特許第5944601号(P5944601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5944601
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】セラミックパイプ材の連続乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 15/12 20060101AFI20160621BHJP
   F26B 17/28 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   F26B15/12 C
   F26B17/28 Z
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-670(P2016-670)
(22)【出願日】2016年1月5日
【審査請求日】2016年1月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161220
【氏名又は名称】宮崎鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲也
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−026466(JP,A)
【文献】 特公昭46−032352(JP,B1)
【文献】 特公昭28−006392(JP,B1)
【文献】 実公昭43−010391(JP,Y1)
【文献】 実開昭59−029233(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 15/12
F26B 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転する多数のローラ14が整列している循環型の支持ローラ13を備えていて、当該支持ローラ13上で長いセラミックパイプ材pを低速で連続自転させながら加熱乾燥させるセラミックパイプ材の連続乾燥装置であり、
上記ローラ14のローラ軸14bの両端が循環チエン32に取り付けられて上記支持ローラ13が構成されており、
左右のガイドレール31があって、当該ガイドレール31に上記ローラ14のローラ軸14bが乗り上げて上記ローラ14が上記ガイドレール31によって支持されガイドされて走行するようになっており、
左右の循環チエン32,32を連続駆動する循環駆動機構があり、
上記ガイドレール31で支持されガイドされて走行する多数の上記ローラを同時に連続駆動して同方向同速で自転させる自転駆動機構があり、
上記循環駆動機構による循環駆動と、上記自転駆動機構による自転駆動とが互いに別個の駆動機構による駆動であり、それぞれの駆動速度が別々に調整されるものであり、
乾燥対象のセラミックパイプ材pの仕様の違いに応じ、また乾燥速度の違いに応じて上記支持ローラ13が所要の速度で循環駆動され、同パイプ材pの曲がり矯正に必要な速度で上記ローラ14が自転駆動されるようになっており、
乾燥炉に投入されてから当該乾燥炉を通過するまでの乾燥行程においてその初期段階でセラミックパイプ材の曲がりが上記ローラ14によって矯正され、曲がりが矯正されたセラミックパイプ材の乾燥が完了するようになっている、セラミックパイプ材の連続乾燥装置。
【請求項2】
上記自転駆動機構がタイミングベルトと上記ローラ軸の歯付きプーリによるベルト伝動機構である、請求項1のセラミックパイプ材の連続乾燥装置。
【請求項3】
左右一対のガイドレール31によって上記循環チエンが下から支持されガイドされ、循環チエンを介して上記ローラ軸14bが乗り上げ、これによってローラ14が支持されガイドされて走行する請求項1のセラミックパイプ材の連続乾燥装置。
【請求項4】
上記ガイドレールが帯状ガイドレールであり、上記ローラ軸の端部に設けられている車輪が上記帯状ガイドレールに乗り上げて下から支持されガイドされる、請求項1のセラミックパイプ材の連続乾燥装置。
【請求項5】
上記帯状ガイドレールが断面L型又は断面凹型の帯状ガイドレールである、請求項4のセラミックパイプ材の連続乾燥装置。
【請求項6】
上記ローラ14の隣接するローラ軸14b,14bの間に複数のチエンリンク32aが介在して上記支持ローラ13が構成されている請求項1のセラミックパイプ材の連続乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はセラミックパイプ材の曲がりの矯正と乾燥処理とを一連のものとして行うことができる乾燥装置に関するものであり、セラミックパイプ材の乾燥炉への投入、乾燥、乾燥炉からの取り出しを連続してかつ自動的に行うことができ、セラミックパイプ材の乾燥作業を無停止で連続して行いその作業能率を大幅に向上させることができ、そして、セラミックパイプ材の乾燥作業における熱的損失を低減することもできるものである。
【背景技術】
【0002】
〔従来技術〕
例えば、押出成形されたセラミックパイプ材は様々で、その外径や内径(又は肉厚)、原料等は成形品の種類によりまたその用途によって様々であり、押出成形装置から切り出される長さも様々である。
【0003】
そして、押出成形機で金型から押し出され、適宜の長さに切り出されたセラミックパイプ材は原料であるセラミック坏土の密度分布の不均一性や金型内周面との摩擦抵抗の不均一性等に起因する曲がりがあり、また、その両端は、押出成形装置で押出成形され切断装置の切り刃で切断されて所定長さで切り出されるときにその切り刃に押されて変形しているので真円ではない。このため乾燥完了後にその両端の非真円部分を切除し、所定の長さに裁断して成形品を作成し、これを焼結することになる。
【0004】
なお、上記のセラミックパイプ材の乾燥装置は加熱装置等を備えた乾燥炉とセラミックパイプ材を炉内で支持する支持台によるものであり、当該支持台はセラミックパイプ材の全周が均等に加熱乾燥されるようにこれを自転させながら支持するものである。
また、この明細書でいうセラミックパイプ材はいわゆるパイプ材に限られるものではなくて、例えば、ハニカム構造体等の種々の断面構造の中空円筒状のセラミック成形品である。
【0005】
ところで、押出成形されたセラミックパイプ材は金型から押し出されるセラミック坏土の密度分布の不均一性やパイプ材の内部構造の偏りによる押出抵抗の不均一性等のために曲がりを生じるので、乾燥前にこの曲がりを矯正して真っ直ぐになった後に乾燥が進むようにすることが必要である。なぜなら、表面の乾燥が進むと硬化が進み曲がりの矯正なされ難くなるからである。
【0006】
〔従来技術1〕
