(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944752
(24)【登録日】2016年6月3日
    
      
        (45)【発行日】2016年7月5日
      
    (54)【発明の名称】液晶表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F   1/1339      20060101AFI20160621BHJP        
   G02F   1/1343      20060101ALI20160621BHJP        
【FI】
   G02F1/1339 500
   G02F1/1343
【請求項の数】2
【全頁数】10
      (21)【出願番号】特願2012-132495(P2012-132495)
(22)【出願日】2012年6月12日
    
      (65)【公開番号】特開2013-257393(P2013-257393A)
(43)【公開日】2013年12月26日
    【審査請求日】2014年10月9日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
          (74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村  爾
          (74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村  純子
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】大谷  美晴
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】平塚  崇人
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】伊東  理
              
            
        
      
    
      【審査官】
        弓指  洋平
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2004−341465(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2009−145865(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2008−261989(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2011−112892(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F      1/1339    
G02F      1/1343    
G02F      1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  第一基板と、
  前記第一基板に対向するように設けられた第二基板と、
  前記第一基板と前記第二基板との間に設けられた液晶層と、
  前記第一基板上に形成された壁構造体と、
  前記壁構造体の少なくとも側面に設けられた第一電極と、
  前記第一基板上及び前記第二基板上に形成され、対向する一対の電極からなる第二電極とを有し、
  前記第一基板と、前記第二基板と前記液晶層とを含む複数の画素を備え、
  前記複数の画素のそれぞれの周辺に遮光領域を有し、
  前記壁構造体は前記遮光領域に配置されており、
  前記壁構造体の上面に、ウレタンで形成された支持体が配置され、
  前記第二基板は、前記支持体によって支持され、
  前記支持体の高さは0.2μm以上0.6μm以下であり、かつ前記支持体の、前記第二基板に対する単位面積当たりの接触面積率は0.05%以上0.4%以下であり、
  前記液晶層は、前記第一電極及び前記第二電極によって生成される電界によって駆動されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
  第一基板と、
  前記第一基板に対向するように設けられた第二基板と、
  前記第一基板と前記第二基板との間に設けられた液晶層と、
  前記第一基板上に形成された壁構造体と、
  前記壁構造体の少なくとも側面に設けられた第一電極と、
  前記第一基板上及び前記第二基板上に形成され、対向する一対の電極からなる第二電極とを有し、
  前記第一基板と、前記第二基板と前記液晶層とを含む複数の画素を備え、
  前記複数の画素のそれぞれの周辺に遮光領域を有し、
  前記壁構造体は前記遮光領域に配置されており、
  前記壁構造体の上面に支持体が配置され、
  前記第二基板は、前記支持体によって支持され、
  前記液晶層は、前記第一電極及び前記第二電極によって生成される電界によって駆動されるよう構成された液晶表示装置の製造方法において、
  前記壁構造体の上面に配置される前記支持体は、ウレタンで形成されると共に、インクジェット法又はフィルム転写により形成され、前記支持体の高さは0.2μm以上0.6μm以下であり、かつ前記支持体の、前記第二基板に対する単位面積当たりの接触面積率は0.05%以上0.4%以下となるよう形成されることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、液晶表示装置に関し、特に、いわゆる横電界方式で駆動する液晶表示装置に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  液晶表示装置では画素電極や薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFT基板と、カラーフィルタ等が形成された対向基板との間に液晶を充填し、この液晶の分子を電界によって駆動・制御することによって画像を形成する。その中でも、近年では横電界方式(IPS方式)と呼ばれる方式で駆動される液晶表示装置が多く用いられている。
【0003】
  IPS方式とは、液晶分子をパネル面に水平に配向させ、パネル面と平行な電界(横電界)を印加して液晶分子をパネル面と水平な面内で回転させる液晶の駆動方式である。このIPS方式の液晶表示装置は、映像信号線(ドレイン線)や走査信号線(ゲート線)及び薄膜トランジスタや画素電極等が形成される第一基板側に共通電極も形成され、画素電極と共通電極とに印加する電圧差で生じる第一基板の面内方向の電界により液晶層を駆動する。この構成からなるIPS方式の液晶表示装置では、例えば、透明導電膜で形成される面状の共通電極の上層に絶縁膜を介して線状の画素電極が重畳して配置される構成となっている。
