【実施例1】
【0019】
図1に、本発明の生体光計測装置の装置構成の一例を示す。光を生体に入射し、生体内で散乱・吸収され伝播して出てきた光を検出する生体光計測装置において、装置本体20に含まれる1つまたは複数の光源101から照射される光30を、導波路40を介して、被検者10に入射させる。光30は、照射点12から被検者10内に入射し、被検者10内を透過、伝播した後は、照射点12とは離れた位置にある検出点13から導波路40を介して、1つまたは複数の光検出器102で検出される。SD距離は、前述のように照射点12と検出点13間の距離で定義される。
ここで、1つまたは複数の光源101は半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)等であり、1つまたは複数の光検出器はアバランシェフォトダイオード(APD)やフォトダイオード(PD)、光電子増倍管(PMT)等である。また、導波路40は光ファイバ、ガラス、ライトガイド等である。
光源101は、光源駆動部103により駆動され、1つまたは複数の光検出器102のゲインは制御・解析部106により制御される。制御・解析部106は、光源駆動部103の制御も行い、入力部107からの条件等の入力を受ける。
光検出器102で光電変換した電気信号は、増幅器104で増幅され、アナログ−デジタル変換器105でアナログ−デジタル変換され、制御・解析部106へ送られ、処理される。
【0020】
制御・解析部106では、光検出器102で検出された信号に基づき解析を実行する。具体的には、アナログ−デジタル変換器105で変換して得られたデジタル信号を入力し、当該デジタル信号をもとに、例えば非特許文献1に記載されている方法に基づいて、検出光量変化もしくは吸光度変化から、酸素化、脱酸素化ヘモグロビン濃度長変化(oxy−Hb、deoxy−Hb)を算出する。ここで、濃度長変化とは濃度と光路長の積の変化量である。
ここでは、制御・解析部106は光源101の駆動、光検出器102のゲイン制御、アナログ−デジタル変換器105からの信号処理を全て行うことを想定して記述したが、それぞれ別個の制御部を有し、さらにそれらを統合する手段を有することでも同機能を実現できる。
また、計測データおよびヘモグロビン濃度長変化算出結果は、記憶部108に保存され、解析結果および/または保存データに基づいて表示部109で計測結果を表示することが可能である。
【0021】
図2に示す送光器50、受光器60は、
図1には記載していないが、送光器50は、例えば光源101側の導波路40を含み、被検者10に接触あるいは接触に近い状態で設置され、受光器60は、例えば光検出器102側の導波路40を含み、被検者10に接触あるいは接触に近い状態で設置される。
【0022】
図2に、本発明の生体光計測装置により照射された光が生体組織内を伝播する状況について説明する。送光器50が1つ、受光器60が2つ、頭皮上に配置された例である。SD距離は15mm、30mmの2種類である。SD距離の違いにより、照射光の到達深度(penetration depth)が異なる。つまり、平均実効光路は、SD距離15mmで浅く、SD距離30mmで深くなる。このような配置のプローブ(以下、送光器50、受光器60を合わせてプローブと呼び、さらに、複数のSD距離を有するプローブを特に、マルチディスタンスプローブまたはマルチSDプローブと呼ぶ。)を用いることにより、深層信号から表層信号の影響を除去することが可能となる。
【0023】
図3に、典型的な頭部モデルにおけるSD距離と光子透過率との関係を示す。
図3に示すようにSD距離により光子透過率は指数関数的に変化する。生体計測時には、光検出器102が飽和せずに、かつ十分な信号対雑音比で検出可能な光量とする必要がある。さらに、計測される被検者、計測部位により、組織構造が異なるため、光の透過率は変化する。多くの被検者および部位に対して使用可能な装置とするために、本発明の生体光計測装置は、
図1に示す光減衰量調整手段14を有し、複数の前記光検出器102で検出される光量を所定の範囲内になるように光減衰量を調整する。
【0024】
