特許第5944763号(P5944763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944763
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/625 20060101AFI20160621BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01R13/625
   H01R13/64
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-150289(P2012-150289)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-13683(P2014-13683A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 英彦
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−163056(JP,A)
【文献】 特開2005−267930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/625
H01R 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が収容されたコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転できる回転部材と、前記回転部材に設けられ、撓み変形自在でロック爪を有する係止アームと、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合開始位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第1位置規制壁と、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合完了位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第2位置規制壁とを備え、
前記コネクタハウジングを相手コネクタハウジングに対してコネクタ嵌合開始位置にセットし、前記回転部材をコネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、
前記回転部材をコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第2位置規制壁及び前記第1位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合開始位置に移動するコネクタであって、
コネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置への回転で前記ロック爪が突き当たる前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁の係止壁面を垂直面に、コネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置への回転で前記ロック爪が突き当たる前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁の係止壁面を外側に向かって傾斜する傾斜面にそれぞれ設け
前記係止アームは、前記コネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置への回転では、前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁を潜る方向に変位するよう形成され、且つ、コネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置への回転では、前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁の係止壁面に沿って外側に変位するよう形成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のコネクタ間のロック・ロック解除を低操作力で行うバヨネット構造を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一対のコネクタ間のロック・ロック解除を低操作力で行うバヨネット構造を備えたコネクタが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のコネクタの一従来例として、図14図16に示すオスコネクタ100がある。このオスコネクタ100は、オスコネクタハウジング110と、オスコネクタハウジング110に装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転できるバヨネットリング(回転部材)120とを備えている。
【0004】
オスコネクタハウジング110の内部には、図示しないオス端子を収容する複数の端子収容室111が形成されている。オスコネクタハウジング110の後端部には、それぞれ側方へ突出する第1位置規制壁112及び第2位置規制壁113が設けられている。第1位置規制壁112の両側の係止壁面112a,112bは、それぞれ垂直に形成されている。
【0005】