成形された管状セラミック成形体(例えば土管)を乾燥台の二本の一組のローラに載せて乾燥台を乾燥炉に引き込んでセラミック成形体を加熱乾燥させ、乾燥完了後に乾燥台を乾燥炉から引き出してセラミック成形体を取り出すセラミック成形体の乾燥装置が知られている(特許文献1)
このものは、二本のローラに載せられた管状のセラミック成形体は乾燥されて硬化するまでの間に自重で変形して円筒形が損なわれるので、当該ローラを回転させセラミック成形体をゆっくり回転(自転)させることで自重による変形を回避しながら乾燥させ硬化させるものである(従来技術1)。
【0007】
上記特許文献1のものは、乾燥炉内を往復駆動される乾燥台上に一組のローラがあり、当該一組のローラ上に一つの管状セラミック成形体を載せ、自転駆動用のチェンで上記一組のローラを同方向に同速度で回転させて上記管状セラミック成形体を自転させながら炉内で一定時間乾燥させるものである。
上記乾燥台の移動はこれを駆動するチエンによるものであり、また上記一組のローラの自転はそのための自転駆動用チエンによるものである。そして従来技術1の乾燥装置では、乾燥炉の一端で管状セラミック成形体を載せ、ローラを自転させながら乾燥台を乾燥炉の他端に移動させてその間に乾燥を完了させるものである。
【0008】
〔従来技術2〕
また、上記の従来技術1の回転乾燥装置を用いて多数のセラミックパイプ材を一括して加熱乾燥するものとして図1に示す乾燥装置がある(従来技術2)。そして、図1の乾燥装置1は多数のローラ4を整列させて構成した支持ローラ3を備えており、この支持ローラ3は互いに少し離間して配列された多数のローラ4によって構成されている。そして、隣接するローラ4,4間にセラミックパイプ材pを載せ、多数のローラ4を同じ方向に同じ速度でゆっくり自転(回転)させてセラミックパイプ材pをゆっくり自転(回転)させる。この自転によって、セラミックパイプ材pは乾燥開始後の初期において隣接する一対のローラ4によって曲がりが矯正され、所定時間かけてヒータ2(温風ヒータ)によって全周が均等に加熱乾燥される。
【0009】
上記支持ローラ3のローラ4によって多数のセラミックパイプ材pを回転させることで、乾燥開始後の当初段階でその曲がりが矯正され、真直になったものが全周均等に加熱乾燥され、乾燥完了後に支持ローラ3が炉外に引き出され、多数のセラミックパイプ材が取り出される。
図1の従来技術2の場合は、一括して乾燥処理される多数のセラミックパイプ材pの数量の多少に関わりなくローラ4の自転速度、加熱炉による加熱(タイミング、加熱温度)及び加熱乾燥時間は互いに別々に調整可能であるので、特許文献1に記載されている従来技術1と同様に、セラミックパイプ材の曲がりが十分に矯正された後に乾燥硬化が進むように制御することは容易であり、また加熱乾燥の進行に合わせてこれらを適切に調整することも容易にできる。
【0010】
〔従来技術3〕
他方、パイプ材以外のセラミック成形品の乾燥装置では、乾燥炉内を通過して走行するベルトコンベアにセラミック成形品を搭載して同乾燥炉の中を通過させることによって連続乾燥させるものがあり(特許文献2)、また、循環するローラコンベアにセラミック成形品を載せて乾燥炉を通過させる連続乾燥装置もある(特許文献3)。これら特許文献2、特許文献3のものはいずれも無停止で連続乾燥することができ、そのコンベアの搬送速度を加減することによって炉内滞在時間を加減することができる。
【0011】
〔この発明の前提となる従来技術〕
本願の発明は、長尺のセラミックパイプ材を乾燥させる乾燥装置であり、支持ローラ3のローラ4を回転させることで、セラミックパイプ材の曲がりを矯正し真直になったものを自転させながらその全周を均等に加熱乾燥させることができるようにした点で、上記従来技術2と同じである。したがって、上記従来技術2が本願の発明の前提技術に相当するといえる。
【0012】
従来技術2(本発明の前提技術)は、上記のとおり、多数のローラ4による支持ローラ3を乾燥炉1aの中に出し入れ自在に配置し、支持ローラ3を引き出した状態で隣接するローラ4,4間にセラミックパイプ材pを載せ、そして押し込んだ状態でローラ4を自転させてセラミックパイプ材pを自転させ、熱風乾燥させる。
なお、上記ローラ4はロール4aとローラ軸4bによるものであり、そのロール軸4bはその両端が枠体fに支持されている。
〔従来技術の問題点〕
【0013】
上記従来技術2は、支持ローラ3が乾燥炉の中に押し込まれてから引き出されるまでの時間を調整することによって乾燥時間が調整される。そしてその乾燥の当初段階でセラミックパイプ材pの曲がりが矯正され、真っ直ぐになったセラミックパイプ材が乾燥される。そしてこのことは従来技術1、従来技術2と同様である。
そして、セラミックパイプ材pの全周が均等に加熱乾燥されるように乾燥時間中の炉内温度、及びローラ4の自転速度を適宜適切に調整する必要があり、従来技術2ではこれらの調整を適宜容易に行うことができる。
【0014】
他方、従来技術2では支持ローラ3を乾燥炉1aから引き出し、引き出された支持ローラ3上に成形された多数のセラミックパイプ材pを一括して全部投入しなければならず、また、乾燥終了後に支持ローラ3を乾燥炉1aから引き出し、引き出された支持ローラ3のローラ4上のセラミックパイプ材pを一括して全部取り出さなければならない。このために加熱炉の運転を一時停止させて間欠的に乾燥作業がなされ、また、セラミックパイプ材pの投入、取り出しに多くの手数を要する。
【0015】
したがって、従来技術2による乾燥作業は効率的でなく、また熱的損失が大きい。さらに、乾燥炉から引き出された支持ローラ3は高温に加熱されているので、セラミックパイプ材pを人手で投入し取り出す作業には危険が伴う。
また、セラミックパイプ材pの表面が少し乾燥されるとその曲がりの矯正がされにくくなり、他方、セラミックパイプ材pは研磨作用を生じこの研磨作用でロール4aの表面が著しく摩耗損傷されることになる。
【0016】
したがって、乾燥作業の初期段階において速やかに曲がりが矯正されように所要の速度でセラミックパイプ材pを自転(回転)させることが必要であるが、他方、その研磨作用によるロール4aの表面の摩耗損傷を低減させるためにはセラミックパイプ材pの自転速度をできるだけ低速にすることが必要である。
【0017】
ところで、様々な仕様のセラミックパイプ材pの乾燥作業を従来技術3のように搬送コンベアを用いて連続して行うとすれば、同じ仕様のパイプ材pの連続乾燥運転中は炉内温度、ローラ4の自転速度、支持ローラ3による搬送速度は一定に保たれる。
他方、セラミックパイプ材pの仕様が変更され、これに合わせて炉内温度、自転速度、搬送速度を調整するときはこれらを調整しなければならない。
【0018】
