【文献】
Krzysztof Kacperski,Three-Gamma Annihilations as a New Modality in PET,Nuclear Science Symposium Conference Record,2004年,Vol. 6,Pages 3752 - 3756
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガンマ線に由来する光を計数する複数の検出器モジュールを有する検出器の計数情報として、ガンマ線の検出位置とエネルギーと検出時間とを出力する計数情報出力ステップと、
対消滅現象により放出された3つ以上の所定数のガンマ線を略同時に計数した前記所定数の計数情報を、エネルギーの値の総和が対消滅現象によって発生するエネルギーの総和と略等しくなることを条件に探索し、探索した前記所定数の計数情報の組み合わせを第1同時計数情報として生成し、更に、対消滅現象により放出された2つのガンマ線を略同時に計数した2つの計数情報を探索し、探索した2つの計数情報の組み合わせを第2同時計数情報として生成する同時計数情報生成ステップと、
前記第1同時計数情報を構成する各計数情報の検出位置から特定される対消滅現象の発生箇所に基づいて、第1画像を生成し、更に、前記第2同時計数情報を再構成処理することで第2画像を生成する画像生成ステップと、
前記第1画像と前記第2画像とを表示部に並列表示させる、又は、前記第1画像と前記第2画像とを互いの色調を変化させたうえで重畳した重畳画像を前記表示部に表示させる制御ステップと
を含んだことを特徴する陽電子放射断層撮影方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、陽電子放射断層撮影(PET:Positron Emission computed Tomography)装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、陽電子放射断層撮影装置を、PET装置と省略して記載する。
【0010】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るPET装置の構成例を説明するための図である。
図1に示すように、本実施形態に係るPET装置は、架台装置10及びコンソール装置20を有する。
【0011】
架台装置10は、被検体Pに投与され、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた陽電子放出核種により放出されるガンマ線を所定のモニタリング期間において計数する装置である。
図1に示すように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、検出器モジュール14と、FE(Front End)回路15と、計数情報収集部16とを有する。なお、架台装置10は、
図1に示すように、撮影口となる空洞を有する。
【0012】
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23の制御のもと、寝台12を移動させることにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0013】
検出器モジュール14は、被検体Pから放出されるガンマ線を検出するフォトンカウンティング(Photon Counting)方式の検出器である。例えば、本実施形態に係る架台装置10は、
図1に示すように、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置された複数の検出器モジュール14を有する検出器を備える。
図2は、本実施形態に係る検出器モジュールの構成例を説明するための図である。
【0014】
例えば、検出器モジュール14は、
図2に示すように、シンチレータ141と、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)142と、ライトガイド143とを有するアンガー型の検出器モジュールである。
【0015】
シンチレータ141は、被検体Pから放出されて入射したガンマ線を可視光に変換するNaIやLYSO、BGO等の結晶である。検出器モジュール14では、
図2に示すように、複数のシンチレータ141が、2次元に配列されている。また、光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力された可視光を増倍して電気信号に変換する装置であり、
図2に示すように、ライトガイド143を介して稠密に複数個配置されている。ライトガイド143は、シンチレータ141から出力された可視光を光電子増倍管142に伝達するために用いられ、例えば、メチルメタクリレート(MMA)のように光透過性に優れたプラスチック素材等からなる。
