(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944692
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】地図表示装置、地図表示方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20160621BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
G09B29/00 A
G01C21/26 C
G09B29/00 F
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-39611(P2012-39611)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-174754(P2013-174754A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年8月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502324066
【氏名又は名称】株式会社デンソーアイティーラボラトリ
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】増谷 修
【審査官】
宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−122926(JP,A)
【文献】
特開2003−167881(JP,A)
【文献】
特開2011−203432(JP,A)
【文献】
特開2009−168561(JP,A)
【文献】
特開2001−222613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00,29/10
G01C 21/26
G06F 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
POIの位置データおよびPOIの属性データを含む地図データを記憶した地図データ記憶部と、
表示範囲を指定する入力部と、
入力部にて指定された範囲の地図データを読み出す読出部と、
前記表示範囲をグリッドに分割する分割部と、
複数のグリッドからなる所定の単位領域で前記表示範囲を走査し、当該単位領域に含まれるPOIを当該領域の中心にあるグリッドの関連POIとして求め、関連POIの属性に基づいて当該領域の中心にあるグリッドが属すべきクラスタを決定するクラスタ決定部と、
決定されたクラスタにしたがってグリッドを着色する着色部と、
着色された地図を表示する表示部と、
を備え、
前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれるPOIの属性データの組み合わせによってクラスタを決定する地図表示装置。
【請求項2】
前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれる所定の属性のPOIの当該単位領域における1グリットあたりの個数が前記表示範囲全体における1グリッドあたりの個数以下の場合には、当該属性のPOIを前記関連POIから除外する請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記クラスタ決定部は、POIがあるグリッドの単位領域のみ走査する請求項1または2に記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記グリッドは、前記地図データの画像を構成するピクセルであり、
前記分割部は、POIをその位置データに基づいて、いずれかのピクセルに配置する請求項1乃至3のいずれかに記載の地図表示装置。
【請求項5】
前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれる最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性との組合せに基づいてクラスタを決定し、
前記着色部は、POIの属性に対応する値がx軸とy軸上に設定されたCIExy色度図を参照して、着色対象のグリッドの単位領域内で最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性の組合せに対応する色を決定する請求項1乃至4のいずれかに記載の地図表示装置。
【請求項6】
前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれる最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性との組合せに基づいてクラスタを決定し、
