特許第5944762号(P5944762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5944762間欠型光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944762
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】間欠型光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   G02B6/44 391
   G02B6/44 371
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-149567(P2012-149567)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-10439(P2014-10439A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 傑朗
(72)【発明者】
【氏名】田邉 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴皇
【審査官】 佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−033010(JP,A)
【文献】 特開2012−108331(JP,A)
【文献】 特開2011−169937(JP,A)
【文献】 特開2002−196201(JP,A)
【文献】 特開平01−138516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02−6/036
6/10
6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上に並列配置された4本もしくはそれ以上の単心被覆光ファイバと、前記単心被覆光ファイバの長さ方向および幅方向にそれぞれ間隔をおいて配置された、隣接する2本の前記単心被覆光ファイバ同士のみを結合する結合部とを備えた間欠型光ファイバテープ心線の製造方法であって、
(A)前記単心被覆光ファイバをコーティングダイスに挿通させて、前記各単心被覆光ファイバの外周に紫外線硬化型樹脂を塗布するコーティング工程、
(B)紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を半硬化させる第1の照射工程、
(C)前記単心被覆光ファイバが同一平面上に並列配置されるように集線する工程、
(D)分断治具によって隣接する2本の単心被覆光ファイバ間に所定の分離部を形成する分離部形成工程、および
(E)分離部を形成した前記単心被覆光ファイバの前記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して完全硬化させる第2の照射工程
を(A)〜(E)の順に行うことを特徴とする間欠型光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項2】
第1の照射工程によって、前記紫外線硬化型樹脂のゲル分率が80〜85%になることを特徴とする請求項1記載の間欠型光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項3】
前記分断治具が、分断ニードルと、この分断ニードルを前記2本の単心被覆光ファイバに対し進退させる機構とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の間欠型光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項4】
第1の照射工程における紫外線の照射は、前記コーティングダイスを出た直後の前記単心被覆光ファイバに対し行われることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項5】
間欠型光ファイバテープ心線は、同一の前記2本の被覆光ファイバ単心線同士を結合する結合部の間隔(非結合部の長さ)が80mm以上120mm以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項6】
第2の照射工程によって、前記紫外線硬化型樹脂のゲル分率が少なくとも95%になることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項7】
同一平面上に並列配置された4本もしくはそれ以上の単心被覆光ファイバと、前記単心被覆光ファイバの長さ方向および幅方向にそれぞれ間隔をおいて配置された、隣接する2本の前記単心被覆光ファイバ同士のみを結合する結合部とを備えた間欠型光ファイバテープ心線の製造装置であって、
製造ラインに沿って、上流側より順に、
