(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記指示手段により起立動作が指示される前の安静時の心拍数と、前記被診断者の年齢に基づいて算出される内因性心拍数との差が、予め設定された正常範囲であるか否かにより前記被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、該判定結果を表示するよう前記表示手段を制御する請求項1から4のいずれか1項記載の自律神経機能診断装置。
前記制御手段は、前記心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および前記安静時の心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲内であるか否かを2次元表示するよう前記表示手段を制御する請求項5記載の自律神経機能診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述したような先行技術は、被診断者から測定された心電データを周波数解析してパワースペクトルを取得し、このパワースペクトルからLF(Low Frequency)成分、HF(High Frequency)成分、LF/HF、CVRR(Coefficient of Variance of R-R intervals:心電
図R−R間隔変動係数)等の各種値を算出して、被診断者の自律神経機能の状態を判定するものであった。
【0008】
そのため、このような先行技術では、被診断者の体に電極を装着して心電データを測定する手間が必要であったり、心電データに基づいて様々な値を算出するために煩雑な算出処理を必要とするため、被診断者の自律神経機能の異常の有無を簡便に行うことができないという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、自律神経機能の異常の有無を、心電データ等の測定をする必要なく簡便に判定することができる自律神経機能診断装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[自律神経機能診断装置]
上記目的を達成するために、本発明の自律神経機能診断装置は、被診断者の心拍数を測定する心拍数測定手段と、
生体情報を表示するための表示手段と、
前記被診断者に対して起立動作を指示する指示手段と、
前記指示手段により起立動作が指示された後の心拍数と、前記指示手段により起立動作が指示される前の心拍数との差である心拍数増加量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより前記被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、該判定結果を表示するよう前記表示手段を制御する制御手段とを有する自律神経機能診断装置である。
【0011】
本発明によれば、起立動作前後の心拍数増加量が予め設定された正常範囲であるか否かにより、交感神経の反応(機能)が適正な範囲であるかを判定することができ、自律神経機能の異常の有無を、心電データ等の測定をする必要なく簡便に判定することができるという効果を得ることができる。
【0012】
また、本発明は、前記被診断者の年齢に基づく心拍数増加量の正常範囲の情報を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記被診断者の年齢と前記記憶手段に記憶された情報とから、前記被診断者の年齢に基づく心拍数増加量の正常範囲を決定するようにしても良い。
【0013】
本発明によれば、被診断者の年齢に応じた正常範囲を用いて被診断者の自律神経機能の判定を行うことができるため、より高い精度で、自律神経機能の異常の有無を判定することができるという効果を得ることができる。
【0014】
また、本発明は、前記指示手段が、前記被診断者に対して着席動作を指示し、
前記制御手段は、前記指示手段により着席動作が指示された後の心拍数と、前記指示手段により着席動作が指示される前の心拍数との差である心拍数減少量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより前記被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、該判定結果を表示するよう前記表示手段を制御するようにしても良い。
【0015】
本発明によれば、心拍数増加量だけでなく、心拍数減少量を用いて自律神経機能の異常の有無を判定することができるため、より高い精度での判定を行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明は、前記制御手段が、前記心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および前記心拍数減少量が正常範囲内であるか否かを2次元表示するよう前記表示手段を制御するようにしても良い。
【0017】
本発明によれば、心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および心拍数減少量が正常範囲内であるか否かが2次元表示されるため、被診断者の自律神経機能の異常の有無を直感的に把握することが可能となる。
【0018】
