(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用されたシュレッダの実施の形態の概要を示し、
図1(b)はそのシュレッダで用いられるカッタモジュールの構成を示す。
同図において、シュレッダは、用紙等の被細断物10の搬入経路12を有するシュレッダ筐体11と、シュレッダ筐体11内に設置され、搬入経路12に搬入された被細断物10を細断する細断機構1と、シュレッダ筐体11内に設置され、細断機構1にて細断された細断屑を収容する屑受(図示せず)と、を備えている。
本態様では、細断機構1は、
図1(a)(b)に示すように、互いに噛み合うように配置される対構成のカッタモジュール2を備え、各カッタモジュール2は、被細断物10の搬送方向に交差する幅方向に沿って延びる回転軸3と、回転軸方向に対して複数に分割されると共に回転軸3に組み込まれて固定され、周囲に所定のピッチ間隔で切断刃5aが形成された断面円状のカッタ部5を予め決められた間隔の断面円状のスペーサ部6を介して複数段配置し、かつ、回転軸方向に対して切断刃5aが予め決められた角度θ傾斜するようにカッタ部5及びスペーサ部6を配置してなる複数のカッタブロック4と、各カッタブロック4のカッタ部5が隣接するカッタブロック4のカッタ部5に連なって傾斜配置されるように各カッタブロック4の集合体と回転軸3とを位置決めする位置決め機構7と、を有するものである。
【0012】
このような技術的手段において、細断機構1は対構成のカッタモジュール2を少なくとも具備し、カッタモジュール2の構成要素としては、回転軸3、複数のカッタブロック4及び位置決め機構7がある。
ここで、回転軸3はカッタモジュール2の軸方向全域に延びた態様でもよいし、カッタモジュール2の両端に設けた態様でもよい。前者の態様では各カッタブロック4が回転軸3に嵌め込まれて固定されるようにすればよく、後者の態様では、各カッタブロック4を相互に連結すると共に両端に位置するカッタブロック4を回転軸3に連結するようにすればよい。
また、カッタブロック4の個数や、カッタ部5の切断刃5aの形状、カッタ部5、スペーサ部6の厚みについては適宜選定して差し支えない。また、カッタブロック4の回転軸方向の長さについては適宜選定して差し支えないが、カッタ部5やスペーサ部6をワイヤ放電加工にて形成するにはカッタブロック4の外周径変化を少なく抑えるという観点からすれば、20〜40mm程度であることが好ましい。また、カッタ部5、スペーサ部6の回転軸方向に対する傾斜角度θについても選定して差し支えないが、隣接するカッタブロック4間でカッタ部5が連なるように選定する必要がある。更に、カッタブロック4は基本的に全てが共通化されている態様で差し支えないが、複数の種類に分かれて構成されていてもよい。例えば用紙等の被細断物10の最大サイズ(例えばJIS規格B5,A4,B4,A3等)に合わせてシュレッダ筐体11の投入口幅や細断機構1のカッタモジュール2の長さが選定されるが、長さの異なる複数種のカッタブロック4を予め用意しておけば、カッタモジュール2の長さ調整を行う上で汎用性がある点で好ましい。
更に、位置決め機構7としては、各カッタブロック4の集合体と回転軸3とを位置決めするものであればよく、キーとキー溝、回転軸3、カッタブロック4の一部にDカット面を形成する等が挙げられる。ここで、回転軸3がカッタモジュール2の軸方向全域に延びた態様では、回転軸3に対して各カッタブロック4を直接位置決めする構成を採用すればよく、また、各カッタブロック4を連結すると共に両端に位置するカッタブロック4を回転軸3に連結する態様では、各カッタブロック4を夫々の連結部にて位置決めし、かつ、両端に位置するカッタブロック4と回転軸3との連結部にて位置決めするようにすればよい。
【0013】
次に、本実施の形態に係るシュレッダの代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、細断機構1の代表的態様としては、対構成のカッタモジュール2と、対構成のカッタモジュール2の噛み合い領域で細断された細断屑10aを各カッタモジュール2から取り除くように各カッタモジュール2を清掃する清掃機構(図示せず)と、を有する態様が挙げられる。
本態様の細断機構1としては、少なくともカッタモジュール2のスペーサ部6の周囲を覆い、かつ、スペーサ部6の周囲(カッタ部5間の凹部内に相当)から細断屑10aを取り除く部材(第1の仕切り部材)であれば、任意の形状で差し支えない。また、清掃機構としては、カッタモジュール2のカッタ部5の周囲を覆い、かつ、細断屑10aが第1の仕切り部材間に入り込む隙間を塞ぐ部材(第2の仕切り部材)を付加する態様(W仕切り方式)がより好ましい。ここで、細断サイズを小さくする場合にはカッタ部5、スペーサ部6の間隔が狭くなることから、第1、第2の仕切り部材の厚みを薄くせざるを得ないので、各仕切り部材の形状としては板状として面剛性を確保することが好ましい。
【0014】
また、カッタブロック4の代表的態様としては、切断刃5aが予め決められた角度θで傾斜配置される各カッタ部5のうち、回転軸方向の一方側面に面して位置する切断刃と、他方側面に面して位置する切断刃との間の周方向距離が切断刃のピッチ間隔の整数倍である態様が挙げられる。本態様は、回転軸3に対する各カッタブロック4の位置決め機構7を共用化しても、隣接するカッタブロック4のカッタ部5が自然に連なるように配置される。
更に、カッタブロック4の好ましい態様としては、スペーサ部6の厚みがカッタ部5の厚みより大きく選定されていることが挙げられる。本例では、カッタ部5、スペーサ部6の厚みの設定は任意に選定して差し支えないが、カッタモジュール2の噛み合いを良好に保つという観点からすると、スペーサ部6の厚みがカッタ部5の厚みよりも大きい方がよい。
更にまた、カッタブロック4の好ましい態様としては、少なくともカッタ部5の切断刃5aがワイヤ放電加工にて形成されたものである態様が挙げられる。つまり、カッタブロック4は、円筒状のブロック本体の周面をスリット加工することでカッタ部5とスペーサ部6との領域を分け、しかる後、カッタ部5に対して切断刃5aの刃付け加工を行うのが一般的である。このときの加工法は適宜選定して差し支えないが、ワイヤ放電加工は、微細加工が可能で、加工に当たりバリや変形がなく、しかも、焼入れ(熱処理)後の材料に対する加工が可能である点で、切削加工に比べて利点がある。そこで、特に、微細加工を要するカッタ部5の切断刃5aに対する刃付け加工についてはワイヤ放電加工にて製造する方法を好ましい製法として選定した。