前記着色部は、あらかじめ定められた各属性に対応付けられた色の中から、最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性に対応する色を読み出し、読み出した2色のハッチングにより前記グリッドを着色する請求項1乃至4のいずれかに記載の地図表示装置。
【請求項7】
前記クラスタ決定部が求めた各グリッドの関連POIの個数をPOIの属性ごとに記憶する記憶部と、
POIの属性を入力するPOI属性入力部と、
を備え、
前記着色部は、前記記憶部から、入力された属性に対応するPOIの個数をグリッドごとに読み出し、読み出したPOIの個数または有無に応じて前記グリッドを着色する請求項1乃至6のいずれかに記載の地図表示装置。
【請求項8】
前記クラスタ決定部が求めた各グリッドの関連POIの個数をPOIの属性ごとに記憶する記憶部と、
前記表示範囲内の所定の範囲を指定する範囲指定入力部と、
前記指定された範囲に含まれるグリッドの関連POIの属性に基づいて、当該指定された範囲のPOIの属性を集計する集計部と、
を備える請求項1乃至7のいずれかに記載の地図表示装置。
【請求項9】
前記表示範囲内において所定の経路を指定する経路指定部と、
前記経路上にあるグリッドを直線上に並べて表示する経路属性表示部と、
を備える請求項1乃至8のいずれかに記載の地図表示装置。
【請求項10】
地図表示装置によって地図を表示する方法であって、
前記地図表示装置が、表示範囲の指定を受け付けるステップと、
前記地図表示装置が、POIの位置データおよびPOIの属性データを含む地図データを記憶した地図データ記憶部から、指定された範囲の地図データを読み出すステップと、
前記地図表示装置が、前記表示範囲をグリッドに分割するステップと、
前記地図表示装置が、複数のグリッドからなる所定の単位領域で前記表示範囲を走査し、当該単位領域に含まれるPOIを当該領域の中心にあるグリッドの関連POIとして求め、関連POIの属性に基づいて当該領域の中心にあるグリッドが属すべきクラスタを決定するステップと、
前記地図表示装置が、決定されたクラスタにしたがってグリッドを着色するステップと、
前記地図表示装置が、着色された地図を表示するステップと、
を備え、
前記クラスタを決定するステップは、前記地図表示装置が、前記単位領域に含まれるPOIの属性データの組み合わせによってクラスタを決定する地図表示方法。
【請求項11】
地図を表示するためのプログラムであって、コンピュータに、
表示範囲の指定を受け付けるステップと、
POIの位置データおよびPOIの属性データを含む地図データを記憶した地図データ記憶部から、指定された範囲の地図データを読み出すステップと、
前記表示範囲をグリッドに分割するステップと、
複数のグリッドからなる所定の単位領域で前記表示範囲を走査し、当該単位領域に含まれるPOIを当該領域の中心にあるグリッドの関連POIとして求め、関連POIの属性に基づいて当該領域の中心にあるグリッドが属すべきクラスタを決定するステップと、
決定されたクラスタにしたがってグリッドを着色するステップと、
着色された地図を表示するステップと、
を実行させ、
前記クラスタを決定するステップは、前記単位領域に含まれるPOIの属性データの組み合わせによってクラスタを決定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POI(Point of interest)データを含む地図を表示する地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カーナビゲーション装置等において、所望の検索キーに基づいて場所を検索して、その場所を地図上に表示する検索システムが知られている。カーナビゲーション装置等においては、検索キーを入力する操作が煩雑であるので、検索キーの入力を容易に行えるシステムも提案されている。
【0003】
従来の地点情報の検索システムは、検索キーに対応する検索結果を得ることができるが、入力した検索キーに類似する情報を得ることができないので、検索された地点情報の他に、類似する情報がある場所を知ることができなかった。従って、類似する情報を得たい場合には、再度、検索キーを入力しなければならず、煩雑な作業を伴う。また、従来の地点情報の検索システムは、ユーザが検索キーを思いつかない場合には、検索をすることができなかった。
【0004】
このような背景に鑑み、本出願人は、表示された地図に存在する店舗や施設等の複数の地点の特色を一目で概観できる視認性の高い地図を表示する方法を提案した(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−293823号公報
【特許文献2】特開2008−224993号公報
【特許文献3】特開2011−209372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人が提案した方法は、人手によらずに自動で地域の特色を示すエリアを生成でき、作成者の主観に基づくバイアスがかからない。また、最新のデータに基づいて、適時にアップデートを行えるなどのメリットがある。
