特許第5944779号(P5944779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944779
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】配管スリーブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20160621BHJP
   F24F 1/34 20110101ALI20160621BHJP
   E04G 15/06 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   F16L5/00 Q
   F24F1/34
   E04G15/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-168939(P2012-168939)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-25577(P2014-25577A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】302044708
【氏名又は名称】宏和工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507039121
【氏名又は名称】関東器材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 貴巨
(72)【発明者】
【氏名】林 芳宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一也
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−189168(JP,A)
【文献】 特開平11−230426(JP,A)
【文献】 特開2004−218795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
E04G 15/06
F24F 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内から室外へ配管を導くための配管スリーブであって、
前記室内と前記室外とを隔てる壁を貫通するように配設される筒状のスリーブ本体と、このスリーブ本体が前記壁に配設された状態で当該スリーブ本体の前記室内側の端部に装着されるフランジ部材とを有し、
前記スリーブ本体の前記端部には、当該スリーブ本体が前記壁に配設された状態における上部および下部にそれぞれ、係合孔または係合爪の一方が形成されるとともに、
前記フランジ部材の前記スリーブ本体内に挿入される挿入筒部には、当該フランジ部材が前記スリーブ本体の前記端部に装着された状態における上部および下部にそれぞれ、前記係合孔または前記係合爪の他方が形成され、
前記2つの係合孔のうち少なくとも一方の係合孔は、前記スリーブ本体の長手方向に延びる長孔であり、この長孔に沿って当該長孔に対応する係合爪が移動することにより、前記フランジ部材が前記スリーブ本体に対して角度調整自在に連結されていることを特徴とする配管スリーブ。
【請求項2】
前記スリーブ本体の前記端部には、前記2つの係合孔が形成されるとともに、前記フランジ部材の前記挿入筒部には、前記2つの係合爪が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管スリーブ。
【請求項3】
前記フランジ部材は、前記2つの係合爪のうち、一方の係合爪を中心として揺動して他方の係合爪が当該他方の係合爪に対応する係合孔である前記長孔に沿って移動することにより、前記スリーブ本体に対する角度が調整されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の配管スリーブ。
【請求項4】
前記2つの係合孔は、いずれも前記スリーブ本体の長手方向に延びる長孔であり、
前記フランジ部材は、前記2つの係合爪のうち、一方の係合爪が当該一方の係合爪に対応する係合孔である前記一方の長孔に沿って移動するとともに、前記他方の係合爪が当該他方の係合爪に対応する係合孔である前記他方の長孔に沿って移動することにより、前記スリーブ本体に対する角度が調整されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の配管スリーブ。
【請求項5】
