(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944698
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】パワー半導体スイッチの制御回路及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H03K 17/08 20060101AFI20160621BHJP
H03K 17/56 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
H03K17/08 Z
H03K17/56 Z
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-53172(P2012-53172)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2012-195937(P2012-195937A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】11002165.6
(32)【優先日】2011年3月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512061951
【氏名又は名称】シーティー−コンセプト・ホールディング・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・タルハイム
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ガルシア
【審査官】
白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−261020(JP,A)
【文献】
特開平06−296362(JP,A)
【文献】
特開2009−253484(JP,A)
【文献】
特開2002−368593(JP,A)
【文献】
特開2004−032893(JP,A)
【文献】
特開2002−151989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/08
H03K 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体スイッチのゲートに対するゲート信号を発生するための信号処理ユニットと、抵抗直列回路と、特定の電圧を超える前記パワー半導体スイッチのコレクタ・エミッタ電圧に応答してブレークダウンするように接続される少なくとも一つの第一の半導体素子を含む、パワー半導体スイッチを駆動するための駆動回路であって、
前記信号処理ユニットが、
第一の入力と、
前記パワー半導体スイッチのコレクタ・エミッタ電圧に対する基準電圧を入力する第二の入力と、
前記パワー半導体スイッチのゲートに接続される出力と、
を含み、
前記抵抗直列回路が、
前記パワー半導体スイッチのパワー供給端子に接続される入力と、
直列に接続される2つまたはそれ以上の抵抗と、
前記信号処理ユニットの前記第一の入力に接続される出力と、
を含み、
前記少なくとも一つの第一の半導体素子が、
a)前記抵抗直列回路の2つの抵抗の間の端子またはb)前記信号処理ユニットに接続される前記抵抗直列回路の前記出力のいずれかに導電性の接続線を通じて接続される出力を含み、
前記少なくとも一つの第一の半導体素子は、該少なくとも一つの第一の半導体素子の前記出力での電位が、前記パワー半導体スイッチがオン状態の場合に前記パワー半導体スイッチの前記ゲートの電位より大きいようなブレークダウン電圧を有する、
パワー半導体スイッチを駆動するための駆動回路。
【請求項2】
前記少なくとも一つの第一の半導体素子と直列に接続される少なくとも一つの第二の半導体素子を更に含む、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記導電性の接続線が、前記少なくとも一つの第一の半導体素子の前記出力を、前記抵抗直列回路の2つの抵抗の間の端子に接続し、
前記少なくとも一つの第二の半導体素子が、前記パワー半導体スイッチの前記パワー供給端子に接続され、
前記少なくとも一つの第一の半導体素子と前記少なくとも一つの第二の半導体素子が、
前記少なくとも一つの第一の半導体素子のブレークダウンの間に、前記少なくとも一つの第一の半導体素子の前記出力をコンスタントに保持するように接続される、
請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記少なくとも一つの第二の半導体素子に並列に接続されたスイッチであって、前記信号処理ユニットに接続される制御端子を含む前記スイッチを更に含み、
前記信号処理ユニットが、前記パワー半導体スイッチの回路ブレーク動作の開始時に、前記スイッチを閉じる、
請求項2に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記信号処理ユニットが、前記パワー半導体スイッチのオン状態で前記スイッチを閉じる、請求項4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第二の半導体素子に並列に接続される前記スイッチの前記制御端子が、前記信号処理ユニットの前記出力に接続される、請求項4または5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記第二の半導体素子に並列に接続されるスイッチであって、前記信号処理ユニットに接続される制御端子を含む前記スイッチを更に含み、
前記信号処理ユニットが、前記パワー半導体スイッチの回路ブレーク動作の開始時に、前記スイッチを閉じる、
請求項2に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記信号処理ユニットが、前記パワー半導体スイッチのオン状態で前記スイッチを閉じる、請求項7に記載の駆動回路。
【請求項9】
前記第二の半導体素子に並列に接続される前記スイッチの前記制御端子が、前記信号処理ユニットの前記出力に接続される、請求項7または8に記載の駆動回路。
【請求項10】
前記少なくとも一つの第一の半導体素子のブレークダウン電圧が、100ボルトより大きい、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項11】
一つの前記第一の半導体素子の前記出力を、前記抵抗直列回路の抵抗間の端子に接続する少なくとも一つの導電性の接続線を更に含む、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項12】
反応時間抵抗を含む反応時間ネットワークを更に含み、
前記抵抗直列回路の前記出力が、前記反応時間ネットワークを通じて前記信号処理ユニットの前記第一の入力に接続される、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項13】
前記抵抗直列回路と前記反応時間ネットワークとの間に接続され、かつ前記反応時間ネットワークと並列に接続された少なくとも周波数依存または時間依存のインピーダンスを更に含む、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項14】
前記少なくとも周波数依存または時間依存のインピーダンスのいずれかが、抵抗と容量との直列回路を含む、請求項13に記載の駆動回路。
【請求項15】
前記少なくとも周波数依存または時間依存のインピーダンスのいずれかが、抵抗と、前記信号処理ユニットによって制御されるスイッチとの直列回路を含む、請求項13に記載の駆動回路。
