(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本発明は、中耳及び耳管内の標的組織領域にアクセスし、それらを診断及び治療するための方法及びシステムで使用される拡開カテーテルに関する。
【0003】
図1及び2を参照すると、耳10は、外耳12、中耳14、及び内耳16の3つの部分に分けられる。外耳12は、音を集め、その音を耳道20の内側端24に位置する鼓膜22(鼓膜(eardrum)とも称される)に向かわせる、耳介18及び耳道20からなる。中耳14は、外耳12と内耳16との間に位置し、耳10と洞との間の均圧弁の役割を果たす耳管26によって咽喉の奥へつながる。耳管26は、咽喉32の鼻咽頭部30における遠位開口部28で終わる。鼓膜22に加え、中耳14はまた、3つの小さい耳骨(小骨)、槌骨(ツチ骨)34、砧骨(キヌタ骨)36、及び鐙骨(アブミ骨)38からなる。これらの骨34〜38は、音の振動を内耳16へ伝導し、それによって外耳12の耳道20内の音の振動を内耳16内の流体波へと転換する、変換器として働く。これらの流体波はいくつかの神経終末40を刺激し、該神経終末は音エネルギーをそれが解釈される脳へと伝導する。
【0004】
耳管26は、内耳14と、鼻の奥にある口蓋の真上の上咽頭部分である鼻咽頭30とをつなぐ、3.81cm(1.5インチ)の狭く長い経路である。耳管26は、通常は空気で満たされている中耳14に対する均圧弁として機能する。適切に機能すると、耳管26は、嚥下や欠伸に応じて周期的に(約3分毎に1回)何分の1秒かの間、開く。そうすることによって、空気が中耳14の中へ進入することが可能になり、中耳内層(粘膜)によって吸収されていた空気を入れ替え、又は高度変化時に起こる圧変化を均一にする。耳管26のこの周期的な開閉を妨げるあらゆるものが、難聴又は耳の他の症状をもたらす可能性がある。
【0005】
耳管26の閉塞又は閉鎖は、中耳内の負圧14をもたらし、鼓膜22の退縮(吸い込み)を伴う。成人の場合、これは通常、なんらかの耳の不快感、閉鎖感、又は圧力感を伴い、軽度の難聴及び耳鳴り(耳鳴)をもたらすことがある。子どもの場合は、症状がないこともある。閉塞が長引くと、中耳14の粘膜から体液が出て、漿液性中耳炎と称される疾病(中耳内の滲出液)を形成することがある。これは、子どもでは上気道感染に関連して頻繁に起こり、この疾病に関連する難聴の主な原因となる。
【0006】
中耳14及び耳管26の内膜(粘膜)は、鼻42、洞44、及び咽喉32の膜につながっており、またその膜と同じである。これらの領域の感染は、粘膜の腫れをもたらし、耳管26の閉塞をもたらすことがある。これは、漿液性中耳炎と称され、すなわち、本質的には急性又は慢性で起こりうる中耳14内の液体の貯留であり、通常は中耳14内に液体を蓄積させる耳管26の遠位開口部28の閉鎖の結果である。細菌が存在する場合、この液体は感染することがあり、急性化膿性中耳炎(中耳の感染又は膿瘍)につながる。感染が進行しなければ、液体は耳管26が再び正常に機能し始めるまで留まり、その後、液体は吸収されるか、又は耳管開口部28を通り咽喉32へと管を流れ落ちる。
【0007】
慢性漿液性中耳炎は、長期の耳管閉鎖の結果として、又は、液体が濃く吸収又は耳管26を流れ落ちることができないために、起こりうる。この慢性疾患は通常、難聴と関連する。これは反復性の耳痛である場合があり、特に患者が風邪を引いたときに起こる。幸い、漿液性中耳炎は、中耳構造にいかなる永久的な損傷も生み出すことなく何年も続くことがある。しかしながら、この中耳14内の液体の存在は、再発性急性感染にかかりやすくする。これらの再発性感染は、中耳損傷をもたらすことがある。
【0008】
耳管26が蓄積された液体を含むと、様々なことが起こる。まず、身体が中耳14から空気を吸い込み、内膜及び鼓膜22を内側へ引く傾向にある真空状態を引き起こす。次に人体は、その真空を、痛みを軽減しやすいより多くの液体と置き換えるが、患者は耳10内に閉鎖感を経験することがある。抗ヒスタミン剤及び鬱血除去剤によるこの疾病の治療は、完全に効果を得るまで何週間かを要することがある。最後に、液体が感染することがあり、疼痛を伴い、患者は具合が悪く感じ、また患者はよく聴こえなくなることもある。仮に内耳14が罹患すると、患者は回転又は旋廻する感覚(目眩)を感じることがある。感染は、典型的には抗生物質で治療される。
【0009】
しかしながら、抗ヒスタミン剤、鬱血除去剤、及び抗生物質を使用して感染又は中耳14内の液体蓄積の他の原因を治療したとしても、これらの治療は典型的には、中耳14内の液体蓄積によって引き起こされる疼痛及び不快感を即座には消散させない。すなわち、患者は液体が耳管26から除去されることができたとき、最も即座に症状の緩和を感じる。
【0010】
中耳感染の抗生物質治療は、典型的には3又は4週間以内で正常な中耳機能をもたらす。治療期間中、患者は、様々な程度の耳圧、ポンという音、クリック音、及び聴覚の揺らぎ、また時には耳内の刺痛を経験しうる。感染が治癒しても、患者には時に、中耳14内に感染していない液体が残り、耳管26内に局在することがある。
【0011】
これらの種類の感染によって引き起こされる液体蓄積は、これまでは外科的に治療されてきた。慢性漿液性中耳炎の外科治療の主要目的は、中耳の通気を回復させ、聴覚を正常な水準に保ち、また鼓膜及び中耳骨を損傷する可能性のある再発性感染を防ぐことである。
【0012】
例えば、
図3に示すように、中耳14内の液体を放出するために鼓膜切開術が実施されうる。鼓膜切開術は、中耳14内の液体を除去するために実施される、鼓膜22の切開42である。通気管と称される中空プラスチック管44が挿入され、切開部42が治癒するのを防ぎ、中耳14の通気を確立するために、切開部42に挟み込まれる。通気管44は、中耳14内の均圧化において、一時的に耳管26の代わりとなる。通気管44は通常、耳管26の閉鎖が治まるまで3〜9ヶ月間、定位置に留まる。管44が取り外されると鼓膜22は治癒し、その後、耳管26は正常な均圧機能を再開する。
【0013】
中耳14内の圧力を解放する別の方法が
図4に示され、皮下注射針46が鼓膜22を貫通して入れられ、それを通過して、蓄積した液体が、典型的には耳管26の上部のみから引き出されうる。
【0014】
図3及び4の方法は、中耳内の液体貯留及び圧増加を緩和するために鼓膜22を裂傷させることを含む。これらの方法のどちらも、時として鼓膜22に永久的な穴が作成されることに加え、しばしばその下端28が閉鎖され液体によって堰きとめられるため、耳管26内の液体の全てを除去するのに特に有効ではない。
【0015】
図3及び4の上述の外科治療に関連し、蓄積された圧及び液体貯留を放出するために、
図5に示すような耳管26の膨張も採用される。皮下注射器46(可撓性先端48と共に示される)が、その先端48が咽喉32の鼻咽頭部30内の耳管26の遠位開口部28に隣接して位置付けられるまで、鼻孔又は口の中へと挿入される。注射器46によって先端48を通して閉塞した耳管26の中へ、すなわち中耳14の中へと空気が送り込まれ、詰りを緩和し、中耳の通気を回復させるのを助ける。この手技は、しばしばポリツェル法と称される。ポリツェル法は、(
図6に示すように)一方の鼻孔をつまんで塞ぎ、同時に患者が嚥下すると、最も効果がある。これは、耳管26及び中耳14内へと空気を強制的に進める。この技術は、耳管26を開くためには良いが、蓄積した液体は取り除かない。
【0016】
中耳14の詰りを(少なくとも一時的に)取り除く別の方法は「バルサルバ」法と称され、鼻をつまんだ状態で空気を中耳14の中へ強制的に送り込むことによって達成され、しばしば耳抜きと呼ばれる。この方法も、耳管26を開くためには良いが、これも蓄積した液体を一掃しはしない。
【0017】
中耳及び耳管に関連する典型的な疾患は、鼓膜穿孔、鼓室硬化、砧骨侵食、中耳炎、真珠腫、乳様突起炎、耳管開放症、及び伝音難聴を含む。これらの疾患のいくつかを治療するために、耳の手術が実施される。最も多い外科手術は顕微手術であり、顕微鏡を操作して実施される。耳の手術の種類は、鐙骨切除術、鼓室形成術、鼓膜切開術、及び耳チューブ手術を含む。
【0018】
最も単純な耳手術のうちの1つは、鼓膜切開術、又は鼓膜の切開である。しかしながら、耳の手術はまた、中耳洞を可視化するために鼓膜の除去を必要とすることがある。外科医はしばしば、切開部を耳道の皮膚に作り、鼓膜を完全な単一体として除去することによって、膜の一体性を保持しようとする。別の方法としては、乳様突起を介して中耳へのアクセスが達成される。この方法は、耳の後ろから中耳洞へ接近し、乳様蜂巣を貫き中耳まで穴を開ける。外耳道と乳様突起との間の骨性隔壁が除去されるかどうかは、病気の度合いによる。外耳道後壁削除とは、この骨性隔壁の除去をさす。外耳道後壁保存とは、この骨性隔壁を無傷に保つことをさす。修正された中耳根本手術という用語は、この骨性隔壁を除去し、鼓膜及び小骨を再構成する手術をさす。中耳根本手術は、この骨性隔壁を除去し、大型の真珠腫嚢の内部を安全に洗浄しうるように、鼓膜、槌骨、及び砧骨を永久的に除去する。この手術は、真珠腫が広範囲であるとき、又は内耳又は顔面神経に付着しているときに行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
中耳及び耳管の苦痛は非常に一般的かつ深刻な医学的問題であり、何百人もの患者を苦しめ、疼痛、不快感、及び難聴又は永久的な耳の損傷までも引き起こす。多数の治療法が開発されているが、上述のようにそのいずれにも欠点がある。したがって、中耳及び耳管内の標的組織領域にアクセスし、それらを診断及び治療するための改善された方法及びシステムが必要とされる。そのような方法及びシステムは、侵襲性が最小であり、健康な耳組織を損傷する危険性がほとんどないことが理想的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の実施形態は、中耳及び耳管内の標的組織領域にアクセスし、それらを診断及び治療するための方法及びシステムに関する。
【0021】
1つの実施形態において、本発明は、患者の耳管にアクセスするための方法を提供する。本方法は、30〜90度の角度を有する屈曲を伴う遠位端を有するガイドカテーテルを患者の鼻腔の中へ挿入することと、ガイドカテーテルを鼻咽頭内の耳管の開口部に向かって鼻腔内で前進させ、その遠位端を耳管開口部に隣接して定置させることと、を含む。
【0022】
1つの態様において、本方法はまた、診断用デバイスをガイドカテーテルを通して前進させ、診断用デバイスの遠位端を耳管開口部に隣接して定置させることを含んでもよい。診断用デバイスは、カテーテル又は内視鏡であってもよい。
【0023】
別の態様では、本方法は、診断用プローブを耳管内へ導入し、耳管機能を直接評価することを含んでもよい。診断用プローブは、可撓性で、かつ耳管に適合性のある材料で作製されてもよい。診断用プローブは、ガイドワイヤに設置された圧力変換器であってもよい。本方法はまた、患者が嚥下しているときの耳管内の圧をモニタリングし、そのモニタリングを用いて患者の耳管の開放機能を評価することを含んでもよい。
【0024】
1つの態様において、本方法はまた、診断用プローブが耳管の中へ定置された後にガイドカテーテルを除去することを含んでもよい。
【0025】
1つの態様において、診断用プローブは超音波プローブを含んでもよい。
【0026】
別の態様において、本方法はまた、治療用デバイスをガイドカテーテルを通して耳管に向かって前進させ、治療用デバイスの遠位端を耳管開口部に隣接して定置させることを含んでもよい。治療用デバイスは、遠位放射線不透過性部材を備えてもよい。治療用デバイスは、カテーテルを備えてもよい。診療用デバイスはまた、流体を患者の耳の中耳洞へ導入するための流体導入デバイスを備えてもよい。本方法はまた、超音波デバイスを使用して中耳洞を走査することを含んでもよい。流体は、空気、造影剤、吸引流体、又は薬物であってもよい。
【0027】
別の態様において、治療用デバイスは、中耳洞から物質を吸引するための吸引デバイスを備えてもよい。
【0028】
別の態様において、本方法はまた、耳管に近接する安全装置を導入し、安全装置を用いて治療用デバイスの前進をモニタリングすることを含んでもよい。1つの態様において、安全装置は、治療用デバイスの位置を前進している間に感知するための、鼓膜に近接して位置付けられたセンサを備えてもよい。安全装置は、前進を可視化するための内視鏡を備えてもよい。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管機能を間接に評価するための方法を提供する。本方法は、エネルギー放射器を耳管に隣接して鼻咽頭内に位置付けること、エネルギー受容器を外耳道を介し鼓膜に隣接して位置付けること、放射器から受容器へエネルギーを向かわせること、放射器からのエネルギーを表す放射器信号を生成すること、放射器によって受容されるエネルギーを表す受容器信号を生成すること、放射器信号と受容器信号との間の比較を形成すること、及び、該比較を用いて嚥下中の耳管の機能を間接に評価することを含んでもよい。
【0030】
1つの態様において、間接的に評価することは、耳管の物理的特性を推定することを含んでもよい。
【0031】
