特許第5944800号(P5944800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944800
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】転写装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20160621BHJP
   B29C 43/00 20060101ALI20160621BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B29C59/02 Z
   B29C43/00
   H01L21/30 502D
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-199214(P2012-199214)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-54735(P2014-54735A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】小久保 光典
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂
(72)【発明者】
【氏名】馬場 丘人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亨
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−019451(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/02
B29C 43/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成形体に転写する転写装置において、
前記シート状のモールドの一端部を保持する第1の保持部と、
前記シート状のモールドの他端部を保持する第2の保持部と、
前記各保持部で保持しているモールドに引張り力を付与する引張り力付与部と、
前記引張り力付与部で引張り力が付与されているモールドに皺が生成されることを防止するために、前記第1の保持部に対する前記第2の保持部の姿勢を調整する姿勢調整部と、
前記引張り力付与部で引張り力が付与されているモールドの引張り力を測定する複数の引張り力測定部と、
を有し、前記姿勢調整部は、前記各引張り力測定部で測定している引張り力が所定の値になるように、前記第2の保持部を前記第1の保持部に対して回動位置決めする構成であることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において
記姿勢調整部は、前記各引張り力測定部で測定している引張り力が所定の値になるように、前記第2の保持部を前記第1の保持部に対して直線的に移動位置決めする構成であることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の転写装置において、
前記第1の保持部は、一対のクランプ爪により前記モールドを挟み込んで保持するように構成されており、
前記第2の保持部は、一対のクランプ爪により前記モールドを挟み込んで保持するように構成されており、
前記第2の保持部の一対のクランプ爪は、前記姿勢調整部を構成するベース体に対して前記引張り力の付与方向で移動自在になっており、
前記引張り力測定部は、前記クランプ爪と前記ベース体との間に設けられているロードセルとロードセル押圧体と弾性体とを備えて構成されており、前記ロードセル押圧体が前記弾性体を介して前記ロードセルに押圧力を加えるように構成されていることを特徴とする転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置に係り、特に、微細な転写パターンを転写するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子線描画法などで石英基板等に超微細な転写パターンを形成して型(モールド)を作製し、被成形体に前記型を所定の圧力で押圧して、当該型に形成された転写パターンを転写するナノインプリント技術が研究開発されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、図13で示すような転写装置301が知られている。転写装置301は、除振台302とベース(基板保持用チャック;被成形体保持体)303と転写部305とモールド支持部307とを備えて構成されている。
【0004】
ベース303は、除振台302に一体的に設けられており、板状の被成形体309をたとえば真空吸着によって保持するようになっている。
【0005】
転写部305は、図13の紙面に直交する方向に延びている中心軸C13a,C13bを回転中心にしサーボモータ(図示せず)によって回転する一対のローラ311A,311Bと、この一対のローラ311A,311Bをサーボモータ313により上下方向で移動位置決めするローラ駆動部315と、紫外線発生装置317とを備えて構成されている。
【0006】
また、転写部305(一対のローラ311A,311Bや紫外線発生装置317)は、サーボモータを含む駆動装置(図示せず)によって、除振台302に対して水平方向(図13の左右方向)で移動位置決め自在になっている。
【0007】
モールド支持部307で支持されるモールド323は、薄い板状に形成されており、厚さ方向の一方の面(図13では、モールド323の下側の面)に微細な転写パターン(図13では図示せず)が形成されている。
【0008】
モールド支持部307は、第1のチャック部(第1の保持部)319と第2のチャック部(第2の保持部)321とを備えて構成されている。
【0009】
第1の保持部(第1の保持体)319は、除振台302の上面近傍でベース303の一端(図13では右端)から側方(図13では右方)に離れている。そして、モールド323の一端(図13では右端)を把持して保持するようになっている。
【0010】
第2の保持部(第1の保持体)321は、除振台302の上側でベース303の他端(図13では左端)から側方(図13では左方)に離れている。第2のチャック部321は、モールド保持体325と回動支持体327と支柱329と支柱支持体331とを備えて構成されている。
【0011】
モールド保持体325は、モールド323の他端部を把持して保持するようになっている。回動支持体327は、モールド保持体325を支持している。回動支持体327に支持されているモールド保持体325は、図13の紙面に直交する方向に延びている軸C13cを中心にして、回動支持体327に対して回動するようになっている。
【0012】
