(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記物理量は、前記インク室に選択的に供給されるインクの密度の値を該インクの粘度の値で除した密度粘度除算値であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置のインク液滴吐出方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1(請求項中のインクジェット記録装置に相当)は、給紙部Aと、プリンタ部Bと、乾燥部Cと、排紙部Dと、反転部Eとを備えている。
【0023】
給紙部Aは、記録紙PAを給紙するものである。給紙部Aは、
図1の太線で示す搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部Aは、複数の給紙台A1と、複数対の給紙ローラA2とを備えている。給紙ローラA2は、何れかの給紙台A1からこれに続く給紙経路RSにより記録紙PAを搬送してプリンタ部Bへと給紙する。
【0024】
プリンタ部Bは、記録紙PAを搬送しつつ、記録紙PAに画像を印刷する。プリンタ部Bは、給紙部Aの下流側に配置されている。プリンタ部Bは、レジストローラB1と、ベルト搬送部B2と、CMYKの各色に対応した5個のインク循環式印刷ユニットB3(B3a〜B3e)とを備えている。各インク循環式印刷ユニットB3(B3a〜B3e)は、そのインク循環経路中に、後述するインクジェットヘッド5(
図5参照)をそれぞれ有している。
【0025】
レジストローラB1は、給紙部Aまたは反転部Eから搬送される記録紙PAをベルト搬送部B2へと搬送する。ベルト搬送部B2は、レジストローラB1から搬送された記録紙PAを吸引しつつ、乾燥部Cへと搬送する。
【0026】
乾燥部Cは、印刷済みの記録紙PAを乾燥しつつ搬送する。乾燥部Cは、プリンタ部Bの下流側に配置されている。乾燥部Cは、乾燥炉C1と、3対の搬送ローラC2と、加熱送風部C3とを備えている。
【0027】
乾燥炉C1は、記録紙PAをガイドしつつ、加熱送風部C3から送られる加熱気体を貯溜するものである。乾燥炉C1の内部には、記録紙PAの搬送経路のうち
図1の実線及び点線で示す通常経路RCの一部を構成する搬送空間(図示略)が形成されている。搬送ローラC2は、乾燥炉C1の内部の記録紙PAを搬送する。
【0028】
排紙部Dは、印刷済みの記録紙PAを排紙して、積層する。排紙部Dは、乾燥部Cの下流側に配置されている。排紙部Dは、通常経路RCの最も下流側に配置されている。排紙部Dは、切替機構D1と、2対の排紙ローラD2と、排紙台D3とを備えている。
【0029】
切替機構D1は、通常経路RCと、
図1の一点鎖線で示す両面印刷用の反転経路RRとの間で記録紙PAの搬送経路を切り替るものである。排紙ローラD2は、記録紙PAを排紙台D3へと排紙するものである。
【0030】
反転部Eは、片面が印刷された記録紙PAを反転させてプリンタ部Bへと搬送するものである。反転部Eは、複数対の反転ローラE1と、フリッパE2と、スイッチバック部E3とを備えている。
【0031】
反転ローラE1は、切替機構D1を介して、乾燥部Cから搬送される片面印刷済みの記録紙PAをスイッチバック部E3へと一度搬送する。また、反転ローラE1は、スイッチバック部E3から戻る記録紙PAを、フリッパE2を介して、プリンタ部Bへと搬送する。
【0032】
図2は
図1の各インク循環式印刷ユニットの全体構成を示す説明図である。
図2に示す各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dは、それぞれ、K(ブラック)、C(シアン)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)の各色のインクを用いて記録紙PAに印刷するものである。また、残るインク循環式印刷ユニットB3eは、インク循環式印刷ユニットB3aとはスペックが異なるK(ブラック)のインクを用いて記録紙PAに印刷するものである。
【0033】
図2の各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3eは、上タンク3からインクジェットヘッド5を経て下タンク7に至るインク流路9と、下タンク7から循環ポンプ11を経て上タンク3に至るインク流路13とにより構成される、インク循環経路15を有している。
【0034】
上タンク3は、大気開放弁31を介して大気と連通する空気層33を内部に有している。この空気層33は、循環ポンプ11の作動によりインク循環経路15を循環するインクの圧力に生じる脈動に対する緩衝や、インクジェットヘッド5に設けられるノズルのインクメニスカスの圧力を安定させるためのバッファとして設けられる。また、上タンク3には、内部のインク液面の上限値とその上の限界値とをそれぞれ検出する2つの液面センサ35,37が設けられている。
【0035】
インク流路9の途中には、インク流路9を通過するインクの温度を検出する温度センサ91が設けられている。
【0036】
インクジェットヘッド5は、後述するノズル57(
図5参照)が設けられたブロックを複数有しており、上タンク3よりも下方に配置されている。インクジェットヘッド5の各ノズル57には、上タンク3のインク液面とノズルのインクメニスカスとの水頭差に応じた圧力で、インク流路9を介して上タンク3からインクが供給される。
【0037】
