(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の新聞用紙の実施の形態について詳説する。
【0017】
本発明の新聞用紙は、新聞脱墨フロスを主原料とする製紙スラッジを脱水及び熱処理して得られる再生粒子(以下、「新聞脱墨フロス由来の再生粒子」ともいう)を填料として内添している。当該新聞用紙は、通常、パルプ及び填料等を含むパルプスラリーを抄紙して製造される。
【0018】
<パルプ>
上記パルプとしては、公知のものを用いることができ、古紙パルプ、バージンパルプ又はこれらを組み合わせたものを適宜用いることができる。なお、バージンパルプよりも古紙パルプを多く用いることが省資源化の観点から好ましい。
【0019】
古紙パルプとしては、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0020】
これらの古紙パルプの中でも、新聞古紙由来の新聞古紙パルプ、雑誌古紙由来の雑誌古紙パルプが好ましく、新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプを混合して用いることがより好ましい。新聞及び雑誌は古紙の回収率が高く、新聞用紙及び雑誌用紙を構成する原料パルプ種や填料類が各製紙メーカーで近似していることから、新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプは成分が安定している。特に、新聞古紙パルプの原料となる新聞用紙には一般的に古紙パルプが既に50%以上配合されており、バージンの機械パルプやクラフトパルプの含有量が少なく、また、バージンの各種パルプが用いられていても、一度抄紙され、古紙処理により古紙パルプ化されているため、新聞古紙パルプはその性状が均質化されている。
【0021】
バージンパルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP);ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的又は機械的に製造されたパルプ等が挙げられる。
【0022】
これらのバージンパルプの中でも、古紙パルプを用いる場合の嵩の低下を補完する効果を有する機械パルプ(MP)が好ましく、古紙パルプの調整に好適なサーモメカニカルパルプ(TMP)がより好ましい。
【0023】
パルプにおける古紙パルプの含有率としては、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。パルプにおける古紙パルプの含有率を上記範囲とすることによりインキ着肉性等の印刷適性を向上することができ、さらに資源の有効利用等の環境性を向上することができる。また、パルプにおけるバージンパルプの含有率としては、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。バージンパルプの含有率が上記数値未満の場合、強度や嵩の調整が困難となるため、新聞用紙の強度が低下したり、嵩が出ず腰のない新聞用紙となり搬送性や作業性が低下するおそれがある。
【0024】
<填料>
当該新聞用紙は、填料として新聞脱墨フロス由来の再生粒子を含有する。以下、新聞脱墨フロス由来の再生粒子について詳説する。
【0025】
[新聞脱墨フロス由来の再生粒子]
新聞脱墨フロス由来の再生粒子は、新聞脱墨フロスを主原料とする製紙スラッジを脱水及び熱処理等することで得られるものである。このような新聞脱墨フロス由来の再生粒子は、粒子径がホワイトカーボン等と比べて比較的小さいため、填料として内添した場合、繊維間に留まりやすく新聞用紙の不透明度を向上することができる。
【0026】
新聞脱墨フロス由来の再生粒子はメタカオリン及び含水珪酸マグネシウムを主成分とする核を有し、この核の表面の少なくとも一部が炭酸カルシウムで被覆されていることが好ましい。製紙スラッジを750〜900℃の高温で燃焼すると製紙スラッジに含まれるカオリンや炭酸カルシウムからセメント状の化合物が生成される。その結果、得られる再生粒子が硬質化、低白色度化し、またスラリー化した際に増粘・固化の問題が生じる。しかし、新聞古紙パルプの製造工程において排出された脱墨フロス(新聞脱墨フロス)は、炭酸カルシウムが相対的に多く、カオリンが相対的に少ないという特性を有するため、製紙スラッジの主原料を新聞脱墨フロスとすることにより生成されるセメント状の物質の量が減り、上記問題の発生が抑制される。さらに熱処理後の燃焼物をスラリー化し、このスラリーに二酸化炭素を吹き込むことにより、表面の少なくとも一部が炭酸カルシウムで被覆されるため、得られる再生粒子の白色度が一段と高くなる。その結果、当該新聞用紙の白色度をさらに向上することができる。しかも、再生粒子表面を被覆する炭酸カルシウムは吸油性の高い軽質炭酸カルシウムであるため、得られる再生粒子の吸油量が向上し、当該新聞用紙の不透明度をさらに向上することができる。なお、新聞脱墨フロス由来の再生粒子がメタカオリン及び含水珪酸マグネシウムを主成分とする核を有し、この核の表面の少なくとも一部を炭酸カルシウムで被覆する方法は、後述する新聞脱墨フロス由来の再生粒子の製造方法にて詳細に説明する。
【0027】
新聞脱墨フロス由来の再生粒子における炭酸カルシウムの含有率は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。新聞脱墨フロス由来の再生粒子における炭酸カルシウムの含有率が上記数値未満の場合、新聞脱墨フロス由来の再生粒子の吸油量及び白色度が低下することにより、当該新聞用紙の不透明度及び白色度が低下するおそれがある。なお、新聞脱墨フロス由来の再生粒子における炭酸カルシウムの含有率は、原料となる新聞脱墨フロスの含有量や後述する新聞脱墨フロス由来の再生粒子の製造方法における二酸化炭素吹き込み工程の条件によって調節することができる。
【0028】
新聞脱墨フロス由来の再生粒子における炭酸カルシウムの含有率は、例えば堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて、15KVの加速電圧にて再生粒子に含まれる各種元素の酸化物換算質量割合を求め、この結果と、炭酸カルシウム、カオリン、タルク及び二酸化珪素の分子量とに基づいて比例計算を行うことで算出することができる。
【0029】
