特許第5944510号(P5944510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5944510構文要素のコンテキスト−適応バイナリ算術符号化(Context−AdaptiveBinaryArithmeticCoding)の方法と装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944510
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】構文要素のコンテキスト−適応バイナリ算術符号化(Context−AdaptiveBinaryArithmeticCoding)の方法と装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/91 20140101AFI20160621BHJP
   H04N 19/70 20140101ALI20160621BHJP
【FI】
   H04N19/91
   H04N19/70
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-531097(P2014-531097)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-531819(P2014-531819A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】CN2012086536
(87)【国際公開番号】WO2013107230
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年3月25日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2012/070428
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510122658
【氏名又は名称】メディアテック シンガポール ピーティーイー エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ガオ, メイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, シャン
(72)【発明者】
【氏名】レイ, シャウ−ミン
【審査官】 岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】 Vivienne Sze and Madhukar Budagavi,Parallel Context Processing of Coefficient Level,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,6th Meeting: Torino, IT,2011年 7月,JCTVC-F130,pp.1-4
【文献】 Vadim Seregin and Il-Koo Kim,Utilisation of CABAC equal probability mode for intra modes coding,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,6th Meeting: Torino, IT,2011年 7月,JCTVC-F376,pp.1-3
【文献】 Hisao Sasai and Takahiro Nishi,Modified MVD coding for CABAC ,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,6th Meeting: Torino, IT,2011年 7月,JCTVC-F423r1,pp.1-6
【文献】 Vivienne Sze,BoG report on context reduction for CABAC,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,6th Meeting: Torino, ITp,2011年 7月,JCTVC-F746_r1,pp.1-7
【文献】 Jani Lainema et al.,Single entropy coder for HEVC with a high throughput binarization mode,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,7th Meeting: Geneva, CH,2011年11月,JCTVC-G569_r1,pp.1-9
【文献】 Wei-Jung Chien et al.,Context reduction for CABAC,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 ,7th Meeting: Geneva,2011年11月,JCTVC-G718_r1,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 − 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構文要素のコンテキスト適応型値算術符号化方式 (CABAC)の方法であって、
コード化ユニットのマージインデックス、リファレンス画像インデックス、予測型、および、量子化パラメータデルタを含むグループに属した構文要素を受信する工程と、
前記構文要素を2値の文字列に変換する工程であり、前記2値の文字列は2つまたは2つ以上の2値からなり、かつ、前記2つまたは2つ以上の2値のそれぞれの2値は前記2値の位置を示す1つの2値インデックスを有する工程と、
