特許第5944612号(P5944612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5944612湿度依存質量測定装置および湿度依存質量測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5944612
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】湿度依存質量測定装置および湿度依存質量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/00 20060101AFI20160621BHJP
   D06H 3/00 20060101ALI20160621BHJP
   G01G 19/00 20060101ALI20160621BHJP
   G01N 33/36 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G01N5/00 B
   D06H3/00
   G01G19/00
   G01N33/36 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-514782(P2016-514782)
(86)(22)【出願日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】JP2015065331
【審査請求日】2016年3月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593012745
【氏名又は名称】一般財団法人カケンテストセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100161621
【弁理士】
【氏名又は名称】越山 祥子
(72)【発明者】
【氏名】井土 友香理
(72)【発明者】
【氏名】倉本 幹也
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−130070(JP,U)
【文献】 特開2005−326272(JP,A)
【文献】 実開平03−023343(JP,U)
【文献】 特開平10−018172(JP,A)
【文献】 実開平05−064761(JP,U)
【文献】 特表2013−505469(JP,A)
【文献】 特開昭52−112386(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3092019(JP,U)
【文献】 特開2000−241260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00
D06H 3/00
G01G 19/00
G01N 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試料を収容しうる空間が形成され、かつ、天井に内部の空間と外部とを通じる貫通孔が形成され、内部の雰囲気が定めた温湿度に保たれる恒温槽と、
前記恒温槽の上に支持される天秤と、
前記天秤の計量皿支持部から吊り下げられて前記恒温槽の前記貫通孔にその内周面に接触せずに挿通され、前記恒温槽の内部で前記試料を保持する計測治具と、
側面に空気の流入口と流出口が形成され、前記計測治具の前記恒温槽と前記天秤との間の部分を、前記計測治具が前記計量皿支持部から吊り下げられた状態で接触せずにその内部に収容する被覆箱と、
前記流入口から前記被覆箱に規定の湿度以下の乾燥空気を流入させる乾燥空気供給部と、
を備える湿度依存質量測定装置。
【請求項2】
前記被覆箱の前記流入口から前記乾燥空気が流入する方向は、前記流入口と前記計測治具とを結ぶ直線の方向から外れ、かつ、前記流入口と前記流出口とを結ぶ直線の方向から外れている、請求項1に記載の湿度依存質量測定装置。
【請求項3】
前記被覆箱の前記流入口は、前記被覆箱の1つの側面の中央より上に形成され、前記流出口は、前記流入口が形成された側面に対向する側面の中央より下で前記流入口の対角位置に形成されている、請求項1または2に記載の湿度依存質量測定装置。
【請求項4】
前記計測治具は、前記天秤の前記計量皿支持部から吊り下げられて前記恒温槽の前記貫通孔に挿通される吊り下げ治具と、該吊り下げ治具に前記恒温槽の内部で着脱可能で前記試料を保持する保持部とを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の湿度依存質量測定装置。
【請求項5】