したがって、従来技術2を基礎とし従来技術2のようにセラミックパイプ材pをコンベアで搬送しながら連続乾燥できるようにするには、従来技術2のローラ4の自転速度とコンベアによる搬送速度との両方を、セラミックパイプ材pの変更(仕様の異なるセラミックパイプ材pへの変更)に合わせて適切に調整できるようにすることが必要である。なぜなら、セラミックパイプ材の仕様(外径、肉厚、素材等)の違いによって曲がりの大きさが違いまた曲がりの矯正の難易が違いさらにまた乾燥時間が違うことが多いからである。
【0019】
それゆえ、セラミックパイプ材の連続乾燥装置には、セラミックパイプ材pの仕様の違い(所要乾燥時間等の違い)に応じて、セラミックパイプ材pの自転速度、搬送速度の両方をそれぞれ適切に調整する必要があり、セラミックパイプ材pが異なる仕様のものに変更されるときにそれに応じてこれらを調整できるためにはこれらを別々に調整できることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
この発明は、従来技術2を前提としてセラミックパイプ材pを連続乾燥することができ、かつ簡単な機構によってセラミックパイプ材の連続投入、連続取り出しを自動化できるようにすることを目的とし、支持ローラの循環駆動機構、及び当該支持ローラの自転駆動機構を簡単にし、さらにローラの循環速度及び自転速度を互いに別個に調整できるようにすることをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための技術手段は、次の事項(A)を前提として(イ)〜(ヘ)によるものである。
(A)自転する多数のローラ14が整列している循環型の支持ローラ13を備えていて、当該支持ローラ13上でセラミックパイプ材pを低速で連続自転させながら加熱乾燥させるセラミックパイプ材の連続乾燥装置であり、
(イ)上記ローラ14のローラ軸14bの両端が循環チエン32に取り付けられて上記支持ローラ13が構成されており、
(ロ)左右のガイドレール31があって、当該ガイドレール31に上記ローラ14のローラ軸14bが乗り上げ、これによってローラ14が上記ガイドレール31によって支持されガイドされて走行するようになっており、
(ハ)左右の循環チエン32,32を連続駆動する循環駆動機構があり、
(ニ)上記ガイドレール31で支持されガイドされて走行する多数の上記ローラを同時に連続駆動して同方向同速で自転させる自転駆動機構があり、
(ホ)上記循環駆動機構による循環駆動と、上記自転駆動機構による自転駆動とが互いに別個の駆動機構であり、それぞれの駆動速度が別個に調整されるものであり、
(ヘ)セラミックパイプ材pの仕様の違いに応じ、また乾燥速度の違いに応じて上記支持ローラ13が所要の速度で循環駆動され、同パイプ材pの曲がり矯正に必要な速度で上記ローラ14が自転駆動されるようになっていること。
【発明の効果】
【0022】
上記支持ローラ13は、駆動スプロケットと被動スプロケット間で循環するが、その上辺部分がガイドレール31で下から支えられた状態で走行し、所定の速度で循環する。このとき、支持ローラ13のローラ14は、その上辺部分が上記ガイドレール31によって支持されガイドされているときは直線的に平滑に走行する。
他方、自転駆動機構の伝動手段(例えばタイミングベルト)は駆動輪によって駆動され、ガイドレールに乗り上げ支持されて走行している多数のローラ14の被駆動輪と噛み合ってこれを自転させる。
他方、ローラ14の走行が不安定で自転速度が不安定であってローラ14が微小振動すれば、セラミックパイプ材がローラ14表面に対して微小振動するのでローラ14の摩耗が促進されることになるが、本発明ではローラ14はガイドレールに乗り上げてこれに支持されて乾燥炉内を走行するので、乾燥工程でのその走行が平滑で安定しかつ自転速度が微小振動することなく安定する。したがって上記問題は効果的に回避される。
したがって、セラミックパイプ材pによるローラ14の摩耗をできるだけ低減しながら、支持ローラ13によってセラミックパイプ材pの曲がりの矯正と乾燥を連続して行うことができ、またセラミックパイプ材pの支持ローラ13への投入及び同支持ローラ13からの取り出しが支持ローラ13の前方端部と後方端部で繰り返し行われる。
【0023】
シュート等の投入装置s1(図2のシュートs1)が付設されていればこれによってセラミックパイプ材pが支持ローラ13の前方端部に投入れ、隣接するローラ14,14間に支持される。そして、投入されたセラミックパイプ材pはローラ14の自転によってゆっくりと自転し、自転しながら支持ローラ13の循環によって乾燥炉11a内を搬送され、取り出し側のスプロケットのところで隣接するローラ14,14間の谷間から自然に押し出されて放出される。
【0024】
セラミックパイプ材pは支持ローラ13上で自転するので、乾燥初期にロール14aによって曲がりが矯正され、そして、その外周全面が均等に加熱され所定時間で全周が均等に乾燥される。セラミックパイプ材pは乾燥炉11aの後方端部まで搬送され、取り出しシュート等の取り出し装置s2(図2のシュートs2)で自動的に取り出される。そしてセラミックパイプ材pの投入、搬送、取り出しは、投入装置s1、支持ローラ13及び取り出し装置s2によって連続してなされるから、セラミックパイプ材pの乾燥炉による乾燥処理が連続的になされる。
【0025】
支持ローラ13の循環駆動機構とローラ14の自転駆動機構は互いに別個の駆動機構であるから、その循環速度、自転速度をそれぞれ別個に調整することで、種々の仕様のセラミックパイプ材の乾燥作業に簡単容易に対応することができる。
【0026】
なお、曲がりが十分矯正されるのであれば自転速度が速すぎてもその全周を均等に加熱乾燥させるのに支障はない。従って、比較的高速で自転させれば、様々な仕様のセラミックパイプ材pを、ローラ14の自転速度を調整することなく対応することもできる。しかしこの場合は、ロール14aの摩耗損傷を低減するためには自転速度適切に調整することが必要である。
また、自転速度が曲がりを乾燥の初期段階で十分矯正するには遅すぎるときは、炉内温度を低く調整することでセラミックパイプ材の全周を均等に乾燥させることができる。しかしこの場合は、乾燥能率が損なわれることになるので、自転速度を適切に調整して対応することが必要である。
【0027】
ところで、従来技術2による乾燥装置ではその乾燥炉1aの入り口側と中央部と出口側では温度条件が必ずしも一様でなくてそれぞれの位置での乾燥条件は異なるので、入口近傍部と中央部と出口側近傍部では必ずしも均一に乾燥されない。しかし、本発明の場合は全てのセラミックパイプ材pが入り口側、中央部、出口側を同じ速度で通過するので全てが同じ条件で乾燥される。したがって、全てのセラミックパイプ材pが常に均一に加熱乾燥されるので乾燥品質が安定する。これもこの発明の連続乾燥装置の大きな利点である。