【請求項16】
前記少なくとも一つの第一の半導体素子が、共通の基準電位で、ブレークダウン電流をアノードに導通するように接続された、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項17】
前記少なくとも一つの第一の半導体素子が、ブレークダウン電流を前記パワー半導体スイッチのゲートに導通するように接続された、請求項1に記載の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立の諸請求項の上位概念に基づく、パワー半導体スイッチの制御回路及びその制御方法に関する。
【0002】
パワー半導体素子の場合、とりわけMOSFET制御ヘッドを有するパワー半導体素子の場合、一般にパワー半導体素子(以下、簡単に素子或いは構成部品とも呼ばれる)が完全にスイッチオンされて、素子の負荷接続端或いは出力接続端を通じて降下し、IGBTの場合、通常VCEという名前で呼ばれているコレクタ・エミッタ電圧に対応する電圧が、望ましい低い値まで低下するまで、一定の時間がかかる。例えば、IGBTが短絡の際にスイッチオンされるようなエラーケースの際には、素子の負荷接続端を通して発生する出力電流は、IGBTがリニア−(線形)な作動領域内で生成される出力電流のための値を越える程高くなることがある。そのようなケースの際には、出力電流は飽和値に達し、その際、IGBTのコレクタ・エミッタ電圧が高いレベルにとどまっている。その結果、IGBTの損失電力が非常に高くなってしまう。
【0003】
従って、損傷を避けるために、パワー半導体素子のエネルギーを制限することが必要となる。そのために、素子のスイッチオン時間が短絡ケースの場合、一般に10μ秒に制限される。正常な作動の監視のために、通常、いわゆるVCEモニタリングが用いられ、それを用いて、パワー半導体スイッチの出力電流がその正常な作動を許すための電流を越えるか否かを検知することができる。即ち、VCEモニタリングは、半導体スイッチの出力端での過電流検知のために用いられる。VCEモニタリングの場合、IGBTのコレクタ・エミッタ電圧、即ちIGBTを通した電圧降下が測定されて目標値(基準値)と比較されるが、その際、この目標値は、正常な作動(ノーマル作動とも呼ばれる)の場合には許容短絡時間の間に割り込まれるはずである。ノーマル作動の際には、コレクタ・エミッタ電圧は、一般に10μ秒の、上述の短絡作動のために許された時間の経過後は、通常10V未満の値へ低下する。それでも素子の電圧等級、素子の作動条件、素子のために用いられる技術や素子の中での電荷担体プラズマの調整に応じて、コレクタ・エミッタ電圧のためにはもっと高い電圧も可能であり、例えば6.5kVの電圧等級のIGBTの場合には、1000Vまでの領域のコレクタ・エミッタ電圧が許されている。この場合、コレクタ・エミッタ電圧は一般に、短絡ケースのために許されているよりもより長いスイッチオン時間の後で、初めて10V未満に低下する。
【0004】
従来技術から、VCEモニタリングのために幾つかの方法が知られている。例えば、米国特許明細書 US−A 4 423 457 には、トランジスタのコレクタに現れる高い電圧がダイオードによって、当該の素子の後に続いている回路で処理可能な値に制限される、という方法が開示されている。このダイオードのカソードは、トランジスタのコレクタと接続されている。トランジスタのための制御回路に実装されている電源は、ダイオードのアノードに接続されている。このダイオードは、制御すべきトランジスタの電圧等級によって定められている電圧よりも高い阻止電圧を持っている。阻止電圧をもっと高くするためには、複数のダイオードが直列に接続される。ダイオードのアノードの電位は、アノードに対して接続されている電源の出力電圧が制御回路によって供給される電圧値に制限されるまで、トランジスタのコレクタの電位にダイオードの順方向電圧を加えた電位に従う。かくして、測定可能な最高コレクタ・エミッタ電圧は、その供給電圧からダイオードの順方向電圧を差し引いた値に制限される。米国特許明細書US−A4 423 457 に記載されている方法によれば、短絡作動のために許された時間の経過後に、一般に10V未満のコレクタ・エミッタ電圧を測定することができる。これは、600Vから1700VまでのIGBT電圧等級のためには基本的に十分である。
【0005】
ノーマル作動の下でのスイッチオン過程の間に、VCEモニタリングは通常、停止時間(Ausblendzeit:fadeout time)の間に作動終了される。この停止時間は、簡単な手法によれば、電源に接続された容量によって調節される。この容量は、トランジスタのスイッチオフ状態の間に信号処理ユニットによってスイッチを通じて放電され、またトランジスタのスイッチオン過程の際に電源を通じて充電される。
【0006】
ヤン・タルハイム(Jan Thalheim)とハインツ・リュエディ(Heinz Ruedi)著、『IGBT及びパワーMOSFETゲートチップセットのための汎用チップセット』“Universal Chipset for IGBT and Power-MOSFET Gate Drivers”、PCIM Europe発行、ニュルンベルク、2007年刊、からもVCEモニタリングのための一つの方法が知られているが、この方法については、以下に
図1に基づいて説明される。
図1は、制御回路2と、制御される制御接続端G(ゲートとも呼ばれる)を有するパワー半導体スイッチSとを備えた回路装置1を示しているが、この回路装置では、補償分圧器を用いてVCEモニタリングが可能である。制御回路2は、パワー半導体スイッチSの制御に使われている。抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3、及びRMEによって作られている分圧器は、エラーケースの際に、パワー半導体スイッチSの出力接続端/コレクタCに発生する高い電圧を、後続の或いは後ろに接続されている信号処理ユニット(制御ユニット)のコンパレータCOMPの許容入力電圧領域内にある値へ引き下げるために用いられている。この分圧器の場合、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3は直列に接続されている。これ等の抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3の値は、これ等の抵抗の内部での損失出力を又構成部品と場合によっては必要となる冷却措置のためのコストを出来る限り低く保持するために、一般に非常に高く選ばれなければならない。抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3の値が高いことと信号処理ユニット或いはコンパレータCOMP(それ等の配線も含める)の寄生入力容量CAPのために、この回路装置の場合、比較的高い時間定数或いは反応時間が生じ、それに対応して信号遅延が引き起こされる。更に、寄生入力容量CAPの値は処理に依存して大きく変動することがある。とりわけ回路板(PCBプリント回路板)による配線が複雑な場合には、寄生入力容量CAPは、層構造、メーカー、及び製造ロットに大きく依存することがある。
【0007】
この影響、即ち場合によっては寄生入力容量CAPに起因する比較的高い時間定数を小さくするために、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEにドミナント(“優位の”)容量CVCE1、CVCE2、CVCE3、CMEが割り当てられている補償分圧器を用いることができる(
