(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炉室において、前記ガラス板に対向する位置に配置され、前記ガラス板の搬送方向に対して、前記炉室を複数の空間に分割し、前記ガラス板が保有する熱量を変化させる断熱板を備え、
前記断熱板には、前記ガラス板の幅方向に複数の前記熱量制御装置が設けられ、
前記検出工程で検出された脈理の位置に対向する前記熱量制御装置は、前記ガラス板に与える熱量を増加する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、ガラス板の搬送方向に脈理が発生した位置において、ガラス板が保有する熱量を制御することによりガラス板の脈理を抑えることができるガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の形態を有する。
(形態1)
ダウンドロー法を用いて熔融ガラスからガラス板を成形する成形工程と、
前記成形工程で成形されたガラス板を鉛直方向下方に搬送しながら冷却する冷却工程と、
前記冷却工程で冷却されたガラス板の搬送方向に発生する脈理の位置と前記脈理による変化量とを検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記変化量が、基準量以上となる脈理の位置を判定する判定工程と、を備え、
前記判定工程で判定された脈理の位置で、前記変化量が前記基準量以下となるよう前記ガラス板が保有する熱量を制御する、
ことを特徴とするガラス板の製造方法。
【0010】
(形態2)
ダウンドロー法を用いて熔融ガラスからガラス板を成形する成形工程と、
前記成形工程で成形されたガラス板を鉛直方向下方に搬送しながら冷却する冷却工程と、
前記冷却工程で冷却されたガラス板の搬送方向に発生する脈理の位置と前記脈理による変化量とを検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記変化量が、基準量以上となる脈理の位置を判定する判定工程と、を備え、
前記冷却工程では、炉壁で囲まれた炉室において、前記判定工程で判定された脈理の位置で、前記変化量が前記基準量以下となるよう前記ガラス板が保有する熱量を制御する、
ことを特徴とする、ガラス板の製造方法。
【0011】
(形態3)
ダウンドロー法を用いて熔融ガラスからガラス板を成形する成形工程と、
前記成形工程で成形されたガラス板を鉛直方向下方に搬送しながら冷却する冷却工程と、
前記冷却工程で冷却されたガラス板の搬送方向に発生する脈理の位置を前記ガラス板の板厚偏差又は粘性偏差に基づいて検出する検出工程と、を備え、
前記成形工程又は前記冷却工程では、炉壁で囲まれた炉室において、前記ガラス板に対向する位置に配置され、前記ガラス板の搬送方向に対して、前記炉室を複数の空間に分割し、前記ガラス板が保有する熱量を変化させる断熱板を用いて、前記検出工程で検出された脈理の位置で、前記脈理が所定の条件を満たすよう、前記断熱板が前記ガラス板に与える熱量を制御する、
ことを特徴とする、ガラス板の製造方法。
【0012】
(形態4)
前記炉室において、前記ガラス板に対向する位置に配置され、前記ガラス板の搬送方向に対して、前記炉室を複数の空間に分割し、前記ガラス板が保有する熱量を変化させる断熱板を備え、
前記断熱板には、前記ガラス板の幅方向に複数の熱量制御装置が設けられ、
前記検出工程で検出された脈理の位置に対向する前記熱量制御装置は、前記ガラス板に与える熱量を増加する、
ことを特徴とする形態2又は3に記載のガラス板の製造方法。
【0013】
(形態5)
前記断熱板は、前記ガラス板の幅方向で複数に分割され、
前記冷却工程では、冷却するガラス板と、前記検出工程で検出された脈理の位置に対向する分割された断熱板との距離を狭める、
ことを特徴とする形態3又は形態4に記載のガラス板の製造方法。
【0014】
(形態6)
前記冷却工程では、前記検出工程で検出された脈理の位置に断熱板を新たに設け、前記ガラス板と前記断熱板との距離を狭める、
ことを特徴とする形態3〜5のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【0015】
(形態7)
前記脈理は、前記ガラス板の幅方向に所定の幅を有し、前記ガラス板の搬送方向に連続的に発生する、
ことを特徴とする形態1から5のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【0016】
(形態8)
ダウンドロー法を用いて熔融ガラスからガラス板を成形し、成形したガラス板を鉛直方向下方に搬送しながら冷却する成形装置と、
前記成形装置で成形され冷却されたガラス板の搬送方向に発生する脈理の位置と前記脈理による変化量とを検出し、前記変化量が基準量以上となる脈理の位置を判定する検出装置と、を備え、
前記成形装置は、炉壁で囲まれた炉室において、前記検出装置が判定した脈理の位置で、前記変化量が前記基準量以下となるよう前記ガラス板が保有する熱量を制御する、
ことを特徴とする、ガラス板の製造装置。
【0017】
(形態9)
成形体からオーバーフローした熔融ガラスを、前記成形体の両側面に沿って流下させた後、前記成形体の下端部近傍で合流させてガラス板を成形する成形工程と、
前記成形工程で成形されたガラス板を鉛直方向下方に搬送しながら冷却する冷却工程と、
前記冷却工程で冷却されたガラス板の搬送方向に発生する脈理の位置と前記脈理による変化量とを検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記変化量が、基準量以上となる脈理の位置を判定する判定工程と、を備え、
前記成形工程では、
前記成形体の下端部近傍に対向する位置に配置され、前記ガラス板が保有する熱量を変化させる熱量変化部材を有し、
前記判定工程で判定された脈理の位置において、前記検出工程された前記変化量が前記基準量以下となるよう、前記熱量変化部材が前記ガラス板に与える熱量を制御する、
ことを特徴とする、ガラス板の製造方法。
【0018】
(形態10)
前記成形工程では、前記熱量変化部材と前記ガラス板との距離を狭め、前記判定工程で判定された脈理の位置のガラス板の保有熱量を上昇させ、
前記冷却工程では、保有熱量が上昇した前記ガラス板を、前記ガラス板の幅方向に引っ張りながら冷却する、
ことを特徴とする形態9に記載のガラス板の製造方法。
【0019】