【0016】
なお、光電子増倍管142は、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、および電子の流れ出し口である陽極から成っている。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常600ボルト以上の電圧が印加される。
【0017】
このように、検出器モジュール14は、ガンマ線をシンチレータ141により可視光に変換し、変換した可視光を光電子増倍管142により電気信号に変換することで、被検体Pから放出されたガンマ線を計数する。
【0018】
図1に示すFE回路15は、ガンマ線に由来する光を計数する複数の検出器モジュール14それぞれが有する複数の光電子増倍管142それぞれの後段に接続され、計数情報収集部16の前段(Front End)に接続される。FE回路15は、複数の検出器モジュール14を有する検出器の計数情報として、ガンマ線の検出位置とエネルギーと検出時間とを出力する。すなわち、FE回路15は、計数情報出力部として機能する。例えば、FE回路15は、各光電子増倍管142が出力した電気信号から、以下の計測処理を行なってガンマ線の検出位置とエネルギーと検出時間との計測データを生成し、かかる計測データを計数情報として計数情報収集部16に出力する。
図3〜
図5は、本実施形態に係るFE回路の処理例を説明するための図である。
【0019】
FE回路15は、各光電子増倍管142が出力した電気信号のアナログ波形データに対して波形整形処理を行なうことで、検出(計数)されたガンマ線のエネルギーを計測する。例えば、FE回路15は、
図3に示すように、各光電子増倍管142が出力した電気信号のアナログ波形に対して演算処理(積分処理および微分処理)を行なうことで、波高がエネルギーとなるデータを生成する。かかるデータを用いて、FE回路15は、可視光に変換されたガンマ線のエネルギー(E)を計測する。
【0020】
また、FE回路15は、各光電子増倍管142が出力した電気信号のアナログ波形データから、ガンマ線が検出された時間(検出時間)を計測する。例えば、FE回路15は、
図4に示すように、アナログ波形データにおいて、予め設定された電圧値の閾値(TH)となった時点をガンマ線の検出時間(T)として計測する。例えば、FE回路15は、検出時間(T)を10
−12秒(psec)単位の精度にて計測する。ここで、検出時間(T)は、絶対時間(時刻)である場合であってもよいし、PET画像の撮影開始時点からの相対時間であっても良い。
【0021】
また、FE回路15は、例えば、アンガー型位置計算処理により、ガンマ線の入射位置を弁別する。具体的には、FE回路15は、シンチレータ141から出力された複数の可視光を略同じタイミングで電気信号に変換出力した光電子増倍管142の位置と、これら各電気信号の強度に対応するガンマ線のエネルギーとから重心の位置を演算する。そして、FE回路15は、演算結果として得られた重心の位置からガンマ線が入射したシンチレータの位置を示すシンチレータ番号(P)を決定する。なお、光電子増倍管142が位置検出型光電子増倍管である場合、検出位置の計測データは、光電子増倍管142から出力される。
【0022】
そして、FE回路15は、上記した計測処理により生成した計測データを検出器の計数情報として、計数情報収集部16に出力する。例えば、FE回路15は、
図5に示すように、検出器モジュール14を一意に特定するための「モジュールID」に対応付けた『「P:シンチレータ番号」、「E:エネルギー」および「T:検出時間」』を計数情報として、計数情報収集部16に出力する。
【0023】
図1に示す計数情報収集部16は、FE回路15が出力した計測情報を収集し、収集した計数情報を、コンソール装置20に送信する。
【0024】
図1に示すコンソール装置20は、操作者によるPET装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された計数情報からPET画像を生成する装置である。
【0025】
コンソール装置20は、
図1に示すように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、計数情報記憶部24と、同時計数情報生成部25と、画像生成部26と、データ記憶部27と、制御部28とを有し、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0026】