また、本発明は、前記被診断者の年齢に基づく心拍数減少量の正常範囲の情報を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記被診断者の年齢と前記記憶手段に記憶された情報とから、前記被診断者の年齢に基づく心拍数減少量の正常範囲を決定するようにしても良い。
【0019】
本発明によれば、被診断者の年齢に応じた正常範囲を用いて被診断者の自律神経機能の判定を行うことができるため、より高い精度で、自律神経機能の異常の有無を判定することができるという効果を得ることができる。
【0020】
さらに、本発明は、前記制御手段が、前記指示手段により起立動作が指示される前の安静時の心拍数と、前記被診断者の年齢に基づいて算出される内因性心拍数との差が、予め設定された正常範囲であるか否かにより前記被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、該判定結果を表示するよう前記表示手段を制御するようにしても良い。
【0021】
本発明によれば、心拍数増加量だけでなく、安静時の心拍数と内因性心拍数との差を用いて自律神経機能の異常の有無を判定することができるため、より高い精度での判定を行うことが可能となる。
【0022】
さらに、本発明は、前記制御手段が、前記心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および前記安静時の心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲内であるか否かを2次元表示するよう前記表示手段を制御するようにしても良い。
【0023】
本発明によれば、心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および安静時の心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲内であるか否かが2次元表示されるため、被診断者の自律神経機能の異常の有無を直感的に把握することが可能となる。
【0024】
また、本発明の他の自律神経機能診断装置は、心拍数測定手段によって測定された被診断者の心拍数を受信する受信手段と、
生体情報を表示するための表示手段と、
前記被診断者に対して起立動作を指示する指示手段と、
前記指示手段により起立動作が指示された後の心拍数と、前記指示手段により起立動作が指示される前の心拍数との差である心拍数増加量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより前記被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、該判定結果を表示するよう前記表示手段を制御する制御手段とを有する自律神経機能診断装置である。
【0025】
[プログラム]
また、本発明のプログラムは、心拍数測定手段によって測定された被診断者の起立動作前の心拍数を受信するステップと、
前記被診断者に対して起立動作を指示するステップと、
心拍数測定手段によって測定された起立動作後の被診断者の心拍数を受信するステップと、
起立動作後の心拍数と、起立動作前の心拍数との差である心拍数増加量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより前記被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定するステップと、
該判定結果を表示するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0026】
以上、説明したように、本発明によれば、自律神経機能の異常の有無を、心電データ等の測定をする必要なく簡便に判定することが可能になるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態の自律神経機能診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】自律神経機能診断を行うためのアプリが起動した状態のスマートフォン10の機能構成を説明するための図である。
【
図3】被診断者の年齢に応じて変化する心拍数増加量の正常範囲の情報の一例を示す図である。
【
図4】被診断者の年齢に応じて変化する、安静時心拍数と内因性心拍数との差の正常範囲の情報の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態の自律神経機能診断装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】被診断者に対して着席して安静にすることを指示する際の画面表示例を示す図である。
【
図7】被診断者に対して起立動作を指示する際の画面表示例を示す図である。
【
図8】被診断者に対して着席動作を指示する際の画面表示例を示す図である。
【
図9】心拍数増加量を用いた判定を行って交感神経機能の異常の有無を判定する際の処理を示すフローチャートである。
【
図10】安静時心拍数と内因性心拍数との差を用いた判定を行って基礎交感神経機能の異常の有無を判定する際の処理を示すフローチャートである。
【
図11】心拍数減少量を用いた判定を行って副交感神経機能の異常の有無を判定する際の処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図5のステップS108に示した判定結果の表示方法の一例を示す図である。
