス材料とを、蒸着させることもでき、次いで、架橋反応によって硬化させることができる。さらに、第1の蛍光体もしくは第2の蛍光体またはその両方の粒子が、少なくとも部分的に一次電磁放射を散乱させることができる。したがって、第1および第2の蛍光体は、一次電磁放射の放射を部分的に吸収して二次電磁放射を放出する発光中心としてと、一次電磁放射の散乱中心として、同時に具体化することができる。変換材料の散乱特性によって、部品からの放射の取り出しを改善することができる。さらに、散乱効果によって、変換材料において一次放射が吸収される確率を増大させることができ、この結果として、変換材料を含んだ層の必要な層厚さを小さくすることができる。
【0081】
さらに、例えばガラスまたは透明なプラスチックを備えた基板上に変換材料を塗布してもよく、活性領域を有する積層体を変換材料の上に配置してもよい。
【0082】
さらなる実施形態によると、オプトエレクトロニクス部品は、活性領域を有する積層体を囲んでいる封止体を備えていてもよく、封止体の中または外側に、一次電磁放射のビーム経路に変換材料を配置してもよい。封止体は、それぞれ薄膜封止体として具体化され得る。
【0083】
さらに、一般組成式A12を有する蛍光体が詳述される。ここで、Aは、Y、Lu、Gd、およびCe、およびこれらの組合せを含んだ群から選択され、Bは、AlおよびGaの組合せを備えている。オプトエレクトロニクス部品の第1の蛍光体に関して示した上の説明は、この蛍光体にも等しくあてはまる。このような蛍光体は、特に、オプトエレクトロニクス部品の変換材料または変換材料の構成物質として適している。この蛍光体がオプトエレクトロニクス部品の変換材料において使用される場合、この蛍光体は、さらなる蛍光体(例えば上述したオプトエレクトロニクス部品に関連して説明した第2の蛍光体)、マトリックス材料、染料、充填材のうちの少なくとも1種類と混合された形で、変換材料の中に存在することができる。
【0084】
さらに、一般組成式MSiを有する蛍光体が詳述される。ここで、Mは、Ca、Sr、Ba、およびEuの組合せを備えている。オプトエレクトロニクス部品の一般組成式MSiを有する第2の蛍光体に関して示した説明は、この蛍光体にも等しくあてはまる。このような蛍光体は、特に、オプトエレクトロニクス部品における変換材料として、または変換材料の構成物質として適している。この蛍光体がオプトエレクトロニクス部品の変換材料において使用される場合、この蛍光体は、さらなる蛍光体(例えば上述したオプトエレクトロニクス部品に関連して説明した第2の蛍光体)、マトリックス材料、染料、充填材のうちの少なくとも1種類と混合された形で、変換材料の中に存在することができる。
【0085】
本発明による部品および蛍光体のさらなる利点と、有利な実施形態および発展形態については、図面を参照しながら以下に説明する例示的な実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】オプトエレクトロニクス部品の概略的な側面図を示している。
図2】比較例との比較における、一実施形態による第2の蛍光体の相対的な明るさIの温度依存性を示している。
図3】比較例との比較における、さらなる実施形態による第2の蛍光体の相対的な明るさIの温度依存性を示している。
図4】比較例との比較における、一実施形態による第1の蛍光体の相対的な明るさIの温度依存性を示している。
図5】第2の蛍光体の異なる実施形態および比較例の変換効率の時間依存性を示している。
図6】第2の蛍光体のさらなる実施形態および比較例の変換効率の時間依存性を示している。
図7】Ca含有量の関数としての、第2の蛍光体の実施形態および比較例の変換比率を示している。
図8】一実施形態による第2の蛍光体および比較例の相対的な量子効率を示している。
図9】蛍光体の混合物の相関色温度における差を示している。
図10】蛍光体の混合物の演色評価数における差を示している。
図11】蛍光体の混合物の演色評価数における差を示している。
図12】蛍光体の混合物の色温度の変化の温度依存性を示している。
図13】蛍光体の混合物の演色評価数の温度依存性を示している。
図14】蛍光体の混合物の演色評価数の温度依存性を示している。
図15】第2の蛍光体の2つの実施形態の強さIの発光波長依存性を示している。
