(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1柱状電極上に配置され、かつ前記第1ダイオードのアノード電極に接続された第1上面板電極を備えることを特徴とする請求項3に記載のパワーモジュール半導体装置。
前記第2柱状電極上に配置され、かつ前記第2ダイオードのアノード電極に接続された第2上面板電極を備えることを特徴とする請求項7に記載のパワーモジュール半導体装置。
前記第1パターンはドレイン端子電極に接続され、前記第2パターンは出力端子電極に接続され、前記第3パターンは、接地電位端子電極に接続されることを特徴とする請求項11に記載のパワーモジュール半導体装置。
前記第3樹脂層および前記第4樹脂層は、ガラスフィラーの含有量の異なるエポキシ系樹脂で形成されたことを特徴とする請求項19または20に記載のパワーモジュール半導体装置。
前記第2低CTE部材を、前記セラミック基板の厚み方向から見た平面視で、前記セラミック基板の中心に対して線対称の位置に配置することを特徴とする請求項28に記載のパワーモジュール半導体装置。
前記上面板電極を、前記セラミック基板の厚み方向から見た平面視で、前記セラミック基板の中心を通る線を跨ぐように配置することを特徴とする請求項29または30に記載のパワーモジュール半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
[第1の実施の形態]
(半導体装置の構成)
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1の模式的平面パターン構成は、
図1に示すように表される。また、第1の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール半導体装置の模式的平面パターン構成は、
図2に示すように表される。
図1および
図2のI−I線に沿う第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1の模式的断面構造は、
図3に示すように表される。また、
図1〜
図3に対応するインバータの模式的回路構成は、
図4に示すように表される。
【0020】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、セラミック基板10と、セラミック基板10の表面上に配置された第1部材と、セラミック基板10の裏面上に配置された第2部材とを備える。ここで、第1部材の発生応力と、第2部材の発生応力がバランスするように、第1部材と第2部材の線熱膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)を調整する。
【0021】
第1部材は、
図1〜
図4に示すように、第1銅プレート層10aの第1パターンD(K1)と、第1半導体デバイスQ1と、第1柱状電極20
1と、第1樹脂層12uとを備える。
【0022】
第2部材は、
図1〜
図4に示すように、第2銅プレート層10bと、第2樹脂層12dとを備える。
【0023】
第1銅プレート層10aの第1パターンD(K1)は、セラミック基板10の表面上に配置されている。第1半導体デバイスQ1は、第1パターンD(K1)上に配置されている。第1柱状電極20
1は、半導体デバイスQ1上に配置されている。第1樹脂層12uは、セラミック基板10の表面上に、第1銅プレート層10a、半導体デバイスQ1および第1柱状電極20
1を被覆して配置されている。
【0024】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、半導体デバイスQ1・Q4は、例えば、SiCMOSトランジスタで形成され、ダイオードD1・4は、例えば、SiCショットキーバリアダイオード(SBD:Scottky Barrier Diode)で形成されている。
【0025】
第2銅プレート層10bは、セラミック基板10の裏面上に配置されている。第2樹脂層12dは、セラミック基板10の裏面上に配置されている。
【0026】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第1パターンD(K1)上に第1半導体デバイスQ1に隣接して配置された第1ダイオードD1を備えていても良い。
【0027】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第1柱状電極20
1上に配置され、かつ第1ダイオードD1のアノード電極A1に接続された第1上面板電極22
1を備えていても良い。ここで、アノード電極A1は、図示は省略されているが、第1ダイオードD1上に第1柱状電極20
1と同様に柱状電極構造で形成されており、第1柱状電極20
1と面一になるように柱の高さが調整されている。
【0028】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第1銅プレート層10aの第2パターンD(K4)上に配置された第2半導体デバイスQ4を備えていても良い。
【0029】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第2パターンD(K4)上に第2半導体デバイスQ4に隣接して配置された第2ダイオードD4を備えていても良い。