前記スリーブ本体には、当該スリーブ本体の周方向に沿う複数の切断補助用溝が、当該スリーブ本体の長手方向に所定の間隔で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の配管スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和装置(エアコン)の配管(冷媒配管、ドレンホース、電線など)を室内から室外へ導くための配管スリーブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の配管スリーブにおいては、雨水の室内への侵入を防止すること等を目的として、壁に施工した状態で所定の水勾配(下り勾配、水切り勾配)に対応可能な構造を有するものが提案されていた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262732号公報
【特許文献2】特開2005−90684号公報
【特許文献3】特開2004−308772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの配管スリーブは、所定の水勾配に対応可能であるものの、部品点数が多く、構造が複雑であるため、必然的に製造コストが高騰するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、所定の水勾配に対応可能であり、かつ製造コストが低廉な配管スリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、室内から室外へ配管を導くための配管スリーブであって、前記室内と前記室外とを隔てる壁を貫通するように配設される筒状のスリーブ本体と、このスリーブ本体が前記壁に配設された状態で当該スリーブ本体の前記室内側の端部に装着されるフランジ部材とを有し、前記スリーブ本体の前記端部には、当該スリーブ本体が前記壁に配設された状態における上部および下部にそれぞれ、係合孔または係合爪の一方が形成されるとともに、前記フランジ部材の前記スリーブ本体内に挿入される挿入筒部には、当該フランジ部材が前記スリーブ本体の前記端部に装着された状態における上部および下部にそれぞれ、前記係合孔または前記係合爪の他方が形成され、前記2つの係合孔のうち少なくとも一方の係合孔は、前記スリーブ本体の長手方向に延びる長孔であり、この長孔に沿って当該長孔に対応する係合爪が移動することにより、前記フランジ部材が前記スリーブ本体に対して角度調整自在に連結されている配管スリーブとしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記スリーブ本体の前記端部には、前記2つの係合孔が形成されるとともに、前記フランジ部材の前記挿入筒部には、前記2つの係合爪が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記フランジ部材は、前記2つの係合爪のうち、一方の係合爪を中心として揺動して他方の係合爪が当該他方の係合爪に対応する係合孔である前記長孔に沿って移動することにより、前記スリーブ本体に対する角度が調整されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記2つの係合孔は、いずれも前記スリーブ本体の長手方向に延びる長孔であり、
【0010】
前記フランジ部材は、前記2つの係合爪のうち、一方の係合爪が当該一方の係合爪に対応する係合孔である前記一方の長孔に沿って移動するとともに、前記他方の係合爪が当該他方の係合爪に対応する係合孔である前記他方の長孔に沿って移動することにより、前記スリーブ本体に対する角度が調整されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成に加え、前記スリーブ本体には、当該スリーブ本体の周方向に沿う複数の切断補助用溝が、当該スリーブ本体の長手方向に所定の間隔で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4に記載の発明によれば、所定の水勾配に応じて、スリーブ本体に対してフランジ部材を角度調整した状態で、スリーブ本体を壁に配設するだけで、配管スリーブを所定の水勾配に対応させて壁に施工することが可能となる。しかも、部品点数が少なく、構造が単純であることから、配管スリーブの製造コストを低廉に抑えることが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、配管スリーブを壁に施工した後、このスリーブ本体を切断補助用溝に沿って切断することにより、スリーブ本体の端部の切り落とし作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る配管スリーブを示す図であって、(a)はその分解斜視図、(b)はその組立斜視図である。
図2図1に示す配管スリーブのスリーブ本体を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその左側面図、(c)はその平面図、(d)はその底面図、(e)は(c)のA−A線断面図である。
図3図1に示す配管スリーブのフランジ部材を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図、(d)はその右側面図、(e)はその背面図である。