(形態11)
前記熱量変化部材の幅は、前記検出工程で検出された脈理の幅に等しい、
ことを特徴とする形態9又は形態10に記載のガラス板の製造方法。
【0020】
(形態12)
前記脈理は、前記ガラス板の幅方向に所定の幅を有し、前記ガラス板の搬送方向に連続的に発生する、
ことを特徴とする形態9から形態11のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【0021】
(形態13)
成形体からオーバーフローした熔融ガラスを、前記成形体の両側面に沿って流下させた後、前記成形体の下端部近傍で合流させてガラス板を成形する成形装置と、
前記成形装置が成形したガラス板を鉛直方向下方に搬送しながら冷却する冷却装置と、
前記冷却装置が冷却したガラス板の搬送方向に発生する脈理の位置と前記脈理による変化量とを検出し、検出した脈理による前記変化量が、基準量以上となる脈理の位置を判定する判定装置と、を備え、
前記成形装置は、
前記成形体の下端部近傍に対向する位置に配置され、前記ガラス板が保有する熱量を変化させる熱量変化部材を有し、
前記判定装置が判定した脈理の位置において、前記変化量が前記基準量以下となるよう、前記熱量変化部材が前記ガラス板に与える熱量を制御する、
ことを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の効果】
【0022】
上述の態様のガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置によれば、ガラス板の搬送方向に脈理が発生した位置において、ガラス板が保有する熱量を制御することによりガラス板の脈理を抑えることができる
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本実施形態にかかるガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置について説明する。
図1は、本実施形態にかかるガラス板製造装置の概略構成図である。
ガラス板製造装置100は、
図1に示すように、溶解槽200と、清澄槽300と、成形装置400とから構成される。溶解槽200では、ガラスの原料が溶解され熔融ガラスが生成される。溶解槽200で生成された熔融ガラスは、清澄槽300へ送られる。清澄槽300では、熔融ガラスに含有される気泡の除去が行われる。清澄槽300で気泡が除去された熔融ガラスは、成形装置400へ送られる。成形装置400では、例えばオーバーフローダウンドロー法によって、熔融ガラスからガラス板Gが連続的に成形される。その後、成形されたガラス板Gは、冷却され、所定の大きさのガラス板に切断される。ガラス板Gは、例えば、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板(例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板)、カバーガラスや磁気ディスク用などの強化ガラス用ガラス基板、ロール状に巻き取られるガラス基板、半導体ウエハ等の電子デバイスが積層されたガラス基板として用いられる。
【0025】
(ガラス組成)
熔解槽200では、図示されない加熱手段によりガラス原料が溶解され、熔融ガラスが生成される。ガラス原料は、所望の組成のガラスを実質的に得ることができるように調製される。ガラスの組成の一例として、パネルディスプレイやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板として好適な無アルカリガラスは、SiO
2:50質量%〜70質量%、Al
2O
3:10質量%〜25質量%、B
2O
3:0質量%〜15質量%、MgO:0質量%〜10質量%、CaO:0質量%〜20質量%、SrO:0質量%〜20質量%、BaO:0質量%〜10質量%を含有する。ここで、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計の含有量は、5質量%〜30質量%である。あるいは、酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板及びLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適なガラス基板は、SiO
2:55質量%〜70質量%、Al
2O
3:15質量%〜25質量%、B
2O
3:0質量%〜10質量%、MgO:0質量%〜10質量%、CaO:0質量%〜20質量%、SrO:0質量%〜20質量%、BaO:0質量%〜10質量%を含有する。ここで、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計の含有量は、5質量%〜30質量%である。このとき、上記ガラス基板は、SiO
2を60質量%〜70質量%、BaOを3質量%〜10質量%を含有することがより好ましい。
【0026】
パネルディスプレイやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板として、無アルカリガラスの他に、アルカリ金属を微量含むアルカリ微量含有ガラスを用いてもよい。ガラス基板のガラスが、酸化錫を含む無アルカリガラス、又は、酸化錫を含むアルカリ微量含有ガラスであると、清澄槽300の内壁に用いる白金族金属の揮発によって生じる白金族金属の凝集物の異物が熔融ガラスに混入することを抑制する効果は顕著となる。無アルカリガラス又はアルカリ微量含有ガラスは、アルカリガラスと比較してガラス粘度が高い。熔解工程で熔融温度を高くすることにより多くの酸化錫が熔解工程で還元されることから、清澄効果を得るために清澄工程における熔融ガラス温度を高くして、酸化錫の還元を促進し、かつ熔融ガラス粘度を低下させることが必要である。また、酸化錫は、従来清澄剤として用いられていた亜ヒ酸やアンチモンと比較して還元反応を促進する温度が高いため、熔融ガラスの温度を高くして清澄を促進させるために、清澄槽300の内壁の温度を高くする必要がある。つまり、酸化錫を含む無アルカリガラス基板、又は、酸化錫を含むアルカリ微量含有ガラスのガラス基板を製造する場合には、清澄工程における熔融ガラス温度を高くする必要があるので、白金族金属の揮発が生じやすい。なお、無アルカリガラス基板とは、アルカリ金属酸化物(Li
2O、K
2O、及びNa