支柱329は、回動支持体327を支持している。支柱329に支持されている回動支持体327は、サーボモータ(図示せず)によって、支柱329に対し上下方向で移動位置決めされるようになっている。
【0013】
支柱329は支柱支持体331に一体的に設けられている。支柱支持体331は、サーボモータ(図示せず)によって、除振台302に対し水平方向(図13では左右方向)で移動位置決めされるようになっている。
【0014】
次に、転写装置301を用いて、モールド323の微細な転写パターンを被成形体309に転写する場合について説明する。
【0015】
まず、初期状態では、モールド支持部307でモールド323が支持されており、ベース303に被成形体309が設置されており、各ローラ311A,311Bが、ベース303の右端から右側に離れているものとする。
【0016】
また、上記初期状態では、モールド323の左右方向の中間部がローラ311Aの下部に巻き掛けられており、上下方向におけるローラ311Aの下端とベース303の上面との間の距離は、モールド323の厚さと被成形体309の厚さの和程度になっている。
【0017】
また、上記初期状態では、ローラ311Aと第1のチャック部319との間でモールド323が水平方向に延びており(ローラ311Aよりも右側に位置しているモールド323が水平方向に延びており)、ローラ311Aと第2のチャック部321との間でモールド323が斜め上方に延びている(ローラ311Aよりも左側に位置しているモールド323が斜め上方に延びている)。
【0018】
さらに、上記初期状態では、モールド323が、所定の張力を持って緩みの無い状態になっており、図13の紙面に直交する方向で所定の幅になっており、モールド323とベース303に設置されている被成形体309とは非接触の状態になっている。
【0019】
上記初期状態から、転写部305(各ローラ311A,311Bや紫外線発生装置317)を左側に移動して、ローラ311A(ローラ311Bはバックアップローラ)とベース303とで協働して被成形体309とモールド323とを挟み込んで押圧し、紫外線発生装置317から被成形体309に紫外線を照射して、被成形体309(被成形体309の紫外線硬化樹脂333)にモールド323に形成されている微細な転写パターン(図13では図示せず)を転写する。
【0020】
転写が終了したときには、転写部305(各ローラ311A,311Bや紫外線発生装置317)が、ベース303の左端から左側に離れるようになっている。
【0021】
転写部305を図13の左右方向で移動するとき、モールド323の形態が変化することにあわせて(モールド323の張力を一定にしモールド323に弛みが発生しないようにする等のために)、回動支持体327を支柱329に対して上下方向で移動位置決めし、支柱支持体331を除振台302に対して左右方向で移動位置決めしている。
【0022】
なお、上記従来の技術に関連する特許文献として、たとえば特許文献1を掲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2010−280065号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Precision Engineering Journal of the International Societies for Precision Engineering and Nanotechnology 25(2001) 192-199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ところで、従来の転写装置301では、モールド323がよれていたり、図9に示すように、モールド323が曲がっている状態(矩形状のモールド323の一方の辺323Aに対して他方の辺323Bが非平行な状態)で、第1の保持部319と第2の保持部321とに取り付けられていると、転写(インプリント)するときに、モールドが横にずれていく等して、転写の精度が悪化するという問題がある。
【0026】
なお、モールドが大きくなるほどモールドの取り付け精度が悪化しやすくなり、上記問題が顕著になる。
【0027】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成形体に転写する転写装置において、モールドの取り付けが若干曲がってなされていても、転写の精度が悪化することを防止することができる転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
請求項1に記載の発明は、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成形体に転写する転写装置において、前記シート状のモールドの一端部を保持する第1の保持部と、前記シート状のモールドの他端部を保持する第2の保持部と、前記各保持部で保持しているモールドに引張り力を付与する引張り力付与部と、前記引張り力付与部で引張り力が付与されているモールドに皺が生成されることを防止するために、前記第1の保持部に対する前記第2の保持部の姿勢を調整する姿勢調整部と、前記引張り力付与部で引張り力が付与されているモールドの引張り力を測定する複数の引張り力測定部とを有し、前記姿勢調整部は、前記各引張り力測定部で測定している引張り力が所定の値になるように、前記第2の保持部を前記第1の保持部に対して回動位置決めする構成である転写装置である。
【0030】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の転写装置において、前記姿勢調整部は、前記各引張り力測定部で測定している引張り力が所定の値になるように、前記第2の保持部を前記第1の保持部に対し直線的に移動位置決めする構成である転写装置である。
【0031】
請求項に記載の発明は、請求項または請求項に記載の転写装置において、前記第1の保持部は、一対のクランプ爪により前記モールドを挟み込んで保持するように構成されており、前記第2の保持部は、一対のクランプ爪により前記モールドを挟み込んで保持するように構成されており、前記第2の保持部の一対のクランプ爪は、前記姿勢調整部を構成するベース体に対して前記引張り力の付与方向で移動自在になっており、前記引張り力測定部は、前記クランプ爪と前記ベース体との間に設けられているロードセルとロードセル押圧体と弾性体とを備えて構成されており、前記ロードセル押圧体が前記弾性体を介して前記ロードセルに押圧力を加えるように構成されている転写装置である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成形体に転写する転写装置において、モールドの取り付けが若干曲がってなされていても、転写の精度が悪化することを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係る転写装置の概略構成を示す図である。