【0030】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第2半導体デバイスQ4上に配置された第2柱状電極20
4を備えていても良い。
【0031】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第2柱状電極20
4上に配置され、かつ第2ダイオードD4のアノード電極A4に接続された第2上面板電極22
4を備えていても良い。ここで、アノード電極A4は、図示は省略されているが、第2ダイオードD4上に第1柱状電極20
1と同様に柱状電極構造で形成されており、第2柱状電極20
4と面一になるように柱の高さが調整されている。
【0032】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第2パターンD(K4)上に配置された配線兼CTE調整用の第3柱状電極18
1を備えていても良い。
【0033】
また、第1上面板電極22
1は、
図3に示すように、第3柱状電極18
1に接続されていても良い。ここで、第1上面板電極22
1は、
図3に示すように、第1柱状電極20
1と面一になるように柱の高さが調整されている。
【0034】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第1銅プレート層10aの第3パターンEP上に配置された配線兼CTE調整用の第4柱状電極18
4を備えていても良い。
【0035】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1〜
図4に示すように、第1パターンD(K1)はドレイン端子電極Pに接続され、第2パターンD(K4)は出力端子電極Oに接続され、第3パターンEPは、接地電位端子電極Nに接続される。
【0036】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、
図3に示すように、第1樹脂層12uの厚さH1は、第2樹脂層12dの厚さH2よりも厚く形成されている。
【0037】
また、セラミック基板10の表面上に配置された第1部材の線熱膨張係数CTEuは、セラミック基板10の裏面上に配置された第2部材の線熱膨張係数CTEdよりも低く形成されている。セラミック基板10の表面上に配置された部材の発生応力と、セラミック基板10の裏面上に配置された部材の発生応力がバランスするように、セラミック基板10の表面上に配置された第1部材と裏面上に配置された第2部材のCTEを調整するためである。
【0038】
例えば、セラミック基板10は、SiN、AlSiC、若しくは少なくとも表面が絶縁性のSiCなどで形成されていても良い。
【0039】
また、第1柱状電極20
1は、CuMo、Cuなどで形成されていても良い。
【0040】
また、第1上面板電極22
1は、CuMo、Cuなどで形成されていても良い。
【0041】
また、第2柱状電極20
4は、CuMo、Cuなどで形成されていても良い。
【0042】
また、第1樹脂層12uおよび第2樹脂層12dは、トランスファモールド樹脂で形成されていても良い。第1樹脂層12uおよび第2樹脂層12dは、エポキシ系樹脂若しくはシリコーン系樹脂で形成されていても良い。
【0043】
特に、第1樹脂層12uおよび第2樹脂層12dとして、シリコーン系樹脂を適用する場合には、第1柱状電極20
1・第1上面板電極22
1・第2柱状電極20
4には、コスト面および電気抵抗率の面から、Cuなどを適用しても良い。
【0044】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1に適用される柱構造材料、樹脂材料の物理定数例は、
図14に示すように表される。
図14において、樹脂の各物理定数例は、必要部分のみを表示している。
【0045】
CTEの値が同等である同じ大きさの材料を比較すると、発生応力は、ヤング率の値が大きい材料の方が大きくなる。このため、ヤング率×CTEの数値が、より小さい材料を選定することによって、発生応力の値の小さな部材を達成することができる。
【0046】
このような理由から、CuMoが、
図14に示す材料の中では、最も適している。また、CuMoは、Cuには劣るが、電気抵抗率も相対的に低い。
【0047】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、セラミック基板10と、第1樹脂層12uと、第2樹脂層12dと、複数の半導体チップQ1・Q4と、第1低CTE部材20
1・20
4とを備えていても良い。
【0048】
ここで、第1樹脂層12uは、セラミック基板10の表面上に配置され、第1の厚さH1を有する。第2樹脂層12dは、セラミック基板10の裏面上に配置され、第1の厚さH1よりも薄い第2の厚さH2を有する。
【0049】
複数の半導体チップQ1・Q4は、セラミック基板10の表面上に、セラミック基板10の厚み方向から見た平面視で離間した位置に配置され、第1樹脂層12uにより樹脂モールドされている。
【0050】
第1低CTE部材20
1・20
4は、それぞれ異なる複数の半導体チップQ1・Q4上に配置され、第1樹脂層12uのCTE値よりも低いCTE値を有する。
