(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944757
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】電子内視鏡の撮像動作制御装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/04 20060101AFI20160621BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20160621BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
A61B1/04 372
A61B1/06 B
G02B23/24 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-137872(P2012-137872)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-259(P2014-259A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】橘 俊雄
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−026066(JP,A)
【文献】
特開2007−319686(JP,A)
【文献】
特開2002−10975(JP,A)
【文献】
特開2004−321414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/04
A61B 1/06
G02B 23/24
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を照明するための照明光を出力する光源と、
可視光以外の波長域の制御信号光を出力する制御信号発信器と、
スコープ内に設けられ、前記照明光と制御信号光を前記スコープの先端から前記被写体に向けて照射するための光ファイバと、
前記スコープの先端に設けられ、前記照明光の前記被写体による反射光を受光して、被写体像を撮像するCMOSセンサとを備え、
前記CMOSセンサの受光面の一部に、前記被写体によって反射された前記制御信号光を受光するための制御信号光検出部が形成され、
前記CMOSセンサの撮像動作が前記制御信号光に基づいて制御されることを特徴とする電子内視鏡の撮像動作制御装置。
【請求項2】
前記受光面に前記被写体像を撮像するための撮像面が設けられ、前記制御信号光検出部が前記撮像面を囲繞する外周縁部に形成されることを特徴とする請求項1に記載の撮像動作制御装置。
【請求項3】
前記制御信号光検出部の表面に、可視光をカットするフィルタが設けられることを特徴とする請求項1に記載の撮像動作制御装置。
【請求項4】
前記CMOSセンサが前記制御信号光を適切な状態で受光しているか否かを判断する受光判断手段と、
前記CMOSセンサ内に設けられ、前記制御信号光を適切な状態で受光していないことが前記受光判断手段によって判断されたときに、前記撮像動作を制御する自己制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像動作制御装置。
【請求項5】
前記自己制御手段が前記撮像動作を制御している間に、前記制御信号光を適切な状態で受光していると判断されたとき、前記自己制御手段の駆動が停止され、前記撮像動作が前記制御信号光に基づいて制御されるように切り替えられることを特徴とする請求項4に記載の撮像動作制御装置。
【請求項6】
前記撮像動作を制御するために前記CMOSセンサに対して電気信号を出力する電気制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像動作制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子内視鏡に関し、より詳しくはスコープの先端に設けられるCMOSセンサの撮像動作を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡のスコープの先端に設けられる撮像素子として、特許文献1には、CMOSセンサを採用することが開示されている。CMOSセンサはCCDとは異なり、CMOSセンサの回路基板に電子回路を組み込むことができ、この電子回路によって、例えば電子シャッタ速度や出力ゲインを変更すること等のように撮像動作を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−68992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CMOSセンサにおける撮像動作のため、スコープの中には制御用通信線が設けられ、この通信線を介して伝送される電気信号によって撮像動作が制御される。しかし、何らかの原因で通信線が電気信号を伝送できなくなったりすると、CMOSセンサを制御することが不可能になり、被写体像が検出できなくなるという問題が発生する。
【0005】
本発明は、スコープ内の制御用通信線等の通信手段に不具合が生じた場合であってもCMOSセンサの撮像動作を適切に制御することを可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子内視鏡の撮像動作制御装置は、被写体を照明するための照明光を出力する光源と、可視光以外の波長域の制御信号光を出力する制御信号発信器と、スコープ内に設けられ、照明光と制御信号光をスコープの先端から被写体に向けて照射するための光ファイバと、スコープの先端に設けられ、照明光の被写体による反射光を受光して、被写体像を撮像するCMOSセンサとを備え、CMOSセンサの受光面の一部に、被写体によって反射された制御信号光を受光するための制御信号光検出部が形成され、CMOSセンサの撮像動作が制御信号光に基づいて制御されることを特徴としている。