バヨネットリング120の内壁の先端近傍には複数のカム突起121が設けられている。各カム突起121は、相手側のメスコネクタ200のメスコネクタハウジング201に設けられるカム溝202に係合する。バヨネットリング120の後端部には、撓み変形自在でロック爪122を有する係止アーム123と、過剰回転規制突部124とが設けられている。ロック爪122は、バヨネットリング120を嵌合解除方向へ回転させたときにオスコネクタハウジング110の第2位置規制壁113及び第1位置規制壁112と順次突き当たる係止面122aを備え、この係止面122aは、外側に膨らむ方向の曲面から構成されている。
【0006】
バヨネットリング120がコネクタ嵌合完了位置に位置するとき、オスコネクタハウジング110の第2位置規制壁113は係止アーム123のロック爪122に係止する。次いで、バヨネットリング120を嵌合解除方向へ回転開始すると、第2位置規制壁113がロック爪122の係止面122aに突き当たることにより、係止アーム123が撓み変形するので、第2位置規制壁113が乗り越えてロック爪122の上部を通過することが許容される。
【0007】
上記構成の嵌合動作を説明する。オスコネクタハウジング110をメスコネクタハウジング201に対してコネクタ嵌合開始位置にセットし、カム突起121とカム溝202の入口位置との位置合わせを行う。そして、バヨネットリング120をコネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置に回転すると、係止アーム123の上下方向の撓み変形によってロック爪122が第1位置規制壁112を乗り越え、次に、第2位置規制壁113を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動する。その結果、図15及び図16に示すように、係止アーム123のロック爪122が第2位置規制壁113によって回転を阻止され、ここで位置保持される。また、上記移動によってオスコネクタハウジング110とメスコネクタハウジング201間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、オスコネクタハウジング110がメスコネクタハウジング201のカム溝201に沿って移動するので、オスコネクタ100及びメスコネクタ200が嵌合する結果、オス端子及びメス端子間の電気的導通が行なわれる。
【0008】
また、バヨネットリング120をコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に回転すると、係止アーム123の上下方向の撓み変形によってロック爪122が第2位置規制壁113を乗り越え、次に、第1位置規制壁112を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動し、この移動によってオスコネクタハウジング110とメスコネクタハウジング201間がコネクタ嵌合開始位置に移動する。このとき、係止アーム123のロック爪122が第1位置規制壁112によって回転を阻止され、ここで位置保持される。
【0009】
上記したバヨネット構造を備えたコネクタにあって、コネクタ嵌合動作・嵌合解除動作時に大きなロック音が発生すれば、暗い場所や騒音下での作業性が向上するため、大きなロック音の発生する構造が望まれている。
【0010】
このような要請を満足させるため、他の従来例として図17(a)〜(c)に示すコネクタ100Aがある(特許文献2参照)。この他の従来例のコネクタ100Aでは、第2位置規制壁113と係止アーム123に突部(図示せず)がそれぞれ設けられている。この各突部には、金属キャップ115,125が被せられている。ロック爪122が第2位置規制壁113の係止位置に移動する際、金属キャップ115,125同士の衝突によって大きなロック音が発生する。尚、図17(a)〜(c)において、前記従来例と同一構成箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−163056号公報
【特許文献2】特開2011−222274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記他の従来例では、オスコネクタハウジング110側とバヨネットリング120側とに金属キャップ115,125を付設する必要があるため、部品点数が増加するという問題がある。部品点数の増加は、組み付け工程の増加、コストの増加等を招来する。
【0013】
一方、強い振動を受ける状況下で使用する等の理由によって、コネクタ嵌合完了位置でのバヨネットリング120の保持力をアップさせたいという要望もある。ここで、コネクタ嵌合完了位置における上記保持力をアップさせるため、ロック爪122の係止面122aの傾斜角度を大きくすることが考えられるが、係止面122aの傾斜角度をあまりに大きくし、例えば、ほぼ垂直とすると、嵌合解除動作過程で係止アーム123を座屈させる圧縮力が作用し、座屈等によって破損する可能性が高くなるという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、部品点数を増加させることなく、回転部材の動作時に大きなロック音を発生させることができると共に、コネクタ嵌合完了位置での回転部材の保持力を向上させることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、端子が収容されたコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転できる回転部材と、前記回転部材に設けられ、撓み変形自在でロック爪を有する係止アームと、