図4図1に示す配管スリーブの使用状態を示す縦断面図である。
図5図1に示す配管スリーブにおいて、スリーブ本体に対してフランジ部材を7°傾けた状態を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその縦断面図である。
図6図1に示す配管スリーブにおいて、スリーブ本体に対してフランジ部材を0°傾けた状態を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその縦断面図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る配管スリーブを示す図であって、(a)はその分解斜視図、(b)はその組立斜視図である。
図8図7に示す配管スリーブのスリーブ本体を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその左側面図、(c)はその平面図、(d)はその底面図、(e)は(c)のB−B線断面図である。
図9図7に示す配管スリーブのフランジ部材を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図、(d)はその右側面図、(e)はその背面図である。
図10図7に示す配管スリーブにおいて、スリーブ本体に対してフランジ部材を7°傾けた状態を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその縦断面図である。
図11図7に示す配管スリーブにおいて、スリーブ本体に対してフランジ部材を0°傾けた状態を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその縦断面図である。
図12図7に示す配管スリーブにおいて、スリーブ本体に対してフランジ部材を3.5°傾けた状態を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0016】
図1乃至図6には、本発明の実施の形態1を示す。
【0017】
実施の形態1に係る配管スリーブ1は、図4に示すように、空気調和装置の配管(図示せず)を室内5から室外6へ導くために使用されるものであり、AES樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、ACS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂から成形されている。この配管スリーブ1は、図1および図4に示すように、室内5と室外6とを隔てる壁7を貫通するように配設される略円筒状のスリーブ本体2と、このスリーブ本体2の一方(スリーブ本体2が壁7に配設された状態で室内5側)の端部2aに揺動自在に装着されるフランジ部材3とから構成されている。
【0018】
このスリーブ本体2は、図2および図4に示すように、壁7の厚さD3より少し長い長さD4を有しているとともに、所定の外径D1(例えば、D1=64mm)および内径D2(例えば、D2=61mm)を有している。スリーブ本体2の一方の端部2aには、図2(c)〜(e)に示すように、スリーブ本体2が壁7に配設された状態における上部および下部にそれぞれ、係合孔8、9がスリーブ本体2の内外を連通するように形成されている。ここで、係合孔8は、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に延びる長孔となっている。また、スリーブ本体2の外周面には、スリーブ本体2のほぼ中央部から他方(スリーブ本体2が壁7に配設された状態で室外6側)の端部2bまで、スリーブ本体2の周方向に沿う複数本(この実施の形態1では、10本)の切断補助用溝10が、スリーブ本体2の長手方向に所定の間隔Pで形成されている。
【0019】
一方、フランジ部材3は、図3に示すように、スリーブ本体2の内径D2にほぼ等しい曲率半径R1のほぼ球面状に形成された挿入筒部11を有しており、挿入筒部11の一方(スリーブ本体2と反対側)の端部には、略円環状の鍔部12が一体に連設されている。また、挿入筒部11には、スリーブ本体2に装着された状態における上部および下部にそれぞれ、係合爪13、14が形成されている。さらに、挿入筒部11には、係合爪13の近傍に凸片15が、挿入筒部11の球面に連続してスリーブ本体2側に突出するように形成されている。
【0020】
そして、スリーブ本体2とフランジ部材3とは、図5および図6に示すように、係合爪13が係合孔8に係合するとともに、係合爪14が係合孔9に係合することにより、互いに連結されており、フランジ部材3が係合爪14を中心として揺動して係合爪13が係合孔8に沿って移動することにより、フランジ部材3がスリーブ本体2に対して角度調整自在になっている。
【0021】
配管スリーブ1は以上のような構成を有するので、図4に示すように、壁7に貫通孔7aが所定の水勾配(例えば、7°、0°など)で形成されている場合に、この水勾配に対応させて配管スリーブ1を壁7に施工する際には、次の手順による。