図2図1におけるII矢視図であって、第2の保持部等の構成を示す図である。
図3図2におけるIII矢視図である。
図4図2におけるIV矢視図である。
図5図2におけるV部の拡大図である。
図6図5におけるVI矢視図である。
図7図5におけるVII矢視図である。
図8】第1の保持部と第2の保持部等でモールドを保持した状態を模式的に示す図であり、(a)は図2等に対応する図であり、(b)は(a)におけるVIII矢視図であって図4対応する図である。
図9図8(a)に対応する図であって、モールドが曲がっている状態を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る転写装置の動作を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る転写装置の動作を示す図である。
図12】転写について説明する図である。
図13】従来の転写装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態に係る転写装置1は、たとえば矩形なシート状(薄い板状)のモールドMの厚さ方向の一方の面に形成されている微細な転写パターンM1を被成形体Wに転写する装置であり(図12参照)、第1の保持部3と第2の保持部5と引張り力付与部(以下、“引張り力付与部”を“引っ張り力付与部”と記載することもある。)7と姿勢調整部9とを備えて構成されている(図1等参照)。
【0036】
転写装置1を用いて微細な転写パターンW1が形成された被成形体W(図12(b)参照)は、たとえば、導光板、光学フィルタ等の光学素子として使用される。
【0037】
ここで、説明の便宜のために水平な一方向をX軸方向とし、水平な他の一方向であってX軸方向に対して直交する方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに対して直交する上下方向をZ軸方向とする。
【0038】
また、モールドMの一部(図1の第1のローラ13の左側の部位)における、お互いが直交する方向を、U軸方向、V軸方向、W軸方向とする(図1参照)。W軸は、Y軸と平行な軸であり、U軸は、W軸に直交しZ軸に対して所定の角度だけ傾斜している。V軸は、W軸とU軸とに直交しX軸に対して所定の角度だけ傾斜している。U軸のZ軸に対する傾斜角度と、V軸のX軸に対する傾斜角度とは、お互いが等しくなっており、第1のローラ13の位置によって変化するようになっている。
【0039】
第1の保持部3は、シート状のモールドMの長手方向(X軸方向)の一端部をモールドMの幅(Y軸方向の寸法)の全幅にわたって保持するように構成されている。
【0040】
第2の保持部5は、シート状のモールドMの長手方向(V軸方向)の他端部をモールドMの幅(W軸方向の寸法)の全幅にわたって保持するように構成されている。
【0041】
引張り力付与部7は、各保持部3,5で保持しているモールドMに、モールドMの長手方向(X軸方向;V軸方向)で各保持部3,5を介して引張り力(以下、“引張り力”を“引っ張り力”と記載することもある。)を付与するように構成されている。
【0042】
姿勢調整部9は、各保持部3,5で保持され引張り力付与部7で引張り力が付与されているモールドMに皺(撓み、張りムラ)が生成されることを防止するために、第1の保持部3に対する第2の保持部5の姿勢(たとえば、所定の方向に延びた軸まわりの回動角度)を調整するように構成されている。
【0043】
また、転写装置1には、被成形体保持体(被成形体設置体)11と第1のローラ13と第2のローラ15とが設けられている。被成形体保持体11は、被成形体Wを保持するものである。
【0044】
第1のローラ13には、各保持部3,5で保持され引張り力付与部7で引張り力が付与され姿勢調整部9で姿勢が調整されているモールドMが巻き掛けられるようになっている。また、第1のローラ13は、巻き掛けられたモールドMと被成形体保持体11に保持されている被成形体Wとを、転写をするために被成形体保持体11と協働して挟み込み、Y軸方向に延びた中心軸C2を回転中心にして回転しモールドMの長手方向(X軸方向)で被成形体保持体11に対して相対的に移動するようになっている。
【0045】
図1に示す第1のローラ13の右側では、モールドMは水平方向に展開している。すなわち、モールドMの厚さ方向がZ軸方向になっており、モールドMの長手方向がX軸方向になっており、モールドMの幅方向がY軸方向になっている。
【0046】
図1に示す第1のローラ13の左側では、モールドMは斜めに展開している。すなわち、モールドMは、第1のローラ13から左上方に向かって展開しており、この展開しているモールドMの厚さ方向がU軸方向になっており、上記展開しているモールドMの長手方向がV軸方向になっており、上記展開しているモールドMの幅方向がW軸方向になっている。
【0047】
また、上述したように、U軸、V軸のZ軸、X軸に対する傾斜角度は、第1のローラ13のX軸方向での移動量に応じて変化するようになっている。
【0048】
第2のローラ15は、第1のローラ13のバックアップローラとして働くようになっており、Y軸方向に延びた中心軸C3を回転中心にし、第1のローラ13に対してころがり対偶をなして回転するようになっている。
【0049】
また、転写装置1には、図2等で示すように、複数の(たとえば3つの)引張り力測定部(以下、“引張り力測定部”を“引っ張り力測定部”と記載することもある。)17(17A,17B,17C)が設けられている。各引張り力測定部17A〜17Cの構成は、お互いが同じになっている。
【0050】
各引張り力測定部17は、各保持部3,5で保持され引張り力付与部7で引張り力が付与されているモールドMの引張り力を、それぞれが測定するようになっている。
【0051】
また、各引張り力測定部17は、お互いの位置が異なる複数箇所でモールドMの引っ張り力を測定するようになっている。さらに詳しくは、各引張り力測定部17A〜17Cは、図2等で示すように、モールドMの厚さ方向(U軸方向)と長手方向(V軸方向)とに直交する方向(W軸方向)で所定の間隔をあけて設けられており、モールドMの幅方向の複数箇所(モールドMの幅方向の一端の近傍、中央、他端の近傍)で、モールドMの長手方向(X軸方向、V軸方向における引張り力)の引っ張り力を測定するようになっている。
【0052】
また、姿勢調整部9は、各引っ張り力測定部17で測定している引っ張り力がお互いに等しくなるように(各引っ張り力の値の総てが所定の閾値内におさまるように、または、各引っ張り力の差が所定の閾値内におさまるように)、第2の保持部5を第1の保持部3に対して、たとえば回動位置決めするように構成されている。
【0053】