【0028】
〔実施態様〕
上記自転駆動機構が、上記ローラ14の被駆動輪(例えば歯付きプーリ14c)を一つのタイミングベルト等の伝動手段で同時に同方向に同速度で駆動し、上記循環駆動機構のスプロケットによって上記循環チエン32を駆動して上記支持ローラ13を循環させ、上記ローラ14が上記ガイドレール31に支持されガイドされて走行するとき、ガイドローラ31に支持されガイドされている多数の上記被駆動輪が上記自転駆動機構によって同時に同方向に駆動される。これがこの発明の基本であるから、支持ローラ13、ローラ14、循環チエン32、自転駆動機構、循環駆動機構と自転駆動機構の駆動機構、循環駆動機構と自転駆動機構の駆動速度の制御等についてその態様を説明する。
【0029】
1.支持ローラ13
支持ローラ13は多数のローラ14と循環チエン32とによるものであり、
左右の循環チエン32,32のチエンスリーブ32bにローラ軸14bの両端を嵌めて上記循環チエン32,32を多数のローラ14で連結して構成されているものである。
ローラ軸14bが全てのチエンスリーブ32bに嵌められてローラ14が循環チエン32に組み付けられている態様と、一つおき又は二つおきのチエンスリーブ32bにローラ14が嵌められて循環チエン32に組み付けられる態様があるが、前者ではローラ14の軸間に一つのチエンリンク32aが介在しその軸間距離に応じて長いチエンリンクが使用されることになり、後者ではローラ14の軸間に複数のチエンリンクが介在し、比較的短いチエンリンクによるものになるので、比較的小型のチエンを小径のチエンスプロケットで駆動するように構成することができる。
【0030】
2.ローラ14
(1)ローラ14の構造
ローラ14の構造は、要するに左右の循環チエン32に支持されて、自転しながら循環する構造であればよく、ロール14aをローラ軸14bに軸受けを介して回転自在に組み付けた態様と、ロール14aをローラ軸14bに固定して組み付けた態様がある。
ローラ軸14bにロール14aを回転自在に取り付ける態様では軸をチエンスリーブ32bに嵌めればよく、チエン32aへのローラ軸14bの組み付けが容易である。
【0031】
他方、ローラ軸14bにロール14aを固定する態様では、ロール14aとローラ軸14bとが共に回転することになり、したがって、チエンスリーブ32bに対してローラ軸14bが回転することになるので、チエンスリーブ32bに対するローラ軸14bの回転による摩耗を防止し、またローラ14の自転に対する抵抗を低減するための工夫が必要である。
【0032】
ロール14aの外径と長さは乾燥対象のセラミックパイプ材pの外径と長さにそれぞれ関連するが、外径は想定される乾燥対象の最大径とほぼ等しい程度であればよく、長さは想定される最大長さよりも10cm程度長ければよい。
例えば、乾燥対象のセラミックパイプ材pの外径が10〜50mmのとき、ロール14aの外径は50mmでよく、長さが700mmのときロール14aの長さは800mmでよい。
【0033】
さらに、整列していて隣接するローラ14,14のロール14a,14aの間の隙間は、セラミックパイプ材pの最小径、ロールの外径の大きさ等によるが、ロール外径が50mmであれば1mm程度であれば十分である。
ロール外径が大きいほどチエンリンク32aが長くなり、チエンリンク32aが長いほどスプロケットに巻き付いたときのロール間隙間の縮小が大きい。すなわちこのようにロール間隙間が縮小されるのは、軸間距離は変わらないが、チエンリンク32aがチエンスリーブ32bを軸にして屈曲してロール外面が互いに接近するからである。このときにロールが互いに接触することのないように必要な隙間を予め確保しておく必要がある。
【0034】
他方、ロール間の隙間が大きいほどロール間ピッチが大きくなり、支持ローラ13の長さ(被動・駆動両スプロケット間の軸間距離)Lが一定であるとすればローラ14の数が減少し、循環チエン32のチエンリンクが必要以上に長くなるなどのデメリットがある。したがって、当該隙間はロール14aが熱膨張等によって、互いに干渉することがない程度であればよい。
【0035】
(2)ロール14aの耐摩耗対策
また、セラミックパイプ材pがその研磨作用によってロール14aの表面を摩耗させるので、これを低減するためにロール表面の耐摩耗性を高くすることが必要であり、このために、例えば硬質クロームメッキ等の金属メッキを施すか、その他の耐摩材による耐摩対策が必要である。
【0036】
(3)ローラ軸14bをガイドレールによって支持する支持機構
ローラ軸14bの両端を支持している循環チエン32をガイドレール31に載せてこれをガイドレールに支持させるのが簡単な支持機構であるが、ローラ軸14bに小径の車輪を設け当該車輪をガイドレールに載せて支持させる態様もある。車輪によるこの態様は、ガイドレール上を車輪が転動するので、循環チエン32がフリーであり、したがって、支持ローラ13の循環に対する抵抗が低減されて循環が滑らかであり、ガイドレールの支持面の摩耗が少なくてその耐久性が高い。
【0037】
3.循環チエン32について
支持ローラ13を構成する左右の循環チエン32については、チエンリンクがローラ14の軸間距離と等しいのが簡単な態様であるが、しかし、チエンリンクをローラ14の軸間距離よりも短いのにすることもできる。前者は極めて小径のローラ14による場合に好都合であるが、他方、後者の場合は大径のローラ14による場合に適し、比較的小型の循環チエンを比較的小径のスプロケットでなめらかに駆動するように構成することができる。
前者の場合は支持ローラ13におけるローラ軸の軸間間隔は一定であり、ローラ間の隙間は変わらないが、後者の場合は上記軸間間隔が変動しチエンスプロケットに巻き付いたときに縮小するので、設定隙間が微小(例えば1mm以下)の場合はこの点に注意することが必要である。
【0038】
4.自転駆動機構
(1)多数のローラ14のロール14aを同方向に駆動する伝動手段としてはタイミングベルトによる態様、チエンによる態様、ラック・ピニオンによる態様があるが、作動が滑らかでかつ機構・構造が簡単で廉価であることからタイミングベルトによるのが好ましい。他方、チエンによる態様は耐熱性が高く、耐久性が高いという利点がある。
ラック・ピニオン機構による態様は支持ローラ13の循環動作を利用するのでその駆動機構が極めて簡単であるが、ラックによって駆動されるピニオンの回転速度が低速であることが構造上避けられない。
なお、ピニオンとローラとの間に増速歯車機構(例えば、コンパクトな機構で増速できる遊星歯車機構等)を介在させることでローラの回転速度を向上させることはできる。しかし、機構が複雑になってしまうのが難点である。
【0039】
5.循環駆動機構と自転駆動機構