新聞脱墨フロス由来の再生粒子の白色度は、80%以上が好ましく、84%以上がより好ましく、86%以上がさらに好ましい。新聞脱墨フロス由来の再生粒子の白色度が上記数値未満の場合、当該新聞用紙の白色度が低下するおそれがある。
【0030】
新聞脱墨フロス由来の再生粒子の吸油量は60mL/100g以上150mL/100g以下が好ましく、70mL/100g以上130mL/100g以下がより好ましい。新聞脱墨フロス由来の再生粒子の吸油量が上記上限を超えると、インクが沈み込み、いわゆる発色性が低下するおそれがある。一方、新聞脱墨フロス由来の再生粒子の吸油量が上記下限未満の場合、インクのビヒクル分や有機溶剤等を十分に吸収することができず、インクの乾燥性やニジミ防止効果が低下するおそれがある。
【0031】
新聞脱墨フロス由来の再生粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は2μm以上15μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。新聞脱墨フロス由来の再生粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、パルプ繊維間の結合強度が低下し紙力が低下するおそれがあると共に、抄紙後に脱落しやすく紙粉増加の原因となるおそれがある。一方、上記下限未満の場合は、炭酸カルシウムによる被覆の効果が十分に発現できないおそれがある。
【0032】
新聞脱墨フロス由来の再生粒子の摩耗度は、150mg以下が好ましく、125mg以下がより好ましく、100mg以下がさらに好ましい。新聞脱墨フロス由来の再生粒子の摩耗度が上記数値を超えると、操業性が低下するおそれがある。
【0033】
[新聞脱墨フロス由来の再生粒子の製造方法]
当該新聞用紙に填料として含有される新聞脱墨フロス由来の再生粒子の製造方法について、原料並びに脱水、熱処理及び粉砕の各工程の順に詳説する。
【0034】
(原料)
新聞脱墨フロス由来の再生粒子の原料としては製紙スラッジが用いられ、この製紙スラッジの主原料は新聞脱墨フロスである。新聞脱墨フロスとは、新聞古紙由来のパルプを脱墨処理する際に分離されるフロスであり、新聞古紙由来以外のパルプを脱墨処理する際に分離されるフロスは含まない。近年では、新聞用紙を製造する際の抄紙が中性抄紙化していること等から、新聞脱墨フロスは炭酸カルシウムが相対的に多く、カオリンが相対的に少なくなる傾向にあり、特に炭酸カルシウムの比率が70質量%を超え、カオリンの比率が30質量%未満で推移するようになっている。したがって、製紙スラッジの主原料を新聞脱墨フロスとすれば、酸化カルシウム及びカオリンから生成されるセメント状物質の量が減り、得られる再生粒子の低白色度化の問題や硬質化、スラリー化した際に増粘・固化する問題が改善される。また、新聞脱墨パルプの製造においては、安定した品質の新聞脱墨パルプを連続的に得るために、選別を行った一定品質の新聞が原料とされる傾向にあり新聞脱墨フロスの成分も安定する傾向にある。したがって、新聞脱墨フロスを主原料とすれば、吸油量及び白色度の高い再生粒子を安定的に得ることができる。その結果、この新聞脱墨フロス由来の再生粒子を填料として内添する当該新聞用紙の品質を安定させることができると同時に当該新聞用紙の不透明度及び白色度を向上することができる。また、上記新聞脱墨フロスは灰分率が低くインキ由来の油脂やカーボンブラックを含有するため、自燃する程の発熱量を有する。そのため後述する熱処理工程での燃料を減らすことができる。
【0035】
製紙スラッジ中の無機粒子における炭酸カルシウムの含有率は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。製紙スラッジ中の無機粒子における炭酸カルシウムの含有率が上記数値未満の場合、後述の二酸化炭素吹き込み工程での炭酸カルシウムの析出(被覆)が不十分になり、得られる再生粒子の白色度及び吸油量が低下することによって当該新聞用紙の白色度及び不透明度が低下するおそれがある。
【0036】
製紙スラッジ中の無機粒子における炭酸カルシウムの含有率は、製紙スラッジを525℃で燃焼して燃焼物を作製し、例えば堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて、15KVの加速電圧にて燃焼物に含まれる各種元素の酸化物換算質量割合を求め、この結果と、炭酸カルシウム、カオリン、タルク及び二酸化ケイ素の分子量とに基づいて比例計算を行うことで算出することができる。
【0037】
製紙スラッジ全体における新聞脱墨フロスの含有率は、固形分換算で50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。製紙スラッジ全体における新聞脱墨フロスの含有率が上記数値未満の場合、製紙スラッジに含まれる酸化カルシウムの含有量が減ることにより、得られる再生粒子の白色度及び吸油量が低下するおそれがある。また、新聞古紙のリサイクル率が低下してしまう。
【0038】
新聞脱墨フロス中の無機粒子全体におけるカオリンの含有率が20質量%未満であり、他の無機粒子の比率が80質量%以上であることが好ましく、新聞脱墨フロス中の無機粒子全体におけるカオリンの含有率が20質量%未満であり、且つ炭酸カルシウムの含有率が80質量%以上であることがより好ましい。新聞脱墨フロス中のカオリン及び炭酸カルシウムの含有率を上記範囲とすることにより、得られる再生粒子の硬質化を防ぎ、白色度に優れる再生粒子を得ることができる。なお、無機粒子のうちタルクはカオリンと同様に珪酸塩鉱物・粘土鉱物に分類されるが、後述する熱処理工程の燃焼温度では分解せず再生粒子の硬質化には影響しないため、タルクの含有量はカオリン以外の無機粒子の含有量として扱うものとする。また、新聞脱墨フロス中のカオリン及び炭酸カルシウムの含有率を上記範囲とするには、カオリンが多く含有される塗工紙を原料となる新聞古紙から選別除去して調整すればよい。
【0039】