入力部21は、PET装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボードなどを有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、制御部28に転送する。例えば、入力部21は、操作者からPET画像を生成する際の条件等を受け付ける。
【0027】
表示部22は、操作者によって参照されるモニタであり、制御部28による制御のもと、PET画像を表示したり、入力部21を介して操作者から各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0028】
寝台制御部23は、寝台駆動部13を制御することで、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0029】
計数情報記憶部24は、計数情報収集部16が収集した計数情報を記憶する。
図6は、本実施形態に係る計数情報記憶部の一例を説明するための図である。
【0030】
例えば、計数情報記憶部24は、
図6に示すように、「モジュールID:D1」の検出器モジュール14による計数結果から収集された計数情報として、「P:P11、E:E11、T:T11」や「P:P12、E:E12、T:T12」等を記憶する。なお、図中の「P」、「E」及び「T」は、それぞれ「シンチレータ番号」、「エネルギー」および「検出時間」を示す。
【0031】
また、計数情報記憶部24は、
図6に示すように、「モジュールID:D2」や「モジュールID:D3」の検出器モジュール14による計数結果から収集された計数情報についても同様に記憶する。
【0032】
図1に示す同時計数情報生成部25は、計数情報記憶部24が記憶する計数情報から、対消滅現象により放出された複数のガンマ線を略同時に計数した複数の計数情報を探索する。そして、同時計数情報生成部25は、探索した複数の計数情報の組み合わせを同時計数情報として生成する。
【0033】
ここで、改めて、PET装置を用いたPET検査について説明する。PET検査では、陽電子放出核種で標識された薬剤が被検体Pに投与される。例えば、癌検診用のPET検査では、陽電子放出核種である「18F(フッ素)」で標識された18F標識デオキシグルコースが被検体Pに投与される。かかる薬剤は、被検体Pの腫瘍部位等、特定の部位に集積し、陽電子を放出する。陽電子は、周囲の電子と結合して対消滅し、対消滅により、多光子(複数のガンマ線)が放出される。対消滅により発生するエネルギーの総和が「1022keV」であることから、対消滅により放出される多光子のエネルギーの総和は「1022keV」となる。また、運動量保存の法則から、多光子それぞれの運動ベクトルの和は、ゼロベクトルとなる。
【0034】
従来では、対消滅現象により、511keVのエネルギーを有する2光子(2つのガンマ線)が略反対方向に放出されることを利用して、薬剤を取り込んだ被検体の組織分布を示すPET画像を再構成している。2光子放出では、個々の光子(ガンマ線)のエネルギーの値は、それぞれ「511keV」であり、運動量保存の法則から、2つの光子の運動ベクトル間の角度は、180度となる。
図7は、2光子同時計数情報を説明するための図である。従来では、
図7の(A)に示すように、2光子を略同時に検出した2つの検出位置(シンチレータ番号)を結ぶ線上に対消滅が生じた箇所が存在すると仮定して、PET画像を再構成していた。なお、2つの検出位置を結ぶ線は、LOR(Line Of Response)と呼ばれる。
【0035】
例えば、2光子の同時計数情報を生成する場合、同時計数情報生成部25は、操作者により設定された、又は、初期設定された条件(2光子同時計数情報生成条件)により、2光子を略同時に計数した2つの計数情報を探索する。そして、同時計数情報生成部25は、探索した2つの計数情報の組み合わせを2光子の同時計数情報として生成する。一例を挙げれば、2光子同時計数情報生成条件として、時間ウィンドウ幅「t」が設定される。また、2光子同時計数情報生成条件として、更に、エネルギーウィンドウ幅「(511−e1)≦E≦(511+e2)」が設定される場合もある。なお、「t」、「e1」及び「e2」は、例えば、FE回路15の時間計測及びエネルギー計測にかかる計測精度に応じて設定される。
【0036】
例えば、同時計数情報生成部25は、
図7の(B)に示すように、『「|Tn1−Tm2|≦t」、「(511−e1)≦En1≦(511+e2)」、「(511−e1)≦Em2≦(511+e2)」』となる2つの計数情報を探索する。これにより、同時計数情報生成部25は、
図7の(B)に示すように、「モジュールID:n」の検出器モジュール14由来の計数情報「P:Pn1、E:En1、T:Tn1」と、「モジュールID:m」の検出器モジュール14由来の計数情報「P:Pm2、E:Em2、T:Tm2」との組み合わせを、2光子を略同時に検出した2光子同時計数情報として生成する。