【0051】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、セラミック基板10の表面側のCTEuを第1樹脂層12uのみの場合と比較して全体として低下させて、セラミック基板10の表面側と裏面側の応力がバランスさせることができる。
【0052】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、複数の半導体チップQ1・Q4上に第1低CTE部材20
1・20
4を配置することにより、放熱特性を向上することもできる。
【0053】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図2に示すように、導電層10aと、第2低CTEダミー部材60・62とを備えていても良い。
【0054】
ここで、導電層10aはセラミック基板10上に配置される。
【0055】
第2低CTEダミー部材60・62は、導電層10a上の、複数の半導体チップQ1・Q4が配置された位置以外の箇所に配置され、第1低CTE部材20
1・20
4のCTE値と異なるCTE値を有する。ここで、第2低CTEダミー部材60・62は、導電層10a上に半田で付けると、半田応力でセラミック基板10が応力を受けるので、例えば、固相拡散接合技術を適用することが望ましい。
【0056】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、複数の半導体チップ上の第1低CTE部材20
1・20
4同士を接続する上面板電極22
1・22
4を備えていても良い。
【0057】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、第1低CTE部材20
1・20
4と第2低CTEダミー部材60・62とを接続する上面板電極22
1・22
4を備えていても良い。
図2においては、上面板電極22
1・22
4は、第2低CTEダミー部材60・62とは接続されていないが、上面板電極22
1・22
4を延在させることによって、第1低CTE部材20
1・20
4と第2低CTEダミー部材60・62とを接続することも可能である。
【0058】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図2に示すように、第2低CTEダミー部材60・62を、セラミック基板10の厚み方向から見た平面視で、セラミック基板10の中心のY−Y線に対して線対称の位置に配置しても良い。
【0059】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図1若しくは
図2に示すように、上面板電極22
1・22
4が、セラミック基板10の厚み方向から見た平面視で、セラミック基板10の中心を通るX−X線を跨ぐように配置しても良い。
【0060】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、パワーモジュール半導体装置1の表裏に発生する応力のバランスを取るために、必要の無いものも敢えてパワーモジュール半導体装置1のモジュールパッケージ内に構成要件として、導入しても良い。すなわち、パワーモジュール半導体装置1の表裏に発生する応力のバランスを取るために、
図2に示すように、CTE調整用のダミー部材60・62を備えていても良い。ここで、ダミー部材60・62は必ずしも金属材料で形成されていなくてもよく、例えば、エポキシ系樹脂若しくはシリコーン系樹脂を用いて柱構造に形成されていても良い。また、同様に、反り量を低減させる目的で、上面板電極22
1・22
4を必要以上に張り出させて形成しても良い。
【0061】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、半導体デバイスQ1・Q4(SiCチップ)上の柱状電極20
1・20
4、上面板電極22
1・22
4、および反り量低減の目的で新たに配置された低CTE部材を備えるトランスファーモールドモジュールが形成されている。ここで、反り量低減の目的で新たに配置された低CTE部材とは、CTE調整用の第3柱状電極18
1・第4柱状電極18
4、第1樹脂層12uおよび第2樹脂層12d、CTE調整用のダミー部材60・62などである。ここで、CTE調整用の第3柱状電極18
1・第4柱状電極18
4は、必要以上の大きさに設計しても良い。
【0062】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、モジュール上面側の低CTE材料占有率を増やして、反り量を低減化することができる。
【0063】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、SiC半導体デバイスQ1・Q4、セラミック基板10、ソース側の柱状電極20
1・20
4および上面板電極22
1・22
4を使用している。これらの部材は、トランスファーモール樹脂よりも低CTEの部材で形成される。
【0064】
また、電極として使用しない柱構造・上面板構造を使用しても良い。これらの部材は、トランスファーモール樹脂よりも低CTEの部材で形成される。
【0065】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、CTEの値がトランスファーモール樹脂よりも相対的に小さい材料をソース柱状電極20