製紙スラッジには、上述の新聞脱墨フロス以外にも本発明の効果を損なわない範囲において、その他の原料を含有することができる。その他の原料としては、例えば工場排水(洗浄水、白水、余剰排水汚泥等)や製紙原料調製工程において排出されるスラッジ、雑誌脱墨フロス等が挙げられる。ただし、上記雑誌脱墨フロスは原料(古紙)の主体が塗工紙であり、カオリンが多く混入しているため、雑誌脱墨フロスを製紙スラッジの原料として使用すると、セメント状物質が生成され易くなる。したがって、雑誌脱墨フロスは製紙スラッジの原料として使用しない方が好ましい。なお、雑誌脱墨フロスを使用する場合は上記炭酸カルシウムの比率やカオリンの比率に特に留意を要する。具体的には、例えば炭酸カルシウムを使用する中性抄紙工程等から発生する製紙スラッジを配合して、又は炭酸カルシウム貯槽の洗浄水やスクリーン粕等の製紙スラッジを配合して、炭酸カルシウムの比率を相対的に上昇させるとよい。
【0040】
(脱水工程)
脱水工程は、製紙スラッジの水分を所定割合まで除去する工程である。脱水は公知の脱水機等を用いればよい。脱水後の製紙スラッジの水分率は30質量%以上60質量%以下が好ましく、30質量%以上50質量%以下がより好ましく、35質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。脱水後の製紙スラッジの水分率が上記上限を超えると後述する熱処理工程で燃焼ムラが生じやすくなるとともに、熱処理工程で必要となる燃料が増加し、コスト高となるおそれがある。一方、脱水後の製紙スラッジの水分率が上記下限未満の場合、脱水後のフロックが固くなり再生粒子の粒径にバラツキが生じやすくなるおそれがある。
【0041】
脱水工程は、多段階に行うことが好ましい。多段階の脱水工程としては、例えばスクリーンを用いて製紙スラッジの水分率を65質量%以上90質量%以下とした後、スクリュープレスを用いて目的とする上記水分率まで脱水する方法が挙げられる。このように脱水工程を多段階とすることにより、製紙スラッジに含まれる填料等の無機粒子の流失を抑制し、脱水後のフロックが固くなることを防止することができる。
【0042】
製紙スラッジの上記水分率は、定温乾燥機を用いて、試料を105℃で6時間以上保持し質量の変動が認められなくなった時点の質量を乾燥後質量とし、下記式にて算出した値である。
水分率(%)=[(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量]×100
【0043】
(破砕工程)
脱水後の製紙スラッジは、熱処理工程において熱処理するに先立って、粉砕機(又は解砕機)により破砕することができる。この破砕工程後の製紙スラッジの平均粒子径としては2.5mm以上12.5mm以下が好ましく、2.5mm以上7.0mm以下がより好ましく、2.5mm以上4.0mm以下がさらに好ましい。製紙スラッジの平均粒子径が上記上限を超えると、製紙スラッジを表面部から芯部まで均一に熱処理するのが困難になる。一方、製紙スラッジの平均粒子径が上記下限未満の場合、後段の熱処理工程において過剰な熱処理が行われ易くなる。
【0044】
なお、上記製紙スラッジの平均粒子径は、目穴の異なる篩で分級して得られた各試料の質量を測定し、この測定値の合計が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、JIS−Z8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いて測定した値である。
【0045】
(熱処理工程)
製紙スラッジは、次いで熱処理工程に付される。この熱処理工程は一つの装置で連続的に行うこともできるが、乾燥工程と燃焼工程とに分けて行うことが好ましい。以下、乾燥工程と燃焼工程とに分けて詳説する。
【0046】
(乾燥工程)
乾燥工程で用いる乾燥装置としては公知の装置を用いれば良く、例えばストーカー炉、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉、気流乾燥装置等が挙げられる。
【0047】
乾燥温度としては200℃以上600℃以下が好ましく、200℃以上450℃以下がより好ましく、200℃以上300℃以下がさらに好ましい。乾燥温度が上記上限を超えると過燃焼が生じ、意図しない有機物等の熱分解が生じるおそれがある。一方、乾燥温度が上記下限未満の場合、製紙スラッジの乾燥が不十分となり製紙スラッジに含まれる炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解が低下するおそれがある。
【0048】
乾燥後の製紙スラッジの水分率は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。乾燥後の製紙スラッジの水分率が上記数値を超えると後述する燃焼工程で燃焼ムラが生じやすくなり、製紙スラッジに含まれる炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解が低下するおそれがある。
【0049】
このように予め乾燥工程を設けておくことにより、製紙スラッジに含まれる有機分の燃焼が緩やかに行われ、製紙スラッジの微粉化が抑制されることにより得られる再生粒子の粒度が揃いやすくなる。その結果、後述する燃焼工程での製紙スラッジに含まれる炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解を均一に促進することができ、また、得られる再生粒子をスラリー化した際の増粘を抑制することができる。
【0050】
(燃焼工程)
燃焼工程で用いる燃焼装置としては公知の装置を用いれば良く、例えばストーカー炉、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等が挙げられる。これらのなかでも横型回転式キルン炉が好ましく、熱効率の高い内熱式キルン炉がより好ましい。
【0051】
燃焼温度としては、750℃以上900℃以下が好ましく、800℃以上900℃以下がより好ましく、800℃以上850℃以下がさらに好ましい。燃焼温度が上記上限を超えると燃料が過剰に必要となり不経済となるおそれがある。一方、燃焼温度が上記下限未満の場合、製紙スラッジの燃焼が不十分となり製紙スラッジに含まれる炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解が低下し、後述する二酸化炭素吹き込み工程で炭酸カルシウムの析出が低下するおそれがある。
【0052】