【0007】
しかしながら、K−Meansなどを用いたクラスタリングでは、クラスタリングの計算処理に時間がかかるという課題があった。特に、リアルタイムなデータや、インタラクティブなデータを処理する場合には、その都度クラスタリングを行うことが困難であった。その一方で、必ずしも、厳密なクラスタリング結果を必要としない場合もあった。
【0008】
そこで、上記背景に鑑み、簡易な方法によって地域の特色を示した地図表示を行える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地図表示装置は、POIの位置データおよびPOIの属性データを含む地図データを記憶した地図データ記憶部と、表示範囲を指定する入力部と、入力部にて指定された範囲の地図データを読み出す読出部と、前記表示範囲をグリッドに分割する分割部と、複数のグリッドからなる所定の単位領域で前記表示範囲を走査し、当該単位領域に含まれるPOIを当該領域の中心にあるグリッドの関連POIとして求め、関連POIの属性に基づいて当該領域の中心にあるグリッドが属すべきクラスタを決定するクラスタ決定部と、決定されたクラスタにしたがってグリッドを着色する着色部と、着色された地図を表示する表示部とを備える。
【0010】
このように各グリッドの関連POIの属性に基づいてグリッドのクラスタを決定し、当該クラスタにしたがってグリッドを着色するという簡単な方法により、地域の特色を表すエリアを表示することができ、地域の特色を示すエリアを表示するための計算処理時間を大幅に短縮できる。
【0011】
本発明の地図表示装置において、前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれるPOIの属性データの組み合わせによってクラスタを決定してもよい。この構成により、エリアの特徴を示すのに適したクラスタを決定できる。
【0012】
本発明の地図表示装置において、前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれる所定の属性のPOIの当該単位領域における1グリットあたりの個数が前記表示範囲全体における1グリッドあたりの個数以下の場合には、当該属性のPOIを前記関連POIから除外する構成としてもよい。この構成により、表示範囲内に多数存在する属性のPOIをエリアの特徴から除外することができる。
【0013】
本発明の地図表示装置において、前記クラスタ決定部は、POIがあるグリッドの単位領域のみ走査を行ってもよい。これにより、走査の処理を高速に行うことができる。
【0014】
本発明の地図表示装置において、前記グリッドは、前記地図データの画像を構成するピクセルであり、前記分割部は、POIをその位置データに基づいて、いずれかのピクセルに配置する構成としてもよい。これにより、表示範囲を最小単位のグリッドに分割できる。また、地図画像上でPOI画像が複数のピクセルにまたがっている場合であっても、POIの位置データに基づいていずれかのピクセルに配置するので、適切にエリアの特徴を求めることができる。
【0015】
本発明の地図表示装置において、 前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれる最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性との組合せに基づいてクラスタを決定し、前記着色部は、POIの属性に対応する値がx軸とy軸上に設定されたCIExy色度図を参照して、着色対象のグリッドの単位領域内で最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性の組合せに対応する色を決定してもよい。これにより、クラスタが異なっても同じ属性のPOIを含むグリッドには類似する色が着色されるので、色によってエリアの特徴が近似しているかどうかを把握することができる。
【0016】
本発明の地図表示装置において、前記クラスタ決定部は、前記単位領域に含まれる最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性との組合せに基づいてクラスタを決定し、前記着色部は、あらかじめ定められた各属性に対応付けられた色の中から、最も多いPOIの属性と次に多いPOIの属性に対応する色を読み出し、読み出した2色のハッチングにより前記グリッドを着色してもよい。これにより、クラスタが異なっても同じ属性のPOIを含むグリッドのハッチングにて同じ色が含まれるので、色によってエリアの特徴が近似しているかどうかを把握することができる。
【0017】
本発明の地図表示装置は、前記クラスタ決定部が求めた各グリッドの関連POIの個数をPOIの属性ごとに記憶する記憶部と、POIの属性を入力するPOI属性入力部とを備え、前記着色部は、前記記憶部から、入力された属性に対応するPOIの個数をグリッドごとに読み出し、読み出したPOIの個数または有無に応じて前記グリッドを着色してもよい。記憶部に関連POIの属性ごとの個数を記憶しているので、入力されたPOIの属性に対応するPOIの個数を読み出すだけで、グリッド内に配置されたPOIの属性を求めることができる。