すなわち、第2の保持部5は、各保持部3,5で保持され引張り力付与部7で引張り力が付与されているモールドMの厚さ方向に延びている軸(たとえばU軸と平行な軸;Z軸と平行な軸でもよい。)C4を中心にして第2の保持部5を回動することで、各引っ張り力測定部17で測定している引っ張り力がお互いに等しくなるようにしている。
【0054】
第2の保持部5の回動位置決めは、たとえば、回動ステージ(α軸ゴニオステージ)19を用いてなされるようになっている。
【0055】
さらに説明すると、転写装置1には、各引っ張り力測定部17で測定している引っ張り力を表示する表示部(図示せず)が設けられている。そして、転写装置1のオペレータが、表示部に表示されている各引っ張り力の値を見ながら、各引っ張り力の値がお互いにほぼ等しくなるように回動ステージ(回転ステージ)19の図示しないツマミ(ハンドル)を操作(たとえば回転位置決め)することで、第2の保持部5の回動位置決めがなされるようになっている。
【0056】
なお、図示しない制御装置(CPUを含む制御装置)の制御の下、各引っ張り力測定部17で測定している引っ張り力に応じ、回動ステージ19のツマミをサーボモータ等のアクチュエータを用いて回動位置決めし、第2の保持部5の回動位置決めがなされるように構成されていてもよい。
【0057】
また、転写装置1の姿勢調整部9で、上述した回動位置決め(第2の保持部5を第1の保持部3に対し回動位置決めすること)に代えてもしくは加えて、第2の保持部5を第1の保持部3に対し直線的(モールドMの幅方向;Y軸方向やW軸方向)に、移動位置決めするようにしてもよい。
【0058】
そして、上記直線的な移動位置決めによって、各引っ張り力測定部17で測定している引っ張り力がお互いに等しくなるようにしてもよい。
【0059】
この場合、第2の保持部5の移動位置決めは、たとえば、一軸ステージ(X軸ステージ)21を用いてなされるようになっている。
【0060】
さらに説明すると、回動ステージ19の場合と同様にして、表示部に表示されている各引っ張り力の値を見ながら、各引っ張り力の値がお互いにほぼ等しくなるように一軸ステージ21の図示しないツマミ(ハンドル)を操作(たとえば回転位置決め)することで、第2の保持部5の回動位置決めがなされるようになっていてもよい。
【0061】
なお、回動ステージ19の場合と同様にして、図示しない制御装置(CPUを含む制御装置)の制御の下、各引っ張り力測定部17で測定している引っ張り力に応じ、一軸ステージ21のツマミをサーボモータ等のアクチュエータを用いて回動位置決めし、第2の保持部5の位置決めがなされるように構成されていてもよい。
【0062】
また、転写装置1の姿勢調整部9が、上述したZ軸に平行な軸まわりでの回動位置決めやY軸方向での移動位置決めに代えてもしくは加えて、V軸に平行な軸まわり(X軸に平行な軸まわりでもよい。)での回動位置決めをするようにしてもよい。この場合、V軸まわりでの回動位置決めも、Z軸まわりの回動位置決めと同様にして、たとえば、回動ステージを用いてされるものとする。
【0063】
また、第2の保持部5に姿勢を調整することに代えてもしくは加えて、第1の保持部3の姿勢を調整することで、各保持部3,5で保持され引張り力付与部7で引張り力が付与されているモールドMに皺が生成されることを防止するようにしてもよい。
【0064】
ところで、第1の保持部3は、一対のクランプ爪23によりモールドMをこの厚さ方向で挟み込んで保持するように構成されている。第2の保持部5も、一対のクランプ爪25によりモールドMをこの厚さ方向で挟み込んで保持するように構成されている。
【0065】
第2の保持部5の一対のクランプ爪25は、姿勢調整部9を構成するベース体27に支持されているとともに、ベース体27に対して引っ張り力の付与方向(V軸方向)で移動自在になっている。
【0066】
引っ張り力測定部17は、図7等で示すように、第2の保持部5の一対のクランプ爪25とベース体27との間に設けられているロードセル29とロードセル押圧体31と弾性体(たとえば圧縮コイルばね)33とを備えて構成されている(ロードセル29とロードセル押圧体31と弾性体33とが、直列につながって設けられている
【0067】
そして、引っ張り力測定部17は、ロードセル押圧体31が弾性体33を介してロードセル29に押圧力を加えるように構成されている。
【0068】
すなわち、各保持部3,5で保持されているモールドMにこの長手方向で引張り力を加えることで、第2の保持部5のクランプ爪25が力を受け、ロードセル29とロードセル押圧体31と弾性体33とが圧縮力を受け、この圧縮力によって、ロードセル29に押圧力が加えられ、この押圧力をロードセル29で測定し、引っ張り力測定部17での引っ張り力とするように構成されている。
【0069】
なお、弾性体33による付勢力(ロードセル押圧体31がロードセル29を押す力)は、詳しくは後述するが、たとえば、調整自在になっている。
【0070】
ところで、シート状のモールドMの微細な転写パターンM1は、ピッチや高さが、たとえば可視光線の波長程度である凹凸で形成されている。転写によって、モールドMに形成されている転写パターンM1が被成形体Wに転写され、モールドMに形成されている転写パターンM1とは逆形態の転写パターンW1が被成形体Wに形成されるようになっている(図12参照)。
【0071】
シート状のモールドは、シート状の基材(モールド用基材)M2と転写パターン形成体M3とで構成されている。
【0072】
また、モールドMは、可撓性を備えている。さらに説明すると、シート状のモールドMは、この厚さ方向に対して直交する方向の引張り力が加えられても弾性変形をほとんどせずほぼ剛体とみなせるが、紙幣等のように厚さ方向でめくれるような変形(厚さ方向に対して直交する方向に延伸している軸まわりのモーメントによる変形)を容易にするようになっている。したがって、モールドMは、この厚さ方向が円柱状の第1のローラ13の径方向と一致して、第1のローラ13の外周容易に巻き付くことができるようになっている。
【0073】
シート状のモールド用基材M2は、たとえば、紫外線が透過可能なPET樹脂等の樹脂材料で板状に形成されている。
【0074】
微細な転写パターンM1が形成されている転写パターン形成体M3は、たとえば、紫外線が透過可能な硬化した紫外線硬化樹脂(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の他の樹脂であってもよい。)で薄い膜状に形成されている。転写パターン形成体M3は、この厚さ方向がモールド用基材M2の厚さ方向と一致するようにして、シート状のモールド用基材M2の厚さ方向の一方の面でモールド用基材M2に一体に設けられている。
【0075】
転写パターン形成体M3の微細な転写パターンM1は、転写パターン形成体M3の表面(厚さ方向における一方の面であって、モールド用基材M2に接している面とは反対の面)に形成されている。なお、転写パターン形成体M3の微細な転写パターンM1は、図示しないマスターモールドに形成されている微細な転写パターンを転写することで生成されたものである。