循環駆動機構と自転駆動機構をそれぞれ別個のモータで駆動する態様、一つのモータで減速機を駆動し当該減速機で循環駆動機構と自転駆動機構を駆動する態様などがあり、また一つのモータで駆動され2つの変速装置を備えている伝動機構で両駆動機構を駆動する態様も考えられる。
【0040】
6.循環駆動機構と自転駆動機構の駆動速度の制御
循環駆動機構と自転駆動機構の駆動速度は一定不変でなくて、それぞれ別々に調整可能である必要がある。
セラミックパイプ材pの仕様(材質、外径、厚さ等)によって曲がりを矯正するのに必要な自転速度は異なり、また必要な乾燥時間も異なる。したがって、ローラ14の自転速度と支持ローラ13の循環速度とは、セラミックパイプ材pの仕様の変更、また乾燥温度、乾燥時間等の変更によりその適切な速度が異なるので、その時々のセラミックパイプ材の材質の仕様、または乾燥条件等に応じて、自転速度及び循環速度が適宜調整可能である必要がある。
【0041】
ローラ14の自転速度、支持ローラ13の適切な循環速度は、乾燥炉の長さ、乾燥温度、セラミックパイプ材pの曲がりの大きさ、曲がり矯正の難易等様々な条件によって異なので一概に決まるものでない。したがって、これらの速度については実際に応じて適切に調整する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】は従来のセラミックパイプ材の乾燥装置を概念的に示す側面図。
図2】は本願の発明のセラミック材の乾燥装置の要部を概念的に示す側面図。
図3】は実施例1の支持ローラ、循環駆動機構及び自転駆動機構を模式的に示す側面図
図3-1】は実施例1の平面図
図4】は実施例1のローラ、ガイド機構、循環駆動機構及び自転駆動機構を模式的に示す正面図
図4-1】は実施例1におけるチエンとローラの位置関係を模式的に示す一部拡大図であり、(a)はチエンの側面図、(b)はローラ配置を示す側面図
図5】は実施例1の自転駆動機構の一部を拡大して示す側面図
図6】は変形例1の自転駆動機構の一部を拡大して示す側面図
図7】は変形例2のローラ、ガイド機構、循環駆動機構及び自転駆動機構を模式的に示す正面図
図7-1】は変形例2の自転駆動機構の一部を示す側面図
図8】は変形例3のローラ、ガイド機構、循環駆動機構及び自転駆動機構を模式的に示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0043】
セラミックパイプ材pの仕様(種類や長さ、太さ、肉厚等)は様々であり、そして、様々のセラミックパイプ材pを本発明の連続乾燥装置11によって連続乾燥することができるが、ここでは外径10〜50mm、全長700mm以下のセラミックパイプ材を乾燥対象にする実施例について説明する。
なお、本発明による連続乾燥装置11の支持ローラ13の長さL(図2参照)はその乾燥対象物、乾燥条件、乾燥処理能力等に応じて選択されるものである。そして、図3に示すこの実施例(以下「実施例1」ともいう)はその全長Lが145cmである。
【0044】
また、乾燥炉11aの加熱手段はヒータ(熱風ヒータ)12であり、便宜上支持ローラ13の上方に図示されているが、実際は乾燥炉11aの長手方向(支持ローラ13の走行方向)に熱風が流れる配置になっているのが一般的である。そして、このヒータ12は熱風温度、風量が適宜に調整されるものである。
そして、炉内温度は50〜90℃であり、乾燥対象物の外径や肉厚、乾燥条件(乾燥度合い、乾燥速度等)に応じて調整される。
【0045】
〔機構〕
多数のローラ14と循環チエン32による支持ローラ13は、モータM1の駆動スプロケット(符合略)で駆動チエン23及びその被動スプロケット20を介して駆動され、その循環チエン32が駆動スプロケット21と被動スプロケット22間に巻き掛けられていて駆動スプロケット21によって駆動されて、その上辺部分が乾燥炉の取り出し口に向かって走行し(図3の矢印方向)、下側部分が投入口側に向かって走行して循環する。
そしてまた、タイミングベルト43、タイミングベルト44、被動プーリ40、駆動プーリ41、3つのアイドルプーリ42、駆動モータM2による自転駆動機構(図3)により、多数のローラ14がガイドレール31上で同時に駆動されて自転する。
以上が、全体構造の基本である。
【0046】
1.ローラ14の構造
支持ローラ13、循環駆動機構、自転駆動機構の説明に先だって、ローラ14の構造を説明する。
ローラ14はロール14aとその両端のベアリング14d,14dと左右のローラ軸14b,14bと歯付きプーリ14cとで構成されている。
この実施例ではロール14aの左右両側に左右のローラ軸14bがあるが、その一方のローラ軸14bがベアリング14dを介してロール14aの一端を回転自在に支持し、他方のローラ軸14bはベアリング14dを介して歯付きプーリ14cを回転自在に支持している。そして、上記歯付きプーリ14cがロール14aの他端に固定されており、また、両ローラ軸14b,14bは循環チエン32のチエンピン(チエンスリーブ32b)に嵌められて循環チエン32に支持されている。
なお、この循環チエンの構造は通常の伝動チエン(例えば自転車のチエンなど)と違いはない。
【0047】
以上のようにして、ロー14aは左右のローラ軸14b,14bを介して左右の循環チエン32,32に回転自在に支持されている。
なお、ロール14aを循環チエン32に支持させるローラ軸は左右のローラ軸14b,14bである。なお、ロール14a及び歯付きプーリ14cを中空体にして当該ローラ軸14bを一つの軸にすることも可能である。
【0048】
2.支持ローラ13の構造
次に、ローラ14と循環チエン32による支持ローラ13の構造について説明する。
支持ローラ13は多数のローラ14と左右の循環チエン32とによって構成されたものであり、上記ローラ14はロール14aとロール軸14bによるものであり、これによって左右の循環チエン32,32が連結されて、支持台(いうならば、幅の広いチエンコンベア)13が構成されている(図3(b))。そして、上記ロール14aの外径は50mm、長さ(ロール14aの長さ)は800mmであり、多数のローラ14が50.8mmの軸間間隔(軸間ピッチ)で配列されている。
上記循環チエン32は通常のリンクチエン(チエンリンクとチエンピンによる伝動チエン)であり、チエンスリーブ32b,32bを備えており、一つおきにローラ14のローラ軸14b嵌められて組み付けられている。
したがって、上記チエンスリーブ32b、32b間の間隔は隣接するローラ14、14の軸間間隔(50.8mm)の1/2である。
【0049】