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合開始位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第1位置規制壁と、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合完了位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第2位置規制壁とを備え、前記コネクタハウジングを相手コネクタハウジングに対してコネクタ嵌合開始位置にセットし、前記回転部材をコネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、前記回転部材をコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第2位置規制壁及び前記第1位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合開始位置に移動するコネクタであって、コネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置への回転で前記ロック爪が突き当たる前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁の係止壁面を垂直面に、コネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置への回転で前記ロック爪が突き当たる前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁の係止壁面を外側に向かって傾斜する傾斜面にそれぞれ設け、前記係止アームは、前記コネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置への回転では、前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁を潜る方向に変位するよう形成され、且つ、コネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置への回転では、前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁の係止壁面に沿って外側に変位するよう形成されていることを特徴とするコネクタである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コネクタ嵌合完了位置ではロック爪が第2位置規制壁に係止され、嵌合解除方向に変位するためには係止アームが第2位置規制壁の傾斜する規制壁面に沿って外側に撓み変形しなければならず、この外側への撓み変形は上下方向への撓み変形に較べて大きな撓み変形力が必要であるため、コネクタ嵌合完了位置での回転部材の保持力が向上する。
【0017】
コネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置への回転では係止アームが第2位置規制壁や第1位置規制壁の傾斜する規制壁面に沿って外側に撓み変形してロック爪が第2位置規制壁や第1位置規制壁を乗り越え、乗り越えた後に係止アームが撓み復帰変形によってコネクタハウジングに衝突するが、外側への撓み変形は上記したように上下方向への撓み変形に較べて大きな撓み変形であるため、大きな衝突力で係止アームがコネクタハウジングに衝突する。以上より、部品点数を増加させることなく、回転部材の動作時に大きなロック音が発生すると共にコネクタ嵌合完了位置での回転部材の保持力を向上させることができる。
【0018】
また、係止アームのロック爪が第2位置規制壁や第1位置規制壁の外側を迂回するようにして移動するため、目視による認識が容易にでき、この点でも作業性の向上になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示し、コネクタ装置の分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、(a)はオスコネクタハウジングの正面図、(b)は(a)のA部の拡大図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材を前端側から見た斜視図である。
図4】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材を後端側から斜視図である。
図5】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジングにフロントホルダを取り付ける状態を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態を示し、最終形態のハーネス製品として完成したオスコネクタの斜視図である。
図7】本発明の一実施形態を示し、回転部材がコネクタ嵌合開始位置にある状態を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態を示し、回転部材がコネクタ嵌合完了位置にある状態を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態を示し、(a)は回転部材のロック爪にオスコネクタハウジングの第1位置規制壁が突き当たっている状態を示す図、(b)は回転部材の係止アームが上下方向に撓み変形し、ロック爪がオスコネクタハウジングの第1位置規制壁を乗り越える途中状態を示す図、(c)は回転部材のロック爪がオスコネクタハウジングの第1位置規制壁を乗り越えた状態を示す図である。
