特許第5944586号(P5944586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944586
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 1/62 20060101AFI20160621BHJP
   H01H 1/38 20060101ALI20160621BHJP
   H01H 31/02 20060101ALI20160621BHJP
   H01H 33/64 20060101ALI20160621BHJP
   H01H 33/65 20090101ALI20160621BHJP
   H01H 33/68 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01H1/62
   H01H1/38
   H01H31/02 A
   H01H33/64 A
   H01H33/64 Z
   H01H33/65 H
   H01H33/68 G
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-526943(P2015-526943)
(86)(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公表番号】特表2015-524990(P2015-524990A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2013066712
(87)【国際公開番号】WO2014026924
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】12180774.7
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508254509
【氏名又は名称】エービービー テクノロジー エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トマス, リカルド
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−004121(JP,U)
【文献】 実公昭08−018629(JP,Y1)
【文献】 実開平07−001404(JP,U)
【文献】 実開昭62−121718(JP,U)
【文献】 実開昭53−011059(JP,U)
【文献】 特開昭61−227329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/62
H01H 1/38
H01H 31/02
H01H 33/64
H01H 33/65
H01H 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開位置と、閉位置との間で互いに移動可能な第1の接触部(1)と第2の接触部(2)とを備え、
前記開位置では、前記第1の接触部と第2の接触部とが互いから間隔が離れており、
前記閉位置では、前記第1の接触部と第2の接触部とが互いに電気的に接触する、回路遮断器であって、
前記第1の接触部は、
前記第1の接触部と第2の接触部とが前記閉位置にあるときに前記第2の接触部と電気的に接触するように適合された一又は複数の接触要素(3)と、
前記接触要素と熱接触するように配置された金属製のメッシュ(8)とを含み、
前記メッシュは、前記接触要素(3)をその中に受け入れる空間を囲みかつ規定し、前記接触要素(3)を少なくとも部分的に取り囲む、回路遮断器。
【請求項2】
前記接触要素(3)は、前記第1の接触部と第2の接触部とが前記閉位置にあるときに前記第2の接触部の整合接触面(5)と電気的に接触するように適合され、前記メッシュは、前記接触要素と、前記第2の接触部の前記整合接触面との間の接点の近傍に配置される、請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記メッシュ(8)は、前記第1の接触部(1)の軸方向、及び半径方向に延在する、請求項1又は2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記メッシュ(8)は、前記第1の接触部(1)の軸方向に前記接触要素(3)の長さに沿って少なくとも延在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記第1の接触部(1)は、前記第1の接触部と第2の接触部とが前記閉位置にあるときに、前記第2の接触部(2)と接触するように適合された複数の触手部(3)を備え、前記メッシュ(8)は、前記触手部と熱接触するように配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項6】
前記第1の接触部は、前記接触要素(3)を囲み、前記接触要素と静電シールドアセンブリとの間に空間(6)が形成されるように配置された前記静電シールドアセンブリ(4)を備え、前記メッシュは前記接触要素と前記静電シールドアセンブリとの間に形成された前記空間(6)に位置決めされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項7】
前記静電シールドアセンブリ(4)は、前記接触要素から外方に向いた壁を備え、前記壁には、前記接触要素と前記静電シールドアセンブリとの間に形成された前記空間(6)の換気を改善するために開口部(7)が設けられている、請求項6に記載の回路遮断器。
【請求項8】
前記メッシュ(8)は編まれた物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項9】
前記メッシュ(8)は、銅、銅合金、スズめっき銅、銀めっき銅、スズ銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼鉄、又はめっき鋼鉄でできている、請求項1から8のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項10】
前記接触要素(3)は、前記第2の接触部に面する前記第1の接触部の端部に設けられている、請求項1から9のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項11】