【0037】
2光子同時計数情報を生成することで、対消滅が生じた箇所は、例えば、「Pn1」と「Pm2」とを結ぶLOR上に存在すると特定される。しかし、従来では、対消滅が生じた箇所をLOR上で一意的に決定できないことが、PET画像の分解能劣化の要因となっていた。
【0038】
ここで、対消滅現象により放出されるガンマ線の数は、2つだけでなく、3つ以上の場合もあることが知られている。例えば、2光子(2つのガンマ線)が放出される確率の約「1/370」の確率で、対消滅現象により3光子(3つのガンマ線)放出が発生することが知られている。
【0039】
そこで、本実施形態に係る同時計数情報生成部25は、対消滅現象により放出された3つ以上の所定数のガンマ線を略同時に計数した所定数の計数情報を、エネルギーの値の総和が対消滅現象によって発生するエネルギーの総和と略等しくなることを条件に探索する。そして、本実施形態に係る同時計数情報生成部25は、探索した所定数の計数情報の組み合わせを第1同時計数情報として生成する。具体的には、本実施形態に係る同時計数情報生成部25は、所定数を「3」とし、3光子同時計数情報を第1同時計数情報として生成する。
図8は、3光子同時計数情報を説明するための図である。
【0040】
上述したように、対消滅により放出される多光子のエネルギーの総和は「1022keV」となる。すなわち、
図8に示すように、対消滅現象により同時に放出された3光子を略同時に検出した3つの計数情報のエネルギーの値の総和は、「1022keV」に略等しくなる。
【0041】
3光子同時計数情報を生成する場合、同時計数情報生成部25は、操作者により、又は、初期設定された3光子同時計数情報生成条件により、3光子を略同時に計数した3つの計数情報を探索する。そして、同時計数情報生成部25は、探索した3つの計数情報の組み合わせを3光子同時計数情報として生成する。
【0042】
一例を挙げれば、3光子同時計数情報生成条件は、2光子同時計数情報生成条件と同様に、時間ウィンドウ幅「t」が設定され、更に、エネルギーウィンドウ幅として「3つのエネルギーの値の総和が、(1022−e3)以上、かつ、(1022+e4)以下」が設定される。
【0043】
なお、「t」、「e3」及び「e4」は、例えば、FE回路15の時間計測及びエネルギー計測にかかる計測精度に応じて設定される。更に、「e3」及び「e4」は、同時に放出された2光子のうちの一方の計数情報を、同時に放出された3光子の3つの計数情報の1つとして、3光子同時計数情報に組み込まないように、設定される値である。
【0044】
例えば、同時計数情報生成部25は、
図8の(B)に示すように、『「|Tk3−Tj4|≦t」、「|Tk3−Tw4|≦t」、「|Tj4−Tw4|≦t」』、かつ、「(1022−e3)≦(Ek3+Ej4+Ew4)≦(1022+e4)」となる3つの計数情報を探索する。これにより、同時計数情報生成部25は、
図8の(B)に示すように、「モジュールID:k」の検出器モジュール14由来の計数情報「P:Pk3、E:Ek3、T:Tk3」と、「モジュールID:j」の検出器モジュール14由来の計数情報「P:Pj4、E:Ej4、T:Tj4」と、「モジュールID:w」の検出器モジュール14由来の計数情報「P:Pw4、E:Ew4、T:Tw4」とを3光子を同時に検出した3光子同時計数情報として生成する。
【0045】
本実施形態に係る同時計数情報生成部25は、
図8の(B)で一例として説明した3光子同時計数情報生成条件を用いた探索処理により、計数情報記憶部24が記憶する計数情報から、第1同時計数情報として3つの計数情報を組み合わせた3光子同時計数情報を生成する。
【0046】
更に、本実施形態に係る同時計数情報生成部25は、
図7の(B)で一例として説明した2光子同時計数情報生成条件を用いた探索処理により、計数情報記憶部24が記憶する計数情報から、第2同時計数情報として、従来と同様、2光子同時計数情報を生成する。
【0047】
そして、同時計数情報生成部25は、第1同時計数情報及び第2同時計数情報を、
図1に示すデータ記憶部27の同時計数情報データ27aに格納する。例えば、同時計数情報生成部25は、第1同時計数情報に3光子同時計数情報であることを示す付帯情報を付与し、第2同時計数情報に2光子同時計数情報であることを示す付帯情報を付与して、同時計数情報データ27aに格納する。換言すると、同時計数情報生成部25は、第2同時計数情報に、ガンマ線の投影データ(サイノグラム)であることを示す付帯情報を付与して、同時計数情報データ27aに格納する。
【0048】