前記下タンク7は、インクジェットヘッド5の下方に配置されており、インクジェットヘッド5から余剰のインクが自重により回収される。この下タンク7は、大気開放弁71を介して大気と連通する空気層73を内部に有している。この空気層73は、インク循環経路15におけるインクの循環停止中に、大気圧によりノズルのインクメニスカスの圧力を安定させるために設けられている。
【0038】
また、下タンク7には、内部のインク液面の下限値を検出する液面センサ77が設けられている。さらに、下タンク7には補給用インク流路19と開閉弁21とを介してインクカートリッジ23が接続されている。各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dのインクカートリッジ23には、プロセスカラーであるK(ブラック)、C(シアン)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)のインクがそれぞれ充填されている。また、インク循環式印刷ユニットB3eのインクカートリッジ23には、K(ブラック)のインクが充填されている。但し、インク循環式印刷ユニットB3a,B3eの各インクカートリッジ23にそれぞれ充填されているK(ブラック)のインクは、異なるスペックのインクである。
【0039】
液面センサ77により下タンク7のインク液面が下限値まで減ったことが検出されると、開閉弁21が適宜開放され、インクカートリッジ23内のインクが、補給用インク流路19を介して下タンク7に適量供給される。
【0040】
循環ポンプ11は、下タンク7のインクをインク流路13を介して上タンク3に還流させる。このインク流路13の途中には温度調整器25が設けられている。この温度調整器25は、循環ポンプ11により下タンク7から上タンク3に還流されるインクの温度を、インクジェットヘッド5においてインクが適切な吐出速度で吐出される適温に調節するものである。そのために温度調整器25は、加熱用のヒータ251と冷却用のファン253及びヒートシンクを有している。
【0041】
そして、K(ブラック)のインクをスペックの異なる別のインクに切り替える場合は、印刷に使用するインクを、インク循環式印刷ユニットB3a,B3eのどちらか一方から他方に変更すればよい。
【0042】
図3は
図2の各インクカートリッジにそれぞれ充填されるインクのスペックを示す説明図である。各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dのインクカートリッジ23には、
図3中の現行インク(油性インク)か水性インクのどちらか一方が充填されている。残るインク循環式印刷ユニットB3eのインクカートリッジ23には、インク循環式印刷ユニットB3aのインクカートリッジ23と同じK(ブラック)の、
図3中の非水系インクが充填されている。
【0043】
ここで、本実施形態の非水系インクは、少なくとも顔料と有機溶剤とを含む非水系インクであって、有機溶剤中に環状カーボネート(C=O結合を有する五員複素環式化合物)を50%重量%以上含み、かつ、インク中のポリマー成分の含有量が前記顔料の20重量%以下としたインクである。
【0044】
また、現行インク(油性インク)は、非水溶性溶剤に顔料を分散させた一般的な油性顔料インクであり、水性インクは、顔料をベースとした媒質に分散させた一般的な水性顔料インクである。
【0045】
図3に示すように、25°Cにおける非水系インクの密度は現行インク及び水性インクのいずれよりも高く、25°Cにおける非水系インクの粘度は現行インク及び水性インクのいずれよりも低い。密度が高い非水性インクは、インク吐出の開始で生じた圧力変動がなかなか減衰せず長い時間残留する傾向にあり、残留振動の影響が非常に大きい(
図3中の「○」)。
【0046】
なお、一般的に、密度が高いインクや粘度が低いインクは、インク吐出の開始で生じた圧力変動がなかなか減衰せず長い時間残留する傾向にあり、残留振動の影響が非常に大きいと言える。
【0047】
残留振動の影響が大きいと、ノズル57からのインクの吐出後に長い時間をかけてインク室56B内のインクの残留振動を減衰させないと、次のインクが適切な圧力で吐出されずに印刷品質を低下させてしまう。言い換えると、次のインクの吐出条件が整うまでの所要時間が長時間化してしまう。
【0048】
一方、25°Cにおいては密度も粘度も低い現行インクは、インク吐出の開始で生じた圧力変動が比較的減衰しやすい傾向にあり、上述した残留振動の影響はほぼ無い(
図3中の「×」)。また、25°Cにおいては粘度が高い水性インクは、より密度が高い非水系インク程ではないものの、インク吐出の開始で生じた圧力変動が減衰しにくい傾向にあり、上述した残留振動の影響がややあることになる(
図3中の「△」)。
【0049】
図4は
図3の非水系インクと現行インクの温度による物性変化特性を示し、(a)は密度の特性変化を示すグラフ、(b)は粘度の特性変化を示すグラフである。
図4(a)に示すように、非水系インクと現行インクのいずれも、密度については温度変化にほとんど関係なくほぼ一定の値を維持する。一方、粘度については、非水系インクと現行インクのいずれも、温度が上昇するに連れて粘度が低下する。特に現行インクについては、非水系インクよりも温度変化に対する粘度変化の度合いが大きい。
【0050】
図5は
図2のインクジェットヘッドの概略構成を一部断面で示す斜視図、
図6は
図5に示すインクジェットヘッドのインク供給部を示す
図5のI−I線断面図、
図7(a)〜(c)は
図5に示すインクジェットヘッドのインク吐出動作時におけるインク室内の状態変化を示す
図5のII−II線断面図である。
図5に示すインクジェットヘッドは、シェアモード型のインクジェットヘッドである。
【0051】