【0007】
好ましくは受光面に被写体像を撮像するための撮像面が設けられ、制御信号光検出部は撮像面を囲繞する外周縁部に形成される。また制御信号光検出部の表面に、可視光をカットするフィルタが設けられてもよい。
【0008】
撮像動作制御装置は、CMOSセンサが制御信号光を適切な状態で受光しているか否かを判断する受光判断手段と、CMOSセンサ内に設けられ、制御信号光を適切な状態で受光していないことが受光判断手段によって判断されたときに、撮像動作を制御する自己制御手段とを備えていてもよい。この場合、自己制御手段が撮像動作を制御している間に、制御信号光を適切な状態で受光していると判断されたとき、自己制御手段の駆動が停止され、撮像動作が制御信号光に基づいて制御されるように切り替えられてもよい。
【0009】
好ましくは、撮像動作を制御するためにCMOSセンサに対して電気信号を出力する電気制御手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スコープ内の制御用通信線等の通信手段に不具合が生じた場合であってもCMOSセンサの撮像動作を適切に制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態を適用した電子内視鏡の概略的な構成を示す図である。
【
図2】CMOSセンサの受光面の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態を適用した電子内視鏡の概略的な構成を示す図である。
【
図4】第2の実施形態におけるCMOSセンサの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示されるように電子内視鏡はスコープ10とプロセッサ20を有し、プロセッサ20にはモニタ30が接続される。スコープ10によって得られた被写体像はプロセッサ20において画像処理され、モニタ30によって表示される。
【0013】
スコープ10は可撓性のある挿入管11を有し、挿入管11内には光ファイバ12と、第1および第2の電気信号線13、14が設けられる。第1の電気信号線13はCMOSセンサの電源用および出力信号の伝送用など複数の信号線から成る。光ファイバ12の基端部はプロセッサ20の近傍まで延び、光ファイバ12の先端部は挿入管11の先端まで延びる。挿入管11の先端には対物レンズ15が設けられ、対物レンズ15の後方には、撮像素子であるCMOSセンサ16が設けられる。CMOSセンサ16の基板には電子回路が組み込まれており、CMOSセンサ16は第2の電気信号線14を介して電子回路に入力される電気信号によって制御される。被写体Sは光ファイバ12から出射される照明光Aによって照明され、CMOSセンサ16は照明光Aの被写体Sによる反射光を受光して被写体像を撮像する。
【0014】
プロセッサ20には、照明光Aを出力する光源21と、可視光以外の波長域の制御信号光Bと出力する制御信号光発信器22とが設けられる。光源21と制御信号光発信器22は光ファイバ12の基端部に対向しており、照明光Aと制御信号光Bは光ファイバ12を介して伝送され、スコープ10の先端から被写体Sに向けて照射される。照明光Aは被写体Sを照明するためであり、制御信号光BはCMOSセンサ16の撮像動作の制御、すなわち電子シャッタ速度や出力ゲイン等を変更するために用いられる。
【0015】
またプロセッサ20には、センサ制御/画像処理部23が設けられる。センサ制御/画像処理部23は第1の電気信号線13を介してCMOSセンサ16に電力を供給するとともに駆動信号(電気信号)を伝送し、CMOSセンサ16を駆動する。CMOSセンサ16において生じた被写体像の画像信号は、第1の電気信号線13を介してセンサ制御/画像処理部23に伝送される。画像信号はセンサ制御/画像処理部23において画像処理され、モニタ30により画像が表示される。またセンサ制御/画像処理部23は第2の電気信号線14を介して、CMOSセンサ16の撮像動作(電子シャッタ速度の変更や出力ゲインの調整等)を制御することが可能である。
【0016】
さらにセンサ制御/画像処理部23は、CMOSセンサ16の撮像動作のため、制御信号光発信器22に対して指令信号を出力することもできる。すなわちCMOSセンサ16の撮像動作の制御は第2の電気信号線14を用いて行うことに加えて、後述するように光ファイバ12を用いて行うことも可能である。撮像動作の制御は通常、第2の電気信号線14を用いて行われ、第2の電気信号線14に異常が生じたときに光ファイバ12を用いて行われる。これとは逆に、通常は光ファイバ12を用い、光ファイバ12に異常が生じたときに第2の電気信号線14を用いるようにしてもよい。
【0017】
光ファイバ12は上述のように照明光Aと制御信号光Bを同時に伝送する。照明光Aは可視光であるが、制御信号光Bは可視光よりも波長が短く、例えば赤外光である。照明光Aと制御信号光Bは共に被写体Sに照射され、反射してCMOSセンサ16によって受光される。CMOSセンサ16の受光面31には、次に述べるように照明光Aの反射光を検知する領域と、制御信号光Bの反射光を検知する領域とが設けられる。
【0018】
図2はCMOSセンサ16の受光面31を示す。受光面31の中央の矩形の領域は照明光Aの反射光を検知する部分、すなわち被写体像を撮像するための撮像面32である。撮像面32を囲繞する外周縁部に形成された領域は制御信号光Bの反射光を検知する部分、すなわち制御信号光検出部33である。制御信号光Bは照明光Aと同様に、被写体Sに均一に照射されるが、被写体によっては制御信号光Bを反射しにくいことがある。したがって制御信号光Bの反射光を確実に検出するため、制御信号光検出部33は撮像面32の上下および左右の縁部に形成される。