なお、同一の検出器モジュール14に同時に入射した複数のガンマ線に由来する複数の可視光の出力は、通常、FE回路15にて計測対象から除外される。従って、本実施形態に係る同時計数情報生成部25が生成する第1同時計数情報(3光子同時計数情報)は、異なる3つの検出器モジュール14に同時に入射した3つのガンマ線を計数した3つの計数情報を組み合わせたデータとなる。ただし、3光子が放出される角度がランダムであることから、3光子放出の際に、2つの光子、又は、3つの光子が同一の検出器モジュール14に入射する確率は低い。このため、本実施形態で生成される第1同時計数情報は、3光子放出現象を略網羅したデータと見なすことができる。
【0049】
図1に示す画像生成部26は、同時計数情報データ27aに格納された同時計数情報を用いて、PET画像を生成する。具体的には、画像生成部26は、第1同時計数情報を構成する各計数情報の検出位置から特定される対消滅現象の発生箇所に基づいて、3光子のPET画像を生成する。以下、3光子同時計数情報である第1同時計数情報に基づく3光子のPET画像を「第1画像」、又は、「3光子画像」と記載する。
図9は、本実施形態に係る画像生成部が行なう対消滅現象発生箇所の特定処理を説明するための図である。
【0050】
上述したように、運動量保存の法則から、多光子それぞれの運動ベクトルの和は、ゼロベクトルとなる。従って、3光子以上の複数光子の検出位置が特定されれば、対消滅現象の発生箇所は、一意に特定することができる。例えば、
図9に示すように、「Pk3」の位置を点Aとし、「Pj4」の位置を点Bとし、「Pw4」の位置を点Cとし、対消滅現象の発生箇所を点Gとする。画像生成部26は、「ベクトルGAの単位ベクトルGA’」と「ベクトルGBの単位ベクトルGB’」と「ベクトルGCの単位ベクトルGC’」との和が「ゼロベクトル」となる位置を演算処理により求めることで、対消滅現象の発生箇所「G」を特定する。換言すると、「G」は、「三角形A’B’C’」の重心となる。
【0051】
画像生成部26は、上記の重心演算を行なうことで、各第1同時計数情報で発生箇所を特定する。そして、画像生成部26は、特定頻度に応じた画素値を、特定した各発生箇所に対応する画素に割り振ることで、第1画像を生成する。
【0052】
更に、画像生成部26は、第2同時計数情報を再構成処理することでPET画像を生成する。以下、2光子同時計数情報である第2同時計数情報に基づく2光子のPET画像を「第2画像」、又は、「2光子画像」と記載する。
【0053】
具体的には、画像生成部26は、ガンマ線の投影データ(サイノグラム)である第2同時計数情報を用いた逐次近似法により、第2画像を再構成する。例えば、画像生成部26は、逐次近似法として、MLEM(Maximum Likelihood Expectation Maximization)法や、OSEM(Ordered Subset MLEM)法を用いて第2画像を再構成する。
【0054】
そして、画像生成部26は、第1画像(3光子画像)及び第2画像(2光子画像)を、
図1に示すデータ記憶部27の画像データ27bに格納する。
【0055】
図1に示す制御部28は、架台装置10およびコンソール装置20の動作を制御することによって、PET装置の全体制御を行う。具体的には、制御部28は、寝台12の移動や、計数情報収集部16における計数情報の収集処理を制御する。また、制御部28は、同時計数情報生成部25における同時計数情報生成処理や画像生成部26における画像生成処理を制御する。また、制御部28は、画像データ27bに格納された画像データを、表示部22に表示するように制御する。
図10は、本実施形態に係る制御部の表示制御の具体例を説明するための図である。
【0056】
具体的には、制御部28は、
図10の(A)に示すように、第1画像である3光子画像と第2画像である2光子画像とを表示部22に並列表示させる。
【0057】
或いは、制御部28は、第1画像と第2画像とを互いの色調を変化させたうえで重畳した重畳画像を表示部22に表示させる。例えば、画像生成部26は、第1画像である3光子画像をグレースケールから赤を基調としたカラースケールの画像に変換する。そして、画像生成部26は、変換後の3光子画像とグレースケールの2光子画像とを重畳した重畳画像を生成する。これにより、表示部22は、
図10の(B)に示す重畳画像を表示する。なお、重畳画像を表示する際、2光子画像をグレースケールからカラースケールの画像に変換し、変換後の2光子画像とグレースケールの3光子画像とを重畳した重畳画像を表示しても良い。
【0058】
上述したように、対消滅現象により3つのガンマ線が放出される確率は、対消滅現象により2つのガンマ線が放出される確率の「1/370」である。すなわち、第1画像は、薬剤が多く集積したことで対消滅現象の発生頻度が高くなっている領域が、点の集合として高分解能で描出されたPET画像となる。一方、第2画像は、対消滅現象により高い確率で発生する2光子放出を検出することで形成されるLORを用いることで、低分解能であるものの、消滅現象が発生した可能性のある領域を網羅したPET画像となる。