また、位置決め機構7の代表的態様としては、カッタブロック4と回転軸3との間又は隣接する各カッタブロック4の間に設けられ、両者のいずれか一方に回転軸方向に沿って延び且つ回転軸の径方向に突出するように形成されるキー7aと、他方にキーが摺動可能に嵌合するように形成されるキー溝7bと、を有する態様が挙げられる。
【0015】
また、この種の細断機構1の代表的な製造方法としては、カッタブロック4の製造工程が、カッタ部5の切断刃5aの刃付け加工が少なくともワイヤ放電加工である態様が挙げられる。
カッタモジュール2として複数のカッタブロック4を用いた態様では、カッタブロック4の軸方向長が短いため、軸方向に対して傾斜配置されるカッタ部5の切断刃5aの刃付け加工に当たり、ワイヤ放電加工を採用することが可能である。
例えばカッタモジュール2が一体型の場合には、軸方向長が長いため、仮に、ワイヤ放電加工にてカッタ部5の切断刃5aの刃付け加工を行ったとすると、カッタモジュール2の軸方向中央部が両端部に比べて大きく凹む形状になってしまう懸念があり、そもそも一体型のカッタモジュール2はワイヤ放電加工による加工対象にはなり得ない。この点、カッタブロック4のように軸方向長が短い場合には、カッタブロック4の軸方向中央部と両端部との間の外径寸法変化は少なく抑えられることから、加工精度の高いワイヤ放電加工による加工を採択することが可能である。
このように、本例では、カッタブロック4の製造に当たり、微細加工を要するカッタ部5の切断刃5aの刃付け加工に対しては少なくともワイヤ放電加工を行うものも広く含めることにした。
【0016】
また、細断機構1の製造方法の好ましい態様としては、カッタブロック4の製造工程は、円筒状のブロック本体の周面のカッタ部5間の領域にスペーサ部6に相当する凹部を切削加工にて形成するスペーサ部形成工程と、スペーサ部形成工程を経た凹部付きブロック本体の周面の凹部間に位置するカッタ部5の領域に対しワイヤ放電加工にて切断刃5aの刃付け加工を実施するカッタ部形成工程と、を含むものが挙げられる。
本態様は、「切削加工」と「ワイヤ放電加工」との組合せにてカッタブロック4を製造する方法であり、全てを「ワイヤ放電加工」にて製造する方法に比べて、カッタブロック4の製造時間の短縮を図ることが可能である点で好ましい。ここで、「切削加工」は微細加工に工具の制約を受けるが、例えばブロック本体の周面にスペーサ部6を形成する上では精度良く製造することが可能である。また、「ワイヤ放電加工」は切削加工のように、切削時のバリや変形はなく高精度の微細加工が可能であることから、カッタ部5の切断刃5aの刃付け加工について行うようにしたものである。
更に、細断機構1の製造方法の好ましい態様としては、スペーサ部形成工程とカッタ部形成工程との間に行われ、スペーサ部形成工程を経た凹部付きブロック本体を焼入れする熱処理工程を含むものが挙げられる。本態様は、「ワイヤ放電加工」は焼入れした高硬度の材料についても高精度の加工が可能であることから、カッタ部形成工程前に焼入れ工程(熱処理工程)を行い、熱歪等の影響を少なくすることが可能である。
【0017】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係るシュレッダの全体構成を示す。
−シュレッダの全体構成−
同図において、シュレッダ20は、略直方体形状のシュレッダ筐体21を有し、このシュレッダ筐体21の上面には細断対象である用紙Sが投入される投入口22を開設し、この投入口22には一対のガイドシュートで区画された搬入経路23を設け、この搬入経路23の途中に細断機構24を配設し、シュレッダ筐体21内の細断機構24の下方には用紙Sの細断屑Saが収容される屑容器27を出し入れ可能に配設したものである。
ここで、細断機構24は、用紙Sを細断するカッタ部品25と、カッタ部品25を清掃する清掃機構26とを備えている。
本例では、カッタ部品25は、
図2に示すように、所謂カットクロス方式を採用した対構成のカッタモジュール31,32を有しており、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域に用紙Sを挿通させることで、用紙Sの搬入方向に沿う方向(縦方向)及びこれに略直交する交差方向(横方向)について縦横同時に細断するようにしたものである。
尚、
図2中、符号50はカッタ部品25を駆動する駆動装置、符号60はシュレッダ20を操作するための操作パネルである。
【0018】
−駆動装置−
本実施の形態において、駆動装置50は、
図3及び
図3(a)(b)に示すように、駆動源としての駆動モータ51と、この駆動モータ51からの駆動力をカッタ部品25の対構成のカッタモジュール31,32に伝達する駆動伝達機構59とを有している。
本例において、駆動伝達機構59としては、例えば駆動モータ51の駆動軸及び第1のカッタモジュール31の回転軸に夫々プーリ59a,59bを固着すると共に、これらプーリ59a,59b間に伝達ベルト59cを掛け渡し、更に、各対構成のカッタモジュール31,32の回転軸には伝達ギア59d,59eを互いに噛合させた状態で固着するようにしたものである。
【0019】
−制御装置−
更に、本実施の形態では、
図3に示すように、カッタ部品25を駆動する駆動装置50は制御装置70によって制御されるようになっている。
本例において、制御装置70はCPU、RAM、ROM及び入出力ポートを含むマイクロコンピュータシステムからなり、操作パネル60からの操作信号、搬入経路23に用紙Sが搬入されたか否かを検出する位置センサ28からの信号などを入出力ポートを介して受け取り、CPU、RAMによってROM内に予めインストールされている細断制御プログラムを実行し、入出力ポートを介してカッタ部品25の駆動装置50に対し所定の制御信号を送出するようになっている。
そして、駆動モータ51には当該駆動モータ51に供給される駆動電流を検出する電流検出器80が設けられている。
尚、本例では、操作パネル60は、
図3に示すように、シュレッダ20に電源を投入するためのスタートスイッチ61(図中STと表記)と、用紙Sが搬入経路23で紙詰まりした場合に用紙Sを逆転排出する排出モードや、カッタ部品25に細断屑Saが詰まった場合に清掃処理を実施する清掃モードなどを指定するときにオン操作するモード選択スイッチ62(図中MSと表記)と、シュレッダ20の動作状態を表示する表示器63と、を有している。また、位置センサ28は用紙Sが通過したことを検出可能な構成であれば、機械的、光学式センサなど適宜選定して差し支えない。
【0020】
−カッタ部品−
本実施の形態では、カッタ部品25は、前述したように、対構成のカッタモジュール31,32にて構成されている。
ここで、第1のカッタモジュール31は、
図3(a)及び