1つの態様において、エネルギー放射器は、圧力波又は電磁エネルギーの形態であるエネルギーを放射してもよい。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を治療するための方法を提供する。本方法は、患者の鼻咽頭を介して患者の耳管の中へガイドワイヤを定置すること、ガイドワイヤに沿って患者の耳管の中へ減量用デバイスを導入すること、及び耳管の一側面に沿った表面から肥大性粘膜(hypertropic mucosa)を含む浮腫状組織を除去することを含んでもよい。
【0033】
1つの態様において、ガイドワイヤは目印を含んでもよく、本方法はまた、耳管の中へ導入することに関連してフィードバックを提供することを含んでもよい。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を治療するための方法を提供する。本方法は、ガイドワイヤを、患者の鼻咽頭を介して軟骨と耳管の粘膜表面との間の粘膜下に導入すること、ガイドワイヤに沿って、減量用デバイスを軟骨と粘膜表面との間の耳管の粘膜下組織へと導入すること、及び、粘膜下組織のいくつかを除去することと、を含んでもよい。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管の筋肉の不全又は解剖学的疾患を治療するための方法を提供する。本方法は、口蓋帆張筋(tensor villi palatine muscle)又は口蓋帆挙筋(levator villi palatine muscle)のうちの少なくとも1つに外傷を作成し、外傷の吸収の際に筋肉の硬化を引き起こすことを含んでもよい。
【0036】
1つの態様において、硬化は、口蓋帆張筋又は口蓋帆挙筋を短縮又は伸長することを含んでもよい。
【0037】
別の態様において、外傷を作成することは、機械療法、レーザー治療、高周波治療、及び化学療法を含む群から治療を適用することを含んでもよい。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を治療するための方法を提供する。本方法は、耳管の領域内での設置のための遠位延伸部を有する二重ルーメン均圧チューブを、患者の鼓膜を通して定置すること、該遠位延伸部と流体連通する二重ルーメンチューブの第1のルーメンを通して、耳管の領域に薬剤を提供すること、及び二重ルーメンチューブの第2のルーメンを通して鼓膜を通過して通気を提供することと、を含んでもよい。
【0039】
1つの態様において、薬剤は、耳管領域内の浮腫を減少させるように構成されてもよい。薬剤は、耳管の粘膜層の表面張力を変化させ、薬剤で粘膜表面の湿潤の促進をもたらすように構成される、界面活性剤を含みうる。
【0040】
1つの態様において、薬剤は、薬剤の持続放出もたらすように、耳管粘膜組織による捕捉のために構成される、粒子を含んでもよい。
【0041】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を治療するための装置を提供する。装置は、患者の鼓膜の中へ挿入するための二重ルーメンチューブであって、耳管の領域内での定置のための遠位延伸部、該延伸部を通して耳管の領域へ薬剤を提供するための第1のルーメン、及び鼓膜を通過して通気を提供するための第2のルーメンを有する、ルーメンチューブを含んでもよい。
【0042】
1つの態様において、第1のルーメンは、第2のルーメン内に配置されてもよい。別の態様において、第2のルーメンは、第1のルーメン内に配置されてもよい。また別の態様において、第1のルーメンは、第2のルーメンに隣接して配置されてもよい。
【0043】
別の態様において、二重ルーメンチューブは、生分解性の生体吸収性材料で作られてもよい。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を治療するための方法を提供する。本方法は、ルーメンを有するガイドを使用して鼻咽頭を介して耳管領域にアクセスすること、該ガイドのルーメンを通してガイドワイヤを導入し、軟骨と耳管の粘膜表面との間の粘膜下にガイドワイヤを位置付けること、薬物送達リザーバを有する一時的な管腔内インプラントをガイドワイヤに沿って通過させ、該インプラントを、ルーメンと軟骨との間の耳管領域の後部クッションにおける粘膜下に位置付けること、及び、該薬物送達リザーバから耳管領域へ薬物を送達することと、を含んでもよい。
【0045】
1つの態様において、本方法はまた、薬物送達リザーバから、咽頭扁桃腺と耳管領域とへ同時に薬物を送達することを含んでもよい。
【0046】
1つの態様において、薬物送達リザーバは、インプラント上に配置されるコーティング層を含んでもよい。
【0047】
別の態様において、ガイドは、生分解性の生体吸収性材料で作られてもよい。
【0048】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を治療するための方法を提供する。本方法は、鼻咽頭を介して耳管領域へのアクセスを獲得すること、該耳管領域の中へ到達するように寸法決めされた中空ガイドワイヤであって、その遠位端部又は遠位端部の近くに配置される複数の開口を含む、中空ガイドワイヤを、患者の鼻咽頭を介して導入すること、及び、該開口を通して、患者の耳の耳管又は中耳領域のうちの少なくとも1つに薬物を送達することと、を含んでもよい。
【0049】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管にアクセスするためのシステムを提供する。本システムは、カテーテルの遠位端を耳管又は耳管近くに位置付けるために患者の鼻腔を通過するように構成されるガイドであって、30度〜90度の角度を有する屈曲を伴う遠位端を有するガイドと、耳管の中へと該ガイドを通過するように構成されるガイドワイヤと、を含んでもよい。
【0050】
1つの態様において、ガイドはカテーテルを含んでもよい。
【0051】
別の態様において、ガイドは二重ルーメンチューブを含んでもよい。
【0052】
別の態様において、本システムはまた、ガイドを通る通路用に構成される診断用デバイスを含んでもよい。
【0053】
別の態様において、本システムはまた、ガイドを通る通路用に構成される治療用デバイスを含んでもよい。
【0054】
別の実施形態において、本発明は、耳管を治療するためのデバイスを提供する。デバイスは、細長い剛性シャフトを含んでもよい。デバイスはまた、シャフトに連結する細長く可撓性のインサートと、耳管の細長い部分を治療するための治療用デバイスを含むインサートと、耳管に一致して屈折する横剛性を含むインサートと、座屈を伴わずにインサートを耳管の中へ押し込むことを可能にする縦剛性と、を含んでもよい。
【0055】
1つの態様において、細長い剛性シャフトは、30〜90度の範囲の屈曲を伴う遠位端部を含んでもよい。
【0056】
1つの態様において、細長い剛性シャフトは、流体をインサートへ供給するための少なくとも1つの流体用継手を含む、近位端部を含んでもよい。
【0057】
1つの態様において、細長い剛性シャフトは、ガイドワイヤの通過のためのルーメンを含んでもよい。
【0058】
1つの態様において、インサートは、可撓性コアワイヤを含んでもよい。
【0059】
1つの態様において、可撓性コアワイヤは、超弾性合金で構築されてもよい。
【0060】
1つの態様において、可撓性コアワイヤは、インサートの最遠位部分に傷をつけない先端を含んでもよい。
【0061】
1つの態様において、治療用デバイスは、バルーンを含んでもよい。
【0062】
1つの態様において、バルーンは、ミクロ孔質構造を含んでもよい。
【0063】
1つの態様において、バルーンは、耳管の輪郭に一致するあらかじめ成形された形状へ、拡張可能であってもよい。
【0064】
1つの態様において、バルーンは、薬物コーティングを含んでもよい。
【0065】
1つの態様において、薬物コーティングは、ステロイド類、抗生物質、抗真菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、界面活性剤、又は抗粘液性物質のうちの1つであってもよい。
【0066】
1つの態様において、治療用デバイスは、剛性シャフトから取り外し可能であってもよい。
【0067】
1つの態様において、治療用デバイスはルーメンを含んでもよい。
【0068】
1つの態様において、治療用デバイスは、生分解性であってもよく、かつ治療用物質を含んでもよい。
【0069】
1つの態様において、治療用物質は、ステロイド類、抗生物質、抗真菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、界面活性剤、又は抗粘液性物質のうちの1つであってもよい。
【0070】
1つの態様において、治療用デバイスは、拡張可能ステントを含んでもよい。
【0071】
1つの態様において、拡張可能ステントは、治療用物質を含んでもよい。
【0072】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を拡開するための方法を提供する。ガイドカテーテルは、患者の耳管の開口部又は開口部近くにガイドカテーテルの遠位端部を位置付けるように、患者の鼻腔を通して前進されてもよい。ガイドカテーテルの遠位部は、30〜90度の角度を有する屈曲を含んでもよい。遠位部は、該ガイドカテーテルの近位部より可撓性であってもよい。ガイドワイヤは、ガイドワイヤの遠位端部が耳管へ進入するように、ガイドカテーテルを通して前進されてもよい。拡開カテーテルは、耳管内に拡開カテーテルの拡開器を位置付けるように、ガイドワイヤ上で前進されてもよい。拡開器は、耳管を拡開するように拡張されてもよい。拡開カテーテル及びガイドワイヤは、患者から除去されてもよい。
【0073】
1つの態様において、ガイドカテーテルの遠位部は可鍛性であってもよく、また遠位部の屈曲はガイドカテーテルのユーザーによって形成されてもよい。
【0074】
1つの態様において、耳管の開口部は耳管の咽頭口を含んでもよく、拡開カテーテルは、咽頭口内に拡開器を位置付けるように前進されてもよい。
【0075】
1つの態様において、ガイドワイヤは、照明ガイドワイヤであってもよい。光は、照明ガイドワイヤから放射されてもよく、放射される光は観察されてもよい。
【0076】
1つの態様において、放射される光は、患者の頭部に位置付けられた内視鏡を使用して観察されてもよい。
【0077】
1つの態様において、ガイドカテーテルは、拡開カテーテルがガイドワイヤ上で前進される前に、患者から除去されてもよい。
【0078】
1つの態様において、拡開カテーテルは、ガイドワイヤ上で、またガイドワイヤを通して、前進されてもよい。除去することは、患者からガイドカテーテルを除去することを含んでもよい。
【0079】
1つの態様において、拡開カテーテルはバルーン拡開カテーテルを含んでもよく、拡開器を拡張することは、バルーン拡張カテーテルのバルーンを膨張させることを含んでもよい。
【0080】
1つの態様において、バルーンを膨張させることは、耳管内でステントを拡張してもよい。
【0081】
1つの態様において、拡開カテーテルは側方翼を含んでもよく、拡開器を拡張することは、側方翼を使用してバルーンの位置を維持することを含んでもよい。
【0082】
1つの態様において、バルーンは、膨張すると、耳管ETの咽頭口の円錐開口に一致するように成形されてもよく、拡開器を拡張することは、耳管ETの咽頭口内でバルーンを拡張することを含んでもよい。
【0083】
1つの態様において、バルーンは、耳管の全体を塞がない断面を有するように成形されてもよく、拡開器を拡張することは、耳管内の圧を解放するように、バルーンを定位置に維持することを含んでもよい。
【0084】
1つの態様において、バルーンは切断部材を含んでもよく、拡開器を拡張することは、切断部材で耳管壁を切断することを含んでもよい。
【0085】
1つの態様において、内視鏡は、鼻腔を通して前進されてもよく、拡開カテーテルは、内視鏡を使用して観察されてもよい。
【0086】
1つの態様において、拡開カテーテルを観察することは、カテーテルのシャフト上の目印を観察することを含んでもよい。耳管の開口部に対する拡開器の設置位置は、拡開器の近位端部からの目印の距離に基づき近似化されてもよい。
【0087】
1つの態様において、少なくとも1つの物質は、拡開器を使用して耳管に適用されてもよい。
【0088】
1つの態様において、拡開器は、物質を送達するための多孔質バルーンを含んでもよい。
【0089】
1つの態様において、拡開器は、物質を送達するための複数の針を有するバルーンを含んでもよい。
【0090】
1つの態様において、拡開カテーテルは、拡開器の位置を拡張中に維持するように耳管に対して力を印加してもよい。
【0091】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を拡開するための方法を提供する。ガイドカテーテルは、患者の耳管の開口部又は開口部近くにガイドカテーテルの遠位端部を位置付けるように、患者の鼻腔を通して前進されてもよい。ガイドカテーテルの遠位部は、30〜90度の角度を有する屈曲を含んでもよい。遠位部は、該ガイドカテーテルの近位部より可撓性であってもよい。送達カテーテルは、耳管内に該送達カテーテルを定置するように、ガイドカテーテルを通して前進されてもよい。細長い物質送達デバイスは、送達カテーテルを使用して耳管の中へ送達されてもよい。拡開カテーテル及びガイドワイヤは、細長い薬物送達デバイスを耳管内に残して患者から除去されてもよい。
【0092】
1つの態様において、細長い物質送達デバイスは、少なくとも1つの治療用物質を溶出させるように構成される細長い紐状体であってもよい。
【0093】
