(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944585
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】新規な菌株であるバチルス・アミロリケファシエンスCJ3−27及びアスペルギルス・オリゼCJKGを用いた韓国式の味噌玉味噌の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20160621BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20160621BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20160621BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
A23L5/00 J
A23L27/10 G
C12N1/20 A
C12N1/14 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-526479(P2015-526479)
(86)(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公表番号】特表2015-524277(P2015-524277A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】KR2013009805
(87)【国際公開番号】WO2014069922
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0122711
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM11317P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM11301P
(73)【特許権者】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ミョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,イェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヘ ウォン
【審査官】
高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−521919(JP,A)
【文献】
特開平10−004909(JP,A)
【文献】
J. Korean Soc. Appl. Biol. Chem.,2011年,Vol. 54, No. 3,pp.468-474
【文献】
J. Microbiol. Biotechnol.,2010年,Vol. 20, No. 8,pp.1210-1214
【文献】
Food Sci. Biotechnol.,2012年 2月29日,Vol. 21, No. 1,pp.129-135
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−5/30
A23L 27/00−27/40
C12N 1/14
C12N 1/20
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
FSTA/FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆を選別し、洗浄して浸漬するステップと、
前記大豆を蒸煮した後に冷却させるステップと、
バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)を培養して培養液を製造するステップと、
前記冷却された大豆に前記の菌株培養液を接種した後にチョッピングするステップと、
前記チョッピングされた冷却大豆を成形するステップと、
前記成形された味噌玉の表面を乾燥するステップと、
アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)を培養して前記菌株の種麹を製造するステップと、
前記成形された味噌玉に前記種麹を吹き付けて接種した後に発酵させるステップと、
前記発酵された味噌玉を塩漬して塩水分離を行うステップと、
塩水分離の行われた味噌を熟成させるステップと、
を含むことを特徴とする韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項2】
前記冷却させるステップは、50℃〜65℃の温度条件下で行われることを特徴とする請求項1に記載の韓国の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項3】
前記バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)培養液は、大豆原穀の重量に対して0.1〜5%になるように接種することを特徴とする請求項1に記載の韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項4】
前記表面を乾燥するステップは、50℃〜65℃の温度条件下で5〜24時間行われることを特徴とする請求項1に記載の韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項5】
前記アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)の種麹は、大豆原穀の重量に対して0.01〜5%になるように吹き付けて接種することを特徴とする請求項1に記載の韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項6】