前記計測治具の前記保持部は、前記試料を突き通す針部を有する請求項4に記載の湿度依存質量測定装置。
【請求項6】
前記計測治具の前記保持部は、直線状に延びる基部と該基部から直交して延びる複数の前記針部と、前記基部から前記針部と反対側に延びる2以上の梁を含み、
前記吊り下げ治具は、前記保持部の前記梁がそれぞれ挿入される2以上の水平に支持される管を下部に備える、
請求項5に記載の湿度依存質量測定装置。
【請求項7】
前記計測治具は、導電性、非磁性かつ非吸湿性の材料から形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の湿度依存質量測定装置。
【請求項8】
内部に試料を収容しうる空間が形成され、かつ、天井に内部の空間と外部とを通じる貫通孔が形成され、内部の雰囲気が定めた温湿度に保たれる恒温槽と、前記恒温槽の上に支持される天秤と、前記天秤の計量皿支持部から吊り下げられて前記恒温槽の前記貫通孔にその内周面に接触せずに挿通され、前記恒温槽の内部で前記試料を保持する計測治具と、側面に空気の流入口と流出口が形成され、前記計測治具の前記恒温槽と前記天秤との間の部分を、前記計測治具が前記計量皿支持部から吊り下げられた状態で接触せずにその内部に収容する被覆箱と、前記流入口から前記被覆箱に規定の湿度以下の乾燥空気を流入させる乾燥空気供給部と、を備える湿度依存質量測定装置の、
前記恒温槽の内部で前記計測治具に前記試料を保持させ、
前記恒温槽の内部の雰囲気を定めた温湿度に保ち、
前記被覆箱の前記流入口から前記規定の湿度以下の乾燥空気を流入させている状態で、前記天秤で前記試料の質量を測定する、湿度依存質量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度に依存して質量が変化する材料の質量を測定する湿度依存質量測定装置および湿度依存質量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸湿性や速乾性を高めた衣料が開発されており、その吸湿および放湿に関する性能、すなわち吸放湿性能を測定するための試験がある。
【0003】
特許文献1には、繊維の吸放湿係数について記載されている。特許文献2には、測定用試料の吸湿パラメータおよび放湿パラメータについて記載されている。特許文献3〜6には、繊維試料の吸湿率について記載されている。特許文献7には、試料の吸放湿性能について記載されている。
【0004】
特許文献8には、試料の熱及び水分移動特性を測定する測定装置が開示されている。特許文献9には、試験片の吸湿放湿特性を測定する試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−41204号公報
【特許文献2】特開2000−204230号公報
【特許文献3】特開2000−314082号公報
【特許文献4】特開2000−73234号公報
【特許文献5】特開2001−146678号公報
【特許文献6】特開2001−30402号公報
【特許文献7】特開2001−172826号公報
【特許文献8】特開平10−18172号公報
【特許文献9】特開2004−157086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
衣料着用時の快適性において、湿りに関する感覚は重要であり、この感覚においては人体−衣服間に介在する水分の量のみならずその移動速度、すなわち衣料の吸湿または放湿の速さも重要な因子である。従来の吸放湿性能を測定するための試験では、平衡状態になった試料の質量を測定するので、平衡状態における吸湿量または放湿量はわかるが、吸湿または放湿の速さを知ることはできなかった。
【0007】
特許文献8および特許文献9に記載の装置では、周囲の空気の温度と湿度を測定して試料の両側の温湿度の差から試料の吸湿量または放湿量を推定する。試料の吸湿量または放湿量を直接測定しているわけではなく、吸湿量または放湿量は正確にはわからない。
【0008】
温度、湿度の測定の分解能比率は質量測定より小さく、誤差比率は質量測定より大きい。試料と質量測定装置を恒温槽に入れた場合、恒温槽の容積が大きく、恒温槽内の温湿度条件を均一にしながら試料への影響を測定できるほど速やかに変化させることは困難である。また、質量測定装置は本来一定温湿度条件に置いて測定すべきものである。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、雰囲気の湿度に従って質量が変化する試料の質量を、試料の吸湿および放湿の速さを分析できるように測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る湿度依存質量測定装置は、