【0004】
  このIPS方式の中でも、液晶表示部の開口率をより高めるために、液晶表示装置の隣接画素を跨ぐようにして壁構造体を形成し、この壁構造体の側壁に画素電極を形成し、さらに、対向するTFT基板と対向基板に共通電極と対向電極をそれぞれ形成し、基板面に平行な電界を発生せしめて液晶層を駆動する方式が近年多く用いられるようになっている。
【0005】
  また、液晶表示装置におけるTFT基板と対向基板の間の間隔は数ミクロンと非常に小さく、TFT基板と対向基板の間の間隔を適切に設定することは、液晶による光の透過を制御するためには極めて重要である。そこで、上記の壁構造体に、TFT基板と対向基板との間隔を保持させるスペーサとしての機能を兼備させることが提案されてきた。
【0006】
  ところで、液晶表示装置を製造する際には、基板間に液晶を充填して封止する必要がある。そして近年多用されている液晶の充填方法として、まず一方の基板上に液晶を必要量滴下し、その後他方の基板を封止して液晶を充填する液晶滴下注入法(ODF方式)と呼ばれる方法がある。
【0007】
  ODF方式によると、従来の液晶注入法に比べて大型の製造設備が不要で、また製造に掛る時間も短縮でき、且つ液晶の大量生産が容易になるという利点があるが、液晶の滴下や、上記の基板間の間隔の保持に非常に高い精度が求められる。
【0008】
  このODF方式を、上記のように壁構造体にスペーサ機能を備えさせた液晶表示装置に対して適用すると、低温衝撃気泡の発生が懸念される。低温衝撃気泡とは、液晶を封入した液晶パネル等に外力等による衝撃が加わった際に、液晶層中に負圧が生じ、液晶層中に溶け込んでいた窒素等の気体成分が溶出して発生するいわゆる真空気泡の中でも、特に−20℃程度の低温環境下で発生する気泡のことである。
【0009】
  この低温衝撃気泡は、再溶解し難く、なかなか消滅しないため、表示むら発生等の大きな原因となる。低温衝撃気泡は、基板とスペーサとの接触部において発生しやすく、また低温衝撃気泡の発生を抑制する性能は、スペーサと基板との接触面積に反比例することが実験的に確かめられている。
【0010】
  壁構造体を採用したIPS方式の液晶表示装置において低温衝撃気泡の発生が問題となる理由は、壁構造体の高さは一定で、且つ画素の長辺上すべてに形成されることから、いわゆるメインスペーサのみを高密度で配した状態となり、メインスペーサよりわずかに高さが低いサブスペーサを配置するスペースがないからである。即ち、サブスペーサを配置する場合と比べて基板とスペーサ間の接触面積が増加してしまうからである。
【0011】
  また、壁構造体をスペーサと兼用する場合に上記のODFプロセスを用いて液晶表示装置を製造した場合、基板を張り合わせた際の圧力を壁構造体が直接受けることとなり、電極であるITOや、層間絶縁膜、あるいは壁構造体自体にダメージが発生することが懸念される。 
【0012】
  特許文献1においては、VA方式の液晶表示装置において、基板間に壁構造体と支持体を配置して液晶層の厚さを規定する技術が開示されている。また、特許文献2及び3においても、スペーサを用いて基板間の厚さを保持する技術が開示されている。しかし、これらのいずれも、IPS方式の低温衝撃気泡を抑制したり、壁構造体等の損傷を防止するには不十分であった。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−157224号公報
【特許文献2】特開2009−145865号公報
【特許文献3】特開2010−210866号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
  本発明が解決しようとする課題は、上記の問題を解決し、壁構造体を有するIPS方式の液晶表示装置において、低温衝撃気泡の発生を抑制し、且つ基板内部の電極等の損傷を防止することのできる液晶表示装置
及びその製造方法を提供することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0015】
  上記課題を解決するため、本発明の液晶表示装置
及びその製造方法は、以下のような技術的特徴を有している。
(1)  第一基板と、前記第一基板に対向するように設けられた第二基板と、前記第一基板と前記第二基板との間に設けられた液晶層と、前記第一基板上に形成された壁構造体と、少なくとも前記壁構造体の側面に設けられた第一電極と、前記第一基板上及び前記第二基板上に形成され、対向する一対の電極からなる第二電極とを有し、前記第一基板と、前記第二基板と前記液晶層とを含む複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれの周辺に遮光領域を有し、前記壁構造体は前記遮光領域に配置されており、前記壁構造体の上面に、
ウレタンで形成された支持体が配置され、前記第二基板は、前記支持体によって支持され、前記液晶層は、前記第一電極及び前記第二電極によって生成される電界によって駆動されることを特徴とする液晶表示装置である。
【0016】
(2)  上記(1)に記載の液晶表示装置において、前記支持体の高さは0.2μm以上0.6μm以下であることを特徴とする。
【0017】
(3)  上記(1)又は(2)に記載の液晶表示装置において、前記支持体の、前記第二基板に対する単位面積当たりの接触面積率は0.05%以上0.4%以下であることを特徴とする。
【0018】
(4)  
第一基板と、前記第一基板に対向するように設けられた第二基板と、前記第一基板と前記第二基板との間に設けられた液晶層と、前記第一基板上に形成された壁構造体と、前記壁構造体の少なくとも側面に設けられた第一電極と、前記第一基板上及び前記第二基板上に形成され、対向する一対の電極からなる第二電極とを有し、前記第一基板と、前記第二基板と前記液晶層とを含む複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれの周辺に遮光領域を有し、前記壁構造体は前記遮光領域に配置されており、前記壁構造体の上面に支持体が配置され、前記第二基板は、前記支持体によって支持され、前記液晶層は、前記第一電極及び前記第二電極によって生成される電界によって駆動されるよう構成された液晶表示装置の製造方法において、前記壁構造体の上面に配置される前記支持体は、ウレタンで形成されると共に、インクジェット法又はフィルム転写により形成され
、前記支持体の高さは0.2μm以上0.6μm以下であり、かつ前記支持体の、前記第二基板に対する単位面積当たりの接触面積率は0.05%以上0.4%以下となるよう形成されることを特徴とする。
 