1つの態様において、細長い物質送達デバイスを送達することは、細長い紐状体を送達カテーテルから内側で取り外すことを含んでもよい。
【0094】
1つの態様において、細長い物質送達デバイスを送達することは、細長いポリマー紐状体を送達カテーテルから外側で取り外すことを含んでもよい。
【0095】
1つの態様において、細長い物質送達デバイスは、物質を経時的に溶出させるように構成されるバルーンであってもよい。
【0096】
1つの態様において、細長い薬物送達デバイスを送達することは、耳管内でバルーンを膨張させること、及び該バルーンを送達カテーテルから切り離すことを含んでもよい。
【0097】
1つの態様において、バルーンは、耳管内の均圧を可能にするように構成されてもよい。
【0098】
1つの態様において、細長い薬物送達デバイスは、拡張可能ステントであってもよい。
【0099】
1つの態様において、細長い薬物送達デバイスを送達することは、耳管の中へ拡張可能ステントを挿入すること、及び、拡張可能ステントの近位端部が耳管内で拡張することを可能にするように、拡張可能ステントの近位端部を拘束しないことを含んでもよい。
【0100】
1つの態様において、細長い薬物送達デバイスは、複数の支柱に接続される細長い中心部材を含む細長いインサートであってよく、各支柱は細長い外側部材に接続されてもよい。
【0101】
1つの態様において、支柱は、耳管内に空間を提供及び維持し、その内部の均圧を維持してもよい。
【0102】
発明の性質及び利点を更に理解するために、添付の図と共に下記の説明を参照すべきである。各図は、あくまで図示及び説明を目的として与えられるものであって、本発明の実施形態の範囲を限定することを目的とするものではない。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明の実施形態は、中耳及び耳管内の標的組織領域にアクセスし、それらを診断及び治療するための方法及びシステムに関する。
【0105】
アクセス
本発明の1つの実施形態は、最小侵襲技術を使用し、耳管を超えて中耳へのアクセスを得ることに関する。1つの実施形態において、中耳洞は、耳管(ET)を介してアクセスされてもよい。耳管オリフィスへの本アクセスを獲得するために、約30度を超え、かつ約90度より小さい屈曲をその遠位端に有するガイドカテーテルが、使用されてもよい。アクセスした後、診断用デバイス又は介入デバイスが、耳管の中へ導入されてもよい。任意で、繊細な中耳構造に損傷を与えるのを防ぐため、安全機構が採用されてもよい。1つの実施形態において、安全機構は、
図7に示されるように、鼓膜を介して中耳の中へ導入されるプローブ及び/又はセンサを含んでもよい。例えば、プローブは内視鏡であってもよく、センサは電磁変換器であってもよい。
【0106】
図7は、ガイドカテーテルの遠位端102が耳管開口部に隣接する、鼻咽頭部及び鼻腔内のガイドカテーテル100を示す断面図である。
図7は、その遠位端102に約30度を超え、かつ約90度より小さい屈曲を有する、耳管オリフィスに隣接して設置されたガイドカテーテル100を示す。鼓膜に隣接して設置されたセンサ104を使用して、ガイドカテーテルの前進をモニタリングしてもよい。センサは、安全機構の1つの例である。
【0107】
診断
本発明の別の実施形態は、中耳及びその構造の疾病の診断に関する。1つの実施形態において、診断は、ガイドカテーテル100を通して定位置へと前進される内視鏡の使用を含んでもよい。内視鏡の設計は、90度又はそれ以上のY軸線視覚化、及び360度回転を可能にする。そのような内視鏡は、真珠腫、小骨の機能及び/又は疾病、及び術後経過観察の評価のために使用されてもよい。上述のように適合されうる代表的な内視鏡は、Medigus製のIntroSpicio 115 1.8mmカメラを使用してもよい。そのようなカメラは、約1.8mm×1.8mmであり、その小型の剛性部分により、内視鏡の先端で最大限の可撓性が可能である。
【0108】
別の方法としては、中耳洞及びETへ流体を注入し、中耳及びET並びにその構造を超音波走査することによって、超音波が使用されてもよい。施術後、流体は吸引されるか、又は耳管を通って流れ出るように残されてもよい。超音波用の先端がついたカテーテルは、耳管を上がり中耳腔における定位置まで前進されてもよい。超音波カテーテルは次に、ETの中を引き戻され、医師は、外部ビデオモニタを使用して、耳管内の、及び耳管に隣接する構造を観察することができる。
【0109】
耳管の機能診断は、直接評価又は間接評価を介して達成されてもよい。1つの実施形態において、直接評価のために、診断システムは、鼻咽頭を介して挿入された診断用プローブを介して、嚥下中の耳管の動的モニタリングを可能にすることができる。そのような診断システムは嚥下中に動的に使用されるので、プローブは、非外傷性であるように構成される可撓性で耐久性のある材料で作られてもよい1つの実施形態において、鼻咽頭でのアプローチにおいて使用されるガイドカテーテル100は、診断用プローブが耳管領域内又はその近くに達すれば、嚥下の前に除去されてもよい。
【0110】
1つの実施形態において、診断用プローブは、ET構造及び機能を視覚化するための内視鏡を備えてもよい。別の方法としては、診断用プローブは、カテーテル又はワイヤ上に設置される圧力変換器を含んでもよい。圧力変換器が使用されるとき、耳管内部の圧力が嚥下中にモニタリングされ、圧力測定値が耳管開口機能として解釈されうる。別の方法としては、超音波プローブがETルーメンの中へ挿入され、ET領域の構造を走査してもよい。超音波診断を促進するために、流体がETの中へと導入されてもよい。上述のいずれの診断システムに対しても、嚥下毎に再度位置付けられる、単一の短尺の変換器が使用されてもよい。別の方法としては、耳管の全部又は一部分のマッピングを促進するために、一連になった変換器が使用されてもよい。
【0111】
上述の技術は、患者の耳管に直接にアクセスし、診断するために使用されうる。1つの実施形態において、患者の耳管にアクセスするための方法は、約30〜約90度の角度を有する屈曲を伴う遠位端を有するガイドカテーテルを、患者の鼻腔の中へ挿入すること、ガイドカテーテルを鼻咽頭内の耳管の開口部に向かって鼻腔内で前進させ、その遠位端を耳管開口部に隣接して定置させることと、を含んでもよい。加えて、本方法はまた、診断用デバイスをガイドカテーテルを通して前進させ、診断用デバイスの遠位端を耳管開口部に隣接して定置させることを含んでもよい。診断用デバイスは、診断用カテーテルを含んでもよい。診断用デバイスは、内視鏡、圧力変換器、又は超音波カテーテルを含んでもよい。
【0112】
加えて、本方法はまた、診断用プローブを耳管内へ導入し、耳管機能を直接評価することを含んでもよい。診断用プローブは、可撓性で耳管に適合性のある材料で作られることが好ましい。別の方法としては、診断用プローブは、ガイドワイヤ上に設置される圧力変換器を備えてもよく、それによって本方法はまた、患者が嚥下している間に耳管内部の圧をモニタリングすることと、モニタリングを用いて患者の耳管の開口機能を評価することと、を含む。本方法はまた、診断用プローブが耳管の中へ定置された後に、ガイドカテーテルを除去することを含んでもよい。これに加えるか又はこれに代えて、診断用プローブは超音波プローブを含んでもよい。
【0113】
耳管の間接的な機能診断のために、いくつかの実施形態では、耳管の開口を評価するために外部エネルギー源が使用されてもよい。例えば、可能性のあるエネルギー源は、圧力、音、光、又は他の電磁エネルギーを含むが、それらに限定されない。間接評価の1つの実施形態において、放射器が鼻咽頭内に位置付けられてもよく、また受容器が鼓膜に定置されてもよい。放射された信号と受容された信号との間の相関関係は、嚥下中の耳管の物理的特性として解釈されうる。
【0114】
上述の技術は、患者の耳管に間接にアクセスし、診断するための手技を実装するために、使用されうる。間接評価方法は、エネルギー放射器を耳管に隣接して鼻咽頭内に位置付けること、エネルギー受容器を外耳道を介し鼓膜に隣接して位置付けること、放射器から受容器へエネルギーを向かわせること、放射器からのエネルギーを表す放射器信号を生成すること、放射器によって受容されるエネルギーを表す受容器信号を生成すること、放射器信号と受容器信号との間の比較を形成すること、及び、該比較を用いて嚥下中の耳管の機能を間接に評価することを含んでもよい。エネルギー放射器は、圧力波又は電磁エネルギーの形態のエネルギーを放射するデバイスでありうる。間接評価はまた、耳管の物理的特性を推定することを含んでもよい。
【0115】
処理
本発明の別の実施形態は、耳管疾患の治療に関する。いくつかの場合では、例えば、耳管疾患は耳管の構造的な閉塞に関連することがある。耳管の構造疾患は、多くの場合、
図8に示されるように、耳管内又はその周辺の解剖学的異常、若しくは過剰組織又は浮腫状組織の結果である。
図8は、耳管ET周辺の解剖学的領域区分を示す。
図8は、鼓膜TM、頚動脈、ET軟骨、及び、口蓋帆張筋及び口蓋帆挙筋の場所を含む、一般的な解剖学的ランドマークを示す。
図9〜10は、ET周辺の領域で実行される、診断的又は治療的手技を示す。
【0116】
図9は、ET周辺の浮腫状組織を減量するための診断又は治療手技を示す、耳管周辺の解剖学的領域区分を示す。
図9に説明される手技は、ガイドワイヤ202を使用してET内腔にアクセスすること、及び減量用ツール204を使用してETの一側面から組織を除去することを含む。
図9に示されるように、1つの実施形態では、減量用ツール204は、その先端がET内腔の一面から組織を除去できるように、一面から突出する格納式の減量用先端部206を有してもよい。この治療手技は、好ましくは、制御されたET内部でのアクセス及び位置付けを可能にし、対向面を損傷するのを防ぐ。上述の治療手技は、例えば、耳管内視覚化カテーテルを使用することによって、超音波誘導又は視覚化を活用して実行されうるということを理解するべきである。超音波は、上述のような治療の前に診断のために使用されうる。また、治療中に誘導及び又は補助のために使用されることもある。
【0117】
図10は、ET周辺の浮腫状組織を減量するための代替的治療手技を示す、耳管周辺の解剖学的領域区分を示す。
図10に示される代替的手技では、減量用デバイス304は、粘膜表面が保存されるように軟骨330と粘膜表面との間で粘膜下に、その先端又は遠位端部306を導入されてもよい。この代替的手技に対しては、ガイドワイヤ302及び/又は減量用デバイスは、内腔と軟骨との間に通され、それによって、粘膜表面及び頚動脈の両方を保護してもよい。
図10に示されるように、ガイドワイヤ302は、ET軟骨と粘膜表面との間の粘膜下の進入点で挿入されてもよい。続いて、減量用ツール304が、粘膜表面に影響を及ぼさずに組織領域を減量するように、ガイドワイヤ302に沿って導入されうる。低出力高効率超音波のような超音波が、粘膜下の組織を切除、縮小、又は減量するための減量用ツールとして、使用されうる。
【0118】
上述の治療技術は、ガイドワイヤを、患者の鼻咽頭を介して患者の耳管の中へ定置すること、ガイドワイヤに沿って、患者の耳管の中へ減量用デバイスを導入すること、及び、肥大性粘膜を含む浮腫状組織を、耳管の一側面に沿って表面から除去することによって、患者の耳管を治療するために使用されてもよい。ガイドワイヤは、耳管内への導入に関連してフィードバックを提供するために、目印を含んでもよい。別の方法としては、減量用ツールは、ET内にガイドワイヤを初めに定置することなしに、ET内に導入されうる。
【0119】
別の方法としては、患者の耳管を治療するための方法は、ガイドワイヤを、患者の鼻咽頭を介して軟骨と耳管の粘膜表面との間の粘膜下に導入すること、ガイドワイヤに沿って、減量用デバイスを軟骨と粘膜表面との間の耳管の粘膜下組織へと導入すること、及び、粘膜下組織のいくつかを除去することと、を含んでもよい。
【0120】
図9〜10に説明された上述の治療手技に加えて、組織除去又は組織再構築(例えば、縮小)は、機械療法、レーザー治療、高周波治療、及び/又は化学療法を使用して達成されてもよい。例えば、筋肉の機能不全、又は解剖学的疾患が要因である場合、筋肉(口蓋帆張筋又は口蓋帆挙筋)が短縮又は伸張されることがある。筋肉を達成する又は短縮する1つの方法は、筋肉に外傷を作成することである。外傷は経時的に吸収され、ソムノプラスティーに類似した方式で、筋肉の塊の再吸収によって筋肉は緊縮する。
【0121】
本発明の別の実施形態は、炎症又は浮腫によって引き起こされる耳管疾患の治療に関する。上述の外科的手技に加えて、浮腫は、薬物療法を通じて低減されることもある。治療薬、特にステロイド類のET粘膜への送達は、鼻咽頭か又はETの中耳側かへ進入するように設計されたマイクロカテーテルを用いて、ET内へと直接に吸引することを含む、様々な方法を、局所的に使用して促進されてもよい。別の方法としては、薬剤は、拡開バルーンの表面から送達されてもよい。この場合、薬剤は、粘膜層の表面上よりもむしろ粘膜層の中へと投入されてもよい。薬物をリザーバへ投入し、リザーバを粘膜内へ埋め込むことによって、持続した送達が促進されうる。粘膜表面に付着するように、粒子状の薬剤を含み、リザーバに粒子を満たすことによって、治療薬の滞留時間の延長を実現してもよい。別の方法としては、治療薬の滞留時間は、リザーバをET又はその下部構造の中へ埋め込むことによって、制御されてもよい。
【0122】
1つの実施形態に従う代表的な薬物送達システムが、
図11に示される。