【0018】
本発明の地図表示装置は、前記クラスタ決定部が求めた各グリッドの関連POIの個数をPOIの属性ごとに記憶する記憶部と、前記表示範囲内の所定の範囲を指定する範囲指定入力部と、前記指定された範囲に含まれるグリッドの関連POIの属性に基づいて、当該指定された範囲のPOIの属性を集計する集計部とを備えてもよい。記憶部に関連POIの属性ごとの個数を記憶しているので、指定された範囲内にあるPOIの属性を容易に集計することができる。
【0019】
本発明の地図表示装置は、前記表示範囲内において所定の経路を指定する経路指定部と、前記経路上にあるグリッドを直線上に並べて表示する経路属性表示部とを備えてもよい。これにより、経路沿いのエリアの特徴を示すことができる。例えば、どのあたりで休憩にするか、どこで食事にするかなどのプランを立てるのに役立てることができる。
【0020】
本発明の地図表示方法は、地図表示装置によって地図を表示する方法であって、前記地図表示装置が、表示範囲の指定を受け付けるステップと、前記地図表示装置が、POIの位置データおよびPOIの属性データを含む地図データを記憶した地図データ記憶部から、指定された範囲の地図データを読み出すステップと、前記地図表示装置が、前記表示範囲をグリッドに分割するステップと、前記地図表示装置が、複数のグリッドからなる所定の単位領域で前記表示範囲を走査し、当該単位領域に含まれるPOIを当該領域の中心にあるグリッドの関連POIとして求め、関連POIの属性に基づいて当該領域の中心にあるグリッドが属すべきクラスタを決定するステップと、前記地図表示装置が、決定されたクラスタにしたがってグリッドを着色するステップと、前記地図表示装置が、着色された地図を表示するステップとを備える。
【0021】
この構成により、本発明の地図表示装置と同様に、簡単な方法により、地域の特色を表すエリアを表示することができる。
【0022】
本発明のプログラムは、地図を表示するためのプログラムであって、コンピュータに、表示範囲の指定を受け付けるステップと、POIの位置データおよびPOIの属性データを含む地図データを記憶した地図データ記憶部から、指定された範囲の地図データを読み出すステップと、前記表示範囲をグリッドに分割するステップと、複数のグリッドからなる所定の単位領域で前記表示範囲を走査し、当該単位領域に含まれるPOIを当該領域の中心にあるグリッドの関連POIとして求め、関連POIの属性に基づいて当該領域の中心にあるグリッドが属すべきクラスタを決定するステップと、決定されたクラスタにしたがってグリッドを着色するステップと、着色された地図を表示するステップとを実行させる。
【0023】
この構成により、本発明の地図表示装置と同様に、簡単な方法により、地域の特色を表すエリアを表示することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、各グリッドの単位領域にあるPOIの属性に基づいてグリッドのクラスタを決定し、当該クラスタにしたがってグリッドを着色するという簡単な方法により、地域の特色を表すエリアを表示することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施の形態の地図表示装置の構成を示す図である。
【
図2】表示範囲をグリッドに分割した例を示す図である。
【
図3】クラスタ決定部が準備するクラスタの例を示す図である。
【
図5】各グリッドが属すべきクラスタのクラスタ番号を決定した例を示す図である。
【
図6】関連POI記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態の地図表示装置の動作を示す図である。
【
図8】第2の実施の形態において、着色部が着色する色について説明するための図である。
【
図9】関連POI記憶部に記憶されたデータにおいてPOIの属性が指定された例を示す図である。
【
図10】第4の実施の形態の地図表示装置の構成を示す図である。
【
図11】関連POI記憶部に記憶されたデータにおいて範囲指定された例を示す図である。
【
図12】第5の実施の形態の地図表示装置の構成を示す図である。
【
図13】経路属性データを表示した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の地図表示装置1の構成を示す図である。地図表示装置1は、地図データを記憶した地図データベース(以下、「地
図DB」という)10と、各種の情報を入力する入力部12と、地図を表示する表示部14と、演算制御を行う演算制御部16と、関連POI記憶部26とを備えている。入力部12は、例えば、タッチパネルやキーボード、または他の装置(例えばナビゲーション装置)からの信号入力を受け付ける入力端子等により構成される。