なお、本実施形態において、インク室に関する構成は全インク室で共通であるので、個々のインク室を示す符号のアルファベット等の添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0052】
図5〜
図7に示すように、インクジェットヘッド5には、セラミック等からなる基板52とカバープレート53との間に、2つの圧電部材54a,54b(請求項中の容積変更手段に相当)からなる複数の隔壁54が配置されている。圧電部材54a,54bは、例えば、PZT(PbZrO
3 −PbTiO
3 )等の公知の圧電材料からなり、
図7中の矢印で示すように互いに異なる方向に分極している。
【0053】
図5及び
図6に示すように、基板52、カバープレート53、および隔壁54の先端には、ノズルプレート55が固定されている。これにより、
図7に示すように、基板52、カバープレート53、隔壁54、およびノズルプレート55に囲まれた複数のインク室56が並ぶように形成される。
【0054】
図5及び
図6に示すように、ノズルプレート55には、複数のノズル57が設けられており、インク室56の一端側はノズル57に連通されている。インク室56の他端側は、
図6に示すように、全インク室56に連通するインク流入口58、インク供給口59を経て、インクチューブ60に連通している。
【0055】
インクチューブ60は、
図2に示すように、
図1の各インク循環式印刷ユニットB3(B3a〜B3d)のインク循環経路15のインク流路9に接続されており、インクカートリッジ23a,23bのどちらかから下タンク7に供給されるインクが、インク循環経路15を経て供給される。
【0056】
図7に示すように、インク室56の側面を構成する隔壁54および底面を構成する基板52の表面には、電極(可変手段)61が密着形成されている。インク室56内の電極61は、圧電部材54aの後部側表面まで延びている。各電極61には、この後部側表面において異方導電性フィルム(図示せず)を介してフレキシブルケーブル62が接続されており、このフレキシブルケーブル62を介して電極61に駆動信号による駆動電圧が印加されるようになっている。
【0057】
電極61に駆動電圧が印加されると、隔壁54がせん断変形してインク室56の容積およびインク室56内の圧力を変化させる。これにより、ノズル57からインク室56内のインクが吐出される。
【0058】
図8は
図1のインクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態のインクジェットプリンタ1は、全体制御用の制御ユニット29を有している。この制御ユニット29は、ROM29cに格納されたプログラムをCPU29aがRAM29bの作業領域を使用しながら実行することで、各種の制御処理を実行する。
【0059】
制御ユニット29には、インク循環式印刷ユニットB3a〜B3eのインク流路9に設けた温度センサ91、上タンク3及び下タンク7の各液面センサ35,37,77が接続されている。
【0060】
また、制御ユニット29には、上タンク3及び下タンク7の各大気開放弁31,71、循環ポンプ11、温度調整器25のヒータ251及びファン253、開閉弁21、並びに、各種情報表示用にインクジェットプリンタ1に設けられたディスプレイ101が接続されている。
【0061】
さらに、制御ユニット29には、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3eのインクジェットヘッド5のドライバ103や、ハードディスク等の外部記憶装置105が接続されている。
【0062】
ドライバ103は、フレキシブルケーブル62を介してインクジェットヘッド5の電極61に駆動電圧を印加することにより、隔壁54を変形させてインク室56の容積およびインク室56内の圧力を変化させ、ノズル57からインクを吐出させる吐出駆動を行う。
【0063】
外部記憶装置105は、インクジェットヘッド5を駆動させる電圧の通常波形および残留振動抑制波形の波形データを格納する。通常波形および残留振動抑制波形については後述する。
【0064】
また、外部記憶装置105は、
図2のインクカートリッジ23に充填されたインクの種類(例えば、非水系インク、現行インク(油性インク)、水性インク等)のデータや、K(ブラック)について、各インク循環式印刷ユニットB3a,B3eのインクカートリッジ23のうち、現在印刷に使用しているインクの種類のデータを格納する。各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3eのインクカートリッジ23に充填されているインクの種類のデータは、例えば、インクジェットプリンタ1の不図示の操作パネルから入力設定することができる。また、K(ブラック)について、現在使用中のインクの種類のデータも、操作パネルから入力指定された使用インク種類のデータから得ることができる。
【0065】
さらに、外部記憶装置105は、
図4(a),(b)を参照して先に説明したような、各種類のインク(非水系インク、現行インク(油性インク)、水性インク)の温度による物性変化特性(密度、粘度)を示すテーブルを格納している。
【0066】
制御ユニット29のCPU29aは、温度センサ91の検出結果や、操作パネル(図示せず)等から入力される、各インク循環式印刷ユニットB3a,B3eのインクカートリッジ23のインクのうち、K(ブラック)の印刷に現在使用しているインクの種類のデータ等を用いて、駆動信号の波形として通常波形と残留振動抑制波形とのどちらを使用するかを選択する。そして、CPU29aは、選択した波形の駆動信号をインクジェットヘッド5の電極61に出力するようにドライバ103を制御する。この駆動信号は、インクを1ドロップ吐出させる毎にドライバ103からインク室56Bの電極61Bに出力される。また、CPU29aは、温度調整器25によるインクの調温を制御する。