燃焼工程の際の酸素濃度としては、3容量%以上18容量%以下が好ましく、4容量%以上15容量%以下がより好ましく、5容量%以上12容量%以下がさらに好ましい。燃焼工程の際の酸素濃度が上記上限を超えると、必要以上に酸素を供給することとなり不経済となるおそれがある。一方、燃焼工程の際の酸素濃度が上記下限未満の場合、製紙スラッジの燃焼が不十分となり製紙スラッジに含まれる炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解が低下するおそれがある。
【0053】
燃焼工程において製紙スラッジに含有される炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解率は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。製紙スラッジに含有される炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解率が上記数値未満の場合、後述する二酸化炭素吹き込み工程で炭酸カルシウムによる再生粒子表面の被覆が低下するおそれがある。製紙スラッジの主原料となる新聞脱墨フロスはカオリンの含有量が少ないため、燃焼してもカオリン由来のセメント状物質の生成が少ない。そのため、このように炭酸カルシウムの分解を可及的に進めることができる。燃焼工程において炭酸カルシウムを酸化カルシウムへ分解しておくことにより、後述する二酸化炭素吹き込み工程での再生粒子表面の炭酸カルシウムでの被覆を促進することができる。
【0054】
炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの分解率は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の測定器(型式TG/DTA6200)を用い、昇温速度:20℃/分、供給ガス:空気(酸素濃度約5容量%)、供給ガス流量:48ml/分の測定条件にて測定した値である。
【0055】
燃焼工程後の製紙スラッジ(以下、「燃焼物」ともいう)は粉砕して粒子径を揃えることが好ましい。燃焼物を粉砕して粒子径を揃えることにより、後述するスラリー化工程でのスラリー化を均一に行うことができる。粉砕後の燃焼物の平均粒子径としては1μm以上50μm以下が好ましく、1.5μm以上30μm以下がより好ましく、2μm以上20μm以下がさらに好ましい。粉砕後の燃焼物の平均粒子径が上記上限を超えると、後述するスラリー化工程でのスラリー化が不均一となりスラリーの粘度調整が困難となるおそれがある。一方、燃焼物の平均粒子径が上記下限未満の場合、粒子が小さすぎて取り扱いが困難となるおそれがある。
【0056】
粉砕装置としては、公知の粉砕装置を用いればよく、例えばジェットミル、高速回転式ミル等の乾式粉砕機:アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機等が挙げられる。
【0057】
燃焼物の平均粒子径は、レーザー回折方式の粒度分布計(型番:マイクロトラックMT−3000II、日機装製)を用いて測定した体積平均粒子径(D
50)である。
【0058】
(スラリー化工程)
燃焼物は、次いでスラリー化工程に付される。スラリー化工程とは、燃焼物を水と混合してスラリー化する工程である。このスラリー化により燃焼物中の酸化カルシウムが水に溶出し水酸化カルシウム水溶液となる。なお、このスラリー化を行う前の燃焼物は、好適には凝集体である。
【0059】
スラリーに含有される燃焼物の濃度は固形分換算で2質量%以上25質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。スラリーに含有される燃焼物の濃度が上記上限を超えるとスラリーの粘度が高くなり過ぎ、スラリーが固化したり、後述する二酸化炭素吹き込み工程の効率が低下するおそれがある。一方、スラリーに含有される燃焼物の濃度が上記下限未満の場合、後述する二酸化炭素吹き込み工程での炭酸カルシウムの析出が低下するとともに、二酸化炭素吹き込み工程後の脱水効率が低下し、生産性が低下するおそれがある。
【0060】
(二酸化炭素吹き込み工程)
二酸化炭素吹き込み工程とは、燃焼物のスラリーに二酸化炭素を吹き込み、燃焼物(再生粒子)表面に炭酸カルシウムを析出させる工程である。以下、このメカニズムについて説明する。
【0061】
炭酸カルシウム及びカオリンを高温燃焼すると、炭酸カルシウムが酸化カルシウムに分解されるとともに、カオリンが酸化カルシウムや珪酸と反応し、種々の水和硬質物質が生成される。しかるに、新聞脱墨フロスを利用して炭酸カルシウムの比率を相対的に高め、カオリンの比率を相対的に下げると、水和硬質物質の由来とならない(カオリンと反応しない)酸化カルシウムの割合が増え、この酸化カルシウム(CaO)が燃焼物のスラリー化によって水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)となる。したがって、燃焼物のスラリーは、下記式(1)のように強アルカリ性を示すOH
−を含むことになる。
Ca(OH)
2 → Ca
2++2OH
− ・・・(1)
このスラリーに二酸化炭素(CO
2)を吹き込むと、下記式(2)のように炭酸カルシウム(CaCO
3)が析出されるとともに、pHの低下が生じる。
Ca
2++2OH
−+CO
2 → CaCO
3+H
2O ・・・(2)
このようにしてメタカオリン及び含水珪酸マグネシウムを主成分とする製紙スラッジの表面が炭酸カルシウムによって被覆され、得られる再生粒子の白色度を向上することができる。
【0062】
吹き込む二酸化炭素の濃度は、5容量%以上30容量%以下が好ましく、10容量%以上30容量%以下がより好ましく、20容量%以上30容量%以下がさらに好ましい。吹き込む二酸化炭素の濃度が上記上限を超えると、柱状や針状の結晶構造を有する炭酸カルシウムが析出することにより粒子径が過大となるおそれがある。一方、吹き込む二酸化炭素の濃度が上記下限未満の場合、炭酸カルシウムが十分に析出されず十分な白色度を有する再生粒子が得られないおそれがある。
【0063】
上記工程により、当該新聞用紙の填料として用いる新聞脱墨フロス由来の再生粒子が得られる。この新聞脱墨フロス由来の再生粒子は、メタカオリン及び含水珪酸マグネシウムを主成分とする粒子を核とし、この核の表面の少なくとも一部が炭酸カルシウムで被覆されているため、炭酸カルシウムやカオリン等が単に凝集した従来の再生粒子とは異なり、優れた白色度を有する。また、再生粒子の表面を被覆する炭酸カルシウムは吸油性の高い軽質炭酸カルシウムであるため高い吸油量を有する。また、この新聞脱墨フロス由来の再生粒子は、ナイフエッジが少なくワイヤー磨耗性に優れる。