図11に示されるように、均圧チューブ400が鼓膜の中へ挿入されてもよい。均圧チューブは、耳管領域内に滞留する延伸部402を含み、延伸部は薬物送達機能を有する。
図11に示されるように、均圧チューブ400は、薬物送達機能と通気機能とを提供する二重ルーメンであってもよい。延伸部402を有する均圧チューブ400は、鼓膜TMの放射状繊維間を摺動するように設計されてもよい。定位置では、チューブは移動経路を最小にするように配向されてもよい。
【0123】
別の方法としては、薬物送達システムは、
図12に説明されるように鼻咽頭を通して提供されてもよい。
図12に示されるように、薬物送達は、管腔内の一時的なインプラント500から提供されてもよい。インプラント500は一時的なものであるため、除去システムを必要とするか、又は、分解及び/又は消化を通じた自然な除去を提供することがある。上述の減量用デバイスと同様に、薬物送達システムも粘膜下に埋め込まれてもよく、それにより、表面粘膜を塞がないという利点を有する。1つの実施形態において、インプラントは、内腔と軟骨との間の耳管の後部クッション部へ置かれてもよい。この方法には一貫した解剖学的ランドマークの使用が有効である場合があり、またこの方法は、中耳又は頚動脈を傷つける可能性を最小にしうる。インプラント500は、遠位直径502から近位直径504へと低減する直径をそれぞれに有するコイルの形態の、固定型薬物送達リザーバを含んでもよい。
【0124】
図13は、耳管の咽頭口を通して挿入されたデバイスによって実行される診断又は治療手技を示す、耳管ET周辺の解剖学的領域区分を示す。
図13は、鼻咽頭を通してET内の所望の領域に挿入されたガイドワイヤGWと、ガイドワイヤGW上で耳管内へ挿入されたデバイスによって実行される、診断又は治療手技とを示す。
【0125】
図13Aは、耳管の咽頭口を通して挿入されたデバイスによって実行される診断又は治療手技を示す、耳管ET周辺の解剖学的領域区分を示す
図13内の、領域13Aの拡大図を示す。1つの実施形態において、ガイドワイヤGWは、ガイドワイヤGWの遠位領域に設置された固定バルーン3200を備える。固定バルーン3200は、ガイドワイヤGWを標的場所に位置付けた後、膨張される。固定バルーン3200は、ガイドワイヤGWを隣接する解剖学的組織に固定し、診断又は治療手技中のガイドワイヤの不慮のずれを防止する。固定バルーン3200は、例えば、架橋ポリエチレン、若しくは他のポリオレフィン、ポリウレタン、可撓性ポリビニル、ナイロン、又は同種のものといった、しかしそれらに限定されない、任意の好適な柔軟性又は半柔軟性材料で作られてもよい。種々の代替的実施形態では、ガイドワイヤGWは、例えば、ガイドワイヤGW上の切欠、ガイドワイヤGW上の屈曲領域、自己拡張要素、フック、コイル状要素、又は同種のものといった、固定バルーン3200以外の1つ又はそれ以上の固定要素を含んでもよい。別の実施形態では、ガイドワイヤGWは、ガイドワイヤGWの遠位領域上に設置されたセンサ3202を含んでもよい。センサ3202は、ガイドワイヤGWが、好適な手術ナビゲーションシステムと併用して使用されることを可能にしうる。1つの実施形態では、センサ3202は、GE lnstaTrakTM3 500 plus system等の電磁手術ナビゲーションシステムと併用して使用される、電磁センサを含んでもよい。1つ又はそれ以上のセンサ3202、若しくは他の種類の手術ナビゲーションセンサ又はトランスミッタが、本明細書に開示される他の診断用又は治療用デバイス上に同様に設置されてもよい。センサ3202は、外耳に設置される固定センサ3204と併用して使用されてもよい。センサ3202と固定センサ3204との組み合わせは、標的領域内でのガイドワイヤGWの位置付けを促進しうる。
【0126】
別の実施形態において、放射線不透過性プラグ3206が、外耳から鼓膜に隣接する領域へと挿入されてもよい。放射線不透過性プラグ3206は、患者の術前走査の間に基準マーカーとして機能し、それによって、医師が、診断用又は治療用デバイスを鼓膜に近接して正確に位置付けることを可能にしうる。他の画像誘導方法及びデバイスが、同様に本明細書に開示される診断又は治療手技と併用して使用されてもよい。
図13Aは、シャフト3210と、例えば、ガイドワイヤGW上に導入されている拡開バルーン等の、作業要素3212とを備える、診断用又は治療用デバイス3208も示す。診断用又は治療用デバイス3208は、放射線不透過性マーカー3214を備えてもよい。
【0127】
図13Bは、耳管へガイドワイヤを導入する方法の実施形態を示すために取り除かれた顔の一部分を伴う、ヒトの頭部の正面図を示す。
図13Bにおいて、ガイドカテーテル3250は、鼻孔を通して鼻咽頭へと導入される。ガイドカテーテルの遠位部3250は、屈曲又は傾斜した領域を備えてもよい。例えば、1つの実施形態では、そのような屈曲又は傾斜領域は、約45度〜約150度の範囲の内角を形成してもよい。ガイドカテーテル3250は、本譲受人の同時継続特許出願第11/926,565号(代理人整理番号ACLRT−021BC7)に開示され、また参照により本明細書に組み込まれる、種々の設計のうちの1つを用いて構築されてもよい。ガイドカテーテル3250は、ガイドカテーテル3250の遠位端が、耳管の鼻咽頭開口部の近くに設置されるように、鼻咽頭内に位置付けられる。その後、ガイドワイヤGWが、ガイドカテーテル3250を通して耳管の中へと導入される。ガイドワイヤGWは次に、1つ又はそれ以上の診断又は治療手技を実行するように、1つ又はそれ以上の診断用又は治療用デバイスを耳管の中へと前進させるために、使用されうる。
【0128】
図14A〜14Dは、
図13に示されるもののような診断用又は治療用デバイス上に設置されうる、作業要素の種々の実施形態を説明する。
図14Aは、拡開バルーンを備える作業要素例を示す。拡開するバルーン3312は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、又は同種のものといった好適な非柔軟性材料で作られてもよいが、このような材料に限定されない。
【0129】
図14Bは、バルーン拡張可能ステント3316と共に設置された拡開バルーン3314を備える、作業要素例を示す。いくつかの実施形態では、拡開バルーン3314は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、又は同種のものといった好適な非柔軟性材料で作られてもよいが、このような材料に限定されない。ステント3316を構築するために、金属チューブ設計、ポリマーチューブ設計、連鎖状設計、らせん状設計、圧延板設計、単一ワイヤ設計、又は同種のものといった何種類かのステント設計が使用されてもよいが、このような材料に限定されない。これらの設計は、オープンセル構造又はクローズドセル構造を有してもよい。ステント3316を製造するために、金属又はポリマー要素をレーザーで切断したり、金属要素を溶接したり等といったことを含み、種々の製造方法が使用されうるが、これらに限定されない。ステント3316を製造するために、金属、ポリマー、泡状材料、可塑的に変形可能な材料、超弾性材料、又は同種のもの等を含み、種々の材料が使用されうるが、このような材料に限定されない。放射線不透過性コーティング、抗炎症剤、抗生物質、又は同種のもの等を溶出させるための薬物溶出メカニズムといった種々の特性がステント3316に加えられてもよいが、これらに限定されない。1つの実施形態において、ステント3316は生体吸収性であってもよい。作業要素はまた、圧力拡張ステントの代わりに、自己拡張ステントを備えてもよい。
【0130】
図14Cは、洗浄要素3318を備える作業要素例を示す。洗浄要素3318は、多数の洗浄用開口部3320を含んでもよい。洗浄用開口部3320は、シャフト3210内の洗浄用ルーメンに接続されてもよく、それを通して、例えば、造影剤、薬剤として許容される塩又は抗菌剤の剤形(例えば、抗生物質、抗ウィルス剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤等)、血管収縮剤を使用する又は使用しない麻酔剤(例えば、エピネフリンを使用する又は使用しないキシロカイン、エピネフリンを使用する又は使用しないテトラカイン等)、鎮痛剤、コルチコステロイド又は他の抗炎症剤(例えば、NSAID)、鬱血除去剤(例えば、血管収縮剤)、粘膜薄層化剤(例えば、去痰剤又は粘液溶解剤)、アレルギー反応を予防又は変化させる薬剤(例えば、抗ヒスタミン剤、サイトカイン阻害物質、ロイコトリエン阻害物質、IgE阻害物質、免疫賦活剤)、アレルゲン、又は組織による粘液の分泌を引き起こす別の物質、出血を止めるための収斂剤、抗増殖剤、細胞毒性剤(例えば、アルコール)、タンパク質分子、幹細胞、遺伝子、又は遺伝子治療調整物といった生物学的薬剤、又は同種のもの、を含有する溶液等の、好適な洗浄媒体が送達されうる。1つの実施形態では、洗浄用開口部3320の一部は、洗浄媒体を耳管の外へ吸引するための吸引ルーメンに接続されてもよい。
【0131】
図14Dは、物質送達リザーバ3322を備える作業要素例を示す。物質送達リザーバ3322は、完全に又は部分的に、生分解性又は非生分解性であってもよい。1つの実施形態において、物質送達リザーバ3322は、ヒドロゲル(例えば、コラージュヒドロゲル)等の好適な生体適合性材料で作られる。別の実施形態では、物質送達リザーバ3322は、可撓性又は剛性のポリマーフォーム、詰綿、ガーゼ等の多孔質材料で形成される、多孔質マトリックスを備える。多孔質を形成される、ないしは別の方法で多孔質にされうる生分解性ポリマーの例は、ポリグリコール酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−Dラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコネート、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、修飾されたセルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリ無水物、ポリフォスフォエステル、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、及びそれらの組み合わせを含む。多孔質を形成される、ないしは別の方法で多孔質にされうる非分解性ポリマーの例は、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリコーンエラストマー等を含む。物質送達リザーバ3322は、その全体の開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、「Implantable Device and Methods for Delivering Drugs and Other Substances to Treat Sinusitis and Other Disorders」と題する米国特許出願第10/912,578号(2004年8月4日出願)に記載される、1つ又はそれ以上の実施形態を含んでもよい。物質送達リザーバ3322、又は本出願に記載されるあらゆる物質送達デバイスは、種々の治療用又は診断用薬剤を送達するために使用されてもよい。本明細書で使用される「診断用又は治療用物質」という用語は、あらゆる使用可能な薬物、プロドラッグ、タンパク質、遺伝子療法調整物、細胞、診断用薬剤、造影剤又はイメージング剤、生物製剤等を含むように、広範囲に解釈されるべきである。そのような物質は、液体又は固体、コロイド又は他の懸濁液、溶液といった、決められた又は自由な形態であってもよく、若しくは、気体、又は、他の流体又は非流体の形態であってもよい。例えば、微生物感染を治療又は予防することが望ましいいくつかの用途では、送達される物質は、薬剤として許容される塩又は抗菌剤の剤形(例えば、抗生物質、抗ウィルス剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤等)、コルチコステロイド又は他の抗炎症剤(例えば、NSAID)、鬱血除去剤(例えば、血管収縮剤)、粘膜薄層化剤(例えば、去痰剤又は粘液溶解剤)、アレルギー反応を予防又は変化させる薬剤(例えば、抗ヒスタミン剤、サイトカイン阻害物質、ロイコトリエン阻害物質、IgE阻害物質)等を含んでもよい。
【0132】