【0067】
次に、インク吐出の基本的な動作について説明する。なお、以下の説明において、駆動信号中のパルス信号のオンを印加開始、オフを印加終了と言う場合がある。
【0068】
図7(a)〜(c)に示すように、圧電部材54a,54bからなる隔壁54A〜54Dで隔てられた3つのインク室56A〜56Cのうちのインク室56Bからインクを吐出させる場合について説明する。
図9は通常波形の駆動信号とこれにより駆動された
図5のインクジェットヘッドのインク室内におけるインクの圧力変化との関係を示す説明図である。
図9において、実線は駆動信号の波形を示し、破線はインク室内におけるインクの圧力を示す。
【0069】
図7(a)に示す定常状態において、
図8のヘッド駆動部21からインクジェットヘッド5に、
図9の実線で示す駆動信号が供給されると、
図9における時刻t1において、インク室56A,56Cの電極61A,61Cが接地されるとともに、インク室56Bの電極61Bに負電圧(−V1)の駆動パルスP1が印加される。すると、隔壁54B,54Cを構成する圧電部材54a,54bの分極方向に垂直な方向の電界が生じる。これにより、圧電部材54a,54bの接合面にズリ変形が生じ、
図7(b)に示すように、隔壁54B,54Cは互いに離反する方向に変形し、インク室56Bの容積が拡大する。この結果、インク室56B内のインクの圧力が減少し、インク流入口58からインク室56Bにインクが流れ込む。
【0070】
駆動パルスP1の印加時間は時刻t1から時刻t2までの1.0ALである。AL(Acoustic Length )は、容積が拡大したインク室56にインクが流入することによる圧力波が、インク室56の全域を伝播してノズル57に達するまでの時間、即ち、インク室56の音響的共振周期の1/2である。このALは、インクジェットヘッド5の構造や、インクの音速等に依存して決まるものである。
【0071】
続いて、
図7(b)の状態から、
図9における時刻t2において、インク室56Bの電極61Bに印加する電圧が接地電位に戻される。すると、隔壁54B,54Cは、
図7(a)に示した中立位置に戻る。これにより、インク室56B内のインクが加圧され、対応するノズル57からインクが吐出される。
【0072】
インク室56Bの電極61Bに印加する電圧を接地電位に戻してから1.0ALが経過すると、時刻t3から時刻t4までの1.0ALの期間、インク室56Bの電極61Bに正電圧の駆動パルスP2が印加される。これにより、
図7(c)に示すように、隔壁54B,54Cは互いに接近する方向に変形し、インク室56Bの容積が縮小する。
【0073】
駆動パルスP2の印加後、時刻t4から時刻t5の間においてインク室56Bの電極61Bに印加する電圧を接地電位とし、
図7(a)の状態に戻す。
【0074】
このように、通常波形は、インク室56の容積を拡大させた後、元の容積に戻し、その後容積を縮小させてから再度元の容積に戻すように隔壁54を変形させるように電極61に印加する電圧の波形である。
【0075】
なお、シェアモード型のインクジェットヘッド5では、上述のように隔壁54の変形を利用してインク吐出を行うので、隣接したインク室56を同時に吐出駆動することはできない。このため、記録動作時においては、インクジェットヘッド5が有する全インク室56を、互いに隣接しないインク室56からなる複数のグループに分割し、グループごとにインク室56を吐出駆動させる時分割駆動が行われる。
【0076】
上述したインクジェットプリンタ1では、通常波形の他に、通常波形を用いた場合よりも吐出駆動終了後の残留振動のピークを抑制するように電極61を駆動する電圧の波形である残留振動抑制波形を用意する。
【0077】
この残留振動抑制波形の一例を
図10に示す。
図10は残留振動抑制波形の駆動信号の一例とこれにより駆動された
図5のインクジェットヘッドのインク室内におけるインクの圧力変化との関係を示す説明図である。
図10において、実線は駆動信号の波形を示し、破線はインク室内におけるインクの圧力を示す。
【0078】
この残留振動抑制波形を用いる場合、
図7(a)に示す定常状態において、
図8のヘッド駆動部21からインクジェットヘッド5に、
図10の実線で示す駆動信号が供給されると、
図10における時刻t11において、インク室56A,56Cの電極61A,61Cが接地されるとともに、インク室56Bの電極61Bに負電圧(−V2≠−V1)の駆動パルスP11が印加される。これにより、
図7(b)に示すように、隔壁54B,54Cは互いに離反する方向に変形し、インク室56Bの容積が拡大する。この結果、インク室56B内のインクの圧力が減少し、インク流入口58からインク室56Bにインクが流れ込む。
【0079】
続いて、
図10における時刻t11から時間T0(T0=1.0AL)が経過した時刻t12において、インク室56Bの電極61Bに印加する電圧が接地電位に戻される。すると、隔壁54B,54Cは、
図7(b)の状態から、
図7(a)に示した中立位置に戻る。これにより、インク室56B内のインクが加圧され、対応するノズル57からインクが吐出される。
【0080】
インク室56Bの電極61Bに印加する電圧を接地電位に戻した時刻t12から時間T1(T1>1.0AL)が経過すると、