図4(a)(b)に示すように、用紙Sの搬送方向に交差する幅方向に沿って延びる回転軸310と、この回転軸310に嵌め込まれて固定され、炭素鋼等の高強度の材料にて構成されるカッタ集合体311とを備え、カッタ集合体311の周面には当該カッタ集合体311の回転方向に予め決められたピッチp(例えば5mm)の切断刃313を形成したカッタ部312が回転軸方向に沿って予め決められた間隔j(例えば1mm)のスペーサ部314を介して配列されている。尚、カッタ部312とスペーサ部314との間には凹部315が形成され、カッタ部312の先端エッジ部の幅寸法は凹部315と同程度に設定されている。
本例では、切断刃313は、その先端エッジ部が用紙Sの搬送方向に交差する方向(横方向)を切断する機能部と、先端エッジ部の両側に位置する側方エッジ部が用紙Sの搬送方向に沿う方向(縦方向)を切断する機能部とを有する。
また、第2のカッタモジュール32は、
図3(a)及び
図4(a)(b)に示すように、第1のカッタモジュール31と略同様に、回転軸320及びカッタ集合体321を備えており、カッタ集合体321の周面には切断刃323を形成したカッタ部322がスペーサ部324を介して配列されている。尚、符号325は、カッタ部322とスペーサ部324との間に形成される凹部である。
そして、第2のカッタモジュール32は、そのカッタ部322が第1のカッタモジュール31の凹部315に食い込むように、また、その凹部325に第1のカッタモジュール31のカッタ部312を食い込ませるように、第1のカッタモジュール31と噛み合っている。
更に、本実施の形態では、各カッタモジュール31(32)のカッタ集合体311(321)は、
図4(a)及び
図6(a)に示すように、カッタ部312(322)の切断刃313(323)が回転軸方向に対して予め決められた角度θ(例えば10°)傾斜するように配置されており、各カッタモジュール31(32)の噛み合い領域における切断刃313(323)の切断負荷が略均等に分散するようになっている。
【0021】
−カッタブロック−
本実施の形態において、各カッタモジュール31,32のカッタ集合体311(321)は、
図5(a)(b)及び
図6(a)(b)に示すように、回転軸方向に対して複数に分割されると共に回転軸310,320に嵌め込まれて固定配置される複数のカッタブロック100を備えている。
本実施の形態において、カッタブロック100は、
図5(a)(b)、
図6(a)(b)及び
図9(a)〜(c)に示すように、回転軸310(320)方向に予め決められた長さL(例えば20mm〜40mm)のブロック本体101を有し、このブロック本体101には回転軸310(320)が挿入可能に挿入孔106を形成する一方、ブロック本体101の周囲に所定のピッチp(例えば5mm)間隔で切断刃103が形成された断面円状のカッタ部102を予め決められた間隔j(例えば1mm)の断面円状のスペーサ部104を介して複数段配置し、かつ、回転軸310(320)方向に対して切断刃103が予め決められた角度θ(例えば10°)傾斜するようにカッタ部102及びスペーサ部104を配置したものである。尚、カッタ部102とスペーサ部104との間には凹部105が形成されている。
本例では、カッタブロック100は、切断刃103が予め決められた角度θで傾斜配置される各カッタ部102のうち、回転軸方向の一方側面に面して位置する切断刃103と、他方側面に面して位置する切断刃103との間の周方向距離δが切断刃103のピッチp間隔の整数倍になるように、前述した角度θが選定されている。
例えばカッタ部102の切断刃103が45個の場合には、切断刃103のピッチpは360°÷45=8°であるから、カッタブロック100の切断刃103の回転軸方向に対する傾斜角度θは、前述した周方向距離δがn(整数)×8°の角度変化に相当するものであればよい。
そして、本例では、カッタ集合体311(321)は、回転軸310(320)に複数のカッタブロック100を嵌め込むことによって、細断対象である最大サイズ用紙Sの幅寸法サイズ以上の長さAを確保するようになっている。
尚、カッタブロック100のカッタ部102、切断刃103、スペーサ部104及び凹部105は、カッタ集合体311(321)のカッタ部312(322)、切断刃313(323)、スペーサ部314(324)及び凹部315(325)に対応するものである。
【0022】
−位置決め機構−
本実施の形態において、各カッタブロック100と回転軸310(320)との間には両者を位置決めする位置決め機構120が設けられている。
本例では、位置決め機構120は、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)及び
図9(a)〜(c)に示すように、各カッタブロック100と回転軸310(320)との間に設けられ、回転軸310(320)に回転軸方向に沿って延び且つ回転軸310(320)の径方向に突出するように形成される断面矩形状のキー121と、ブロック本体101の挿入孔106周壁の一部に設けられ、キー121が摺動可能に嵌合するように形成される断面矩形状のキー溝122と、を有し、キー溝122とキー121とが嵌合したときに、各カッタブロック100が回転軸310(320)に対して回り止めされた状態で位置決めされるようになっている。
そして、本例では、各カッタブロック100の回転軸方向に対する位置決めは後述する端部締付機構150(
図11参照)にて行われる。
尚、本例では、回転軸310(320)側にキー121、カッタブロック100側にキー溝122を形成しているが、これに限られるものではなく、キー121とキー溝122との位置関係を逆にしてもよい。
【0023】
−カッタブロックの製造法−
次に、カッタブロック100の製造法について説明する。
本例では、カッタブロック100の製造法は、
図7(a)に示すように、炭素鋼等の高強度の材料にて回転軸310(320)が挿入される挿入孔106を有する肉厚の円筒部品からなる初期部品111を製造し、次いで、
図7(b)に示すように、初期部品111の挿入孔106にキー溝122を形成すると共に、初期部品111の周面のうちカッタ部102を除いた箇所にスペーサ部104を形成することで中間部品112を製造し、その後、
図7(c)に示すように、中間部品112の周面に切断刃103の刃付加工を施すことでカッタ部102を形成し、最終部品113を製造するようになっている。
<初期部品>
初期部品111を製造するに際し、先ず、
図7(a)に示すように、長尺な円柱部品(ブロック本体101に相当)を用意し、この円柱部品(本例では外径d
1)の中央部に対して挿入孔106(本例では内径d
2)を加工することで長尺な円筒部品を製造し、次いで、円筒部品を予め決められた寸法Lに切断することでカッタブロック100の初期部品111とすればよい。