1・20
4、上面板電極22
1・22
4、および反りを低減させる目的で新たに導入した補強材(18
1・18
4)に使用する。ここで、補強材部分は、電極構造を兼任しても良く、あるいは別の樹脂で形成しても良い。
【0066】
補強材部分は、CTEの値が相対的に小さい電極材料、例えば、CuMo、Cuなどで形成されていても良い。
【0067】
上面板電極22
1・22
4部分は、CTEの値が相対的に小さい電極材料、例えば、CuMo、Cuなどで形成されていても良い。
【0068】
ソース柱状電極20
1・20
4部分は、CTEの値が相対的に小さい電極材料、例えば、CuMo、Cuなどで形成されていても良い。
【0069】
ここで、表面に露出した上面板電極22
1・22
4間の表面に沿った離隔距離は、沿面距離と呼ばれる。沿面距離の値は、例えば、約6mmである。
【0070】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、モジュール内セラミック基板10上に存在する低CTE材料の占有率を相対的に上昇する。
【0071】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、樹脂よりも相対的に低CTEの値を有する部材をセラミック基板上に配置することで、モールド成型後、降温中に発生する反り量を低減することができる。
【0072】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、樹脂よりも相対的に高熱伝導率の値を有する部材を使用することで、パワーモジュールの上面からの放熱も見込むことができ、ヒートスプレッダ(裏面Cu板)、基板に求められる熱抵抗に余裕ができ、設計の自由度を上げることができる。
【0073】
樹脂の部分が大きいとモールドパッケージが反りやすく、歪むが、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、補強材を入れ、樹脂の占有率を相対的に下げることもできる。
【0074】
パワーモジュール半導体装置1の小型・軽量化のための第1の手段として、SiCパワーMOSFETを使用して、チップを小型化することができる。SiCパワーMOSFETでは、規格化オン抵抗がSiパワーMOSFETの約1/10である。このため、同じオン抵抗を有するデバイスを比較すると、SiCパワーMOSFETのチップ面積は、SiパワーMOSFETの約1/10となる。
【0075】
パワーモジュール半導体装置1の小型・軽量化のための第2の手段として、セラミック基板の薄型化を図ることができる。一般に使用されているセラミック基板としてAlNでは、曲げ強度が小さく、薄くすると割れてしまう。したがって、セラミック基板としてSiNを使用することが望ましい。SiNのメリットとして、曲げ強度が大きく、薄くしても割れにくいという特徴がある。一方、ディメリットとして、SiNは熱伝導率がAlNよりも悪く、CTEがAlNよりも大きい。ここで、具体的な数値例をあげると、AlNの曲げ強度は、約400GPaであるのに対して、SiNの曲げ強度は、約850GPaである。一方、SiNの熱伝導率は、約35W/mKであるのに対して、AlNの熱伝導率は、約170W/mKである。また、SiNのCTEは、約850ppm/℃であるのに対して、AlNのCTEは、約5.7ppm/℃である。
【0076】
以上より、SiCパワーMOSFETをSiN系セラミック基板上に実装することによって、パワーモジュール半導体装置1の小型化を実現可能であるが、SiNのCTEが大きいために、パワーモジュールの反り量が抑制する必要がある。
【0077】
また、特に、SiCパワーMOSFETを使用する際、熱抵抗R
thの増加を抑制する必要がある。この点を以下に説明する。ここで、熱抵抗R
thは、以下の(1)式で表される。
【0078】
R
th=Σ(各部材の熱抵抗R
n)=Σ(各部材の熱抵抗率×厚さ/面積) …(1)
ここで、熱抵抗率は、熱伝導率χの逆数1/χで表される。例えば、Siの熱伝導率χは、約150W/mKであり、SiCの熱伝導率χは、約450W/mKである。SiCの熱伝導率χは、Siに比べて3倍であるため、熱抵抗率は1/3となるが、同じオン抵抗を有するデバイスを比較するために、SiCパワーMOSFETのチップ面積を、SiパワーMOSFETの約1/10とすると、熱抵抗R
thは、(10/3)倍となり、SiCを半導体材料として使用すると、SiCパワー半導体モジュールの熱抵抗R
thは増大する。一方、SiCは、高温動作可能であるため、熱抵抗R
thが増大したとしても使用可能ではあるが、熱破壊の限界は存在する。
【0079】
よって、SiCパワー半導体モジュールに適用する基板の薄型化などにより、SiCパワー半導体モジュール全体の熱抵抗R
thの低減を図ることが望ましい。SiCパワーMOSFETを使用する際、熱抵抗R
thの増加を抑制する必要があるからである。
【0080】
モジュール反り量の低減のための第1の方策として、セラミック基板材料としてCTEの低いものを選択するか、或いはセラミック基板の厚さを増加して同じ応力に対する変位量を低減することが可能である。しかしながら、例えば、セラミック材料としてAlNを使用すると、曲げ強度が小さく、薄くすると割れてしまう。