図16】一実施形態による第1の蛍光体の異なる励起波長における蛍光体スペクトルを示している。
図17】比較例の異なる励起波長における蛍光体スペクトルを示している。
図18】比較例の異なる励起波長における蛍光体スペクトルを示している。
図19】一実施形態による第2の蛍光体および比較例の変換器損失を示している。
【発明を実施するための形態】
【0087】
例示的な実施形態および図面において、同じ構成部分または同じ機能の構成部分それぞれには同じ参照数字を付してある。図面に示した要素と、要素の互いのサイズの関係は、原則的には正しい縮尺ではないものとみなされたい。さらに、蛍光体の同じ例示的な実施形態には、同じ短い記号を付してある。
【0088】
図1は、発光ダイオード(LED)の例示的な実施形態に基づく、オプトエレクトロニクス部品の概略的な側面図を示している。このオプトエレクトロニクス部品は、活性領域(明示的には示していない)を有する積層体1と、第1の電気接続部2と、第2の電気接続部3と、ボンディングワイヤ4と、ポッティング5と、ハウジング壁7と、ハウジング8と、切取り部9と、変換領域10とを備えており、変換領域10は、第1の蛍光体6−1、第2の蛍光体6−2、およびマトリックス材料11を備えている。
【0089】
さらに、活性領域を有する積層体は、キャリア(図示していない)の上に配置してもよい。キャリアは、例えば、プリント基板(PCB)、セラミック基板、回路基板、またはアルミニウム板としてもよい。
【0090】
これに代えて、いわゆる薄膜チップの場合には、キャリアなしで積層体を配置することが可能である。
【0091】
活性領域は、放出方向に一次電磁放射を放出するのに適している。活性領域を有する積層体は、例えば窒化物化合物半導体材料系とすることができ、窒化物化合物半導体材料は、特に、青色スペクトル領域もしくは紫外線スペクトル領域またはその両方における一次電磁放射を放出する。
【0092】
一次電磁放射のビーム経路には、変換領域10に、第1の蛍光体6−1および第2の蛍光体6−2が配置されており、これらは粒子の形で存在しておりマトリックス材料11に埋め込まれているように示してある。マトリックス材料11は、例えばポリマ材料またはセラミック材料である。この場合、変換領域10は、活性領域を有する積層体1の上に機械的に直接接触している、もしくは電気的に直接接触している、またはその両方の状態で直接配置されている。
【0093】
これに代えて、さらなる層および材料(例えばポッティング)を、変換領域10と積層体1との間に配置してもよい(図示していない)。
【0094】
これに代えて、第1の蛍光体6−1および第2の蛍光体6−2を、ハウジング8のハウジング壁7に間接的または直接的に配置してもよい(図示していない)。
【0095】
これに代えて、第1の蛍光体6−1および第2の蛍光体6−2をポッティング化合物(図示していない)に埋め込んで、変換領域10をポッティング5として成形することが可能である。
【0096】
第1の蛍光体6−1および第2の蛍光体6−2は、少なくとも部分的に一次電磁放射を二次電磁放射に変換する。一例として、一次電磁放射は、電磁放射の青色スペクトル領域において放出され、この一次電磁放射の少なくとも一部分が、第1の蛍光体6−1および第2の蛍光体6−2を含んでいる変換材料によって、電磁放射の緑色のスペクトル領域における第1の二次電磁放射と、電磁放射の赤色のスペクトル領域における第2の二次電磁放射に変換される。オプトエレクトロニクス部品から放出される全体的な放射は、青色を放出する一次放射と、赤色および緑色を放出する二次放射の重ね合わせであり、外部の観察者から見える全体的な発光は白色光である。
【0097】
本明細書においては、蛍光体の例示的な実施形態および比較例に対して次の短い記号を使用する。
L2: 組成(Sr0.36Ba0.5Ca0.1Eu0.04Siを有する第2の蛍光体の例示的な実施形態
V2: 比較例(Sr,Eu)Si
V2−50%Ba: 比較例(Sr0.46Ba0.5Eu0.04Si
V2−40%Ca: 比較例(Sr0.56Ca0.4Eu0.04Si
V2−75%Ba: 比較例(Sr0.21Ba0.75Eu0.04Si
V2−25%Ba: 比較例(Sr0.71Ba0.25Eu0.04Si
V2−1: 比較例(Ca,Eu)Si
V2−2: 比較例(Sr,Ba,Ca,Eu)SiO
【0098】