2値レベルバイパスモード、または、前記2値レベルバイパスモードと前記2値レベルコンテキスト共有の組み合わせを用いて、コンテキスト適応型値算術符号化方式を、ンテキストを有する前記2値の文字列の前記2つまたは2つ以上の2値に、適用する工程とを含み、
前記2値レベルバイパスモードは、前記2値の文字列の少なくとも2つ連続する2値をコード化するモードである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記構文要素は前記マージインデックスに対応し、前記2値の文字列の少なくとも2つ連続する2値は、前記2値レベルバイパスモードでコード化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1、2、及び3に対応する2値指数を有する前記2値の文字列の3個の2値は、前記2値バイパスモードでコード化され、前記2値インデックスは0から開始することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記構文要素は前記マージインデックスに対応し、前記2値の文字列の少なくとも2つの2値は、コモンコンテキストを共有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1、2、及び3に対応する2値指数を有する前記2値の文字列の3個の2値は前記コモンコンテキストを共有し、前記2値インデックスは0から開始することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
2及び3に対応する2値指数を有する前記2値の文字列の2個の2値は、前記コモンコンテキストを共有し、前記2値インデックスは 0から開始することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記構文要素は、前記リファレンス画像インデックスに対応し、前記2値の文字列の少なくとも2つ連続する2値は、前記2値レベルバイパスモードでコード化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1より大きい2値指数を有する前記2値の文字列の2以上の2値は、前記2値バイパスモードでコード化され、前記2値インデックスは0から開始することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
2より大きい2値指数を有する前記2値の文字列の2つ以上の2値は、前記2値バイパスモードでコード化され、前記2値インデックスは0から開始することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記構文要素は前記リファレンス画像インデックスに対応し、1より大きい2値指数を有する前記2値の文字列のひとつ以上の2値は、コモンコンテキストを共有し、前記2値インデックスは0から開始することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記2値の文字列の少なくとも2つの2値は、前記2値レベルバイパスモードでコード化され、前記2値の文字列の少なくとも二つの2値は、コモンコンテキストを共有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記2値の文字列の少なくとも二つの第1の2値は、第一コモンコンテキストを共有し、前記2値の文字列の少なくとも2つの第2の2値は、第二コモンコンテキストを共有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
構文要素のコンテキスト適応型値算術符号化方式 (CABAC) の装置であって、
コード化ユニットのマージインデックス、リファレンス画像インデックス、予測型、および、量子化パラメータ デルタを含むグループに属した構文要素を受信する手段と、
前記構文要素を2値の文字列に変換する手段であり、前記2値の文字列は2つまたは2つ以上の2値からなり、かつ、前記2つまたは2つ以上の2値のそれぞれの2値は前記2値の位置を示す1つの2値インデックスを有する手段と、
2値レベルバイパスモード、または、前記2値レベルバイパスモードと前記2値レベルコンテキスト共有の組み合わせを用いて、コンテキスト適応型値算術符号化方式を、ンテキストを有する前記2値の文字列の前記2つまたは2つ以上の2値に、適用する手段とを備え、
前記2値レベルバイパスモードは、前記2値の文字列の少なくとも2つ連続する2値をコード化するモードである
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
前記構文要素は、前記マージインデックスに対応し、前記2値の文字列の少なくとも2つ連続する2値が、前記2値レベルバイパスモードでコード化されることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
1、2、及び3 に対応する2値指数を有する前記2値の文字列の3つの2値は、前記2値バイパスモードでコード化され、前記2値インデックスは0から開始することを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記構文要素は merge_idxに対応し、前記2値の文字列の少なくとも2つの2値は、コモンコンテキストを共有することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記構文要素は、前記リファレンス画像インデックスに対応し、前記2値の文字列の少なくとも2つ連続する2値は、前記2値レベルバイパスモードでコード化されることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