【0081】
モジュール反り量の第2の方策として、セラミック基板の上面側および下面側に配置される部材による発生応力のバランスを取ることが望ましい。すなわち、セラミック基板の上面側および下面側に配置される部材のCTEのバランスを取ることが可能である。ここで、セラミック基板の下面側に配置される部材の厚さを厚く形成すると、パワー半導体モジュールの熱抵抗R
thが増加するため、得策ではない。
【0082】
そこで、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1においては、セラミック基板10の上面側に配置される第1部材として、CTEの低い材料を適用することによって、結果として、セラミック基板10の上面側に配置される第1部材のCTEを低減している。セラミック基板10の上面側に配置される第1部材の対象としては、金属柱・上面板、CTEの調整のためにのみ配置されるCTE調整部材などである。ここで、金属柱・上面板の材料としては、例えば、CuMoなどを適用可能である。また、CTEの調整のためにのみ配置されるCTE調整部材としては、例えば、異なるCTEの値を有するエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの配置構造、或いは異なるCTEの値を有する金属柱の延長・追加構造などである。例えば、エポキシ系樹脂のCTEの値CTE(E)とシリコーン系樹脂のCTEの値CTE(S)を比較すると、CTE(E)<CTE(S)である。具体的な数値例は、CTE(E)は、約12ppm/℃であり、CTE(S)は、約44ppm/℃である。また、例えば、ガラス繊維材料を添加することによって、シリコーン系樹脂のCTEの値CTE(S)を調整することも可能である。
【0083】
第1の実施の形態によれば、薄型SiCパワーモジュールの反り量を低減化したパワーモジュール半導体装置を提供することができる。
【0084】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図5に示すように表される。第2の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、第1樹脂層12uは、第3樹脂層12aと第3樹脂層12a上に積層された第4樹脂層12bとを備える。ここで、第3樹脂層12aの線熱膨張係数は、第4樹脂層12bの線熱膨張係数よりも小さい。
【0085】
エポキシ系樹脂において、ガラスフィラーの含有量を調整することによって、CTE2<CTE1のように、樹脂1、樹脂2で異なるCTEを実現することができる。例えば、ガラスフィラーの含有量を増加すると、CTEを低くすることができる。
【0086】
第3樹脂層12aおよび第4樹脂層12bは、ガラスフィラーの含有量の異なるエポキシ系樹脂で形成されていても良い。ここで、第3樹脂層12aのガラスフィラーの含有量は、第4樹脂層12bのガラスフィラーの含有量よりも多くなるように形成されていても良い。
【0087】
また、第2の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、第3樹脂層12aおよび第4樹脂層12bの積層構造からなる第1樹脂層12uの厚さは、第2樹脂層12dの厚さよりも厚く形成されている。
【0088】
また、セラミック基板10の表面上に配置された部材の線熱膨張係数CTEuは、セラミック基板10の裏面上に配置された部材の線熱膨張係数CTEdよりも低く形成されている。セラミック基板10の表面上に配置された部材の発生応力と、セラミック基板10の裏面上に配置された部材の発生応力がバランスするように、セラミック基板10の表面上に配置された部材と裏面上に配置された部材のCTEを調整するためである。
【0089】
その他の構成は、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1と同様であるため、重複説明は省略する。
【0090】
第2の実施の形態によれば、薄型SiCパワーモジュールの反り量を低減化したパワーモジュール半導体装置を提供することができる。
【0091】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1の模式的平面パターン構成は、
図6に示すように表される。また、第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール半導体装置の模式的平面パターン構成は、
図7に示すように表される。
図6および
図7のゲートドライバ端子GD1・GD4が延伸する方向に沿う模式的断面構造は、
図8に示すように表される。また、
図6〜
図8に対応するインバータの模式的回路構成は、
図10に示すように表される。
【0092】
第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図6〜
図8および
図10に示すように、セラミック基板10の表面上に配置され、第1半導体デバイスQ1を駆動するゲートドライバGDR1を備える。
【0093】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図6〜