<中間部品>
中間部品112を製造するに際し、旋盤装置等の切削加工装置を用い、
図7(b)及び
図8(a)〜(c)に示すように、先ず、切削加工装置に初期部品111を固定し、固定された初期部品111の挿入孔106の周壁の一部に対し切削刃によりキー溝122を切削加工し、次いで、切削加工装置に初期部品111を回転可能に支持し、初期部品111を挿入孔106の中心を回転中心として回転させながら、初期部品111の周面に切削刃にて予め決められた間隔j(例えば1mm)毎に深さzの凹部105を切削加工し、カッタ部102の領域とスペーサ部104の領域(本例では外径d
3)とが区画された中間部品112を製造するようにすればよい。
本例では、カッタ部102の肉厚をt(例えば0.9mm)とすると、カッタ部102とスペーサ部104との噛み合いによる負荷を低減するという観点から、t<jの関係になるように寸法が設定されている。
【0024】
<最終部品>
本実施の形態では、
図10に示すワイヤ放電加工装置130を用いて最終部品113を製造する方法が採用されている。
同図において、ワイヤ放電加工装置130は、ワークである中間部品112が設置可能な可動テーブル131を有し、この可動テーブル131を交差する方向に放電加工用のワイヤ132を移動可能に設け、このワイヤ132にて可動テーブル131上の中間部品112に放電加工を施すようにしたものである。
本例において、可動テーブル131はX軸駆動部133及びY軸駆動部134にてXY平面を移動可能に構成されている。
また、ワイヤ132はワイヤ移動機構135にて移動可能に構成されており、ワイヤ移動機構135は、例えば上側に配置されたワイヤ供給部136から繰り出されるワイヤ132を下側に配置されるワイヤ回収部137に回収するようにしたものであり、ワイヤ供給部136からのワイヤ132を上部プーリ138、上部ワイヤガイド139、下部ワイヤガイド140、下部プーリ141を介して所定の軌跡に沿うように案内するものである。そして、本例では、例えば上部ワイヤガイド139はU軸駆動部142及びV軸駆動部143にてUV平面を移動可能に構成され、下部ワイヤガイド140は固定配置されている。
更に、本例では、X軸駆動部133、Y軸駆動部134、U軸駆動部142及びV軸駆動部143はいずれも数値制御装置145に接続されており、数値制御装置145は予め入力された数値データに従って各駆動部を制御し、ワークとしての中間部品112及びワイヤ132の位置を変化させ、中間部品112に対してワイヤ放電加工を施すようになっている。
【0025】
本例では、最終部品113を製造するに際し、ワイヤ放電加工装置130を用い、
図7(c)及び
図9(a)〜(c)に示すように、中間部品112の周面のうち、スペーサ部104間に位置するカッタ部102の領域に対し、回転軸方向に対して角度θ傾斜した方向に沿うようにワイヤ132を移動させ、ワイヤ132による放電加工を施すことによって切断刃103を所定のピッチp間隔で形成し、最終部品113を製造するようにすればよい。
ここで、最終部品113を製造するに当たって、ワイヤ放電加工を採用する場合の利点及び留意点としては以下の事項が挙げられる。
(1)ワイヤ放電加工は、金属製ワイヤの電気溶解であることから、細断サイズの細かいカッタ部102の切断刃103のような細かい加工には最適である。
この点、例えば切削加工装置を用いて細断サイズの細かい加工を施す場合には、切削加工装置の切削用回転刃や切削加工される切断刃そのものの厚さが薄くなるため、回転刃や切断刃が破損し易いことに留意することが必要である。また、切削加工箇所にバリが生じたり、切削屑が詰まったりする懸念があるため、これらの切削加工後の清掃処理に留意する必要がある。
【0026】
(2)ワイヤ放電加工により、細断サイズの細かいカッタ部102の切断刃103を加工する場合には、切削加工に比べて、
図9(b)に示すように、切断刃103の高さ寸法zを大きく確保することが可能であり、その分、同時に細断可能な細断枚数を増加させることができる。
つまり、切削加工装置にて細断サイズの細かいカッタ部102の切断刃103を加工する場合には、前述したように、切削加工装置の切削用回転刃やカッタ部102の切断刃103が薄くなるため、どちらも破損し易いことからカッタ部102の切断刃103の高さ寸法zを大きく確保するのは困難であるが、ワイヤ放電加工ではこのような懸念はない。
(3)本例では、最終部品113の製造に当たって、ワイヤ放電加工を施すようにしている。「ワイヤ放電加工」は焼入れした高硬度の材料についても高精度の加工が可能であることから、中間部品112を製造したものに対してカッタ部形成工程前に焼入れ工程(熱処理工程)を行い、熱歪等の影響を少なくすることが可能である。
(4)本例では、カッタブロック100の切断刃103は回転軸方向に対して所定の角度θだけ傾斜してワイヤ放電加工されるため、カッタブロック100の長さLが長くなると、傾斜配置された切断刃103の列からなるリード(lead:ねじれ)107の中央部外径が両端部外径に比べて小さくなる傾向があるため、カッタブロック100の長さLの選定に当たっては、カッタブロック100のリード107の外径変化がカッタモジュール31(32)の細断性能に支障が生じない範囲で選定するようにすればよい。
この点の詳細については、後述する実施例にて説明する。
【0027】
−カッタモジュールの組立−
本実施の形態では、カッタモジュール31(32)の組立工程は以下のように行われる。
先ず、
図6(a)(b)に示すように、回転軸310(320)に予め決められた個数のカッタブロック100を順次嵌め込んだ後、次いで、回転軸310(320)に対して両端に位置するカッタブロック100(本例では100e)を端部締付機構150にて位置決め固定するようにすればよい。
ここで、端部締付機構150としては、例えば
図11(a)に示すように、駆動ギア151から駆動伝達される回転軸310(320)の両端に押えワッシャ152を嵌め込み、少なくとも回転軸310(320)の一方の端部にてカッタモジュール31(32)の支持枠153と押えワッシャ152との間にウェーブワッシャ155を介在し、このウェーブワッシャ155の付勢力にて各カッタブロック100を押圧保持し、各カッタブロック100の回転軸方向の位置を規制するようにしたものがある。
また、別の例としては、
図11(b)に示すように、ウェーブワッシャ155に代えて、回転軸310(320)の端部に雄ねじ部157を設け、この雄ねじ部157に螺合する締付ナット158を締め付けることで各カッタブロック100を押圧保持し、各カッタブロック100の回転軸方向の位置を規制するようにしたものがある。ここで、締付ナット158と端部に位置するカッタブロック100eとの間に押えワッシャ152やウェーブワッシャ155を介在させるようにしてもよいことは勿論である。