2より大きい2値指数を有する前記2値の文字列の2つ以上の2値は、前記2値バイパスモードでコード化され、前記2値インデックスは0から開始することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記2値の文字列の少なくとも2つの2値は、前記2値レベルバイパスモードでコード化され、前記2値の文字列の少なくとも2つの2値は、コモンコンテキストを共有することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記2値の文字列の少なくとも二つの第一の2値は、第一コモンコンテキストを共有し、前記2値の文字列の少なくとも二つの第二の2値は、第二コモンコンテキストを共有することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2012年1月16日に出願された“CABAC Simplification for Some Syntax Elements”と題された米国特許出願PCT/CN2012/070428号から優先権を主張するものであり、PCT特許出願は引用によって本願に援用される。
【0002】
本発明は、ビデオ符号化またはビデオ処理に関するものであって、特に、高効率ビデオ符号化 (HEVC:High−Efficiency Video Coding)における複雑性が少ない構文要素のCABACコード化に関するものである。
【背景技術】
【0003】
演算コード化は、効果的なデータ圧縮方法として知られ、且つ、コード化スタンダード、たとえば、JBIG、JPEG2000、H.264/AVC、および、高効率ビデオ符号化 (HEVC)に幅広く用いられる。H.264/AVC JVT 試験モデル (JM)とHEVC試験モデル (HM)において、コンテキスト適応型二値算術符号化方式(CABAC:Context Adaptive Binary Arithmetic Coding)が、ビデオ符号化システムにおいて、各種構文要素(syntax elements)のエントロピー符号化ツールとして採用される。
【0004】
図1は、2値化110、コンテキストモデルリング120、および、バイナリ算術符号化 (BAC:Binary Arithmetic Coding)130を含むCABAC エンコーダ100を示す図である。2値化ステップにおいて、各構文要素は、独自に、バイナリストリング(本明細書において、2値とも称される)中にマップされる。コンテキストモデリングステップにおいて、確率モデルが各2値に選択される。対応する確率モデルは、前もってコード化された構文要素、2値指数、サイド情報またはそれらの組み合わせに基づく。2値化とコンテキストモデル割り当て後、2進値は、その関連するコンテキストモデルと共に、バイナリ算術符号化エンジン、すなわち、図1中のBAC130ブロックに提供される。2進値は、構文要素と2値指数に基づいて、二符号化モードでコード化され、ひとつは正規の符号化モード、もうひとつはバイパスモードである。本明細書において、正規の符号化モードに対応する2値はregular bins と称され、バイパス符号化モードに対応する1値はbypassbinsと称される。正規の符号化モードにおいて、BACの優勢確率シンボル (MPS:Most Probable Symbol)の確率と劣勢確率シンボル(LPS:Least Probable Symbol)の確率は、関連するコンテキストモデルから派生する。バイパス符号化モードにおいて、MPSとLPSの確率は等しい。CABACにおいて、バイパスモードが導入されて、符号化プロセスを加速する。
【0005】
HEVC試験モデルバージョン 5.0 (HM-5.0)において、構文要素、たとえば、merge_flag (コード化ユニット、すなわち、CUのマージフラグに関連する)、merge_idx (マージインデックスに関連する)、ref_idx_lc/ ref_idx_l0/ref_idx_l1 (リファレンス画像インデックスに関連する)、pred_type (予測型二関連する)、および、cu_qp_delta (CUの量子化パラメータQPのデルタに関連する)は、CABACを用いてコード化される。0 か 1の値を有する構文要素 merge_flagはたった一つの2値を有し、一つのコンテキストを用いてコード化される。merge_idx, ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx/l1の2値の文字列、および、pred_type が、それぞれ、表1、表2と表3に示される。 merge_idx, pred_typeと ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1において、1つのコンテキストが各2値に用いられる。ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1において、ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1の最大値が3より大きい場合、追加の2値は、2に等しいbinIdxを有する2値と同じコンテキストを共有する。cu_qp_deltaにおいて、2値の文字列は、以下の疑似コードに相当するプロセスにより指定される。cu_qp_deltaの値は synValとして示される。bin 0 (すなわち、binIdx=0)において、2進値は、擬似コードに示されるように、abs(synVal)が、0 に等しいまたは0より大きいかどうかに関する条件と関連する。bin 0 が値1を有する時、ひとつ以上の追加の2値が用いられて、デルタQPの値を示す。擬似コードにおいて、パラメータ QpBdOffsetYが、HM-5.0に用いられるデルタ QP の特定のデータ表現のため列挙され、QpBdOffsetYは、内在するビデオデータのビット深さに関連する。