図8および
図10に示すように、セラミック基板10の表面上に配置され、第2半導体デバイスQ4を駆動するゲートドライバGDR4を備えていても良い。
【0094】
ここで、ゲートドライバ端子GD1は、例えば、フィードバック端子FB、電源電圧端子Vcc、信号入力端子Vinおよび共通端子COMを備え、ゲートドライバ端子GD4は、エラー出力端子Fo、端子Gnd、コンデンサ入力端子Cin、信号入力端子Vinおよび電源電圧端子Vccを備えていても良く、ハーフブリッジ回路の動作制御に必要な別の機能を持つ端子に接続されていても良い。
【0095】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、ゲートドライバGDR1・GDR4のパッケージ材は、CTE調整用のエポキシ系樹脂もしくはシリコーン系樹脂で形成されていても良い。
【0096】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、第1樹脂層12uの厚さH1は、第2樹脂層12dの厚さH2よりも厚く形成されている。
【0097】
また、セラミック基板10の表面上に配置された部材の線熱膨張係数CTEuは、セラミック基板10の裏面上に配置された部材の線熱膨張係数CTEdよりも低く形成されている。セラミック基板10の表面上に配置された部材の発生応力と、セラミック基板10の裏面上に配置された部材の発生応力がバランスするように、セラミック基板10の表面上に配置された部材と裏面上に配置された部材のCTEを調整するためである。
【0098】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、第1樹脂層12uは、第2の実施の形態と同様に、第3樹脂層12aおよび第4樹脂層12bの積層構造で形成されていても良い。
【0099】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図7に示すように、導電層10aと、第2低CTEダミー部材64・66とを備えていても良い。
【0100】
ここで、導電層10aはセラミック基板10上に配置される。
【0101】
第2低CTEダミー部材64・66は、導電層10a上の、複数の半導体チップQ1・Q4が配置された位置以外の箇所に配置され、第1低CTE部材20
1・20
4のCTE値と異なるCTE値を有する。ここで、第2低CTEダミー部材64・66は、導電層10a上に半田で付けると、半田応力でセラミック基板10が応力を受けるので、例えば、固相拡散接合技術を適用することが望ましい。
【0102】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、複数の半導体チップ上の第1低CTE部材20
1・20
4同士を接続する上面板電極22
1・22
4を備えていても良い。
【0103】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、第1低CTE部材20
1・20
4と第2低CTEダミー部材64・66とを接続する上面板電極22
1・22
4を備えていても良い。
図7においては、上面板電極22
1・22
4は、第2低CTEダミー部材64・66とは接続されていないが、上面板電極22
1・22
4を延在させることによって、第1低CTE部材20
1・20
4と第2低CTEダミー部材64・66とを接続することも可能である。
【0104】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図7に示すように、第2低CTEダミー部材64・66を、セラミック基板10の厚み方向から見た平面視で、セラミック基板10の中心のY−Y線に対して線対称の位置に配置しても良い。
【0105】
また、第3の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図6若しくは
図7に示すように、上面板電極22
1・22
4が、セラミック基板10の厚み方向から見た平面視で、セラミック基板10の中心を通るX−X線を跨ぐように配置しても良い。
【0106】
その他の構成は、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1と同様であるため、重複説明は省略する。
【0107】
第3の実施の形態によれば、薄型SiCパワーモジュールの反り量を低減化したパワーモジュール半導体装置を提供することができる。
【0108】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1の模式的平面パターン構成は、
図9に示すように表される。また、
図9に対応するインバータの模式的回路構成は、
図10と同様に表される。第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、第3の実施の形態とは異なる的平面パターン構成を備える。
【0109】
第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図9および
図10に示すように、セラミック基板10の表面上に配置され、第1半導体デバイスQ1を駆動するゲートドライバGDR1を備える。
【0110】