本発明において使用することが可能な抗菌剤のいくつかの非限定的例としては、アシクロビル、アマンタジン、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、及びトブラマイシン)、アモキシシリン、アモキシシリンクラブラネート、アンホテリシンB、アンピシリン、アンピシリンスルバクタム、アトバクオン、アジスロマイシン、セファゾリン、セフェピム、セフォタキシム、セフォテタン、セフポドキシム、セフタジジム(ceflazidime)、セフチゾキシム(ceflizoxime)、セフトリアクソン、セフロキシム、セフロキシムアクセチル、セファレキシン、クロラムフェニコール、クロトリマゾール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ダプソン、ジクロキサシリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、フルコナゾール、フォスカルネット、ガンシクロビル、ガチフロキサシン(atifloxacin)、イミペネムシラスタチン、イソニアジド、イトラコナゾール、ケトコナゾール、メトロニダゾール、ナフシリン、ナフシリン、ナイスタチン、ペニシリン、ペニシリンG、ペンタミジン、ピペラシリンタゾバクタム、リファンピン、キヌプリスチン・ダルフォプリスチン、チカルシリンクラブラネート、トリメトプリムスルファメトキサゾール、バラシクロビル、バンコマイシン、マフェナイド、スルファジアジン銀、ムピロシン(例えば、Glaxo SmithKline,Research Triangle Park,North Carolinaの、Bactroban)、ナイスタチン、トリアムシノロンナイスタチン、クロトリマゾールベタメタゾン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ブトコナゾール、ミコナゾール、チオコナゾール;微生物を破壊又は無能にする洗浄剤様化学薬品(例えば、ノノキシノール−9、オクトキシノール−9、塩化ベンザルコニウム、メンフェゴール、及びN−ドコサノール(N-docasanol));標的細胞への微生物付着を遮断し、及び/又は感染性病原体の侵入を阻害する、化学薬品(例えば、PC−515(カラギーナン)、Pro−2000、及びデキストリン2サルフェート等の硫酸化及びスルホン化ポリマー);レトロウィルスが細胞内で複製するのを防ぐ抗レトロウィルス剤(例えば、PMPAゲル);「植物抗体」として既知である、植物から遺伝子組み換えされた抗ウィルス抗体等の、病原体と戦う遺伝子組み換えされた抗体又は自然発生抗体;組織の状態を変化させ病原体に適さないようにする薬剤(粘膜のpHを変える物質等(例えば、緩衝ゲル及び酸性型));過酸化水素、又は病原性微生物を殺滅するかその増殖を阻害する他の物質を産生させる、非病原性又は「友好的な」微生物(例えば、乳酸菌);本明細書に参照により明示的に組み込まれる、米国特許第6,716,813号(Lin et al.)に記載されるもの等の抗菌タンパク質又はペプチド、又は抗菌金属(例えば、コロイド銀)が挙げられる。
【0133】
これに加えるか又はこれに代えて、炎症を治療又は予防することが望ましいいくつかの用途では、本発明で送達される物質として、各種のステロイド又は他の抗炎症剤(例えば、非ステロイド系抗炎症剤、又はNSAID)、鎮痛剤、又は解熱剤が含まれうる。例えば、ベクロメタゾン(Vancenase(登録商標)又はBeconase)、フルニソリド(Nasalide(登録商標))、プロプリオネートフルチカゾン(Flonase(登録商標))、トリアムシノロンアセトニド(Nasacort(登録商標))、ブデソニド(Rhinocort Aqua(登録商標))、エタボン酸ロテプレドノール(loterednol etabonate)(Locort)、及びモメタゾン(Nasonex(登録商標))等の、鼻孔内10の投与によって以前に投与されてきたコルチコステロイドを使用することができる。上記のコルチコステロイドの他の塩の形態を使用することもできる。また、本発明において使用することが可能なステロイド類の他の非限定的な例としては、これらに限定されるものではないが、アクロメタゾン、デソニド、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、フルオシノロン、フルランドレノリド、モメタゾン、プレドニカルベート、アムシノニド、デソキシメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、ハルシノニド、クロベタゾル、強化ベタメタゾン、ジフロラゾン、ハロベタゾル、プレドニゾン、デキサメタゾン(dexarnethasone)、及びメチルプレドニソロンが挙げられる。使用することが可能な他の抗炎症剤、鎮痛剤、又は解熱剤としては、非選択的COX阻害剤(例えば、サリチル酸誘導体、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、コリンマグネシウム三サリチル酸、サルサラート、ジフルニサル、スルファサラジン、及びオルサラジン;アセトアミノフェン等のp−アミノフェノール誘導体;インドメタシン及びスリンダク等のインドール及びインデン酢酸;トルメチン、ジコフェナク、及びケトロラック等のヘテロアリール酢酸;イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、及びオキサプロジン等のアリールプロピオン酸;メフェナミン酸及びメロキシカム等のアントラニル酸(フェナメート);オキシカム(ピロキシカム、メロキシカム)等のエノール酸、並びにナブメトン等のアルカノン)、並びに、選択的COX−2阻害剤(例えば、ロフェコキシブ等のジアリール置換フラノン;例えば、セレコキシブ等のジアリール置換ピラゾール;例えば、エトドラク等のインドール酢酸;及び、例えば、ニメスリド等のスルホンアニリド)が挙げられる。
【0134】
これに加えて、又はこれに代えて、アレルギー若しくは免疫反応及び/又は細胞増殖を治療又は予防することが望ましい場合等の特定の用途では、本発明において送達される物質には、a)ヒト化抗サイトカイン抗体、抗サイトカイン受容体抗体、組換え(遺伝子組換えによって生じる新たな細胞)アンタゴニスト、又は可溶性受容体等の各種のサイトカイン阻害物質、b)ザフィルルカスト、モンテルカスト、及びジロートン等の各種のロイコトリエン調節物質、c)オマリズマブ(rhu Mab−E25と以前は呼ばれていた抗IgEモノクローナル抗体)等の免疫グロブリンE(IgE)阻害剤;及び、d)Rigel Pharmaceuticals,Inc.,South San Francisco,Californiaによって製造される「R−112」として指定される薬剤等の、SYKキナーゼ阻害剤が含まれうる。
【0135】
これに加えて、又はこれに代えて、粘膜組織を収縮させたり、充血を除去したり、又は止血を行うことが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、偽エフェドリン、キシロメタゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、エピネフリン等を含むが、これらに限定されない充血除去又は止血を目的とした各種の血管収縮剤が含まれうる。
【0136】
これに加えて、又はこれに代えて、粘液の流れを促進することが望ましい場合等の特定の用途では、本発明において送達される物質には、アセチルシステインを含むが、これに限定されない粘液の粘性若しくは稠度、又はムコイド分泌を改変する各種の粘液溶解剤又は他の薬剤が含まれうる。1つの特定の実施形態では、本発明において送達される物質は、抗炎症剤(例えば、ステロイド類又はNSAID)と粘液溶解剤との組み合わせを含む。
【0137】
これに加えて、又はこれに代えて、ヒスタミンの放出を防止又は抑止することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、クロモリン(crornolyn)(例えば、Nasal Chroma)及びネドクロミル等のヒスタミンの放出を防止する各種のマスト細胞安定化物質又は薬物が含まれうる。
【0138】
これに加えて、又はこれに代えて、ヒスタミンの作用を防止又は阻害することが望ましい場合等の特定の用途では、本発明において送達される物質には、アゼラスチン(例えば、アスチリン)、ジフェンヒドラミン、ロラチジン等の各種の抗ヒスタミン剤が含まれうる。
【0139】
これに加えて、又はこれに代えて、骨又は軟骨を溶解、分解、切断、破断若しくは再構成することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、骨及び/又は軟骨の強度を低下させるか改質することによって、骨又は軟骨を再構成、再成形、破断、又は除去する本発明の他の手技を容易とする物質が含まれうる。このような薬剤の一例として、再構成又は改質しようとする骨の領域に隣接した物質送達インプラントで注入又は送達することが可能なEDTAなどのカルシウムキレート剤がある。別の例として、破骨細胞などの骨分解細胞からなる、あるいはこの細胞を含む製剤がある。他の例として、コラゲナーゼ(CGN)、トリプシン、トリプシンEDTA、ヒアルロニダーゼ、及びトシルリシルクロロメタン(TLCM)等の、骨又は軟骨の成分を軟化又は分解することが可能な各種の物質の酵素が挙げられる。
【0140】
これに加えて、又はこれに代えて、特定の用途では、本発明において送達される物質には、イプラトロピウム(Atrovent Nasal(登録商標))などの鼻汁分泌を止める傾向を有する抗コリン作動薬を含むが、これらに限定されない鼻炎、鼻ポリープ、鼻の炎症、及び耳、鼻、咽喉の他の疾患を治療するために使用される他のクラスの物質、並びにここに列記されない他の薬剤が含まれうる。
【0141】
これに加えて、又はこれに代えて、ポリープ又は浮腫組織から排液することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、フロセミドなどの局在又は局所作用性の利尿剤、及び/又は、塩化ナトリウムゲル又は組織から水分を抜く他の塩製剤などの高浸透圧剤、あるいは、粘液の浸透圧成分量を直接的又は間接的に変化させてより多くの水分を組織から脱出させることにより、ポリープをその部位で直接的に縮小させる物質が含まれうる。
【0142】
これに加えて、又はこれに代えて、腫瘍又は癌病変を治療することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、抗腫瘍剤(例えば、癌化学療法剤、生物学的反応調節物質、血管新生阻害剤、ホルモン受容体遮断薬、凍結治療剤、又は新生組織形成又は腫瘍形成を破壊又は阻害する他の薬剤)が含まれうるものであり、例えば、癌細胞のDNAを攻撃することにより癌細胞を直接死滅させるアルキル化剤又は他の薬剤(例えば、シクロフォスファミド、イソホスファミド)、細胞のDNA修復に必要な変化を阻害することにより癌細胞を直接死滅させるニトロソウレア又は他の薬剤(例えば、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU))、特定の細胞機能、通常はDNAの合成を妨害することにより癌細胞の増殖を阻害する代謝拮抗薬及び他の薬剤(例えば、6メルカプトプリン及び5フルオロウラシル(5FU))、DNAに結合するかあるいは入り込んでRNA合成を阻害することによって作用する抗腫瘍抗生物質及び他の化合物(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、及びブレオマイシン)、植物に由来する植物(ビンカ)アルカロイド及び他の抗腫瘍薬(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン)、ホルモン応答性癌の増殖に影響する、ステロイドホルモン、ホルモン阻害薬、ホルモン受容体アンタゴニスト、及び他の薬剤(例えば、タモキシフェン、ヘルセプチン、アミノグルテサミド及びホルメスタン等のアロマターゼ阻害剤、レトロゾール及びアナストラゾール等のトリアゾール阻害剤、エクセメスタン等のステロイド阻害剤)、腫瘍の血管新生又は血管形成を阻害する抗血管新生タンパク質、小分子、遺伝子治療薬、及び/又は他の薬剤(例えば、meth−1、meth−2、サリドマイド)、ベバシズマブ(アバスチン)、スクアラミン、エンドスタチン、アンジオスタチン、アンジオザイム、AE−941(ネオバスタット)、CC−5013(レビミド)、medi−522(ビタキシン)、2−メトキシエストラジオール(2ME2、パンゼム)、カルボキシアミドトリアゾール(CAI)、コンブレタスタチンA4プロドラッグ(CA4P)、SU6668、SU11248、BMS−275291、COL3、EMD 121974、IMC−1C11、IM862、TNP−470、セレコキシブ(セレブレックス)、ロフェコキシブ(ビオックス)、インターフェロンα、インターロイキン−12(IL−12)又は参照により本明細書に明確に組み入れるScience Vol.289,1197〜1201ページ(2000年8月17日)において同定されるすべての化合物、生物学的反応調節物質(例えば、インターフェロン、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)、モノクローナル抗体、インターロイキン−2、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)等)、PGDF受容体アンタゴニスト、ヘルセプチン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、カルムスチン、クロラムブシル(cchlorambucil)、シタラビン、ダカルバジン、エトポシド、フルカルバジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトアジトロン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ストレプトシン、タキソール、タキソテール、これらの化合物の類似体同種体及び誘導体、並びに、ここに列記されていない他の抗腫瘍剤が挙げられる。
【0143】
これに加えて、又はこれに代えて、新たな細胞を増殖させるかあるいは既存の細胞を改変することが望ましい場合などの特定の用途では、本発明において送達される物質には、細胞(粘膜細胞、線維芽細胞、幹細胞、又は遺伝子操作された細胞)、並びに、抗炎症物質をコードする遺伝子と一緒に注入されるプラスミド、アデノウイルスベクター、又はネイキッドDNA、mRNA等の遺伝子及び遺伝子送達担体、更に、上述したように、必要に応じて骨を改質又は軟化させる破骨細胞、粘膜形成又は毛様体形成に関わる又は影響を与える細胞等が含まれうる。