図4に、被検者および光減衰量調整量表示を含めた本発明の実施の形態を示す。外部筺体に光源(半導体レーザ)、光検出器(フォトダイオード)を含む場合である。光源および検出器内臓回路202内の光源101が発した光30は光ファイバ403を通りプローブホルダ503に固定された送光器50より被検者10に対して照射される。被検者10内を伝播した光30は、プローブホルダ503に固定された受光器60から光ファイバ403を通り光源および検出器内臓回路202内の光検出器102で受光される。受光信号(検出光量)は電気信号201として装置本体20に送られ、図に示していない制御・解析部106において検出光量が所定の範囲内かどうかを判定し、光減衰量の調整量203(例えば、+1、−1、+2、0、等の相対値)を表示部109により表示する。+1等は、例えば10の1乗、+2は10の2乗を表し、光減衰量調整手段14において、これだけの調整量を自動または手動で操作し、光減衰量を調整可能とする。自動で光減衰量を調整する場合には、装置本体20から電気信号201を介して光減衰量調整手段14に制御信号を送る。手動で光減衰量を調整する場合には、オペレータは表示部109を見ながら、光減衰量調整手段14を手動で操作する。この構成により、プローブホルダ503を再度着脱することなく、高速に光減衰量を調整することができる。さらにオペレータおよび被検者への負担軽減の効果もある。ここでは相対値の表示について説明したが、絶対値の表示でも良い。さらに、部位に応じて、典型的な光減衰量設定値、もしくは当該被検者の過去の設定値等の所定の設定値を自動で設定、または手動で設定できるよう、表示部109で表示しても良い。 このように、光減衰量調整手段を用いることで、プローブの再着脱のみでは実現困難な大きな光減衰を容易に調整可能となり、計測時間、コストの低減につながるという効果がある。
【0025】
図5に、被検者および光減衰量調整量表示を含めた本発明の別の実施の形態を示す。外部筺体に光ファイバの中間コネクタを有する場合である。
図4では、光源および検出器内臓回路202内で光の生成、検出光の光電変換を行ったが、
図5の構成では、光減衰量調整手段14が装置本体側およびプローブホルダ側の光ファイバ403に挟まれるように、一方または両方の光ファイバ403の接合部に配置される。光減衰量調整手段14は送光ファイバ、受光ファイバのどちらに設置されても良い。光減衰量調整手段14は、光散乱、吸収、反射等の光学的作用により、光ファイバ403を伝播する光量を調整する。他の構成は
図4の場合と同様である。この構成により、既存装置の光ファイバに対し、独立したモジュールとして光減衰量調整手段14を付加することができる。
【0026】
次に、
図6を用いて
図4に対応する光減衰量調整手段14を、説明する。
図6に、光減衰量調整部と周囲のコンポーネントとの関連を示す。筺体204内において、光減衰量調整手段14は、同じ筺体204内に配置される半導体レーザ206またはフォトダイオード207等の光学素子と光ファイバ403との間に設置され、各々の素子に接続する光ファイバ403との間の接続損失を個別に調整する。ここでは、電磁的手段として、自動または手動で調整可能なピエゾアクチュエータもしくは圧電素子を備え、光ファイバ403間の端面位置関係を微小に変化させる。このように装置本体20とは異なる外部の筺体204に光学素子、および光減衰量調整手段14がまとめられることで、より被検者10に近い位置で、プローブ装着と同時に受光感度調整を行うことができ、計測を効率化できるという効果がある。なお、ここでは電磁的手段について説明したが、モータ、歯車、もしくはラック・ピニオン機構、油圧、空気圧等を用いた機械的手段でも良い。また、自動、手動のどちらの手段でもよい。
【0027】
図7に、光減衰量調整手段(手動調整つまみ)と表示部(発光ダイオードによる色表示)の具体例を示す。