循環チエン32の左右のチエンリンク32a,32a間にガイドレール31が嵌められた状態で循環チエン32が当該ガイドレール31によって下から支えられ、左右のチエンリンク32a,32aによってその横方向動きを規制される。循環チエン32の上辺部分がガイドレール31に乗り上げこれに支持されガイドされて走行するとき、ローラ14は左右の循環チエン32を介してガイドレール31,31に支持されガイドされることになる。
【0050】
そして、互いに隣接するローラ14,14のロール14a,14a間に0.8mmの隙間があり、ロール14aの外径は50mmである。そして隣接する二つのロール14,14の間に外径10mm〜50mmのセラミックパイプ材pを支持し、円滑に自転させることができる。
【0051】
なお、循環チエン32がスプロケット21,22に巻き付くと両ロールの間のチエンスリーブ(チエンピン)で少し折れるので、このために隣接するロール14,14が接近して上記隙間cが縮小されることになる(図4−1(b)を参照)。
したがって、上記隙間は、チエンの成作誤差及び摩耗によるガタに関わらず、隣接するロールが接近したときの上記接触を回避するのに必要な程度はなければいけない。
【0052】
他方、セラミックパイプ材pがロール外径に対して著しく小径であるときは、上記隙間が大きいほど、2つのロール14a間の谷間に落ち込む深さが深くなり、セラミックパイプ材pを挟み付ける力が増大するので自転の円滑性が損なわれ、また、セラミックパイプ材pとロール14a間の面圧が高くなるので、セラミックパイプ材pによるロール14aに対する研磨作用が高くなる。
また、セラミックパイプ材pに比してロール14aの外径が小さいほどロール間の谷が狭くて浅くなり、谷が狭くて浅いほど2つのロール14a,14aによるセラミックパイプ材pに対する支持点が近くなり接触圧が低下するので、極端な場合はセラミックパイプ材pに対する自転駆動の安定性が損なわれることになる。逆に、セラミックパイプ材pに比してロール14aの外径が大きいほど、ロール14a間の谷にセラミックパイプ材pが落ち込む深さが深くなる。
また、ロール14aの外径については支障のない範囲で小径であることが支持ローラ13のローラ密度を高くする上では好ましい。
以上のことを勘案しセラミックパイプ材pの外径を考慮して、ロール14aの外径とロール間の隙間を選択する必要がある。
ローラ間隔とセラミックパイプ材の支持状態との関係については、必要なら特許文献1の図4図5を参照されたい。
【0053】
右の循環チエン32,32と多数のロール14による支持ローラ13がピッチ円径約146mmの駆動スプロケット21と被動スプロケット22間に巻き掛けられており、駆動スプロケット21によって駆動されて循環する。因みに、上記駆動スプロケット21と被動スプロケット22の軸間距離Lは145cm(支持ローラ13の有効長さであって、ローラ14の配列ピッチ5.8cm×配列数25=145cm)である。
【0054】
この駆動、被動両スプロケットの軸間距離Lが長いほど乾燥炉11aが長いことになり、乾燥時間を一定とすれば上記軸間距離Lが長いほど支持ローラ13の循環速度(搬送速度)が速く、したがって乾燥処理能力が高い。
互いに隣接する2つのローラ14の軸間距離及び支持ローラ13の循環速度の関係でセラミックパイプp投入のスピードは決まるが、そのスピードでセラミックパイプ材pが支持ローラ13の入り口側端部に連続して投入されれば、出口側端部から同じスピードで連続して取り出される。
シュータs1,s2は投入、取り出しを自動化するためのものである。
【0055】
3.循環駆動機構
次に、循環チエン32を駆動する循環駆動機構について説明する。
左右の循環チエン32が多数のローラ14で連結されて支持ローラ13(いわばチエンコンベア)を構成しているのであるが、この循環チエン32,32は駆動スプロケット21と被動スプロケット22とに巻き掛けられており(図3)、その上辺部分がガイドレール31に乗り上げて下から支持され、またその下辺部分が下方の補助ガイドレール31aによって下から支持される(図4参照)。
【0056】
モータM1によってチエン23を介して駆動される被動スプロケット20と、循環チエン32に対する駆動スプロケット21とが駆動軸24に固定されており(図4)、上記駆動スプロケット21に対する上記被動スプロケット22がアイドル軸24aに固定されている(図3図4)。そして、循環チエン32は上記駆動スプロケット21で駆動されて、駆動、被動両スプロケット21,22間で循環する。また、駆動チエン23を介して駆動モータM1の駆動スプロケットm1によって駆動され、左右の駆動スプロケット21,21が駆動され、当該駆動スプロケット21,21によって左右の循環チエン32,32が駆動される。
【0057】
循環チエン32の循環速度(又は走行速度)が支持ローラ13の循環速度(又は走行速度)であり、これが当該支持ローラ13によるセラミックパイプ材pの搬送速度であるから、乾燥時間を短かくするときは支持ローラ13の循環速度が速く調整され、乾燥時間を長くするときは遅く調整される。
【0058】
4.ローラ14の自転駆動機構
次に、多数のローラ14,14,14・・・を同方向に同速度で自転させるための自転駆動機構について説明する。
一つの歯付き駆動プーリ41(以下単に「駆動プーリ」ともいう)と3つのアイドルプーリ42が支持ローラ13を取り囲むようにしてその外側(側面視における外側)に配置されており(図3)、駆動プーリ41と他の被動プーリ40が中間軸40aに固定され、当該中間軸40aは軸受けによって回転自在に支承されている。
【0059】
上記のとおり、タイミングベルト44が駆動プーリ41と3つのアイドルプーリ42の間に四角形状に巻きかけられいて、支持ローラ13の外側を循環するように構成されている。そしてまた、上記駆動プーリ41の軸にモータM2の駆動プーリm2に対する被動プーリ40があり、当該被動プーリ40とモータM2の駆動プーリm2に他のタイミングベルト43が巻き掛けられている。したがって、上記駆動プーリ41はタイミングベルト43,被動プーリ40、中間軸40aを介して駆動モータM2によって駆動される。
【0060】
上記のとおり、支持ローラ13の外側を四角形状に循環しており、ガイドレール31の上を走行するローラ14の歯付きプーリ14cがタイミングベルト44の上辺部分に噛み合うように、上方の2つのアイドルプーリ42,42によって当該上辺部分が緊張されている(図5)。
そして、ガイドレール31上を走行しているローラ14の歯付きプーリ14cが上記タイミングベルト44と噛み合って駆動されるから、ガイドレール31に支えられて走行している多数のローラ14が全て同方向、同速度で自転する。
【0061】
セラミックパイプ材pがシュートs1(投入装置)から支持ローラ13に投入されると、それが支持ローラ13の投入側端部の二つのローラ14,14の間に支持され、ローラ14の自転によって駆動されて自転しながら支持ローラ13によって搬送される。