(A)前記単心被覆光ファイバを挿通させ、前記各単心被覆光ファイバの外周に紫外線硬化型樹脂を塗布するコーティングダイス部
(B)紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を半硬化させる第1の照射部、
(C)前記単心被覆光ファイバが同一平面上に並列配置されるように集線する集線部、
(D)隣接する2本の単心被覆光ファイバ間に所定の分離部を形成する分断治具を備えた分離部形成部、および
(E)分離部を形成した前記単心被覆光ファイバの前記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して完全硬化させる第2の照射部
備えることを特徴とする間欠型光ファイバテープ心線の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠型光ファイバテープ心線の製造方法、および間欠型光ファイバテープ心線の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、光ケーブルの細径・軽量化、高密度化、および施工性の向上を図るため、複数本の単心被覆光ファイバを同一平面上に並列させ、隣接する2本の単心被覆光ファイバ同士のみを結合する結合部を、長さ方向および幅方向にそれぞれ間隔をおいて配置した、間欠型または間欠接着型と称する光ファイバテープ心線が提案されている。このような間欠型光ファイバテープ心線においては、従来の一括被覆型の光ファイバテープ心線のような幅方向に曲げにくいという曲げ異方性が小さいため、筒状に、あるいは折り畳んでケーブル内に収納でき、ケーブルの細径・軽量化、高密度化が可能である。また、テープ心線から光ファイバを個別に後分岐しやすいうえ、光ファイバを接続する際は、所定の配列に光ファイバを並列させることができるため、一括接続が可能であるという利点を有する。
【0003】
この種の間欠型光ファイバテープ心線の製造方法としては、従来、紫外線硬化型樹脂による間欠接着技術を用いる方法が一般的である(例えば、特許文献1〜4参照。)。しかしながら、この方法は、寸法精度に乏しく、結合部あるいは非結合部の長さにバラツキが生じ、光ファイバの伝送特性に悪影響を及ぼすおそれがあった。そして、この問題は、製造速度が高速になるほど顕著であった。
【0004】
また、一括被覆層によって予め長さ方向に結合した光ファイバテープ心線において、隣接する2本の単心被覆光ファイバ間の被覆に切断工具等を用いて分離部を形成することにより、2本の単心被覆光ファイバ間に間欠的に非結合部を形成する技術が知られている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、2本の単心被覆光ファイバ間に切断工具等を用いて分離部を形成することは技術的に極めて難しく、単心被覆光ファイバの被覆や光ファイバを損傷させるおそれがあった。また、切断部分にバリが発生するおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−2743号公報
【特許文献2】特開2010−33010号公報
【特許文献3】特開2010−54595号公報
【特許文献4】特開2010−237292号公報
【特許文献5】特開2005−62427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、良好な伝送特性および外観を有する間欠型光ファイバテープ心線を、高速、かつ安定的に製造することができる方法、および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る光ファイバテープ心線の製造方法は、同一平面上に並列配置された4本もしくはそれ以上の単心被覆光ファイバと、前記単心被覆光ファイバの長さ方向および幅方向にそれぞれ間隔をおいて配置された、隣接する2本の前記単心被覆光ファイバ同士のみを結合する結合部とを備えた間欠型光ファイバテープ心線の製造方法であって、(A)前記単心被覆光ファイバをコーティングダイスに挿通させて、前記各単心被覆光ファイバの外周に紫外線硬化型樹脂を塗布するコーティング工程、(B)紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を半硬化させる第1の照射工程、(C)前記単心被覆光ファイバが同一平面上に並列配置されるように集線する工程、(D)分断治具によって隣接する2本の単心被覆光ファイバ間に所定の分離部を形成する分離部形成工程、および(E)分離部を形成した前記単心被覆光ファイバの前記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して完全硬化させる第2の照射工程を(A)〜(E)の順に行うことを特徴とするものである
【0008】