図1参照)。この場合、追加的に必要となる取付けスペース、最高許容作動温度の低下、部品点数の増加、高いコスト、及び一般に信頼性の低下が欠点となる。そのような補償分圧器の採用の際のもう一つの欠点は、コンパレータCOMPと信号処理ユニットの制御ユニットCONTROLとのモノリシック集積の場合、VCEモニタリングが作動終了される停止時間の調整が、コンパレータCOMPによって行われる比較、即ち測定されたコレクタ・エミッタ電圧と目標値との比較の後に続けられなければならない、それ故、制御ユニットCONTROLの内部で或いは制御ユニットCONTROLによって行われなければならないということである。しかしながら、このことは、例えばデジタルプログラミング或いはモノリシック集積された信号処理ユニットの上の更なる接続ピン等のような、停止時間の調整のための追加の措置が要求される。
【0008】
補償分圧器の上述の欠点は、上に述べられた分圧器RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEをドミナント容量によって補償するのではなく、代わりにパワー半導体スイッチSの後に続いている信号処理ユニットの入力容量を、寄生入力容量CAPに対して(ドミナント)反応時間容量CAを並列接続することによって、VCEモニタリングの停止時間を実現するために必要な制御回路の時間定数が得られるまで増加させることによって、回避することができる。反応時間容量CAには、一般に反応時間抵抗RAが割り当てられる。このことが
図2に示されているが、
図2には、VCEモニタリングを行うことのできる、制御回路2′とパワー半導体スイッチSとを備えた回路装置1′が示されている。パワー半導体スイッチSがスイッチオフされた状態の時には、反応時間容量CAは、制御ユニットCONTROLによってスイッチM_Dを介して、制御回路2′の予め定められている基準電位Com或いはveeというより低い電位へ放電される。パワー半導体スイッチSのスイッチオン過程の際には、反応時間容量CAは、パワー半導体スイッチSのコレクタCに接続されている抵抗回路RVCE1、RVCE2、RVCE3を通じて充電される。しかしながら、その際には、コレクタ・エミッタ電圧の低下が、この低下に応じた反応時間の延長をもたらす。このことは、
図2に示されている回路装置1′の場合には、短絡エネルギーは広い範囲にわたって一定に保持されることができるが、パワー半導体スイッチSの最適な設計或いは作動の観点から、予期しない制限をもたらすことがある。
【0009】
コレクタ・エミッタ電圧の広い領域内での反応時間の変動を最小化するために、“2SC0435T Description Application Manual”、CTコンセプト・テクノロギイAG社発行、第24版、2010年9月刊、(特に、第10頁(http://www.igbt-driver.com/fileadmin/Public/PDF/Products/ENG/SCALE-2/Cores/2SC0435T/2SC0435T_Manual.pdf を通じて得られる)には、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEによって形成されている分圧器の中点における電位VCMを、ダイオードDGH(
図2参照)によって、ダイオードDGHの順方向電圧を加えて最大値VCM_MAXに、即ちパワー半導体スイッチSのための制御回路2′で得られる、少なくとも部分的に一定の電位に、制限することが提案されている。低いコレクタ・エミッタ電圧の場合、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEによって形成される分圧器は直線的に(リニアに)働く。コレクタ・エミッタ電圧が比較的高い場合には、この分圧器の出力電圧は、ダイオードDGHによって最大値VCM_MAXに制限される。それ故、VCM*RVCE/(RME||RA)よりも大きい(高い)コレクタ・エミッタ電圧の場合、近似的に、VCMの値、従って反応時間は一定である。ここで、RVCは抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3及びRMEの抵抗値の和に対応し、RME||RAは抵抗RMEとRAの並列回路の抵抗値に対応している。最大値VCM_MAXは、例えば作動電圧/供給電圧Visoから或いは制御回路2′で制御装置CONTROLによって接続された、パワー半導体スイッチSの制御接続端Gのための電圧から導き出すことができる。ここで、“接続された電圧”とは、制御ユニットCONTROLの、パワー半導体スイッチSのスイッチオンされた状態に対応している出力段M_ONの出力端GHの出力電圧と考えることができる。分圧器RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEの中点における電圧VCMは、コレクタ・エミッタ電圧が予め定められている限界値VCE_MINよりも大きい限り、この最大値VCM_MAXに制限される。しかしながら、限界値VCE_MINよりも低いコレクタ・エミッタ電圧の場合、分圧器RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEの中点での電圧VCMは、最大値VCM_MAXよりも小さいので、この場合にも、反応時間はそれに応じて延長される。『2SC0435T説明及び適用マニュアル(2SC0435T Description Application Manual)』、CTコンセプト・テクノロギイAG社発行、第24版、2010年9月刊、に書かれている制御回路は、600Vから1700VまでのIGBT電圧等級の場合には一般に十分である。
【0010】
反応時間容量CAとこの容量に割り当てられている反応時間抵抗RA(
図2参照)によって定められる回路装置1′或いは回路装置2′の反応時間は、コレクタ・エミッタ電圧の広い領域内で基本的に一定に保持されるべきであろう。このことは、上で定義された値VCM_MAXと予め定められている最小のコレクタ・エミッタ電圧VCE_MINから計算される商或いは係数VCE_MIN/VCM_MAXを最小化することによって達成される。
【0011】
係数VCE_MIN/VCM_MAXの最小化は、例えば、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEによって形成されている抵抗回路網の中点VCMに対して流れている電流が大きくされることによって、例えば、パワー半導体スイッチSのコレクタCに接続されている抵抗回路RVCE1、RVCE2、RVCE3の抵抗値が小さくされることによって、達成される。しかしながら、この措置は、先にも述べられたように、コレクタCと直列に接続されている、抵抗回路網の抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3の値は、高いコレクタ・エミッタ電圧によって生成される、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3の内部での損失出力を、又構成部品と場合によっては必要となる冷却措置のためのコストをできる限り低く保持するために、一般に非常に高く選ばれなければならないということと矛盾してしまう。
【0012】
係数VCE_MIN/VCM_MAXは、代わりの手法として、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEによって形成されている抵抗回路網の中点VCMから出て行く電流を減少させることによって、例えば、反応時間抵抗RAの値を大きくすることによって大きくするか或いは最大化することによって、最小化することができる。更に、分圧器の抵抗RMEの値を大きくすることもできる。