乾燥され始めてから乾燥初期の段階でセラミックパイプ材pの曲がりが矯正されなければならず(乾燥が進むにつれて矯正され難くなる)、他方、矯正されそれから表面が乾燥されて硬化してきたセラミックパイプ材pはロール14aに対する研磨作用を生じ、この研磨作用によるロール14aの摩耗は自転速度が速いほど著しくなるので、この摩耗をできるだけ低減するようにしなければならない。
【0062】
したがって、乾燥が始まってからの初期段階で曲がりが矯正され、また、セラミックパイプ材pによるロール14aの摩耗が低減されるように、適切な速度にロール14aの自転速度が調整されなければならない。
なお、上記の自転駆動機構はタイミングベルト44によるものであるが、この自転駆動機構をチエンによるものに変更することもできるが、この場合は上記の歯付きプーリをスプロケット(チエンスプロケット)に変更しなければならない。
【0063】
5.支持ローラ13に対するガイドレールによる支持機構
次に、支持ローラ13の上辺部分を支持しガイドするためのガイドレール31による支持機構について説明する。
上記ガイドレール31はいわゆるレール状になっていて、循環チエン32の上辺部分の左右のチエンリンク32a、32aの間に嵌り込み、チエンリンク32a,32aを横方向に規制してガイドする。
上記のように、循環チエン32はその上辺部分がガイドレール31によって下から支持され横方向にガイド(規制)されるのでその走行は滑らかで安定する。したがって、支持ローラ13の上辺部分の走行、すなわち歯付きプーリ14cがタイミングベルトと噛み合って自転駆動される支持ローラ13の上辺部分の走行が滑らかで安定する。
【0064】
なお、この実施例1では支持ローラ13の下側に同構造の補助ガイドレール31aがあって、これによって支持ローラ13の下辺部分が下から支えられて滑らかに安定して走行する。
なお、支持ローラ13の下辺部分を支える補助ガイドレール31aについては必ずしも必要でない。
【0065】
6.支持ローラ13の循環速度とローラ14の自転速度の制御
次に、支持ローラを所要の速度で循環させ、また、ローラ14を所要の速度で自転させるためのこれらの制御について説明する。
支持ローラ13の循環速度と自転速度はそれぞれ多くのことと関係するので、
これらが常に特定の相関関係があるわけではない。循環速度については必要な乾燥時間で支持ローラ13の長さL(図3参照)を走行するように調整し、また自転速度については乾燥開始当初の一定時間でセラミックパイプ材pの曲がりが矯正され、かつ全周が均等に加熱乾燥されるように調整することが必要である。
他方、自転速度が速いほどロール14aの摩耗が著しくなり、遅いほどセラミックパイプ材全周についての加熱乾燥の均一性が損なわれるようになる。
【0066】
〔循環速度〕
例えば、乾燥炉11a内の温度を所定温度(例えば60℃)にして30分間で乾燥させるとすれば、支持ローラ13の循環速度は約40mm/分である。しかし、もし乾燥対象又は乾燥条件(乾燥温度や乾燥時間)が変更されて乾燥に過不足が生じるとすれば、循環速度を加減し、又は自転速度を加減する必要がある。
【0067】
しかし、乾燥の過不足が顕著でなければ、セラミックパイプ材の仕様が変わっても循環速度を調整することなしにそのまま乾燥炉の運転を続けることができる。
【0068】
〔自転速度〕
また、外径が40mm、肉厚が5mm、長さが700mmのセラミックパイプ材p(単に「パイプ材」ともいう)を自転させて所定時間内に曲がりを矯正させるためにこれを毎分1回転自転させることとし、そのために外径50mmのロール14aを毎分4/5回転させる。
そして、パイプ材pの曲がりが完全に矯正されるのに必要な時間を観察しながら自転速度を加減する。もし、曲がりの矯正が十分でかつ乾燥の過不足がなければ、自転速度、循環速度を調整する必要はない。しかし、曲がりの矯正が不十分であるときは自転速度を上げ、ロール14aの摩耗を抑制するため、乾燥過剰にならない程度に循環速度を下げる。
【0069】
〔実施例1による乾燥作業〕
ローラ14が支持ローラ13の循環速度(例えば毎分40mm)で走行して約30分で乾燥炉1を通過する場合は、投入されたセラミックパイプ材pはこの間に乾燥が完了して取り出される。
そして支持ローラ13の投入側の端部にセラミックパイプ材pが続けて投入されれば、支持ローラ13で搬送されて乾燥炉を通過しこの間に乾燥され、支持ローラ13の取り出し側の端部から順次取り出される。
上記の投入作業、取り出し作業は人手で行うこともできるが、傾斜したシュートs1等による投入装置、傾斜したシュートs2等による取り出し装置を付設することにより乾燥作業を自動化することができる。
【0070】
ところで、上記のとおり実施例1のローラ14の外径は50mmであり、その配列の軸間ピッチは50.8mmであり、そして乾燥時間は30分であるから、支持ローラ13の循環速度(ローラ14の走行速度)は毎分40mmである。したがって、セラミックパイプ材pを1.25分間隔(ローラ14が配列の1ピッチだけ走行するに要する時間)で一つの割合で連続投入することができ、一時間当たり約48本のセラミックパイプ材pを乾燥させることができる。
【0071】
因みにいえば、乾燥炉を小型にして支持ローラ13の長さLを実施例1の2/3に短縮し、乾燥時間を30分間とすれば、循環速度が実施例1の約2/3になるので支持ローラ13の循環速度が約2/3に成り、その結果、乾燥処理能力が約2/3になる。
【0072】
また、セラミックパイプ材pの曲がりの矯正が不十分であるときは、自転速度を上げるかまたは乾燥風の温度を下げ、そして支持ローラ13の循環速度を下げて乾燥時間を長くするように調整する。逆に曲がりの矯正が速やかになされるときはこのために自転速度を調整する必要は特にないが、自転速度を下げてロール14aの摩耗を低減させることはできる。自転速度を下げた場合、その結果として全周を均等に加熱乾燥させるのに不都合を生じる恐れがあれば、自転速度の低下は全周均等に加熱乾燥するのに支障のない範囲に限られる。
【0073】
7.変更例の説明
次いで、実施例1を基本としてその一部を変更する変更例について説明する。
この変更例は実施例1を部分的に変更した例であるので変更した点について説明する。
【0074】
7−1.自転駆動機構の変更例その1( 変更例1)
この変更例(変更例1)は図6に示すもので、上記実施例1におけるタイミングベルト44とは異なるタイミングベルト54によるものである。駆動プーリ51と被動プーリ52がガイドレール31よりも上方に配置されており、両プーリ51,52の間にタイミングベルト54が巻き掛けられている。このタイミングベルト54は実施例1のタイミングベルト44の内側面と外側面を反転させたようなものであり、外側が歯付き面であり内側が平面である。そして、ローラ14が循環してガイドレール31に乗り上げてこれに支持されて走行するとき、当該ローラ14の歯付きプーリ14cがタイミングベルト54の歯と噛み合って駆動されて自転し、ローラ14が自転しながらガイドレール31に支持されて走行する。