前記発酵は、10℃〜45℃の温度条件下で3〜30日間行われることを特徴とする請求項1に記載の韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項7】
前記塩漬は、前記発酵された味噌玉に18%〜25%の塩濃度を有する塩水を味噌玉の重量の1.8〜2.5倍添加し、10〜50日間浸漬することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項8】
前記バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ 3−27(寄託番号KCCM 11317P)であることを特徴とする請求項1に記載の韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【請求項9】
前記アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CJ KG(寄託番号KCCM 11301P)であることを特徴とする前記請求項1に記載の韓国式の味噌玉味噌の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝統の味噌玉から分離したタンパク質分解酵素(protease)活性に優れた菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillusamyloliquefaciens)CJ 3−27及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CJ KGを用いた韓国式の味噌玉味噌の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に菜食中心の食生活をする韓国人にとって、大豆は、高いタンパク質及び脂肪が含まれていることから、タンパク質及び必須脂肪酸の給源食品として用いられてきている。特に、味噌は、大豆を用いて発酵させた味噌玉を主原料として製造する発酵食品であり、発酵過程を経ながら生成された様々な生理活性物質により抗癌、血糖降下、突然変異の抑制、血栓溶解能などの様々な生理活性を示し、大豆から転移されたトコフェロール(tocopherol)、イソフラボン(isoflavones)及びフェノール酸(phenolic acids)などの抗酸化成分を含有する栄養学的に優れた韓国固有の伝統の発酵食品である。
【0003】
伝統の韓国の在来式味噌は、大豆で味噌玉を作ってレンガ状又は矩形状に成形して自然発酵させた後、食塩水に浸漬して6〜12ヶ月熟成させた後に醤油を取り出し、固形分を熟成させて製造する。
【0004】
伝統の韓国の在来式味噌は、上述したように機能的な面からみて優れた栄養及び生理活性などを有しているにもかかわらず、地域によってその製造方法に僅かに違いがあり、土着微生物により発酵が行われるため品質のばらつきが激しいだけではなく、種々の危害微生物が発酵に影響を及ぼして味の品質が一定ではないという問題がある。
【0005】
前記危害微生物の例として、アスペルギルス・フラブス(Aspergillusflavus)は、人体に有害なカビ毒(マイコトキシン)であるアフラトキシン(afla toxin)を生成し、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)は、嘔吐毒(Emetic toxin)又は下痢毒(Diarrhetic toxin)を生成する。また、タンパク質含有食品中において発酵過程中に微生物により発生し得る代表的な生体アミン(biogenic amines)であるヒスタミンは、所定のレベル以上の濃度で摂取したときに呼吸困難、発熱紅潮、発汗、頭痛、下痢、痙攣、血圧上昇及び降下、蕁麻疹を引き起こす。
【0006】
伝統の韓国の在来式味噌をグローバルな食品として成長させるためには、標準化された製造方法の確立により食品の安全性、味品質のばらつきの最小化及び官能上優れた品質の製品を確保するための工程の開発が必須的であるといえる。
【0007】
近年、韓食の世界化のために味噌の優秀性を広報するために味噌の製造方法の標準化及び味噌の栄養成分と機能性効果に関する研究が盛んになされている。
【0008】
その研究の一環として、伝統の醤類における優秀菌株をスクリーニングして開発しており、このような優秀菌株をスターターとして接種して伝統の醤類において現れる問題を克服する製造工法を開発している。しかしながら、塊状の伝統の韓国式味噌玉から味噌を作る方式に関する研究よりは、豆粒味噌玉状の改良式味噌の製造方法に関する研究がほとんどである。改良味噌は、発酵及び熟成期間の短縮及び品質管理の面からみて有利な面もあるが、伝統の味噌玉味噌において発現される伝統の味噌のコクのある味を実現することができないという技術的な限界が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の伝統の韓国の在来式味噌が有している品質的な問題を解消し、且つ、改良味噌が有していない官能上優れた味品質を有する韓国式の味噌玉味噌を製造する技術を開発して提供するところにその目的がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、伝統の味噌玉から分離して同定し、且つ、タンパク質分解酵素の活性に優れた菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillusamyloliquefaciens)CJ 3−27及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CJ KGを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の目的は、前記新規な菌株を用いた韓国式の味噌玉味噌の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、伝統の味噌玉から分離して同定し、且つ、タンパク質分解酵素の活性に優れた菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillusamyloliquefaciens)CJ 3−27及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CJ KGを提供する。