【0064】
当該新聞用紙における上記新聞脱墨フロス由来の再生粒子の添加量としては、原料パルプに対して固形分換算で1質量%以上9質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。上記新聞脱墨フロス由来の再生粒子の添加量が上記上限を超えると再上記生粒子が過剰となり、製造工程又は印刷工程において脱落する填料が増え、紙粉が発生するおそれや強度が低下するおそれがある。一方、上記新聞脱墨フロス由来の再生粒子の添加量が上記下限未満の場合、上記再生粒子が不足し、充分な不透明度及び吸油量が得られないおそれや白色度の向上が得られないおそれがある。
【0065】
当該新聞用紙は、上述した新聞脱墨フロス由来の再生粒子の他にも、その他の填料を含有することができる。その他の填料としては、例えば水和ケイ酸(ホワイトカーボン)、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、尿素−ホルマリンポリマー微粒子等が挙げられる。
【0066】
<表面処理剤>
当該新聞用紙は、その少なくとも片面に表面処理剤が塗工されていてもよい。当該新聞用紙の少なくとも片面に表面処理剤を塗工することにより、当該新聞用紙の表面強度及び不透明度を高め、紙粉の発生を抑制し、印刷作業性を向上することができる。
【0067】
上記表面処理剤としては、例えば澱粉類、セルロース類、水溶性合成接着剤等が挙げられる。これらのなかでも酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉(HES)が好ましく、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉(HES)とを混合して用いることがより好ましい。
【0068】
表面処理剤として、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを混合して紙の表面に塗布すると、これらは紙の内部にまで浸透せずに紙表面で強固な被膜を形成する。酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉が紙の内部にまで浸透せず、紙表面で被膜を形成する原因は定かではないが、酸化澱粉が有するカルボキシル基等とヒドロキシエチル化澱粉が有する水酸基とが結合(エステル化反応等)し架橋することで、これらが高分子化し、紙の内部にまで浸透しし難くなるものと推測される。また、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを混合することで、表面処理剤が適度な粘度になることや、上記エステル化によりこれらの澱粉とパルプ繊維を構成するセルロースとの親和性が低下し、浸透し難くなることも原因と考えられる。さらに、当該新聞用紙のネッパリトラブル発生の抑制も、上記エステル化等による澱粉の親水性の低下が原因と考えられる。
【0069】
特に、当該新聞用紙は、新聞脱墨フロス由来の再生粒子を内添するため、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを混合した表面処理剤を塗布して紙表面でより強固な被膜を形成することにより、紙粉の発生を抑制し、印刷適性をさらに高めることができる。
【0070】
加えて、このように表面処理剤が紙の内部まで浸透せず、紙表面で被膜を形成することで紙の内部に空隙を残存させることができる。これにより紙内部での光の散乱度合いが高まり、その結果、当該新聞用紙の不透明度をさらに向上することができる。
【0071】
酸化澱粉としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム等による酸化反応によって、分子中へのカルボキシル基等の導入が行われたもの等が挙げられる。酸化澱粉の質量平均分子量としては50万以上100万以下が好ましい。また、ヒドロキシエチル化澱粉の質量平均分子量としては120万以上200万以下が好ましい。酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の質量平均分子量が上記上限を超えると、粘性が高まり、表面処理剤としての塗布性が低下するおそれがある。一方、酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の質量平均分子量が上記下限未満の場合は、紙内部に表面処理剤が浸透し過ぎることにより表面強度が低下するおそれがある。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)を用いて測定した数値である。
【0072】
酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の含有比は、質量基準で1:9以上9:1以下が好ましく、5:5以上7:3以下がより好ましい。酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の含有比を上記範囲とすることで、表面処理剤を好適な粘度に調製することができ、その結果、表面処理剤の原紙内部への過剰な浸透を抑え、表面に強固な被膜を形成することができる。
【0073】
表面処理剤には、酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉以外にも他の澱粉、PVA(ポリビニールアルコール)、ポリアクリルアミド、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等を含有することができる。これらのなかでも、表面サイズ剤を併用することが好ましい。表面サイズ剤を併用することで、オフセット印刷機での紙面汚れを抑制することができる。以下、表面サイズ剤について説明する。
【0074】