図2および図3は、第2の蛍光体L2と、比較例V2、V2−50%Ba、V2−40%Ca、V2−75%Ba、V2−25%Ba、V2−1、およびV2−2の相対的な明るさI(単位:%)を、温度(単位:℃)の関数として示している。基準値(すなわち100%の明るさ)は、25℃において選択した。これらの測定値は、電磁放射の橙色スペクトル領域または赤色スペクトル領域において放射する蛍光体の、温度消光挙動を特徴付けている。
【0099】
図2において明らかであるように、V2においてSrの一部がBaに置き換わっていることにより、V2−50%Baにおいて相対的な明るさ値が大きく低下し、したがって熱的安定性が損なわれている。V2−40%CaにおけるV2においてSrの一部がCaに置き換わっていることにより、相対的な明るさ値が大きく低下し、熱的安定性が大幅に損なわれている。
【0100】
第2の蛍光体L2は、比較例V2、V2−50%Ba、およびV2−40%Caと比較して、温度の上昇に伴う明るさ値の減少が小さく、したがって温度消光挙動が小さく、熱的安定性が改善されている。温度が上昇するとき、第2の蛍光体L2の相対的な明るさは、図2に示した他の比較例V2、V2−50%Ba、およびV2−40%Caと比較して、小さい程度だけ減少している。
【0101】
図3において明らかであるように、第2の蛍光体L2は、V2−50%Ba、V2−75%Ba、V2−25%Ba、V2−1、およびV2−2の比較例と比較して、同じ温度においてより高い相対的な明るさ値Iと、小さい温度消光挙動、およびしたがって改善された熱的安定性を特徴とする。温度が上昇するとき、第2の蛍光体L2の相対的な明るさは、グラフに示した他の比較例V2−50%Ba、V2−75%Ba、V2−25%Ba、V2−1、およびV2−2と比較して、小さい程度だけ減少している。
【0102】
本明細書においては、蛍光体の例示的な実施形態および比較例に対して次の短い記号を使用する。
L1−1: 組成(Lu0.975Ce0.025Al4.25Ga0.7512を有する第1の蛍光体の例示的な実施形態
L1−2: 組成(Lu0.978Ce0.022Al3.75Ga1.2512を有する第1の蛍光体の例示的な実施形態
V1−1: 比較例Y(Al,Ga)12:Ce
V1−2: 比較例(Sr1−v−wBaEuSiO。ただし、v≦1、0.01<w<0.2
V1−3: 比較例(Sr1−v−wBaEuSiO。ただし、v≧1、0.01<w<0.2)
【0103】
図4は、電磁放射の黄色または緑色のスペクトル領域において放出する第1の蛍光体L1−1およびL1−2と、比較例V1−1、V1−2、およびV1−3の相対的な明るさI(単位:%)を、温度T(単位:℃)の関数として示している。明るさIの基準値(すなわち100%)は、25℃において選択した。
【0104】
第1の蛍光体L1−1およびL1−2は、比較例V1−1、V1−2、およびV1−3と比較して、同じ温度においてより高い相対的な明るさ値と、小さい温度消光挙動、およびしたがって改善された熱的安定性を特徴とする。温度が上昇するとき、第1の蛍光体L1−1およびL1−2の相対的な明るさは、グラフに示した他の比較例V1−1、V1−2、およびV1−3と比較して、小さい程度だけ減少している。
【0105】
図5は、レーザ高速劣化試験の結果として、正規化された変換比または変換効率ncrを時間t(単位:分)の関数として示している。この試験では、Caのさまざまな含有量として、15mol%、10mol%、5mol%、および2.5mol%と、50mol%の一定のBa含有量とを有する橙色または赤色を放出する第2の蛍光体(SrBaCaEu)Siの安定性を求めた。この場合、第2の蛍光体(SrBaCaEu)SiにおけるEuの割合は、4mol%〜5mol%の範囲内であり、Ca、Ba、Eu、およびSrの割合の合計は100%である。Caの各割合について図5に示した比率は、モルパーセント(mol%)に対応する。さらに、図5は、基準(0%のCa)としての比較例V2−50%Baの変換効率ncrの時間依存性を示している。これを目的として、試料に集中的なレーザ放射を照射し、レーザ放射は電磁放射の青色スペクトル領域において放出し、レーザ放射の発光スペクトルの積分と第2の蛍光体(SrBaCaEu)Siの発光スペクトルの積分の比(変換比)を、一時的解決方法において(in a temporally resolved manner)で求める。図5において、1分における開始値に対する測定値ncrそれぞれが、各組成物に対してプロットされている。変換比の高い値は、蛍光体の高い安定性を意味する。第2の蛍光体においてCa含有量が2.5%から5%に増大するとき、大幅な安定化を観察することができる。Ca含有量が5%以上では、測定誤差の範囲内で蛍光体は高く安定している。