【0027】
地
図DB10には、POIのデータも記憶されている。POIのデータには、POIの位置と属性を示すデータが含まれている。属性は、例えば、レストラン、ガソリンスタンド、観光施設等のデータである。さらにPOIのデータには、POIの内容を説明する詳細なデータが含まれていてもよい。
【0028】
演算制御部16は、地図読出部18と、分割部20と、クラスタ決定部22と、着色部24とを有している。これらの機能は、CPUがプログラムを実行することにより実現される。このようなプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0029】
入力部12は、地図を表示する範囲を指定するデータを入力する機能を有する。例えば、都道府県や市町村などを指定することによって表示範囲を指定することができる。また、地図表示装置1がGPS(Global Positioning System)を備えている場合には、GPSによって得られた現在位置を中心とする表示範囲を指定することができる。
【0030】
地図読出部18は、入力部12より入力された表示範囲の指定データに基づいて、指定された範囲の地図データを地
図DB10から読み出す。地図読出部18は、読み出した地図データを分割部20に入力する。
【0031】
分割部20は、所定の表示範囲の地図データをグリッドに分割する機能を有する。
図2は、表示範囲をグリッドに分割した例を示す図である。
図2では、表示範囲を10×10のグリッドに分割した例を示しているが、グリッドの詳細度は、これに限定されるものではなく、表示部14の大きさや地図データの縮尺などに応じて適宜変更することが可能である。
【0032】
クラスタ決定部22は、各グリッドが属すべきクラスタを決定する機能を有する。本実施の形態では、グリッドの単位領域にあるPOIの属性に応じて、クラスタを決定する。次に、クラスタ決定部22の処理について詳細に説明する。
【0033】
クラスタ決定部22は、まず、表示範囲に含まれるPOIの属性の組合せに対して、クラスタを準備する。
図3は、クラスタ決定部22が準備するクラスタの例を示す図である。クラスタ決定部22は、単位領域に最も多く含まれる属性(第1位の属性)と次に多く含まれる属性(第2位の属性)の組合せにより、準備したクラスタにクラスタ番号を与えている。
図3に示す例では、第1位のPOIが「マンション」、第2位のPOIが「飲食店」のクラスタはクラスタ番号「1」、第1位のPOIが「マンション」、第2位のPOIが「ゴルフ場」のクラスタはクラスタ番号「2」、第1位のPOIが「マンション」、第2位のPOIが存在しないクラスタはクラスタ番号「3」といった具合である。
【0034】
次にクラスタ決定部22は、複数のグリッドからなる所定の領域で表示範囲を走査する。本明細書では、走査の単位となる領域を「単位領域」と呼ぶ。本実施の形態では、単位領域は、3×3の大きさを有している。単位領域の大きさは、任意に変更することができる。単位領域を大きく設定すれば、大まかな傾向を把握することができ、単位領域を小さく設定すれば、精細な分析が可能となる。また、単位領域の形状は、正方形に限られず、円形やひし形など様々な形状が考えられる。クラスタ決定部22は、単位領域内に含まれるPOIの属性の組合せによってクラスタ番号を決定し、当該単位領域の中心にあるグリッドが属すべきクラスタのクラスタ番号とする。本明細書では、単位領域内に含まれるPOIをその単位領域の中心のグリッドの「関連POI」と呼ぶ。
【0035】
図4は、表示範囲を走査する例を示す図である。表示範囲をくまなく走査すれば、その走査の方向や順序は自由である。
図4に示す例では、単位領域A内にはPOIが4個あり、その他の属性を有するPOIは存在しない。したがってこの単位領域Aに対応するクラスタ番号は、
図3を参照すると、「3」である。したがって、単位領域Aの中心にあるグリッドG(網掛けで示している)のクラスタ番号は「3」となる。同様にして、表示範囲内のグリッドがそれぞれ属すべきクラスタを決定していく。
図5は、各グリッドが属すべきクラスタのクラスタ番号を決定した例を示す図である。
【0036】
クラスタ決定部22は、単位領域内に含まれるPOIの密度が、表示範囲全体における同じ属性のPOIの密度より小さい場合には、そのPOIを関連POIとしてカウントしない。例えば、「マンション」のPOIが20個あると仮定すると、表示範囲全体における「マンション」の密度は、20個/100グリッド=0.2個/グリッドである。単位領域内に、「マンション」のPOIが1個の場合には、1個/9グリッド=0.11個/グリッドである。したがって、単位領域内に「マンション」のPOIが1個しかない場合には、「マンション」のPOIは無視される。これにより、表示範囲内に多数存在するありふれたPOIがエリアを示す特徴とならないようにすることができる。ここでは、閾値として表示範囲全体における同じ属性のPOIの密度を用いたが、閾値はこれに限らず、例えば、表示範囲全体における密度に所定の重みを乗じてもよいし、あらかじめ設定された値であってもよい。