前記第1の接触部と第2の接触部とが前記閉位置にある時に、前記接触要素(3)は、前記第2の接触部の整合接触面(5)と電気的に接触するように適合されており、前記メッシュ(8)は前記接触要素(3)と前記第2の接触部の前記整合接触面(5)との接触点を取り囲むように配置された、請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項12】
前記第1の接触部と第2の接触部とが前記閉位置にあるときに、前記接触要素(3)を中に受け入れる前記空間は、前記第2の接触部もその中に受け入れるように構成された、請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項13】
前記第1の接触部と第2の接触部とが前記閉位置にあるときに、前記接触要素(3)を中に受け入れる前記空間は、前記第2の接触部もその中に受け入れ、かつ前記メッシュ(8)は、前記第2の接触部も少なくとも部分的に取り囲むように構成された、請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項14】
前記第1の接触部(1)と前記第2の接触部(2)のうち一方は可動であり、他方は固定されている、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触部同士の間隔が離れている開位置と、接触部同士が電気的に接触している閉位置との間で相互に移動可能である第1の接触部及び第2の接触部を含む回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、接触部のうちの一方は固定されており、他方は固定接触部に対して可動である。しかしながら、ある応用形態では、両方の接触部が互いに移動可能なように配置されている。通常、接触部は気体又は液体等の誘電体媒質によって囲まれている。接触部のうちの一方は、接触部が閉位置にあるときに、他方の接触部と接触する触手部等の複数の接触要素を備えることができる。回路遮断器は、接触要素を囲む静電シールドアセンブリも備えることができる。
【0003】
ライブタンク回路遮断器(LTB)では、接触部は高電位の絶縁体内に格納されている。ライブタンク回路遮断器(LTB)は、電流が流れるパーツが所定の温度上昇限界値を超えないようにしながら、最大数千アンペアの負荷電流を継続的に流す必要がある。
【0004】
負荷電流の定格要件を満たすために、十分に大きい銅、アルミニウム、又は両方を組み合わせた断面接触部が通常使用される。電流路の抵抗が最も高くなるのは普通、接触部と接触部の間の主接点(main contact connection points)である。これらの接点は普通、電気抵抗を最小限に抑えるために銀でコーティングされている。接点及び電流路の冷却は普通、接触部を囲む誘電体媒質の自然な受動対流によって行われる。強制的な冷却は、費用及び信頼性の理由から回路遮断器では実現が困難である。
【0005】
回路遮断器にあってはその定格電流を増加させることが望ましい。しかしながら、定格電流は接点における熱損失によって制限される。通常の受動対流冷却では、接触部の最大許容温度の上昇に応じきれない場合がある。
【0006】
したがって、信頼性のある費用効果の高い受動設計を活用して、接点における熱放散を増加させることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、信頼性のある費用効果の高い受動設計を活用することで、移動する接点の熱放散を増加させて改善した回路遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の回路遮断器によって達成される。
【0009】
この回路遮断器においては、第1の接触部が金属製のメッシュを備え、接触要素と熱接触するようにメッシュを配置して熱が接触要素からメッシュに伝わるようにするとともに、このメッシュを、接触要素の少なくとも一部を囲むように配置したことを特徴とする。
【0010】
金属製のメッシュは、金属線でできた半透過性の障壁である。熱接触とは、メッシュと接触要素との間の間隔が、接触要素からメッシュまでの熱の伝導が可能になるような間隔であることを意味する。熱は、接点からメッシュを通って接触部を囲む誘電体媒質まで伝導される。金属製のメッシュにより接点近くの表面エリアが大幅に増大し、これにより接触エリアから熱を除去するための誘電体媒質の対流の流れを過度に妨げることなく、熱放散がさらに効率的になる。
【0011】
提案の解決策には下記の利点がある。
受動的である、移動部品がない、メンテナンスがいらない、
既存の接触部設計に容易に組み込まれる、
組み立てが単純である、
追加部品は一つだけ、すなわち金属製のメッシュだけなので、費用が安い。
「回路遮断器」という用語は、スイッチ、遮断器、断続器、及び断路器も含む。
【0012】
本発明は、ライブタンク、デッドタンク、GIS、高電圧、中間電圧など、また低電圧なども含めて、いかなる種類の回路遮断器にも使用することができる。本発明は、電流の流れに起因する接触部における熱放散に焦点を当てたものであるため、断続器や遮断器において使用される電圧とは「無関係」である。
【0013】
メッシュは、接触要素を少なくとも部分的に囲んでいることが好適である。好適には、メッシュを、接触要素の周囲を囲むように配置することにより、接点近傍の表面積が増大することとなる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、メッシュは第1の接触部の軸方向及び半径方向に延在する。これにより、接点からの熱放散が増加する。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、メッシュは第1の接触部の軸方向に接触要素の長さに沿って少なくとも延在する。これにより、接点近くの表面エリアが増大し、熱放散がより効率的になる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、第1の接触部は、接触部が第2の位置にある時に第2の接触部と接触するように適合された複数の触手部を備え、前記メッシュは触手部と熱接触するように配置されている。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、第1の接触部は、接触要素を囲み、接触要素と静電シールドアセンブリとの間に空間が形成されるように配置された静電シールドアセンブリを備え、前記メッシュは前記空間に位置決めされている。この実施形態はすでにある接触部の空間を用いるため、この解決策は費用効果が高く、接触部のサイズが増加しない。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、静電シールドアセンブリは接触要素から外方向へ向いた壁を備え、この壁には、空間の換気を改善するための開口部が備え付けられている。これにより、接点からの熱放散が増加する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、メッシュは編まれた物である。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、メッシュは、銅、銅合金、スズめっき銅、銀めっき銅、スズ銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼鉄、又はめっき鋼鉄でできている。これらの金属は優れた熱伝導特性を有する。