2O)を実質的に含有しないガラスである。また、アルカリ微量含有ガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有量(Li
2O、K
2O、及びNa
2Oの合量)が0超0.8モル%以下のガラスである。アルカリ微量含有ガラスは、成分として、例えば0.1質量%〜0.5質量%のアルカリ金属酸化物を含み、好ましくは、0.2質量%〜0.5質量%のアルカリ金属酸化物を含む。ここで、アルカリ金属酸化物は、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oから選択される少なくとも1種である。アルカリ金属酸化物の含有量の合計は、0.1質量%未満であってもよい。
【0027】
本実施形態によって製造されるガラス基板は、上記成分に加えて、SnO
2 0.01質量%〜1質量%(好ましくは、0.01質量%〜0.5質量%)、Fe
2O
3 0質量%〜0.2質量%(好ましくは、0.01質量%〜0.08質量%)をさらに含有してもよい。本実施形態によって製造されるガラス基板は、環境負荷を考慮して、As
2O
3、Sb
2O
3およびPbOを含有しない、あるいは実質的に含有しないことが好ましい。
【0028】
また、本実施形態で製造されるガラス基板として、さらに、以下のガラス組成のガラス基板も例示される。したがって、以下のガラス組成をガラス基板が有するようにガラス原料は調合される。例えば、モル%表示で、SiO
2 55〜75モル%、Al
2O
3 5〜20モル%、B
2O
3 0〜15モル%、RO 5〜20モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)、R’
2O 0〜0.4モル%(R’はLi
2O、K
2O、及びNa
2Oの合量)、SnO
2 0.01〜0.4モル%、含有する。このとき、SiO
2、Al
2O
3、B
2O
3、及びRO(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaのうち前記ガラス基板に含有される全元素)の少なくともいずれかを含み、モル比((2×SiO
2)+Al
2O
3)/((2×B
2O
3)+RO)は4.0以上であってもよい。モル比((2×SiO
2)+Al
2O
3)/((2×B
2O
3)+RO)は4.0以上であるガラスは、高温粘性の高いガラスの一例である。
【0029】
次に、成形装置400の詳細な構成について説明する。
図2は、成形装置の断面概略構成図であり、
図3は、成形装置の側面概略構成図である。
成形装置400は、
図2及び
図3に示すように、成形体10と、仕切り部材20と、冷却ローラ30と、断熱部材40a,40b,・・・,40hと、送りローラ50a,50b,・・・,50hと、温度制御ユニット(温度制御装置、熱量制御装置)60a,60b,・・・,60hとから構成される。また、成形装置400は、仕切り部材20より上方の空間である成形体収容部410と、仕切り部材20直下の空間である成形ゾーン42aと、成形ゾーン42aの下方の空間である徐冷ゾーン420とを有する。徐冷ゾーン420は、複数の徐冷空間42b,42c,・・・,42hを有する。成形ゾーン42a、徐冷空間42b、徐冷空間42c、・・・,42hは、この順番で鉛直方向上方から下方に向かって積層している。成形ゾーン42aと徐冷ゾーン420とは、耐火材及び/又は断熱材建物(図示せず)によって囲まれ、成形ゾーン42a、徐冷ゾーン420において、温度制御ユニット60a等が、ガラス板Gを成形、冷却するのに適する温度に制御する。
【0030】
成形体10は、
図2に示すように、略楔状の断面形状を有する部材である。成形体10は、略楔状の尖端が下端に位置するように、成形体収容部410に配置される。
図3に示すように、成形体10の上端面には、溝12が形成されている。溝12は、成形体10の長手方向、すなわち
図3の紙面左右方向に形成されている。溝12の一方の端部には、ガラス供給管14が設けられている。溝12は、ガラス供給管14が設けられる一方の端部から他方の端部に近づくに従って、徐々に浅くなるように形成されている。成形体10の長手方向の両端には、側壁から熔融ガラスがはみ出るのを妨げるガイドが取り付けられている。このガイドは、平面視で楔形をしており、成形体10の端面全体をカバーできる大きさの板材で作られている。鉛直方向に関して、ガイドの先端の位置は、成形体10の下端に一致している。ガイドの働きにより、熔融ガラスの全部を側壁に沿って流すことが可能である。ガラス板Gは熔融ガラスが下端で融合して成形されるが、熔融ガラスはガイドによりせき止められるため、ガイド付近、つまり、成形体10の長手方向の両端部には熔融ガラスが溜まる。このため、成形体10の下端で融合したガラス板Gの幅方向の端部G1は、
図4に示すように、球根状で厚みのある形状となる。ガラス板Gの幅方向とは、熔融ガラスMGの表面あるいはガラス板Gの表面の面内における方向のうち、搬送される搬送方向に直交する方向をいう。ここで端部G1とは、ガラス板Gの幅方向中央の板厚に対して所定の厚みを有する部分をいう。また、端部G1で挟まれた幅方向の領域を中央領域G2という。中央領域G2は、端部G1と比較して薄く、保有熱量が小さいため、徐冷ゾーン420で発生する気流の乱れ、温度制御ユニット60の温度ムラ等によって、保有熱量が変化しやすく、反り、歪みが生じやすい。このため、中央領域G2の冷却量を厳密に管理する必要がある。
【0031】
仕切り部材20は、成形体10の下端の近傍に配置される板状の断熱材である。仕切り部材20は、その下端の高さ方向の位置が、成形体10の下端の高さ方向の位置から下方に位置するように、配置されている。仕切り部材20は、
図2に示すように、ガラス板Gの厚み方向両側に配置される。仕切り部材20は、成形体収容部410と成形ゾーン42aとを仕切ることにより、成形体収容部410から成形ゾーン42aへの熱移動を抑制する。断熱材である仕切り部材20により、成形体収容部410と成形ゾーン42aとを仕切るのは、成形体収容部410と成形ゾーン42aとの各々において、空間内の温度について両空間が互いに影響しあわないように温度制御を行うためである。また、仕切り部材20は、徐冷ゾーン420から成形体収容部410に入る気流の体積流量を抑制するように、ガラス板Gと仕切り部材20との間の間隔があらかじめ調節されて配置されている。
【0032】