【0037】
関連POI記憶部26は、クラスタ決定部22が求めた各グリッドの関連POIを記憶する。
図6は、関連POI記憶部26に記憶されたデータの例を示す図である。
【0038】
図1に戻って、地図表示装置1について説明する。着色部24は、クラスタ番号に応じて、グリッドを着色する機能を有している。表示部14は、グリッドが着色された地図を表示する。
図5に示す地図において、各グリッドにクラスタの番号に対応した色が付与され、エリアが塗り分けられる(同図では着色していない)。
【0039】
図7は、第1の実施の形態の地図表示装置1の動作を示すフローチャートである。地図表示装置1は、まず、入力部12より入力された表示範囲を示すデータに基づいて表示範囲を決定し、決定された表示範囲の地図を地
図DB10から読み出す(S10)。続いて、地図表示装置1は、読み出した表示範囲をグリッドに分割する(S12)。次に、地図表示装置1は、各POIの表示範囲内における密度を求める(S14)。地図表示装置1は、表示範囲内にあるPOIの組合せに対して、クラスタを準備し、クラスタ番号を設定する(S16)。
【0040】
次に、地図表示装置1は、各グリッドの関連POIを求める(S18)。具体的には、上述したとおり、グリッドの単位領域に含まれるPOIの個数を属性ごとに求める。続いて、地図表示装置1は、関連POIの属性の組合せに基づいて各グリッドが属すべきクラスタを決定し(S20)、グリッドを決定されたクラスタに応じた色を付ける(S22)。そして、地図表示装置1は、グリッドが着色された地図を表示する(S24)。以上、第1の実施の形態の地図表示装置1の構成及び動作について説明した。
【0041】
第1の実施の形態の地図表示装置1は、グリッドの関連POIの属性の組合せに基づいて、当該グリッドが属すべきクラスタを求め、クラスタに応じた着色を行う。これにより、簡易な構成で、表示範囲に含まれる特徴的なエリアを視覚的に表示することができ、表示に要する処理時間を短縮できる。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態の地図表示装置について説明する。第2の実施の形態の地図表示装置の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じである。第2の実施の形態の地図表示装置は、グリッドに着色する色に特徴を有する。
【0043】
図8は、着色部24が着色する色について説明するための図である。着色部24は、x軸、y軸のそれぞれにPOIの属性を設定したCIExy色度図を有している。同図では、x軸、y軸のそれぞれに「マンション」「飲食店」「ゴルフ」の属性が設定されている。
【0044】
着色部24は、グリッドに着色する色を決定する際には、グリッドの関連POIのうち最も多かった属性(第1位の属性)をx軸にとり、次に多かった属性(第2位の属性)をy軸にとる。
図8に示す例では、1位が「飲食店」、2位が「ゴルフ場」の例を示している。着色部24は、それらの値が交差する場所にある色を用いて、グリッドに着色する。
【0045】
第2の実施の形態の地図表示装置は、同じ属性のPOIを含むグリッドは比較的近い色で着色されるので、色によってエリアの特徴が類似しているかどうかを把握することができる。なお、本実施の形態では、CIExy色度図を用いる例について説明したが、別の方法として、2種類の色からなるハッチングを用いることもできる。すなわち、グリッドを2種類の色からなるハッチングで着色する際に、同じ属性のPOIには同じ色を用いることで、色によってエリアの特徴が近似しているかを判断することができる。
【0046】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態の地図表示装置の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じである。第3の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した処理によりエリアの特徴を示す地図を表示した後に、入力部12よりPOIの属性を指定するデータが入力された場合には、クラスタ決定部22が再度の走査を行うことなく、入力された属性のPOIの個数を関連POI記憶部26から読み出し、入力されたPOI属性の特徴を有するエリアを表示することができる。
【0047】
図9は、関連POI記憶部26に記憶されたデータにおいて「P2」の属性が選択された例を示す図である。各グリッドの「P2」の個数を読み出すことができる。同図に示すとおり、地図表示装置は、「P2」に関連付けられたデータを読み出すだけでよいので、再度の走査を要せず、速やかに「P2」の属性の関連POIを持つグリッドを求めることができる。
【0048】