【発明の効果】
【0019】
  本発明によれば、壁構造を有するIPS方式の液晶表示装置においても、低温衝撃気泡の発生を抑制することができる。また、支持体がクッションとして働くことにより、壁構造体に直接力が加わらないため、基板内部の電極等の損傷を防止することができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る液晶表示装置の一実施形態における画素構成を模式的に表す断面図である。
 
【
図2】本発明に係る液晶表示装置の一実施形態における画素構成を模式的に表す平面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0021】
  以下、本発明について好適例を用いて詳細に説明する。
  
図1は、本発明の液晶表示装置における画素構成を模式的に表す断面図であり、
図2は、本発明の液晶表示装置における画素構成を模式的に表す平面図である。
  本発明の液晶表示装置は、
図1に示すように、第一基板であるTFT基板2と、TFT基板2に対向するように設けられた第二基板であるカラーフィルタ(CF)基板1と、TFT基板2とCF基板1との間に設けられた液晶層6と、TFT基板2上に形成された壁構造体4と、少なくとも壁構造体4の側面に設けられた第一電極である画素電極8と、TFT基板2上及びCF基板1上に形成され、対向する共通電極5及び対向電極9とを有し、TFT基板2と、CF基板1と液晶層6とを含む複数の画素を備え、前記複数の画素のそれぞれの周辺に遮光領域を有し、壁構造体4は前記遮光領域に配置されており、壁構造体4の上面に、透明で、且つ弾性を有する材料で形成された支持体3が配置され、CF基板1は、支持体3によって支持され、液晶層6は、画素電極8及び、共通電極5及び対向電極9によって生成される電界によって駆動されることを特徴とする。
 