内部に試料を収容しうる空間が形成され、かつ、天井に内部の空間と外部とを通じる貫通孔が形成され、内部の雰囲気が定めた温湿度に保たれる恒温槽と、
前記恒温槽の上に支持される天秤と、
前記天秤の計量皿支持部から吊り下げられて前記恒温槽の前記貫通孔にその内周面に接触せずに挿通され、前記恒温槽の内部で前記試料を保持する計測治具と、
側面に空気の流入口と流出口が形成され、前記計測治具の前記恒温槽と前記天秤との間の部分を、前記計測治具が前記計量皿支持部から吊り下げられた状態で接触せずにその内部に収容する被覆箱と、
前記流入口から前記被覆箱に規定の湿度以下の乾燥空気を流入させる乾燥空気供給部と、
を備える。
【0011】
本発明に係る湿度依存質量測定方法は、
内部に試料を収容しうる空間が形成され、かつ、天井に内部の空間と外部とを通じる貫通孔が形成され、内部の雰囲気が定めた温湿度に保たれる恒温槽と、前記恒温槽の上に支持される天秤と、前記天秤の計量皿支持部から吊り下げられて前記恒温槽の前記貫通孔にその内周面に接触せずに挿通され、前記恒温槽の内部で前記試料を保持する計測治具と、側面に空気の流入口と流出口が形成され、前記計測治具の前記恒温槽と前記天秤との間の部分を、前記計測治具が前記計量皿支持部から吊り下げられた状態で接触せずにその内部に収容する被覆箱と、前記流入口から前記被覆箱に規定の湿度以下の乾燥空気を流入させる乾燥空気供給部と、を備える湿度依存質量測定装置の、
前記恒温槽の内部で前記計測治具に前記試料を保持させ、
前記恒温槽の内部の雰囲気を定めた温湿度に保ち、
前記被覆箱の前記流入口から前記規定の湿度以下の乾燥空気を流入させている状態で、前記天秤で前記試料の質量を測定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、雰囲気の湿度に従って質量が変化する試料の質量を、試料の吸湿および放湿の速さを分析できるように測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る湿度依存質量測定装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る被覆箱の一例を示す上面図および側面図である。
図3】実施の形態に係る恒温槽の内部を示す正面図である。
図4】実施の形態に係る計測治具の一例を示す図である。
図5】実施の形態に係る試料を固定した保持部の一例を示す上面図である。
図6】実施の形態に係る被覆箱を設けた場合と設けない場合の計量結果を示すグラフである。
図7】実施の形態に係る湿度依存質量測定装置によって計測した吸放湿量の湿度変化に対する追随性および同一測定内での再現性を示すグラフである。
図8】実施の形態に係る湿度依存質量測定装置によって計測した吸放湿量の繰り返し再現性を示すグラフである。
図9】実施の形態に係る吸湿速度および放湿速度の時間変化を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図中、同一または相当する部分には、同じ符号を付す。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る湿度依存質量測定装置の構成例を示すブロック図である。湿度依存質量測定装置1は、恒温槽11と天秤12と被覆箱13と乾燥空気供給装置14とを備える。図1の例では、圧縮された空気がドライヤー2で乾燥され、湿度発生装置3に供給される。湿度発生装置3は、供給された空気を分流法で設定された湿度に制御し、結露防止用保温管4を通じて、恒温槽11に供給する。湿度発生装置3内の空気、および、恒温槽11内の空気は、恒温器5の恒温水を循環させることにより、設定された温度に制御される。恒温槽11は、水循環二重構造になっており、恒温可能である。
【0016】
恒温槽11は、短時間(例えば、10分)で温湿度を安定させることができる容積になっている。これにより、恒温槽11の内部は短時間で設定された温湿度の恒温恒湿状態に安定させることができる。恒温槽11の内部を設定された値で恒温恒湿状態にする方法は、これに限らず、既存技術を用いればよい。ここでは、湿度発生装置3によって設定可能な湿度範囲は5%RH〜95%RHとし、精度は23℃の環境下で±0.8%RHとする。恒温器5によって設定可能な温度範囲は−10℃〜80℃とし、精度は±0.10℃とする。
【0017】