また、本発明の一態様に係る間欠型光ファイバテープ心線の製造装置は、同一平面上に並列配置された4本もしくはそれ以上の単心被覆光ファイバと、前記単心被覆光ファイバの長さ方向および幅方向にそれぞれ間隔をおいて配置された、隣接する2本の前記単心被覆光ファイバ同士のみを結合する結合部とを備えた間欠型光ファイバテープ心線の製造装置であって、製造ラインに沿って、上流側より順に、(A)前記単心被覆光ファイバを挿通させ、前記各単心被覆光ファイバの外周に紫外線硬化型樹脂を塗布するコーティングダイス部、(B)紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を半硬化させる第1の照射部、(C)前記単心被覆光ファイバが同一平面上に並列配置されるように集線する集線部、(D)隣接する2本の単心被覆光ファイバ間に所定の分離部を形成する分断治具を備えた分離部形成部、および(E)分離部を形成した前記単心被覆光ファイバの前記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して完全硬化させる第2の照射部備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な伝送特性および外観を有する間欠型光ファイバテープ心線を、高速、かつ安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る間欠型光ファイバテープ心線の製造装置の構成を概略的に示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る間欠型光ファイバテープ心線の製造装置の構成を概略的に示す斜視図である。
図3図1のIII−III線に沿う切断断面図である。
図4】本発明の一実施形態に使用される部材の要部を拡大して示す断面図である。
図5図1のV−V線に沿う切断断面図である。
図6】本発明の一実施形態により製造される間欠型光ファイバテープ心線の構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明は図面に基づいて行うが、図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。
【0012】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る間欠型光ファイバテープ心線の製造装置の構成を概略的に示す平面図、図2は、同装置の構成を概略的に示す斜視図、図3は、図1のIII−III線に沿う切断断面図、図4は、図1および図2に示す間欠型光ファイバテープ心線の製造装置を構成する部材の要部を拡大して示す断面図、図5は、図1のV−V線に沿う切断断面図である。
【0013】
本実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置1は、図1および図2に示すように、製造ラインに沿って、上流側より順に、4本の単心被覆光ファイバ2の各外周に紫外線硬化型樹脂を塗布するコーティングダイス部10、紫外線硬化型樹脂が塗布された単心被覆光ファイバ2に紫外線を照射する紫外線照射部(第1の照射部)20、紫外線が照射された単心被覆光ファイバ2をテープ状に、すなわち、単心被覆光ファイバ2が同一平面上に並列配置された状態となるように集線し整列させる集線部30、テープ状に集線整列された単心被覆光ファイバ2に分離部(非結合部となる部分)4を形成する分断治具41を備えた分離機構40、紫外線硬化型樹脂に再び紫外線を照射する紫外線照射部(第2の照射部)50とを備えている。また、図示を省略したが、コーティングダイス部10の上流側には、4本の単心被覆光ファイバ2を連続的に送り出す光ファイバ送り出し部を、また、第2の照射部50の下流側には、4本の単心被覆光ファイバ2とそれらの外周に被覆された紫外線硬化型樹脂からなる間欠型光ファイバテープ心線3を巻き取る巻取ローラをさらに備えている。その他、走行する単心被覆光ファイバ2、テープ状に集線整列された単心被覆光ファイバ2、あるいは間欠型光ファイバテープ心線3をガイドするガイドローラが適宜配置されている。
【0014】
コーティングダイス部10は、図2に示すように、内部に未硬化の紫外線硬化型樹脂を貯留する樹脂貯留室(図示せず)を有するコーティングダイス11から構成される。コーティングダイス11の入口面11aと出口面11bにはそれぞれ樹脂貯留室に連通する4つの光ファイバ挿通孔(図2には、出口面11bに開口する光ファイバ挿通孔12のみが示されている。)が開口している。光ファイバ送り出し部から送り出された4本の単心被覆光ファイバ2は、入口面11aに開口する4つの光ファイバ挿通孔から、樹脂貯留室を通り、出口面11bに開口する4つの光ファイバ挿通孔12からそれぞれ送り出される。入口面11aの4つの光ファイバ挿通孔、および出口面11bの4つの光ファイバ挿通孔12は、いずれも所定の間隔をおいて配置されており、また、各光ファイバ挿通孔12の直径は、単心被覆光ファイバ2の直径より僅かに大きく設定されている。したがって、4本の各単心被覆光ファイバ2は、その外周に薄い未硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層を備えた状態で出口面11bの各光ファイバ挿通孔12から送り出される。
