特許第5944558号(P5944558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5944558-工作機械の主軸支持構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5944558
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】工作機械の主軸支持構造
(51)【国際特許分類】
   B23B 19/02 20060101AFI20160621BHJP
   F16C 19/04 20060101ALI20160621BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20160621BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B23B19/02 B
   F16C19/04
   F16C35/077
   F16C25/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-113663(P2015-113663)
(22)【出願日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】石黒 春樹
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−022698(JP,A)
【文献】 特開2000−039019(JP,A)
【文献】 特開2005−113950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 19/02
F16C 19/04
F16C 25/08
F16C 35/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪との間に複数の転動体を介在させてなり、外輪の軸方向移動を許容すると共に該外輪を前記軸方向に付勢して予圧を付加した状態で主軸とハウジングとの間に介在される定圧予圧型の第1軸受と、内輪と外輪との間に複数の転動体を介在させてなり、外輪の軸方向移動を規制した状態で主軸とハウジングとの間に介在される定位置型の第2軸受とを備えた工作機械の主軸支持構造において、
前記第2軸受の外輪のみを、前記ハウジングの軸受囲繞部に形成した外輪代替部で兼用した
ことを特徴とする工作機械の主軸支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械の主軸支持構造において、
前記軸受囲繞部は、前記ハウジングと別体に、かつ該ハウジングに対して着脱可能に形成されている
ことを特徴とする工作機械の主軸支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の工作機械の主軸支持構造において、
前記第1軸受の外輪は、前記軸受囲繞部に形成された外輪支持部に支持されている
ことを特徴とする工作機械の主軸支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定圧予圧型の軸受と定位置型軸受との組合せにより主軸を支持するようにした工作機械の主軸支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸支持構造では、予圧を付加することにより支持剛性を高める構造が採用される場合がある。この予圧の付加構造として、主軸に軸受を組み込む際に予圧を付加すると共に転動体の軸方向移動を規制することにより、工作機械の稼働中に外輪や転動体が初期の位置を維持するようにした定位置予圧構造と、工作機械の稼働中に外輪や転動体の軸方向移動を許容しつつもバネ要素等で常に同程度の圧力がかかるようにした定圧予圧構造(例えば特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−22698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定位置予圧構造の場合、工作機械の稼働中に熱膨張等で軸受の焼き付きが発生するのを回避するために軸受外輪とハウジングとの間に微小隙間を設けているため支持剛性の向上に制約がある。一方、定圧予圧構造の場合、転動体に作用する圧力が略一定であるため、支持剛性を向上しつつ軸受の焼き付きの問題が生じるのを回避できるものの、定位置予圧構造の場合より部品点数が多くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、定圧予圧構造を採用しつつ部品点数を削減でき、コスト削減に寄与できる工作機械の主軸支持構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、内輪と外輪との間に複数の転動体を介在させてなり、外輪の軸方向移動を許容すると共に該外輪を前記軸方向に付勢して予圧を付加した状態で主軸とハウジングとの間に介在される定圧予圧型の第1軸受と、内輪と外輪との間に複数の転動体を介在させてなり、外輪の軸方向移動を規制した状態で主軸とハウジングとの間に介在される定位置型の第2軸受とを備えた工作機械の主軸支持構造において、
前記第2軸受の外輪のみを、前記第2軸受の外輪を、前記ハウジングの軸受囲繞部に形成した外輪代替部で兼用したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の工作機械の主軸支持構造において、
前記軸受囲繞部は、前記ハウジングと別体に、かつ該ハウジングに対して着脱可能に形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の工作機械の主軸支持構造において、
前記第1軸受の外輪は、前記軸受囲繞部に形成された外輪支持部に支持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、定圧予圧型の第1軸受と定位置型の第2軸受とを備えている場合に、第1軸受については外輪を備えた構造とするとともに、第2軸受については、その外輪をハウジングの軸受囲繞部に形成した外輪代替部で兼用したので、軸受全体の支持剛性を向上しつつ、第2軸受の外輪を不要にでき、それだけ部品点数を削減でき、コスト削減に寄与できる。
【0010】