【表1】
【表2】
【表3】
【数1】
【0006】
2値の文字列に用いられるコンテキストは、上述の擬似コード中でも表示される。cu_qp_delta (すなわち、binIdx = 0 and 1)の最初の二個の2値は、二個の別々のコンテキストを各2値に用い、別の2値(すなわち、binIdx &sup3; 2)は、1つのコモンコンテキストを共有する。2値がコンテキストを用いてコード化されるとき、追加メモリを必要とし、また、エンコーダとデコーダ側両方で複雑性が高くなる。これにより、必要なコンテキスト数量を減少させることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
構文要素のコンテキスト適応型二値算術符号化 (CABAC)の方法と装置が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
方法は、構文要素を受信し、構文要素を2値の文字列に変換する工程を含む。その後、コンテキスト適応型二値算術符号化は、2値レベルバイパスモード、2値レベルコンテキスト共有、または、2値レベルバイパスモードと2値レベルコンテキスト共有の組み合わせを用いて、コンテキストの数量が減少した2値の文字列に適用される。構文要素は、merge_idx, ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1, pred_type、および、cu_qp_deltaを含むグループに属する。
【0009】
構文要素は merge_idx に対応し、2値の文字列の少なくともひとつの2値が、2値レベルバイパスモードでコード化される。たとえば、1, 2 と 3に対応する2値指数を有する2値の文字列の3個の2値が、2値バイパスモードでコード化され、2値インデックスは0から始まる。あるいは、merge_idxの2値の文字列の少なくとも二つの2値は、コモンコンテキストを共有する。たとえば、1, 2 および 3に対応する2値指数を有する2値の文字列の3個の2値は、コモンコンテキストを共有する。
【0010】
構文要素はref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1 に対応し、2値の文字列の少なくともひとつの2値は、2値レベルバイパスモードでコード化される。たとえば、1または2より大きい2値指数を有する2値の文字列のひとつ以上の2値は、2値バイパスモードでコード化される。あるいは、1より大きい2値指数を有する2値の文字列のひとつ以上の2値は、コモンコンテキストを共有する。
【0011】
コンテキストの数量を減らすために、2値レベルバイパスモードと2値レベルコンテキスト共有の使用が、複数のインスタンスに適用される、または、一緒に適用される。たとえば、2値の文字列の少なくともひとつの2値は、2値レベルバイパスモードでコード化され、2値の文字列の少なくとも二つの2値は、コモンコンテキストを共有する。別の例において、2値の文字列の少なくとも二つの第一2値は、第一コモンコンテキストを共有し、2値の文字列の少なくとも二つの第二2値は、第二コモンコンテキストを共有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】バイパスモードによるCABAC符号化システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の具体例によるmerge_idxのコンテキスト適応型二値算術符号化のフローチャートで、1, 2 と 3 に等しいbinIdx を有する2値が、バイパスモードでコード化されるときのフローチャートを示す。
図3】本発明の具体例によるref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1のコンテキスト適応型二値算術符号化のフローチャートであり、2に等しいまたはそれより大きい binIdx を有する2値が、バイパスモードでコード化されるときのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述するように、構文要素コード化のためのコンテキストの使用は追加メモリを必要とし、複雑性が高くなる。本発明の実施形態では、バイパスモードを少なくともひとつの2値に用いることにより、ひとつ以上の2値でコンテキストを共有することにより、または、その両方により、コンテキストの数量を減少させる。
【0014】
たとえば、構文要素 merge_idx がコード化されるとき、表1に示されるmerge_idxの2値は、コンテキストを用いて処理される。2値の位置は binIdxにより示され、binIdx は、merge_idx の0 から 3である。merge_idxの従来のCABACにおいて、1つのコンテキスト(one context)が各2値に用いられる。本発明の実施形態は、バイパスモードを少なくともひとつの2値に用いる、又は、ひとつ以上の2値でコンテキストを共有することで、コンテキストの総数を減らすことができ、または、その両方によって、コンテキストの総数を減らすことができる。バイパスモードが用いられる時、バイパスモードは、一組に属するbinIdxを有する2値に適用され、この一組は、単独で、1, 2, あるいは 3、または、それらの組み合わせからなる。つまり、この組は、{1}, {2}, {3}, {1,2}, {1,3}, {2,3}または{1,2,3}である。たとえば、各種具体例として、バイパスモードは、{3}, {2,3} または {1,2,3}に属するbinIdxを有する2値に適用される。コンテキスト共有モードが用いられる時、コンテキストは、2またはそれ以上の2値により共有される。たとえば、各種具体例として、コモンコンテキストは、{2,3} または {1,2,3}に属するbinIdxを有する2値により共有される。