【0015】
第1の照射部20は、図2に示すように、コーティングダイス部10から送り出された、外周に薄い未硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層が設けられた単心被覆光ファイバ2の上下より、その幅全体に亘って紫外線照射線を照射するように構成されている。第1の照射部20は、未硬化の紫外線硬化型樹脂が半硬化するようなエネルギー量の紫外線を照射する。
【0016】
ここで、「半硬化」とは、紫外線硬化型樹脂が完全硬化していない状態、つまり紫外線硬化型樹脂が光エネルギーにより部分的に架橋された状態にあることをいう。具体的には、紫外線硬化型樹脂の硬化度、すなわち架橋度の定量的パラメータとして知られるゲル分率が80〜85%の範囲となる状態が好ましく、83〜85%であるとより好ましい。ゲル分率が80%未満では、紫外線硬化型樹脂の硬化度が低すぎるために、被覆層の機械的強度が著しく低くなり、分離機構40による精度の高い分離部4の形成が困難になる。一方、ゲル分率が85%を超えると完全硬化に近くなって、被覆層の機械的強度が高くなり、分断治具41による分断作業が困難になり、単心被覆光ファイバ2の被覆や光ファイバを損傷させるおそれがある。なお、上記紫外線硬化型樹脂のゲル分率は、予め質量を計測したサンプル(質量W)をステンレス金網(質量W)で包み、90℃、24時間、メチルエチルケトンを用いて抽出後、80℃、8時間、真空乾燥して質量を計測し(質量W)、次式により算出される値である。
ゲル分率(%)={(W−W)/W}×100
【0017】
紫外線硬化型樹脂のゲル分率を80〜85%とするには、紫外線硬化型樹脂の種類や、照射条件、被覆厚、酸素濃度などにもよるが、通常、完全架橋(ゲル分率約98%)に必要な積算照射量の0.2〜2.0%の照射量を照射するようにすればよい。
【0018】
紫外線硬化型樹脂の被覆層の厚みを均一にする観点から、第1の照射部20はコーティングダイス部10に近接して、つまり、コーティングダイス11の出口面11bにできるだけ近い位置に配置することが好ましい。
【0019】
集線部30は、本実施形態では、集線治具として、対向配置された1組の集線プーリ31を備えており、この1対の集線プーリ31間を通過させることで、第1の照射部20を通り、外周に薄い半硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層が設けられた4本の単心被覆光ファイバ2は、テープ状、すなわち、単心被覆光ファイバ2が同一平面上に並列配置された状態に集線されるとともに、隣接する2本の単心被覆光ファイバ2間が半硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層を介して一体に接合される。
【0020】
図3は、集線部30による集線後の4本の単心被覆光ファイバ2を示している。図3に示すように、外周に薄い半硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層5が設けられた4本の単心被覆光ファイバ2は、同一平面上に並列配置されるともに、それぞれの外周に設けられた薄い半硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層5により一体に接合されている(以下、この4本の単心被覆光ファイバ2が集線され一体化されたものを、一体化光ファイバテープ心線6ともいう。)。
【0021】
なお、単心被覆光ファイバ2には、例えば、光ファイバ上に紫外線硬化型樹脂などにより1層乃至複数層の保護被覆を設けたものや、このような保護被覆上にさらに着色層を設けたものが使用される。本実施形態では、光ファイバ2a上に、1次被覆2b、2次被覆2cおよび着色層2dが順に被覆された外径0.25mmの単心被覆光ファイバが使用されている。
【0022】
集線部30は、上記のように外周に薄い半硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層5が設けられた4本の単心被覆光ファイバ2をテープ状に集線することができれば、集線プーリ31に限らず、従来より知られる種々の集線治具を用いることができる。本実施形態においては、単心被覆光ファイバ2が効率よく整列配置できる観点から、集線部30による集線角βが1〜15°の範囲になるようにすることが好ましい。
【0023】