【0076】
モールド用基材M2は、たとえば、たとえば、幅寸法が1.0m〜1.5mである矩形な板状に形成されており、モールド用基材M2の幅寸法(従来のモールド323と同様な幅寸法;軸方向の寸法)はモールド用基材M2の厚さ寸法に比べてかなり大きくなっており、モールド用基材M2の長さ寸法(X軸方向の寸法)は、モールド用基材M2の幅寸法よりもたとえば、大きくなっている。
【0077】
転写パターン形成体M3も、たとえば、矩形な板状に形成されている。転写パターン形成体M3は、幅方向がモールド用基材M2の幅方向と一致し、長さ方向がモールド用基材M2の長さ方向と一致するようにしてモールド用基材M2に設けられている。
【0078】
転写パターン形成体M3の幅寸法は、たとえば、モールド用基材M2の幅寸法よりも若干小さくなっている。そして、モールドMの幅方向の両端部には、転写パターン形成体M3が非存在である部位が存在している。
【0079】
また、転写パターン形成体M3の長さ寸法は、たとえば、モールド用基材M2の長さ寸法よりも小さくなっている(たとえば1/3程度になっている)。そして、モールドMの幅方向の両端部には、転写パターン形成体M3が非存在である部位が存在している。各クランプ爪23,25は、転写パターン形成体M3が非存在である部位(モールド用基材M2のみ)を保持するようになっている。
【0080】
被成形体Wは、基材(被成形体用基材)W2と被成形物W3とを備えて構成されている。
【0081】
シート状の被成形体用基材W2は、たとえば、PET樹脂等の樹脂材料で板状に形成されている。シート状のモールドMの微細な転写パターンM1が転写されて形成される被成形物W3は、たとえば、紫外線硬化樹脂(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の他の樹脂であってもよい。)で薄い膜状に形成されている。
【0082】
被成形体用基材W2は、たとえば矩形な板状に形成されている。被成形体用基材W2の幅寸法は、モールド用基材M2の幅寸法と同程度になっており、被成形体用基材W2の長さ寸法は、シート状のモールド用基材M2に設けられている転写パターン形成体M3の長さ寸法よりも若干長くなっている。
【0083】
被成形物W3も矩形な板状になって設けられている。被成形物W3は、この厚さ方向が被成形体用基材W2の厚さ方向と一致するようにして、シート状の被成形体用基材W2の厚さ方向の一方の面で被成形体用基材W2に設けられている。また、被成形物W3は、幅方向が被成形体用基材W2の幅方向と一致しており、長さ方向が被成形体用基材の長さ方向と一致している。被成形物W3の幅寸法や長さ寸法は、転写パターン形成体M3のものと同程度になっている。
【0084】
そして、モールドMの微細な転写パターンM1を被成形体W(被成形物W3)に転写するときには、モールドMの転写パターン形成体M3のほぼ総てと被成形体Wの被成形物W3のほぼ総てとがお互いに重なって密着するようになっている。
【0085】
被成形物W3の微細な転写パターンW1は、被成形物W3の表面(厚さ方向における一方の面であって、被成形体用基材W2に接している面とは反対の面)に形成されるようになっている。
【0086】
被成形物W3が紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂である場合、モールドMの微細な転写パターンM1が転写される前の被成形物(未硬化の樹脂)W3は、液体状もしくは流動体状になっている。転写がなされるときに、被成形物W3が硬化し、転写終了時には、被成形物W3は硬化している。
【0087】
被成形体保持体11は、被成形体Wを保持するようになっている。
【0088】
被成形体保持体11は、たとえば、矩形な平板状に形成されており、被成形体Wを保持するための平面(厚さ方向の一方の面;上面;被成形体設置面)39を備えている。被成形体Wは、この裏面(被成形体用基材W2の厚さ方向の一方の面であって被成形物W3が設けられている面とは反対側の面)の全面が、被成形体保持体11の被成形体設置面39に面接触し、たとえば真空吸着によって、被成形体保持体11に保持されるようになっている。
【0089】
被成形体保持体11に設置された被成形体Wは、この幅方向、長さ方向が被成形体保持体11の幅方向(Y軸方向)、長さ方向(X軸方向)と一致している。
【0090】
第1のローラ13は、円柱状に形成されてモールドMが巻き掛けられるように構成されている。第1のローラ13は、巻き掛けられたモールドMと被成形体保持体11に保持されている被成形体Wとを、上述した転写をするために被成形体保持体11と協働してZ軸方向で挟み込むようになっている。
【0091】
そして、第1のローラ13は、Y軸方向の延びた中心軸C2を回転中心にして回転し被成形体保持体11に対して相対的にX軸方向に移動することで、挟み込んでいるモールドMと被成形体Wとの部位が移動するようになっている。
【0092】
第2のローラ15も、円柱状に形成されており、たとえば、第1のローラ13よりもZ軸方向で被成形体保持体11から離れている。そして、第2のローラ15は、第1のローラの中心軸C2と平行な中心軸C3を回転中心にし、第1のローラ13ところがり対偶をなし同期して回転し、被成形体保持体11に対して第1のローラ13とともに相対的に移動するようになっている。
【0093】
第1のローラ13の外径と第2のローラ15の外径とはお互いがほぼ等しくなっており、第1のローラ13の長さ(幅)と第2のローラ15の長さ(幅)とはお互いがほぼ等しくなっている。
【0094】
第1のローラ13の幅寸法(Y軸方向の寸法)は、モールドMの幅寸法よりも僅かに大きくなっている。第1のローラ13の軸C2の延伸方向(幅方向)は、巻き掛けられているモールドMや被成形体保持体11に保持されている被成形体Wの幅方向と一致しており、第1のローラ13の幅方向の中心と、巻き掛けられているモールドMや被成形体保持体11に保持されている被成形体Wの幅方向の中心とは、お互いが一致している。
【0095】
また、第1のローラ13は、被成形体保持体11の被成形体設置面39に直交する方向(Z軸方向)で移動位置決め自在になっている。
【0096】
第1のローラ13が、モールドMと被成形体保持体11に保持されている被成形体Wとを被成形体保持体11と協働して挟み込んでいるとき、第1のローラ13の中心軸C2と被成形体設置面39との間の距離は、第1のローラ13の半径とモールドMの厚さと被成形体Wの厚さとの和とほぼ等しいか、ごく僅かに小さくなっている。これによって上述した挟み込みがなされるようになっている。
【0097】
第1のローラ13に巻き掛けられているモールドMは、第1のローラ13に僅かな長さ(1/10周程度)に巻き掛けられている。