【0015】
構文要素 merge_idx の上述のコンテキスト簡単化方法は、コンテキストの数量を減少させ、その結果として、保存領域と複雑性を減少させる。BD比率の観点から、システムパフォーマンスに与える影響はごく僅かであり、BD比率は、ビデオ符号化の領域に幅広く用いられるコード化品質測定である。
【0016】
他の例において、本発明によるコンテキスト簡単化方法は構文要素ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1に適用される。構文要素ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1の2値化が表2に示される。2値の位置はbinIdxにより示され、binIdx は、ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1の0, 1, 2, …, N-1 とすることができ、(N+1) は、リストで割り当てられるリファレンス画像の最大数に関連する整数である。 ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1の従来のCABACにおいて、1つのコンテキストが各2値に用いられる。本発明では、バイパスモードを少なくともひとつの2値に用いる、または、ひとつ以上の2値でコンテキストを共有して、コンテキストの総数を減少させる。バイパスモードが用いられる時、バイパスモードは、一組に属したbinIdxを有する2値に適用され、この組は、単独で、 1, 2,…, N-2, またはN-1、またはそれらの組み合わせからなる。
【数2】
【0017】
構文要素 ref_idex_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1 の上述のコンテキスト簡単化方法は、コンテキストの数量を減少させ、その結果として、保存領域と複雑性を減少させる。BD比率の観点から、システムパフォーマンスに与える影響は、ごく僅かである。
【0018】
さらに他の例において、本発明によるコンテキスト簡単化方法は構文要素 pred_typeに適用される。構文要素 pred_typeの2値化が表3に示される。2値の位置は binIdxにより示され、binIdxは、pred_typeの 0 から 4 である。pred_typeの従来のCABACにおいて、1つのコンテキストが各2値に用いられる。本発明の具体例として、バイパスモードを少なくともひとつの2値に用いて、または、ひとつ以上の2値でコンテキストを共有することで、コンテキストの総数を減少させる。バイパスモードが用いられる時、バイパスモードは、一組に属したbinIdxを有する2値に適用され、この組は、単独で、1, 2, 3, または4 、または、それらの組み合わせからなる。たとえば、各種具体例として、バイパスモードは、{4}, {3,4}または{2,3,4}に属したbinIdxを有する2値に適用される。コンテキスト共有モードが用いられる時、コモンコンテキストは、2またはそれ以上の2値により共有される。たとえば、各種具体例として、コンテキストは、{2,3}, {3,4}または{2,3,4}に属したbinIdxを有する2値により共有される。
【0019】
構文要素 pred_typeの上述のコンテキスト簡単化方法は、コンテキストの数量を減少させ、その結果として、保存領域と複雑性を減少させる。BD比率の観点から、システムパフォーマンスに与える影響はごく僅かである。
【0020】
HEVCにおいて、構文要素 merge_flagは、また、CABACを用いて、コード化される。構文要素 merge_flagは1つの2値(one bin)を有する。本発明の具体例は、コンテキストの使用に代わって、2値のバイパスモードを用いる。
【0021】
他の例では、本発明によるコンテキスト簡単化方法が、構文要素 cu_qp_deltaに適用される。構文要素 cu_qp_deltaの2値化が、前述された擬似コードで示される。Bin 0 は、“abs(デルタQP)が 0より大きいかどうか”に関連する情報に対応し、デルタQPは、現在のQP値と前のQP値との間の差で、abs() は絶対値関数(absolution value function)である。Bin 1は、“abs(デルタQP)が1より大きいかどうか”に関連する情報に対応する。2およびそれより大きいbinIdx を有する2値は“abs(deltaQP)-1”に関連する。最大binIdx 値(N-1)は、最大許容abs(デルタQP)-1に基づく。cu_qp_デルタの従来のCABACにおいて、cu_qp_deltaの最初に2個の2値 (すなわち、binIdx = 0 and 1)は、2個の別々のコンテキストを各2値に用い、別の2値(すなわち、binIdx &sup3; 2)は1つのコモンコンテキストを共有する。本発明の具体例では、バイパスモードを少なくともひとつの2値に用いることで、または、ひとつ以上の2値によりコンテキストを共有することで、コンテキストの総数を減少させる。バイパスモードが用いられる時、バイパスモードは、一組に属したbinIdxを有する2値に適用され、この組は、1, 2,…, N-1 または それらの組み合わせからなる。たとえば、具体例として、バイパスモードは、2 またはそれより大きいbinIdx を有する2値に適用される。他の具体例では、バイパスモードは、1またはそれ以上のbinIdxを有する2値に適用される。コンテキスト共有モードが用いられる時、コンテキスト は、2またはそれ以上の2値により共有される。たとえば、具体例として、コンテキストは、1に等しいbinIdxを有する2値、及び、2又は2よりより大きいbinIdxを有する2値により共有される。