分離機構40は、図2に示すように、分断治具41を備えている。本実施形態では、分断治具41として、図4に示すような分断ニードル42と、この分断ニードル42を一体化光ファイバテープ心線6に対し進退させる、つまり上下動させる機構(図示せず)を備えたものを用いている。なお、図2では、1本の分断ニードルのみを備えた分断治具41を示しているが、並列する4本の単心被覆光ファイバ2のそれぞれの間に所定の分離部4を形成し得るように、3本の分断ニードル42が設けられており、それぞれ個々に上下動するように構成されている。
【0024】
分断ニードル42は、図4に示すように、先端部42aの断面形状(先端を分断方向に平行な平面で切断したときの断面形状)が、20°以下の先端角αを有する三角形状であるものが好ましい。このような先端部42a形状を有する分断ニードル42を用いることにより、半硬化の紫外線硬化型樹脂層5に対し、例えば、線速200m/min以上の高速で一体化光ファイバテープ心線6を走行させた場合であっても、半硬化の紫外線硬化型樹脂層5に対し、精度の高い切り込みを入れることができる。分断ニードル42の特に好ましい例としては、図4において、先端部長Aが80〜120μmで、先端部幅Bが30〜40μmのものが挙げられる。
【0025】
図5は、分離機構40通過後の一体化光ファイバテープ心線6の一例を示している。図5に示すように、一体化光ファイバテープ心線6には、中央2本の単心被覆光ファイバ2の間を分離する分離部4が形成されている。
【0026】
分離機構40は、分離部4の制御性向上の観点から、集線部30に近接して配置することが好ましい。具体的には、集線部30からの離間距離(本実施形態では、集線プーリ31の中心から、分離機構40の分断ニードル42の切り込み開始位置までの距離)が5〜100mm程度となる位置が好ましい。
【0027】
第2の照射部50は、図2に示すように、分離機構40により所定の分離部4が形成された一体化光ファイバテープ心線6に対し、その上下より、その幅全体に亘って紫外線照射線を照射するように構成されている。第2の照射部50は、半硬化の紫外線硬化型樹脂層5が完全硬化するようなエネルギー量の紫外線を照射する。
【0028】
ここで、「完全硬化」とは、紫外線硬化型樹脂が完全もしくは完全に近い状態まで硬化している状態、つまり紫外線硬化型樹脂が光エネルギーにより完全もしくは完全に近い状態まで架橋された状態にあることをいう。具体的には、第1の照射部20に関して説明したのと同様の方法で測定されるゲル分率が少なくとも95%となる状態が好ましく、96〜98%であるとより好ましい。ゲル分率が95%未満では、紫外線硬化型樹脂の硬化度が十分でないために、被覆層の機械的強度が低下し、十分な伝送特性を備えた間欠型光ファイバテープ心線が得られないおそれがある。また、均一な硬化が困難であり、不均一な応力が残留することにより、光ファイバの伝送特性に悪影響を及ぼすおそれもある。
【0029】
次に、上記間欠型光ファイバテープ心線の製造装置1の動作を説明する。
光ファイバ送り出し部(図示せず)から送り出された4本の単心被覆光ファイバ2は、コーティングダイス部10のコーティングダイス11に挿通され、それぞれの外周に未硬化の紫外線硬化型樹脂が塗布される。(コーティング工程)
【0030】
コーティングダイス11から送り出された4本の単心被覆光ファイバ2は、集線部30によって集線され、同一平面上に並列配置されるが、その間に、コーティングダイス11と集線部30に配置された第1の照射部20によって、紫外線が照射され、各単心被覆光ファイバ外周の紫外線硬化型樹脂が半硬化される。これにより、集線部30からは、4本の単心被覆光ファイバ2が、同一平面上に並列配置されるとともに、それぞれの外周に設けられた薄い半硬化の紫外線硬化型樹脂からなる層5により一体に接合された一体化光ファイバテープ心線6となって送り出される。(第1の照射工程)
【0031】
集線部30から送り出された一体化光ファイバテープ心線6は、分離機構40によって、隣接する2本の単心被覆光ファイバ間に所定の分離部4が形成される。(分離部形成工程)
【0032】
所定の分離部4が形成された一体化光ファイバテープ心線6は、その後、第2の照射部50によって、再び紫外線が照射され、各単心被覆光ファイバ外周の紫外線硬化型樹脂が完全硬化される。(第2の照射工程)
【0033】
この結果、図6に示すような、同一平面上に並列配置された4本の単心被覆光ファイバ2と、これらの単心被覆光ファイバ2の長さ方向および幅方向にそれぞれ間隔をおいて配置された、隣接する2本の単心被覆光ファイバ2同士のみを結合する結合部7とを備えた間欠型光ファイバテープ心線3が製造される。図6中、8は、非結合部、すなわち、紫外線硬化型樹脂が完全硬化した後の分離部を示している。
【0034】
本実施形態においては、半硬化状態にある紫外線硬化型樹脂に対し、分断治具によって隣接する2本の単心被覆光ファイバ間に所定の分離部を形成し、その後、紫外線硬化型樹脂を完全硬化させるので、製造ラインの線速を、例えば、200m/min以上の高速としても、分断治具によって、寸法精度が高く、またバリなどもない分離部を形成することができ、紫外線硬化型樹脂の完全硬化によって、結合部が精度よく形成された、伝送特性が良好で、かつ外観にも優れる間欠型光ファイバテープ心線が製造される。