【0022】
まず、配管スリーブ準備工程で、この水勾配に応じて、図5および図6に示すように、スリーブ本体2に対してフランジ部材3を適宜揺動させて角度調整することにより、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直角な平面に対して、水勾配に等しい角度θだけ傾斜した状態とする。
【0023】
例えば、水勾配が7°である場合には、図5に示すように、フランジ部材3を係合爪14を中心として揺動させて、係合爪13を係合孔8に沿って最前方位置P1まで移動させる。すると、配管スリーブ1は、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直角な平面に対して7°傾斜した状態となる。
【0024】
このとき、挿入筒部11には、上述したとおり、係合爪13の近傍に凸片15がスリーブ本体2側に突出するように設けられているため、係合爪13が最前方位置P1に位置決めされた状態でも、この凸片15で係合孔8を内側から塞ぐことができる。したがって、配管スリーブ1の施工後に水分や塵埃がスリーブ本体2の外部から係合孔8を通って内部に侵入する事態の発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0025】
また、水勾配が0°である場合には、図6に示すように、フランジ部材3を係合爪14を中心として揺動させて、係合爪13を係合孔8に沿って最後方位置P2まで移動させる。すると、配管スリーブ1は、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向に直角な平面に対して0°傾斜した状態、つまり、この平面に平行な状態となる。
【0026】
なお、このようにしてフランジ部材3を係合爪14を中心として揺動させると、フランジ部材3の挿入筒部11の外周面がスリーブ本体2の内周面に対して摺動することになる。しかし、フランジ部材3の挿入筒部11は、上述したとおり、スリーブ本体2の内径D2にほぼ等しい曲率半径R1のほぼ球面状に形成されているので、フランジ部材3の揺動を円滑に行うことができる。
【0027】
次に、スリーブ本体配設工程に移行し、室内5において、スリーブ本体2を壁7に配設する。それには、スリーブ本体2が前方(室外6側)に、フランジ部材3が後方(室内5側)に位置する状態で、スリーブ本体2を壁7の貫通孔7aに挿通する。このとき、係合爪13が上方に、係合爪14が下方に位置するようにする。すると、配管スリーブ1は、図4に示すように、フランジ部材3の鍔部12が全周にわたって壁7の内表面7bに隙間なく接するとともに、スリーブ本体2の端部2bが壁7の外表面7cから室外6側へ少し突出した状態となる。
【0028】
最後に、スリーブ本体切断工程に移行し、室外6において、壁7の外表面7cから突出したスリーブ本体2の端部2bを壁7の厚さD3に応じて所定の長さだけ切り落とす。それには、カッターナイフ、のこぎり等の切断手段(図示せず)を用いて、スリーブ本体2を切断補助用溝10に沿って切断する。
【0029】
このとき、スリーブ本体2には、上述したとおり、複数の切断補助用溝10がスリーブ本体2の長手方向に所定の間隔で形成されているので、スリーブ本体2を切断補助用溝10に沿って切断することにより、スリーブ本体2の端部2bの切り落とし作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0030】
ここで、配管スリーブ1の施工が終了する。
【0031】
このように、配管スリーブ1の施工に際しては、所定の水勾配(例えば、7°、0°など)に応じて、スリーブ本体2に対してフランジ部材3を角度調整した状態で、スリーブ本体2を壁7に配設した後、スリーブ本体2の端部2bを切り落とすだけで、配管スリーブ1を所定の水勾配に対応させて壁7に施工することが可能となる。
【0032】
しかも、この配管スリーブ1は、上述したとおり、スリーブ本体2およびフランジ部材3の2つの部品のみから構成されており、部品点数が少ない。また、この配管スリーブ1は、スリーブ本体2に対してフランジ部材3が角度調整自在に連結されているに過ぎず、構造が単純である。これらの結果、配管スリーブ1は、その製造コストを低廉に抑えることが可能となる。
【0033】
また、この配管スリーブ1は、上述したとおり、スリーブ本体2に対してフランジ部材3が揺動自在に支持されており、このフランジ部材3の揺動時の回転半径がスリーブ本体2の内径D2にほぼ等しくなっている。したがって、フランジ部材3の挿入筒部11を比較的小さい曲率で形成することができる。その上、配管スリーブ1が壁7に施工された状態では、フランジ部材3の鍔部12によって壁7の貫通孔7aが塞がれている限り、スリーブ本体2の端部2aとフランジ部材3の挿入筒部11との間に多少の隙間が発生しても、実用上の問題は生じない。これらの結果、汎用の樹脂成形方法を用いて配管スリーブ1を製造することができ、この点からも配管スリーブ1の製造コストを削減することが可能となる。