表面サイズ剤としては、例えばスチレン系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ロジン等が挙げられる。これらのなかでも、高いサイズ性、オフセット輪転印刷におけるインクとの相性、及び填料の脱落防止効果に優れる点でスチレン系サイズ剤が好ましい。スチレン系サイズ剤としては、例えばスチレンアクリル酸共重合体、スチレン(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/又はメタクリル酸」を意味する)、スチレン(メタ)アクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレンマレイン酸共重合体、スチレンマレイン酸半エステル共重合体、スチレンマレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0075】
表面処理剤における表面サイズ剤の配合比は、固形分換算で表面処理剤に含有される澱粉100質量部に対して5質量部以上30質量部以下が好ましい。表面処理剤に含有される澱粉100質量部に対する表面サイズ剤の配合比が上記上限を超えるとインク乾燥性の低下を招くおそれがある。一方、表面処理剤に含有される澱粉100質量部に対する表面サイズ剤の配合比が上記下限未満の場合、紙のサイズ性及び表面強度が充分に得られないおそれがある。
【0076】
特に、表面処理剤に含まれる酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の含有比が質量基準で1:9以上9:1以下の場合に、上記表面サイズ剤としてスチレン系サイズ剤を用いると、表面処理剤をより均一に塗工することができ、当該新聞用紙の表面強度、填料の脱落防止及びサイズ効果をより高めることができる。
【0077】
表面処理剤のB型粘度としては、5cps以上80cps以下が好ましく、10cps以上40cps以下がより好ましい。表面処理剤の粘度が上記上限を超えると、塗布時の作業性が低下し、均一な塗布が困難となるおそれがある。一方、表面処理剤の粘度が上記下限未満の場合、表面処理剤が紙内部に浸透し過ぎることにより、当該新聞用紙の表面強度が低下するおそれがある。なお、「表面処理剤のB型粘度」は、デジタル式B型粘度計(東機産業社製、型番:TVB−10M)No.1のローターを使用し60rpm、45℃にて測定した値である。
【0078】
表面処理剤の塗工量としては、片面あたり乾燥質量で0.1g/m
2以上2.0g/m
2以下が好ましく、0.3g/m
2以上1.5g/m
2以下がより好ましい。表面処理剤の塗工量が上記上限を超えると表面処理剤のミストが発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じるおそれがある。一方、表面処理剤の塗工量が上記下限未満の場合、紙の表面に充分な被膜を得ることが困難となり、当該新聞用紙の表面強度が低下するおそれがある。
【0079】
<品質等>
当該新聞用紙の白紙不透明度は、90%以上が好ましく、92%以上がより好ましい。当該新聞用紙の白紙不透明度が上記数値未満の場合、裏抜けが生じやすくなるおそれがある。
【0080】
当該新聞用紙の印刷不透明度は、90%以上が好ましく、91%以上がより好ましい。当該新聞用紙の印刷不透明度が上記数値未満の場合、裏抜けが生じやすくなるおそれがある。
【0081】
当該新聞用紙の白色度は、52%以上58%以下が好ましく、53%以上57%以下がより好ましい。当該新聞用紙の白色度が上記上限を超えると、コスト高となるおそれがある。一方、当該新聞用紙の白色度が上記下限未満の場合、印刷された文字等が識別しにくくなり購読者の眼精疲労をきたすおそれがある。
【0082】
当該新聞用紙の灰分は5%以上20%以下が好ましく、7%以上15%以下がより好ましい。当該新聞用紙の灰分が上記上限を超えると、当該新聞用紙の強度が低下したり、填料の脱落等により紙粉が増加したりするおそれがある。一方、当該新聞用紙の灰分が上記下限未満の場合、十分な不透明度が得られないおそれや白色度の向上が得られないおそれがあり、また、優れた印刷作業性を発揮することができないおそれがある。
【0083】
当該新聞用紙の坪量は、38g/m
2以上48g/m
2以下が好ましく、40g/m
2以上46g/m
2以下がより好ましい。当該新聞用紙の坪量が上記上限を超えると、近年の軽量化、省資源に逆行することとなる。一方、当該新聞用紙の坪量が上記下限未満の場合、十分な不透明度及び強度が得られず、高速オフセット輪転印刷機における印刷が困難となるおそれがある。
【0084】
<新聞用紙の製造方法>
当該新聞用紙は、公知の製造方法によって製造することができる。
【0085】
まず、パルプスラリーを調整し、このパルプスラリーを抄紙して新聞用原紙を得る。このパルプスラリーには、パルプ及び填料の他に、例えば澱粉類、ポリアクリルアミド、エピクロルヒドリン等の紙力増強剤;ロジン、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤;硫酸バンド、ポリエチレンイミン等の凝結剤;ポリアクリルアミドやその共重合体等の凝集剤等を含有することができる。
【0086】
上記抄紙により得られた新聞用原紙は、その少なくとも片面に表面処理剤を塗布することが好ましい。表面処理剤の塗布には、製紙分野で一般的に使用されている塗布装置を用いればよく、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコータ、バーコータ、ゲートロールコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いることができる。
【0087】
表面処理剤を塗工する際の新聞用原紙の温度としては、35℃以上85℃以下が好ましく、40℃以上75℃以下がより好ましい。このように比較的高温の新聞用原紙に表面処理剤を塗工することで、新聞用紙の表面に薄く高強度の被膜を形成することができる。表面処理剤を塗工する際の新聞用原紙の温度が上記上限を超えると、澱粉が内部まで染み込み過ぎることにより表面強度が低下するおそれがある。一方、表面処理剤を塗工する際の新聞用原紙の温度が上記下限未満の場合、表面処理剤の塗工性が低下し、均一な被膜の形成が困難となるおそれがある。
【0088】
表面処理剤を塗工し、乾燥した後は、印刷適性(例えば、高平滑や高光沢)を付与する目的で、カレンダに通紙して加圧仕上げが施される。この場合のカレンダ装置としては、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトコンパクトカレンダなどの金属またはドラムと弾性ロールの組み合わせになる各種カレンダが、オンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用できる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、%は質量%を、薬品添加量はパルプ絶乾質量(t)当たりの固形分質量(kg)を意味する。