【0013】
また、本発明は、大豆を選別し、洗浄して浸漬するステップと、前記大豆を蒸煮した後に冷却させるステップと、バチルス・アミロリケファシエンスCJ3−27を培養して培養液を製造するステップと、前記冷却された大豆に前記バチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27の培養液を接種した後にチョッピングするステップと、前記チョッピングされた冷却大豆を成形するステップと、前記成形された味噌玉の表面を乾燥するステップと、前記アスペルギルス・オリゼCJ KGを培養して種麹を製造するステップと、前記成形された味噌玉に前記種麹を吹き付けて接種した後に発酵させるステップと、前記発酵された味噌玉を塩漬して塩水分離を行うステップと、塩水分離の行われた味噌を熟成させるステップと、を含むことを特徴とする韓国式の味噌玉味噌の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、従来の伝統の韓国式味噌の製造に際しての味噌玉の発酵期間及び熟成期間を短縮させ、病原性微生物に対する安全性を確保しながら均一な味品質を有する韓国式の味噌玉味噌を製造する上で優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の韓国式の味噌玉味噌の製造のための工程別のダイアグラムである。
【
図2】蒸煮大豆の冷却有無による味噌玉の外部のひび割れの度合いを示す図である。
【
図3】発酵過程における味噌玉の外部のひび割れの度合いによる水分の減少量を示す図である。
【
図4】各味噌の細部的な味属性及び強度に対する描写分析結果を示す図である。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明は、伝統の味噌玉から分離して同定し、且つ、タンパク質分解酵素の活性に優れた菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillusamyloliquefaciens)CJ 3−27及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CJ KGを提供する。
【0018】
具体的に、本発明は、韓国の伝統の味噌玉から様々な菌株を分離した後に、中でも、タンパク質分解酵素の活性に優れたバチルス属(Bacillus spp.)菌株を分離した。16s rDNA塩基配列分析(16srDNA sequencing)により分離されたバチルス属菌株の同定を行った。その結果は、次の通りである。
【0020】
上記の16srDNA配列分析に基づく系統樹(phylogenetic tree)により、分離されたバチルス属菌株は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)として同定された(配列番号1)。抗菌活性に優れたこの菌株をバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ 3−27と命名し、これを2012年10月22日付けで韓国微生物保存センターに寄託した(受託番号KCCM11317P)。
【0021】
また、本発明は、韓国の伝統の味噌玉から様々なカビ(fungi)を分離した後に、中でも、タンパク質分解酵素の生産効率に優れたアスペルギルス属(Aspergillussp.)菌株を分離した。18s rDNA配列分析(18s rDNA sequencing)により分離されたアスペルギルス属菌株の同定を行った。その結果は、次の通りである。
【0023】
上記のような18srDNA塩基配列分析に基づく系統樹により、分離されたアスペルギルス属菌株は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillusoryzae)として同定された(配列番号2)。タンパク質分解酵素の生産効率に優れたこの菌株をアスペルギルス・オリゼ(Aspergillusoryzae)CJ KGと命名し、これを2012年9月27日付けで韓国微生物保存センターに寄託した(受託番号KCCM11301P)。
【0024】
また、本発明は、前記伝統の味噌玉から分離したタンパク質分解酵素の活性に優れた菌株であるバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ 3−27及びタンパク質分解酵素の生産効率に優れた菌株であるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillusoryzae)CJ KGを用いた韓国式の味噌玉味噌の製造方法を提供する。
【0025】