尚、
図11(a)(b)中、符号159は回転軸310(320)を回転支持するベアリングである。
【0028】
このように、各カッタブロック100は、回転軸310(320)に嵌め込まれると、位置決め機構120によるキー121とキー溝122との係合にて回転軸310(320)に対し回り止めされた状態で位置決めされ、端部締付機構150の締付けにて回転軸310(320)方向に対し位置決めされる。
この状態において、各カッタブロック100はカッタ集合体311(321)として一体化され、カッタモジュール31(32)として組み付けられる。
本例では、各カッタブロック100は、
図9(a)に示すように、回転軸方向の一方側面に面して位置する切断刃103と、他方側面に面して位置する切断刃103との間の周方向距離δが切断刃103のピッチp間隔の整数倍になるように、リード107の傾斜角度θを選定しているため、カッタ集合体311(321)の各カッタブロック100は、
図6(a)に示すように、夫々のリード107が回転軸310(320)に対して傾斜角度θで連なるように配置されている。
【0029】
−清掃機構−
<スクレーパの基本構成>
本実施の形態において、清掃機構26は、
図4(a)に示すように、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mは異なる領域に設けられ、カッタモジュール31,32の周囲に付着した細断屑Saを掻き取る掻き取り部材としてのスクレーパ41,42を備えている。ここで、スクレーパ41,42としては炭素鋼等の高強度の材料からなる板材が用いられている。
本例では、スクレーパ41は、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mとは反対側に位置する第1のカッタモジュール31の略左半部の周囲を囲み、第1のカッタモジュール31のカッタ部312間に位置するスペーサ部314に対応して設けられる第1の仕切り部材41aと、第1の仕切り部材41a間に配置され、第1のカッタモジュール31のカッタ部312に対応して設けられる第2の仕切り部材41bとを備えている。
ここで、第1の仕切り部材41aは、
図4(a)及び
図12(a)(b)に示すように、第1のカッタモジュール31のカッタ部312間に位置するスペーサ部314に食い込むように配置され、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mで細断された細断屑Saのうちスペーサ部314周囲の凹部315内に堆積した細断屑Saを掻き取るようになっている。
また、第2の仕切り部材41bは、
図4(a)及び
図12(a)(b)に示すように、第1のカッタモジュール31のカッタ部312の周囲を囲むように配置され、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mで細断された細断屑Saのうちカッタ部312の周囲に付着した細断屑Saを掻き取るようになっている。
【0030】
一方、スクレーパ42は、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mとは反対側に位置する第2のカッタモジュール32の略右半部の周囲を囲み、第2のカッタモジュール32のカッタ部322間に位置するスペーサ部324に対応して設けられる第1の仕切り部材42aと、第1の仕切り部材42a間に配置され、第2のカッタモジュール32のカッタ部322に対応して設けられる第2の仕切り部材42bとを備えている。
ここで、第1の仕切り部材42aは、
図4(a)及び
図12(a)(b)に示すように、第2のカッタモジュール32のカッタ部322間に位置するスペーサ部324に食い込むように配置され、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mで細断された細断屑Saのうちスペーサ部324の周囲の凹部325内に堆積した細断屑Saを掻き取るようになっている。
また、第2の仕切り部材42bは、
図4(a)及び
図12(a)(b)に示すように、第2のカッタモジュール32のカッタ部322の周囲を囲むように配置され、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mで細断された細断屑Saのうちカッタ部322の周囲に付着した細断屑Saを掻き取るようになっている。
【0031】
<第1の仕切り部材の構成例>
第1の仕切り部材41a(42a)は、
図4(a)、
図12(a)(b)及び
図13(a)(b)に示すように、板状の仕切り本体431を有し、この仕切り本体431のカッタモジュール31(32)の凹部315(325)に対向した部位の底面形状に沿った円弧状のエッジ面(本例では半円状のエッジ面)432を形成し、また、仕切り本体431の用紙Sの搬入側には対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mに用紙Sを案内する案内面433を形成すると共に、仕切り本体431の用紙Sの排出側には対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mにて細断された細断屑Saを下方へ案内するための案内片434を形成したものである。
本例では、第1の仕切り部材41a(42a)のエッジ面432は、
図13(a)及び
図15(a)に示すように、カッタモジュール31(32)のカッタ部312(322)間に位置するスペーサ部314(324)の半径をrsとすると、rsより僅かに大きいrs+αの半径の円弧面として形成されている。
また、本例では、案内片434は、
図13(a)(b)に示すように、斜め下方に延びる山型状の2つの案内突起435,436を有しており、用紙Sの通路寄りに位置する案内突起435は例えば鉛直方向に対して所定の角度ω(例えば30〜50°)だけ傾斜した傾斜面437を具備し、先端角部が角度η(例えば20〜40°:本例ではη<θ)で突出した形状に形成されている。また、2つめの案内突起436は例えば先端角度が角度ξ(例えば20〜40°:本例ではξ=η)のV溝438を介して案内突起435に隣接し、先端角度ηで突出した形状に形成されている。
【0032】
<第2の仕切り部材の構成例>
第2の仕切り部材41b(42b)は、
図4(a)、
図12(a)(b)及び