図6の構成をより具体化したもので、光減衰量調整手段14は、手動調整つまみ205を有しており、さらに、表示部109として、調整量を色による表示208で示したものである。なお、色による表示208では、白黒もしくは所定の色の濃淡、つまみの方向を表す矢印の長さ等を表示してもよい。オペレータが操作する手動調整つまみ205が含まれる同じ筺体204に表示部109を有することで、本構成の生体光計測装置は、操作方法が単純化されオペレータの操作時のミスを防ぐ効果がある。さらに、操作結果を早急にオペレータに知らせることができるため、計測を効率化する効果がある。
【0028】
図8に、光減衰量調整手段の一例として、複数の挿入口を持つ光ファイバ接続用の中間コネクタの構造を示す。中間コネクタ209は、2本の光ファイバ403を光学的に結合するために用いられ、光ファイバ挿入口(減衰量が小さい)210、光ファイバ挿入口(減衰量が中程度)211、光ファイバ挿入口(減衰量が大きい)212をそれぞれ2つずつ、対面させて備えており、両側に光ファイバ403を1本ずつ挿入することで、光ファイバ端面間の距離および位置関係を変化させ、当該光ファイバ403における光減衰量を調整することが可能となる。この構成により、手動で容易に光減衰量を調整可能となる。中間コネクタの各挿入口の種類を増やすことで、より広い範囲で光減衰量を調整することも可能となる。
【0029】
図9に、光減衰量調整手段の他の一例として、段階的に挿入できる中間コネクタの構造を示す。中間コネクタ209は、挿入深さ調整部213を有し、光ファイバ403間の端面間距離を数段階で調整可能である。ここでは、段階的に光ファイバ403を挿入する代わりに、ネジ状構造を設けて回転させながら連続的に端面間距離を調整する方法でもよい。この構成により、より小型の装置で光減衰量の調整が可能となる。
【0030】
図10に、光減衰量調整手段の他の一例として、穴サイズにより光減衰量を調整する機構を示す。
図10の中間コネクタ209は、挿入口214を有する。導波孔(減衰量が大きい)216、導波孔(減衰量が中程度)217、導波孔(減衰量が小さい)218を有する媒体もしくは金属部材を挿入口214より挿入し、光ファイバ403を伝播する光の導波路上に穴の径の異なる導波孔を配置することで、光減衰量を制御する。この操作は自動でも手動でもよい。
【0031】
図11に、光減衰量調整手段の他の一例として、媒質により光減衰量を調整する機構を示す。
図11の中間コネクタ209には、
図10における孔を有する媒体の代わりに、吸収または散乱媒体215を挿入する。吸収または散乱媒体215は複数準備しておき、実現したい光減衰量に相当するものを使用する。この操作は自動でも手動でもよい。ここでの媒体としては、エポキシ樹脂に、染料等の吸収物質および酸化チタン等の散乱物質を混合したもので良く、同一部材内の所定の面上における位置により光学特性が滑らかに変化する様、各物質濃度のグラデーションのある媒体としても良い。吸収物質および散乱物質の濃度を調整することで、光減衰量を調整可能である。さらに、ここでの媒体の代わりに、電磁的に調整可能で、光の透過率を変えられる液晶画面、またはエレクトロクロミック材料からなる調光ガラス及び調光フィルムを光路上に設置し、各画素のON/OFFを切り替えて適当な大きさおよび形状の模様を作ることで、光透過度を調整してもよい。さらに、熱もしくは温度で透過率を制御できるサーモクロミック材料を、温度制御手段と共に用いてもよい。
【0032】
これら
図10、11の構成により、広い範囲で任意の光減衰量を実現することができ、被検者、計測部位によらずに安定した受光感度が得られるという効果がある。
図12に、検出光量または調整量を表示するフローチャートを示す。
図12のフローチャートを参照しながら、実施例1に従った調整量表示手順を説明する。まず、プローブを被検者10に装着する(ステップS101)。次に、レーザを照射し検出光量を計測する(ステップS102)。検出光量が所定の光量(例えば、A/D変換後に0.1-2 V)の範囲内かを判定する(ステップS103)。検出光量が0.1-2 Vの範囲内と判定された場合(YES)には、検出光量が適正であるため、表示部において、「正常」と表示する(ステップS104)。ステップS103において、検出光量が0.1 V未満か2 Vより大きい場合(NO)、検出光量が適正でないため、さらに閾値(例えば、2 V)より大きいかを判定する(ステップS105)。