図2′に示されている回路装置1′の場合には、抵抗RMEは省略することができる。何故なら、コンパレータCOMPのための入力電圧は、既にダイオードDGHによって制限されているからである。しかしながら、この措置はその結果として、反応時間が予め定められている場合、反応時間容量CAのための値を措置に応じて減少させてしまうことになり、反応時間が寄生的で且つプロセス依存の容量CAPによって大きく影響されてしまう虞れがある。より複雑な制御回路(ドライブ回路とも呼ばれる)を有する低コストでコンパクトな構造を持つ回路装置の場合、寄生的効果の影響が大きく、典型的な場合には、とりわけ3300Vから6500VまでのIGBT電圧等級の場合、特に構成部品のプロセスコントロールと熱負荷に関して回路装置の反応時間の量産に耐えるような調整を実現するには、かなりの困難が伴う。
【0013】
制御回路によって先に述べられたVCEモニタリング、即ちパワー半導体スイッチSのコレクタ・エミッタ電圧の監視と共に、動的な、いわゆるアクティブクランピング機能(能動的なクランプ機能或いは遮断超過電圧制限機能)も実現しなければならない場合には、寄生効果の影響は更に重大となり、それによって量産に耐えるような調整は更に困難となる。アクティブクランピング機能は、パワー半導体スイッチSのスイッチオフの際に、場合によっては発生する超過電圧を制限するために役立つ。そのような制御回路2′′を備えた回路装置1′′が
図3に示されている(出願日の時点での出願人の内部知見)。
【0014】
このアクティブクランピング機能によって、パワー半導体スイッチSのスイッチオフの際に、場合によっては発生する超過電圧は、直列接続された半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3(一定のコレクタ・エミッタ電圧を越えた時に導通作動される、例えばツェナーダイオード、アバランチェダイオード(http://de.wikipedia.org/wiki/Avalamchediode参照)及び/または過渡電圧抑制ダイオード(http://de.wikipedia.org/wiki/Suppressordiode参照))により、パワー半導体スイッチSが再びスイッチオンされ、その際に、パワー半導体スイッチSの制御接続端Gの電位が一時的にほゞ入力電圧/供給電圧Visoのレベルへ引き上げられることによって、制限される。
【0015】
アクティブクランピング機能の効果は更に、制御ユニットCONTROL(ゲートドライバとも呼ばれる)からパワー半導体スイッチSの制御接続端Gへ通されている制御接続線(ゲート線とも呼ばれる)で送られる制御ユニットCONTROL出力電流が引き下げられることによって改善される。このことは、導通作動されている半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3の電流の一部が、抵抗RACLを通して制御ユニットCONTROLの制御入力端ACLへ帰還されることによって容易化される。制御入力端ACLは、好ましくは電流ミラー回路の低インピーダンス入力端とし、その際、制御入力端ACLを流れている電流に応じて、パワー半導体スイッチSのスイッチオフ状態或いはスイッチオフ過程に係わっている、制御ユニットCONTROLの出力段M_OFFの出力端GLで得られる出力電流が引き下げられる。
【0016】
従来技術によれば、動的なアクティブクランピング機能の場合、直列に接続され、導通作動される半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3は、パワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の間、一定の時間橋絡される。この動的なアクティブクランピング機能の目的は、一方ではパワー半導体スイッチSがスイッチオフ状態にある時のブレークダウン電圧の和を引き上げ、また他方では本来のスイッチオフ過程の間のブレークダウン電圧の和を引き下げることであり、それによって、パワー半導体スイッチSの確実な作動領域を外れること無しに、その能力をより良く利用できるようにすることである。
【0017】
しかしながら、
図3に示されているような回路装置1′′或いは制御回路2′′で、VCEモニタリングとアクティブクランピング機能を実現しようとすると、次のような困難が生じる。上で述べられたように、半導体素子DZCE0或いは直列に接続され、定められたコレクタ・エミッタ電圧が越えられた時に導通作動される半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3の一部は、パワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の間、一定の時間橋絡される。この橋絡は、制御ユニットCONTROLの制御接続線CTRL_DAACを通じて制御されるスイッチM_DAACを用いて行われる。
【0018】
しかしながら、スイッチM_DAACはパワー半導体スイッチSのスイッチオン過程の間にスイッチオンされ、これがスイッチオンされるとM_DAACを通した電圧降下の変化のために寄生容量CPと反応時間容量CAとの間で望ましくない電荷転送が起こる。これによって、反応時間或いは反応時間定数の調整、とりわけプロセス変動の際の反応時間の小さな許容差の遵守が更に困難となる。抵抗直列回路の抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3、RMEと半導体素子DZCE1、DZCE2、DZCE3のアノードとの間に生じる、この寄生容量CPの影響を最小化するためには、
図3に示されている回路トポロジーの中で、スイッチM_DAACの開閉状態を交替させるための最適な時点の比較的複雑な制御が、又それによって複雑な制御ユニットCONTROLが必要となるであろう。しかしながら、複雑な制御ユニットCONTROLはまた、制御ユニットCONTROLのコストのかかる給電を要求する。とりわけ、制御ユニットCONTROLは、パワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の間にパワー半導体スイッチSに現れる超過電圧の故に、半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3のブレークダウン電圧が越えられた時に、パワー半導体スイッチSを一時的に再度スイッチオンし、その際に、パワー半導体スイッチSの制御接続端Gの電位が一時的にほゞ供給電圧Visoのレベルへ引き上げられるように制御されることが必要である。それ故、制御ユニットCONTROLは、アクティブクランピング機能の実施のためにスイッチオフされていなければならない。更に、制御ユニットCONTROLは同時に、許容超過電圧のための定格値をパワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の間に意図せずに引き上げてしまわないようにするために、スイッチM_DAACが確実にスイッチオンされた状態に留まっているように配慮しなければならない。そのためには、スイッチM_DAACの制御接続線CTRL_DAACの電位がパワー半導体スイッチSの制御接続端Gの電位よりも高く、また供給電圧Visoのレベルよりも更に高いということが必要である。このことは、通常比較的複雑ないわゆるチャージポンプ(電荷ポンプ)給電或いはブートストラップ給電の採用を要求する。しかしながら、スイッチM_DAACの制御接続端の電荷が高いために、とりわけパワー半導体スイッチSが比較的高い開閉頻度で作動される際には、比較的高い電源負荷が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許明細書 US−A 4423 457