冷却ローラ30は、成形ゾーン42aにおいて、仕切り部材20の近傍に配置される。また、冷却ローラ30は、ガラス板Gの厚み方向両側に配置され、ガラス板Gを厚さ方向に挟み、ガラス板Gを下方に搬送しながらガラス板Gの端部G1を冷却する役割を担う。
【0033】
断熱部材40a,40b,・・・,40hは、徐冷ゾーン420において、ガラス板Gの搬送方向(鉛直方向下方)に対して、徐冷ゾーン420を複数の徐冷空間42b,42c,・・・,42hに分割し、分割した各徐冷空間の熱移動を抑制する。また、断熱部材40a,40b,・・・,40hは、冷却ローラ30の下方、かつ、ガラス板Gの厚み方向両側に配置される板状の部材であり、ガラス板Gを搬送方向へ導くスリット状の空間を有する。上述したように、成形ゾーン42aと徐冷ゾーン420とは、耐火材及び/又は断熱材建物(図示せず)によって囲まれているが、徐冷ゾーン420には、ガラス板Gが搬出されるスリット状の空間があり、また、断熱材建物等には一部隙間がある。このため、煙突効果によって、徐冷ゾーン420において、鉛直方向下方から成形ゾーン42aに向かう上昇気流が発生する。この気流はガラス板Gに沿って上昇し、気流によってガラス板Gが冷却されるため、この気流を抑制する断熱部材40a,40b,・・・,40hが必要となる。例えば、
図2に示すように、断熱部材40aは、成形ゾーン42aと徐冷空間42bとを形成し、断熱部材40bは、徐冷空間42bと徐冷空間42cとを形成する。断熱部材40a,40b,・・・,40hは、上下の空間の間における熱移動を抑制する。例えば、断熱部材40aは、成形ゾーン42aと徐冷空間42bとの間の熱移動及び上昇気流を抑制し、断熱部材40bは、徐冷空間42bと徐冷空間42cとの間の熱移動及び上昇気流を抑制する。
【0034】
各断熱部材40a,40b,・・・,40hは、複数の断熱板41が組み合わされて、ガラス板Gに対向する位置に近接配置される。そして、断熱板41は、稼働機構(図示せず)によって、ガラス板Gの厚さ方向に、熱移動及び上昇気流を抑制するように移動可能となっている。
図5は、ガラス板Gを挟む断熱部材40を平面視した場合の概略図である。本実施形態では、断熱部材40は、同図に示すように、ガラス板Gに対向する位置に配置され、複数の断熱板41がガラス板Gの幅方向に連結されて形成される。ガラス板Gと断熱部材40(断熱板41)との間には隙間があり、この隙間の距離D1を、断熱板41をガラス板Gの方向に移動させることにより任意に設定できる。距離D1の隙間を気流が通ることによりガラスGが冷却されると、ガラス板Gを所望の温度に調節することができず、ガラス板Gに脈理が発生する原因となる。このため、ガラス板Gに脈理が発生した位置に対向する断熱板41を移動させて、ガラス板Gの冷却量を調節することにより、ガラス板Gに発生する脈理を抑制することができる。
なお、断熱板41のサイズ、数は、任意に設定することができる。例えば、断熱板41のサイズを小さくして、多数の断熱板41を連結することにより、ガラス板Gの脈理が発生した位置に対向する位置の断熱板41を移動することもできる。
【0035】
送りローラ50a,50b,・・・,50hは、徐冷ゾーン420において、鉛直方向に所定間隔で、ガラス板Gの厚み方向両側に複数配置される。送りローラ50a,50b,・・・,50hは、それぞれ、徐冷空間42b,42c,・・・,42hに配置され、ガラス板Gを下方に搬送する。
【0036】
温度制御ユニット60a,60b,・・・,60hは、例えば、抵抗加熱、誘電加熱、マイクロ波加熱によって発熱するシーズヒータ、カートリッジヒータ、セラミックヒータ、及び、温度センサ等から構成され、それぞれ、成形ゾーン42a及び徐冷空間42b,42c,・・・,42hにガラス板Gの幅方向に沿って配置され、成形ゾーン42a及び徐冷空間42b,42c,・・・,42hの雰囲気温度を測定し、制御する。また、温度制御ユニット60a,60b,・・・,60hは、ガラス板Gの反り、歪みが生じないように設計された所定の温度分布(以下、「温度プロファイル」という)を形成するように、成形ゾーン42a及び徐冷空間42b,42c,・・・,42hの雰囲気温度を制御する。成形ゾーン42a及び徐冷空間42b等の雰囲気温度によってガラス板Gの温度(保有熱量)は変化するが、雰囲気温度は温度が均一になりにくく、温度の高低差がある温度ムラが生じると、ガラス板Gの温度にもムラが生じする。ガラス板Gの中央領域G2の板厚は、0.05〜1.0mmと薄く、保有熱量が変化しやすく、反り、歪み、脈理が生じやすい。本実施形態にかかるガラス板Gの中央領域G2の板厚は、好ましくは、0.05〜0.5mmであり、より好ましくは0.05〜0.3mmである。ガラス板Gの板厚が薄くなるほど、保有熱量が変化しやすく、反り、歪み、板厚偏差が生じやすいため、中央領域G2の冷却量を厳密に管理する必要がある。以下では、温度制御ユニット60a,60b,・・・,60hを総称する場合、温度制御ユニット60と記載する。なお、上流側とは、ガラス板Gの搬送方向と逆方向の側をいい、本実施形態では、徐冷ゾーン420からみて成形体10の側をいう。
【0037】
検出装置70は、脈理を検出する部分であり、歪あるいはガラス板Gの表面の凹凸をガラス板Gの幅方向に沿った各位置で検出する。検出装置70は、例えば、光学センサ、凹凸検知器、歪検知器から構成され、徐冷ゾーン420(徐冷空間42h)から搬送されてきたガラス板Gに発生した歪みの位置、及び、歪量(歪値、歪度)、板厚偏差、粘性偏差等を検出する。検出装置70は、例えば、ガラス板Gの幅方向の左先端(左端部G1)から、X1mm〜X2mmの位置に、Y量の歪みがあると検出する。特に、検出装置70は、所定の幅(例えば、10mm幅)において、ガラス板Gに厚み(高さ)変動がある脈理を検出する。すなわち。検出装置70は、ガラス板Gの歪あるいは表面凹凸を検出して、歪みの変化量あるいは表面凹凸の量を計測する。ガラス板Gの板厚は、ガラス板Gの両側の表面凹凸により定まるものであるため、表面凹凸には、ガラス板Gの板厚の変動(板厚偏差)が含まれる。また、ガラス板Gの歪みの変化量は、ガラス板Gの粘性により定まるものであるため、歪量には、ガラス板Gの粘性の変動(粘性偏差)が含まれる。また、検出装置70は、検出した歪の変化量あるいは表面凹凸の量が基準量以上であるか否かを判定し、この量が基準量以上となった位置を脈理が発生した位置と判定する。