【0106】
図6は、図5と同様に、正規化された変換比または変換効率ncrを時間t(単位:分)の関数として示している。この試験では、50mol%および35mol%の異なるBa含有量を有する(Ca含有量はそれぞれ15mol%)赤色または橙色を放出する第2の蛍光体(SrBaCaEu)Siの安定性を求めた。比較例V2−50%Baを基準として選択した。Caの割合またはBaの割合について図6に示した比率は、モルパーセント(mol%)に対応する。第2の蛍光体(SrBaCaEu)Siにおいて、Ca含有量が一定の15mol%であるとき、Ba含有量が50mol%より低下するとncrが大きく減少し、第2の蛍光体(SrBaCaEu)Siの不安定化がもたらされる。MSiタイプの第2の蛍光体におけるBa含有量が少なくとも50mol%であると、高いncr値を示し、したがって長期的安定性を示す。
【0107】
図7は、1分後の値に正規化された、120分後の変換比を示している。この試験では、50mol%、35mol%、25mol%のBaの割合を有する赤色または橙色を放出する第2の蛍光体(SrBaCaEu)Siと、比較例V2−40%Ca(Baは0%)の安定性を、Ca含有量c(Ca)(単位:%)の関数として求めた。Caの割合またはBaの割合として図7に示した比率は、モルパーセント(mol%)である。Ca含有量が上昇すると、発光の半値全幅が増大し、これに対応して視覚的有用効果(visual useful effect)が減少する。約50mol%のBaと約10mol%のCaとを有する、最適として選択された蛍光体は、測定誤差の範囲内で高い安定性であり、したがって、演色、安定性、および効率に関して極めて良好な特性を示す。
【0108】
図8は、酸化試験の結果としての第2の蛍光体L2および比較例V2−50%Baの相対的な量子効率Q.E.を示している。これを目的として、最初のステップにおいて、Q.E.を求めることによって各試料を最初に特徴化し(8−1)、次いで、空気中で350℃において16時間焼いた後、Q.E.を求めることによって再び特徴化した(8−2)。比較例V2−50%Baと比較して、第2の蛍光体L2は、焼いた後の(8−2)Q.E.の低下が大幅に小さいことを特徴とし、したがって高い安定性を有する。結果として、比較例V2−50%Baと比較してL2におけるCaの割合は、系に対する安定化の影響を示す。
【0109】
図9図14においては、以下の記号を使用する。
− L1−1+L2: 組成(Lu0.975Ce0.025Al4.25Ga0.7512を有する第1の蛍光体の例示的な実施形態と、組成(Sr0.36Ba0.5Ca0.1Eu0.04Siを有する第2の蛍光体の例示的な実施形態の混合物であり、混合比は4:1である。
− L1−2+V2−50%Ba: 組成(Lu0.978Ce0.022Al3.75Ga1.2512を有する第1の蛍光体の例示的な実施形態と、比較例(Sr0.46Ba0.5Eu0.04Siの混合物の比較例であり、混合比は7:1である。
【0110】
図9は、350mAおよび700mAの2つの異なる電流強さの場合のL1−1+L2およびL1−2+V2−50%Baにおいて、測定の開始時の測定値と300秒の連続的な動作の後の測定値の相関色温度ΔCCT/Kの差を示している。比較例L1−2+V2−50%Baと比較して、L1−1+L2の色温度ドリフトの大幅な減少と、色位置の高い安定性とが観察される。
【0111】
図10は、L1−1+L2およびL1−2+V2−50%Baの350mAおよび700mAの2つの異なる電流強さにおける発光ダイオード(LED)の連続的な動作時における、演色評価数の差ΔCRI(ΔRaに対応する)を示している。図は、300秒の連続動作の後の測定値と測定開始時の測定値との間の演色評価数の差ΔCRIをそれぞれ示している。比較例L1−2+V2−50%Baと比較して、L1−1+L2ではCRI損失が大幅に減少し、したがって演色評価数CRIの高い安定性が観察される。