図10における時刻t13において、インク室56A,56Cの電極61A,61Cが接地されるとともに、インク室56Bの電極61Bに正電圧の駆動パルスP12(請求項中のキャンセルパルスに相当)が印加される。これにより、
図7(c)に示すように、隔壁54B,54Cは互いに接近する方向に変形し、インク室56Bの容積が縮小する。
【0081】
インク室56Bの電極61Bに正電圧の駆動パルスP12が印加される前、インク室56B内のインク圧は、ノズル57からインクを吐出した反動で減少し、ピークを越えて通常圧力に向け増加しつつある。そして、通常圧力に戻る前に駆動パルスP12を印加し、インク室56B内の容積を縮小させて加圧力を発生させることで、インク室56B内のインクが通常圧力を超えて増加のピークに向かう。
【0082】
さらに、インク室56B内のインクの圧力が増加のピークを迎える直前に、駆動パルスP12のオン(時刻t13)から時間T2(T2<AL)が経過した時刻t14において、駆動パルスP12がオフされ、インク室56Bの電極61Bに印加する電圧が接地電位に戻される。すると、隔壁54B,54Cは、
図7(a)に示した中立位置に戻る。これにより、増加のピークに向かっていたインク室56B内のインクの圧力増加が、インク室56Bの容積の拡大に伴う減圧により減衰される。
【0083】
この減衰により、増加から低下に転じたインク室56B内の圧力が通常圧力を超えて低下する度合いが小さくなり、駆動パルスP12のオフ(時刻t14)後の早い時点でインク室56B内のインクの圧力が通常圧力に戻るようになる。
【0084】
したがって、複数のインク液滴を連続吐出する場合に、次の駆動信号の駆動パルスP11をオンできるタイミングを、通常波形に比べて早くすることができる。よって、2つ目以降のインク液滴をより早く適切な圧力で吐出させて、インク液滴を連続吐出する際の吐出性能を向上させることができる。
【0085】
なお、残留振動抑制波形は、例えば、
図11(a),(b)の説明図にそれぞれ示す波形とすることもできる。
図11(a)に示す残留振動抑制波形では、時刻t21から時間T0(T0=1.0AL)が経過する時刻t22までの間、
図10の駆動信号における駆動パルスP11と同様の負電圧(−V2)の駆動パルスP21を、インク室56Bの電極61Bに印加する。
【0086】
そして、ノズル57からインクを吐出した反動で減少したインク室56B内のインクの圧力が通常圧力に戻る直前に、駆動パルスP21のオフ(時刻t22)から時間T1(T1<1.0AL)が経過すると、
図11(a)における時刻t23において、インク室56A,56Cの電極61A,61Cが接地されるとともに、インク室56Bの電極61Bに負電圧の駆動パルスP22(請求項中のキャンセルパルスに相当)が印加される。これにより、
図7(b)に示すように、隔壁54B,54Cは互いに離反する方向に変形し、インク室56Bの容積が拡大する。これにより、通常圧力を上回っていたインク室56B内のインクの圧力が、一気に通常圧力を超えて減少する。
【0087】
さらに、駆動パルスP22のオン(時刻t23)から時間T2(T2>2.0AL)が経過すると、
図11(a)における時刻t24において、駆動パルスP22がオフされ、インク室56Bの電極61Bに印加する電圧が接地電位に戻される。すると、隔壁54B,54Cは、
図7(a)に示した中立位置に戻る。
【0088】
そして、駆動パルスP22がオンである時刻t23〜t24の間(時間T2,T2>2.0AL)、インク室56B内のインクの圧力は、通常圧力より低い圧力に減少し、続いて通常圧力より高い圧力に増加し、さらに通常圧力より低い圧力に再び減少する。この圧力増減を繰り返す間、インク室56Bは容積が拡大した状態を維持していることから、インク室56B内のインクの圧力変動が減衰され、圧力の増加及び減少時におけるピークが徐々に小さくなる。
【0089】
その後、時刻t24において、駆動パルスP22がオフされ、インク室56Bの電極61Bに印加する電圧が接地電位に戻される。すると、隔壁54B,54Cは、
図7(a)に示した中立位置に戻る。
【0090】
駆動パルスP22のオフにより、インク室56B内の圧力は、減少のピークから一気に増加して通常圧力を超えるが、それまでの間、インク室56B内の圧力変動が減衰されているため、通常圧力を超えて低下する度合いは小さい。したがって、駆動パルスP22のオフ(時刻t24)後の早い時点でインク室56B内のインクの圧力が通常圧力に戻るようになる。
【0091】
また、
図11(b)に示す残留振動抑制波形では、時刻t31から時間T0(T0=1.0AL)が経過する時刻t32までの間、
図10の駆動信号における駆動パルスP11と同様の負電圧(−V2)の駆動パルスP31を、インク室56Bの電極61Bに印加する。
【0092】
そして、ノズル57からインクを吐出した反動で減少したインク室56B内のインクの圧力が通常圧力を超えて低下した時点で、駆動パルスP31のオフ(時刻t32)から時間T1(T1<1.0AL)が経過すると、
図11(a)における時刻t33において、インク室56A,56Cの電極61A,61Cが接地されるとともに、インク室56Bの電極61Bに正電圧の駆動パルスP32(請求項中のキャンセルパルスに相当)が印加される。これにより、
図7(c)に示すように、隔壁54B,54Cは互いに接近する方向に変形し、インク室56Bの容積が縮小する。これにより、通常圧力を下回っていたインク室56B内のインクの圧力が、インク室56Bの容積の縮小に伴い通常圧力を超えて増加する。
【0093】
さらに、駆動パルスP32のオン(時刻t33)から時間T2(1.0AL<T2<2.0AL)が経過すると、