図14(a)(b)に示すように、板状の仕切り本体441を有し、この仕切り本体441のカッタモジュール31(32)のカッタ部312(322)の先端外周縁に沿った円弧状のエッジ面(本例では円弧角が半円未満、例えば140〜150°のエッジ面)442を形成したものである。
本例では、第2の仕切り部材41b(42b)のエッジ面442は、
図14(b)及び
図15(b)に示すように、カッタモジュール31(32)のカッタ部312(322)の先端外周縁の半径をrcとすると、rcより僅かに大きいrc+βの半径の円弧面として形成されている。
そして、本例では、第2の仕切り部材41b(42b)は、第1の仕切り部材41a(42a)と重ね合わせたときに、第1の仕切り部材41a(42a)の案内面433に沿った案内面443を有し、第1の仕切り部材41a(42a)の仕切り本体431の上辺部、下辺部及びエッジ面432と反対側に位置する側辺部が略合致する形状になっている。
【0033】
<位置決め機構>
本実施の形態では、清掃機構26は、
図4(a)及び
図12乃至
図15に示すように、スクレーパ41(42)の第1の仕切り部材41a(42a)と第2の仕切り部材41b(42b)とが位置決め可能な位置決め機構45を備えている。
本例では、位置決め機構45は、第1の仕切り部材41a(42a)の仕切り本体431の任意の位置(本例ではカッタモジュール31(32)から離れた側の下側隅部)に円形の位置決め孔451を開設すると共に、この位置決め孔451から離れた部位(本例では位置決め孔451の直上に位置する仕切り本体431の上辺部)にU字状の位置決め溝452を形成し、更に、第2の仕切り部材41b(42b)の仕切り本体441には、第1の仕切り部材41a(42a)の位置決め孔451、位置決め溝452に対応した位置に同様な位置決め孔453、位置決め溝454を形成し、第1の仕切り部材41a(42a)と第2の仕切り部材41b(42b)とを交互に積み上げた状態で、位置決め孔451,453に第1の位置決めロッド455(
図16参照)を挿入すると共に、位置決め溝452,454に第2の位置決めロッド456を挿入することで、スクレーパ41(42)の第1の仕切り部材41a(42a)と第2の仕切り部材41b(42b)とを位置決めするようになっている。
【0034】
−細断機構の組立過程−
本実施の形態における細断機構24の組立過程について説明する。
細断機構24を組み立てるに際し、カッタ部品25としての対構成のカッタモジュール31,32に清掃機構26を組み付ける必要がある。
先ず、
図16(a)示すように、清掃機構26としてのスクレーパ41(42)として、第1の仕切り部材41a(42a)と第2の仕切り部材41b(42b)とを交互に積み上げ、位置決め孔451,453に第1の位置決めロッド455を挿入する。
この状態では、第1の仕切り部材41a(42a)と第2の仕切り部材41b(42b)とは第1の位置決めロッド455位置を揺動支点として揺動自在になっている。
この後、
図16(b)に示すように、カッタ部品25としてのカッタモジュール31(32)に対し、スクレーパ41(42)の第1の仕切り部材41a(42a)、第2の仕切り部材41b(42b)を、カッタモジュール31(32)の凹部315(325)に対応した部位、カッタモジュール31(32)のカッタ部312(322)に対応した部位に夫々配置する。
そして、清掃機構26としてのスクレーパ41(42)の各仕切り部材41a,41b(42a,42b)の配置が完了した段階において、第1の仕切り部材41a(42a)及び第2の仕切り部材41b(42b)の位置決め溝452,454に第2の位置決めロッド456を挿入するようにすればよい。
この状態において、
図16(c)に示すように、シュレッダ筐体21の予め決められた位置に各位置決めロッド455,456を位置決めするようにすれば、この位置決めロッド455,456の位置に基づいて各スクレーパ41,42が各カッタモジュール31,32に対して位置決めされることになり、細断機構24はシュレッダ筐体21の所定位置に設置される。
【0035】
−シュレッダの細断制御処理−
次に、本実施の形態に係るシュレッダの細断制御処理を主として
図3及び
図4(a)に従って説明する。
<通常細断処理>
先ず、制御装置70は、操作パネル60のスタートスイッチ61がオン操作されたことを判断した後、駆動装置50の駆動条件(例えば駆動モータ51の駆動速度条件)を予め決められた所定のものに設定する。
この状態において、シュレッダ筐体21の投入口22に用紙Sが投入されると、当該用紙Sは搬入経路23に沿って細断機構24に向かって移動する。このとき、位置センサ28は用紙Sが通過したことを検出すると、位置センサ28による検出信号が制御装置70に取り込まれ、これに連動して、駆動モータ51が所定の駆動条件に従ってカッタ部品25としての対構成のカッタモジュール31,32を駆動する。
本例では、用紙Sは対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mを通過することで、縦横同時に細断され、細断された細断屑Saは清掃機構26としてのスクレーパ41,42によってカッタモジュール31,32から掻き取られて下方へと落下する。
このような細断処理においては、細断屑Saは例えば0.7mm×3.5mm(2.45mm
2)の極小の細断サイズで細断されることから、仮に、細断処理後の細断屑Saを集めて元の用紙情報を再現しようとしても、細断屑Saの細断サイズが細かいことから、再現は略不可能である。
そして、用紙Sの後端が位置センサ28を通過して予め決められた時間(細断処理が終了したであろうと推測される時間)が経過すると、制御装置70は細断処理が終了したものと判断し、駆動モータ51の駆動を停止し、一連の細断制御処理を終了する。
【0036】
特に、本実施の形態では、カッタモジュール31,32は複数のカッタブロック100からなるカッタ集合体311,321を採用しているが、カッタ集合体311,321を構成する各カッタブロック100は、
図6(a)に示すように、夫々のリード107が回転軸310,320に対して傾斜角度θで連なるように配置されている。このため、カッタモジュール31,32の噛み合い領域Mにおける細断負荷は回転軸310,320方向に略均等に分散し、かつ、各カッタブロック100の連結部位にて細断負荷が不連続になることなくスムーズに連なることから、カッタモジュール31,32による細断性能が各カッタブロック100の連結部位にて他の部位に比べて変化したり、一時的に途切れるような挙動に至る懸念はない。
【0037】
<清掃機構による清掃処理>
このような通常細断処理において、対構成のカッタモジュール31,32の噛み合い領域Mで細断された細断屑Saの多くは下方に落下して屑容器27に収容される。