【0098】
第1のローラ13に巻き掛けられているモールドMは、モールド用基材M2の裏面(厚さ方向の他方の面であって転写パターン形成体M3が設けられている面とは反対側の面)が、第1のローラ13の外周に面接触している。
【0099】
第1のローラ13に巻き掛けられ第1のローラ13から延出しているモールドMの長手方向の一方の側(図1で第1のローラ13の右側のモールドM)は、被成形体設置面39から僅かに離れ(被成形体Wの厚さ程度離れ)、被成形体設置面39と平行になって、被成形体保持体11の長さ方向(X軸方向)の一端側に延出している。
【0100】
第2のローラ15は、たとえば、第1のローラ13を間にして、被成形体保持体11とは反対側に位置している。また、被成形体設置面39に対して直交する方向(Z軸方向)から見ると、第1のローラ13と第2のローラ15とはお互いが重なっている。
【0101】
第1のローラ13に巻き掛けられ第1のローラ13から延出しているモールドMの長手方向の他方の側(図1で第1のローラ13の左側のモールドM)は、被成形体保持体11から離れるようにして、斜め上方に延出している。
【0102】
第2のローラ15の中心軸C3の第1のローラ13の中心軸C2に対する位置関係は常に一定であり、第2のローラ15は、第1のローラ13といっしょになって、被成形体保持体11の被成形体設置面39に直交する方向(Z軸方向)で移動位置決め自在になっている。
【0103】
各ローラ13,15は、上述したように、被成形体Wの長手方向(X軸方向)でも被成形体保持体11に対して相対的に移動自在になっている。すなわち、各ローラ13,15は、被成形体保持体11の長手方向で、被成形体保持体11の長手方向の一端から僅かに離れた位置(図10参照)と、被成形体保持体11の長手方向の他端から僅かに離れた位置(図11参照)との間で、移動するようになっている。
【0104】
被成形体保持体11に被成形体Wが設置され、モールドMが第1のローラ13に巻き掛けられ、第1のローラ13が被成形体設置面39に対して直交する方向(Z軸方向)で、被成形体設置面39から被成形体Wの厚さとモールドMの厚さとの和程度の距離(転写をするための距離)だけ離れており、各ローラ13,15が被成形体保持体11の長手方向の一端から僅かに離れたところに位置している状態(初期状態;図10参照)では、第1のローラ13から第2の保持部5(右側)に延出しているモールドMが、斜めになって被成形体保持体11の真上に位置しており、この延出しているモールドMの下面に、微細な転写パターンM1(図1図10図11等では図示せず)は存在している。
【0105】
図10に示す上記初期状態から、各ローラ13,15が被成形体保持体11の長手方向の他端側(図10の左側)に移動すると、第1のローラ13と被成形体保持体11とで挟み込んでいるモールドMと被成形体Wとの部位(被成形体保持体11の幅方向に延びている直線状の部位)が、移動するようになっている(図1参照)。この移動は、各ローラ13,15が被成形体保持体11の長手方向の他端から僅かに離れるまでなされる(図11参照)。上記移動をするとき、各ローラ13,15とモールドMとの間、モールドMと被成形体Wとの間には、当然に滑りは発生していない。また、第1のローラ13は、モールドMを間にし、被成形体保持体11に設置された被成形体Wに対して、ころがり対偶をなしている。
【0106】
また、転写装置1には、被成形体Wの被成形物W3が、紫外線硬化樹脂である場合、被成形物W3を硬化させるための紫外線発生装置41が設けられている。紫外線発生装置41は、各ローラ13,15とともに移動位置決めされるようになっている。そして、第1のローラ13と被成形体保持体11とが被成形体WとモールドMとを挟み込んでいるところの近傍に紫外線を照射し、被成形体Wの被成形物W3を硬化させ、モールドMの微細な転写パターンM1が被成形体Wに転写されるようになっている。
【0107】
すなわち、各ローラ13,15をX軸方向で移動しているときに、各ローラ13,15の後側(被成形体保持体11の長手方向の端側)でモールドMを通して被成形体Wの被成形物W3に紫外線発生装置41が発した紫外線を照射し、被成形物W3を図1等の右から左に向かって順に硬化するようになっている。
【0108】
この後、被成形体Wに貼り付いているモールドMを、たとえば別の装置を用いて、被成形体Wから剥がすことで、微細な転写パターンW1が形成された被成形体Wを得ることができる(図12(b)参照)。
【0109】
転写装置1についてさらに説明する。
【0110】
転写装置1には、除振台43が設けられている。除振台43は架台45の上部で架台45に一体的に設けられている。被成形体保持体11は、除振台43の上面で除振台43に一体的に設けられている。
【0111】
除振台43の上方には、ローラ支柱47が設けられている。ローラ支柱47は、図示しないリニアガイドベアリングを介して除振台43に支持されており、X軸方向で除振台43に対して移動するようになっている。
【0112】
また、ローラ支柱47は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータやボールネジによって、制御装置の制御の下、除振台43(被成形体保持体11)に対してX軸方向で移動位置決めされるようになっている。
【0113】
ローラ支柱47には、リニアガイドベアリング49を介してローラ支持体51が支持されている。ローラ支持体51は、Z軸方向でローラ支柱47に対して移動するようになっている。また、ローラ支持体51は、サーボモータ53等のアクチュエータとボールネジ55によって、制御装置の制御の下、ローラ支柱47(除振台43、被成形体保持体11)に対してZ軸方向で移動位置決めされるようになっている。
【0114】
ローラ支持体51は各ローラ13,15を回転自在に支持している。これにより、各ローラ13,15は、軸方向およびZ軸方向で被成形体保持体11に対して移動位置決め自在になっている。
【0115】
なお、各ローラ13,15は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータで同期して回転するようになっているが、ローラ支持体51が各ローラ13,15をフリーの状態で回転自在に支持している構成であってもよい。
【0116】
また、ローラ支持体51には、紫外線発生装置41が一体的に設けられている。
【0117】
なお、ローラ支柱47を移動位置決めすることに代えてもしくは加えて、被成形体保持体11を除振台43に対して移動位置決めするように構成されていてもよい。
【0118】
第1の保持部3(クランプ爪23)は、除振台43の上側で除振台43の上面近傍に設置されている。また、第1の保持部3は、X軸方向では、除振台43の一端近傍に設けられている。
【0119】