【0112】
図11は、L1−1+L2およびL1−2+V2−50%Baの350mAおよび700mAの2つの異なる電流強さにおける発光ダイオード(LED)の連続的な動作時における、演色評価数の差ΔR9(飽和した赤)を示している。このグラフには、300秒の連続動作後の測定値と測定の開始時の測定値との間の演色評価数の差ΔR9がそれぞれプロットされている。比較例L1−2+V2−50%Baと比較して、L1−1+L2ではR9損失が大幅に減少し、したがって演色評価数R9の高い安定性が観察される。
【0113】
図12は、色温度dCCTの変化を、それぞれ350mA/mmおよび1000mA/mmの電流密度におけるL1−1+L2および比較例L1−2+V2−50%Baの発光ダイオード(LED)の温度T(単位:℃)の関数として示している。この実験は、L1−1+L2の場合には447nmの一次電磁放射の波長において、比較例L1−2+V2−50%Baの場合には440nmにおいて、20msパルス測定を使用して行った。比較例L1−2+V2−50%Baと比較して、L1−1+L2では、色温度の変化が大幅に小さい。温度が上昇すると、L1−1+L2の色温度の変化は、比較例L1−2+V2−50%Baの色温度と比較して小さい程度だけ増大する。電流密度が増大すると、比較例L1−2+V2−50%Baと比較して、L1−1+L2の色温度dCCTの小さい変化を示す。したがって、L1−1+L2の場合、温度または動作電流に対する色温度の大幅な安定化が明らかである。
【0114】
図13は、350mA/mmおよび1000mA/mmの異なる電流密度におけるL1−1+L2および比較例L1−2+V2−50%Baの発光ダイオード(LED)の温度T(単位:℃)の関数として、演色評価数CRIを示している。L1−1+L2は、同じ電流密度の場合、温度の上昇に伴ってCRI値のより少ない減少を示し、電流密度が増大するとCRI値のより小さい減少を示し、したがって、比較例L1−2+V2−50%Baと比較して、温度または動作電流に対するCRIの大幅な安定化を示す。
【0115】
図14は、350mA/mmおよび1000mA/mmの異なる電流密度におけるL1−1+L2および比較例L1−2+V2−50%Baの発光ダイオード(LED)の温度T(単位:℃)の関数として、演色評価数R9を示している。L1−1+L2は、同じ電流密度の場合、温度の上昇に伴ってR9値のより少ない減少を示し、電流密度が増大するとR9値のより小さい減少を示し、したがって、比較例L1−2+V2−50%Baと比較して、温度または動作電流に対するR9の大幅な安定化を示す。
【0116】
図15は、第2の蛍光体L2(曲線15−1)の発光スペクトルと、(Sr1−a−bCaEu)AlSiNタイプの第2の蛍光体の発光スペクトルの比較を示しており、aは、0.4(曲線15−2)、0.5(曲線15−3)、0.6(曲線15−4)であり、bは、各場合において0.003である。相対強さI(単位:任意)は、発光波長λ(単位:nm)の関数として示してある。この場合、第2の蛍光体L2(曲線15−1)と、(Sr1−a−bCaEu)AlSiNタイプの第2の蛍光体(曲線15−2〜15−4)は、同程度の発光スペクトルと発光波長極大を示す。したがって、(Sr1−a−bCaEu)AlSiNタイプの第2の蛍光体(曲線15−2〜15−4)は、第2の蛍光体L2の代替体である。
【0117】
図16は、可変励起波長435nm(曲線16−1)、440nm(曲線16−2)、445nm(曲線16−3)、および460nm(曲線16−4)における、第1の蛍光体L1−1の発光波長λ(単位:nm)の関数として、正規化された強さI(単位:任意)を示している。これとの比較において、YAGaGタイプ(25%のGa、4%のCe)の比較例(図17)と、(Sr,Ba)Si:Euタイプの比較例(図18)を示してある。
【0118】
図17および図18は、YAGaGタイプ(25%のGa、4%のCe)の比較例(図17)と、(Sr,Ba)Si:Euタイプの比較例(図18)の発光波長λ(単位:nm)の関数として、相対的な強さI(単位%)を示してある。図17にGaおよびCeの割合を示した比率は、モルパーセント(mol%)である。励起波長として、430nm、440nm、450nm、460nm、および470nmを選択した。図17および図18における曲線はすべてが実質的に互いに重なり合っており、したがって図を簡潔にする目的で、個々の曲線は個別に識別されていない。