検出光量が2 Vより大きいと判定された場合(YES)には、検出光量を小さくする必要があるため、それを示すために「大きい」と表示する(ステップS106)。検出光量が2 V以下であると判定された場合(NO)、ステップS103での判定と合わせて検出光量は0.1 V未満であるから、検出光量を大きくする必要があり、それを示すために「小さい」と表示する(ステップS107)。これらの表示では、ステップS103およびS105の判定結果を、色の違いで表示してもよい。さらには、どれだけ大きいか、または小さいかを、段階的に数値(例えば、+1、+3、−2等)および色の違いで表示してもよい。さらに、これらは光減衰量調整手段による調整量として表示してもよい。
【0033】
本実施例によれば、近赤外分光技術(Near−infrared spectroscopy: NIRS)に基づき、生体組織の表層および深層における光吸収変化を分離するために複数の照射−検出器間距離を有するマルチディスタンスプローブを用いた生体光計測装置において、送光または受光する光の減衰量を調整することで、受光感度を各被検者・各部位で安定化することができる。特に、光源1個に対して光検出器を2個用いる計測や、光検出器1個に対して光源を2個用いる計測や、両者が混在した計測の場合のような、複数のSD距離の計測点が混在する際に、各計測点間での干渉を防いで受光感度を安定化することができる。このように共通の光源または光検出器を用いて、SD距離の異なる複数の計測点を用いて計測するときに、共通して用いられる光源のパワー調整や光検出器のゲイン調整では、マルチSD計測で生じる大きい信号振幅比に対応することは困難であるが、本実施例では、各光源および各光検出器の導波路における光減衰量を、自動で、もしくはオペレータが手動で調整可能となり、効率的な信号取得が実現できる。
【実施例2】
【0034】
次に、制御・解析部106で行う、マルチSD計測データを用いた脳寄与率算出方法について説明する。特許文献3においては、信号振幅もしくは信号分離手法により得られた成分の重みのSD距離依存性を利用した、脳および皮膚由来信号の分離手法について記載されている。
図13に、 モンテカルロシミュレーションにより求めた、(a) SD距離と、頭皮および灰白質の部分平均光路長、(b) SD距離と、頭骨、脳脊髄液層(CSF)の部分平均光路長および総光路長との関係をそれぞれ示す。横軸はSD距離(mm)、縦軸は光路長(mm)である。NIRS計測においては、SD距離は照射光の到達深度に影響するため、SD距離を変えることで、対象とする生体組織深度を変えることができる。マルチSD計測では、各SD距離で、浅部および深部信号が、異なる重みで得られることから、複数点でデータ取得することで、信号分離手法により、各層由来の信号の寄与を算出可能となる。具体的には、頭皮の部分光路長には強いSD距離依存性は見られないが、灰白質には線形的なSD距離依存性が見られる。この方法は、NIRS信号強度は血流変化が生じる部位の部分光路長に比例する(例えば、非特許文献1参照)という原理に基づき、SD距離が大きくなると、NIRS計測信号における脳由来成分は大きくなるが、皮膚由来成分は変化しないことが予想される。
【0035】
図14に、3種類のSD距離における計測データから灰白質到達最小SD距離を推定する方法を幾何的に示す。この分離手法の適用には、マルチSD計測データが必要であり、このような計測においても、実施例1で説明した光減衰量調整手段により、安定した信号を得ることが可能となる。計測データを用いた解析時において、SD距離8mm以下の計測点1点、SD距離12mm以上の計測点2点において計測されたNIRSデータに独立成分分析を適用し、得られた独立成分の重み601をSD距離に対してプロットする。このとき、信号分離手法を用いずに、所定の認知課題遂行中のNIRS信号の振幅等、代表的な振幅をプロットしても良い。