第2の保持部5(クランプ爪25)は、除振台43の上側に設置されている。また、第2の保持部5は、X軸方向では、除振台43の他端近傍に設けられている。各保持部3,5で保持しているモールドMは、転写の際、第1のローラ13と第1の保持部3とが被成形体保持体11の上面39の近傍に位置しており、第2の保持部5が、被成形体保持体11や第1の保持部3よりも上方に位置していることで、第1のローラ13の右側では、被成形体保持体11の近傍で水平方向に延伸しており、第1のローラ13の左側では、第1のローラ13から斜め上方に延伸している。
【0120】
引張り力付与部7は、第2の保持部5をX軸、Z軸方向に適宜移動位置決めすることで、各保持部3,5で保持しているモールドMにX軸方向やV軸方向で引張り力を付与するようになっている。
【0121】
姿勢調整部9は、引張り力付与部7と第2の保持部5との間に配置されている。また、各ローラ13,15と紫外線発生装置41とを備えて構成されている転写部57は、各保持部3,5で保持しているモールドMの中間部(X軸方向中間部)に位置している。
【0122】
引張り力付与部7は、保持部移動体59と保持部支柱61と支柱支持体63とを備えて構成されている。
【0123】
保持部移動体59は、リニアガイドベアリング(図示せず)を介して保持部支柱61に支持されており、Z軸方向で保持部支柱61に対して移動するようになっている。また、保持部移動体59は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータとボールネジによって、制御装置の制御の下、保持部支柱61に対してZ軸方向で移動位置決めされるようになっている。
【0124】
保持部支柱61は、支柱支持体63に一体的に設けられて支柱支持体63から起立している。支柱支持体63は、リニアガイドベアリング(図示せず)を介して除振台43に支持されており、X軸方向で除振台43に対して移動するようになっている。また、保持部支柱61は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータとボールネジによって、制御装置の制御の下、除振台43に対してX軸方向で移動位置決めされるようになっている。
【0125】
これにより、保持部移動体59は、軸方向およびZ軸方向で除振台43(被成形体保持体11)に対して移動位置決め自在になっている。
【0126】
そして、第2の保持部5が姿勢調整部9を介して保持部移動体59に支持されていることで、制御装置の制御の下、保持部移動体59の位置を適宜移動位置決めすれば、各保持部3,5で保持され第1のローラ13に巻き掛けられている(第1のローラ13で下方に押圧されている)モールドMに、X軸方向(V軸方向)で張力を付与しこの張力を一定値に調整することができるとともに、図1等の第1のローラ13の左側に存在しているモールドMと、被成形体設置面39との交差角度をたとえば一定に保つようになっている。
【0127】
姿勢調整部9は、図2に示すように、回動ステージ19と一軸ステージ21とを備えて構成されている。回動ステージ19と一軸ステージ21とは、保持部移動体59と姿勢調整部9を支持しているアームベース65との間に設けられている。
【0128】
さらに説明すると、回動ステージ19は基台67とテーブル69とを備えて構成されている。一軸ステージ21は基台71とテーブル73とを備えて構成されている。
【0129】
回動ステージ19のテーブル69は、Y軸方向(W軸方向)の中央部でアームベース65に一体的に設けられている。回動ステージ19の基台67は、一軸ステージ21のテーブル73に一体的に設けられている。一軸ステージ21の基台は、保持部移動体59に一体的に設けられている。
【0130】
そして、回動ステージ19の図示しないツマミを回動位置決めすることで、回動ステージ19のテーブル69が、基台67に対して、Z軸方向に延びた軸C4を中心にして回動位置決めされるようになっている。また、一軸ステージ21の図示しないツマミを回動位置決めすることで、一軸ステージ21のテーブル73が、基台71に対して、W軸方向で移動位置決めされるようになっている。
【0131】
これにより、第2の保持部5の姿勢が姿勢調整部9により、Z軸まわりで調整され、さらに、W軸方向で調整されるようになっている。
【0132】
なお、別の回動ステージをさらに設け、第2の保持部5の姿勢を、上述したように、V軸方向に延びた軸まわりでするようにしてもよい。
【0133】
さらには、回動ステージを設けることなく、第2の保持部5の姿勢が、V軸方向に延びた軸(クランプ爪25の中心を通る軸)まわりで自由に変化するように(後述するベース体27とアームベース65との係合関係のように)構成にしてもよい。
【0134】
姿勢調整部9を構成するベース体27は、アームベース65に回動自在に支持されている。詳しく説明すると、図2に示すように、アームベース65は、「コ」字状に形成されている。ベース体27は、矩形な平板状に形成されており、アームベース65の内側に設けられており、両端部がW軸方向に延びた軸C1を回動中心にして回動するようになっている。
【0135】
なお、ベース体27が軸C1を中心にして回動することで、X軸とV軸とがお互いに平行になり、Z軸とU軸とがお互いに平行になることがある。Y軸とW軸とは、アームベース65に対するベース体27の回動角度にかかわらず、常にお互いが平行になっている。
【0136】
また、ベース体27がアームベース65に回動自在に支持されていることで、図1に示すように、第1のローラ13と第2の保持部5(クランプ爪25)との間で延びているモールドMを適切に保持する(モールドMに無理な想定外の力が加わらないように保持する)ことができるようになっている。
【0137】
引張り力測定部17は、ベース体27とロードセル29とロードセル押圧体31と圧縮コイルバネ33とを備えて構成されている。
【0138】
ロードセル29は、図5等で示すように、スペーサ75を介してロードセル支持体77に一体的に設けられている。ロードセル支持体77には、ツメ支持体79が一体的に設けられている。ツメ支持体79には、一対のクランプ爪25が設けられている。モールドMは、一対のクランプ爪25に挟まれて保持されている。
【0139】
ツメ支持体79は、リニアガイドベアリング81を介してベース体27に支持されており、V軸方向でベース体27に対して移動自在になっている。
【0140】
ベース体27には、ネジ支持体83が一体的に設けられている。ネジ支持体83には、調整ネジ85が一体的に設けられている。調整ネジ85は、オスネジ部87と円柱状のガイド部89とが設けられている。調整ネジ85のオスネジ部87は、ネジ支持体83に螺合している。調整ネジ85の軸は、V軸方向に延びており、調整ネジ85はネジ支持体83からロードセル29側に突出している。この突出長さは調整自在になっている。調整ネジ85のガイド部89は、ロードセル29側に位置している。