また、第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1は、
図9および
図10に示すように、セラミック基板10の表面上に配置され、第2半導体デバイスQ4を駆動するゲートドライバGDR4を備えていても良い。
【0111】
ここで、ゲートドライバ端子GD1は、例えば、フィードバック端子FB、電源電圧端子Vcc、信号入力端子Vinおよび共通端子COMを備え、ゲートドライバ端子GD4は、エラー出力端子Fo、接地端子Gnd、コンデンサ入力端子Cin、信号入力端子Vinおよび電源電圧端子Vccを備えていても良い。
【0112】
また、第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、ゲートドライバGDR1・GDR4のパッケージ材は、CTE調整用のエポキシ系樹脂もしくはシリコーン系樹脂で形成されていても良い。
【0113】
また、第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、第1樹脂層12uの厚さは、第2樹脂層12dの厚さよりも厚く形成されている。
【0114】
また、セラミック基板10の表面上に配置された部材の線熱膨張係数CTEuは、セラミック基板10の裏面上に配置された部材の線熱膨張係数CTEdよりも低く形成されている。セラミック基板10の表面上に配置された部材の発生応力と、セラミック基板10の裏面上に配置された部材の発生応力がバランスするように、セラミック基板10の表面上に配置された部材と裏面上に配置された部材のCTEを調整するためである。
【0115】
また、第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1において、第1樹脂層12uは、第2の実施の形態と同様に、第3樹脂層12aおよび第4樹脂層12bの積層構造で形成されていても良い。
【0116】
その他の構成は、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1と同様であるため、重複説明は省略する。
【0117】
第4の実施の形態によれば、薄型SiCパワーモジュールの反り量を低減化したパワーモジュール半導体装置を提供することができる。
【0118】
(半導体デバイスの構成例)
第1〜第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1に適用する半導体デバイス100(Q1・Q4)の例として、SiC・MOSFETの模式的断面構造は、
図11に示すように、n
-高抵抗層からなる半導体基板26と、半導体基板26の表面側に形成されたpベース領域28と、pベース領域28の表面に形成されたソース領域30と、pベース領域28間の半導体基板26の表面上に配置されたゲート絶縁膜32と、ゲート絶縁膜32上に配置されたゲート電極38と、ソース領域30およびpベース領域28に接続されたソース電極34と、半導体基板26の表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域24と、n
+ドレイン領域24に接続されたドレインパッド電極36とを備える。
【0119】
図11では、半導体デバイス100は、プレーナゲート型nチャネル縦型SiC・MOSFETで構成されているが、トレンチゲート型nチャネル縦型SiC・MOSFETなどで構成されていても良い。
【0120】
また、第1〜第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1に適用する半導体デバイス100(Q1・Q4)には、SiC・MOSFETの代わりに、GaN系FETなどを適用することもできる。
【0121】
第1〜第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1に適用する半導体デバイス100には、SiC系、GaN系、若しくはAlN系のいずれかのパワーデバイスを適用可能である。
【0122】
更には、第1〜第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1に適用する半導体デバイス100には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVの半導体を用いることができる。
【0123】
第1〜第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1に適用する半導体デバイス100の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC・MOSFETの模式的断面構造は、
図12に示すように表される。ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜32上に配置されたゲート電極38に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域30およびpベース領域28に接続されたソース電極34に接続される。
【0124】
また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、