図13(a)に示す平均実効光路長のモデルを仮定し、近似的にSD距離約8 mm以降で皮膚の平均実効光路長は一定値、SD距離約10 mm以降で灰白質の平均実効光路長は1次関数的に変化すると仮定する。さらに、各分離成分が灰白質(脳)と皮膚(頭皮)における血流変化の両方の影響を受けている(混合成分)と仮定すれば、得られる信号の振幅は、両層の光路長に、各層の濃度変化で重みづけされた重ね合わせで表されるため、SD距離約8 mmから約10 mmまで一定値で、約10 mm(灰白質到達最小SD距離603)以降は線形的に増加することが期待される。このような、混合成分のSD距離依存性に対する定性的な特徴を利用し、計測データから灰白質到達最小SD距離603を推定する手法を以下に説明する。
【0036】
まず、
図14において、SD距離8mm以下の計測点については傾き0の直線(x軸に平行な直線、L2)607を引き、SD距離12mm以上の計測点に1次直線(L1)606をあてはめ、それらの2直線の交点のx座標がX s
gray(灰白質到達最小SD距離603)となる。この灰白質到達最小SD距離603をx軸上で通り、傾きが前記1次直線606と同じ直線は、灰白質平均実効光路長に比例する直線604であり、前記1次直線606と直線604の振幅比から、各SD距離での脳寄与率を算出できる。このとき、使用するSD距離は1点が8mm以下、2点が12mm以上であるが、1点が10mm未満、2点を10mm以上から選択してもほぼ同様の解析が可能である。ただし、灰白質到達最小SD距離603が標準的なヒトの場合に10mm前後のため、より一般的に述べれば、1点を、光が灰白質に到達しないSD距離から、2点を、光が灰白質に到達するSD距離から選択する必要がある。ここで設定される不使用SD距離帯605は、
図13(a)において灰白質の平均実効光路長が0 mmに近く、皮膚の平均実効光路長の変化が小さい、例えば8〜12mmが設定されるが、脳寄与率算出時の精度に関連する重要なパラメータとなるため、より正確な幅を決定するには、各被検者のMRI構造データ、もしくはX 線CT(コンピュータ断層撮影、Computed tomography)データ等を利用することが重要となる。
【0037】
ここで述べた構成により、従来法では灰白質到達最小SD距離603を仮定する必要があったところが、実測より被検者毎、部位毎に推定できるようになり、より高精度な脳寄与率算出が期待できる。なお、ここでは信号分離手法として、独立成分分析を用いる方法を説明したが、主成分分析、因子分析等の方法でも良い。また、信号分離手法も用いなくても、検出光量またはヘモグロビン変化の代表振幅を用いる方法でも良い。
【0038】
図15に、3種類のSD距離における計測データから推定される灰白質到達最小SD距離Xs
grayを用いて、NIRS信号の脳寄与率を算出するフローチャートを示す。SD12 mm程度以上の重み値を用いて直線(L1)を計算し、x切片をX sとする(ステップS201)。次に、SD8 mm程度以下の重み値を用いてx軸に平行な直線(L2)を計算する(ステップS202)。次に、L1、L2の交点のx座標をX s
grayとする(ステップS203)。最後に、X sとX s
grayから、当該成分の脳寄与率を算出する(ステップS204)。脳寄与率(r)算出時には、例えば、非特許文献2に記載されているように、
r = (x − X s
gray)/(x − X s)
の式を用いる。これは、前記1次直線606と直線604の振幅比を式で表したものである。
【0039】
本発明における光減衰量調整手段14を効果的に適用可能である、マルチSD計測を実現するための具体的なプローブ配置の例を以下に図を用いて説明する。なお、プローブ配置はここに示したものに限らず、複数のSD距離で計測可能であれば良く、ユーザの目的に応じてあらゆるプローブ配置が考えられる。
【0040】
図16に、2×11配置をベースとし、SD距離5、15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)計測点配置を示す。
【0041】
図17に、2×11配置をベースとし、SD距離15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)計測点配置を示す。
【0042】
図18、
図19、