湿度依存質量測定装置1は、試料を恒温槽11の内部に設置するための計測治具を備える(図示せず)。計測治具は、天秤12の計量皿支持部から吊り下げられる吊り下げ治具と、恒温槽11の内部で吊り下げ治具に着脱可能な保持部とを含む。恒温槽11の天井、被覆箱13の天井および底には、吊り下げ治具を通す貫通孔が設けられている。天秤12の計量皿支持部から吊り下げられた吊り下げ治具は、被覆箱13および恒温槽11の貫通孔の内周面に接触せずに挿通される。ユーザが保持部に試料を固定して吊り下げ治具に装着すると、試料を恒温槽11の内壁に接触しないように吊り下げることができる。天秤12は、恒温槽11の内部の温度および湿度の変化によって変化する試料の質量を計測する。
【0018】
乾燥空気供給装置14は、規定の湿度以下の乾燥空気を発生させ、被覆箱13に供給する。被覆箱13の内部は空洞であり、乾燥空気供給装置14が発生させた乾燥空気は、流入口から供給され、流出口から排出される。これにより、恒温槽11内の空気が天秤12の方に上昇するのを防ぎ、結露を防止する。乾燥空気供給装置14が発生させる乾燥空気は、恒温槽11内の温度と同じ温度にするとよい。また、被覆箱13は、恒温槽11の天井に接するように恒温槽11の内部に備えてもよい。
【0019】
図2は、実施の形態に係る被覆箱の一例を示す上面図および側面図である。図2の例では、被覆箱13は、幅60.00mm、長さ60.00mm、高さ25.00mmであって、水平面の中央に吊り下げ治具を通す貫通孔が設けられている。乾燥空気が流入する方向が、流入口と吊り下げ治具とを結ぶ直線の方向から外れ、かつ、流入口と流出口とを結ぶ直線の方向から外れるように、流入口および流出口が斜向かいに配置されている。これにより、吊り下げ治具を通す貫通孔付近を乾燥空気が通り、かつ、流入した乾燥空気が吊り下げ治具に直接当たらないので、乾燥空気の流入する勢いが吊り下げ治具に与える影響を抑制することができる。また、乾燥空気が被覆箱13の内部を流れやすいように、流入口が流出口よりも高い位置に設けられている。
【0020】
なお、乾燥空気が流入する方向が、流入口と吊り下げ治具とを結ぶ直線の方向と一致する場合であっても、例えば、流入口と吊り下げ治具とを結ぶ直線上に風向変更板を設けて、流入した乾燥空気が吊り下げ治具に直接当たらないようにすればよい。また、乾燥空気が流入する方向が、流入口と流出口とを結ぶ直線の方向と一致する場合であっても、例えば、流入口と流出口とを結ぶ直線上に風向変更板を設けて、吊り下げ治具を通す貫通孔付近を乾燥空気が通るようにすればよい。
【0021】
図3は、実施の形態に係る恒温槽の内部を示す正面図である。図3は、恒温槽11の扉がない状態を示している。吊り下げ治具15が、天秤12の計量皿支持部から、被覆箱13の天井および底の貫通孔と、恒温槽11の天井の貫通孔を通り、恒温槽11の内部に吊り下げられている。湿度発生装置3によって湿度が調整された空気が結露防止用保温管4を通って供給口111から恒温槽11の内部に供給される。
【0022】
図4は、実施の形態に係る計測治具の一例を示す図である。図3および図4に示すように、吊り下げ治具15は恒温槽11の内部に位置する端に、水平に支持される2つの管を備える。保持部16は、直線状に延びる基部163と、基部163から直交して延びる4本の針部162と、基部163から針部162と反対側に延びる2本の梁161とで構成される。なお、針部162および梁161は、2以上であればよい。また、吊り下げ治具15の管は、梁161と同じ数であればよい。
【0023】
あらかじめ試料を針部162に貫通させて固定し、保持部16の梁161を吊り下げ治具15の管に挿入することで、吊り下げ治具15に対する1回の動作で試料を恒温槽11の内部に設置することができる。これにより、ユーザが恒温槽11の内部に試料を設置する動作によって発生する計量誤差を低減することができる。計測治具は、計量誤差をさらに低減するために、導電性、非磁性かつ非吸湿性の材料で構成されるとよい。なお、計測治具の形状は、これに限らず、恒温槽11の内壁に接触せず、試料を恒温槽11の内壁に接触しないように吊り下げることが可能な形状であればよい。
【0024】
図5は、実施の形態に係る試料を固定した保持部の一例を示す上面図である。試料8が布状である場合、試料8同士の間隔が空くようにひだ状に固定すると、試料8同士が接触せずに、最大量の試料8を恒温槽11の内部に設置することができる。これにより試料8が空気に触れる表面積が大きくなり、吸放湿量の変化を計測しやすくなる。
【0025】
図6は、実施の形態に係る被覆箱を設けた場合と設けない場合の計測結果を示すグラフである。図6は、被覆箱13を設けて、恒温槽11内の空気が天秤12の方に上昇するのを防ぎ、結露を防止する対策をとった場合の計測結果と、被覆箱13を設けずこのような対策をとらない場合の計測結果とを示すグラフである。このグラフは、恒温槽11の内部に吊り下げ治具15および保持部16のみを天秤から吊り下げ、試料を設置していない状態での湿度の変化による変動質量を示しており、縦軸が変動質量(g)であって、横軸が経過時間(分)である。