脈理は、熔融ガラスMGが成形体の下端11を離れると同時に、表面張力によりガラス板Gの幅方向に収縮することにより、ガラス板Gの表面凹凸が発生し、この凹凸が徐冷ゾーン420において抑制されずに残ったことにより生じる歪みである。脈理は、ガラス板Gの収縮が原因であるため、ガラスGの搬送方向に沿って筋状に連続して発生する。また、ガラス板Gの成形時に異質なガラス成分が入り込み、異質なガラス成分が入り込んだガラス板Gの一部の保有熱量が他の部分と異なるために、保有熱量が異なる部分が脈理となる。この脈理を抑制するためには、ガラス板Gにおいて凹凸が発生した幅方向の位置のみの温度(保有熱量)を制御する必要があるが、徐冷ゾーン420の雰囲気温度を制御する温度制御ユニット60では、筋状の部分のみの温度を制御することが困難であり、温度プロファイルを実現することができない場合がある。このため、検出装置70が検出した脈理の位置、及び、脈理による変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)に基づいて、断熱板41の位置を調整することにより、筋状に温度が変化したガラス板Gの一部の温度のみを制御し、以降に成形するガラス板Gの脈理を抑制する。
【0038】
磁性管80は、磁性体の金属材料から構成され、電源装置(図示せず)に接続され、電源装置から誘導コイルに交流電流が流れると、磁界強度が変化して、磁性管に渦電流が発生する。この渦電流が磁性管80を流れることによりジュール熱が発生し、磁性管80が発熱する。磁性管80は、耐熱性、耐浸食性に優れ、仕切り部材20より上流(上方)側の位置で、高温となる成形体10の下端11に対向する位置に設けられ、稼働機構(図示せず)によって、ガラス板Gの厚さ方向、及び、幅方向に移動可能になっている。磁性管80を熔融ガラスMG(ガラス板G)に近づけたり離したりすることにより、磁性管80から熔融ガラスMGに伝わる熱量を調整して、ガラス板Gに発生する歪み、凹凸を抑制する。また、複数の磁性管80をガラス板Gの幅方向に並べて設けることにより、ガラス板Gの幅方向における熱量を調整して、ガラス板Gに発生する歪み、凹凸を抑制する。また、磁性管80は、温度制御ユニット60からの熱輻射を遮ることにより、ガラス板Gに与えられる熱量を抑制し、ガラス板Gの保有熱量を制御する。
磁性管80は、歪みの発生を抑制できる歪点より上流側(上方の空間側)、例えば、成形体10の下端11に対向する位置、成形ゾーン42a及び徐冷ゾーン420(徐冷空間42b,42c,・・・,42h)の位置に適宜設けることができる。ここで、成形体10の下端11とは、下端11の位置から例えば50cmの範囲内を意味する。ガラス板Gに発生する脈理、歪を抑制するためには、成形体10の下端11から歪点の近傍まで、ガラス板Gの温度制御が行われる。特に、脈理を抑制するためには、成形体10の下端11から中央領域G2の温度が徐冷点となる範囲で、特に成形体10の下端11から中央領域G2の温度がガラス軟化点の近傍までの範囲で、ガラス板Gの温度制御が行われることが好ましい。また、特に、歪を抑制するためには、中央領域G2の温度が徐冷点から歪点となるまでの範囲で、ガラス板Gの温度制御が行われることが好ましい。ここで、ガラス軟化点の近傍とは、ガラス軟化点−20℃からガラス軟化点+20℃までの温度領域であることが好ましい。磁性管80における管の直径、管の長さ、管の形状、管の本数は、ガラス板Gに発生する歪みの位置、及び、歪量に基づいて、適宜変更できる。また、磁性管80は、熔融ガラスMG(ガラス板G)を加熱又は冷却して、熔融ガラスMGの温度、粘度を変えることができればよいため、磁性管80に代えて、棒状あるいは板状の、ヒータ、発熱部材、冷却部材、あるいは熱量変化部材であってもよい。また、磁性管80に代えて、熔融ガラスMGに与えられる熱量を抑制する断熱板、熱遮蔽板であってもよい。
【0039】
次に、ガラス板Gの冷却を低減して、幅方向で保有熱量を均一にすることにより、脈理(歪み)を抑制する方法について説明する。
まず、一般的なオーバーフローダウンドロー法によって、ガラス板Gを成形及び徐冷する。ガラス板Gを成形及び徐冷する方法は、例えば、特開2008―88005号公報に記載される内容を含み、当該内容が参酌される。ガラス板Gは、歪が生じないように設計された温度プロファイルで制御された成形ゾーン42a及び徐冷ゾーン420(徐冷空間42b,42c,・・・,42h)を経て成形されるが、徐冷ゾーン420等で発生する気流の乱れや雰囲気温度の温度ムラによって、ガラス板Gの一部に脈理が発生する場合がある。このため、脈理が発生した位置、及び、脈理による変化量(表面凹凸の変化、歪の変化(歪量、歪値、歪度))を検出し、あるいは、凹凸の量を検出し、以後に形成するガラス板Gに脈理が生じないように、断熱板41、磁性管80を移動させて、ガラス板Gの保有熱量を均一にして、脈理を抑制する。
【0040】
次に、検出装置70は、徐冷ゾーン420(徐冷空間42h)から搬送されてきたガラス板Gの脈理の幅方向の位置及び変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)を検出する。
図6は、ガラス板Gの脈理GSの幅方向の位置を示した図である。同図に示すように、検出装置70は、搬送されるガラス板Gにおいて、左端部からの位置X1〜X2の間に、脈理GSを検出する。さらに、検出装置70は、検出した脈理GSによる変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)を検出する。具体的には、検出装置70は判定装置としても機能し、検出した変化量が基準量以上であるか否かを判定し、この変化量が基準量以上となった位置を脈理が発生した位置と判定する。ここで、基準量は、ガラス板Gの要求スペックによって変化するものであり、任意である。検出装置70は、上記変化量が基準量以上である場合には、検出した位置X1〜X2にある脈理GSを、変化量が基準量未満となるよう抑制すべき脈理であると判定する。ガラス板Gの搬送方向に筋状に連続して発生する脈理GSは、気流の乱れや雰囲気温度の温度ムラによって発生するため、この気流を抑制し、さらに温度ムラをなくして雰囲気温度を均一にしない限り、ガラス板Gの幅方向における一定の位置(ここでは、位置X1〜X2)に、発生し続ける。また、脈理GSによる変化量は、温度ムラをなくして雰囲気温度を均一にしない限り、ガラス板Gの一部が搬送方向に筋状に冷却され続けられているため、基本的には一定である。このため、徐冷ゾーン420において脈理GSが発生する位置の雰囲気温度を均一にして、所定の温度プロファイルを実現することにより、脈理GSを抑制することができる。温度制御ユニット60は雰囲気温度を制御できるが、脈理GSが発生した位置X1〜X2のみの温度を制御して、ガラス板Gの幅方向での保有熱量を均一にすることは困難である。このため、ガラス板Gと断熱板41との距離を制御することにより、ガラス板Gの保有熱量を均一にする。