【0022】
  本実施形態の液晶表示装置は互いに対向するCF基板1とTFT基板2との間に任意の間隙を設け、その間隙に液晶を満たして液晶層6が形成された構造となっている。このとき、CF基板1は、壁構造体4に形成された支持体3により支持されている。
 
【0023】
  CF基板1は、赤色用フィルタ、緑色用フィルタ、青色用フィルタを有し、バックライト(不図示)から照射されて、液晶層6を透過した光に色彩を与える役割を果たす。また後述するようにCF基板上の、画素間を画する位置にはブラックマトリクスBMが形成され、さらに対向電極9、オーバーコート層OCを含む。このオーバーコート層OCは、対向電極9と、他の回路要素とが不必要に短絡しないようにするためのものである。
 
【0024】
  TFT基板2上には、図示していないが走査信号を印加するゲート信号線や映像信号線を印加するドレイン信号線がマトリクス状に配置され、1組のゲート信号線及びドレイン信号線によって矩形状の、TFT基板2と、CF基板1と、液晶層6とを含む画素10が形成されている。TFT基板2上には、その他にもTFTやスイッチング素子等の回路要素が配置されているが、これらについても図示を省略する。CF基板1及びTFT基板2の素材としては、例えばガラス基板が一般的であるが、絶縁性を有する透明樹脂基板であっても良い。
 
【0025】
  そしてCF基板1上及びTFT基板2上には、対向して一対となる対向電極9及び共通電極5が形成されている。対向電極9及び共通電極5は、例えばITO(Indium−Tin−Oxide)等の透明導電材料を用いて、スパッタリング法で電極膜を形成して、フォトリソグラフィ法で選択エッチングする等の方法で形成されている。また、ITO以外にも例えばIZO(Indium−Zinc−Oxide)等の材料を用いることができる。
 
【0026】
  さらにTFT基板2上には、壁構造体4が、例えば感光性樹脂材料を用い、既知のフォトリソグラフィ法等によりを形成されている。本発明においては
図1に示す通り、壁構造体4の側面に画素電極8が形成されており、このように画素電極8が液晶層6中で、TFT基板2からCF基板1に向かう方向に延在して配置されることで、液晶層6に対して水平方向(
図1中での横方向)に均一な電界をかけることができ、表示ムラの発生を防止することができるようになる。
 
【0027】
  壁構造体4は、画素10と隣接画素11の境界を画する遮光領域に形成されており、それゆえ表示領域における表示機能には何ら影響を与えることがない。従って、壁構造体4は表示装置の有効表示領域に形成されていて良いが、それに限られず、有効表示領域ではない表示部の周辺回路領域等に形成しても良い。
 
【0028】
  ここで遮光領域とは、CF基板1上に形成される、表示に寄与せずに遮光する領域のことであり、本実施例においては感光性樹脂等で形成されたブラックマトリクス層BMを形成して遮光領域としているが、これ以外にも例えばTFTやゲート信号配線、ソース信号配線等に遮光能力をもたせて遮光領域とすることもできる。
 
【0029】
  壁構造体4を形成後、少なくとも壁構造体4の側面を覆うように画素電極8を形成する。画素電極8についても、共通電極5と同様にITOやIZO等の透明導電材料を用いてスパッタリング法及びフォトリソグラフィ法等により形成される。
 
【0030】
  また、画素電極8は、前述のように、液晶層6に均一な横電界を印加するために、少なくとも壁構造体4の側面に形成されているが、壁構造体4の上部には形成しないことが好ましい。後述する支持体3の形状や安定性に影響を与える恐れがあるからである。従って、壁構造体4の上部には、予め電極除去用の膜を塗布し、ITO等の透明導電材料が形成されないようにしておくことが好ましい。
 