より具体的に、本発明は、大豆を選別し、洗浄して浸漬するステップと、前記大豆を蒸煮した後に冷却させるステップと、バチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27を培養して培養液を製造するステップと、前記冷却された大豆に前記バチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27の培養液を接種した後にチョッピングするステップと、前記チョッピングされた冷却大豆を成形するステップと、前記成形された味噌玉の表面を乾燥するステップと、アスペルギルス・オリゼCJ KGを培養して種麹を製造するステップと、前記成形された味噌玉に前記種麹を吹き付けて接種した後に発酵させるステップと、前記発酵された味噌玉を塩漬して塩水分離を行うステップと、塩水分離の行われた味噌を熟成させるステップと、を含む、官能上品質に優れた韓国式の味噌玉味噌の製造方法を提供する。
【0026】
前記蒸煮された大豆は、所定の温度以上に冷却させることが好ましく、さらに好ましくは、50〜65℃の温度に冷却させる。
【0027】
前記冷却ステップは、50℃以上では増殖できない病原性微生物であるバチルス・セレウス(Bacillus cereus)の増殖可能性を遮断するだけではなく、且つ、胞子状態のバチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27菌株の発芽を促して初期菌で優占化させることによりバチルス・セレウスの増殖を抑制する。また、前記冷却ステップは、表面乾燥工程中における味噌玉の外部のひび割れを誘導する。味噌玉の外部のひび割れは、発酵ステップにおいて味噌玉の表層から味噌玉の内部までの空気の流入を誘導することにより味噌玉の内部まで順次に好気性細菌及びカビが増殖できるようにし、これらの菌株の増殖による酵素分泌作用により味噌玉の酵素力価を上昇させて味噌玉の発酵期間及び熟成期間を短縮させる。
【0028】
前記バチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27菌株は、胞子状態に切り換えて培養した培養液にして用いることが好ましい。前記菌株の培養液は、冷却された蒸煮大豆に大豆原穀の重量に対して0.1〜5%を接種することが好ましい。
【0029】
前記細菌を培養する培養培地は、醤油培地であることが好ましい。前記醤油培地は、韓国式醤油、釀造醤油及び混合醤油よりなる群から選ばれる醤油1〜10%及びグルコース(glucose)、スクロース(sucrose)、ガラクトース(glactose)及びマルトース(maltose)よりなる群から選ばれる糖源0.1〜10%を混合して製造する。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、純粋に分離して保管したバチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27菌株を醤油培地(釀造醤油+グルコース)に接種し、30℃〜42℃の温度条件下で胞子が生成されるまで20〜42時間培養してバチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27菌株の培養液を製造した。
【0031】
本発明において、チョッピングは、大豆を細かく粉砕する工程を意味し、そのサイズは特に限定されない。
【0032】
味噌玉の成形形状は、直方体状、正方体状、円柱状、ドーナツ状、長円状、球状などの塊状の立体的な形状を網羅する。好ましくは、前記味噌玉は、2×2cm
3〜30×30cm
3のサイズ及び100g〜5kgの重量を有する直方体である。
【0033】
本願において、前記用語の表面乾燥は、成形された味噌玉を乾燥させることを意味する。
【0034】
前記表面乾燥は、5〜24時間50℃〜65℃の温度条件下で熱風乾燥により行われることが好ましい。前記表面乾燥の工程は、味噌玉の外部の水分を短時間内に乾燥させることにより発酵期間中における空気中の危害微生物の外部汚染及び増殖を抑えるという効果がある。
【0035】
前記アスペルギルス・オリゼCJKGの種麹は、大豆原穀の重量に対して0.01〜1%を接種することが好ましい。
【0036】
発酵は、10℃〜45℃の温度条件下で7〜30日間行うことが好ましい。
【0037】
前記発酵後に、発酵された味噌玉に18〜25%塩濃度の塩水を味噌玉の重量の1.8〜2.5倍添加して10〜50日間塩漬し、塩水分離を行った。
【0038】
塩水分離の行われた味噌は、空気と直接的に接触する表面を最大限に最小化させて室温下で4〜6ヶ月間熟成させる。
【0039】
以下、本発明の内容について実施例を挙げてより詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明の内容の理解への一助となるために提示されるものに過ぎず、本発明の権利範囲がこれらの実施例により限定されると解釈されてはならない。
【0040】
[実施例]
実施例1:伝統の味噌玉からの菌株の分離及び同定
菌株を分離するために、京畿道、江原道、忠清北道、慶尚北道、全羅南道所在の伝統の食品製造会社から回収した伝統の味噌玉を試料として用いた。
【0041】
伝統の味噌玉を滅菌水に希釈した後、細菌は平板計数寒天(PCA:Plate counting agar)培地に塗布して37℃で培養し、約30〜50余個のコロニーが現れる平板を選択し、白金耳を用いて3段分離を行って純粋に分離した。カビは、ポテトデキストロース寒天(PDA:potatodextrose agar)に塗布して28℃で培養しながら現れる集落を無菌的に分離した。細菌は773菌株、カビは120菌株など合計で893菌株を分離した。
【0042】
前記分離菌株のうちからタンパク質分解酵素の活性の高い菌株を選別するために、1%の脱脂乳を含有する大豆傾斜寒天(Soybeanslurry agar)培地に接種した後、細菌は37℃で、カビは28℃で3日〜7日間培養した。その後に現れるクリアゾーン(Clear zone)の大きさを測定して酵素活性の高い菌のうちから細菌1種及び及びビ1種を選別した。菌株の同定は純粋に分離された菌株を対象として行った。なお、細菌は16srDNA塩基配列分析(16s rDNA sequencing)により同定を行い、かつ、カビは18s rDNA塩基配列分析(16s rDNA sequencing)により同定を行った。