【
図13】実際の被診断者から測定されたデータ例を示す図である。
【
図14】健常者の自律神経機能の判定を行った際に、スマートフォン10の表示画面には表示される画面例を示した図である。
【
図15】スポーツ選手の自律神経機能の判定を行った際に、スマートフォン10の表示画面には表示される画面例を示した図である。
【
図16】パーキンソン病患者の自律神経機能の判定を行った際に、スマートフォン10の表示画面には表示される画面例を示した図である。
【
図17】心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および心拍数減少量が正常範囲内であるか否かを、スマートフォン10の表示画面に2次元表示した場合の一例を示す図である。
【
図18】心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および安静時の心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲内であるか否かを、スマートフォン10の表示画面に2次元表示するようにした場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態の自律神経機能診断装置の構成を示すブロック図である。
【0029】
本実施形態の自律神経機能診断装置は、スマートフォン10と、腕時計型の心拍計(脈拍計)20とから構成されている。
【0030】
心拍計20は自律神経機能の診断を行うとする被診断者の手首に装着され、被診断者の心拍数を測定する。なお、心拍計20は、実際には被診断者の脈拍数を計測するものであるが、脈拍数と心拍数はほとんど同一のものであるため、心拍計20は、被診断者の脈拍数を心拍数として測定する心拍数測定手段であるものとして説明を行う。
【0031】
なお、本実施形態では、心拍計20は被診断者の手首に装着されるものに限定されるものではなく、被診断者の指先に装着され、被診断者の橈骨動脈に当てられた圧力センサを用いて脈拍数を測定するようなものであってもよい。
【0032】
さらに、スマートフォン10に備えられているカメラ等の撮像手段に被診断者の指を押し当ててもらい、カメラにより撮影される輝度の変化から被診断者の脈拍数(心拍数)を測定するようなことも可能である。この場合には、このカメラを含む撮影部が心拍数測定手段となる。
【0033】
そして、スマートフォン10と心拍計20との間は、例えば、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信により接続されており、心拍計20により計測された被診断者の心拍数はスマートフォン10に送信されるようになっている。
【0034】
また、スマートフォン10には、本実施形態の自律神経機能診断を行うためのプログラムがアプリケーションソフトウェア(以下アプリと略す。)として予めダウンロードされており、このアプリを起動するためのアイコン30がスマートフォン10の画面上に表示されている。
【0035】
ユーザが、このアイコン30を操作することにより、本実施形態の自律神経機能診断を行うためのアプリが起動される。
【0036】
次に、この自律神経機能診断を行うためのアプリが起動した状態のスマートフォン10の機能構成を
図2を参照して説明する。
【0037】
なお、説明を簡単にするために、
図2ではスマートフォン10の通話機能等を実現するための構成等については省略している。
【0038】
本実施形態の自律神経機能診断装置として動作するスマートフォン10は、
図2に示されるように、通信部12と、表示部14と、制御部18と、記憶部16とを備えている。
【0039】
通信部12は、心拍計20によって測定された被診断者の心拍数を受信する(受信手段)。
【0040】
表示部14は、通信部12を介して受信した心拍数等の生体情報を表示する。
【0041】
記憶部16は、被診断者の年齢に基づく心拍数増加量の正常範囲の情報や、被診断者の年齢に基づく心拍数減少量の正常範囲の情報を記憶する。また、記憶部16は、安静時心拍数と内因性心拍数との差の、被診断者の年齢に基づく正常範囲の情報を記憶する。
【0042】
例えば、
図3に示されるような、被診断者の年齢に応じて変化する心拍数増加量の正常範囲の情報や、
図4に示されるような、被診断者の年齢に応じて変化する、安静時心拍数と内因性心拍数との差の正常範囲の情報を記憶する。また、記憶部16は、心拍数増加量の正常範囲の情報等と同様にして、心拍数減少量の正常範囲の情報も記憶する。
【0043】
制御部18は、例えばコンピュータからなり、被診断者に対して表示部14を介して、起立動作の指示や着席操舵の指示を行う指示手段として機能する。
【0044】
また、制御部18は、被診断者の年齢の情報と記憶部16に記憶された情報とから、被診断者の年齢に基づく心拍数増加量の正常範囲を決定する。
【0045】
そして、制御部18は、起立動作を指示した後の心拍数と、起立動作を指示する前の心拍数との差である心拍数増加量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、その判定結果を表示するよう表示部14を制御する。
【0046】
また、制御部18は、被診断者の年齢の情報と記憶部16に記憶された情報とから、被診断者の年齢に基づく心拍数減少量の正常範囲を決定する。