【0031】
  そして、壁構造体4及び共通電極5を覆うように絶縁膜7を、SiN等の材料により公知のCVD法等で形成する。絶縁膜7は、共通電極5や、画素電極8等と、前述のゲート信号線等の回路要素との間で不必要な短絡が生じないようにするためのものである。
 
【0032】
  上記構成により、壁電極8と、共通電極5、対向電極9との間には、CF基板1及びTFT基板2に平行な成分を有する電界が生じ、この電界によって液晶層6中の液晶の分子を駆動させるようになっている。このような液晶表示装置は、いわゆる広視野角表示ができるものとして知られ、液晶への電界の印加の特異性から、IPS方式あるいは横電界方式と称される。また、このような構成の液晶表示装置において、液晶に電界が印加されていない場合に光透過率を最小(黒表示)とし、電界を印加することにより光透過率を増加させていくノーマリーブラックで表示を行うようになっている。
 
【0033】
  しかしながら、上記構成の液晶表示装置をODF方式で製造した場合、TFT基板2とCF基板1間に液晶層6を充填後、基板を張り合わせると、張り合わせの際に基板に加わる圧力が直接壁構造体4や画素電極8に伝わり、壁構造体4、画素電極8、絶縁膜7等の内部構成が破損する恐れがある。
 
【0034】
  液晶表示装置の内部構成の破損を防止するために、本発明においてはスペーサとして、壁構造体4の上部に支持体3を形成し、この支持体3によってCF基板1を支持し、内部構成の基板に加わる衝撃を吸収する。
 
【0035】
  壁構造体4に支持体3を形成するプロセスについて説明する。支持体3は、液晶層6中を伝搬する光波を遮蔽しないために光学的に透明であること、及びCF基板1に加えられた応力を吸収するために弾性を有することが必要である。これらの要求を満たす素材としてはウレタン等の樹脂等が挙げられるが、上記の要求を満たす素材であれば、これに限られることはない。
 
【0036】
  支持体3は、例えばインクジェット法により必要な場所に形成することができ、本実施例においては壁構造体4の上部に形成する。また、フィルム上に支持体3を印刷し、フィルム転写により壁構造体4上に設置することも可能である。さらに、製造工程を簡略化するために、前述の絶縁膜7を形成する際に、絶縁膜7と支持体3とを同時に形成することもできる。
 
【0037】
  図1及び
図2に示すように、本実施例において支持体3は円錐台形状に形成されているが、形状はこれに限られず、円柱、楕円柱、四角柱、四角錐台等、壁構造体4及びCF基板1と一定の面積で接して液晶層6の厚さを一定に保つことができるような形状であればよい。
 
【0038】
  図2は本実施形態における液晶表示装置の1つの画素の構成を模式的に表した平面図である。
図2に示すように、本実施例における画素は、図示されていないがゲート線とドレイン線とで囲まれる領域からなっている。そして、1つの画素を中央で屈曲させ、画素を上側領域と下側領域とに分け、画素に電圧を印加した時に上側領域と下側領域の液晶分子の回転方向が互いに逆方向となるように液晶分子を初期配向させる。
 
【0039】
  液晶分子を上記のような初期配向にすると、液晶層は、液晶層中の液晶分子群の長軸方向が、基板面に平行になっている配向状態(ホモジニアス配向)を保ったままその方位のみが回転するが、配向方向を含む方位角方向では白表示が青みがかり、その垂直方向では白表示が黄色味を帯びる。従って、本実施形態では、1つの画素内に回転方向が互いに逆となる領域を形成することにより、視角方向での着色を相殺して白色に近づけることができる。
 
【0040】
  そして本実施例において壁構造体4は、画素の左右両端側に、画素を挟み込むように連続して形成されており、支持体3は壁構造体4上に、一定の間隔で規則的に配置されている。支持体3をこのように規則的に配置することによって、CF基板1の一部に局所的に応力が集中して変形が生じる等の不具合を防止することができるが、支持体3の配置方法としては、CF基板1を適切に支持することができれば
図2のような規則的な配置に限られない。
 