【0026】
被覆箱13を設けた場合では、恒温槽11の内部に試料がないため、湿度が上昇しても計測される質量はほぼ変動しない。しかし、被覆箱13を設けない場合では、図に示すように、結露による計量誤差と、恒温槽11内の空気が天秤12の方に上昇することによる計量誤差がある。したがって、被覆箱13を設けて恒温槽11内の空気が天秤12の方に上昇するのを防ぎ、結露を防止する対策をとらなければ、吸放湿量の変化を計測することはできない。図6は、湿度発生装置3に株式会社第一科学製の精密湿度発生装置を用いた場合の計測結果である。以下、図7図9についても同様である。
【0027】
図7は、実施の形態に係る湿度依存質量測定装置によって計測した吸放湿量の湿度変化に対する追随性および同一測定内での再現性を示すグラフである。図7は、絹、毛、綿、ナイロン、キュプラ、ポリエステルおよびアクリルといった主要な繊維試料の吸放湿量の計測結果を示す図である。このグラフは、恒温槽11の内部に吊り下げ治具15および保持部16を用いて試料を天秤12から吊り下げた状態での湿度の変化による変動質量を示しており、縦軸が絶乾時の試料質量に対する変動質量すなわち吸放湿量(mg/g)であって、横軸が経過時間(分)である。
【0028】
図7に示すように、恒温槽11の内部の絶対湿度を13.5g/mと30.5g/mとに切り替えると、湿度の変化に伴って吸放湿量も変化する。このように、湿度依存質量測定装置1の吸放湿量の計測結果には湿度変化に対する追随性がある。また、図7に示すように、恒温槽11の内部の絶対湿度を13.5g/mと30.5g/mとに切り替えると、各種繊維試料の吸放湿量は、30分おきに同じ変化をする。このように、湿度依存質量測定装置1の吸放湿量の計測結果には同一測定内において再現性がある。
【0029】
図8は、実施の形態に係る湿度依存質量測定装置によって計測した吸放湿量の繰り返し再現性を示すグラフである。図8は、絹、毛、綿、ナイロン、キュプラ、ポリエステルおよびアクリルといった主要な繊維試料の吸放湿量の1回目と2回目の計測結果を示す図である。図8に示すように、1回目と2回目の計測結果はほぼ同じである。このように、湿度依存質量測定装置1の吸放湿量の計測結果には繰り返し再現性がある。
【0030】
図9は、実施の形態に係る吸湿速度および放湿速度の時間変化を示す表である。図9は、図7に示す繊維試料の吸放湿量の計測結果から算出した吸湿速度および放湿速度の時間変化を示す表である。このように、湿度依存質量測定装置1によれば、試料の吸湿速度および放湿速度を得ることができる。
【0031】
本実施の形態に係る湿度依存質量測定装置1によれば、雰囲気の湿度に従って質量が変化する試料の質量を、試料の吸湿および放湿の速さを分析できるように測定することが可能になる。これにより、衣料着用時の快適性において重要な因子である吸湿速度または放湿速度を計測可能になる。また、実生活では短時間で温湿度が変化するので、より実生活の環境に近い状態で、吸放湿量を計測することができる。
【0032】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態および変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0033】
1 湿度依存質量測定装置
2 ドライヤー
3 湿度発生装置
4 結露防止用保温管
5 恒温器
8 試料
11 恒温槽
12 天秤
13 被覆箱
14 乾燥空気供給装置
15 吊り下げ治具
16 保持部
111 供給口
161 梁
162 針部
163 基部
【要約】
湿度依存質量測定装置(1)は、内部に試料を収容しうる空間が形成され、かつ、天井に内部の空間と外部とを通じる貫通孔が形成され、内部の雰囲気が定めた温湿度に保たれる恒温槽(11)と、恒温槽(11)の上に支持される天秤(12)と、天秤(12)の計量皿支持部から吊り下げられて恒温槽(11)の貫通孔にその内周面に接触せずに挿通され、恒温槽(11)の内部で試料を保持する計測治具と、側面に空気の流入口と流出口が形成され、計測治具の恒温槽(11)と天秤(12)との間の部分を、計測治具が計量皿支持部から吊り下げられた状態で接触せずにその内部に収容する被覆箱(13)と、流入口から被覆箱(13)に規定の湿度以下の乾燥空気を流入させる乾燥空気供給装置(14)と、で構成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9