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】『IGBT及びパワーMOSFETゲートチップセットのための汎用チップセット“Universal Chipset for IGBT and Power-MOSFET Gate Drivers”』ヤン・タルハイム(Jan Thalheim)とハインツ・リュエディ(Heinz Ruedi)著、PCIM Europe発行、ニュルンベルク、2007年刊
【非特許文献2】『2SC0435T 説明及び適用マニュアル』、CTコンセプト・テクノロギイAG社発行、第24版、2010年9月刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、寄生容量の影響を減少させ、とりわけ最少化させることのできる、冒頭に述べられた制御回路に対して改良された制御回路及び冒頭に述べられた方法と比べて改良された、パワー半導体スイッチの制御方法を提供することである。更に、より複雑でない、とりわけ
図3と関連させて説明されている制御回路或いはそれに対応する方法に対してより複雑でない、パワー半導体スイッチの制御のための制御回路及び制御のための方法を提供することが本発明の課題である。本発明の更なる課題は、構成部品の熱負荷が少ない、とりわけ冒頭に述べられた制御回路或いは方法に対して低減或いは最少化された、パワー半導体スイッチの制御回路及び制御方法を提供することである。更に、本発明の課題は、特に冒頭に述べられた制御回路或いは方法に比べて、制御回路とその反応時間の簡単な調整を可能にする、パワー半導体スイッチの制御回路と制御方法を提供することである。更に、本発明の課題は、製造プロセス変動に対して改良された安定性或いは堅牢性を有する制御回路及び方法を提供することである。加えて、本発明の課題は、VCEモニタリングと共に動的なアクティブクランピング機能を実現することができ、その際、とりわけ、必要な制御と給電のためのコストが、
図3と関連させて説明されている制御回路に対して低減される、パワー半導体スイッチの制御回路及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この課題は、独立の諸請求項のメルクマールを持つ制御回路及び方法によって解決される。
パワー半導体スイッチの制御のための本発明による制御回路は、パワー半導体スイッチの制御接続端(ゲートとも呼ばれる)のための制御接続端信号を生成するための信号処理ユニットを備えている。この制御回路は、抵抗直列回路を含んでおり、この直列回路は、パワー半導体スイッチの、以下コレクタとも呼ばれる、給電に用いられるパワー接続端の一つに接続することができ、またその出力端は、少なくとも間接的に、信号処理ユニットの第一の入力端と接続されている。信号処理ユニットは、パワー半導体スイッチのコレクタ・エミッタ電圧のための基準電圧のための第二の入力端を備えている。制御回路は更に、定められたパワー半導体スイッチのコレクタ・エミッタ電圧を越えた時に導通作動されるように形成された少なくとも一つの半導体素子を含んでいる。この少なくとも一つの半導体素子の一つの出力端は、導電性の接続線を通じて抵抗直列回路の抵抗の間と或いは、信号処理ユニットと接続されている抵抗直列回路の抵抗の出力端と接続されている。上記の導電性の接続線には、好ましくは何らの電子素子も含まれていない。少なくとも一つの半導体素子のブレークダウン電圧は、導電性の接続線に対して接続されている少なくとも一つの半導体素子の出力端の電位が、パワー半導体スイッチがスイッチオンされた状態の下でのパワー半導体スイッチの制御接続端の電位よりも大きく(高く)、とりわけ100Vよりも大きくなるように選ばれる。この少なくとも一つの半導体素子の出力端の電位は、好ましくはそのブレークダウン電圧に対応しており、その電位は、好ましくは100Vよりも大きい。
【0023】
好ましい実施態様によれば、少なくとも一つの反応時間抵抗を含んでいる反応時間ネットワークが備えられており、その反応時間ネットワークを通じて、抵抗直列回路のコレクタから離れた出力端が信号処理ユニット第一の入力端と接続されているが、その際、制御回路の反応時間は、反応時間ネットワークの時間定数に依存している。
【0024】
本発明に基づく制御回路を用いた、パワー半導体スイッチの制御のための本発明に基づく方法の場合、信号処理ユニットは、その第一の入力端に送り込まれている信号から、またパワー半導体スイッチのコレクタ・エミッタ電圧のための基準電圧から、パワー半導体スイッチの制御接続端のための制御接続端信号を求める。定められた、予め与えられているコレクタ・エミッタ電圧が越えられると、上記の少なくとも一つの半導体素子が導通作動され且つ、導電性の接続線によって接続された、抵抗直列回路の出力端の電位或いは導電性の接続線によって接続された、抵抗直列回路の抵抗の間の接続点の電位が、パワー半導体スイッチがスイッチオンされた状態の下でのパワー半導体スイッチの制御接続端の電位よりも大きく且つとりわけ100Vよりも大きい(高い)値に制限される。導電性の接続線によって接続された、抵抗直列回路の出力端の電位或いは導電性の接続線によって接続された、抵抗直列回路の抵抗の間の接続点の電位は、好ましくは少なくとも一つの半導体素子の導通の際のそのブレークダウン電圧に対応している。信号処理ユニットの第一の入力端に送り込まれている信号は、パワー半導体スイッチのコレクタの電位から導き出され、制御出力端のための制御接続端信号を生成するために信号処理ユニットによって基準電圧と比較される。
【0025】
本発明に基づく制御回路と本発明に基づく方法を用いると有利なことに、反応時間をコレクタ・エミッタ電圧のために可能な値の広い範囲の中でコンスタントに保持することが大いに簡単化される。寄生容量の影響と様々な問題を軽減することができる。本発明に基づく制御回路と本発明に基づく方法は、短絡(いわゆるタイプ1の短絡)の際のパワー半導体スイッチのスイッチオンに対しても、またパワー半導体スイッチのスイッチオン状態の下での短絡(いわゆるタイプ2の短絡)のケースに対しても、適している。
【0026】
特に有利な実施例によれば、本発明に基づく制御回路は、直列に接続された複数の半導体素子を備えており、それ等の半導体素子は定められた、予め与えられているパワー半導体スイッチのためのコレクタ・エミッタ電圧が越えられると導通作動され、且つそれ等の半導体素子の中には、上述の少なくとも一つの半導体素子が含まれている。直列に接続された半導体素子のブレークダウン電圧が越えられると、信号処理ユニットが好ましくはパワー半導体スイッチの制御接続端のための制御信号端信号の瞬間値を引き上げる。この措置によって、VCEモニタリング(即ち、超過電流検出)と共にパワー半導体スイッチのための動的なアクティブクランピング機能(遮断超過電圧制限機能)が実現される。
【0027】
本発明に基づく制御回路と本発明に基づく方法によって制御され或いは作動されることのできるパワー半導体スイッチは、例えばスイッチモジュールの構成部品、とりわけ牽引/引張り作動用、産業用電動駆動装置用、ソーラーエネルギー用、風力エネルギー用、高圧直流伝送用、及び/またはフレキシブルな三相交流伝送システム(FACTS)用のハーフブリッジ分岐路(Halbbruckenzweig:haifbridgebranch)の構成部品を作ることができる。とりわけ、このパワー半導体スイッチは、バイポーラ半導体(BJT)、ゲート電極内蔵のバイポーラ半導体(IGBT)、金属酸化物/電界効果半導体(MOSFET)、或いはそれ等の素子の組合せとすることができる。