【0047】
そして、制御部18は、着席動作を指示した後の心拍数と、着席動作を指示する前の心拍数との差である心拍数減少量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、その判定結果を表示するよう表示部14を制御する。
【0048】
さらに、制御部18は、起立動作を指示する前の安静時の心拍数と、被診断者の年齢に基づいて算出される内因性心拍数との差が、予め設定された正常範囲であるか否かにより被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、その判定結果を表示するよう表示部14を制御する。なお、内因性心拍数についての詳細は後述する。
【0049】
また、制御部18は、心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および心拍数減少量が正常範囲内であるか否かを2次元表示するよう表示部14を制御する。
【0050】
さらに、制御部18は、心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および安静時の心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲内であるか否かを2次元表示するよう表示部14を制御する。
【0051】
ここで、内因性心拍数について以下において詳細に説明する。
【0052】
心拍数は、自律神経に代表される外因性要因と、洞房結節(洞房節)機能という内因性要因により決定される。そして、内因性心拍数とは、自律神経等の外部刺激(外因性要因)による影響が無い場合に、洞房結節が自発的に電位を発生させて一定の間隔で定期的に心臓を拍動させた場合の心拍数である。
【0053】
この内因性心拍数は、自律神経機能による影響を取り除いた場合の心拍数であり、標準的な値は年齢に基づいて下記のような計算式(1)により算出される。
【0054】
内因性心拍数=117.2−(0.53×年齢)・・・(1)
【0055】
そして、一定のリズムで拍動を行い続ける心臓の洞房結節に自律神経が働くことにより最終的な心拍数が決定される。ここで、自律神経のうち交感神経は心拍数を増加させる方向に機能し、副交感神経は心拍数を減少させる方向に機能する。
【0056】
ここで、人体では起立動作等の負荷動作が行われると、交感神経が反応して心拍数が増加し、起立していた人体が着席する等して安静状態になると副交感神経が反応して心拍数が減少する。
【0057】
そのため、起立動作前後の心拍数の増加量を心拍数増加量として、年齢に基づく正常範囲内であるか、正常範囲より大きいか、あるいは正常範囲よりも小さいかを判定することにより、その被診断者の交感神経機能が正常であるか、亢進状態であるか、あるいは低下状態であるかを判定することが可能となる。
【0058】
また、同様に、起立動作から着席した場合の前後の心拍数の減少量を心拍数減少量として、年齢に基づく正常範囲内であるか、正常範囲より大きいか、あるいは正常範囲よりも小さいかを判定することにより、その被診断者の副交感神経機能が正常であるか、低下状態であるか、あるいは亢進状態であるかを判定することが可能となる。
【0059】
さらに、上記のような判定を行う際の基準となる安静時の心拍数が正常であるか否かを評価するために、安静時心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲であるか否かを判定することにより、基礎交感神経機能が正常であるか否かを判定することが可能となる。
【0060】
次に、本実施形態の自律神経機能診断装置の動作を
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0061】
自律神経機能診断が開始されると、制御部18は、先ずスマートフォン10の表示部14に
図6に示すような画像を表示させて、被診断者に対して着席して安静にすることを指示する(ステップS101)。
【0062】
そして、その後ある一定時間が経過すると、制御部18は、通信部12を介して心拍計20から受信した心拍数を起立動作前の心拍数、つまり安静時の心拍数として測定する(ステップS102)。
【0063】
なお、心拍数の測定には、一定時間内に測定された複数の心拍数の平均値を算出したり、複数に心拍数のうちの最大値を選択したり、最小値を選択する等の様々な測定方法がある。
【0064】
次に、制御部18は、スマートフォン10の表示部14に
図7に示すような画像を表示させて被診断者に対して起立動作を行うことを指示する(ステップS103)。
【0065】
そして、制御部18は、通信部12を介して心拍計20から受信した心拍数を起立動作後の心拍数として測定する(ステップS104)。
【0066】
そして、制御部18は、表示部14に
図8に示すような画像を表示させて被診断者に対して再度着席動作を行うことを指示する(ステップS105)。
【0067】
そして、制御部18は、通信部12を介して心拍計20から受信した心拍数を着席後の心拍数として測定する(ステップS106)。
【0068】
そして、制御部18は、上記で測定された起立動作前の心拍数、起立動作後の心拍数、着席後の心拍数を用いて、被診断者に自律神経機能の異常の有無を判定し(ステップS107)、その判定結果および測定結果を表示部14に表示させる(ステップS108)。