[発明の実施の形態2]
【0034】
図7乃至図12には、本発明の実施の形態2を示す。
【0035】
実施の形態2に係る配管スリーブ1は、図7に示すように、室内5と室外6とを隔てる壁7を貫通するように配設される略円筒状のスリーブ本体2と、このスリーブ本体2の一方(スリーブ本体2が壁7に配設された状態で室内5側)の端部2aに揺動自在に装着されるフランジ部材3とから構成されている。
【0036】
このスリーブ本体2は、図8に示すように、一方(スリーブ本体2が壁7に配設された状態で室内5側)の端部2aが、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直角な平面に対してやや傾斜して楕円形に開口しているとともに、他方(スリーブ本体2が壁7に配設された状態で室外6側)の端部2bが、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直交して円形に開口している。ここで、スリーブ本体2は、図8(e)に示すように、スリーブ本体2が壁7に配設された状態における上部の長さが最長になるとともに、同状態における下部の長さが最短になっている。なお、2つの係合孔8、9はいずれも、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に延びる長孔となっている。
【0037】
一方、フランジ部材3は、図9に示すように、スリーブ本体2の内径D2の半分にほぼ等しい曲率半径R2の球面状に形成された挿入筒部11を有しており、挿入筒部11の一方(スリーブ本体2と反対側)の端部には、略円環状の鍔部12が一体に連設されている。
【0038】
そして、スリーブ本体2とフランジ部材3とは、図10図12に示すように、係合爪13が係合孔8に係合するとともに、係合爪14が係合孔9に係合することにより、互いに連結されており、フランジ部材3が揺動して、係合爪13が係合孔8に沿って移動するとともに、係合爪14が係合孔9に沿って移動することにより、フランジ部材3がスリーブ本体2に対して角度調整自在になっている。
【0039】
その他の構成については、上述した実施の形態1と同様であるので、同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
そして、配管スリーブ1を所定の水勾配(例えば、7°、0°、3.5°など)に対応させて壁7に施工する際には、次の手順による。
【0041】
まず、配管スリーブ準備工程で、この水勾配に応じて、図10図12に示すように、スリーブ本体2に対してフランジ部材3を適宜揺動させて角度調整することにより、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直角な平面に対して、水勾配に等しい角度θだけ傾斜した状態とする。
【0042】
例えば、水勾配が7°である場合には、図10に示すように、フランジ部材3を揺動させて、係合爪13を係合孔8に沿って最前方位置P1まで移動させるとともに、係合爪14を係合孔9に沿って最後方位置P2まで移動させる。すると、配管スリーブ1は、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向(矢印L方向)に直角な平面に対して7°傾斜した状態となる。このとき、係合爪13、14がそれぞれ最前方位置P1、最後方位置P2に位置決めされても、係合孔8、9はいずれも挿入筒部11によって内側から塞がれるので、配管スリーブ1の施工後に水分や塵埃がスリーブ本体2の外部から係合孔8、9を通って内部に侵入する事態の発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0043】
また、水勾配が0°である場合には、図11に示すように、フランジ部材3を揺動させて、係合爪13を係合孔8に沿って最後方位置P2まで移動させるとともに、係合爪14を係合孔9に沿って最前方位置P1まで移動させる。すると、配管スリーブ1は、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向に直角な平面に対して0°傾斜した状態、つまり、この平面に平行な状態となる。このとき、係合爪13、14がそれぞれ最後方位置P2、最前方位置P1に位置決めされても、係合孔8、9はいずれも挿入筒部11によって内側から塞がれるので、配管スリーブ1の施工後に水分や塵埃がスリーブ本体2の外部から係合孔8、9を通って内部に侵入する事態の発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0044】