しかしながら、細断屑Saの一部はカッタモジュール31,32の周囲に静電付着する可能性がある。
しかしながら、本実施の形態の清掃機構26としてのスクレーパ41(42)は、
図4(a)及び
図12(a)(b)に示すように、第1の仕切り部材41a(42a)に加えて、第2の仕切り部材41b(42b)を備えているため、カッタモジュール31,32のスペーサ部314(324)の周囲に位置する凹部315(325)内の細断屑Saを掻き取ることに加えて、カッタ部312(322)に付着した細断屑Saをも掻き取る。
このため、カッタモジュール31,32の周囲に細断屑Saが静電付着したまま堆積する懸念は極めて少ない。
【0038】
特に、本実施の形態では、第1、第2の仕切り部材41a,41b(42a,42b)は広範囲に亘ってカッタモジュール31(32)のスペーサ部314(324)の周囲に位置する凹部315(325)の底面、カッタ部312(322)の先端外周縁に近接したエッジ面432,442を形成したため、カッタモジュール31,32の周面に静電付着したまま細断屑Saが各仕切り部材41a,42a(41b,42b)との微小隙間を通過することはない。
更に、本実施の形態では、第1の仕切り部材41a(42a)は、
図13(a)(b)に示すような案内片434を有しているため、カッタモジュール31,32の周面に静電付着した細断屑Saは案内片434に突き当たった後に下方へと案内される。特に、本例の案内片434は2つの案内突起435,436にて構成され、案内突起435,436間にV溝438が存在することから、仮に、細断屑Saが案内片434付近に静電付着したとしても、V溝438付近で落下することから、細断屑Saが案内片434付近にそのまま残存する懸念は極めて少ない。
【0039】
◎変形の形態1
本実施の形態では、カッタモジュール31(32)は、例えば円筒状の回転軸310(320)に各カッタブロック100を嵌め込み、位置決め機構120(キー121,キー溝122)にて回転軸310(320)に対して各カッタブロック100を位置決めするようにしたものであるが、これに限られるものではなく、例えば
図17(a)(b)に示すように、断面正n角形状(本例ではn=6)の回転軸310(320)と、カッタ部102の切断刃103の刃数がnの整数倍であるカッタブロック100とを用意し、このカッタブロック100のブロック本体101には回転軸310(320)が挿入可能な断面正n角形状の挿入孔106を形成し、回転軸310(320)に各カッタブロック100を順次挿入させ、図示外の端部締付機構にて複数のカッタブロック100からなるカッタ集合体311(321)の両端を回転軸310(320)に位置決めするようにすればよい。
本例では、カッタブロック100の断面正n角形状の挿入孔106の内周面と断面正n角形状の回転軸310(320)の外周面とがカッタブロック100を回り止めするための位置決め機構120を兼用した構成になっている。
特に、本例では、カッタブロック100の挿入孔106は正n角形状に形成され、しかも、切断刃103の刃数がnで割り切れる態様であるため、回転軸310(320)に対して各カッタブロック100の挿入位置が周方向にばらついたとしても、各カッタブロック100の切断刃103の列からなるリード107は回転軸方向に対して所定の傾斜角度θをもって連なるように配置される。
尚、本例では、正n角形状の回転軸310(320)の両端には図示外のベアリングに支持可能な断面円形状の支持部160を有している。
また、本例において、例えばキーとキー溝とからなる位置決め機構120を別途付加するようにしてもよく、この場合には、各カッタブロック100は回転軸310(320)に対して予め決められた周方向位置を保って挿入されるため、カッタブロック100の切断刃103の刃数は回転軸310(320)の正多角形状の角数nとは無関係に選定することが可能である。
尚、回転軸310(320)の断面形状を断面円形の一部をカットするDカット面とし、各カッタブロック100の挿入孔106を回転軸310(320)が挿入可能なDカット面として形成するようにすれば、各カッタブロック100は回転軸310(320)に対して予め決められた周方向位置を保って挿入される。
【0040】
◎変形の形態2
また、本実施の形態又は変形の形態1では、各カッタブロック100はいずれも回転軸310(320)に挿入され、回転軸310(320)との間で位置決め機構120による回り止めがなされているが、これに限られるものではなく、例えば
図18(a)に示すように、各カッタブロック100の一側面の中央に連結部161として雄ねじ部を設けると共に、各カッタブロック100の他側面の中央には被連結部162としての雌ねじ部を設け、各カッタブロック100を連結部161、被連結部162を介して連結し、更に、端部に位置するカッタブロック100eの両端に回転軸163,164を夫々連結するようにしたものが挙げられる。本例では、一方の回転軸163は端部のカッタブロック100eの被連結部162に螺合する雄ねじ部163aを有し、他方の回転軸164は端部のカッタブロック100eの連結部161に螺合する雌ねじ部164aを有している。
このように、本例では、位置決め機構120は、カッタブロック100間を位置決め連結する連結機構(連結部161、被連結部162)と、端部のカッタブロック100eと回転軸163,164との位置決め連結する連結機構(連結部161、被連結部162、雄ねじ部163a、雌ねじ部164a)とに分離して機能するようになっている。
【0041】
◎変形の形態3
更に、変形の形態3としては、例えば
図18(b)に示すように、各カッタブロック100の一側面の中央に連結部171として周面の一部にキー171a付の連結ボス171bを設けると共に、各カッタブロック100の他側面の中央には被連結部172として連結部171が嵌合可能なキー溝172a付きの連結孔172bを設け、各カッタブロック100を連結部171、被連結部172を介して連結し、更に、端部に位置するカッタブロック100eの両端に回転軸173,174を夫々連結するようにしたものが挙げられる。本例では、一方の回転軸173は端部のカッタブロック100eの被連結部172に嵌合するキー173a付きの連結ボス173bを有し、他方の回転軸174は端部のカッタブロック100eの連結部171に嵌合するキー溝174a付きの連結孔174bを有している。
このように、本例では、位置決め機構120は、カッタブロック100間を位置決め連結する連結機構(連結部171、被連結部172)と、端部のカッタブロック100eと回転軸173,174との位置決め連結する連結機構(連結部171、被連結部172、キー173a付き連結ボス173b、キー溝174a付き連結孔174b)とに分離して機能するようになっている。