【0069】
次に、
図5のステップS107に示した自律神経機能の異常の有無の判定方法の詳細を、
図9、
図10、
図11のフローチャートを参照して説明する。
【0070】
先ず、
図9を参照して、心拍数増加量を用いて自律神経機能の異常の有無を判定する方法を説明する。
【0071】
図9は、心拍数増加量を用いた判定を行って交感神経機能の異常の有無を判定する際の処理を示すフローチャートである。なお、この
図9では、心拍数増加量の正常範囲が4拍以上8拍以下(4〜8拍)である場合を用いて説明する。
【0072】
先ず、制御部18は、被診断者の起立試験後の心拍数から起立試験前の心拍数を減算することにより心拍数増加量を算出する。そして、制御部18は、この心拍数増加量が下限値である4拍以上であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0073】
そして、心拍数増加量が4拍以上である場合(ステップS201においてyes)、制御部18は、心拍数増加量が上限値である8拍以下であるか否かの判定を行う(ステップS202)。
【0074】
ここで、心拍数増加量が8拍以下である場合(ステップS202においてyes)、制御部18は、交感神経機能は正常であると判定する(ステップS203)。
【0075】
なお、心拍数増加量が4拍以上でない場合(ステップS201においてno)、制御部18は、交感神経機能が低下状態であると判定する(ステップS204)。
【0076】
なお、心拍数増加量が8拍以下でない場合(ステップS202においてno)、制御部18は、交感神経機能が亢進状態であると判定する(ステップS205)。
【0077】
次に、
図10を参照して、安静時心拍数と内因性心拍数との差を用いて自律神経機能の異常の有無を判定する方法を説明する。
【0078】
図10は、安静時心拍数と内因性心拍数との差を用いた判定を行って基礎交感神経機能の異常の有無を判定する際の処理を示すフローチャートである。なお、この
図10では、安静時心拍数と内因性心拍数との差の正常範囲が−30拍以上−11拍以下(−30〜−11拍)である場合を用いて説明する。
【0079】
先ず、制御部18は、被診断者の起立試験前の安静時の心拍数から、上記で説明した計算式(1)により算出される被診断者の年齢に応じた内因性心拍数を減算することにより、安静時心拍数と内因性心拍数との差を算出する。そして、制御部18は、この心拍数の差が下限値である−30拍以上であるか否かを判定する(ステップS301)。
【0080】
そして、この心拍数の差が−30拍以上である場合(ステップS301においてyes)、制御部18は、この心拍数の差が上限値である−11拍以下であるか否かの判定を行う(ステップS302)。
【0081】
ここで、心拍数増加量が−11拍以下である場合(ステップS302においてyes)、制御部18は、基礎交感神経機能は正常であると判定する(ステップS303)。
【0082】
なお、この心拍数の差が−30拍以上でない場合(ステップS301においてno)、制御部18は、基礎交感神経機能が緩和状態であると判定する(ステップS304)。
【0083】
なお、この心拍数の差が−11拍以下でない場合(ステップS302においてno)、制御部18は、基礎交感神経機能が緊張状態であると判定する(ステップS305)。
【0084】
次に、
図11を参照して、心拍数減少量を用いて自律神経機能の異常の有無を判定する方法を説明する。
【0085】
図11は、心拍数減少量を用いた判定を行って副交感神経機能の異常の有無を判定する際の処理を示すフローチャートである。なお、この
図11では、心拍数減少量の正常範囲が−7拍以上−1拍以下(−7〜−1拍)である場合を用いて説明する。
【0086】
先ず、制御部18は、被診断者の再着席後の心拍数から着席動作前の立位時の心拍数を減算することにより心拍数減少量を算出する。そして、制御部18は、この心拍数減少量が下限値である−7拍以上であるか否かを判定する(ステップS401)。
【0087】
そして、心拍数減少量が−7拍以上である場合(ステップS401においてyes)、制御部18は、心拍数減少量が上限値である−1拍以下であるか否かの判定を行う(ステップS402)。
【0088】
ここで、心拍数減少量が−1拍以下である場合(ステップS402においてyes)、制御部18は、副交感神経機能は正常であると判定する(ステップS403)。
【0089】
なお、心拍数減少量が−7拍以上でない場合(ステップS401においてno)、制御部18は、副交感神経機能が亢進状態であると判定する(ステップS404)。
【0090】
なお、心拍数減少量が−1拍以下でない場合(ステップS402においてno)、制御部18は、副交感神経機能が低下状態であると判定する(ステップS405)。
【0091】
次に、
図5のステップS108に示した判定結果の表示方法の一例を
図12に示す。
【0092】
図12に示す表示例では、心拍数増加量が正常範囲から外れて上限値を越えてしまい、交感神経機能が亢進状態、つまり反応(反射)過剰であると判定された場合が示されている。
【0093】
そのため、スマートフォン10の画面には、「交感神経機能が正しく機能していません。」というメッセージが表示されている。
【0094】
次に、実際の被診断者から測定されたデータ例を
図13に示す。