【0035】
本実施形態の間欠型光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置は、同一の2本の被覆光ファイバ単心線同士を結合する結合部の間隔(非結合部の長さ;図6中、符号Pで示す)が50mm以上150mm以下である間欠型光ファイバテープ心線の製造に有用であり、同一の2本の被覆光ファイバ単心線同士を結合する結合部の間隔が80mm以上120mm以下で、各結合部の長さ(図6中、符号Qで示す)が20mm以上60mm以下である間欠型光ファイバテープ心線の製造に特に有用である。すなわち、後者の間欠型光ファイバテープ心線は、これを用いてケーブル化した際、ケーブル曲げ時に光ファイバに加わる歪みを非常に小さく、ケーブルに十分な長期信頼性を具備させることができ、また、一括接続が容易であり、ケーブルの接続作業性を向上させることができる。そして、本発明の光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置によれば、このような優れた特徴を有する間欠型光ファイバテープ心線の製造方法を、高速で、かつ安定的に製造することができる。
【0036】
ここで、本実施形態による間欠型光ファイバテープ心線の製造例を具体的に記載する。
(例1)
上記間欠型光ファイバテープ心線の製造装置1を用いて、隣接する2本の被覆光ファイバ単心線同士のみを結合する結合部7の長さQ、およびその間隔Pが、それぞれ40mm、および100mmの図6に示す間欠型光ファイバテープ心線3を製造した。単心被覆光ファイバには、外径125μmの石英ガラス系SM光ファイバ上に、23℃におけるヤング率が約5MPaのウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂からなる一次被覆、および23℃におけるヤング率が約700MPaのウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂からなる二次被覆を施した外径250μmの単心被覆光ファイバを用いた。また、それらの外周に被覆する紫外線硬化型樹脂には、JIS K 6833に準拠して測定される25℃におけるコーンプレート型粘度計による粘度が14000mPa・sのアクリル系紫外線硬化型樹脂を用いた。その他の製造条件は以下の通りである。
線速:200m/min
コーティングダイスの光ファイバ挿通孔外径:356μm
第1の照射部の積算照射量:7.4mJ/cm
第2の照射部の積算照射量:490mJ/cm
【0037】
(例2〜20)
結合部7の長さQ、結合部の間隔P、線速、および第1の照射部の積算照射量の少なくとも1つの条件を、表1に示すように変えた以外は、例1と同様にして間欠型光ファイバテープ心線を製造した。
【0038】
上記各例で得られた間欠型光ファイバテープ心線を10枚束ね、粗巻きで結束してテープ心線ユニットを製造し、BOTDRにて歪特性を測定した。また、同時に伝送損失も測定した。
【0039】
上記歪特性と伝送損失の測定結果を表1に示す。表1には、単心被覆光ファイバ外周に設けられたアクリル系紫外線硬化型樹脂からなる被覆層のゲル分率を併せ示した。ゲル分率は、第1の照射部通過直後および第2照射部通過後の被覆層について測定した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、本実施形態による間欠型光ファイバテープ心線は、歪特性0.005%以下、伝送損失0.200dB/km以下と極めて良好な特性を有する。
【0042】
上記実施形態では、4本の単心被覆光ファイバを用いて間欠型光ファイバテープ心線を製造する場合を示したが、上記実施形態は、単に例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは何ら意図するものではない。例えば、単心被覆光ファイバは、5本もしくはそれ以上であってよく、隣接する2本の単心被覆光ファイバ同士のみを結合する結合部の位置や、長さ、間隔なども特に限定されるものではない。かかる新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…間欠型光ファイバテープ心線の製造装置、2…単心被覆光ファイバ、3…間欠型光ファイバテープ心線、4…分離部、5…半硬化紫外線硬化型樹脂層、7…結合部、8…非結合部、10…コーティングダイス部、11…コーティングダイス、12…光ファイバ挿通孔、20…第1の照射部、30…集線部、41…分断治具、42…分断ニードル、42a…先端部、50…第2の照射部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6