【0141】
ロードセル29とネジ支持体83との間に存在しているオスネジ部87には、バネ受け体91が螺合している。バネ受け体91は、V軸方向での位置が調整自在になっている。
【0142】
調整ネジ85のガイド部89には、ロードセル押圧体31がV軸方向でスライド自在に係合している。ロードセル押圧体31は、ロードセル29に接触している。バネ受け体91とロードセル押圧体31との間には、圧縮コイルバネ33が圧縮された状態で設置されている。これにより、ロードセル押圧体31がロードセル29図7の左側に押している。
【0143】
そして、ロードセル押圧体31が弾性体33を介してロードセル29に押圧力を加えるように構成されている。
【0144】
さらに説明すると、たとえば図10に示す状態でモールドMに張力が加わっているとすると、図7に示す状態では、ベース体27とネジ支持体83と調整ネジ85とバネ受け体91とに対して、クランプ爪25とツメ支持体79とロードセル支持体77とロードセル29とが右側に移動するような力を受ける。そして、ロードセル29が弾性体33を介してロードセル押圧体31より押されるようになっている。
【0145】
なお、転写装置1では、引張り力測定部17(ロードセル29)が3つ設けられているが、3つの引張り力測定部17において、ネジ支持体83に対する調整ネジ85の位置の調整と調整ネジ85に対するバネ受け体91の位置の調整とが適宜されている。
【0146】
そして、モールドMが各保持部3,5に正しく設置されており(図8参照)、各ロードセル29での押圧力がお互いに等しければ、バネ受け体91の位置の調整が適切になされていることになる(圧縮コイルバネ33による押圧力の調整が適切になされていることになる)。
【0147】
なお、バネ受け体91の位置の調整が適切になっている状態で、モールドMが各保持部3,5に図9等に示すように傾いて設置されると、各ロードセル29での押圧力は、お互いが異なった値になる。
【0148】
次に、転写装置1の動作について説明する。
【0149】
まず、初期状態として、各バネ受け体91の位置の調整が適切になされており、図10に示すように、各保持部3,5にモールドMが設置され、モールドMが第1のローラ13に巻き掛けられ、各ローラ13,15がZ軸方向で適宜位置決めされ被成形体保持体11の右端から被成形体保持体11の右側に僅かに離れているものとする。
【0150】
また、上記初期状態では、未硬化の被成形物W3が設けられている被成形体Wが被成形体保持体11に保持されており、紫外線発生装置41は紫外線を発していないものとする。
【0151】
なお、上記初期状態におけるモールドMへの張力の付与は、たとえば、次のようにしてなされる。
【0152】
3つのロードセル29が測定している3つの値を制御装置に入力し、この入力した値のうちの最大値が所定の値(転写をするときの目標値)になるように、制御装置に制御の下、支柱支持体63や保持部移動体59を移動位置決めすることでなされる。
【0153】
続いて、図示しない回動ステージ19や一軸ステージ21の回転ツマミを転写装置1のオペレータが操作し、3つのロードセル29の測定値がお互いが等しくなるようにする。
【0154】
このとき、制御装置の制御の下、3つのロードセル29による測定値が、所定の値(転写をするときの目標値)になるように、支柱支持体63や保持部移動体59が移動位置決めされる。
【0155】
続いて、図示しないスタートスイッチがオペレータによって押されると、各ローラ13,15を被成形体保持体11の長手方向の他端側(図10の左側)に移動する。これにより、第1のローラ13と被成形体保持体11とで挟み込んでいるモールドMと被成形体Wとの部位が、図10の右側から左側に向かって移動する(図1参照)。
【0156】
このときにも、制御装置の制御の下、3つのロードセル29による測定値が、所定の値(転写をするときの目標値)になるように、支柱支持体63や保持部移動体59が移動位置決めされる。
【0157】
また、紫外線発生装置41が、第1のローラ13と被成形体保持体11とが被成形体WとモールドMとを挟み込んでいるところの近傍に紫外線を照射し、被成形体Wの被成形物W3を硬化させる。
【0158】
続いて、各ローラ13,15が被成形体保持体11の長手方向の他端側に移動し終える(図11参照)ことで、転写装置1の動作が終了する。
【0159】
続いて、被成形物W3が硬化しモールドMが被成形体Wに貼り付いている状態において、別の装置を用いる等して、被成形体Wに貼り付いているモールドMを、被成形体Wから剥がすことで、転写パターンW1が形成された被成形体W(図12(b)参照)を得ることができる。
【0160】
転写装置1によれば、第1の保持部3に対する第2の保持部5の姿勢を調整する姿勢調整部9を備えているので、モールドMの取り付けが若干曲がってなされていても、姿勢調整部9で第1の保持部3に対する第2の保持部5の姿勢が調整され、転写をするときに、モールドMが横ずれ等することが無くなり、転写の精度が悪化することを防止することができる。
【0161】
また、転写装置1によれば、姿勢調整部9での調整を各引張り力測定部17で測定した引張り力の値を参照しながら行うことができ、姿勢調整部9での調整を一層正確かつ容易に行うことができる。
【0162】
また、転写装置1によれば、姿勢調整部9での調整を、第2の保持部5を第1の保持部3に対して回動位置決めすることに加えて、直線的に移動位置決めすることで行うので、モールドMの取り付けがより大きく曲がってなされていても、姿勢調整部9での調整を確実に行うことができる。
【0163】
また、転写装置1によれば、引っ張り力測定部17で、ロードセル押圧体31が弾性体33を介してロードセル29に押圧力を加えるように構成されているので、ロードセル29に急激に大きな力を加わりそうになっても、この力を弾性体33で吸収することができ、ロードセル29が破損することを防止することができる。
【0164】
また、各弾性体33を介して、各保持部3,5で保持されているモールドMに引張り力か加わるように構成されているので、モールドMの幅方向でモールドMにほぼ均等な引張り力を加えることができ、モールドMに皺等が生成されることを一層確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0165】
1 転写装置
3 第1の保持部
5 第2の保持部
7 引張り力付与部
9 姿勢調整部
17 引張り力測定部
23 第1の保持部のクランプ爪
25 第2の保持部のクランプ爪
27 ベース体
29 ロードセル
31 ロードセル押圧体
33 弾性体
M モールド
M1 転写パターン
W 被成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13