つまり、1 又は1よりより大きいbinIdxを有する2値は、コモンコンテキストを共有する。別の具体例として、コンテキストは、n+1, n+2,…に等しい binIdxを有する2値により共有され、n は0より大きい整数である。本発明では、バイパスモードとコンテキスト共有は一緒に用いることもできる。たとえば、組{n,n+1,…} 中のbinIdxを有する2値がバイパスモードを使用する間、範囲 {m,…,n-1} 中のbinIdxを有する2値は、同じコンテキストを共有することができる。m と n は整数で、且つ、 (n-1)>mである。さらに、複数の2値グループは、個別のコモンコンテキストを共有することができる。たとえば、範囲{m1,…,m2-1}中のbinIdx を有する2値は、第一コモンコンテキストを共有し、範囲 {m2,…,m3-1}中のbinIdxを有する2値は、第二コモンコンテキストを共有する。m1, m2 と m3 は整数、且つ、m3>m2>m1である。
【0022】
図2は、本発明の具体例によるコンテキスト単純化を組み込んだシステムのフローチャートである。この例において、バイパスモードは、構文要素の2値, merge_idxに適用され、merge_idx は4ビットに2値化される。ステップ210において、構文要素 merge_idx が可変 val.に読み取られる。ステップ220にて、可変 val はN binsに2値化される(B[0], B[1],…B[N-1])。ステップ230において、カウンター i が0に初期化される。ステップ240において、カウンター i が確認されて、すべての2値が処理されたか判断する。すべての2値が処理されている場合、工程が終了する (S240“No”)。そうでなければ(S240“Yes”)、ステップ250において、カウンター i がチェックされて、0に等しいか確認する。i が0に等しい場合、ステップ260にて、2値が、コンテキストを用いてコード化される; そうでなければ、ステップ270で示されるように、2値がバイパスモードでコード化される。その後、ステップ280において、カウンター i が増え、プロセスはステップ240に戻って、次の2値を処理する。従って、図2のフローチャートは、コンテキストを用いて、0に等しいbinIdxを有する2値をコード化し、および、バイパスモードで、{1,2,3}中のbinIdxを有する2値をコード化する。
【0023】
図3は、本発明の具体例によるコンテキスト単純化を組み込んだシステムの他のフローチャートである。この例において、バイパスモードは、構文要素の2値 ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1に適用され、 ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1 は5ビットに2値化される。図3のフローチャートは、図2のフローチャートとほぼ同じであり、図2と同じステップの番号が付けられている。ステップ210で示されるように、構文要素 ref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1 が、可変 val で読み取られる。ステップ220にて、可変 val はN binsに2値化される(B[0], B[1],…B[N-1])。Nは5である。ステップ350において、カウンター i は整数 m (m=2)と比較される。i=0 又は 1である場合には、 B[i] は、コンテキストモードを用いて符号化される。{2,3,4}中のbinIdxを有する2値において、2値はバイパスモードで符号化される。
【0024】
図2図3は、それぞれ、本発明の具体例による構文要素merge_idxとref_idx_lc/ref_idx_l0/ref_idx_l1のコンテキストコード化単純化を示す図である。この例では、特定の構文要素とパラメータ(たとえば、2値の数量、バイパスモードを用いてコード化するのに選択される2値)が用いられているが、他の構文要素および/またはパラメータでも本発明を実行することができる。さらに、図2図3に示されるステップは並べ替えが出来、幾つかのステップを結合または分割して、本発明を実行することができる。
【0025】
上述の記述により、特定のアプリケーションのコンテキストとその要求に提供されるように、本発明を実行することができる。本発明は上記の実施形態で挙げた例に限らず、他の具体例にも適用できる。すなわち、本発明は、特定の具体例に限定することを目的としていない。
【0026】
上述の本発明の実施形態は、各種ハードウェア、ソフトウェアコードまたはそれらの組み合わせで実行される。たとえば、本発明は、画像圧縮チップに整合される回路または画像圧縮ソフトウェアに整合されるプログラムコードで、処理により実行できる。本発明は、また、デジタルシグナルプロセッサ (DSP)で実行されるプログラムコードで、記述された処理により実行できる。本発明は、また、コンピュータプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサまたはフィールドプログラマブルゲートアレイ (FPGA)により実行される多数の機能を含む。本発明によると、これらのプロセッサは、本発明により定義される特定の方法を定義するハードウェアで読み取り可能なソフトウェアコードやファームウェアコードを実行することにより、特定のタスクを実行するように設定される。ソフトウェアコードまたはファームウェアコードは、異なるプログラミング言語と異なるフォーマットやスタイルで展開される。ソフトウェアコードは、また、異なるターゲットプラットフォームにコンパイルされる。
【0027】
本発明では好ましい実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではない。
図1
図2
図3