【0028】
本発明のその他の有利な実施態様は、諸従属請求項及び図面に基づいて以下に示される諸実施例から明らかとなる。
これ等の図面において、同じ参照記号は同じ或いは同じ作用を持つコンポーネント或いは要素を示している。
図1から
図3までは、既に明細書の導入部で説明されているからその部分を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、VCEモニタリング付きの制御回路とパワー半導体スイッチとを有する既知の回路装置の概略回路図を示している。
【
図2】
図2は、VCEモニタリング付きの制御回路とパワー半導体スイッチとを有するもう一つの既知の回路装置の概略回路図を示している、
【
図3】
図3は、VCEモニタリング付きの制御回路を有する回路装置の概略回路図と、アクティブクランピング機能と出願日の時点での出願人の内部知見を形成しているパワー半導体スイッチの実現を示している、
【
図4】
図4は、本発明に基づく制御回路とパワー半導体スイッチの第一の実施例を用いた回路装置の概略回路図を示している、
【
図5】
図5は、本発明に基づく制御回路とパワー半導体スイッチの第二の実施例を用いた回路装置の概略回路図を示している、
【
図6】
図6は、本発明に基づく制御回路とパワー半導体スイッチの第三の実施例を用いた回路装置の概略回路図を示している。
【
図7】
図7は、本発明に基づく制御回路とパワー半導体スイッチの第四の実施例を用いた回路装置の概略回路図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図4は、本発明に基づく制御回路20とパワー半導体スイッチSの第一の実施例を用いた回路装置10を示している。制御回路20は、信号処理ユニット(制御ユニット)CONTROLを備えており、この信号処理ユニットは、パワー半導体スイッチSのコレクタ・エミッタ電圧から導き出された電圧VCAのための第一の入力端と基準電圧VC_REFのための第二の入力端を有している。信号処理ユニットCONTROLは、コンパレータを含んでおり、このコンパレータは、電圧VCAを基準電圧VC_REFと比較して比較値を生成する。信号処理ユニットCONTROLは更に、上記の比較値に応じて制御接続線信号を、制御出力端を通じてパワー半導体スイッチSの制御接続端Gに対して送り出す制御ユニットを含んでいる。コンパレータと制御ユニットは、
図4に示されている実施例では、統合されて信号処理ユニットCONTROLとして示されている。制御回路20は更に、抵抗RVCE2及びRVCE3から成る抵抗直列回路を含んでおり、この抵抗直列回路は、パワー半導体スイッチSのコレクタCに接続されており、コレクタから遠い方のこの直列回路の出力端は電位VCMを有し、好ましくは、反応時間抵抗RAとこの抵抗RAに割り当てられていて、基準電位Comと接続されている反応時間容量CAとから形成されている反応時間ネットワークを通じて信号処理ユニットCONTROLの第一の入力端と接続されており、この信号処理ユニットCONTROLの第一の入力端には、電圧或いは電位VCAが印加されている。この抵抗直列回路はVCEモニタリングに用いられている。
【0031】
制御回路20は更に、半導体素子DZCE1、DZCE2、DZCE3から成る直列回路を含んでおり、この直列回路は、予め定められた一定のパワー半導体スイッチSのコレクタ・エミッタ電圧の時に導通状態に切換えるように設計されている。これ等の半導体素子DZCE1、DZCE2、DZCE3は、とりわけツェナーダイオード、アバランチェダイオード及び/または過渡電圧抑制ダイオードとすることができる。この半導体素子直列回路は、カソード側がパワー半導体スイッチSのコレクタCに接続されている。半導体素子直列回路のアノード側は、例えば、逆方向に配置されたダイオードD102を通して、信号処理ユニットCONTROLの制御出力端に接続されている。この半導体素子直列回路によって、動的なアクティブクランピング機能が実現され、その際、半導体素子DZCE1、DZCE2、DZCE3のブレークダウン電圧が越えられると、制御ユニットCONTROLがとりわけパワー半導体スイッチSの制御接続端Gのための制御接続信号或いはその(瞬間)値を引き上げる。
【0032】
二つの半導体素子DZCE1、DZCE2の間にある接続点300は、導電性の接続線100を通して抵抗直列回路の、コレクタから遠い方の出力端200に接続されている。これにより、
図3に示されている制御回路2′′とは異なり、抵抗直列回路の出力端200の電位が、導電性の接続線100によって、少なくとも一時的に、即ち半導体素子DZCE1が導通状態にある間、コンスタントに保持され且つこれによって安定化される。何故なら、その電位は、導通作動されている半導体素子DZCE1によって、とりわけそのブレークダウン電圧によって決定される値に制限されるからである。その際、半導体素子DZCE1のブレークダウン電圧は、100Vよりも高いことが好ましい。
【0033】
図5は、制御回路21の第二の実施例とパワー半導体スイッチSとを用いた回路装置11を示しており、その際、コンパレータCOMPと信号処理ユニットの制御ユニットCONTROLは、別々に形成されており、制御ユニットCONTROLには、二つの出力段M_ON及びM_OFFが割り当てられており、それ等の出力段は、それぞれパワー半導体スイッチSの制御接続端Gと接続可能であるか或いは接続済みとなっている。出力段M_ONを通じて、パワー半導体スイッチSは制御ユニットCONTROLによってスイッチオンされ且つスイッチオンされた状態で作動される。出力段M_OFFを通じて、パワー半導体スイッチSは、制御ユニットCONTROLによってスイッチオフされ或いはスイッチオフされた状態で作動される。
【0034】
図4に示されている第一の実施例と異なりこの抵抗直列回路は、抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3を備えている。更に、予め定められた一定の三つのコレクタ・エミッタ電圧が越えられた時に、導通作動される半導体素子から成る直列回路は、四つの半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3を備えている。半導体素子DZCE0もまた、好ましくは100V以上のブレークダウン電圧を持ち且つツェナーダイオードとして、アバランチェダイオードとして或いは過渡電圧抑制ダイオードとして形成できる。二つの半導体素子DZCE1とDZCE2との間の接続点300は、導電性の接続線100を通して、抵抗RVCE1とRVCE2との間の接続点200と、即ち、反応時間ネットワークから見て抵抗直列回路の最初の中間接続点200と、接続されている。この抵抗直列回路には第一の中間電位が掛かっている。この中間電位は、導電性の接続線100によって、少なくとも一時的に、即ち半導体素子DZCE1が導通状態にある間、コンスタントに保持され且つこれによって安定化される。何故なら、その電位は、導通作動されている半導体素子DZCE1によって、とりわけそのブレークダウン電圧によって決定される値、好ましくは100Vよりも高い値に制限されるからである。