【0019】
制御信号光検出部33は赤外光のみを検出するため、その表面には、可視光をカットするためのフィルタ(図示せず)が設けられる。同様に撮像面32の表面には、被写体像の色をできるだけ正確に検知できるようにするため、赤外カットフィルタ(図示せず)が設けられる。
【0020】
制御信号光検出部33において検出された制御信号光BはCMOSセンサ16において電気信号に変換され、CMOSセンサ16の電子回路においてデコードされる。すなわち電子回路において、レジスタの所定のアドレスには電子シャッタ速度あるいは出力ゲインの値を示すパラメータが格納されており、制御信号光Bの例えばパルス幅あるいはパルス周期等にしたがって、アドレスが指定されるとともにパラメータが変更される。
【0021】
以上のように第1の実施形態によれば、CMOSセンサ16の撮像動作は第2の電気信号線14を介して伝送される電気信号に基づいて制御されるだけでなく、光ファイバ12を介して伝送される制御信号光Bに基づいて制御されることもできる。したがって第2の電気信号線14に不具合が生じた場合であっても、光ファイバ12を用いてCMOSセンサ16の撮像動作を制御することができ、常に被写体の画像データを適切に検出することが可能になる。
【0022】
図3は第2の実施形態の電子内視鏡の構成を示している。第1の実施形態との違いは第2の電気信号線14が省略されている点であり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。すなわち第2の実施形態では、CMOSセンサ16の撮像動作の制御を電気信号線を用いて行うことはできない。しかし、CMOSセンサ16の撮像動作の制御は光ファイバ12を介して伝送される制御信号光Bのみによって行われるのではなく、次に述べるようにCMOSセンサ16内に設けられた自己制御回路によっても可能である。
【0023】
図4を参照してCMOSセンサ16の制御を説明する。
ステップ101ではCMOSセンサ16が制御信号光を適切な状態で受光できるか否か、すなわち光ファイバ12による通信が可能であるか否かが判断される。これは、センサ制御/画像処理部23が制御信号光発信器22に対してテスト信号を出力することによって照射されたテスト信号光をCMOSセンサ16が受光することによって行われる。
【0024】
光ファイバ12による通信が可能であるとき、ステップ102へ進む。すなわちCMOSセンサ16は、プロセッサ20のセンサ制御/画像処理部23の制御に従って光ファイバ12から出力される制御信号光を受光する。ステップ103ではCMOSセンサ16の電子回路において、制御信号光に対応した電気的な制御信号が生成されるとともに、制御信号がデコードされて撮像条件(電子シャッタ速度、出力ゲイン等)を記憶しているレジスタのパラメータが変更される。これにより、CMOSセンサ16の撮像条件が変更され、CMOSセンサ16の撮像動作が制御される。
【0025】
ステップ103の実行の後、再びステップ101が実行される。すなわち、ステップ101、102、103の動作が繰り返し実行される。この間にステップ101において、光ファイバ12による通信が不可能であると判断されると、ステップ110へ進み、CMOSセンサ16の撮像動作はCMOSセンサ16内に設けられた自己制御回路によって制御されるように切り替えられる。
【0026】
ステップ110では像動作の制御モードがセンサ自己制御モードに切り替えられる。ステップ111では、CMOSセンサ16によって撮像データの明るさ検知され、撮像面全体の輝度の平均値が求められる。ステップ112では、撮像データの明るさに基づいて、電子シャッタ速度や出力ゲインの設定値を変更する必要があるか否かが判断される。撮像データの明るさが不適切であり、電子シャッタ速度または出力ゲインを変更することが必要であるときは、ステップ113へ進み、CMOSセンサ16の電子回路において、上述したようにレジスタのパラメータが変更され、電子シャッタ速度または出力ゲインが変更される。
【0027】
ステップ113の実行の後、あるいはステップ112において撮像データの明るさが適切であると判断されたとき、ステップ114において、ステップ101と同様に光ファイバ12による通信が可能であるか否かが判断される。光ファイバ12による通信が不可能であると判断されたとき、ステップ111へ戻り、上述した動作が繰り返される。これに対して、光ファイバ12による通信が可能であるときは、ステップ115においてセンサ自己制御モードが解除されるとともに、ステップ101へ戻り、光ファイバ12を利用する制御モードに復帰する。すなわち自己制御回路がCMOSセンサ16の撮像動作を制御している間に、CMOSセンサ16が制御信号光を適切な状態で受光していると判断されたとき、自己制御回路の駆動が停止され、撮像動作は制御信号光に基づいて制御されるように切り替えられる。
【0028】
以上のように第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、第2の電気信号線14(
図1)を有しないので、この分だけスコープ10の挿入管11を細く成形することができ、挿入管11の可撓性を向上させることができる。また光ファイバ12による通信が不可能になった場合であっても、CMOSセンサ16の自己制御回路によって撮像動作を制御することができるので、常に被写体の画像データを適切に検出することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 スコープ
12 光ファイバ
16 CMOSセンサ
21 光源
22 制御信号光発信器
33 制御信号光検出部