【0119】
驚いたことに、第1の蛍光体L1−1は、図17における比較例YAGaG(25%のGa、4%のCe)と、図18における比較例(Sr,Ba)Si:Euと比較して、430nmと470nmの間の励起波長が減少するとき(図16の曲線16−1〜16−4)、吸収波長が、小さい値に、電磁放射の緑色のスペクトル範囲内に大きくシフトする。
【0120】
図19は、第2の蛍光体L2および比較例V2−50%Baの変換体損失CLを示している。この場合、蛍光体L2およびV2−50%Baそれぞれは、85℃の動作温度および500mAの電流強さにおいて、1000時間にわたり発光ダイオードにおいて試験が行われた。第2の蛍光体L2は、比較例V2−50%Baと比較して、より低い変換体損失と、したがって小さい経年劣化とを示す。
【0121】
第2の蛍光体(例示的な実施形態1)の製造と、第1の蛍光体(例示的な実施形態2)の製造それぞれについて、例示的な実施形態に基づいて以下に説明する。
【0122】
例示的な実施形態1: 27.891gのSrと、56.280gのBaN0.94と、3.554gのCaと、40.398gのシリコン金属粉末と、16.815gの窒化ケイ素と、5.062gの酸化ユーロピウムとを、それぞれ重量を計測し、500mlのPET容器(酸化ジルコニウムからなる20個のビードを有する)中で、ローラーベッド上で6時間にわたり集中的に混合した。出発物質の混合物を、400μmのスクリーン紗(screen gauze)によってスクリーニングし、カバーを有するモリブデンからなるるつぼの中に満たした。管状炉において、流れ雰囲気下(92.5%のNおよび7.5%のH、2リットル/分)で、1580℃において4時間にわたりアニーリングする。その後、第2の蛍光体をモルタルミルにおいて数分間にわたり粉砕し、31μmのスクリーン紗によってスクリーニングする。スクリーニングされた材料を、管状炉において、流れ雰囲気下(92.5%のNおよび7.5%のH、2リットル/分)で、モリブデンのるつぼの中で再び1580℃において4時間にわたりアニーリングする。その後、第2の蛍光体をモルタルミルにおいて数分間にわたり粉砕し、31μmのスクリーン紗によってスクリーニングする。スクリーニングされた材料を1リットルの水の中に分散させ、2モル濃度の塩酸200mlを加え、集中的な攪拌を行う。10分後、水相を静かに除去する。残った沈殿物に蒸留水を加えて4リットルとし、集中的な攪拌によって蛍光体を分散させる。20分後、沈殿物から上澄み液を静かに取り除く。このプロセスを、さらに2回繰り返す。乾燥させた沈殿物には、組成(Sr0.36Ba0.5Ca0.1Eu0.04Siを有する第2の蛍光体が含まれている。
【0123】
例示的な実施形態2: 250mlのポリエチレン製の広首フラスコ(直径10mmの酸化アルミニウムのビード150gを有する)の中で、64.39gの酸化ルテチウムLuと、0.99gの酸化セリウムCeOと、21.15gの酸化アルミニウムAlと、12.96gの酸化ガリウムGaと、0.50gのフッ化セリウムCeFを、2時間にわたり混合して粉砕する。混合物を、蓋付きのコランダムるつぼの中で、フォーミングガス(5%の体積割合の水素を含んだ窒素)中で1550℃において3時間にわたりアニーリングする。アニーリングされた材料を自動モルタルミル内で粉砕し、31μmのメッシュ幅を有するスクリーンによってスクリーニングする。結果としての蛍光体は、濃い黄緑色をしている。反応生成物は、組成((Lu0.975Ce0.025(Al0.75Ga0.2512)を有する第1の蛍光体を含んでいる。
【0124】
ここまで、本発明について例示的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されない。本発明は、任意の新規の特徴および特徴の任意の組合せを包含しており、特に、請求項における特徴の任意の組合せを含んでいる。これらの特徴または特徴の組合せは、それ自体が請求項あるいは例示的な実施形態に明示的に記載されていない場合であっても、本発明に含まれる。
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