図10】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材の背面図である。
図11】本発明の一実施形態を示し、バヨネットリングをコネクタ嵌合完了位置から回転し、係止アームが第2位置規制壁の係止壁面の傾斜に沿って撓み変形している状態を示す背面図である。
図12】本発明の一実施形態を示し、バヨネットリングをコネクタ嵌合完了位置から回転し、係止アームが第2位置規制壁の係止壁面の傾斜に沿って最大撓み変形している状態を示す背面図である。
図13】本発明の一実施形態を示し、バヨネットリングをコネクタ嵌合完了位置から回転し、係止アームが第2位置規制壁を乗り越えた状態を示す背面図である。
図14】一従来例を示し、オスコネクタ及びメスコネクタの分解斜視図である。
図15】一従来例を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材の背面図である。
図16】一従来例を示し、(a)はオスコネクタハウジング及び回転部材の正面図、(b)は(a)のB部の拡大図である。
図17】他の従来例を示し、(a)は係止アームが第2位置規制壁で撓み変形している状態でのオスコネクタハウジングとバヨネットリングの斜視図、(b)は係止アームが第2位置規制壁で撓み変形している状態でのオスコネクタハウジングとバヨネットリングの側面図、(c)は(b)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1図13は本発明の一実施形態を示す。図1図6に示すように、コネクタ装置1は、コネクタであるオスコネクタ2と、相手側のメスコネクタ3とから構成される。オスコネクタ2は、オスコネクタハウジング4と、オスコネクタハウジング4に装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転自在に支持された回転部材であるバヨネットリング5とを備えている。オスコネクタハウジング4内にはシール材6が収容されている。このシール材6は、オスコネクタ2とメスコネクタ3を嵌合させたとき、メスコネクタ3の先端部が当接してコネクタ2、3間をシールする。
【0022】
オスコネクタハウジング4の前端部には、フロントホルダ41が装着されている。オスコネクタハウジング4の内部には、電線42に圧着されたオス端子43を収容する複数の端子収容室44が形成されている。オスコネクタハウジング4の後端部には、それぞれ側方に突出し、後述する係止アーム53のロック爪52を係止する第1位置規制壁45及び第2位置規制壁46が設けられている。オスコネクタハウジング4の後端部には、それぞれ側方に突出する過剰回転規制壁47が2箇所に設けられている。過剰回転規制壁47は、後述する過剰回転規制突部54の回転範囲を規制する。これにより、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の範囲を超えたバヨネットリング5の回転を規制する。
【0023】
第1位置規制壁45は、図7に示すように、コネクタ嵌合開始位置に位置する係止アーム53のロック爪52に係止する。これにより、バヨネットリング5をコネクタ嵌合開始位置に位置決めし、後述するカム突起51とカム溝32の入口位置の位置合わせを行なう。第2位置規制壁46は、図8及び図10に示すように、コネクタ嵌合完了位置に位置する係止アーム53のロック爪52に係止する。これにより、バヨネットリング5をコネクタ嵌合完了位置に位置決めする。
【0024】
バヨネットリング5をコネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置に回転する際に、ロック爪52が突き当たる(係止する)第1位置規制壁45及び第2位置規制壁46の各係止壁面45a,46aは、垂直面に形成されている。垂直面とは、ロック爪52に対し垂直に突き当たる方向の面であり、オスコネクタハウジング4のほぼ半径方向に沿う方向である。
【0025】
バヨネットリング5のコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に回転する際に、ロック爪52が突き当たる(係止する)第1位置規制壁45及び第2位置規制壁46の各係止壁面45b,46bは、外側に向かって傾斜する傾斜面に形成されている。傾斜面は、ロック爪52に対し斜めに突き当たる方向の面であり、オスコネクタハウジング4の半径方向に対し傾斜する方向である。
【0026】
バヨネットリング5の外壁の先端近傍には、周方向に間隔を置いて回転支持用突部50が内周に向かって突設されている。この各回転支持用突部50がオスコネクタハウジング4の円周溝40に入り込んでいる。バヨネットリング5は、回転支持用突部50が円周溝40内を摺動することによって、オスコネクタハウジング4に回転自在に支持されている。
【0027】
バヨネットリング5の内壁の先端には、複数のカム突起51が設けられている。各カム突起51は、相手側のメスコネクタ3のメスコネクタハウジング31に設けられるカム溝32に係合する。バヨネットリング5の後端部には、撓み変形自在でロック爪52を有する係止アーム53と、過剰回転規制突部54とが設けられている。
【0028】
ロック爪52は、図9(a)〜(c)に詳しく示すように、オスコネクタハウジング4の第1及び第2位置規制壁45,46に突き当たる2箇所の係止面55、56を有する。バヨネットリング5が嵌合開始位置から嵌合完了位置への回転で第1及び第2位置規制壁45,46に突き当たる一方の係止面55は、垂直方向に近い傾斜面に形成されている。バヨネットリング5が嵌合完了位置から嵌合開始位置への回転で第1及び第2位置規制壁45,46に突き当たる他方の係止面56は、一方の係止面55より少しだけ傾斜角の小さい傾斜面に形成されている。