さらに、水勾配が3.5°である場合には、図12に示すように、フランジ部材3を揺動させて、係合爪13を係合孔8に沿って最後方位置P2まで移動させるとともに、係合爪14を係合孔9に沿って最後方位置P2まで移動させる。すると、配管スリーブ1は、フランジ部材3の鍔部12が、スリーブ本体2の長手方向に直角な平面に対して3.5°傾斜した状態となる。このとき、係合爪13、14が最後方位置P2に位置決めされても、係合孔8、9はいずれも挿入筒部11によって内側から塞がれるので、配管スリーブ1の施工後に水分や塵埃がスリーブ本体2の外部から係合孔8、9を通って内部に侵入する事態の発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0045】
なお、このようにしてフランジ部材3を揺動させると、フランジ部材3の挿入筒部11の外周面がスリーブ本体2の内周面に対して摺動することになる。しかし、フランジ部材3の挿入筒部11は、上述したとおり、スリーブ本体2の内径D2の半分にほぼ等しい曲率半径R2の球面状に形成されているので、水勾配が7°、0°、3.5°のいずれの場合であっても、フランジ部材3の揺動を円滑に行うことができる。
【0046】
次に、スリーブ本体配設工程に移行し、室内5において、上述した実施の形態1と同様にして、スリーブ本体2を壁7に配設する。
【0047】
最後に、スリーブ本体切断工程に移行し、室外6において、上述した実施の形態1と同様にして、壁7の外表面7cから突出したスリーブ本体2の端部2bを壁7の厚さD3に応じて所定の長さだけ切り落とす。
【0048】
ここで、配管スリーブ1の施工が終了する。
【0049】
このように、配管スリーブ1の施工に際しては、所定の水勾配(例えば、7°、0°、3.5°など)に応じて、スリーブ本体2に対してフランジ部材3を角度調整した状態で、スリーブ本体2を壁7に配設した後、スリーブ本体2の端部2bを切り落とすだけで、配管スリーブ1を所定の水勾配に対応させて壁7に施工することが可能となる。
【0050】
しかも、この配管スリーブ1は、上述したとおり、スリーブ本体2およびフランジ部材3の2つの部品のみから構成されており、部品点数が少ない。また、この配管スリーブ1は、スリーブ本体2に対してフランジ部材3が角度調整自在に連結されているに過ぎず、構造が単純である。これらの結果、配管スリーブ1は、その製造コストを低廉に抑えることが可能となる。
[発明のその他の実施の形態]
【0051】
なお、上述した実施の形態1、2では、配管スリーブ1を壁7に施工する際に、スリーブ本体切断工程において、壁7の外表面7cから突出したスリーブ本体2の端部2bを壁7の厚さD3に応じて所定の長さだけ切り落とす場合について説明した。しかし、スリーブ本体2が、予め壁7の厚さD3に対応した長さD4を有していれば、このスリーブ本体切断工程を省くことができる。
【0052】
また、上述した実施の形態1、2では、合成樹脂からなる配管スリーブ1について説明したが、配管スリーブ1の材料は合成樹脂に限るわけではない。配管スリーブ1を構成するスリーブ本体2およびフランジ部材3の両方または一方が合成樹脂以外の材料からなる配管スリーブ1に本発明を同様に適用することもできる。
【0053】
また、上述した実施の形態1、2では、係合孔8、9がスリーブ本体2の内外を連通するように形成されている配管スリーブ1について説明したが、これらの係合孔8、9は、必ずしもスリーブ本体2の内外を連通するように形成する必要はない。
【0054】
また、上述した実施の形態1、2では、スリーブ本体2に係合孔8、9を設けるとともに、フランジ部材3に係合爪13、14を設けた配管スリーブ1について説明した。しかし、係合孔8、9と係合爪13、14とを逆転させて、スリーブ本体2に係合爪13、14を設けるとともに、フランジ部材3に係合孔8、9を設けることも可能である。
【0055】
また、上述した実施の形態1、2では、スリーブ本体2の外周面に10本の切断補助用溝10が形成された配管スリーブ1について説明したが、無論、この切断補助用溝10の本数は10本に限るわけではない。
【0056】
さらに、上述した実施の形態1、2では、空気調和装置の配管を室内5から室外6へ導くための配管スリーブ1について説明したが、空気調和装置以外の機器(例えば、給水器、給湯器など)の配管を導くための配管スリーブ1に本発明を同様に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、室内から室外へ配管を導くための配管スリーブに広く適用することができる。この配管としては、冷媒配管、ドレンホース、加湿ホース、給気ホース、排気ホース、給水配管、給湯配管、ガス管、電線など各種の配管が挙げられる。
【符号の説明】
【0058】
1……配管スリーブ
2……スリーブ本体
2a……一方の端部(室内側の端部)
2b……他方の端部(室外側の端部)
3……フランジ部材
5……室内
6……室外
7……壁
7a……貫通孔
8、9……係合孔
10……切断補助用溝
11……挿入筒部
12……鍔部
13、14……係合爪
図1
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