【0075】
上記タイミングベルト54はその内側が平面であるから、上記駆動プーリ51と被動プーリ52は平ベルト用のプーリ(平プーリ)である。タイミングベルト54に対して駆動プーリ51がスリップすることはないが、もし瞬間的にスリップすることがあってもガイドレール31に支持されて走行しているローラ14は全てが同期して自転するので特に問題はない。
なお、駆動プーリ51は実施例1における駆動プーリ41と同様にモータM1(図3)によって駆動される。
【0076】
この変更例1では、そのタイミングベルト54の外側に歯があるのでこの点で実施例1と異なるが、駆動プーリ51、被動プーリ52が平ベルト用の平プーリであり、しかも、タイミングベルトによる駆動機構が実施例1のそれよりも単純でコンパクトであるから全体として自転駆動機構が単純でコンパクトである。
【0077】
なお、実施例1のタイミングベルト44をチエンに変えてチエン伝動機構にするのは容易なことであるが、これと同様に変更例1もタイミングベルト54をチエンに変えるのは容易である。
【0078】
7−2.自転駆動機構の変更例その2( 変更例2)
この変更例2は、その機構が実施例1の自転駆動機構と根本的に異なり、支持ローラ13の循環チエン32の循環動を利用してローラ14をそれぞれ同速同方向にラックギアで自転させるものであって、図7図7−1に示す機構によるものである。
このものではラックギア62がガイドレール31と並行して設けられており、実施例1における歯付きプーリ14cがピニオン61に変更されている。ローラ14のローラ軸14bがガイドレール31に乗り上げると上記ピニオン61が上記ラックギア62と噛み合うので、ローラ14がガイドレール31に支持されて走行し、ピニオン61がラックギア62によって駆動されて自転する。
【0079】
この変更例2では支持ローラ13の循環速度との一定の関係に自転速度が機械的に決まる。したがって、上記循環速度と無関係に自転速度を適宜調整することはできず、したがって、ピニオン61を交換して自転速度を調整する他はない。そしてまた、上記循環速度とピニオン61の径との関係から自転速度が比較的低速になるのが避けられないから、この変更例2によるものは自転速度が比較的低速でも格別の支障がない場合に限り利用できる。他方、これは自転速度が低いからそれだけセラミックパイプ材pによるロール14aの表面摩耗は少ない。
よって、自転駆動機構が極めて簡単で製作コストが低廉であるとともに、ロール14aのセラミックパイプ材pとの摩擦による摩耗が少ないのが変更例2の利点がある。
【0080】
7−3.ガイドレールによる支持機構の変更例(変更例3)
この変更例3はローラ14の車輪をガイドレールによって支持しガイドするものであって、その支持機構は図8に模式的に示すようなものである。
ガイドレール31によってローラ14を支持しガイドする実施例1の支持機構はガイドレール31によって循環チエン32を支持しガイドし、このことによってローラ14を間接的に支持しガイドするという技術思想によるものであり、そのガイド手段の機構は上記のとおりである。これに対してこの変更例3ではガイドレールをL型の帯状ガイドレール72にし、当該帯状ガイドレール72によってローラ軸14bの車輪71を支持しガイドするという技術思想によるものである。
【0081】
そしてこの変更例3ではローラ軸14bの外端に車輪71(外径30mm、幅20mm)をベアリングを介して回転自在に取り付けてある。そしてまた、ローラ14の上記車輪71が上記帯状ガイドレール72上を走行するとき、実施例1と同様にその歯付きプーリ14cがタイミングベルト44と噛み合って駆動される。
【0082】
なお、帯状ガイドレール72は断面L型のものであるが、これと同様のものとして断面凹型のガイドレールも使用できる。
また、図8に示す変更例3は実施例1と違って循環チエン32の下辺部分を支持する補助ガイドレールを備えていない。
【0083】
この変更例3では、車輪71が帯状ガイドレール72に支持されガイドされるから、循環チエン32がガイドレール31上を走行する実施例1よりもローラ14は滑らかに走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2003−26466号公報
【特許文献2】特開2008−132751号公報
【特許文献3】特開2013−57414号公報
【符号の説明】
【0085】
11:セラミックパイプ材の連続乾燥装置
11a:乾燥炉
12:ヒータ
13:支持ローラ
14:ローラ
14a:ロール
14b:ローラ軸
14c:歯付きプーリ
20:被動スプロケット
21:駆動スプロケット
22:被動スプロケット
23:駆動チエン
24:駆動軸
24a:アイドル軸
31:ガイドレール
31a:補助ガイドレール
32:循環チエン
32a:チエンリンク
32b:チエンスリーブ
40:被動プーリ
40a:中間軸
41:駆動プーリ
42:アイドルプーリ
43:タイミングベルト
44:タイミングベルト
51:駆動プーリ
52:被動プーリ
61:ラックギア
62:ピニオン
71:車輪
72:帯状ガイドレール
c:隙間
f:枠体
p:セラミックパイプ材
s1:シュータ(投入装置)
s2:シュータ(取り出し装置)
M1,M2:モータ
m1、m2:モータM1,M2の駆動プーリ
【要約】      (修正有)
【課題】セラミックパイプ材の連続投入、連続取り出が容易で、支持ローラの循環速度及びローラの自転速度を互いに別個に調整できる連続乾燥装置を提供する。
【解決手段】自転する多数のローラ14が整列している支持ローラ13を備え、支持ローラ13上でセラミックパイプ材pを低速で自転させながら加熱乾燥させる連続乾燥装置であり、支持ローラ13の多数のローラ14の両端を左右の循環チエン32、32に取り付けて整列させて、ローラ14の両端がガイドレールで支持されて直線的に走行するものであり、左右の循環チエン32,32を駆動する循環駆動機構、ガイドレールで支持されて走行する多数のローラ14を同時に駆動して同方向、同速で自転させる自転駆動機構を備え、循環駆動機構の駆動速度と、自転駆動機構の駆動速度とが、それぞれ別個に調整できるように両駆動機構を構成した。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図3-1】
図4
図4-1】
図5
図6
図7
図7-1】
図8