図20に、2×8配置をベースとし、SD距離15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)計測点配置を示す。できるだけ、各SD距離の計測点が空間的に均一に分布するように考慮した配置である。
【0043】
図21に、SD距離30 mmの光源、検出器のペアを、菱形の頂点上(もしくは水平線に対して45度傾いた正方形の頂点上)に配置し、さらに横一列に同形の菱形が接するようにプローブを並べて配置してSD距離15 mm、30 mmの計測点をそれぞれ24、12点計測するときの(a)プローブ配置、(b)計測点配置を示す。
図21の配置は、
図16〜
図20の配置に比べて、計測領域は狭くなるが、SD距離30 mmの各計測点に2個ずつSD距離15 mmの計測点があり、さらにその計測点間距離が全て7.5 mmと近くなっている。よって狭範囲の計測に適している。
【0044】
図22に、SD距離30 mmの光源、検出器のペアを、菱形の頂点上(もしくは水平線に対して45度傾いた正方形の頂点上)に配置し、さらに横一列に同形の菱形が接するようにプローブを並べて配置してSD距離15 mm、30 mmの計測点をそれぞれ20、16点計測するときの(a)プローブ配置、(b)計測点配置を示す。
【0045】
図23に、3×5配置をベースとし、SD距離5、15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)計測点配置を示す。
【0046】
図24に、4×4配置をベースとし、SD距離5、15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)計測点配置を示す。
【0047】
図16〜
図24において、各々の送光器―受光器で計測される領域において、SD距離30 mmの計測点507と、SD距離15 mmの計測点508と、SD距離5 mmの計測点509とができるだけ均等に配置されるよう、送光用プローブ501、受光用プローブ502、送光用プローブと受光用プローブの一体型プローブ504が配置されている。各々の計測部位において、所定の範囲を有する領域を計測単位と定義して、計測単位内の各SD距離のデータを同時に用いて解析するため、計測単位内では、できるだけ近い位置に各SD距離の計測点を配置するのが良い。この場合、あるSD距離(例えば、30mm)を優先SD距離と定め、当該SD距離に対応する送光器50、受光器60で計測される領域または代表される位置(例えば、送光器50と受光器60の、被検体10表面における中点位置、これを優先計測点と呼ぶ)からの距離が、所定範囲内(例えば、20mm以内)に他のSD距離の計測点(従属計測点と呼ぶ)が配置されるように送光用プローブ501、受光用プローブ502の配置を決定する。ここでの所定範囲は、同一範囲を計測している計測点で解析するのが望ましいので、できるだけ小さい(つまり、優先計測点と従属計測点の距離が小さい)方が望ましい。しかし、装置のプローブ数の制約等のため、離れて配置せざるを得ない場合も考えられ、その場合には、40mm以内等に設定する。
図16〜
図24では、異なるSD距離の計測点間距離の最大値は、それぞれ33.5 mm、30.1 mm、17 mm、16.8 mm、15 mm、7.5 mm、19 mm、15.81 mm、15.81 mmである。また、
図16でSD距離5 mm、15 mm、30 mmでの計測点数はそれぞれ5、12、31点、
図23でそれぞれ8、54、22点、
図24で8、60、24点である。
図17でSD距離15 mm、30 mmでの計測点数はそれぞれ16、31点、
図18でそれぞれ31、22点、
図19でそれぞれ24、22点、
図21でそれぞれ24、12点、
図22でそれぞれ20、16点、
図23でそれぞれ8、54、22点、
図24でそれぞれ8、60、24点である。
図20では15 mm、30 mmでの計測点数とSD距離16.8 mmの計測点510の数がそれぞれ12、22、8点である。
【0048】