【0041】
次に、成形装置400は、駆動機構を制御して、位置X1〜X2近傍の雰囲気温度が均一になるよう断熱板41の位置を設定する。
図7は、平面視したガラス板Gを挟む断熱板41の位置を変更した図である。成形装置400は、検出装置70が検出した脈理GSの位置X1〜X2に対向する位置にある断熱板41を移動させ、ガラス板Gと断熱板41との距離を、D1からD2に変更する。
図8は、ガラス板Gから断熱板41までの距離と脈理GSによる変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)との関係を示した図である。ガラス板Gから断熱板41までの距離D1では、脈理GSによる変化量が要求品質を満たさないため、成形装置400は、断熱板41の位置を変更して、同図に示すように、距離D1から距離D2に変更する。距離D2では、ガラス板Gの脈理GSは要求品質を満たす。脈理GSが発生した位置に対向する位置に設けられた断熱板41からガラス板Gまでの距離を狭めると、この位置を通過する気流が抑制されてガラス板Gの冷却量が減少し、さらに、雰囲気温度が均一になる。つまり、断熱板41をガラス板Gに近づけると、断熱板41に対向するガラス板Gの一部では、断熱板41からの熱輻射が増大し、断熱板41に対向する位置のみのガラス板Gの温度(保有熱量)が上昇する。脈理の発生位置であるガラス板Gの温度が低下している筋状の位置のみを加熱でき、ガラス板Gの搬送方向におけるクリアランスを変化させ、温度制御ユニット60で制御された温度プロファイルを実現できる。そして、ガラス板Gから断熱板41までの距離をD2に変更した以降に成形されるガラス板Gの変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)は、要求品質を満たすこととなる。なお、ガラス板Gから断熱板41までの距離と変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)との関係は、距離を徐々に変化させて、変化量を検出することにより求めてもよく、また、雰囲気温度とガラス板Gの温度とから、変化量をシミュレーションして求めてもよい。
【0042】
ガラス板Gの脈理GSは、ガラス板Gの温度が歪点に達する前に発生する。ここで、歪点とは、一般的なガラスの歪点をいい、10
14.5ポワズの粘度に相当する温度(例えば、661℃)である。ガラス板Gの歪点は650℃以上であってもよく、660℃以上であることがより好ましく、690℃以上であることがさらに好ましく、730℃以上が特に好ましい。歪点が高いガラスは、熔融されているガラスの粘度が高い傾向にある。粘度が高いガラスほど、ガラス板Gの成形時に異質なガラス成分が入り込んだ場合には、異質なガラス成分が拡散しにくいため、脈理GSが発生しやすい。そのため、歪点が高いガラスほど、脈理GSを低減できる効果が顕著になる本発明に好適である。脈理GSを抑制するためには、ガラス板Gの温度が歪点から−50℃に達する前に、ガラス板Gの温度(保有熱量)を制御する必要がある。成形ゾーン42a、徐冷ゾーン420において、ガラス板Gの温度が歪点から−50℃以上となるのは、断熱部材40aから断熱部材40fまでの領域である。このため、断熱部材40aから断熱部材40fの位置にある断熱板41の位置を変更し、断熱板41からガラス板Gに与える熱量を増加させることにより、効果的に、ガラス板Gの脈理GSを抑制することができる。断熱板41によりガラス板Gの温度制御が行われる範囲は、磁性管80と同様である。
【0043】
成形装置400は、検出装置70が検出した脈理GSの位置及び脈理GSによる変化量に基づいて、断熱板41の位置の調整を繰り返すことにより、断熱板41の位置の調整後に成形するガラス板Gの脈理GSを抑制することができる。また、ガラス板Gに複数の脈理GSが存在する場合には、成形装置400は、複数の脈理GSが発生した位置に対向する位置の断熱板41の位置の調整を繰り返すことにより、ガラス板Gの脈理GSを抑制することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス板に発生した脈理に対向する断熱板の位置を調整し、雰囲気温度を均一にすることにより、位置調整
後に成形するガラス板の脈理を抑制することができる。また、気流を抑制し、ガラス板の冷却量を低減することにより、脈理が生じないように設計された温度プロファイルを実現できる。
【0045】
(実施形態2)
次に、断熱部材40が一体に形成されている場合に、断熱板41を断熱部材40に沿って設けることにより、ガラス板Gの脈理GSを抑制する方法について説明する。なお、上述の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0046】
図9は、本実施形態にかかるガラス板を挟む断熱部材を平面視した場合の概略図である。断熱板41は、同図に示すように、断熱部材40に沿うように設けられる。断熱板41は、例えば、徐冷空間42hの下端に形成されているガラス板Gが搬出されるスリットから、徐冷ゾーン420内部に挿入することにより設けることができる。なお、断熱板41を設ける方法は、成形ゾーン42a、徐冷ゾーン420の構造によって任意に変更できる。
【0047】
成形装置400は、検出装置70が検出した脈理GSの位置及び歪量を、例えば成形装置400の操作者に掲示する。断熱板41を設ける位置は、脈理GSが発生した位置に対向する位置であり、また、断熱板41は、脈理GSの幅方向の長さに一致する長さを有し、ガラス板Gから断熱板41までの距離が要求品質を満たす距離D2となる厚みを有するサイズである。この断熱板41を、