【0042】
◎変形の形態4
本実施の形態では、清掃機構26としてのスクレーパ41(42)は、第1の仕切り部材41a(42a)、第2の仕切り部材41b(42b)を有しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、要請される清掃機能に応じて、例えば
図19(a)(b)に示すように、第2の仕切り部材41b(42b)を用いずに、第1の仕切り部材41a(42a)のみを用いるようにしてもよい。
◎変形の形態5
更に、本実施の形態では、各カッタブロック100は中間部品112を切削加工工程にて製造し、最終部品113をワイヤ放電加工工程にて製造するようにしているが、これらの組み合せに限られるものではなく、例えば中間部品112、最終部品113のいずれもワイヤ放電加工工程にて製造するようにする等適宜選定して差し支えない。
【0043】
◎実施の形態2
図20は実施の形態2に示す画像形成装置の要部を示す説明図である。
同図において、画像形成装置200は、装置筐体210内にシュレッダ20を組み込んだものである。
本例において、画像形成装置200の基本的構成は、装置筐体210内に例えば電子写真方式の画像が作成可能な作像部220を有し、所定の搬送経路213に沿って、用紙供給トレイ230から供給された用紙Sを作像部220まで搬送した後、作像部220にて作成された画像を用紙Sに転写すると共に、例えば加熱加圧定着方式の定着器240にて用紙S上に画像を定着するようにしたものである。尚、符号250は作像部220による通常の画像形成処理を実施した画像形成済みの用紙Sを収容する用紙収容トレイである。
ここで、作像部220の一例としては、例えば感光体221の周囲に、当該感光体221を帯電する帯電器222、帯電された感光体221上に静電潜像を書き込む露光器223、感光体221上に書き込まれた静電潜像をトナーにて可視像化する現像器224、感光体221上に作成された画像(トナーによる像)を用紙Sに静電転写させる転写器225、及び、感光体221上の転写後の残留物を清掃する清掃器226を配設したものが挙げられる。
そして、本実施の形態では、装置筐体210内にはシュレッダ20が組み込まれており、例えば装置筐体210の側方にはシュレッダ20に用紙Sを案内する用紙案内トレイ280が設けられ、この用紙案内トレイ280からシュレッダ20に細断すべき用紙Sが案内されるようになっている。
本例で用いられるシュレッダ20としては実施の形態1に挙げられた態様や変形形態のいずれでも適用することが可能である。
更に、装置筐体210には、画像形成装置200の操作パネル260が設けられ、この操作パネル260には通常の作像処理に対する作像操作部261のほかに、シュレッダ20に対する細断操作部262(例えば実施の形態1の操作パネル60に相当)が設けられ、この操作パネル260による操作に伴って画像形成装置200を制御する制御装置270が設けられている。
【0044】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動について説明する。
同図において、今、操作パネル260の作像操作部261を操作したとすると、制御装置270は、作像モードに従って、作像部220、用紙供給トレイ230、定着器240、用紙Sの搬送系に対して画像形成に必要な制御信号を送出し、一連の画像形成処理を実施する。
一方、操作パネル260の細断操作部262を操作したとすると、用紙案内トレイ280に細断すべき用紙Sをセットしてシュレッダ20に搬入すれば、ユーザの要望に沿って用紙Sの通常の細断処理が実施される。
本例では、画像形成装置200にシュレッダ20を組み込んだので、例えば作像部220による作像処理が不適正であった用紙Sなどが生じたとしても、直ちにシュレッダ20による細断処理を実施することが可能である点で好ましい。
【実施例】
【0045】
◎実施例1
今、カッタブロック100に対してワイヤ放電加工にてカッタ部形成工程を実施するに当たって、
図21(a)〜(c)に示すように、カッタブロック100の軸方向長さLと、回転軸方向に対して傾斜配置される切断刃103(
図22参照)の列からなるリード107との関係を調べた。
本例では、
図22(a)〜(c)に示すように、カッタブロック100のカッタ部102の外径が42.5mm、切断刃103の高さを5mm、回転軸に対する切断刃103の列からなるリード107の傾斜角度θを4.2°にした中間部品の軸方向長さLをLa(本例では335mm)、Lb(本例では50mm)、Lc(本例では25mm)に変え、そのときに形成されたリード107の性能として、カッタブロック100のリード107による手前と奥との切断刃先のずれ角度h(具体的にはha,hb,hc)と、カッタブロック100の軸方向中央におけるリード107の最大凹み量g(具体的にはga,gb,gc)とを測定した。
【0046】
結果を以下に示す。
L La Lb Lc
h(°) 66.3 9.9 5.0
g(mm) 3.46 0.08 0.02
同結果によれば、カッタブロック100の軸方向長さLがLaのように長いと、カッタブロック100のリード107における最大凹み量g(ga)が嵩み、複数のカッタブロック100からなるカッタ集合体311(321)の外径寸法がばらつき、その分、細断性能が低下する懸念があることが理解される。
この点、例えばカッタブロック100の軸方向長さLをLb,Lcのように短く設定すると、カッタブロック100のリード107における最大凹み量g(gb,gc)は小さく抑えられ、カッタ集合体311(321)の外径寸法がばらつく懸念は殆どなくなる。よって、本実施例に係るカッタブロック100においては、軸方向長さLを50mm以下に選定すれば、ワイヤ放電加工によりカッタ部102の切断刃103列からなるリード107を形成したとしても、カッタ集合体311(321)の外径精度に何ら悪影響を与えることがないことが理解される。
【解決手段】互いに噛み合うように配置される対構成のカッタモジュール2は、被細断物10の搬送方向に交差する幅方向に沿って延びる回転軸3と、回転軸方向に対して複数に分割されると共に回転軸3に組み込まれて固定され、周囲に所定のピッチ間隔で切断刃5aが形成されたカッタ部5を予め決められた間隔のスペーサ部6を介して複数段配置し、かつ、回転軸方向に対して切断刃5aが予め決められた角度θ傾斜するようにカッタ部5及びスペーサ部6を配置してなる複数のカッタブロック4と、各カッタブロック4のカッタ部5が隣接するカッタブロック4のカッタ部5に連なって傾斜配置されるように各カッタブロック4の集合体と回転軸3とを位置決めする位置決め機構7と、を有する。