【0041】
  しかしながら、支持体3の、CF基板1に対する単位面積当たりの接触率及び高さについては一定の範囲内に収めるのが好ましい。ここで、支持体3のCF基板1に対する単位面積当たりの接触率とは、CF基板1の面積に対する、支持体3の上部がCF基板1と接触している部分の割合であり、この値は0.05%以上0.4%以下であることが好ましい。単位面積当たりの接触率が0.4%を超えると、支持体3とCF基板1との接触部で発生する低温衝撃気泡の発生が問題となり、単位面積当たりの接触率が0.05%を下回ると、支持体3によってCF基板1を十分に支えることができず、CF基板1とTFT基板2の間の間隔を一定に保つことが難しくなり、またCF基板1に加わる応力に対する耐性(押し耐性)が低下するおそれがあるからである。
 
【0042】
  そして、支持体3の高さは0.2〜0.6μmが好ましい。高さが高すぎると、CF基板1に加わった応力の、鉛直方向以外の成分に対する耐性が低下し、結果として押し耐性が低下する。また、高さが低すぎると、壁構造体4とCF基板1との間隙を十分に保持することができなくなり、また、間隙部分の液晶の体積に比べてCF基板1、支持体3、並びに壁構造体4との間の接触面積が大きくなり、低温衝撃気泡が発生しやすくなる可能性があるからである。
 
【0043】
  支持体3を形成した後に、前述のODFプロセスにより、CF基板1と、壁構造体4上に支持体3を配置したTFT基板2とを貼り合わせ液晶パネルを得る。
 
【0044】
  以上の構成が本発明に係る液晶表示装置の基本的構成であり、このような構成を採用することによって、液晶層に横方向に均一な電界を印加することができ、さらに、支持体3のスペーサ機能及びクッション機能により、基板間の間隔を一定に保ち、壁構造体4や画素電極8等が損傷する危険性を確実に回避することができるようになる。さらに、支持体3により対向する基板間の間隙の可動範囲が広がり、低温衝撃気泡不良発生を防ぐことができる。
 
【実施例】
【0045】
  上記の製造方法により、支持体3の接触面積率および高さを変えて試作を行った(試作例1〜10)。それぞれの試作例における支持体の接触面積率、高さを表1に示す。また、それぞれの液晶パネルについて、低温衝撃気泡試験と繰り返し押し試験を実施した結果を併せて記載した。
【0046】
  低温衝撃気泡試験については、-20℃で24時間保持後、-20℃環境下でパチンコ玉を液晶パネル上10cmの距離から自由落下させ、液晶パネルへの気泡発生有(NG)無(OK)を目視で確認した。繰り返し押し試験については、液晶パネルに対し、負荷荷重150[N](φ=10mm換算)を200[N/sec]の速度で50回繰り返し押し、除荷1分後の圧痕有(NG)無(OK)を目視確認した。
【0047】
  表1の結果からわかるように、支持体の高さ差が0.0μmの場合、または支持体の接触面積率が0.5%以上の場合、低温衝撃気泡試験がNGとなる。また、支持体の高さが0.7μmの場合、または支持体の接触面積率が0.05%未満の場合、繰り返し押し試験がNGとなる。したがって、支持体の高さ0.2μm〜0.6μm、接触面積率0.05%〜0.4%の場合、信頼性の高い液晶パネルを形成することが可能であることが理解される。
【0048】
【表1】
【0049】
  以上、本発明を説明したが、本発明は本実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更であることはいうまでもない。
 
 
【産業上の利用可能性】
【0050】
  本発明によれば、壁構造を有するIPS方式の液晶表示装置において、低温衝撃気泡の発生を抑制し、且つ基板内部の電極等の損傷を防止することのできる液晶表示装置を提供することが可能となる。
 
【符号の説明】
【0051】
1  CF基板
2  TFT基板
3  支持体
4  壁構造体
5  共通電極
6  液晶層
7  絶縁膜
8  画素電極
9  対向電極
10  画素
11  隣接画素