【0043】
実施例2:バチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27菌株培養液の製造
醤油(1%〜10%)及びグルコース(0.1%〜5%)を混合した後、食用水酸化ナトリウムでpHを中性に補正し、120℃で15分間滅菌して醤油培地を製造した。栄養寒天(Nutrient agar)培地に純粋に分離して保管しておいたバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ 3−27菌株コロニーを1白金耳取って前記滅菌された醤油培地に接種した。これを30℃〜42℃の温度条件下で胞子が生成されるまで20時間〜42時間培養してバチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27培養液を製造した。バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ 3−27菌株の培養時間別の菌数及び胞子数変化結果を下記表1に示す。
【0045】
実施例3:アスペルギルス・オリゼCJ KG菌株種麹の製造
小麦ふすまに浄水を添加し、含水量が40%〜60%の範囲になるように加水し、121℃で15分〜30分間滅菌して40℃以下に冷却させ、ポテトデキストロース寒天(PDA)培地において純粋に培養したアスペルギルス・オリゼ(Aspergillusoryzae)CJ KG菌株を一白金耳接種して、25℃〜40℃の温度条件下で約5日〜10日間静置培養して胞子を生成した後に、無菌状態で粉砕して種麹を製造した。
【0046】
実施例4:韓国式の味噌玉味噌の製造
(1)大豆の選別及び洗浄
大豆の異物を除去する精選ステップを経て大豆を洗浄し、大豆重量の3倍の水を加えた後に浸漬した。
【0047】
(2)大豆の蒸煮及び冷却
水に浸漬した大豆の水を取り除いて蒸煮した後、送風機を用いて30分以内に50〜65℃の温度に冷却させた。
【0048】
(3)バチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27菌株の接種及び味噌玉の成形
前記冷却された蒸煮大豆に前記実施例2に従い製造された菌株培養液を大豆原穀の重量に対して0.1〜5%になるように接種して混合した後にチョッピングして、重量1.2〜2kgの直方体状に味噌玉を成形した。
【0049】
(4)成形された味噌玉の表面乾燥及びアスペルギルス・オリゼCJ KG菌株の接種
前記成形された味噌玉の表面を熱風乾燥機を用いて50〜65℃の温度条件下で10〜24時間乾燥させた。表面乾燥させた味噌玉を乾燥機から取り出し、前記実施例3に従い製造された菌株培養液を大豆原穀の重量に対して0.01〜1%になるように接種した。
【0050】
(5)味噌玉の発酵と、塩漬及び熟成
前記製造された味噌玉を10〜45℃の温度条件下で約7〜30日間発酵させた後、味噌玉の重量の1.8〜2.5倍の18%〜25%の塩濃度を有する塩水を添加し、10〜50日間塩漬した後に塩水分離を行った。
【0051】
塩水分離を行った後に分離された味噌を熟成容器に入れ、味噌の上側にさらに塩を振り撒き、押圧板を用いて空気と直接的に接触する表面を最小化させて室温で熟成させた。このときに使用する塩は、精製塩、焼き塩、竹塩、岩塩、再製塩及び土板塩よりなる群から選ばれるいずれか一種であってもよい。
【0052】
室温で熟成させながら味噌の熟成度(アミノ態窒素の含量、mg%)を測定し、味わって品質を確認して熟成を終えた。熟成期間に伴う韓国式の味噌玉味噌へのアミノ態窒素の含量(mg%)の変化を下記表2に示す。
【0054】
比較例1:伝統の韓国の在来式味噌の製造
蒸煮大豆を冷却させるステップ及び実施例2及び実施例3に従い製造された菌株を接種するステップを除いては、実施例4に記載の方法と同様にして伝統の韓国の在来式味噌を製造し、これを対照区として用いた。
【0055】
実施例5:蒸煮大豆の冷却有無による味噌玉の外部のひび割れの度合い及び水分減少量の比較
蒸煮大豆を冷却させるステップを行わずに成形した味噌玉及び蒸煮大豆を送風機を用いて50〜65℃に冷却させて成形した味噌玉をそれぞれ製造した。前記それぞれ製造された味噌玉を熱風乾燥機を用いて50〜65℃で10〜24時間乾燥させた。
【0056】
その結果、蒸煮大豆の冷却有無により味噌玉の外部のひび割れの度合いに違いが発生することが分かった。蒸煮大豆を冷却させた後に成形した味噌玉の場合、冷却ステップを行わずに成形した味噌玉に比べてひび割れが顕著に多く、色合いもやや明るいことが分かった。これを
図2に示す。
【0057】
また、発酵過程中に蒸煮大豆を冷却させて外部のひび割れを誘導して成形した味噌玉の水分減少量が多いことが分かり、その結果を
図3に示す。発酵過程中に初期の韓国式味噌玉の重さの減少率を測定したところ、蒸煮大豆を冷却させた後に成形した韓国式味噌玉の水分減少率の方が、冷却ステップを行わずに成形した対照区に比べて、重さの減少量が多いことが分かった。これは、味噌玉の外部のひび割れの形成により内部水分の蒸発量が増大されたためであると考えられる。味噌玉の外部のひび割れの現象は、味噌玉の内部に空気を流入させて好気的な微生物である細菌及びカビの増殖に役立つ。なお、これは、水分を減少させて味噌玉の内部の水分勾配を形成して外部においては低い含水量が求められるカビを増殖させ、水分が相対的に多い味噌玉の内部においては細菌及び乳酸菌の増殖を促して一つの味噌玉における様々な微生物の複合発酵を可能にするという効果がある。