【0144】
これに加えて、又はこれに代えて、デバイス及び/又は物質放出モダリティを組み合わせるために、粘液の流路(すなわち、前頭洞又は篩骨蜂巣)の上流の特定の場所に、デバイスを位置付けることが理想的となることがある。これは、薬物放出デバイスの付着をより減少し、全下流組織が所望の薬物を「浴びる」ことを可能にする。このように薬物のキャリアとして粘液を利用することは理想的と言ってもよく、特に、薬物の濃度が粘液が滞留している領域で最も高くなるためであり、一方で粘液流量が良い非疾病領域では薬物による影響がより少ない。これは特に、慢性の副鼻腔炎、又はその特定の部位に薬物濃度をもたらすことが、より高い治療効果を有するような腫瘍に有用となりうる。そのような場合全てにおいて、局所的送達により、これらの薬物がシステム上さほど重大な影響を及ぼさないことが可能になるであろう。更に、粘液に対して緩やかな親和性を維持し、その流れの中で均等に分布することを可能にするような、薬物組成物又は送達システムを構成することが理想となる場合もある。また、いくつかの用途では、薬物よりむしろ塩又は他の粘液可溶性物質等の溶質が、粘液がその物質に接触し、多量の物質が粘液中に溶解し、それによって粘液の何らかの性質(例えば、pH、浸透圧モル濃度等)を変化させるような場所に、位置付けられてもよい。いくつかの場合では、この技術は、粘液を高浸透圧にし、流出する粘液が、ポリープ、浮腫性粘膜組織等から水分及び/又は他の流体を抜き、それによって乾燥又は脱水治療効果を提供するために使用されうる。
【0145】
上述の患者の耳管の治療は、治療用デバイスをガイドカテーテルを通して耳管に向かって前進させ、治療用デバイスの遠位端を耳管開口部に隣接して定置することを可能にする。治療用デバイスは、遠位放射線不透過性部材を有することが好ましいことがある。治療用デバイスは、カテーテルを含んでもよい。
【0146】
別の方法として、又はそれに加えて、治療用デバイスは、流体を患者の耳の中耳洞の中へ導入するための流体導入デバイスを含みうる。流体は、空気、造影剤、吸引流体、又は上述されたような薬物であってもよい。治療方法はまた、超音波デバイスを使用して中耳洞を走査することを含みうる。別の方法として、又はそれに加えて、治療用デバイスは、中耳洞から物質を吸引するための吸引用デバイスを含みうる。
【0147】
別の方法として、又はそれに加えて、治療はまた、耳管に近接する安全装置を導入し、安全装置を用いて治療用デバイスの前進をモニタリングすることを含んでもよい。安全装置は、治療用デバイスの位置を前進している間に感知するための、鼓膜に近接して位置付けられたセンサであってもよい。別の方法としては、安全装置は、前進を可視化するための内視鏡を備えてもよい。
【0148】
別の方法として、又はそれに加えて、患者の耳管を治療するための方法は、耳管の領域内での設置のための遠位延伸部を有する二重ルーメン均圧チューブを、患者の鼓膜を通して定置すること、該遠位延伸部と流体連通する二重ルーメンチューブの第1のルーメンを通して、耳管の領域に薬剤を提供すること、及び二重ルーメンチューブの第2のルーメンを通して鼓膜を通過して通気を提供することを含む。薬剤は、耳管領域内の浮腫を低減するために使用される。
【0149】
薬剤はまた、耳管の粘膜層の表面張力を変化させ、薬剤で粘膜表面の湿潤の促進をもたらすように構成される、界面活性剤を含んでもよい。薬剤は、薬剤の持続放出もたらすように、耳管粘膜組織による捕捉のために構成される、粒子を含んでもよい。代表的な界面活性剤は、その開示が参照により本明細書に組み込まれ、「Composition and Method for Treatment of Otitis Media」と題する米国特許第6,616,913号に開示されている。
【0150】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管を治療するための装置に関する。装置は、患者の耳の鼓膜の中へ挿入するための二重ルーメンチューブを含む。チューブは、耳管の領域内での定置のための遠位延伸部、延伸部を通して耳管の領域へ薬剤を提供するための第1のルーメン、及び鼓膜を通過して通気を提供するための第2のルーメンを含みうる。
【0151】
第1のルーメンは、第2のルーメン内に配置されてもよい。別の方法としては、第2のルーメンが、第1のルーメン内に配置される。これに加えて、又はこれに代えて、第1のルーメンは、第2のルーメンに隣接して配置される。二重ルーメンチューブは、生分解性の生体吸収性材料から作られるか、又はそれを含んでもよい。
【0152】
別の実施形態において、本発明は、耳管へ薬物を送達することによる耳管の治療に関する。本方法は、ルーメンを有するガイドを使用して鼻咽頭を介して耳管領域にアクセスすること、該ガイドのルーメンを通してガイドワイヤを導入し、軟骨と耳管の粘膜表面との間の粘膜下にガイドワイヤを位置付けること、薬物送達リザーバを有する一時的な管腔内インプラントをガイドワイヤに沿って通過させ、該インプラントを、ルーメンと軟骨との間の耳管領域の後部クッションにおける粘膜下に位置付けること、及び、該薬物送達リザーバから耳管領域へ薬物を送達することを含む。
【0153】
加えて、本方法はまた、薬物送達リザーバから、咽頭扁桃腺と耳管領域とへ同時に薬物を送達することを含んでもよい。1つの実施形態において、薬物送達リザーバは、インプラント上に配置されるコーティング層を含みうる。別の実施形態では、ガイドは、生分解性の生体吸収性材料を備える。
【0154】
別の実施形態では、患者の耳管の治療は、鼻咽頭を介して耳管領域へのアクセスを獲得すること、該耳管領域の中へ到達するように寸法決めされた中空ガイドワイヤであって、その遠位端部又は遠位端部の近くに配置される複数の開口を含む、中空ガイドワイヤを、患者の鼻咽頭を介して導入すること、及び、該開口を通して、患者の耳の耳管又は中耳領域のうちの少なくとも1つに薬物を送達することを含む。
【0155】
別の実施形態において、本発明は、患者の耳管にアクセスするためのシステムを提供する。本システムは、カテーテルの遠位端を耳管又は耳管近くに位置付けるために患者の鼻腔を通過するように構成されるガイドであって、30度〜90度の角度を有する屈曲を伴う遠位端を有するガイドと、耳管の中へと該ガイドを通過するように構成されるガイドワイヤと、を含みうる。
【0156】
1つの実施形態において、ガイドはカテーテルを備える。別の実施形態では、ガイドは二重ルーメンチューブを備える。別の実施形態では、本システムはまた、ガイドを通る通路用に構成される診断用デバイスを含んでもよい。別の実施形態では、本システムはまた、ガイドを通る通路用に構成される治療用デバイスを含んでもよい。
【0157】
ガイドワイヤのないデバイス
図15Aは、1つの実施形態に従って耳管を治療するためのデバイス1500を示す。デバイス1500は、細長い剛性シャフト1502を含む。剛性シャフトは、半可撓性金属又はプラスチックで構築されてもよい。デバイス1500に関して使用される「剛性」とは、シャフト1502を鼻の孔の中へと挿入するときに、シャフト1502が変形しないということを意味する。剛性シャフト1502は、可鍛性材料で形成され、現場で使用時に用途に合わせて屈曲されてもよい。治療用デバイス、この例では細長い可撓性インサート1504は、剛性シャフト1502の遠位部に連結される。シャフトが耳管に進入するのを防ぐために、止め具(図示せず)が、インサート1504/シャフト1502接合部に定置されてもよい。インサート1504は、耳管の中へ挿入されたときに、インサート1504が耳管の通路に沿い、耳管を著しく変形させないように、優先的に横剛性を有する。インサート1504はまた、あらかじめ成形された形状(図示せず)を含んでもよく、例えば、耳管の解剖学的構造へとあらかじめ成形される。インサート1504は、折り畳まれたり座屈したりすることなく耳管の中へ挿入するのに十分な強度の、縦剛性を優先的に有する。インサート1504のこの例は、コアワイヤ1506及び拡張可能バルーン1508を含む。コアワイヤ1506は、ステンレス鋼等の金属、又はニッケルチタン等の超弾性合金で構築されてもよい。.05〜.25mmの範囲のコアワイヤ1508直径が好適でありうる。バルーン1508は、柔軟性、半柔軟性、又は非柔軟性の構築物であってもよい。バルーン1508は、耳管の輪郭に一致するあらかじめ成形された形状を含んでもよい。バルーン1508は、部分的に又は完全に拡張した際に、本明細書に開示される治療用物質のうちの任意のものを送達するための、微小孔を含んでもよい。バルーン1508は、本明細書に開示される治療用物質のうちの任意のものを送達するためのコーティングを含んでもよい。デバイス1500は、球形状の無傷端1510を含んでもよく、それはコアワイヤ1506と一体化してもよい。デバイス1500は、シャフト1502の近位部に、インサート1504へ流体、エネルギー、及び電気信号を供給するための継手1511を含んでもよい。したがってデバイス1500は、流体の通過のためのルーメンを含んでもよい。デバイス1500は、耳管内への挿入のためにガイドワイヤを必要としないが、しかしながら、任意でガイドワイヤを使用してもよい。
【0158】
デバイス1500は、シャフト1502を把持し、鼻腔及び鼻咽頭の中へ、またスコープ、蛍光透視鏡、又は透光法を用いて耳管の中へ、インサートを誘導することによって、手動で挿入されてもよい。したがって、デバイス1500の一部分は、放射線不透過性のコーティング又は材料を含んでもよい。インサート1504は、透光法のために光を伝導するための光ファイバーを含んでもよい。透光用デバイスの例は、共に譲渡された米国特許出願第10/829,917号、及び同第11/522,497号に示され、そのどちらもその全体を参照により本明細書に組み込まれる。インサート1504はまた、CCD又はCMOSカメラを含んでもよく、また別個のスコープを伴わずに内視鏡観察をするための関連配線を含んでもよい。デバイス1500はまた、3Dトラッキング装置に連結されてもよい。
【0159】
示したインサート1504は単に例であり、裸線等の他の構築物を含んでもよい。裸線は、例えば、抵抗熱、超音波、又は電気外科エネルギー(例えば、RF)等の、エネルギーを送達しうる。エネルギーはまた、バルーン1504によって、例えば、高温の流体又は気体等によっても送達されうる。
【0160】
インサート1504はまた、耳管を支持又は拡張するためのステントを送達してもよい。ステントは、本明細書に開示される治療用物質のうちの任意のものを溶出させうる、ポリマー材料を含んでもよい。
【0161】
インサート1504はまた、耳管内への送達のために、シャフト1504から取り外し可能であってもよい。1つの実施形態において、インサート1504は、ポリ乳酸等の、また本明細書に開示される治療用物質のうちの任意のものを含みうる、生分解性ポリマーで構築されうる。インサート1504は次に、経時的に分解し、必要に応じて治療用物質を送達しうる。生分解性インサート1504はまた、耳管内の流体の排出のためのルーメンを含んでもよい。
【0162】
図15Bは、本発明の1つの実施形態に従って耳管を治療するための代替的デバイス1512を示す。デバイス1512は、大部分は
図15Aに示されるように構築されるが、しかしながら、本実施形態は、選択的屈曲1516を含む剛性シャフト1514を含む。屈曲1516は、30〜90度の範囲でありうる。屈曲1516は、特定の解剖学的構造において、耳管へのより容易なアクセスを可能にする。
【0163】
図15Cは、1つの実施形態に従って使用中のデバイス1500又は1512を示す。デバイス1500は、耳管ETの内部に定置されたインサート1504と共に示される。インサート1504は、耳管ETの輪郭に一致するように優先的に変形し、したがって、耳管ETを変形又は損傷することなく治療を送達しうる。別の方法としては、インサート1504は、耳管の輪郭に一致するようにあらかじめ成形され、位置付けられる間に僅かに変形する。インサート1504はまた、耳管ETの中へ挿入中にインサートの座屈を予防するのに十分に足り、したがってデバイス又は耳管ETの損傷を予防する、縦剛性を含む。
【0164】
図15Dは、1つの実施形態に従って使用中のデバイス1500又は1512を示す。本実施形態では、デバイス1500は、耳管ETの内部で拡張されうるステント1518を含む。ステントは、形状記憶合金構築物、又はバルーン1508によって拡張される変形可能な構築物を含んでもよい。
【0165】
図15Dは、1つの実施形態に従って使用中のデバイス1500又は1512を示す。本実施形態では、デバイス1500は、取り外し可能なインサート1520を含む。取り外し可能なインサートは、接合部1522で取り外されてもよい。この例では、インサート1520は、ルーメンを含む。インサート1520は生分解性であってもよく、治療用物質を経時的に送達してもよい。
【0166】