そして、着色部24は、読み出したPOIの有無によりグリッドを着色することによって、指定された属性を有するエリアを着色することができる。また、着色部24は、読み出したPOIの個数に応じた濃淡をつけてグリッドを着色してもよい。これにより、指定された属性の強弱を濃淡で表現することができる。以上の動作により、地図表示装置3は、第1の実施の形態と同様にして特徴を示すエリアを表示した後、ユーザからの入力により、特定の属性について絞り込み検索を行うことができる。
【0049】
(第4の実施の形態)
図10は、第4の実施の形態の地図表示装置4の構成を示す図である。第4の実施の形態の地図表示装置4の基本的な構成は、第3の実施の形態と同じである。第3の実施の形態と同様に、各グリッドの関連POIを記憶している。第4の実施の形態の地図表示装置4は、第3の実施の形態の構成に加えて、集計部28を備えている。
【0050】
入力部12は、集計部28によって特徴を集計すべき範囲を指定するデータの入力を受け付ける。集計部28は、入力部12より範囲を指定するデータが入力された場合には、クラスタ決定部22が再度の走査を行うことなく、入力された範囲について、関連POIの属性ごとの個数を集計する。
図11では、グリッドG3〜G5が範囲指定された場合の例を示す。表示部14は、指定されたグリッドのPOIの個数を属性ごとに集計したデータを表示する。これにより、地図表示装置4は、指定された範囲の特徴を示す属性を提示することができる。
【0051】
(第5の実施の形態)
図12は、第5の実施の形態の地図表示装置5の構成を示す図である。第5の実施の形態の地図表示装置5の基本的な構成は、第3の実施の形態と同じである。第3の実施の形態と同様に、各グリッドの関連POIを記憶している。第5の実施の形態の地図表示装置5は、第3の実施の形態の構成に加えて、経路属性生成部30を備えている。
【0052】
入力部12は、地図上に設定された経路のデータを入力する機能を有する。例えば、タッチパネルに表示された地図上にユーザが経路を引き、タッチパネルが経路を検出することとしてもよいし、また、図示しないナビゲーション装置にて設定されている経路を入力することとしてもよい。
【0053】
経路属性生成部30は、入力された経路沿いのグリッドを特定し、当該グリッドのクラスタのデータを着色部24に入力する。着色部24ではクラスタ番号に応じてグリッドを着色して表示部14に入力する。表示部14は、着色部24から入力されたグリッドを直線上に並べて表示する。
【0054】
図13は、経路属性データを表示した例を示す図である。
図13の上側に示す地図は、経路を示しており、下側に示すバーは、経路沿いのエリアの特徴を示している。このように経路沿いのエリアの特徴を表示することにより、どのあたりで休憩にするか、どのあたりで食事をするかなどのドライブプランを立てるのに役立てることができる。
【0055】
以上、実施の形態の地図表示装置の構成及び動作について詳しく説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0056】
上記した実施の形態においては、表示範囲をくまなく走査する例について説明したが、より高速に処理を行うために、表示範囲の間引き走査を行ってもよい。例えば、表示範囲において、グリッド内にPOIを含む場合にのみ、当該グリッドを含む単位領域のPOIを属性ごとにカウントし、POIを含まないグリッドについては単位領域を走査しないこととしてもよい。
【0057】
上記した実施の形態では、表示範囲をグリッドに分割して、グリッドに対して着色を行う例について説明したが、地図データのピクセルを単位として処理を行ってもよい。この場合、POIのデータをその位置データに基づいて、いずれかのピクセル上に配置する。これにより、上記した実施の形態と同様にして、エリアの特徴を示す地図を表示することができる。
【0058】
上記した第3〜第5の実施の形態においては、関連POI記憶部26に記憶された各グリッドの関連POIデータを用いた様々な処理を説明したが、その他の応用も可能である。本発明では、グリッドごとに記憶しているので、新たな計算を行うことなく、グリッドごとのデータを用いて様々な処理を行うことができるという効果がある。
【0059】
上記した実施の形態では、POIの属性に応じて地図上の特徴エリアを表示する例を説明したが、本発明は、POIに限らず、2〜3次元程度のエリアクラスタリングに有効であり、画面上での区域分割や概要表示などに応用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したとおり、本発明は地域の特色を示した地図表示を簡易に行うことができるという効果を有し、ナビゲーション装置等などの地図表示に用いるのに有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 地図表示装置
10 地
図DB
12 入力部
14 表示部
16 演算制御部
18 地図読出部
20 分割部
22 クラスタ決定部
24 着色部
26 関連POI記憶部
28 集計部
30 経路属性生成部