図4に示されている実施例の場合と同様、半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3のブレークダウン電圧が越えられると、制御ユニットCONTROLが、好ましくは、パワー半導体スイッチSの制御接続端Gのための制御接続信号或いはその(瞬間)値を引き上げる。
【0035】
抵抗直列回路の中間接続点或いは出力端200の電位を安定化させる利点は、反応時間に対する、抵抗直列回路の抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3に割り当てられている寄生容量CP(
図5参照)の望ましくない影響が低減されるということである。もう一つの利点は、構成部品のコストが、
図3に示されている制御回路2′′に対して高くならないということである。更に、抵抗直列回路の中間接続点或いは出力端200のこの安定化された電位は、有利なことに制御回路で得られる給電電圧或いは供給電圧よりも大きく、とりわけパワー半導体スイッチSがスイッチオンされている時の制御接続端Gの制御接続端信号或いは電位よりも、またパワー半導体スイッチSがスイッチオン状態或いはスイッチオンされた状態のための出力段M_ONの給電電源V−ONの電位Visoよりも、大きい。これによって、本発明に基づく制御回路或いはそのような制御回路を備えた回路装置の、コレクタ・エミッタ電圧の広い領域の中における反応時間の定常性の観点からの最適化可能性が著しく改善されるので、電流を抵抗直列回路の抵抗RVCE1、RVCE2、RVCE3の損失出力によって、またこの損失出力と一緒に引き上げる必要無しに、信号処理ユニット或いはそのコンパレータCOMPの入力側に割り当てられている寄生容量CAPの望ましくない影響が低減される。
【0036】
更に、半導体素子直列回路のもう一つの半導体素子DZCE2のコレクタ側の出力端301をそれぞれ抵抗直列回路のもう一つの中間接続点201と接続する、もう一本或いはそれ以上の導通性の接続線を備えることができる。これによって、有利なことに、熱抵抗、考えられる空間距離及び縁面距離に関する絶縁調整、及びバリアントの多様性(例えば、様々なIGBT等級のための実装のバリアント)の観点から、本発明に基づく制御回路の最適化可能性を改善することができる。
【0037】
半導体素子直列回路のコレクタから遠い方の半導体素子DZCE0に対して、直接或いは間接的に並列に好ましくはスイッチM_DAACが配置されるが、このスイッチの制御接続端CTRL_DAACは、直接或いは間接的に信号処理ユニット或いは制御ユニットCONTROLの出力端と接続されている。制御回路21は、信号処理ユニット或いは制御ユニットCONTROLがスイッチM_DAACを、好ましくはパワー半導体スイッチSがスイッチオンされている状態の時に、また好ましくはパワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の開始時に、スイッチオンさせるように、形成されている。これによって、半導体素子DZCE0が橋絡され、半導体素子DZCE0を通した電圧が、またそれによって半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3を通した電圧の和が、パワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の間に半導体素子DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3が導通作動される際に、引き下げられる。このことは、パワー半導体スイッチSの確実な作動領域を外れること無しに、パワー半導体スイッチSの能力のより良い活用をもたらす。
【0038】
抵抗直列回路の中間接続端或いは出力端200の電位の安定化の利点は又、動的なアクティブクランピング機能の実現のためのスイッチM_DAACの切換えの間の寄生容量CPと反応時間容量CAとの間での望ましくない電荷転送を減らすことができるということであり、これによって、コレクタ・エミッタ電圧の広い領域内での反応時間の一定保持が更に大幅に容易化される。
【0039】
図4及び
図5に(また、
図7にも)示されているように、導電性の接続線100によって接続された半導体素子DZCE1が、アクティブクランピング機能の実現のための半導体素子直列回路の作動的部分である場合には、半導体素子DZCE1の給電は、導電性の接続線100とVCEモニタリングの実現のための抵抗直列回路とを通してパワー半導体スイッチSのコレクタCから行われるので、有利なことに、本発明に基づく制御回路の供給電圧の電位を越えるような、半導体素子DZCE1の追加の補助給電は何ら必要ではない。
【0040】
信号処理ユニット或いはコンパレータCOMPの第一の入力端の電圧VCA及び/または抵抗直列回路の、コレクタから遠い方の出力端の電圧VCMは、後続の信号処理ユニット或いは後続のコンパレータCOMPによって処理可能な値に制限されるべきであろう。そのために、ダイオードDGHのアノードは、抵抗直列回路の、コレクタから遠い方の出力端に(
図5参照)或いは代わりのやり方として信号処理ユニット或いはコンパレータCOMPの第一の入力端に、接続され、その際、このダイオードDGHのカソードは、パワー半導体スイッチSの制御接続端Gに接続されているか或いは接続可能である。とりわけこの後者のケースの際には、このダイオードは、好ましくはモノリシックダイオードとして、即ち信号処理ユニット或いはコンパレータCOMPの内部に作られることができる。ダイオードDGHの代わりに、一つ又は複数の、導通作動される半導体素子、例えばツェナーダイオード、アバランチェダイオード、及び/または過渡電圧抑制ダイオードも、ダイオードDGHと同様に、抵抗直列回路の、コレクタから遠い方の出力端に或いは信号処理ユニット或いはコンパレータCOMPの第一の入力端に接続することができる。
【0041】
図6は、本発明に基づく制御回路22の第三の実施例とパワー半導体スイッチSとを有する回路装置12を示している。
図4及び
図5に示されている実施例とは異なり、唯一つの半導体素子DZCE1だけしか備えられておらず、この半導体素子は、予め定められた一定のコレクタ・エミッタ電圧が越えられると導通作動され、従って少なくとも一時的に一定な電位で作動され、またこの半導体は、例えばツェナーダイオード、アバランチェダイオード、及び/または過渡電圧抑制ダイオードとすることができる。半導体素子DZCE1のブレークダウン電圧は、好ましくは100V以上とする。半導体素子DZCE1のカソード側の出力端300は、導電性の接続線100を通じて、抵抗直列回路の抵抗RVCE1とRVCE2との間の中間接続点200と接続されているので、予め定められているコレクタ・エミッタ電圧が越えられた時のこの中間接続点200の中間電位は、半導体素子DZCE1のカソード側の出力端300の電位によって安定化される。
図5に示されているその他の半導体素子DZCE0、DZCE2、DZCE3と、制御ユニットCONTROLを通じて制御されるアクティブクランピング機能の実現のためのスイッチM_DAACとの配線は、
図6に示されているように、オプションとして省略することができ、その際、
図6に示されている第三の実施例の場合にも、コレクタ・エミッタ電圧の広い領域についての制御回路22の反応時間の一定保持は非常に容易化され、それに対応して制御回路22も最適化されている。
【0042】
図7は、本発明に基づく制御回路23の第四の実施例とパワー半導体スイッチSを備えた回路装置13を示している。
図4から