【0090】
なお、本実施例における各測定値は、以下の方法にて測定した値である。
【0091】
[製紙スラッジ中の無機粒子における炭酸カルシウム、カオリンの含有割合(単位:質量%)]
製紙スラッジ中の無機粒子における炭酸カルシウム、カオリンの含有率は、製紙スラッジを525℃で燃焼して燃焼物を得た後、堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて15KVの加速電圧にて再生粒子に含まれる各種元素の酸化物換算質量割合を求め、この結果と、炭酸カルシウム、カオリン、タルク及び二酸化珪素の分子量とに基づいて比例計算を行うことで算出した。
【0092】
[炭酸カルシウムの分解率(単位:%)]
525℃で燃焼した燃焼物のTG−DTA質量減少率(600〜800℃)と、後述の表1に記載の条件で燃焼した燃焼物のTG−DTA質量減少率(600〜800℃)との差から分解率を求めた。
【0093】
[水分率(単位:質量%)]
定温乾燥機内に試料を静置し、約105℃で6時間以上保持することで質量変動を認めなくなった時点を乾燥後質量とし、下記式により算出した値である。
水分率(%)=[(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量]×100
【0094】
[炉内温度(単位:℃)]
炉本体内の温度を、熱電対を用いて測定した値である。
【0095】
[酸素濃度(単位:容量%)]
炉本体内の酸素濃度を、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA−5250、堀場製作所製)を用いて測定した値である。
【0096】
[分散性(単位:mPa・s)]
雰囲気温度20℃、ローター回転数60rpmの条件下において、B型粘度計(東機産業(株)製、TVM−10M)を用いて測定した値である。なお、粘度(mPa・s)が低いほど分散性が良好であると判断される。
【0097】
[反応後pH及び製品pH]
反応後pHとは、二酸化炭素吹き込み工程において、二酸化炭素の吹込みを終えた炭酸化反応終了時点のpHを、また、製品pHとは、炭酸化反応を終えた後、pH9.0以上で1時間あたりのpH変動数値が0.5以下となった時点のpHを、それぞれ意味する。
【0098】
[平均粒子径(単位:μm)]
レーザー回折方式の粒度分布計(型番:マイクロトラックMT−3000II、日機装製)を用いて測定した体積平均粒子径(D
50)である。測定試料の調製は、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に粒子を添加し、超音波で1分間分散した。
【0099】
[白色度(再生粒子)(単位:%)]
色差計(SP−80、東京電色製)を用い、粉体試料を乳鉢で磨り潰し、ガラスセルに詰めて測定した値である。
【0100】
[吸油量(単位:mL/100g)]
JIS−K5101の練り合わせ法に準拠して測定した値である。すなわち、105℃〜110℃で2時間乾燥した試料2g〜5gをガラス板に取り、精製アマニ油(酸化4以下のもの)をビュレットから少量ずつ試料の中央に滴下し、その都度ヘラで練り合わせ、この滴下及び練り合わせを繰り返し、全体が初めて1本の棒状にまとまったときを終点とし、この時点における精製アマニ油の滴下量を求め、次の式によって算出した。
吸油量=[アマニ油量(ml)×100]/試料(g)
【0101】
[摩耗度(単位:mg)]
プラスチックワイヤー摩耗度計(日本フィルコン製)を用い、スラリー濃度2%の条件下で3時間後に測定した値である。
【0102】
[坪量(g/m
2)]
JIS−P8124(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0103】
[灰分(単位:%)]
JIS−P8251(2003)に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0104】
[白紙不透明度(単位:%)]
JIS−P8149(2000)に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した。
【0105】
[印刷不透明度(単位:%)]
JAPAN TAPPI No.45(2000)「新聞用紙−印刷後不透明度試験方法」に準拠し、測定機器ISO白色度計(スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0106】
[白色度(紙)(単位:%)]
JIS−P8148(2001)「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
【0107】
[インキ着肉性]
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、小森コーポレーション社製)を使用し、新聞インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業社製)にて連続10000部の印刷を行った。得られた印刷物について、画像の鮮明さ及び濃淡ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:画像が鮮明で濃淡ムラが全くなく、インキ着肉性に優れる。
4:画像が鮮明で濃淡ムラが殆どなく、インキ着肉性が良好である。
3:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがややある。
2:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがあり、インキ着肉性が良好でない。
1:全体的に、画像が不鮮明で濃淡ムラが著しく、インキ着肉性に劣る。
【0108】
[ブランケット紙粉、パイリング]
オフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−4、三菱重工業社製)を使用して50連巻きの新聞用紙にて両出し10万部の印刷を行い、印刷紙面のカスレとブランケット非画像部における紙粉の発生及び堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:紙面カスレと紙粉の発生が全く認められない。