図16A及び16Bは、1つの実施形態に従って、患者の耳管に治療を施すための方法を示す。ガイドカテーテル1600は、患者の鼻腔を通して送られ、耳管ETの開口部に隣接して定置される。ガイドカテーテルの遠位部1602は、30〜90度の角度を有する屈曲を含む。1つの実施形態において、遠位部1602は、ガイドカテーテル1600の近位部より可撓性であってもよい。1つの実施形態において、ガイドカテーテルの遠位部1602は、可鍛性であってもよい。したがって、ユーザーは、遠位部1602を屈曲させ、ガイドカテーテル1600を耳管ETに対して所望の位置に定置してもよい。ガイドワイヤ1604は、ガイドカテーテル1600を通して耳管の中へと前進されることが可能である。
【0167】
図16Bにおいて、拡開カテーテル1606は、拡開カテーテル1606の拡開器1608を耳管ET内部に位置付けるように、ガイドワイヤ1600上を前進される。ガイドカテーテル1600は、任意で、拡開カテーテル1606がガイドワイヤ1604上で前進される前に、患者から除去可能であってもよい。拡開カテーテル1606は概して、細長いシャフト及び拡開器1608を含む。拡開器1608は、ポリマーバルーン(柔軟性、半柔軟性、又は非柔軟性)であってもよい。いくつかの実施形態では、バルーンは、加圧されたときに治療用又は診断用薬剤を送達するように、多孔質であってもよい。別の方法としては、拡開器1608は、複数の金属又はポリマーの歯で構築される、機械的に拡張可能なバスケットであってもよい。拡開カテーテル1606は概して、拡開器1608を膨張/作動させるための、近位に設置された接続部/設備(図示せず)を含む。治療用又は診断用薬剤は、拡開カテーテル1606の挿入の前又は後に、例えば、ガイドカテーテル1600の噴霧カテーテル又は噴霧ルーメンを介して、耳管ETの内側に塗布されうる。
【0168】
拡開器1608は、耳管ET内の所望の場所に定置された後に、拡張し耳管ETを拡開してもよい。耳管ETの開口部分は咽頭口を含み、拡開カテーテル1606は、咽頭口内に拡開器1608を位置付けるように前進されてもよい。拡開カテーテル1606の位置付けを補助するために、内視鏡を使用してもよい。内視鏡は、拡開カテーテル1606を観察するために、鼻腔を通して前進されてもよい。拡開カテーテル1606のシャフト上の目印を内視鏡から観察し、拡開器1608の近位端部からの目印の距離に基づいて、耳管ETの開口部に対する拡開器1608の場所を概算することが可能である。したがって、拡開カテーテル1606は、耳管ET内での拡開器1608の拡張前に、目印を所望の場所に位置付けるように動かすことができる。
【0169】
拡開器1608は、拡張状態のとき、長期間(例えば、数秒又は数分)その場所に保持されうる。拡開器1608はまた、例えば、本明細書に説明される治療用又は診断用薬剤のうちの1つ又はそれ以上のもの等の、物質を耳管ETへ送達してもよい。拡開器1608はまた、拡開器1608の拡張後の耳管の中への送達のための、拡張可能ステントを携持してもよい。拡開カテーテル1606及びガイドワイヤ1600は、拡開器1608が拡張していなくなった後で、患者から除去されてもよい。
【0170】
図17Aは、1つの実施形態に従って使用中の照明されたガイドワイヤ1700を示す。照明されたガイドワイヤ1700は、上述のガイドワイヤ1604と同様のやり方で使用される。しかしながら、照明されたガイドワイヤ1700は、遠位端1702で照明を提供し、ユーザーは患者の顔の外面上にそれを見ることができる(一般的に、「透光法」と称される)。ユーザーは、患者の組織を通過する光点1704の位置に基づき、遠位端1702を所望の場所に定置しうる。光点1704は、光点1704からの相対的距離に基づいて、他のデバイスの定置の参照点として使用してもよい。光点1704はまた、耳管ETの咽頭口を観察する内視鏡のための、補助的な又は主要な光源を提供してもよい。照明されたガイドワイヤ1700は、光源(図示せず)から遠位端1702まで光を通過させるための、光ファイバー経路を含んでもよい。本開示と併せて使用されうる照明されたガイドワイヤ及びスコープの例は、共同譲渡された米国特許出願第11/522,497号に示されまた説明され、その全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0171】
図18A及び18Bは、拡開カテーテル1606の代替的実施形態に従う拡開カテーテル1800を示す。拡開カテーテル1800は、取り外し可能な拡開器1802を含む。取り外し可能な拡開器1802は、取り外し可能な拡開器1802が耳管ETの内部で拡張された後、拡開カテーテル1800から取り外されてもよい。取り外し可能な拡開器1802は、取り外し可能な拡開器1802が拡開カテーテル1800から取り外された後に拡開したままであることを可能にする、一方向弁を含んでもよい。破壊可能なつなぎ目が、取り外し可能な拡開器1802と拡開カテーテル1800とをつなぎ合わせてもよい。取り外し可能な拡開器1802は、加圧流体の通過を可能にする少なくとも1つのルーメンを含んでもよい。使用中には、拡開カテーテル1800は、拡開カテーテル1606に関して本明細書で説明したように使用される。取り外し可能な拡開器1802は、膨張された後、捻るか、又は拡開カテーテル1800の近位部に印加された引く力によって、破壊可能なつなぎ目で取り外されうる。一方向弁は、取り外し可能な拡開器1802が、拡開カテーテル1800から取り外された後に収縮するのを防止する。取り外し可能な拡開器1802は、耳管ETを治療するための治療用又は診断用薬剤を含んでもよい。耳管ETの内部の圧は、取り外し可能な拡開器1802がそこで拡開した状態でいる間、ルーメンを介して均衡を保たれてもよい。取り外し可能な拡開器1802は、耳管ETから引き抜き、また任意で取り外し可能な拡開器1802を破裂させることによって、除去されうる。
【0172】
図18Cは、拡開カテーテル1606の代替的実施形態に従う拡開カテーテル1804を示す。拡開カテーテル1804は、拡開器1808内の通路を通って延伸しうる、複数の延伸可能な針1806を含む。それぞれの針1806は、注射器等の、治療用又は診断用薬剤源に流体接続することが可能である。異なる針1806は、異なる種類の治療用又は診断用薬剤に接続することが可能である。使用中、拡開カテーテル1800は、拡開カテーテル1606に関して本明細書で説明したように使用される。拡開器1808が膨張された後、針1806は、拡開器1808を通して耳管ETの組織の中へと前進されてもよい。針1806は次に、物質プルームPによって示されるように、耳管ETの組織の中へ1つ又はそれ以上の種類の治療用又は診断用薬剤を注入してもよい。物質を耳管ETの組織内へ注入した後、針は、拡開カテーテル1804の中へ引き戻されてよく、拡開カテーテル1804は耳管ETから除去されてもよい。
【0173】
図18Dは、拡開カテーテル1606の代替的実施形態に従う拡開カテーテル1810を示す。拡開カテーテル1810は、耳管ET内で拡開器1814の位置を維持するのに役立つ、少なくとも1対の対向する側方翼1812を含む。1対より多い対向する側方翼1812を使用してもよい。側方翼1812は、それぞれに完全に対向するように位置付ける必要はなく、奇数の側方翼1812の構成を使用してもよい。側方翼1812は、拡開カテーテル1810のシャフト1816から前進されると拡張するようにバイアスをかけられたばねである、細長い歯で構築されることも可能である。摺動可能に格納される側方翼1812を引っ張ることで、それらをシャフト1816の内部に折り畳むことができる。側方翼1812は、拡開カテーテル1810の近位端部で、例えば、スライダ機構の作動を通じて、操作することが可能である。側方翼1812は、耳管ETとの固定した接触を維持するのに役立つ、スパイク又はグリップを含みうる。使用中、拡開器1814及び側方翼1812は、シャフト1816から外へ同時に、又は同時にではなく前進される(すなわち、側方翼1812は、拡開器1814より前又は後に前進されてもよい)。側方翼1812は、耳管ETの開口部壁に力を印加し、拡開器1814を所望の位置に維持するのに役立つ。側方翼1812は、拡開器1814が所望の治療を耳管ETに施した後、シャフト1816の中へ引き戻されうる。
【0174】
図18E、18F、及び18Gは、拡開器1608の代替的実施形態を示す。拡開器1818は、
図18Eに示すように、耳管ETの咽頭口の円錐開口に一致し、その拡張を促進するような形状を有してもよい。拡開器1820はまた、
図18Fに示すような階段形状等の、可変形状を有してもよい。拡開器1818/1820は、耳管ET内部の圧の均衡を保つためのルーメンを有するシャフト1822に、取り付けることが可能である。圧力を解放するために、追加の圧力解放穴1824が、シャフト1822、及び/又は拡開器1818/1820のバルーン上に含まれうる。拡開器1818/1820はまた、
図18Gに示す「+」形状等の、非円形断面を有してもよい。この構成は、図示のように、膨張された拡開器1818/1820が耳管ETの内側全体に接触せず、また耳管ETの内側全体を塞がないため、更に圧力を解放する。したがって、圧力は、耳管ETの塞がれていない区分1824を通して解放されうる。
【0175】
図18Hは、代替的実施形態に従う拡開器1826を示す。拡開器1826は、拡開器1826の外側の周囲に周囲方向に定置される、切断部材1828を含む。切断部材1828は、ワイヤ又は鋭利に研いだ刃であってもよい。切断部材は、エネルギー(例えば、RF)を送達するように構成されてもよい。使用中、切断部材1828は拡開器と共に耳管ETに当たるように拡張し、拡開器が開き、制御された場所に沿って伸びることを可能にする。
図18I及び18Jは、治療された耳管ETの前後を表したものを示す。耳管ETを制御された区分1829に沿って切断することで、耳管ET壁の弾性応答を少なくとも部分的に克服することによって、耳管ETが拡張された形状を維持することを可能にする。
【0176】
図19Aは、1つの実施形態に従うステント1900を示す。ステント1900は、遠位部1902から近位部1904へと漸進的に直径が増大する、先細コイルとして構成される。コイルの形状は、その拡張を促進するように、耳管ETの咽頭口と同様の縮尺であってもよい。ステント1900は、可鍛性の又は形状記憶の合金で構築されてもよい。別の方法としては、ステント1900は、生分解性ポリマーで構築されてもよい。ステント1900は、本明細書に開示される治療用又は診断用薬剤のうちの任意のもの等の物質を、例えば、物質を含有する生分解性ポリマーコーティングを介して、運搬及び送達するように構成されてもよい。ポリマーコーティングは、乳酸又はグリコール酸、又は、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネイト)コポリマー、及びポリ(−カプロラクトン)ホモポリマー、コポリマーポリ無水物、ポリオルトエステル、又はポリホスファゼンを含む他の材料に基づく、生分解性ポリマーと混合される、物質マトリックスを含んでもよい。ステント1900は、本明細書に開示される拡開カテーテルのうちの任意のもの等の、拡開カテーテルによって、携持及び送達されてもよい。使用中、ステント1900は、図示のように、耳管ETの開口部の機械的拡張を維持する。別の方法としては、ステント1900は、耳管ET壁に対して、そこへ機械的補助を提供するために最小限の力を印加するように構成されてもよい。ステントは、耳管ET内に永久に定置されてもよく、又は後に除去されてもよい。
【0177】
図19Bは、別の実施形態に従うステント1906を示す。ステントは、複数の拡張可能な歯1910を接続する接続部材1908を含む。歯1910は、可鍛性の又は形状記憶の合金で製作されてもよい。別の方法としては、歯1910は、生分解性ポリマーで製作されてもよい。歯1910は、本明細書に開示される治療用又は診断用薬剤のうちの任意のもの等の物質を、例えば、物質を含有する生分解性ポリマーコーティングを介して、運搬及び送達するように構成されてもよい。ポリマーコーティングは、乳酸又はグリコール酸、又は、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネイト)コポリマー、及びポリ(−カプロラクトン)ホモポリマー、コポリマーポリ無水物、ポリオルトエステル、又はポリホスファゼンを含む他の材料に基づく、生分解性ポリマーと混合される、物質マトリックスを含んでもよい。歯1910は、本明細書に開示される拡開カテーテルのうちの任意のもの等の、拡開カテーテルによって、携持及び送達されてもよい。歯1910は、収縮するシャフトからの除去の後で、又はバルーンからの力を通して、径方向に自己拡張するように構成されてもよい。使用中、ステント1906は、図示のように、耳管ETの機械的拡張を維持する。別の方法としては、ステント1906は、耳管ET壁に対して、そこへ機械的補助を提供するために最小限の力を印加するように構成されてもよい。ステント1906は、耳管ET内に永久に定置されてもよく、又は後に除去されてもよい。
【0178】