図11(a)における時刻t34において、駆動パルスP32がオフされ、インク室56Bの電極61Bに印加する電圧が接地電位に戻される。すると、隔壁54B,54Cは、
図7(a)に示した中立位置に戻る。
【0094】
そして、駆動パルスP32がオンである時刻t33〜t34の間(時間T2,1.0AL<T2<2.0AL)、インク室56B内のインクの圧力は、インク室56Bの容積の縮小に伴い一時的に通常圧力より高い圧力に増加するが瞬時に低下に転じ、通常圧力より低い圧力に減少した後、増加に転じて通常圧力より高い圧力に増加する。
【0095】
その後、インク室56B内のインクの圧力が増加のピークを迎える時刻t34において、駆動パルスP32がオフされ、インク室56Bの電極61Bに印加する電圧が接地電位に戻される。すると、隔壁54B,54Cは、
図7(a)に示した中立位置に戻る。これにより、増加のピークに向かっていたインク室56B内のインクの圧力増加が、インク室56Bの容積の拡大に伴う減圧により減衰される。
【0096】
この減衰により、増加から低下に転じたインク室56B内の圧力が通常圧力を超えて低下する度合いが小さくなり、駆動パルスP32のオフ(時刻t34)後の早い時点でインク室56B内のインクの圧力が通常圧力に戻るようになる。
【0097】
このように、残留振動抑制波形は、駆動パルスP11,P21,P31によりインク室56の容積を拡大させた後、元の容積に戻し、その後容積を、インク室56の音響的共振周期の1/2である1.0ALよりも長い又は短いインターバルを挟み、1.0ALよりも短い又は長いパルス幅の駆動パルスP12,P22,P32によりインク室56の容積を縮小(
図9、
図10、
図11(b))又は拡大(
図11(a))させてから、再び元の容積に戻すように隔壁54を変形させるように電極61に印加する電圧の波形である。
【0098】
上述した通常波形の駆動信号では、
図9の破線で示すように、駆動パルスP2のオンにより、インク吐出後にインク室56B内に生じた負の圧力が抑制され、吐出したインクの尾がノズル57側に引き込まれにくくなる。このため、通常波形の駆動信号は、吐出されるインク量が残留振動抑制波形よりも多くなる傾向にあり、これに伴い、通常波形の駆動信号は、駆動電圧が残留振動抑制波形よりも低く設定される傾向にある。
【0099】
上述した残留振動抑制波形の駆動信号では、
図10や
図11(a),(b)の破線に示すように、駆動パルスP12,P22,P32のオン中にインク室56B内のインクの圧力変動が減衰され、インク室56B内のインクの圧力が通常圧力に戻るタイミングが早まり、次の駆動信号の印加によるインク吐出動作の開始が早まる。
【0100】
図3及び
図4を参照して先に説明したように、非水系インクの密度は全温度帯を通じて高い。このため、非水系インクについては、ノズル57からの吐出に伴いインク室56B内の非水系インクに圧力変動が生じると、高密度が原因で、残留振動の影響を非常に大きく受け、次のインク吐出条件が整うまでの所要時間が長時間化する。
【0101】
一方、現行インク(油性インク)は、全温度帯を通じて密度が低いものの、45°Cまで温度が上昇すると非水系インク並に粘度が下がる。このため、45°Cの現行インク(油性インク)についても、ノズル57からの吐出に伴いインク室56B内の現行インク(油性インク)に圧力変動が生じると、低粘度が原因で、残留振動の影響を大きく受け、次のインク吐出条件が整うまでの所要時間が長時間化する。
【0102】
そこで、本実施形態では、残留振動の影響を大きく受ける高密度のインクと低粘度のインクを仕分けるために、「密度(の値)/粘度(の値)」という物理量を用いることにした。即ち、密度が高いか粘度が低いとこの物理量の値がある程度の値に到達するので、適切な基準値を設定しこれを上回れば、高密度か低粘度のインクであると推定することができる。
【0103】
図12は
図3の非水系インクと現行インク(油性インク)の温度別の物理量(「密度/粘度」)を示す説明図である。本実施形態では、上述した基準値を0.13としている。この基準値は、実験を経て得た値であっても良い。例えば、ある温度におけるインクの物理量(「密度/粘度」)がその値以下であれば、インク圧力の残留振動の影響が少ないことを、実験によって確認した値を基準値としても良い。本実施形態では、基準値を0.13とした結果、
図12の太枠で囲んだ部分に示すように、全温度帯の非水系インクと45゜Cにおける現行インクとが、基準値を上回る物理量を有していることになる。
【0104】
続いて、
図8の制御ユニット29のCPU29aがROM29cに格納されたプログラムにしたがい実行する駆動信号の波形選択に関連する処理の手順を、
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0105】
まず、CPU29aは、外部記憶装置105に格納されたデータから、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3eのインクジェットヘッド5に供給されている現在使用中のインクの種類を確認する(ステップS1)。なお、ここでは、インク循環式印刷ユニットB3aのインクカートリッジ23に現行インク(油性インク)が充填され、インク循環式印刷ユニットB3eのインクカートリッジ23に非水系インクが充填されているものとする。
【0106】
現在使用中のインクが非水系インクである場合は(ステップS1で「非水系」)、CPU29aは、インク流路9の温度センサ91による検出温度と外部記憶装置105のテーブルとに基づいて、非水系インクの密度及び粘度を求め(ステップS3)、「密度(の値)/粘度(の値)」で表される非水系インクの物理量を求める(ステップS5)。