請求項2の発明では、軸受囲繞部を、ハウジングと別体に、かつ該ハウジングに対して着脱可能に形成したので、軸受囲繞部に外輪代替部を形成する際の加工が容易である。
【0011】
請求項3の発明では、第1軸受の外輪を、軸受囲繞部に形成された外輪支持部で支持したので、軸受囲繞部の外輪支持部と主軸との間に第1軸受を介在させると共に、外輪代替部と主軸との間に第2軸受を介在させることでアッセンブリ化し、このアッセンブリ体をハウジングに挿入し、軸受囲繞部をハウジングにボルト締め等で取り付けることで主軸をハウジングに容易確実に組み付けることができ、組立作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る主軸支持構造を備えた主軸の断面側面図である。
図2】前記支持構造の要部の断面側面図である。
図3】前記支持構造の要部の断面正面図(図2のIII-III線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図3は、本発明の実施例1に係る主軸支持構造を説明するための図である。
【0015】
図において、1は主軸であり、該主軸1は、その前端部,後端部に配設された前部軸受2,後部軸受3を介してハウジング4により回転自在に支持されている。前記主軸1は、その外周面に固定されたロータ5aと、前記ハウジング4の内周面に固定されたステータ5bとからなるビルトインモータ5により回転駆動される。
【0016】
前記主軸1は、円筒状をなしており、その前端には前記前部軸受2が当接するストッパ部1aが径方向外側に段をなすように形成されており、またこのストッパ部1aにはワークを把持するチャックのフランジ部5aがボルト5bにより締め付け固定されている。
【0017】
前記後部軸受3は、外輪と内輪との間に円筒ころを2列介在させた複列円筒ころ軸受である。前記前部軸受2は、第1軸受6と、2組の互いに当接するように配置された第2軸受7,7とで構成されている。
【0018】
前記第1軸受6は、内輪6aと外輪6bとの間に複数のボール(転動体)6cを図示しない保持器により介在させた構造のものである。また前記第2軸受7は、内輪7aと後述する外輪代替え部11fとの間に複数のボール7cを図示しない保持器により介在させた構造のものである。
【0019】
前記第1,第2軸受6,7の内輪6a,7aは前記主軸1の外周面に嵌合している。また前記第1軸受6の内輪6aと後側の第2軸受7の内輪7aとの間に内輪間座8を介在させ、第1軸受6の内輪6aの後端面に後カラー9aを当接させ、さらに前側の第2軸受7の内輪7aと前記主軸1のストッパ部1aとの間に前カラー9bを介在させ、ロックナット10を締め込むことで、前記第1,第2軸受6,7の内輪6a,7aは主軸1の外周面に固定されている。
【0020】
また前記第1軸受6,第2軸受7,7の外周部には、前記ハウジング4の一部をなし、かつ該ハウジング4とは別体に形成された軸受囲繞部材11が配置されている。該軸受囲繞部材11は筒状をなしており、そのフランジ部11gがボルト20により前記ハウジング4の先端面4aに対して着脱可能に固定されている。
【0021】
前記第1軸受6の外輪6bは、前記軸受囲繞部11の内周面に形成された第1外輪支持部11aに軸方向に移動可能に嵌合し、かつ該軸受囲繞部材11に径方向内方に突出するように形成された環状の外輪ストッパ部11bに軸方向に対向している。
【0022】
前記軸受囲繞部材11の外輪ストッパ部11bには多数のばね穴11cが端面11eに開口するように形成されている。該各ばね穴11c内にはコイルばね12が挿入配置されており、前記第1軸受6の外輪6bは前記コイルばね12により軸方向後方(図示左方)に付勢されている。このようにして第1軸受6は、外輪6bの軸方向移動を許容すると共に該外輪6bを軸方向に付勢してボール6cに予圧を付加した状態で主軸1と軸受囲繞部材11ひいてはハウジング4との間に介在される定圧予圧型軸受となっている。
【0023】
そして前記第2軸受7の外輪は、前記軸受囲繞部材11に一体的に形成された外輪代替部11fが兼用されている。このようにして前記第2軸受7は、外輪相当部分の軸方向移動を規制した状態で主軸1と軸受囲繞部材11ひいてはハウジング4との間に介在される定位置型軸受となっている。
【0024】
前記軸受囲繞部材11は、筒状体をなしており、その内周面に前記外輪支持部11a,外輪ストッパ部11b及び外輪代替部11bが形成されており、またその外周面に前記フランジ部11gが径方向外方に拡がるように一体形成されている。
【0025】
本実施例によれば、定圧予圧型の第1軸受6と定位置型の第2軸受7,7とを備えている場合に、第1軸受6については外輪6bを備えた構造とするとともに、第2軸受7,7については、その外輪を、ハウジング4の一部を構成する軸受囲繞部材11に形成した外輪代替部11f,11fにより兼用したので、つまり外輪をハウジング4の構成部品と一体的に形成したので軸受全体の支持剛性を向上できる。また、第2軸受7の専用の外輪を不要にでき、それだけ部品点数を削減でき、コスト削減に寄与できる。
【0026】
また本実施例では、軸受囲繞部材11を、ハウジング4と別体に、かつ該ハウジング4に対して着脱可能に形成したので、軸受囲繞部材11に外輪支持部11a,外輪ストッパ部11bや外輪代替部11fを形成する際の加工が容易である。
【0027】
さらにまた、第1軸受6の外輪6bを、軸受囲繞部材11に形成された外輪支持部11aで支持したので、第1軸受6,第2軸受7,7を軸受囲繞部材11と主軸1との間に組み込んでアッセンブリ化し、該アッセンブリ体をハウジング4内に挿入し、該ハウジング4にボルト締めすることで主軸1をハウジング4に組み付けることができ、主軸1の組立性を向上できる。
【符号の説明】
【0028】
1 主軸
4 ハウジング
6 第1軸受
6a 内輪
6b 外輪
6c ボール(転動体)
7 第2軸受
7a 内輪
7c ボール
11 軸受囲繞部材
11a 外輪支持部
11f 外輪代替部
【要約】
【課題】
定圧予圧構造を採用しつつ部品点数を削減でき、コスト削減に寄与できる工作機械の主軸支持構造を提供することを課題としている。
【解決手段】
定圧予圧型の第1軸受6と、定位置型の第2軸受7とを備えている場合に、該第2軸受7の外輪を、前記ハウジング4の軸受囲繞部材11に形成した外輪代替部11で兼用した。
【選択図】図2
図1
図2
図3