図6までに示されている実施例と比較すると、信号処理に用いられる周波数依存及び/または時間依存のインピーダンスが備えられており、このインピーダンスは、抵抗直列回路と反応時間ネットワークRA、CAとの間に且つ反応時間ネットワークRA、CAと並列に配置されており、その入力端には、抵抗直列回路の出力端の電位VCMが、またその出力端には制御回路23の基準電位Com或いはveeが印加されている。周波数依存及び/または時間依存のこのインピーダンスは、
図7に示されているように、抵抗RME_Dと容量CME_Dとの直列回路或いは抵抗RME_Dと信号処理ユニット或いは制御ユニットCONTROLによって制御されるスイッチ(図示されていない)との直列回路を含んでいる。周波数依存及び/または時間依存のこのインピーダンスの目的は、抵抗直列回路と共に動的なVCEモニタリングを実現することである。ダイオードD107が備えられることがあり、そのアノードは、抵抗RME_Dと容量CME_Dとの間に、またそのカソードは、反応時間ネットワークRA、CAの出力端に或いは信号処理ユニット或いはコンパレータCOMPの第一の入力端に接続されている。このダイオードD107は、パワー半導体スイッチSの短絡の際にも容量CME_Dのための確実なスタート条件/確実なスタート状態を保証するために、容量CME_Dの放電の加速に用いられている。動的なVCEモニタリングは、パワー半導体スイッチSのスイッチオンの際のコレクタ・エミッタ電圧の時間的変化を有利に補償するために、コレクタ・エミッタ電圧の測定値VCMを一時的に低下させるのに役立っている。
【0043】
更に、
図7は、
図5及び
図6と比較して、本発明に基づく制御回路23と、スイッチM_DAACの詳細な配線とを示しているが、このスイッチM_DAACは、パワー半導体スイッチSのスイッチオン状態の時及びパワー半導体スイッチSのスイッチオフ状態の開始時に、動的なアクティブクランピング機能の実現のために半導体素子DZCE0を橋絡するために、信号処理ユニット或いは制御ユニットCONTROLによってスイッチオンされる。パワー半導体スイッチSがスイッチオフ状態にある時は、スイッチM_DAACはスイッチオフされている。
【0044】
スイッチM_DAACの制御のために、その制御接続端CTRL_DAACは、好ましくは制御ネットワーク30、とりわけ、直列に接続された二つの抵抗R111とR101、ダイオードD108、及びツェナーダイオードDZ5(或いは、アバランチェダイオード或いは過渡電圧抑制ダイオード)から成立っているネットワークを通じて、制御接続端Gに、或いはパワー半導体スイッチSのスイッチオン状態に対して決定権を持つ、信号処理ユニット或いは制御ユニットCONTROLの出力段M_ONの出力端GH(
図7にはそのように示されている)に、接続されている。代わりの手法として、出力端GHの電位、制御接続端Gの電位或いは信号処理ユニット或いは制御ユニットCONTROLのための開閉命令COMMANDの電位の変化から導き出されたか或いは導き出されることのできる信号が、スイッチM_DAACの前に置かれた制御ネットワーク30のための入力信号、即ちスイッチM_DAACのための制御信号を形成する。かくして、スイッチM_DAAの作動のためのエネルギー或いは制御接続端電荷(ゲート電荷)は、直接、正規の制御接続端G或いは、パワー半導体スイッチSのスイッチオン状態に対して決定権を持つ出力段M_ONの出力端GH或いはそれから導き出された信号から取り出される。これによって、有利なことに、スイッチM_DAAの追加の、比較的複雑な、いわゆる電荷ポンプ給電或いはブートストラップ給電を省くことができる。ダイオードD108とツェナーダイオードDZ5は、アノード側を互いに接続され、抵抗R111に対して並列に接続されている。
【0045】
制御ネットワーク30とスイッチM_DAAとの間には、好ましくは、抵抗R112と容量C106から成る並列回路が備えられており、この並列回路は、スイッチM_DAAの制御接続端と、また電流取り出しのためにその電力接続端と接続されている。制御ネットワーク30の抵抗R111、容量C106、及びスイッチM_DAAの入力容量によってスイッチM_DAAのスイッチオフ過程が、制御ネットワーク30の入力信号、即ち、
図7では、例えば出力段M_ONの出力端GHの上の電位によって与えられている制御信号、に対して遅延されるので、パワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の間、スイッチM_DAAはスイッチオンされた状態のままに留まり、パワー半導体スイッチSがスイッチオフ状態になって初めて完全に開かれる。
【0046】
ダイオードD108は、スイッチM_DAAのスイッチオン過程の加速のために役立つので、パワー半導体スイッチSの短いスイッチオン時間の場合でも、スイッチM_DAAが後続のパワー半導体スイッチSのスイッチオフ過程の間に確実にスイッチオンされるということが保証されている。
【0047】
抵抗R112とツェナーダイオードDZ5によって、スイッチM_DAAのための制御信号がこのスイッチの確実な作動領域に対応して引き下げられる。抵抗R101は、スイッチM_DAAの制御接続端CTRL_DAACのピーク電流負荷の引き下げのために、またそれによって出力段M_ONの出力端GHの上のピーク電流負荷(このピーク電流負荷はパワー半導体スイッチSの制御接続端Gの上の電流を低くする虞がある)の引き下げのために、役立つので、制御回路23の全ての電流能力をパワー半導体スイッチSの制御及び作動のために利用することができる。
【0048】
更に、半導体素子DZCE0とスイッチM_DAAには、好ましくは抵抗RSYMが並列接続されているが、この抵抗は、半導体素子DZCE1の漏れ電流が比較的高い場合に、或いは、半導体素子DZCE1の漏れ電流よりも小さい半導体素子DZCE0の漏れ電流の際に、スイッチM_DAAの出力電圧を安定化させるために役立つ。これによって、有利なことに、パワー半導体スイッチSのスイッチオンの際の半導体素子DZCE1の漏れ電流と比較して、半導体素子DZCE1の漏れ電流が比較的大きいか或いは半導体素子DZCE0の漏れ電流が小さい場合に、半導体素子直列回路の半導体素子DZCE1の出力端に電位ジャンプが生じることが回避される。この出力端には導電性の接続線100が接続されている。そのような電位ジャンプが生じると、寄生容量CPから反応時間容量CAへの望ましくない電荷転送が引き起こされることになる。
【符号の説明】
【0049】
1、1′、1′′ 回路装置
2′、2′′ 制御回路
10、11、12、13 回路装置
20、21、22、23 制御回路
30 制御ネットワーク
100 導電性の接続線
200 抵抗直列回路のコレクタから遠い方の出力端
201 抵抗直列回路の中間接続点
300 接続点
301 半導体素子の出力端
C パワー半導体スイッチのコレクタ
CA 反応時間容量
Com 基準電位
COMP コンパレータ(比較器)
CONTROL 信号処理ユニット(制御ユニット)
CTRL_DAAC 制御ユニットCONTROLの制御接続線
CVCE1、CVCE2、CVCE3、CME ドミナント容量
D102 ダイオード
DGH ダイオード
DZCE0、DZCE1、DZCE2、DZCE3 半導体素子
G 制御接続端
GH 信号処理ユニット或いは制御ユニットの出力段の出力端
M_D スイッチ
M_DAAC スイッチ
M_OFF、M_ON 制御装置の出力段
RA 反応時間抵抗
RME 抵抗
RSYM 抵抗
RVCE1、RVCE2、RVCE3 抵抗直列回路の抵抗
S パワー半導体スイッチ
VCA パワー半導体スイッチのコレクタ・エミッタ電圧から導き出された電圧
VCM 抵抗直列回路の、コレクタから遠い方の出力端の電圧
VC−REF 基準電圧
Vee 基準電位
Viso 作動電圧/供給電圧