【0107】
一方、現在使用中のインクが現行インク(油性インク)である場合は(ステップS1で「現行」)、CPU29aは、インク流路9の温度センサ91による検出温度と外部記憶装置105のテーブルとに基づいて、現行インクの密度及び粘度を求め(ステップS7)、「密度(の値)/粘度(の値)」で表される現行インクの物理量を求める(ステップS9)。
【0108】
そして、CPU29aは、ステップS5又はステップS9で求めた現在使用中のインク(非水系インク又は現行インク)の物理量が基準値(本実施形態では0.13)以上であるか否かを確認する(ステップS11)。物理量が基準値以上である場合は(ステップS11でYES)、ドライバ103によりインクジェットヘッド5に印加させる駆動信号を残留振動抑制波形の駆動信号とする(ステップS13)。一方、物理量が基準値以上でない場合は(ステップS11でNO)、ドライバ103によりインクジェットヘッド5に印加させる駆動信号を通常波形の駆動信号とする(ステップS15)。
【0109】
以上の各手順を、CPU29aは、定期的に又は何らかのきっかけをトリガとして実行する。トリガとなるきっかけは、例えば、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3eのインクカートリッジ23に充填するインクの種類が不図示の操作パネルから入力設定された場合や、外部からの印刷ジョブを受け取った場合等とすることができる。
【0110】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、
図13のフローチャートにおけるステップS11が、請求項中の比較手段に対応する処理となっている。また、本実施形態では、
図13中のステップS13、ステップS15の処理を実行するCPU29aと、ドライバ103とで、請求項中の駆動信号印加手段が構成されている。
【0111】
上述した構成による本実施形態のインクジェットプリンタ1では、密度が高い非水系インクを用いる場合は、「密度(の値)/粘度(の値)」で定義される物理量が基準値以上となるので、残留振動抑制波形の駆動信号を用いて記録紙PAに対する印刷が行われる。
【0112】
また、現行インク(油性インク)については、インクの温度が45゜Cの場合は、「密度(の値)/粘度(の値)」で定義される物理量が基準値以上となるので、残留振動抑制波形の駆動信号を用いて記録紙PAに対する印刷が行われる。一方、インクの温度が45゜Cに達しない場合は、「密度(の値)/粘度(の値)」で定義される物理量が基準値未満となるので、通常波形の駆動信号を用いて記録紙PAに対する印刷が行われる。
【0113】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、ノズル57からインクを吐出した後にインク室56Bに生じるインクの残留振動の影響が大きい、密度の高いインクや粘度の低いインクを用いた印刷を、残留振動抑制波形の駆動信号で行うことで、インク室56Bのインクの残留振動を早い時点で解消し、短い時間間隔でインクの吐出を繰り返す場合の吐出性能を向上させることができる。
【0114】
なお、上述した実施形態では、K(ブラック)に対応して2つのインク循環式印刷ユニットB3a,B3eを設け、それぞれのインクカートリッジ23に、現行インク(油性インク)か水性インクのどちらか一方と、非水系インクとをそれぞれ充填した。そして、使用するインク循環式印刷ユニットB3a,B3eを切り替えることで、印刷に用いるK(ブラック)のインクの種類を切り替えるように構成した。しかし、1つのインク循環式印刷ユニットのタンクに2つのインクカートリッジを接続し、タンクにインクを供給するインクカートリッジを切り替えることで、印刷に用いるインクの種類を切り替えるように構成してもよい。
【0115】
そのように構成したインク循環式印刷ユニットの全体構成を、
図14の説明図を参照して説明する。なお、
図14では、K(ブラック)に対応するインク循環式印刷ユニットB3aに、上述した2つのインクカートリッジを接続する構成を適用した場合について説明する。
【0116】
図14に示すK(ブラック)のインク循環式印刷ユニットB3aは、下タンク7に補給用インク流路19a,19bと開閉弁21a,21bとを介して、2つのインクカートリッジ23a,23bを接続している点が、
図2のインク循環式印刷ユニットB3aと異なっている。
【0117】
また、
図14のインク循環式印刷ユニットB3aは、廃インクタンク17を有している点が、
図2のインク循環式印刷ユニットB3aと異なっている。この廃インクタンク17は、インクジェットヘッド5から下タンク7に至るインク流路9の途中から分岐されて、開閉弁171を介して接続されている。なお、廃インクタンク17への分岐点と下タンク7との間のインク流路9にも、開閉弁75が介設されている。
【0118】
上述した構成によるインク循環式印刷ユニットB3aのインク循環経路15でインクを循環させる通常状態では、下タンク7の開閉弁75が開放されると共に、廃インクタンク17の開閉弁171が閉じられる。また、必要に応じてインク循環経路15を循環するインクをインク循環経路15の外に排出する際には、下タンク7の開閉弁75が閉じられると共に、廃インクタンク17の開閉弁171が開放される。
【0119】
そして、インク循環式印刷ユニットB3aのインクジェットヘッド5が吐出するインクの色を、2つのインクカートリッジ23a,23bのインクの一方から他方に切り替える場合は、例えば、次の方法による切り替え動作を行う。