【0059】
操作者は、例えば、
図10の(A)に示す2光子画像と3光子画像とを比較参照したり、
図10の(B)に示す重畳画像を参照したりすることで、画像診断を効率的に行なうことができる。すなわち、操作者は、2光子画像により、薬剤が集積した組織や組織内の分布を大まかに把握することができる。そして、操作者は、更に、3光子画像により、薬剤が集積した組織内の位置を細かい粒度で特定することができる。例えば、
図10の(B)に示す重畳画像を参照することで、操作者は、2光子画像で描出された集積領域の中心箇所(高集積箇所)が、実際には、数mm(ミリメートル)左側にずれていることを、把握することができる。また、重畳画像を参照することで、操作者は、例えば、2光子画像で描出された集積領域が、実際には、複数の高集積箇所により形成された領域であることを把握することができる。
【0060】
なお、本実施形態は、第1画像、すなわち、3光子画像のみを生成表示する場合であっても適用可能である。
【0061】
次に、
図11を用いて、本実施形態に係るPET装置の処理について説明する。
図11は、本実施形態に係るPET装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、第1画像と第2画像との重畳表示が設定されている場合について説明する。
【0062】
図11に示すように、本実施形態に係るPET装置は、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させたのちに、操作者から入力部21を介してPET画像の撮影要求を受け付たか否かを判定する(ステップS101)。ここで、撮影要求を受け付けない場合(ステップS101No)、本実施形態に係るPET装置は、撮影要求を受け付けるまで待機する。
【0063】
一方、撮影要求を受け付けた場合(ステップS101Yes)、計数情報収集部16は、FE回路15から出力された計数情報を収集する(ステップS102)。すなわち、FE回路15は、各検出器モジュール14の所定のモニタリング期間における計数結果に基づいて、ガンマ線の検出位置、エネルギー及び検出時間を計測した計数情報を生成する。そして、計数情報収集部16は、FE回路15から出力された計数情報を、例えば、複数の検出器モジュール14ごとに収集する。
【0064】
そして、計数情報収集部16は、収集した計数情報をコンソール装置20の計数情報記憶部24に格納し(ステップS103)、同時計数情報生成部25は、2光子同時計数情報生成条件及び3光子同時計数情報生成条件に基づいて、2光子同時計数情報(第2同時計数情報)及び3光子同時計数情報(第1同時計数情報)を生成する(ステップS104)。
【0065】
その後、画像生成部26は、2光子画像(第2画像)及び3光子画像(第1画像)を生成する(ステップS105)。すなわち、画像生成部26は、2光子同時計数情報を再構成処理することで2光子画像を生成する。また、画像生成部26は、3光子同時計数情報を構成する3つの計数情報の検出位置から対消滅現象の発生箇所を特定することで3光子画像を生成する。
【0066】
続いて、制御部28の制御により、画像生成部26は、2光子画像と3光子画像との重畳画像を生成する(ステップS106)。そして、制御部28の制御により、表示部22は、重畳画像を表示し(ステップS107)、処理を終了する。
【0067】
上述してきたように、本実施形態では、エネルギーの値の総和を探索条件として、3光子以上の多光子を略同時に検出した位置を特定し、特定した3以上の検出位置から、対消滅現象の発生箇所を一意に特定する。そして、本実施形態では、特定した対消滅現象の発生箇所を用いて、PET画像である第1画像を生成する。すなわち、第1画像は、対消滅現象の発生頻度が高くなっている領域が、点の集合として高分解能で描出されたPET画像となる。すなわち、本実施形態では、対消滅現象の発生箇所を1画素又は数画素の範囲で特定する。従って、本実施形態では、画像分解能を向上させることができる。また、例えば、対消滅現象により発生した3光子放出の検出効率を高めることができれば、画像出力の時間短縮を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態では、低分解能であるものの、消滅現象が発生した可能性のある領域を網羅した従来のPET画像である第2画像を、第1画像と並列表示、或いは、重畳表示させる。すなわち、医師である操作者は、例えば、
図10の(A)に示す2光子画像と3光子画像とを比較参照したり、