図19C及び19Dは、別の実施形態に従うステント1910を示す。ステントは、複数の拡張可能な歯1916を接続する、遠位接続部材1912及び除去可能な近位接続部材1914を含む。歯1916は、可鍛性の又は形状記憶の合金で製作されてもよい。別の方法としては、歯1916は、生分解性ポリマーで製作されてもよい。歯1916は、本明細書に開示される治療用又は診断用薬剤のうちの任意のもの等の物質を、例えば、物質を含有する生分解性ポリマーコーティングを介して、運搬及び送達するように構成されてもよい。ポリマーコーティングは、乳酸又はグリコール酸、又は、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネイト)コポリマー、及びポリ(−カプロラクトン)ホモポリマー、コポリマーポリ無水物、ポリオルトエステル、又はポリホスファゼンを含む他の材料に基づく、生分解性ポリマーと混合される、物質マトリックスを含んでもよい。歯1916は、本明細書に開示される拡開カテーテルのうちの任意のもの等の、拡開カテーテルによって、携持及び送達されてもよい。歯1916は、収縮するシャフトからの除去の後、径方向に自己拡張するように構成されてもよい。使用中、ステント1906は、送達カテーテルを介して送達される。除去可能な近位接続部材1914は次に、除去され、ステント1910の近位部を拡張し、したがって、耳管ETの咽頭口を拡張することが可能である。定位置に置かれると、ステント1906は、耳管ETの機械的拡張を維持する。別の方法としては、歯1916は、耳管ET壁に対して、そこへ機械的補助を提供するために最小限の力を印加するように構成されてもよい。ステント1910は、耳管ET内に永久に定置されてもよく、又は後に除去されてもよい。
【0179】
図20A、20B、及び20Cは、種々の実施形態に従うガイドカテーテル1600の遠位構成を示す。示される遠位端は、耳管ETへ進入し、他のデバイスがその中へ前進することを可能にするように、構成されうる。
図20Aは、傾斜先端2002を示し、低減された最先端によって、耳管ETの中へのより容易な進入を可能にする。
図20Bは、先細2004を示し、低減された最先端によって、耳管ETの中へのより容易な進入を可能にする。
図20Cは、球状先端2006を示し、増大された密封面積によって、ガイドカテーテル1600が耳管ETを密封することを可能にする。この先端は、耳管ETに優れた密封能力を提供する、シリコーン又はゴム等の可撓性材料で構築されてもよい。使用中、先端は、加圧、吸引、及び/又は、耳管ETへの物質の塗布等の治療のために、耳管ETを密封しうる。
【0180】
図21A及び21Bは、1つの実施形態に従うインサート2100を示す。インサートは、そこから周囲方向に延伸する複数の支柱2104を伴う、細長い中心シャフト2102を含む。各支柱2104は、耳管ETに接して定置されるように曲線である、外側部材2106に接続する。示されるインサート2100は、3つの3角形状の支柱2104を含むが、しかしながら、代替的実施形態では2つ又はそれ以上の支柱2104を使用してもよい。インサート2100は、ダイから押し出される可撓性ポリマーで製作されてもよい。別の方法としては、インサート2100は、生分解性ポリマーで製作されてもよい。外側部材2106は、本明細書に開示される治療用又は診断用薬剤のうちの任意のもの等の物質を、運搬及び送達するように構成されてもよい。インサート2100は、本明細書に開示される拡開カテーテルのうちの任意のもの等の、拡開カテーテルによって、携持及び送達されてもよい。インサート2100は、収縮するシャフトからの除去の後、自己拡張するように構成されてもよい。使用中、ステント1906は、送達カテーテルを介して送達される。定位置に置かれると、インサート2100は、
図21Bに示すように、耳管ETの機械的拡張を維持する。インサート2100は、耳管ET内で空間2108を維持し、その中の均圧を維持する。インサート2100は、耳管ET内に永久に定置されてもよく、又は後に除去されてもよい。
【0181】
図22Aは、1つの実施形態に従う紐状インサート2200を示す。紐状インサート2200は、本明細書に開示される治療用又は診断用薬剤のうちの任意のもの等の物質を、耳管ETへ運搬及び送達するように構成される、細長い合金又はポリマーの紐であってもよい。紐状インサート2200は、乳酸又はグリコール酸、又は、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネイト)コポリマー、及びポリ(−カプロラクトン)ホモポリマー、コポリマーポリ無水物、ポリオルトエステル、又はポリホスファゼンを含む他の材料に基づく、生分解性ポリマーであってもよい。紐状インサートは、耳管ETの通路に沿うように、可撓性であってもよい。紐状インサート2200は、組み紐状構成の、いくつかの紐状体でありうる。紐状インサートは、耳管ETからの除去を補助する、近位輪2201を含むことが可能である。
【0182】
図22B、22C、及び22Dは、種々の実施形態に従う、耳管ETへ紐状インサート2200を送達するための送達カテーテルを示す。送達カテーテル2202は、シャフトとして構成され、紐状インサート2200を外側で保持するためのスネア2204を含む。送達カテーテル2202は、ガイドワイヤ1604上で摺動されるように構成されうる。使用中、スネア2204は、紐状インサート2200への張力を緩め、送達カテーテル2202からのその除去を可能にするように作動してもよい。
【0183】
送達カテーテル2204は、紐状インサート2200の遠位部を内側に配置した状態で、紐状インサート2200を外側で保持する、シャフトとして構成される。摺動可能な切断部材2206は、送達カテーテル2204の内部に可動に格納される。送達カテーテル2204は、ガイドワイヤ1604上で摺動するように構成されることが可能である。使用中、摺動可能な切断部材2206は、遠位方向に動き、紐状インサート2200を送達カテーテル2204から取り外すために切断する。
【0184】
送達カテーテル2208は、紐状インサート2200を送達カテーテル2208の外側表面上に外側で保持する、シャフトとして構成される。送達カテーテル2208は、ガイドワイヤ1604上で摺動するように構成されることが可能である。送達カテーテル2208と紐状インサート2200との間の接続2210は、電気でつなげることが可能である。使用中、接続2210は、好適な電流がそこを通過すると切断される。
【0185】
図22E及び22Fは、1つの実施形態に従う、使用中の紐状インサート2200を示す。紐状インサート2200は、送達カテーテル2212及びガイドカテーテル1600を介して送達される。ガイドワイヤ1604も同様に、送達を補助するために使用されてもよい。送達カテーテル2212は、上述の送達カテーテルのうちの任意のものであってもよい。紐状インサート2200は、耳管ET内部で定置されると、持続した期間に渡って物質を送達することが可能である。紐状インサート2200は、耳管ET内に永久に残されてもよく、又は後に除去されてもよい。
【0186】
本発明は、発明の本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態として実施することができる。これらの他の実施形態は、以下の「特許請求の範囲」に記載される本発明の範囲に含まれるものとする。
【0187】
〔実施の態様〕
(1) 患者の耳管を拡開するためのシステムであって、
前記患者の鼻腔を通して前進可能であり、かつ前記患者の前記耳管の開口部又はその近くに位置付け可能な遠位端部を含む、ガイドカテーテルであって、前記ガイドカテーテルの遠位部が30度〜90度の角度を有する屈曲を含み、前記遠位部が前記ガイドカテーテルの近位部より可撓性である、ガイドカテーテルと、
ガイドワイヤであって、前記ガイドワイヤの遠位端部が前記耳管へ進入することができるように、前記ガイドカテーテルを通して前進可能な、ガイドワイヤと、
前記ガイドワイヤ上で前進可能であり、かつ前記耳管内で位置付け可能であり、前記耳管を拡張するための拡開器を含む、拡開カテーテルと、を備える、システム。
(2) 前記ガイドカテーテルの前記遠位部が可鍛性である、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記耳管の前記開口部が前記耳管の咽頭口を含み、前記拡開カテーテルの前記拡開器が前記咽頭口内で位置付け可能である、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記ガイドワイヤが照明ガイドワイヤを備える、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記照明ガイドワイヤから照射される光を観察するための内視鏡を更に備える、実施態様4に記載のシステム。
(6) 前記ガイドカテーテルが、前記拡開カテーテルが前記ガイドワイヤ上で前進される前に、前記患者から除去可能である、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記耳管内で定置されるよう寸法決めされるステントを更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記拡開カテーテルが、前記拡開器の位置を維持するための、バルーンに隣接する側方翼を含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記拡開器が、膨張されると、前記耳管ETの咽頭口の円錐開口に一致するように成形される、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記拡開器が、前記耳管の全体を占有しない断面を有するように成形される、実施態様1に記載のシステム。
【0188】
(11) 前記拡開器が切断部材を含む、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記拡開カテーテルが、前記拡開器の近位端部からの目印の距離を特定するための、前記カテーテルのシャフト上の前記目印を更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(13) 前記拡開器を使用して、前記耳管に少なくとも1つの物質を適用するための構造を更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(14) 前記拡開器が、前記物質を送達するための多孔質バルーンを備える、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記拡開器が、前記物質を送達するための複数の針を有するバルーンを備える、実施態様13に記載のシステム。
(16) 前記拡開カテーテルが、前記拡開器の位置を拡張中に維持するように前記耳管に対して力を印加するための手段を含む、実施態様1に記載のシステム。
(17) 患者の耳管を拡開するためのシステムであって、
前記患者の鼻腔を通して前進可能であり、かつ前記患者の前記耳管の開口部又はその近くに位置付け可能な遠位端部を含む、ガイドカテーテルであって、前記ガイドカテーテルの遠位部が30度〜90度の角度を有する屈曲を含み、前記遠位部が前記ガイドカテーテルの近位部より可撓性である、ガイドカテーテルと、
送達カテーテルであって、前記耳管内に前記送達カテーテルを定置するように前記ガイドカテーテルを通して前進可能な、送達カテーテルと、
前記送達カテーテルを使用して前記耳管の中へ前進可能な、細長い物質送達デバイスと、を備える、システム。
(18) 前記細長い物質送達デバイスが、少なくとも1つの物質を溶出させるように構成される細長い紐状体である、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記細長い紐状体が、前記送達カテーテルの内側から前進可能である、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記細長い紐状体が、前記送達カテーテルの外側から取り外し可能である、実施態様18に記載のシステム。
【0189】
(21) 前記細長い物質送達デバイスが、前記物質を経時的に溶出させるように構成されるバルーンである、実施態様20に記載のシステム。
(22) 前記バルーンが、前記バルーンを膨張させることによって前記送達カテーテルから切り離されうる、実施態様21に記載のシステム。
(23) 前記バルーンが、前記耳管内の均圧を可能にするように構成される、実施態様22に記載のシステム。
(24) 前記細長い物質送達デバイスが、拡張可能ステントである、実施態様17に記載のシステム。
(25) 前記拡張可能ステントが前記耳管内で拡張するように構成される、実施態様24に記載のシステム。
(26) 前記細長い物質送達デバイスが、複数の支柱に接続される細長い中心部材を含む、細長いインサートであり、各支柱が細長い外側部材に接続される、実施態様17に記載のシステム。
(27) 前記支柱が、前記耳管内に空間を提供及び維持し、その中の均圧を維持する、実施態様26に記載のシステム。
(28) 患者の耳管を拡開するための拡開カテーテルであって、
シャフト、及び、該シャフトに連結されていて、前記耳管内で位置付け可能であり、前記耳管を拡張するための拡開器を含み、
前記拡開カテーテルのシャフト上の目印を更に備え、前記拡開器の近位端部からの前記目印の距離に基づいて、前記患者の前記耳管の前記開口部に対する前記拡開器の位置を特定する、拡開カテーテル。
(29) 前記耳管の前記開口部が前記耳管の咽頭口を含み、前記拡開カテーテルの前記拡開器が前記咽頭口内で位置付け可能である。
(30) 前記拡開器が、膨張されると、前記耳管ETの咽頭口の円錐開口に一致するように成形される。
(31) 前記拡開器が、前記耳管の全体を占有しない断面を有するように成形される。
(32) 前記拡開器が切断部材を含む。
(33) 前記拡開器を使用して、前記耳管に少なくとも1つの物質を適用するための構造を更に備える。
(34) 前記拡開器が、前記物質を送達するための多孔質バルーンを備える。
(35) 前記拡開器が、前記物質を送達するための複数の針を有するバルーンを備える。