図13には、健常者、スポーツ選手、パーキンソン病患者のそれぞれに対して起立動作、着席動作を行ってもらいその際の心拍数を測定したデータが示されている。
【0095】
図13に示したデータにおいて、被診断者が健常者の場合、心拍数増加量は正常範囲、心拍数減少量は正常範囲、安静時心拍数と内因性心拍数との差も正常範囲となっている。
【0096】
そのため、スマートフォン10の表示画面には、例えば、
図14に示すような表示が行われる。
【0097】
また、
図13に示したデータにおいて、被診断者がスポーツ選手の場合、心拍数増加量は正常範囲、心拍数減少量は正常範囲となっている。しかし、安静時心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲から外れて、下限値よりも低い値となっている。
【0098】
そのため、スマートフォン10の表示画面には、例えば、
図15に示すような表示が行われる。なお、スポーツ選手等の身体能力が通常とは異なる人の場合、心臓がいわゆるスポーツ心臓と呼ばれるものとなっており、安静時心拍数が極端に低い場合がある。そのため、このような場合には自律神経機能の異常という問題ではないため、単に「安静時の心拍数が正常よりも低いようです。」というメッセージを表示するだけにしている。
【0099】
また、
図13に示したデータにおいて、被診断者がパーキンソン病患者の場合、心拍数増加量が正常範囲を外れ、心拍数減少量も正常範囲を外れたものとなっている。なお、安静時心拍数と内因性心拍数との差は正常範囲となっている。
【0100】
このような場合には、スマートフォン10の表示画面には、例えば、
図16に示すような表示が行われ、交感神経機能、副交感神経機能がともに正しく機能していない旨が表示されている。
【0101】
なお、
図12、
図14〜
図16では、判定結果の表示例として、交感神経機能、副交感神経機能、基礎交感神経機能についての判定結果をそれぞれ表示し、その判定結果に基づくメッセージを表示する例が示されていた。
【0102】
このような判定結果の表示方法の代わりに、
図17、
図18に示すような表示方法を用いることも可能である。
【0103】
図17に示した表示方法は、心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および心拍数減少量が正常範囲内であるか否かを、スマートフォン10の表示画面に2次元表示するようにした例である。
【0104】
また、
図18に示した表示方法は、心拍数増加量が正常範囲内であるか否か、および安静時の心拍数と内因性心拍数との差が正常範囲内であるか否かを、スマートフォン10の表示画面に2次元表示するようにした例である。
【0105】
この
図17、
図18に示したような表示方法を用いることにより、被診断者は自己の自律神経機能の状態がどのような状態であるかを視覚的に容易に把握することができ、異常の有無を直感的に知ることが可能となる。
【0106】
さらに、本実施形態では、心拍数増加量に基づく交感神経機能の評価、心拍数減少量に基づく副交感神経機能の評価、安静時心拍数と内因性心拍数との差に基づく基礎交感神経機能の評価の評価結果が、それぞれ、正常範囲内の場合、正常範囲を超えている場合、正常範囲より低い場合の組み合わせにパターンより自律神経機能の状態を評価することも可能である。
【0107】
そして、このような組み合わせパターン毎に、自律神経機能を改善するための音楽を選択して再生することや、自律神経機能を改善するために良いと考えられる香りの種類等を画面に表示するようなことも可能である。
【0108】
[その他]
なお、上記の実施形態では、人体に負荷をかける負荷試験の1つとして起立負荷試験を行う場合を用いて説明しているが、本発明はこのような場合に限定されるものではない。起立負荷試験以外の負荷試験を被診断者に行って負荷試験前後の心拍数増加量、心拍数減少量、安静時心拍数と内因性心拍数との差を測定して自律神経機能を表示する場合でも同様に本発明は適用可能である。
【0109】
また、上記の実施形態では、スマートフォン10と心拍計20とにより自律神経機能診断装置が構成されるものとして説明しているが、外部から心拍数の情報を受信することが可能なスマートフォン10のみでも自律神経機能診断装置を構成することが可能である。
【0110】
また、上記の実施形態では、心拍計20からスマートフォン10に心拍数の情報を送信する場合を用いて説明したが、家庭用血圧計等を用いて測定した心拍数の情報を、ユーザがスマートフォン10に入力するような構成でも本発明は適用可能である。
【解決手段】制御部18は、起立動作前後の心拍数の差である心拍数増加量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、その判定結果を表示部14に表示する。また、制御部18は、着席動作を指示した前後の心拍数の差である心拍数減少量が、予め設定された正常範囲であるか否かにより被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、その判定結果を表示部14に表示する。さらに、制御部18は、起立動作を指示する前の安静時の心拍数と、被診断者の年齢に基づいて算出される内因性心拍数との差が、予め設定された正常範囲であるか否かにより被診断者の自律神経機能の異常の有無を判定し、その判定結果を表示部14に表示する。