【0058】
実施例6:バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ3−27及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CJ KG菌株の接種有無による発酵後の品質の比較
バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ 3−27及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillusoryzae)CJ KG菌株の接種有無による発酵後の韓国の味噌玉味噌の品質指標項目である微生物及びpH、タンパク質分解酵素の力価(proteaseactivity)、生体アミンの一つの成分であるヒスタミンの含量を分析し、その結果を下記表3に示す。
【0060】
発酵後の韓国式味噌玉の品質を分析したところ、実施例4に従い製造された韓国式味噌玉の方が、対照区である比較例1に従い製造された韓国式味噌玉に比べて、pHが低く測定され、これは、乳酸菌の数と相関がある。すなわち、これは、初期の味噌玉の成形温度が低くなるほど乳酸菌の増殖が誘導されると分析され、タンパク質分解酵素の力価も対照区である比較例1に比べて2.9倍高く分析された。これは、実際に味噌玉の内部にカビの増殖が活発に行われていることが観察されたが、その影響によるものであると認められる。
【0061】
バチルス・セレウス(Bacilluscereus)の場合には、対照区及び実施例4の韓国式味噌玉が両方とも初期に50℃以上の高い温度条件下で発酵し始めて温度制御の影響により増殖が行われず、生体アミンの一種であるヒスタミンを測定したところ、対照区よりも実施例4に従い製造された韓国式味噌玉の方がさらに低く分析された。韓国式味噌玉の製造に際して適用したバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)CJ 3−27菌株は、生体アミンのうち特にヒスタミンの生成に関与する脱炭酸酵素の活性が非常に低いものであると認められる。
【0062】
韓国式の味噌玉味噌の熟成が完了した後に、品質指標であるpH及びアミノ態窒素の含量(mg%)を測定し、その結果を下記表4に示す。
【0064】
熟成が完了した後に韓国の味噌玉味噌を分析したところ、実施例の韓国の味噌玉味噌の方が、味噌玉を冷却させずに表面乾燥工程を経て菌株を接種せずに発酵させた対照区の韓国の味噌玉味噌よりも発酵完了段階の味噌玉でのようにpHが相対的に低く、バチルス・セレウスも一貫的に少量検出される結果を示す。なお、アミノ態窒素の含量を分析したところ、タンパク質分解酵素の力価が高かった実施例4の韓国の味噌玉味噌の方が対照区に比べて約1.6倍高かった。
【0065】
実験例1:本発明による韓国の味噌玉味噌の官能検査
比較例1に従い製造された対照区及び実施例4に従い製造された韓国の味噌玉味噌の官能評価を行った。この官能評価は、ソウルに住んでいる満25〜39才の家庭内の食料品の主な購入者である既婚女性70名を対象として行った。その結果を下記表5に示す。
【0067】
その結果、本発明による韓国式の味噌玉味噌の方が全般的な味においてさらに高い好み度を示す。特に、味噌の最も重要な味属性である香ばしさの好み度及び旨味の好み度が高くて(p<0.05)、苦味の強度が弱い傾向を示して(p<0.1)、全般的な味の品質に肯定的な影響を及ぼしたと認められる。さらに詳しくは、実施例4による韓国式の味噌玉味噌は、対照区に比べて、「後味/香ばしさ/塩味/甘味/旨味の好み度」が良く(p<0.05)、特に、香ばしさの好み度は約3.9と非常に高く評価された。対照区製品の場合に酸っぱい匂いがしてよくないという応答があった。
【0068】
オープン応答においても実施例4による韓国式の味噌玉味噌は香ばしさ及び旨味が良いと言及され、まるで自宅で作る手作りの味噌みたいであるという応答が多く(20%以上)、自宅で作る手作りの味噌特有の味が上手に実現されていると分析された。
【0069】
また、各味噌の細部的な味属性及び強度を導き出すために、訓練された専門パネラー20名を対象として描写分析を行い、その結果を
図4に示す。
【0070】
両製品の官能的な特性の強度を測定したところ、「焦げた香り」の特性を除く残りの特性において製品の間に統計的な違いがあることがわかった(p<0.05)。
【0071】
対照区製品を分析したところ、日本の味噌の香り及び甘い香りの特性と、甘味、苦味、焦味、MSG諄味、大根干葉を煮込んだときの香味、日本の味噌の香味、渋い、すっきりしない、粉質の特性と、外観の褐色度、沈殿物、濁度の特性が強かった。実施例4による製品を分析したところ、韓国の在来式味噌の香り、醤油の香り、味噌玉の香り、塩辛い香り、酸っぱい香り、苦い香り特性と、塩味、酸味、旨味、醤油の香味、味噌玉の香味、韓国の在来式味噌の香味特性が強かった。
【0072】
上記の結果から、新規な菌株であるバチルス・アミロリケファシエンスCJ 3−27及びアスペルギルス・オリゼCJ KG(Bacillusamyloliquefaciens)CJ 3−27及びアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CJ KGを接種し、両菌株が上手に増殖可能な味噌玉の物理的な構造と工程の改善及び発酵温度の最適化によりタンパク質分解酵素の力価が改善され、熟成期間中にアミノ態窒素の含量が増大されることにより、対照区に比べて味噌の最も重要な属性である香ばしさ及び旨味が向上し、味噌の全般的な味が向上したことが分かった。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]