なお、SD距離15 mm、30 mmのみのプローブ配置の場合でも、例えば検出器を1個追加して、5 mmの計測点を1点追加する構成にしても良い。このSD距離5 mmの計測点は、脳、皮膚由来信号分離後に、分離性能の評価に用いることができる。また、皮膚血流が対象となる計測範囲で一様と仮定したときに、SD距離5 mmの計測点を参照信号として利用して、皮膚血流成分を分離する解析に用いることができる。
【0049】
入力部107で、光照射手段と光検出手段の位置関係を入力し、解析部106は、入力された光照射手段と光検出手段の位置関係から、優先計測点と従属計測点の組み合わせを算出する。そして、表示部109は、同一計測単位内の優先計測点と従属計測点の組み合わせを表等にして表示し、さらに、1つまたは複数の優先計測点と1つまたは複数の従属計測点からなる計測単位をデータセットとして、各データセットでの解析結果を表示する。これにより、計測単位の範囲の妥当性判断や、優先計測点と従属計測点との間の距離の妥当性の判断に役立つとともに、深部信号の寄与率算出から、被検者10の構造的特徴を取得することができるという効果がある。
【0050】
以下に、SD距離15、30 mmの計測点間の距離を小さくすることを目的とした各種プローブ配置の例を示す。
図25に、SD距離15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)SD距離30 mmの計測点配置、(c)SD距離15 mmの計測点配置を示す(配置A)。
図26に、SD距離15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)SD距離30 mmの計測点配置、(c)SD距離15 mmの計測点配置を示す(配置B)。
図27に、SD距離15、30 mmを計測するときの(a)プローブ配置、(b)SD距離30 mmの計測点配置、(c)SD距離15 mmの計測点配置を示す(配置C)。
図28に、SD距離7.5、15、30 mmを計測するときの、(a)プローブ配置、(b)各計測単位における各SD距離の計測点個数の表を示す。
なお、
図25〜
図28において、符号501は送光用プローブを、符号502は受光用プローブを、符号505は送光用プローブ(減衰:大)を、符号506は受光用プローブ(減衰:大)を示す。また、符号507はSD距離30mmの計測点を、符号508はSD距離15mmの計測点を示す。
【0051】
図25〜
図28において、異なるSD距離の計測点間距離の最大値は、それぞれ7.5 mm、5 mm、15 mm、11 mmとなっている。
図28では特に、各計測単位(ch)において、7. 5、15、30 mmの各SDの計測点が最低1個含まれる配置となっており、脳寄与率算出等の目的には有用である。
図16から
図28に示したプローブ配置は、システムが有するプローブ数、対象となる生体の領域、適用する解析手法によって適切に選択する必要がある。例えば、光脳機能計測の場合には、脳血流および皮膚血流の影響が広域性を有するものであれば、異なるSD距離の計測点間距離の最大値は大きくても良く、脳血流および皮膚血流の変化が局在性を有するものであれば、異なるSD距離の計測点間距離の最大値は、活動領域の期待される大きさより小さくすることが望ましい。
【0052】
図29に、表示の例として、各計測点およびSD距離における検出光量結果を示す。上側にSD距離30 mmの計測点における自動ゲイン設定結果139、下側にSD距離15 mmの計測点における自動ゲイン設定結果140が示されている。表示法は凡例135に示す通りである。計測位置のセルを黒く塗りつぶした表示とした、検出光量が強いことを示す表示136、計測位置のセルを灰色に塗りつぶし、中に丸(○)表示をした、検出光量が適正であることを示す表示137、計測位置のセルを白く塗りつぶした表示とした、検出光量が弱いことを示す表示138を用いた。検出光量の結果は、プローブの装着状態に大きく依存するため、一部の計測点で検出光量が小さくなったときには光減衰量調整手段14を用いることで、改善が可能となる。その場合には、光減衰量を変更した後に、ゲイン調整の再試行ボタン134を押下することで、再度検出器ゲインを調整することが可能となる。