【0120】
この切り替え動作では、まず、2つの補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bのうち一方を開放し他方を閉じる。これにより、使用するインクカートリッジ23a(又はインクカートリッジ23b)のインクを選択的に下タンク7に供給する。
【0121】
そして、廃インクタンク17の開閉弁171を閉じると共に下タンク7の開閉弁75を開放し、循環ポンプ11を作動させて、下タンク7のインクをインク循環経路15で循環させる。続いて、インクジェットヘッド5によりインク吐出動作を行わせる。
【0122】
ところで、インク循環式印刷ユニットB3aのインクジェットヘッド5が吐出するインクを切り替える場合は、切り替え前のインクを下タンク7に供給する状態から、切り替え後のインクを下タンク7に供給する状態に、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開閉状態を切り替える。
【0123】
このとき、インク循環経路15に切り替え前のインクが存在したまま、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開閉状態を切り替えると、切り替え直後からインクジェットヘッド5にインク吐出動作を行わせた場合、切り替え前のインクがしばらく吐出することになる。
【0124】
そこで、補給用インク流路19a,19bの開閉弁21a,21bの開閉状態を切り替えた後、切り替え前のインクがインクジェットヘッド5から吐出されなくなるまで予備印刷を行った後、切り換え後のインクによる印刷を行ってもよい。
【0125】
図14のインク循環式印刷ユニットB3aを有する構成とする場合、インクジェットプリンタ1の制御ユニット29のCPU29aには、
図8に示した開閉弁21に代えて開閉弁21a,21bが接続される。また、CPU29aには、開閉弁75,171がさらに接続される。そして、CPU29aは、駆動信号の波形選択に関して、
図13のフローチャートに示すのと同様の処理を行う。そのように構成しても、先に説明した実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0126】
なお、現行インク(油性インク)か水性インクのどちらか一方と非水系インクとを切り替えて印刷に使用する構成は、上述したK(ブラック)のみに限らず、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の一部の色又は全色に適用しても良い。ここで、インク循環式印刷ユニットとして
図2の構成のものを用いる場合は、5個目以降のインク循環式印刷ユニットを適宜設けることになる。また、
図14の構成のものを用いる場合は、対応する色のインク循環式印刷ユニットB3b〜B3dを、
図14の構成とすることになる。
【0127】
ところで、上述した実施形態では、インクの温度に応じた密度や粘度の値を用いて物理量(「密度(の値)/粘度(の値)」)を決定するものとしたが、インクの温度がある程度一定である場合等には、実際のインクの温度は考慮せず、一定温度における密度や粘度を用いて物理量(「密度(の値)/粘度(の値)」)を決定してもよい。
【0128】
また、本実施形態では、通常波形と残留振動抑制波形のどちらの波形の駆動信号を用いるかを、「密度(の値)/粘度(の値)」で定義される物理量とそれに対応する基準値との比較によって決定する場合を例に取って説明した。しかし、「密度(の値)」又はそれに比例する値を物理量とし、これと、例えば非水系インクの場合は物理量が基準値以上となり、非水系インクよりも密度が低い現行インク(油性インク)や水性インクの場合は物理量が基準値未満となるような基準値との比較によって、通常波形と残留振動抑制波形のどちらの波形の駆動信号を用いるかを決定するように構成してもよい。
【0129】
この場合は、具体的には、物理量が基準値以上(非水系インク)ならば残留振動抑制波形の駆動信号を用い、物理量が基準値未満(現行インク(油性インク))ならば通常波形の駆動信号を用いることになる。
【0130】
さらに、本実施形態では、非水系インクと現行インクを選択して使用する場合を例に取って説明したが、例えば、非水系インクと水性インクを選択して使用する場合等、密度(あるいは、密度や粘度)が異なる複数種類のインクを選択して使用する場合にも、本発明は適用可能である。
【0131】
また、本実施形態では、インクジェットプリンタ1が、2種類のインクを選択的にインクジェットヘッド5に供給する構成を有する場合について説明した。しかし、3種類以上のインクを選択的にインクジェットヘッド5に供給する構成を有するインクジェットプリンタにも、本発明は適用可能である。
【0132】
反対に、複数種類のインクを選択的にインクジェットヘッド5に供給する構成が無いインクジェットプリンタであっても、インクジェットヘッド5に供給するインクの種類を特定できる構成を有するならば、インクジェットヘッド5に供給されるインクの種類に応じて駆動信号の波形を選択するように本発明を適用することができる。
【0133】
なお、インクジェットヘッド5に供給するインクの種類を特定する構成としては、例えば、インクジェットヘッド5に供給するインクの種類を示すデータを外部記憶装置105等のメモリに登録する構成や、センサによってインクの種類を直接検出したり、インクカートリッジのインク種類を示すバーコードセンサ等をセンサで読み取って検出する構成を、採用することができる。