【0029】
相手側のメスコネクタ3のメスコネクタハウジング31にも、図示しないメス端子が収容される複数の図示しない端子収容室が形成されている。
【0030】
次に、コネクタ1の嵌合作業を説明する。先ず、オスコネクタハウジング4をメスコネクタハウジング31に対してコネクタ嵌合開始位置にセットし、カム突起51とカム溝32の入口位置との位置合わせを行なう。
【0031】
次に、バヨネットリング5をコネクタ嵌合開始位置から嵌合方向(図7の矢印で示す時計方向)へ回転する。すると、図9(a)〜(c)に示すように、係止アーム53が上下方向に撓み変形し、ロック爪52が第1位置規制壁45の下面に移動して第1位置規制壁45を乗り越え、次に、同じようにして第2位置規制壁46を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動する。その結果、図8に示すように、係止アーム53のロック爪52が第2位置規制壁46によって回転を阻止され、位置保持される。嵌合動作時には、係止アーム53は第1位置規制壁45や第2位置規制壁46からロック爪52を介して引っ張り力を受けるため、座屈せずに、上下方向に撓み変形する。
【0032】
また、上記移動によってオスコネクタハウジング4とメスコネクタハウジング31間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、オスコネクタハウジング4がメスコネクタハウジング31のカム溝32に沿って移動し、オスコネクタ2とメスコネクタ3が嵌合する。その結果、オス端子43及びメス端子間が電気的に導通する。
【0033】
コネクタ嵌合完了位置では、ロック爪52が第2位置規制壁46に係止され、嵌合解除方向に変位するためには係止アーム53が第2位置規制壁46の傾斜する係止壁面46bに沿って外側に撓み変形しなければならず、この外側への撓み変形は上下方向への撓み変形に較べて大きな撓み変形力が必要であるため、コネクタ嵌合完了位置でのバヨネットリング5の保持力が大きい。つまり、外側への撓み変形は、上下方向の撓み変形に較べて、撓み変形量が大きく、且つ、曲げ剛性も大きいために、大きな撓み変形力が必要である。
【0034】
次に、コネクタ1の嵌合解除動作を説明する。バヨネットリング5をコネクタ嵌合完了位置から嵌合解除方向(図8の矢印で示す反時計方向)へ回転する。すると、図11に示すように、係止アーム53が第2位置規制壁46の傾斜する係止壁面46bに沿って外側に撓み変形し、図12に示すように、ロック爪52が第2位置規制壁46の外周を迂回するようにして移動する。ロック爪52が第2位置規制壁46を完全に乗り越えると、図13に示すように、係止アーム53が撓み復帰変形し、係止アーム53がオスコネクタハウジング4に衝突する。次に、同じようにして第1位置規制壁45を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動する。その結果、図7に示すように、係止アーム53のロック爪52が第1位置規制壁45によって回転を阻止され、位置保持される。嵌合解除時には、係止アーム53は第2位置規制壁46や第1位置規制壁45からロック爪52を介して圧縮力を受けるが、傾斜する係止壁面46b,45bに沿って外側への撓み変形を誘導されるため、座屈せずに、外側に撓み変形する。
【0035】
また、上記移動によってオスコネクタハウジング4とメスコネクタハウジング31間がコネクタ嵌合開始位置に移動し、オスコネクタハウジング4がメスコネクタハウジング31のカム溝32に沿って移動するので、オスコネクタ2とメスコネクタ3の嵌合が解除する。その結果、オス端子43及びメス端子間が電気的に非導通となる。
【0036】
嵌合解除動作にあって、図13に示すように、ロック爪52が第2位置規制壁46を完全に乗り越え、撓み復帰変形によって係止アーム53がオスコネクタハウジング4に衝突する。係止アーム53の外側への撓み変形は上下方向への撓み変形に較べて大きな撓み変形力が必要であるため、大きな衝突力で係止アーム53がオスコネクタハウジング4に衝突することになる。以上より、部品点数を増加させることなく、バヨネットリング5の動作時に大きなロック音が発生すると共にコネクタ嵌合完了位置でのバヨネットリング5の保持力を向上させることができる。
【0037】
また、係止アーム53のロック爪52が第2位置規制壁46や第1位置規制壁45の外側を迂回するようにして移動するため、目視による認識が容易にでき、この点でも作業性の向上になる。
【0038】
なお、上記実施形態では、回転部材であるバヨネットリング5をオスコネクタハウジング4に装着する場合について例示したが、本発明はこれに限定されず、バヨネットリングをメスコネクタハウジングに装着することもできる。
【符号の説明】
【0039】
2 オスコネクタ(コネクタ)
4 オスコネクタハウジング(コネクタハウジング)
5 バヨネットリング(回転部材)
31 メスコネクタハウジング(相手コネクタハウジング)
43 オス端子(端子)
45 第1位置規制壁
45a,45b 係止壁面
46 第2位置規制壁
46a,46b 係止壁面
52 ロック爪
53 係止アーム
図1
図2
図3
図4
図5
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図17