図10の(B)に示す重畳画像を参照したりすることで、薬剤が集積された組織内の分布を高精度で特定することができる。従って、本実施形態では、PET検査における画像診断を効率的に支援することができる。
【0069】
なお、第2画像(2光子画像)は、TOF(Time Of Flight)により生成されたPET画像である場合でも良い。TOFの場合も、LOR上で2光子放出の箇所を一意に特定できるが、特定箇所の精度は、検出時間の計測精度に大きく依存する。また、TOFで特定されるLOR上の箇所は、対消滅現象の発生個所である確率が高い箇所である。一方、本実施形態で行なわれる3つ以上の多光子放出の検出位置の特定処理は、TOFで要求される時間計測精度より低い精度でも実行可能である。また、本実施形態では、対消滅現象の発生箇所を一意に特定できるので、本実施形態で特定される対消滅現象の発生箇所の分解能は、TOFと比較しても、高い。
【0070】
なお、本実施形態では、所定数を「3」とし、対消滅現象により放出される3つのガンマ線を対象として第1同時計数情報を生成する場合について説明した。しかし、本実施形態は、対消滅現象により放出される4つ以上のガンマ線を対象とする場合であっても適用可能である。だたし、対消滅現象の発生箇所の特定は、ガンマ線の検出位置を3つ以上特定することで可能である。また、多光子の発生確率は、発生する光子の数が1つ増えるごとに、例えば、2桁ずつ減少する。従って、本実施形態は、所定数を3とすることが望ましい。
【0071】
なお、上記では、コンソール装置20に計数情報を蓄積し、コンソール装置20内で、例えば、ソフトウェア処理により、同時計数情報(第1及び第2同時計数情報)を生成する場合について説明した。しかし、本実施形態は、架台装置10において、ハードウェア処理により、同時計数情報(第1及び第2同時計数情報)を生成し、生成した同時計数情報をコンソール装置20に送信する場合であっても良い。
【0072】
ただし、本実施形態に係るPET装置では、上記のように、コンソール装置20に計数情報を蓄積しておくことで、PET画像(第1画像及び第2画像)の生成後においても、PET画像の撮影中に収集された計数情報を保持することができる。かかる構成とすることで、例えば、第1同時計数情報生成条件や第2同時計数情報生成条件を変更して、PET画像(第1画像や第2画像)を再度生成することができる。
【0073】
また、第1同時計数情報の探索処理には、従来の同時計数情報(第2同時計数情報)の探索処理と比較して、3つ以上の組み合わせで探索を行なう必要があるため、処理負荷が増大する。すなわち、第1同時計数情報の生成は、PET検査終了の時点で完了しない場合も想定される。このことから、PET検査後でも第1同時計数情報を生成可能なように、コンソール装置20内で計数情報を保持する本実施形態の構成とすることが望ましい。
【0074】
なお、上記では、2光子画像を用いた画像診断において3光子画像を補助的に用いるために、2光子画像と3光子画像とを並列表示或いは重畳表示する場合について説明した。しかし、本実施形態は、3光子画像の情報に基づいて、2光子画像を修正した画像を生成表示する場合であっても良い。かかる場合、例えば、制御部28の制御により、画像生成部26は、2光子画像で陽性(薬剤集積)とされた領域を、3光子画像で陽性とされた箇所に置換した修正画像を生成する。そして、制御部28の制御により、表示部22は、修正画像を表示する。
【0075】
或いは、本実施形態は、投影データである2光子同時計数情報の再構成処理に、3光子同時計数情報に基づく情報を反映させる場合であっても良い。かかる場合、例えば、制御部28の制御により、画像生成部26は、3光子同時計数情報から特定した箇所「G」を通るLORを、2光子同時計数情報から特定する。そして、制御部28の制御により、画像生成部26は、逐次近似法を行う際に、特定したLORについては、「G」へ投影及び逆投影する重み付けを高くする処理を行なうことで、第2画像の再構成を行ない、表示部22は、かかる第2画像を表示する。
【0076】
なお、本実施形態で説明した陽電子放射断層撮影方法は、計数情報記憶部24からPET検査ごとの計数情報が転送されたパーソナルコンピュータやワークステーション等で実行される場合であっても良い。すなわち、本実施形態で説明した陽電子放射断層撮影方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。
【0077】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、画像分解能を向上させることができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。