図12に示すように、半導体デバイス100の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜44上に配置される。尚、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体基板26内には、
図12の構成例では、図示を省略しているが、
図11或いは、
図12の中央部と同様に、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
【0125】
さらに、
図12に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜44上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
【0126】
(半導体装置を適用した応用例)
次に、
図13を参照して、第1〜第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1を用いて構成した3相交流インバータについて説明する。
【0127】
図13に示すように、3相交流インバータは、ゲートドライブ部50と、ゲートドライブ部50に接続されたパワーモジュール部52と、3相交流モータ部54とを備える。パワーモジュール部52は、3相交流モータ部54のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
【0128】
パワーモジュール部52は、蓄電池(E)46の接続されたコンバータ48が接続されたプラス端子(+)とマイナス端子(−)間に、インバータ構成のSiC・MOSFETQ1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6が接続されている。さらに、SiC・MOSFETQ1〜Q6のソース・ドレイン間には、ダイオードD1〜D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0129】
第1〜第4の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1では、
図13のU相部分に対応する単相インバータの構造について説明されていたが、V相、W相に対応しても同様に形成して、3相パワーモジュール部52を形成することもできる。
【0130】
(実装構造例)
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置の実装構造の模式的鳥瞰構造は、
図15に示すように表される。実際は、ダイオードD4、半導体デバイスQ4、柱状電極18
4の上のこれらの上面を導通させる上面板電極と、モールド樹脂が存在するが、ここでは、図示を省略している。また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置の実装構造の模式的裏面構造は、
図16に示すように表され、模式的上面構造は、
図17に示すように表される。また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置の実装構造の模式的上面内部詳細構造は、
図18に示すように表される。
【0131】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置の実装構造においては、
図15および
図18に示すように、半導体デバイスQ1・Q4が2チップずつ配置し、かつ並列接続している。すなわち、半導体デバイスQ1では、2チップのゲートセンス電極はゲート信号端子電極G1にワイヤボンディング接続され、2チップのソースセンス電極はソース信号端子電極S1にワイヤボンディング接続されている。同様に、半導体デバイスQ4では、2チップのゲートセンス電極はゲート信号端子電極G4にワイヤボンディング接続され、2チップのソースセンス電極はソース信号端子電極S4にワイヤボンディング接続されている。
【0132】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置の実装構造においては、
図15に示すように、2チップの半導体デバイスQ1、ダイオードD1および柱状電極18
1上には、上面板電極22
1が配置されている。同様に、
図15においては図示を省略しているが、2チップの半導体デバイスQ4、ダイオードD4および柱状電極18
4上には、上面板電極22
4が配置される。
【0133】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置の実装構造の裏面には、
図16に示すように、ヒートスプレッダとして機能する銅プレート層10bが露出している。
【0134】
その他の構成は、第1の実施の形態に係るパワーモジュール半導体装置1と同様であるため、重複説明は省略する。
【0135】
以上説明したように、本発明によれば、薄型SiCパワーモジュールの反り量を低減化したパワーモジュール半導体装置を提供することができる。
【0136】
[その他の実施の形態]
上記のように、第1〜第4の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0137】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。