図9に示すように、断熱部材40に沿うように設けることにより、断熱板41を設けた以降に成形するガラス板Gの脈理GSを抑制することができる。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス板の脈理が発生した位置及び脈理による変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)に対応する断熱板を設けることができるため、ガラス板の脈理を適切に抑制することができる。また、断熱部材が一体に形成されている場合であっても、ガラス板から断熱部材(断熱板)までの距離を任意に変更できるため、距離変更後のガラス板の脈理を抑制することができる。
【0049】
(実施形態3)
次に、ガラス板Gにおける端部G1と中央領域G2との間に発生する脈理を抑制する方法について説明する。なお、上述の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0050】
ガラス板Gは、
図4に示すように、厚さがほぼ均一な中央領域G2と、中央領域G2より厚みのある端部G1からなる。両端部G1は、厚さがほぼ均一な中央領域G2と比較して厚みがあるため、中央領域G2より保有熱量が大きく、両端部G1と中央領域G2とに保有熱量の差があるために、両端部G1と中央領域G2との間で応力が発生し、ガラス板Gに反り、歪みが生じることとなる。このため、両端部G1と中央領域G2との保有熱量を等しくすることによって、脈理GS(歪み)を低減する。この変化量(歪量)は、
図8に示すように、ガラス板Gから断熱部材40までの距離によって変化する。このため、端部G1から断熱部材40までの距離と、中央領域G2から断熱部材40までの距離がほぼ等しく、かつ、これらの距離が、要求品質を満たす距離以下であればよい。
【0051】
図10は、本実施形態にかかるガラス板を挟む断熱部材を平面視した場合の概略図である。断熱板41は、同図に示すように、端部G1及び中央領域G2から断熱板41までの距離がほぼ等しくなるように、傾斜形状になっている。両端部G1と中央領域G2との間における脈理GSは、板厚の差による保有熱量の差によって発生するため、歪量が幅方向で異なる。このため、傾斜形状を有する断熱板41を断熱部材40に沿って設けることにより、雰囲気温度を均一にして、脈理GSが生じないように設計された温度プロファイルによりガラス板Gを冷却する。これにより、断熱板41を設けた以後に成形するガラス板Gの脈理GSを抑制することができる。
なお、断熱板41の形状、サイズは、ガラス板Gの脈理GSの幅、歪量に基づいて、任意に変更することができる。
【0052】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス板の端部と中央領域に発生する脈理を抑制することができる。また、断熱部材が一体に形成されている場合であっても、両端部及び中央領域から断熱部材(断熱板)までの距離を任意に変更できるため、距離変更後のガラス板の脈理を抑制することができる。
【0053】
(実施形態4)
次に、断熱部材40に複数の温度制御ユニット(温度制御装置、熱量制御装置)60を設けることにより、ガラス板Gの脈理を抑制する方法について説明する。なお、上述の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0054】
図11は、本実施形態にかかるガラス板を挟む断熱部材を平面視した場合の概略図である。断熱部材40には、同図に示すように、ガラス板Gの幅方向に、複数の温度制御ユニット60が設けられる。温度制御ユニット60は、例えば、断熱部材40がガラス板Gと対向する面(側)と逆面(側)に設けられ、温度(発熱量)を制御することにより、断熱部材40からガラス板Gに与える熱量を制御する。検出装置70が検出した脈理GSの位置に対応する温度制御ユニット60は、発熱量を増加することにより、ガラス板Gに与える熱量を増加させて、ガラス板Gに発生する脈理GSを抑制することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス板の脈理が発生した位置及び脈理による変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)に対応して、熱量を増加することができるため、ガラス板の脈理を適切に抑制することができる。また、断熱部材が一体に形成されている場合であっても、ガラス板に与える熱量を任意に変更でき、ガラス板の脈理を抑制することができる。
【0056】
(実施形態5)
次に、複数の磁性管80の設置位置を調整することにより、ガラス板Gの脈理を抑制する方法について説明する。なお、上述の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
成形装置400は、駆動機構を制御して、位置X1〜X2近傍の雰囲気温度が均一になるよう成形体10の下端11付近に設けられた磁性管80の位置を設定する。
図12(a)は、成形体10の下端11を拡大した断面概略図であり、
図12(b)は、
図12(a)における成形体10の下端11側から平面視した図である。本実施形態の磁性管80は、
図2に示すように、成形工程と、冷却工程(ガラス板Gを徐冷する工程)とを仕切る仕切り部材20よりガラス板Gの搬送方向の上流側(成形体10の位置する側)に設けられている。成形装置400は、検出装置70が検出した脈理GSの位置X1〜X2と同一の幅方向の位置に磁性管80を移動させ、熔融ガラスMGと磁性管80との距離をD1に設定する。磁性管80を用いて熔融ガラスMG及びガラス板Gを加熱することにより、ガラス板Gが下端11を離れた際に生じる収縮を抑制する。検出装置70が検出した位置X1〜X2に脈理GSが生じている場合、ガラス板G(熔融ガラスMG)が下端11を離れた際に、同一の位置X1〜X2に脈理GSがすでに生じている。このため、成形装置400は、同図に示すように、幅方向における位置X1〜X2に磁性管80を設けて、ガラス板G(熔融ガラスMG)を加熱することにより、ガラス板Gの粘性を変化させて収縮を抑制する。また、
図13は、熔融ガラスMGから磁性管80までの距離と変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)との関係を示した図である。徐冷ゾーン420において除去できない歪み、凹凸が発生した幅方向の位置に磁性管80を設けていない場合(