4:紙面カスレがわずかに認められるがブランケット上での堆積は全く認められない。
3:紙面カスレがやや認められブランケット上での堆積が少し認められる。
2:紙面カスレの発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
1:紙面カスレとブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
【0109】
〔新聞脱墨フロス由来の再生粒子の製造〕
[製造例1]
新聞脱墨フロス中の無機粒子における炭酸カルシウムの含有量が78質量%である新聞フロスを固形分換算で100質量%含有する製紙スラッジを、水分率が45質量%となるように脱水工程に付した後、製紙スラッジの平均粒子径が3mmとなるように破砕し、内燃式の横型回転式キルン炉を用い、水分率が2質量%となるように乾燥工程に付した後、内燃式の横型回転式キルン炉にて温度800℃、酸素濃度12容量%にて燃焼処理した。燃焼処理での炭酸カルシウムの分解率は90%だった。燃焼工程後の燃焼物を平均粒子径が3μmとなるように粉砕した後、燃焼物濃度が10質量%となるようスラリー化し、二酸化炭素含有ガス(濃度16容量%)を撹拌しながら反応後pHが7.4になるまでスラリーに吹き込み、炭酸カルシウムを析出させ、表面が炭酸カルシウムで被覆された製造例1の再生粒子を得た。得られた再生粒子の平均粒子径は4μm、白色度は88%、吸油量は115mL/100g、ワイヤー摩耗度は80mgであった。なお、製造例1で用いた製紙スラッジ(新聞脱墨フロス)中の無機粒子におけるカオリンの含有量は16質量%であった。
【0110】
[製造例2〜7、製造比較例1〜5]
製紙スラッジに含まれる新聞脱墨フロスの含有率、製紙スラッジ中の無機粒子における炭酸カルシウムの含有割合、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程、スラリー工程、二酸化炭素吹き込み工程の条件を表1及び表2に示すように変更したこと以外は上記製造例1と同様の操作を行い、製造例2〜7、製造比較例1〜5の再生粒子を得た。得られた再生粒子の物性(平均粒子径、白色度、吸油量、摩耗度)を表2に示す。
【0111】
〔雑誌脱墨フロス由来の再生粒子の製造〕
[製造例A]
雑誌脱墨フロス(雑誌古紙パルプを製造する古紙処理工程由来の脱墨フロス)を固形分換算で100質量%含有する製紙スラッジを水分率が45質量%となるように脱水工程に付した後、製紙スラッジの平均粒子径が3mmとなるように破砕し、有機成分の熱処理工程(280℃、酸素濃度12容量%)、第1燃焼工程(400℃、酸素濃度12容量%)及び第2燃焼工程(680℃、酸素濃度12容量%)を経た後、セラミックボールミルを用いて湿式粉砕処理を施して雑誌脱墨フロス由来の再生粒子(製造例A)を得た。上記有機成分の熱処理工程において用いた内熱式キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、この内熱キルン炉一端の原料供給口から脱墨フロス等の原料を供給するとともに熱風を吹き込む並流方式を採用した。また、上記第1燃焼工程において用いた内熱キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、第2燃焼工程において用いた外熱キルン炉は、内部に平行リフターを有する外熱電気方式のキルン炉を採用した。第1燃焼工程の燃焼温度は、1次燃焼炉出口の温度を測定し、第2燃焼工程の燃焼温度は2次燃焼炉の出口温度を測定した。酸素濃度は、1次燃焼炉の出口酸素濃度及び2次燃焼炉の出口酸素濃度をそれぞれ測定した。得られた雑誌脱墨フロス由来の再生粒子の平均粒子径は2.5μm、白色度は81%、吸油量は60mL/100g、ワイヤー摩耗度は120mgであった。
【0112】
〔新聞用紙の製造〕
(実施例1)
離解・脱墨古紙パルプ(DIP)を80質量%、サーモメカニカルパルプ(TMP)を20質量%配合し、レファイナーでフリーネスを120mLC.S.F(JIS−P8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、上記製造例1の新聞脱墨フロス由来の再生粒子を45kg/パルプトン添加し、硫酸バンドでpHを6〜7に調整後、絶乾パルプ100質量部あたり0.07質量部の凝集剤(ハイモ社製ハイモロックND270)を添加してツインワイヤー抄紙機で坪量41.8g/m
2の新聞用原紙を抄造した。
【0113】
更に、表面処理剤として酸化澱粉(日本食品加工社製、質量平均分子量70万)50質量部、ヒドロキシエチル化澱粉(HES:ペンフォード社製、質量平均分子量155万)50質量部を混合した澱粉液にスチレン系サイズ剤(星光PMC株式会社製、「SS2712」)を固形分で酸化澱粉及びヒドロキシルエチル化澱粉の合計100質量部に対し20質量部配合した。この表面処理剤を表面温度50℃の上記新聞用原紙の両面に乾燥質量で1.2g/m
2塗工して坪量43g/m
2の実施例1の新聞用紙を得た。
【0114】
(実施例2〜10、比較例1〜4)
填料の種類、填料の平均粒子径、填料の添加量、表面処理剤に含まれる2種類の澱粉の種類及び含有量を表3に示すように変更したこと以外は上記実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜10及び比較例1〜4の新聞用紙を得た。
【0115】
また、比較例1の軽質炭酸カルシウムとしては、奥多摩工業株式会社製「タマパールTP−121−6S」を用い、比較例2のホワイトカーボンはエリエールペーパーケミカル社製のホワイトカーボンを用いた。
【0116】
(品質評価)
得られた各新聞用紙について、上記方法にて灰分、白紙不透明度、印刷不透明度、白色度、インキ着肉性、紙粉パイリングについてそれぞれ評価した。評価結果を表3に併せて示す。
【0117】
【表1】
【表2】
【表3】
【0118】
上記表3に示されるように、本発明の新聞用紙は、高い不透明度及び白色度を有することがわかる。また、当該新聞用紙は、インキ着肉性と紙粉パイリングについて高い評価であり、印刷適性及び印刷作業性に優れることがわかる。