【0021】
ここで本発明を、添付の図面を参照しながら、本発明の異なる実施形態を記載することによってより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態による開位置にある回路遮断器を示す図である。
図2】閉位置にある図1に示す回路遮断器の図である。
図3】閉位置にある図2に示す回路遮断器の断面A−Aを示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態による回路遮断器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜3は、本発明の第1の実施形態による回路遮断器10を示す図である。図1は、開位置にある回路遮断器10を示し、図2は、閉位置にある回路遮断器10を示す図である。図3は、閉位置にある回路遮断器10の断面A−Aを示す図である。回路遮断器10は、図1に示すように接触部同士の間隔が離れている開位置と、図2に示すように接触部1、2が互いに電気的に接触している閉位置との間で相互に移動可能な第1の接触部1と第2の接触部2を備える。通常、接触部のうちの一方は可動であり、他方の接触部は固定されている。しかしながら、両方の接触部が可動であってもよい。第1の接触部1は、接触部が閉位置にある時に、第2の接触部と接触するように適合されている一又は複数の接触要素3を備える。接触要素は一又は複数の第1の接触部に備えつけられており、さらに具体的には、接触要素は第2の接触部に面する第1の接触部の端部に備えつけられている。
【0024】
この実施例では、第1の接触部1は固定部分であり、第2の接触部2は可動部分であり、固定部分は可動部分2の整合接触面5の上を滑動し、可動部分2の整合接触面5と接触する複数の触手部3を有する。触手部3は、接触部が閉位置にある時に第2の接触部2と接触するように適合される。触手部3は通常、接触圧を維持するためにばねで留められている。その他可能な接触要素は例えば、「層状」接触部、「多層」接触部、接触スプリング、又は接触スパイラルなど、単一のばね仕掛けの触手部である。
【0025】
第1の接触部1は、触手部周囲を囲み包み込む静電シールドアセンブリ4を備える。したがって、触手部3は静電シールドアセンブリ4内の一部である。触手部3と静電シールドアセンブリ4との間に空間6が形成される。空間6は直径dを有する。さらに、接触部1、2は例えばSF6等の気体等の断続的な誘電体媒質を含む筐体(図示せず)に包み込まれている。筐体は接触部を囲み、断続器室を形成する。筐体は例えば、磁器等の絶縁体でできている。静電シールドアセンブリ4の壁には、空間の換気を改善し、断続的な誘電体媒質の流れが阻害されないように、そして第2の接触部2の触手部3と接触面5との間の接続エリアの受動対流冷却が効率的になるように開口部7を設けることができる。しかしながら、開口部7は任意である。
【0026】
本発明によれば、第1の接触部1は、接触要素3と熱接触するように配置された金属製のメッシュ8を含む。熱接触とは、メッシュが、接触要素から周辺へ熱を伝導させることができるほど十分に接触要素の近くに配置されていることを意味する。メッシュが接触要素3と機械的に接触していることが好ましいが、必ずしもメッシュが接触要素と直接機械的に接触していなくてもよい。メッシュ8は、遮断器が閉位置にある時に第1の接触部1と第2の接触部2との間の接点のすぐそばに備え付けられている。メッシュは接触要素3の外側に配置されている。メッシュ8は、接触要素3を少なくとも部分的に囲むように配置されている。メッシュ8は、第1の接触部1の接触要素3を囲むように配置されることが好ましい。メッシュ8は、第1の接触部1の軸方向及び半径方向に延在する。メッシュ8は、第1の接触部1の軸方向に接触要素3の長さに沿って少なくとも延在する。メッシュ8は接触部のサイズによっては、接触部の半径方向にrの間隔で延在する。
【0027】
接触要素は、接触部が閉位置にある時に、第2の接触部の整合接触面と接触するように適合されており、メッシュは、接触要素と、第2の接触部の接触面との間で接点のすぐ近くに配置されている。
【0028】
メッシュは、優れた熱導体及び放熱器であり、遮断器が機械的に動作している間に起こりやすい屈曲に耐えられるようにある程度の柔軟性及び耐久性も有する材料でできている。メッシュは、銅、銅合金、鋼鉄又は同等物等の金属製であることが好適である。本発明のこの実施形態では、メッシュ8は、触手部3と静電シールド4との間の空間6に配置されている。金属製のメッシュ8により、接点の近くの表面エリアが大幅に増大し、接触エリアから熱を除去する誘電体媒質の対流の流れを過度に阻止することなく、熱放散がより効率的になる。メッシュは、接続された金属のらせん構造でできた半透過性の障壁である。金属製のメッシュは例えば、銅、鋼鉄、又はその他の金属を織った、編んだ、溶接した、又は拡張させたものであってよい。メッシュ8は三次元に延在し、触手部3と静電シールド4との間の空間6を満たすことが好ましい。この実施例のメッシュ8は、任意の絡み状態に配置された金属線でできている。
【0029】
図4は、メッシュをどのように配置することができるかの別の例を示す図である。編まれたメッシュのシート14は、触手部3と静電シールド4との間の空間6に配置されている。編まれたメッシュは、触手部3と静電シールド4との間の空間6の第1の接触部周囲に幾つかの層15で織られている。メッシュは空間6の大部分を占める。
【0030】
本発明は、開示された実施形態に限定されず、下記の特許請求の範囲内で変更し、修正することが可能である。例えば、回路遮断器に静電シールドが全くない場合、メッシュを同じように接触要素の外側に、接触要素と熱接触するように配置することができる。
図1
図2
図3
図4