図13中の「磁性管なし」)、検出装置70が検出する脈理GSによる変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)が要求品質を満たさない。このため、成形装置400は、駆動機構を制御して、磁性管80を熔融ガラスMGに近づけるように移動させ、さらに、要求スペックを満たす距離D1になるよう熔融ガラスMGと磁性管80との距離を設定する。すなわち、ガラス板Gが要求スペックを満たすように、距離は、計測により得られた歪の変化量あるいは表面凹凸の量に応じて変化するよう制御される。同図に示すように、距離D1では、徐冷ゾーン420で徐冷されたガラス板Gの脈理GSは要求品質を満たす。脈理GSが発生した位置に対向する位置に設けられた磁性管80から熔融ガラスMGまでの距離を狭めると、熔融ガラスMGが磁性管80から受ける熱量が増加し、熔融ガラスMGの粘性が低下するため、下端11から離れるガラス板G(熔融ガラスMG)の粘度も低下する。下端11から離れたガラス板Gは、冷却ローラ30により端部G1が挟み込まれ、幅方向へ収縮するのを抑制されながら搬送されるが、粘度が低いガラス板Gは変形が容易であるため、冷却ローラ30により幅方向にガラス板Gが引っ張られることにより、収縮が抑制され、ガラス板Gに生じる脈理GSも抑制できる。徐冷ゾーン420に搬送されるガラス板Gの歪量を一定以下にすることにより、徐冷ゾーン420において所定の温度プロファイルで温度管理されたガラス板Gの変化量(歪量)が、要求スペックを満たすようになる。このため、磁性管80を設けた以降に成形されるガラス板Gの変化量(表面凹凸の変化、歪の変化)は、要求品質を満たすこととなる。なお、熔融ガラスMGから磁性管80までの距離と変化量との関係は、距離を徐々に変化させて、変化量を検出することにより求めてもよく、また、ガラス板Gの温度や粘度等とから、変化量をシミュレーションして求めてもよい。
【0057】
成形装置400は、検出装置70が検出した脈理GSの位置及び脈理GSによる変化量(歪量)に基づいて、磁性管80の位置の調整を繰り返すことにより、磁性管80の位置の調整後に成形するガラス板Gの脈理GSを抑制することができる。また、ガラス板Gに複数の脈理GSが存在する場合には、成形装置400は、複数の脈理GSが発生した位置に対応する幅方向の位置に、複数の磁性管80を移動させることにより、ガラス板Gの脈理GSを抑制することができる。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、徐冷ゾーンにガラス板が搬送される前に、歪量、凹凸を一定以下に抑制することにより、成形したガラス板の脈理による変化量が要求スペック、すなわち要求条件、を満たすようにすることができる。また、要求スペックを満たさないガラス板に脈理が発生した場合であっても、その脈理が連続的に発生することを抑制することができる。また、ガラス板に発生する脈理の原因となるガラス板上の凹凸発生を抑制することもできる。
【0059】
(実施形態6)
次に、複数の磁性管80の設置位置を調整することにより、ガラス板Gの脈理を抑制する方法について説明する。なお、上述の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0060】
図14は、本実施形態にかかる磁性管80を成形体10の下端側11から平面視した図である。磁性管80は、成形体10の下端側11近傍に、熔融ガラスMG(ガラス板G)に対向する位置に設けられる。検出装置70は、ガラス板Gに形成される凹凸の位置及びその凹凸の量を検出し、検出した凹凸の量が基準量以上である場合に、検出した凹凸の位置に脈理が発生したと判定する。同図における位置X3〜X5、及び、位置X6〜X7は、検出装置70により脈理があると判定された位置である。徐冷ゾーン420を経て成形されたガラスGの位置X3〜X5に脈理があり、位置X3〜X4において、位置X4〜X5より脈理の程度が大きい場合、成形装置400は、成形体10の下端側11近傍において、位置X3〜X5に対応する位置に、磁性管80を移動させ、さらに、磁性管80と熔融ガラスMGとの距離を、位置X3〜X4では距離D2、位置X4〜X5では距離D3になるように設置する。熔融ガラスMGに与える熱量を変化させる熱量変化部材として機能させる磁性管80の幅は、検出された脈理の幅に等しくなるように調整される。さらに、位置X3〜X4の変化量、凹凸は、位置X4〜X5の変化量、凹凸より大きいため、位置X3〜X4では、磁性管80の位置は位置X4〜X5に比べて熔融ガラスMGにより近く、距離D2<距離D3となるように設けられる。また、徐冷ゾーン420を経て成形されたガラスGの脈理の位置X3〜X5とは異なる面において、位置X6〜X7に脈理が成形された場合、成形装置400は、脈理が成形された面側で、成形体10の下端側11近傍において、位置X6〜X7に対応する位置に、磁性管80を移動させ、さらに、磁性管80と熔融ガラスMGとの距離をD4になるように設置する。脈理の幅が広い(位置X3〜X5までの距離が長い)場合、位置X3〜X5までの距離と同距離になるように、複数の磁性管80が、熔融ガラスMGの幅方向に並べて配置される。これにより、複数の磁性管80が配置された以降に成形されるガラス板Gの脈理を低減することができる。また、一か所に発生した脈理において変化量が異なる場合、磁性管80と熔融ガラスMGとの距離を、磁性管80ごとに変化させて、距離D2、D3とすることで、変化量に対応した脈理低減を行うことができる。成形装置400は、成形体10の下端側11近傍において、検出装置70が検出した脈理の位置に対応する幅方向の位置に磁性管80を設け、また、検出装置70が検出した変化量に基づいて、磁性管80と熔融ガラスMGとの距離を定めることにより、脈理が発生した位置、変化量に応じた歪み低減を行うことができる。
さらに、熔融ガラスMGに与える熱量を変化させる熱量変化部材として機能させる磁性管80の幅は、検出された脈理の幅に等しくなるように調整されることが好ましい。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス板の脈理が発生した位置及び変化量に対応して磁性管を設けることができるため、ガラス板の脈理を適切に抑制することができる。また、磁性管の設置位置、磁性管と熔融ガラスとの距離を任意に設定できるため、要求スペックを満たさないガラス板に脈理が発生した場合であっても、その脈理を抑制することができる。
【0062】
以上、本発明のガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。